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【発明の名称】 排気ガス浄化用強磁性触媒および排気ガス浄化装置
【発明者】 【氏名】伊藤 祐介
【住所又は居所】愛知県豊田市トヨタ町1番地 トヨタ自動車株式会社内

【要約】 【課題】熱源から触媒粒子への熱伝達損失を解消し、触媒昇温時間を短縮した排気ガス浄化用強磁性触媒およびそれを用いた排気ガス浄化装置を提供する。

【解決手段】強磁性かつ触媒活性を有する合金および化合物の少なくとも一方から成る排気ガス浄化用強磁性触媒。望ましくは、上記合金がFe,Ni,Coのうちの1種以上の強磁性成分とPt,Pd,Rhのうちの1種以上の触媒活性成分とを含み、上記化合物が組成式Nd1-xKxMn1-yTiyO3またはNd1-xRbxMn1-yTiyO3(いずれも,0<x<1,0<y<1)のペロブスカイト化合物から成る。上記強磁性触媒を担持させた担体と、この担体に近接させた誘導加熱コイルとを備えた排気ガス浄化装置。
【特許請求の範囲】
【請求項1】 強磁性かつ触媒活性を有する合金および化合物の少なくとも一方から成ることを特徴とする排気ガス浄化用強磁性触媒。
【請求項2】 前記合金が、Fe、NiおよびCoから成る群から選択された少なくとも1種の強磁性成分と、Pt、PdおよびRhから成る群から選択された少なくとも1種の触媒活性成分とを含むことを特徴とする請求項1記載の強磁性触媒。
【請求項3】 前記合金が前記強磁性成分と前記触媒活性成分の2成分のみから成り、前記強磁性成分の含有量m原子%と前記触媒活性成分の含有量c原子%の比率が、m/c=5/95〜80/20の範囲内であることを特徴とする請求項2記載の強磁性触媒。
【請求項4】 前記化合物が、強磁性かつ触媒活性を有するペロブスカイト化合物から成ることを特徴とする請求項1記載の強磁性触媒。
【請求項5】 前記ペロブスカイト化合物が、組成式Nd1-xxMn1-yTiy3またはNd1-xRbxMn1-yTiy3(いずれも、0<x<1、0<y<1)で表されることを特徴とする請求項3記載の強磁性触媒。
【請求項6】 前記組成式中のMnの少なくとも一部を、Fe、NiおよびCoから成る群から選択された少なくとも1種で置換したことを特徴とする請求項5記載の強磁性触媒。
【請求項7】 請求項1から6までのいずれか1項記載の合金および化合物の少なくとも一方の粒子と、下記:(A)触媒活性は無いが強磁性である非触媒強磁性粒子、および(B)酸素吸蔵材および酸素イオン伝導体の少なくとも一方の粒子の(A)(B)のすくなくとも一方との混合体から成ることを特徴とする排気ガス浄化用強磁性触媒。
【請求項8】 請求項1から7までのいずれか1項記載の強磁性触媒を担持させた担体と、この担体に近接させた誘導加熱コイルとを備えた排気ガス浄化装置。
【発明の詳細な説明】【0001】
【発明の属する技術分野】本発明は、自動車エンジン等の内燃機関始動時の暖機前の低温域における排気ガスの浄化に適した排気ガス浄化触媒およびそれを用いた排気ガス浄化装置に関する。
【0002】
【従来の技術】エンジン始動時の暖機前は、触媒が活性化温度(300℃程度)まで昇温されておらず触媒活性すなわち浄化性能が十分に発揮されないため、CO、HC、NOxの浄化が困難である。特に、現在では、これが未浄化排気ガス量の大部分を占めており、その対策が急がれている。
【0003】従来、このような低温域での触媒活性を高めるために触媒を外部から加熱する方法が種々検討されている。
【0004】その最も典型的な方式は、触媒とは別体のヒーターを備えたヒーター付触媒(EHC:Electrically Heated Catalyst)である。
【0005】しかしこの方式では、外部からモノリス担体を含む触媒全体を加熱しなければならないため、必然的にエネルギーロスが大きくなり、触媒の昇温に長時間を要する。また、消費電力が大きいため、オルタネータ(発電機)の大型化、バッテリーの追加などにより、重量増とコストアップが避けられない。
【0006】これに対して、本出願人は特開平11−336534号公報において、触媒金属粒子と磁性体粒子とを担体表面に混在させて担持した誘導発熱式浄化装置を提案した。この装置は、誘導磁場によって磁性体粒子を発熱させ、その熱によって近傍の触媒粒子を加熱する構成である。これにより、前述のヒーター付触媒に比べて、大電力を必要とせずに、少ないエネルギーロスで効率良く触媒を昇温させることができる。
【0007】しかし、上記提案の装置では、熱源である磁性体粒子と加熱対象である触媒金属粒子とが別々の粒子として配置されていたため、両者間の熱伝達損失が原理的に避けられず、触媒昇温時間の短縮に限界があった。
【0008】
【発明が解決しようとする課題】本発明は、上記従来技術の限界を超えて、熱源から触媒粒子への熱伝達損失を解消し、触媒昇温時間を更に短縮できる排気ガス浄化用強磁性触媒およびそれを用いた排気ガス浄化装置を提供することを目的とする。
