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【発明の名称】 窒素酸化物および/または硫黄酸化物の吸着剤
【発明者】 【氏名】近藤 久雄
【住所又は居所】兵庫県姫路市網干区興浜字西沖992番地の1 株式会社日本触媒内

【氏名】山本 光一
【住所又は居所】兵庫県姫路市網干区興浜字西沖992番地の1 株式会社日本触媒内

【氏名】小野 博信
【住所又は居所】兵庫県姫路市網干区興浜字西沖992番地の1 株式会社日本触媒内

【要約】 【課題】本発明は、窒素酸化物および/または硫黄酸化物の吸着剤およびこの吸着剤を用いた窒素酸化物および/または硫黄酸化物の除去方法に関するものである。

【解決手段】本発明は、2価の鉄を含有し、かつ比表面積が4m/g以上、全細孔容積が0.2cc/g以上であることを特徴とする窒素酸化物および/または硫黄酸化物の吸着剤である。
【特許請求の範囲】
【請求項1】2価の鉄を含有し、かつ比表面積が4m/g以上、全細孔容積が0.2cc/g以上であることを特徴とする窒素酸化物および/または硫黄酸化物の吸着剤。
【請求項2】請求項1記載の吸着剤が、(1)銅、(2)アルカリ金属元素、(3)チタン、ケイ素、ジルコニウム、およびアルカリ土類金属元素から選ばれる少なくとも1種の元素を含有することを特徴とする請求項1記載の吸着剤。
【請求項3】請求項1又は2記載の吸着剤において、当該吸着剤が当該吸着剤の前駆体を還元雰囲気下で加熱処理して得られたものである請求項1又は2記載の吸着剤。
【請求項4】窒素酸化物および/または硫黄酸化物を含むガスを請求項1〜3のいずれかに記載の吸着剤に接触させて窒素酸化物および/または硫黄酸化物を除去することを特徴とする窒素酸化物および/または硫黄酸化物の除去方法。
【発明の詳細な説明】【0001】
【発明の属する技術分野】本発明は、窒素酸化物および/または硫黄酸化物の吸着剤およびこの吸着剤を用いた窒素酸化物および/または硫黄酸化物の除去方法に関する。
【0002】
【従来の技術】ボイラなどの固定式窒素酸化物発生源からの窒素酸化物の除去方法に関しては、従来から、アンモニアを還元剤に用いて窒素酸化物を選択的に還元して無害な窒素と水とに変換する接触還元法が最も経済的な方法として広く用いられている。
【0003】これに対し、道路トンネル、シェルター付道路、大深度地下空間、道路交差点、地下駐車場などにおける換気ガスもしくは大気、および家庭内で使用される燃焼機器から排出されるガスなどに含まれる窒素酸化物の濃度は、5ppm程度と、ボイラ排ガス中の窒素酸化物濃度に比べて著しく低く、またガス温度は常温であり、しかもガス量は莫大なものである。従来のアンモニア還元方法、例えば道路トンネルの換気ガスに上記接触還元法を適用して窒素酸化物を効率よく除去するためには、この換気ガスの温度を300℃以上にすることが必要であり、その結果、多大なエネルギーが必要となることから、上記接触還元法をそのまま適用することには経済的に問題がある。
【0004】このような事情から、道路トンネルの換気ガスなど、窒素酸化物の濃度が低い、例えば5ppm以下の排ガスから窒素酸化物を効率よく除去することが望まれている。そこで、低濃度の窒素酸化物を吸着剤に吸着させて除去する方法、およびこれに適した吸着剤が提案されている。
【0005】本出願人は、上記のような低濃度の窒素酸化物含有ガスから窒素酸化物を吸着除去するに好適な吸着剤を提案している(特開平10−128105号、特開平10−192698号、特開平10−309435号、特開平11−28351号、特開平11−28352号、特開2000−51655号、特開2000−225318号、特開2000−325780号、特開2001−38200号、および特願2001−71638号)。また、本出願人は、窒素酸化物のほかに硫黄酸化物を含有するガスから窒素酸化物を効率よく除去する方法として、あらかじめ硫黄酸化物を除去した後、窒素酸化物用吸着剤に接触させて窒素酸化物を吸着除去する方法を提案している (特開平10−76136号)。さらに、本出願人は、使用によって性能の低下した吸着剤を還元剤の存在下で加熱して再生する方法も提案している(特開2000−225317号)。
【0006】
【発明が解決しようとする課題】本発明の目的は、窒素酸化物および/または硫黄酸化物を吸着除去するに好適な、特に5ppm程度以下の低濃度の窒素酸化物および/または硫黄酸化物を吸着除去するに好適な吸着剤およびこの吸着剤を用いた窒素酸化物および/または硫黄酸化物の除去方法を提供することにある。
【0007】
【課題を解決するための手段】本発明者らは、鋭意研究の結果、下記の吸着剤が上記課題を解決できることを見出し、この知見に基づいて本発明を完成するに至った。本発明は、第一発明として窒素酸化物および/または硫黄酸化物の吸着剤、第二発明として当該吸着剤を用いた窒素酸化物および/または硫黄酸化物の除去方法である。以下、順に説明する。
【0008】すなわち、第一発明は、2価の鉄を含有し、該吸着剤の比表面積が4m/g以上、全細孔容積が0.2cc/g以上であることを特徴とする窒素酸化物および/または硫黄酸化物の吸着剤である。また、該吸着剤には、(1)銅、(2)アルカリ金属元素、(3)チタン、ケイ素、ジルコニウム、およびアルカリ土類金属元素から選ばれる少なくとも1種の元素を含有することが好ましい。
【0009】また、本発明の吸着剤は、予め鉄成分を含有する吸着剤前駆体を調製し、該前駆体を還元雰囲気下で加熱処理して得られたものである窒素酸化物および/または硫黄酸化物の吸着剤である。
【0010】また、第二発明は、窒素酸化物および/または硫黄酸化物を含むガスを上記吸着剤に接触させて窒素酸化物および/または硫黄酸化物を除去することを特徴とする窒素酸化物および/または硫黄酸化物の除去方法である。
【0011】
【発明の実施の形態】本発明の吸着剤は、5ppm以下の低濃度の窒素酸化物および/または硫黄酸化物を吸着するためのものである。この窒素酸化物はNOxとして示されるものであり、具体的にはNOおよびNO2を挙げることができる。また、硫黄酸化物とはSOxで示されるものであり、具体的にはSO2を挙げることができる。本発明の吸着剤は、窒素酸化物と硫黄酸化物を同時でも別個でも処理することができるが、特にNO2の吸着除去に優れている。
【0012】まず、第一発明である吸着剤について説明する。当該吸着剤は、2価の鉄を含有し、且つ比表面積が4m/g以上、全細孔容積が0.2cc/g以上のものであれば、鉄は何れの状態であっても良い。すなわち、当該鉄の少なくとも一部が2価の形態で含有されており、且つ比表面積が4m/g以上、全細孔容積が0.2cc/g以上であれば良い。
【0013】鉄成分(以下、(A)とも記載する)は、その全量が2価の形態である必要はなく、窒素酸化物および/または硫黄酸化物を吸着するのに有効な量だけ含まれていればよい。なかでも、Fe3O4の形態で含有されているものが好ましい。Fe3O4は、逆スピネル型のFe(II)Fe(III)2O4であり、鉄の少なくとも一部が2価の形態を有することが知られている。(例えば、化学大辞典880頁、1989年、東京化学同人)すなわち、Fe3O4は、2価の形態を有する鉄化合物の1種として包含される。鉄成分が2価の形態を有していることはX線回折による格子面間隔(d値)を測定することにより確認することができる。FeOのd値は、2.15±0.01と2.49±0.01と1.52±0.01とにあり、Fe3O4のd値は、2.53±0.01と1.48±0.01と2.97±0.01とにある。
【0014】調製方法には特に制限はなく、各種の方法によって調製することができる。例えば、市販あるいは予め調製した2価の鉄化合物を使用して調製してもよい。なかでも、後記のように、鉄成分を含有する吸着剤前駆体を予め調製し、この前駆体を還元雰囲気下で加熱処理して、鉄の少なくとも一部を2価の形態に変換した吸着剤が好適である。成分(A)の出発原料としては、鉄の酸化物、水酸化物、硝酸塩、硫酸塩、ハロゲン化物、有機金属塩、酢酸塩やシュウ酸塩などの有機酸塩などを用いることができる。