【0009】
【課題を解決するための手段】上記の目的を達成するために、本願第1発明の排気ガス浄化用強磁性触媒は、強磁性かつ触媒活性を有する合金および化合物の少なくとも一方から成ることを特徴とする。すなわち、本発明の触媒は、上記合金または上記化合物のいずれか一方で構成されても良く、両者の混合物として構成されても良い。
【0010】典型的には、前記合金は、Fe、NiおよびCoから成る群から選択された少なくとも1種の強磁性成分と、Pt、PdおよびRhから成る群から選択された少なくとも1種の触媒活性成分とを含む。すなわち、本発明の合金は、上記選択肢内の強磁性成分と上記選択肢内の触媒活性成分の2成分のみで構成されても良く、これら2成分以外の有利な成分を含んで構成されても良い。
【0011】特に2成分のみから成る場合、前記合金の前記強磁性成分の含有量m原子%と前記触媒活性成分の含有量c原子%の比率が、m/c=5/95〜80/20の範囲内であることが望ましい。合金から成る触媒全体を有効に加熱するためには、誘導加熱による熱源となる強磁性成分の含有量を5原子%以上とすることが望ましい。ただし、強磁性成分が多すぎると触媒活性成分が強磁性成分で覆われてしまい、触媒活性成分が触媒作用を十分に発揮できなくなるので、強磁性成分の含有量は80原子%以下とすることが望ましい。
【0012】典型的には、前記化合物は、強磁性かつ触媒活性を有するペロブスカイト化合物から成る。上記ペロブスカイト化合物は、代表的には組成式Nd1-xxMn1-yTiy3またはNd1-xRbxMn1-yTiy3(いずれも、0<x<1、0<y<1)で表されること。上記組成式中のMnの少なくとも一部を、Fe、NiおよびCoから成る群から選択された少なくとも1種で置換することができる。
【0013】本発明の強磁性触媒は、上述の合金および化合物の少なくとも一方の粒子と、下記:(A)触媒活性は無いが強磁性である非触媒強磁性粒子、および(B)酸素吸蔵材および酸素イオン伝導体の少なくとも一方の粒子の(A)(B)のすくなくとも一方との混合体として構成されても良い。
【0014】上記(A)の場合、非触媒強磁性粒子の発熱により合金粒子および/または化合物粒子から成る触媒の加熱を補助することができる。このような非触媒強磁性粒子として、例えばFe34、CuOFe23、Y3Fe512等を用いることができる。
【0015】上記(B)の場合、誘導加熱による昇温下において酸化活性を高めて浄化性能を更に向上させることができる。このような酸素吸蔵材としてはCeO2−ZrO2固溶体が、酸素イオン伝導体としてはYSZ(イットリウム安定化ジルコニア)が、それぞれ代表的である。
【0016】本願第2発明の排気ガス浄化装置は、本願第1発明の強磁性触媒を担持させた担体と、この担体に近接させた誘導加熱コイルとを備えて構成される。
【0017】本発明においては、触媒活性を有する合金がそれ自体の成分として強磁性体を含むか、または、触媒活性を有する化合物が同時に強磁性をも有するので、誘導磁場の下で触媒自体が発熱するため、従来のように熱伝達による損失が発生することがなく、極めて効率良く短時間で触媒の昇温が達成される。
【0018】本発明の強磁性触媒は、硬磁性を示すことが望ましい。これにより誘導磁場中で大きなヒステリシス損が得られ、発熱量が増加する。
【0019】
【実施例】下記3種類の粉末とバインダーを用意した。
【0020】<粉末1>比較のための非磁性触媒として、従来のPt薬液を用いた含浸法により、Ptを担持したCeO2−ZrO2固溶体粉末(Pt担持量4wt%)を調製した。
【0021】<粉末2>本発明による強磁性触媒として、50原子%Fe−50原子%Pt合金粉末とCeO2−ZrO2固溶体粉末との混合粉末(Pt担持量4wt%)を下記の調製法1または2で調製した。
【0022】〔調製法1〕Feの液相還元法1)まず、粉末1と同じく、従来のPt薬液を用いた含浸法により、Ptを担持したCeO2−ZrO2固溶体粉末(Pt担持量4wt%)を調製する。
【0023】2)得られたPt担持〔CeO2−ZrO2〕固溶体粉末を含む30℃のイオン交換水(粉末含有量1〜10wt%)に、還元剤かつ緩衝剤としてアスコルビン酸ナトリウムC67NaO6(濃度1wt%)、錯化剤としてクエン酸三ナトリウム二水和物C65Na37・2H2O(濃度2×10-1wt%)、強磁性成分であるFe源として硝酸鉄(Fe(NO33・9H2O)を、この順に添加した後、24時間攪拌しながらFeを還元析出させる。この工程で強磁性成分の含有量を調整することができる。
【0024】3)次いで、濾過して粉末を回収し、60℃のイオン交換水で洗浄後、乾燥する。
【0025】4)乾燥させた粉末を、水素20%/残部N2の雰囲気中で1000℃×1時間の熱処理を行なう。