【0015】本発明の吸着剤の物性は、比表面積(BET表面積)が4m/g以上、好ましくは4〜50m/gであり、全細孔容積が0.2cc/g以上、好ましくは0.2〜0.4cc/gが好適である。比表面積が4m/g未満であり、全細孔容積が0.2cc/g未満の物性を有する吸着剤では、十分な吸着性能を得ることができない。なお、細孔容積の測定には、水銀圧入式ポロシメーターを使用した。
【0016】本発明の吸着剤は、更に(1)銅、(2)アルカリ金属元素、(3)チタン、ケイ素、ジルコニウム、およびアルカリ土類金属元素から選ばれる少なくとも1種の元素を含有することが好ましい。
【0017】銅成分(以下成分(B)とも記載する)の形態は、吸着剤として窒素酸化物および/または硫黄酸化物を吸着し得るものであればいずれの形態であってもよいが、なかでも、その少なくとも一部が0価または1価の原子価を有することが好ましい。すなわち、銅の少なくとも一部が0価または1価の原子価を有するものが好ましい。具体的には、(イ)銅の実質的に全てが0価である、(ロ)銅の実質的に全てが1価である、(ハ)銅の一部が0価で、残余が1価である、(ニ)銅の一部が0価であり、残余が2価である、(ホ)銅の一部が0価であり、残余が1価および2価であるものを挙げることができる。銅は必ずしもその全てが0価または1価である必要はなく、本発明の効果が得られる程度の有効量が0価または1価であればよい。銅成分が0価または1価の形態を有していることは、鉄成分と同様に、X線回折による格子面間隔(d値)を測定することにより確認することができる。Cu(0価)のd値は、2.09±0.01と1.81±0.01と1.28±0.01とにあり、Cu2O(1価)のd値は2.47±0.01と2.14±0.01と1.51±0.01とにある。成分(B)の出発原料としては、銅の酸化物、水酸化物、炭酸塩、硝酸塩、硫酸塩、ハロゲン化物、有機金属塩、酢酸塩やシュウ酸塩などの有機酸塩などを用いることができる。
【0018】アルカリ金属元素成分(以下成分(C)とも記載する)の形態については特に制限はなく、吸着剤として窒素酸化物および/または硫黄酸化物を吸着し得るものであれば、いずれの形態にあってもよい。例えば、水酸化物、炭酸塩または炭酸水素塩の形態で含有される。なかでも、耐久性に優れた吸着剤が得られるという点において、炭酸カリウムが好適に用いられる。成分(C)の出発原料としては、各元素の水酸化物、炭酸塩、炭酸水素塩、硝酸塩、亜硝酸塩などのほか、酢酸塩、シュウ酸塩、クエン酸塩、ソルビン酸塩などの有機酸塩などを用いることができる。
【0019】本発明の吸着剤は、更にチタン、ケイ素、ジルコニウム、およびアルカリ土類金属元素から選ばれる少なくとも1種の元素(以下(D)成分とも記載する)を含有することが好適である。成分(D)の形態についても特に制限はなく、窒素酸化物および/または硫黄酸化物を吸着する機能が得られる限り、いずれの形態にあってもよい。例えば酸化物、複合酸化物、水酸化物、炭酸塩、リン酸塩、硫酸塩などとして含有される。成分(D)のなかでも、耐久性に優れた吸着剤が得られるという点において、ジルコニウムおよびアルカリ土類金属元素が好適に用いられる。その出発原料としては、各元素の酸化物、水酸化物、炭酸塩、硫酸塩、ハロゲン化物、リン酸塩などを用いることができる。
【0020】本発明の吸着剤は、2価の鉄を含有し、該吸着剤の比表面積が4m/g以上、全細孔容積が0.2cc/g以上の物性を有するものであれば特に制限はないが、代表例としては、(A)鉄、(B)銅、(C)アルカリ金属元素、および(D)チタン、ケイ素、ジルコニウム、およびアルカリ土類金属元素から選ばれる少なくとも1種の元素を含有する吸着剤である。
【0021】各成分の割合については。成分(A)は1〜89質量%、好ましくは5〜85質量%であり、成分(B)は1〜30質量%、好ましくは1〜20質量%であり、成分(C)は1〜89質量%、好ましくは1〜81質量%であり、成分(D)は9〜97質量%、好ましくは13〜93質量%である。なお、割合については、成分(A)、 (B)、 (C)および(D)は酸化物換算であり、具体的には、例えば、鉄はFe2O3、カリウムはK2O、カルシウムはCaOとして換算する。
【0022】なお、本発明の吸着剤は、さらに成分(E)として、白金、金、ルテニウム、ロジウム、パラジウム、マンガン、ニッケル、コバルト、亜鉛、バナジウム、ニオブ、クロム、モリブデンおよびタングステンから選ばれる少なくとも1種の元素、好ましくは白金、金、ルテニウム、ロジウム、パラジウムおよびコバルトから選ばれる少なくとも1種の元素を含有することができる。成分(E)の割合は、各成分の合計量に対して白金、金、ルテニウム、ロジウムおよびパラジウムの場合は金属換算として0.01〜10質量%、好ましくは0.05〜5質量%添加することができる。マンガン、ニッケル、コバルト、亜鉛、バナジウム、ニオブ、クロム、モリブデンおよびタングステンの場合は酸化物換算として0.5〜30質量%、好ましくは1〜20質量%添加することができる。成分(E)の形態としては、例えば金属、酸化物、複合酸化物などとして含有される。成分(E)のなかでも、好ましくは、白金、金、ルテニウム、ロジウム、パラジウムおよびコバルトが、さらに好ましくは、ルテニウムおよびコバルトが用いられる。成分(E)の出発原料としては、各元素の酸化物、水酸化物、硝酸塩、硫酸塩、炭酸塩、ハロゲン化物、有機金属塩、アンモニウム錯体などを用いることができる。
【0023】本発明の吸着剤は、前記のとおり、各種方法によって調製することができ、吸着剤中に2価の鉄を含有し、且つ比表面積が4m/g以上、全細孔容積が0.2cc/g以上の物性を有するものであれば何れのものであっても良いが、予め鉄成分(成分(A))を含有する吸着剤前駆体を調製し、この前駆体を還元雰囲気下で加熱処理して、鉄の少なくとも一部を2価の形態に変換した吸着剤が好適である。
【0024】更に成分(B)、成分(C)、および成分(D)を含有する場合についても同様に、種々の方法によって吸着剤を調製することができるが、予め成分(A)〜(D)、または各成分の出発原料を含有する吸着剤前駆体を調製し、この前駆体を還元雰囲気下で加熱処理して、鉄の少なくとも一部を2価の形態に変換し、同時に銅の少なくとも一部を0価または1価に変換した吸着剤が好適である。
【0025】吸着剤前駆体とは、各種処理により、本発明に係る吸着剤としうるものであれば良いが、鉄が3価の鉄化合物、好ましくは三酸化二鉄(Fe2O3)の形態で含有されているものが好ましい。
【0026】上記吸着剤前駆体は、この種の吸着剤の調製に一般に用いられている方法により調製することができる。前記の成分(A)、成分(B)、成分(C)および成分(D)を含有する吸着剤前駆体について、その代表的な調製方法を以下に説明するが、本発明はこれに限定されるものではない。
【0027】成分(A)、成分(B)および成分(C)の出発原料の水溶液、または粉体を一般に用いられている成型助剤とともに成分(D)に加え、混合、攪拌し、押出成型機で成型する。得られた成型体を50〜120℃で乾燥した後、200〜600℃、好ましくは250〜500℃で1〜10時間、好ましくは2〜6時間空気中、窒素などの不活性ガス中などで焼成する。なお、最後の焼成工程は、必須ではなく、適宜省略することもできる。
【0028】そのほか、成分(A)〜(C)のうちの少なくとも一つと成分(D)とを含有する成型体をあらかじめ作成し、この成型体に残りの成分を含浸担持させてもよい。例えば、成分(A)、成分(B)および成分(D)からなる成型体を上記のように調製した後、成分(C)を含浸担持させる。