【0026】これにより、Fe−Pt合金の微粒子(粒径5nm以下)が高分散された触媒が得られる。本実施例では上記工程2)における調整により、Fe/Pt原子%比=50/50とした。
【0027】還元剤としては、上記で用いたもの以外に、ヒドラジン、ホウ水素化物、次亜リン酸塩、クエン酸、蟻酸、蓚酸、等を用いることができる。
【0028】緩衝材としては、上記で用いたもの以外に、エチレンジアミン四酢酸塩(EDTA)等を用いることができる。
【0029】また、強磁性成分としては、上記で用いたFeを含め、Ni、Coを、硝酸塩、塩化物等の形で用いることができる。
【0030】〔調製法2〕Fe/Ptナノコロイド利用1)下記を混合した後、3時間還流させる。
【0031】
2PtCl6・H2O 160μmolポリ(N−ビニル−2−ピロリドン) 1.6mmol(=PVP、分子量40,000)
2O 640mlC25OH 160ml2)溶媒を留去した後、1−プロパノールに再分散させる。
【0032】3)Fe(NO33・9H2Oを添加した。この添加量によりFe/Pt含有量比を調整できる。
【0033】4)凍結脱気後、N2雰囲気下で3時間還流する。
【0034】5)濃縮後、脱気エーテルにて沈殿させる。
【0035】6)N2雰囲気下で濾過して、沈殿物を回収する。
【0036】7)回収した沈殿物を真空乾燥した後、蒸発乾固法によりCeO2−ZrO2固溶体粉末に担持させる。
【0037】8)乾燥後、水素20%/残部N2の雰囲気中で1000℃×1時間の熱処理を行なう。
【0038】これにより、Fe−Pt合金の微粒子(粒径5nm以下)が高分散された触媒が得られる。本実施例では上記工程3)における添加量の調整により、Fe/Pt原子%比=50/50とした。
【0039】<粉末3>Fe34粉末(硬磁性を示す強磁性材料)
<バインダー>ZrO2ゾル(固形分:12%)
上記の各粉末とバインダーを組み合わせて種々の触媒を作製した。
〔本発明例〕100gの粉末2+50gの粉末3+100gのバインダーに、適量のイオン交換水を加えてボールミルにより物理混合してスラリーとした。
〔比較例1〕100gの粉末1+100gのバインダーに、適量のイオン交換水を加えてボールミルにより物理混合してスラリーとした。
〔比較例2〕100gの粉末1、50gの粉末3、100gのバインダーに、適量のイオン交換水を加えてボールミルにより物理混合してスラリーとした。
【0040】上記の本発明例、比較例1,2で作製したスラリーを、それぞれ200g/Lの塗布密度で、35ccのモノリスに塗布した。
【0041】塗布後のモノリスを乾燥後、500℃×2時間の大気焼成を行った。
【0042】<浄化性能評価>上記で得られた触媒担持モノリスの外周に高周波誘導コイルを巻きつけ、浄化性能評価用のサンプルとした。
【0043】下記組成(ストイキ評価)の試験用浄化対象ガスを用いた。
【0044】CO :0.65%C36 :1000ppmNO :1500ppmCO2 :10%O2 :0.7%H2O :5%N2 :残部ガス温度は、ストイキ前処理(400℃)の後に、200℃一定として試験を行った。
【0045】ガス流量は、6.0L/min/0.015g担持金属とした。
【0046】上記ガス流内に配置した本発明例および比較例1,2の触媒担持モノリスに1kHzの高周波電流を印加して、浄化試験を行った。高周波印加開始から30秒経過後のHC浄化率を図1に示す。
【0047】図1に示したように、本発明例の強磁性触媒は比較例より格段に高い浄化率を発揮する。特に、触媒として単にPtを用いた比較例2との比較すると、強磁性触媒であるFe−Pt合金を用いた以外は比較例2と同条件である本発明例は、HC浄化率が約50%から約80%へ大幅に向上していることが分かる。
【0048】
【発明の効果】本発明によれば、触媒活性を有する合金がそれ自体の成分として強磁性体を含むか、または、触媒活性を有する化合物が同時に強磁性をも有するので、誘導磁場の下で触媒自体が発熱するため、従来のように熱伝達による損失が発生することがなく、極めて効率良く短時間で触媒の昇温が達成される。
【0049】これにより、従来技術の限界を超えて、熱源から触媒粒子への熱伝達損失を解消し、触媒昇温時間を更に短縮できる排気ガス浄化用強磁性触媒およびそれを用いた排気ガス浄化装置が提供される。
【出願人】 【識別番号】000003207
【氏名又は名称】トヨタ自動車株式会社
【住所又は居所】愛知県豊田市トヨタ町1番地
【出願日】 平成13年11月30日(2001.11.30)
【代理人】 【識別番号】100077517
【弁理士】
【氏名又は名称】石田 敬 (外2名)
【公開番号】 特開2003−164765(P2003−164765A)
【公開日】 平成15年6月10日(2003.6.10)
【出願番号】 特願2001−366797(P2001−366797)