【0029】本発明の好適な吸着剤は、上記吸着剤前駆体を還元雰囲気下に加熱処理することにより得られる。還元雰囲気下での加熱処理とは、加熱処理の雰囲気ガス中に還元剤を添加し、還元剤の存在下で加熱処理を行なう方法と、吸着剤前駆体中に予め還元作用を示す物質を担持させて、不活性ガス中で加熱処理する方法である。本発明においては、アルカリ金属元素を含有する吸着剤前駆体において、アルカリ金属元素がその有機酸塩の形態で担持される場合には、この吸着剤前駆体を不活性ガス中で加熱処理することによっても本発明の好適な吸着剤を得ることができる。なお、アルカリ金属元素がその有機酸塩として含有される場合でも、加熱処理の雰囲気ガス中に還元剤を添加する方法により本発明の好適な吸着剤が得られる。
【0030】そこで、最初に、加熱処理の雰囲気ガス中に還元剤を添加し、還元剤の存在下で加熱処理を行なう方法について説明する。この還元剤とは、水素および燃焼性有機化合物を意味する。この燃焼性有機化合物としては、炭化水素類、好ましくは炭素数1〜4の飽和または不飽和の炭化水素類を挙げることができる。本発明では、水素または炭化水素類、特に水素が還元剤として好適に用いられる。上記炭化水素類の代表例としては、メタン、エタン、プロパン、ブタン、エチレン、プロピレン、ブタジエンなどの飽和または不飽和の炭化水素類を挙げることができる。
【0031】上記還元剤は、通常、他のガスで希釈して、例えば、窒素などの不活性ガスとの混合ガスとして使用する。具体的には、還元剤として水素を用いる場合、水素と窒素、ヘリウムなどの不活性ガスとの混合ガスとして使用する。この混合ガス中の水素の濃度は、通常、0.1〜20容量%であり、好ましくは0.5〜10容量%である。なお、空気との混合ガスとすることもできるが、爆発の危険があるので、一般的には、上記のような不活性ガスとの混合ガスとして使用するのがよい。燃焼性有機化合物の場合にも、窒素などの不活性ガスとの混合ガスとして使用する。この混合ガス中の燃焼性有機化合物の濃度は、通常、0.001〜1容量%であり、好ましくは0.01〜0.5容量%である。
【0032】上記還元剤の希釈に用いることのできるガスとしては、上記の窒素、ヘリウムなどの不活性ガスおよび空気のほかに、水蒸気(H2O)、二酸化炭素ガスなどを挙げることができる。かくして、上記混合ガスの代表例としては、水素と不活性ガス、燃焼性有機化合物と不活性ガスとの組み合わせを挙げることができる。
【0033】加熱温度は、通常、200〜500℃であり、好ましくは300〜480℃である。なお、吸着剤前駆体は、通常、常温であるが、上記加熱温度までの昇温速度には特に制限はなく、適宜決定することができる。加熱時間は、一概に特定できないが、通常、30分〜10時間、好ましくは30分〜5時間の範囲で適宜選ぶことができる。
【0034】本発明の加熱処理は、還元剤の通風下で行うのが好ましい。還元剤の通風下で加熱処理を行う場合、通風の程度については特に制限はなく、新たな還元剤が供給されるような条件下にすればよい。
【0035】次に、アルカリ金属元素を含有する場合において、アルカリ金属元素がその有機酸塩の形態で含有される吸着剤前駆体を不活性ガス中で加熱処理する方法について説明する。なお、この吸着剤前駆体は、例えば、成分(A)、成分(B)および成分(D)からなる成型体を前記のように調製した後、成分(C)としてのアルカリ金属有機酸塩を含浸担持させて得られる。このアルカリ金属有機酸塩の代表例としては、酢酸カリウム、クエン酸三カリウム、ソルビン酸カリウムなどを挙げることができる。なかでも、酢酸カリウムが好適に用いられる。不活性ガスとしては、通常、窒素が用いられる。加熱条件については、前記還元剤の存在下での加熱処理の場合と同じである。
【0036】上記不活性ガス中での加熱処理により、還元が進行する理由は明らかではないが、例えば酸化鉄(3価)の場合では、加熱処理によってアルカリ金属有機酸塩が熱分解し、この熱分解の際に酸化鉄の保持する酸素が消費され、酸化鉄が還元されるものと考えられる。なお、本発明は、このような理論的考察によって限定されるものではない。
【0037】本発明の吸着剤の形状については特に制限はなく、円柱状、円筒状、球状、板状、ハニカム状、その他一体に成型されたもののなかから適宜選択することができる。この成型には、一般的な成型方法、例えば打錠成型、押出成型などを用いることができる。球状の場合、その平均粒径は、通常、1〜10mmである。ハニカム状吸着剤の場合は、いわゆるモノリス担体と同様であり、押出成型法やシート状素子を巻き固める方法などにより製造することができる。そのガス通過口(セル形状)の形は、6角形、4角形、3角形、またはコルゲーション形のいずれであってもよい。セル密度(セル数/単位断面積)は、通常、25〜800セル/平方インチ(×2.54cm)であり、好ましくは25〜500セル/平方インチ(×2.54cm)である。
【0038】本発明の方法によれば、窒素酸化物および/または硫黄酸化物を含むガスを上記吸着剤に接触させて窒素酸化物および/または硫黄酸化物を吸着せしめてガスを浄化する。上記ガスの代表例は、前記の道路トンネルなどからの換気ガスないしは大気ガスであり、本発明の方法は、窒素酸化物および硫黄酸化物の濃度が5ppm以下という濃度が低いガスからの窒素酸化物および硫黄酸化物の吸着除去に好適に用いられる。
【0039】上記のガスと吸着剤との接触方法については特に制限はなく、通常、この吸着剤からなる層中にガスを導入して行う。この処理条件については、処理すべきガスの性状などにより異なるので一概に特定できないが、例えば、吸着剤層に供給するガスの温度は、通常、0〜100℃であり、特に0〜50℃とするのが好ましい。また、吸着剤層に供給するガスの空間速度(SV)は、通常、500〜50000/h(STP)であり、2000〜30000/h(STP)の範囲が好ましい。
【0040】
【発明の効果】2価の鉄を含有し、且つ比表面積が4m/g以上、全細孔容積が0.2cc/g以上の物性を有することを特徴とする本発明の吸着剤は、窒素酸化物および/または硫黄酸化物、特に低濃度の窒素酸化物および/または硫黄酸化物に対して高い吸着性能を有する。また、(1)銅、(2)アルカリ金属元素、および(3)チタン、ケイ素、ジルコニウム、およびアルカリ土類金属元素から選ばれる少なくとも1種の元素を含有することにより、特に優れた耐久性を示す。
【0041】
【実施例】以下、実施例を挙げて本発明を更に具体的に説明する。
実施例1α−FeO(OH)222.6g、塩基性炭酸銅(日本化学産業(株)製、銅金属を50質量%含有)239.6g、酸化チタン(比表面積80m/g)600gに適量の水を添加しつつニーダーでよく混合した後、押出成型機で直径5mm、長さ5mmのペレット状に成型した。このペレットを100℃で10時間乾燥した後、350℃で3時間空気雰囲気下で焼成した。さらに、このペレットを400℃で1時間、水素/窒素(5/95容量%)の流通下で加熱処理した。
【0042】次いで、このペレットを2N−炭酸カリウム水溶液に2分間含浸した後、100℃で1時間乾燥して吸着剤(1)を得た。この吸着剤の組成は、Fe:Cu:Ti:K(Fe2O3:CuO:TiO2:K2Oとして)=20.2:15.1:60.4:4.3(質量%)であった。吸着剤(1)の比表面積は51.3m/g、全細孔容積は0.415cc/gであった。
実施例2α−FeO(OH)222.6gを400℃で3時間、空気雰囲気中で焼成してFe2O3を得た。塩基性炭酸銅(日本化学産業(株)製、銅金属を50質量%含有)239.6gを350℃で3時間、空気雰囲気中で焼成してCuOを得た。これらに炭酸カルシウム600gを適量の水を添加しつつニーダーでよく混合した後、押出成型機で直径5mm、長さ5mmのペレット状に成型した。このペレットを100℃で10時間乾燥した後、500℃で3時間空気雰囲気下で焼成した。さらに、このペレットを4N−酢酸カリウム水溶液に2分間含浸した後、120℃で5時間乾燥してペレット状の吸着剤前駆体を得た。この前駆体の組成は、Fe:Cu:Ca:K(Fe2O3:CuO:CaO:K2Oとして)=27.2:20.4:45.6:6.8(質量%)であった。
【0043】次いで、このペレットを400℃で2時間、窒素雰囲気下で加熱処理して吸着剤(2)を得た。吸着剤(2)の比表面積は8.6m/g、全細孔容積は0.291cc/gであった。
比較例1塩基性炭酸銅(日本化学産業(株)製、銅金属を50質量%含有)239.6gを700℃で5時間、空気雰囲気中で焼成してCuOを得た。これにFe2O3(キシダ化学(株)製)200g、炭酸カルシウム600gを適量の水を添加しつつニーダーでよく混合した後、押出成型機で直径5mm、長さ5mmのペレット状に成型した。このペレットを100℃で10時間乾燥した後、500℃で3時間空気雰囲気下で焼成した。さらに、このペレットを6N−酢酸カリウム水溶液に2分間含浸した後、120℃で5時間乾燥してペレット状の吸着剤前駆体を得た。この前駆体の組成は、Fe:Cu:Ca:K(Fe2O3:CuO:CaO:K2Oとして)=27.3:20.5:45.8:6.4(質量%)であった。
【0044】次いで、このペレットを400℃で2時間、窒素雰囲気下で加熱処理して吸着剤(比較1)を得た。吸着剤(比較1)の比表面積は2.1m/g、全細孔容積は0.154cc/gであった。
実施例2吸着剤(1)〜(2)、および比較吸着剤(比較1)の窒素酸化物吸着能および硫黄酸化物吸着能を下記の方法により評価した。
(評価方法(1))吸着剤35mlを内径30mmのガラス製反応管に充填した。この吸着剤層に下記組成の合成ガス(A)を下記条件下に導入した。
合成ガス(A)組成一酸化窒素(NO):0.9ppm、二酸化窒素(NO2):0.1ppm、二酸化硫黄(SO2):0.05ppm、H2O:1.9容量%、残り:空気処理条件ガス量:17.3NL/min、処理温度:25℃、空間速度(SV):30,000/h(STP)、ガス湿度:60%RH上記合成ガスを導入してから1時間後、上記吸着剤層の入口および出口における合成ガス中の二酸化窒素(NO2)濃度を化学発光式NOX計により、また、硫黄酸化物(SO2)濃度を紫外線吸収式SO2計で測定し、次式に従ってNO2およびSO2除去率を算出した。評価試験の結果を表1に示す。
NO2除去率(%)={(入口NO2濃度−出口NO2濃度)/(入口NO2濃度)}×100SO2除去率(%)={(入口SO2濃度−出口SO2濃度)/(入口SO2濃度)}×100(評価方法(2))下記の加速耐久試験を行なった後の各吸着剤の窒素酸化物吸着能および硫黄酸化物吸着能を評価方法(1)と同様にして評価した。
<加速耐久試験>吸着剤35mlを内径30mmのガラス製反応管に充填した。この吸着剤層に下記組成の合成ガス(B)を下記条件下に導入した。
合成ガス(B)組成一酸化窒素(NO):2.7ppm、二酸化窒素(NO2):0.3ppm、二酸化硫黄(SO2):0.15ppm、H2O:1.9容量%、残り:空気処理条件ガス量:17.3NL/min、処理温度:25℃、空間速度(SV):30,000/h(STP)、ガス湿度:60%RH上記加速耐久試験を200時間行った後、合成ガス(A)を導入してから1時間後、上記吸着剤層の入口および出口における合成ガス中の二酸化窒素(NO2)濃度および硫黄酸化物(SO2)濃度を評価方法(1)と同様にして測定し、NO2およびSO2除去率を算出した。評価試験の結果を表1に示す。
【0045】
【表1】

【出願人】 【識別番号】000004628
【氏名又は名称】株式会社日本触媒
【住所又は居所】大阪府大阪市中央区高麗橋4丁目1番1号
【出願日】 平成13年11月30日(2001.11.30)
【代理人】
【公開番号】 特開2003−164756(P2003−164756A)
【公開日】 平成15年6月10日(2003.6.10)
【出願番号】 特願2001−367377(P2001−367377)