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【発明の名称】 安定化W/O/Wエマルション及びその製造方法
【発明者】 【氏名】清水 正高

【氏名】松田 成信

【氏名】中島 忠夫

【氏名】福井 敬一

【氏名】松ヶ野 一郷

【要約】 【課題】内水相中に含まれる有用物質の漏洩を効果的に抑制できるW/O/Wエマルションを提供する。

【解決手段】内水相に有用物質を含有し、かつ、外水相及び/又は内水相中に水性乳化剤を含有するW/O/Wエマルションにおいて、当該水性乳化剤が、炭素数18以上の脂肪酸とポリグリセリンとのエステルであることを特徴とするW/O/Wエマルション及びそれを製造する方法に係る。
【特許請求の範囲】
【請求項1】内水相に有用物質を含有し、かつ、外水相及び/又は内水相中に水性乳化剤を含有するW/O/Wエマルションにおいて、当該水性乳化剤が、炭素数18以上の脂肪酸とポリグリセリンとのエステルであることを特徴とするW/O/Wエマルション。
【請求項2】油相中に炭素数18以上の脂肪酸を含む請求項1記載のW/O/Wエマルション。
【請求項3】油相中にポリグリセリン縮合リシノレイン酸エステルを含む請求項1又は2に記載のW/O/Wエマルション。
【請求項4】有用物質が、水溶性生理活性物質である請求項1〜3のいずれかに記載のW/O/Wエマルション。
【請求項5】水溶性生理活性物質がアントシアニンである請求項4記載のW/O/Wエマルション。
【請求項6】有用物質を含む第一水相が油相中に分散したW/Oエマルションを多孔質膜に透過させて第二水相中に分散させることにより、当該第一水相を内水相とし、当該第二水相を外水相とするW/O/Wエマルションを製造する方法であって、水性乳化剤として、炭素数18以上の脂肪酸とポリグリセリンとのエステルを第一水相及び/又は第二水相中に含有させることを特徴とするW/O/Wエマルションの製造方法。
【請求項7】W/O/Wエマルションをさらに多孔質膜に透過させる請求項6記載の製造方法。
【請求項8】内水相に有用物質を含有し、かつ、外水相及び/又は内水相中に水性乳化剤を含有するW/O/Wエマルションにおいて、当該水性乳化剤が、炭素数18以上の脂肪酸とポリグリセリンとのエステルであることを特徴とするW/O/Wエマルションを用い、当該外水相に第二水性乳化剤(ただし、上記の水性乳化剤を除く。)をさらに添加することにより、有用物質の外水相への放出速度を制御する方法。
【発明の詳細な説明】【0001】
【発明の属する技術分野】本発明は、安定化W/O/Wエマルション及びその製造方法に関する。
【0002】
【従来技術】液体のマイクロカプセルであるW/O/Wエマルションは、水相(外水相)にW/O液滴が分散したエマルションである。W/O/Wエマルションでは、そのW/O液滴内部に有用な物質を封入することにより、食品、医薬品、化粧品等をはじめ、様々な用途に応用することができる。また、W/O/Wエマルションは、製造プロセスの中間体としての利用も可能である。これらの用途においてW/O/Wエマルションによるメリットを活かすためには、W/O液滴内部の有用物質の漏洩が効果的に抑制されていること、あるいは有用物質の放出速度を制御できることが前提となる。
【0003】ところが、W/O液滴内部に封入した有用物質が、W/O/Wエマルションの製造中又は保存中に外水相に多量に漏洩するという問題が依然として存在し、マイクロカプセルとしての商品開発が十分に進展していない。もちろん、適切な速度で有用物質をマイクロカプセルから放出させる機能(徐放機能)を付与することも実現されていない。
【0004】これらの問題を解決するための方法がいくつか提案されている。例えば、内水相中に脂肪酸と多価アルコールとのエステルからなるHLB7以上の親水性乳化剤を含有し、油相中に不飽和脂肪酸を50%以上含む炭素数16〜22の脂肪酸又は縮合オキシ脂肪酸と炭素数4以上の多価アルコールとのエステルからなる親油性乳化剤を含有し、外水相中にHLB5以上の親水性乳化剤を含むW/O/Wエマルション組成物(特開2001−25360)が知られている。
【0005】例えば、常温ではゲル相であって一定の相転移温度以上で液晶相となるようなゲル−液晶組成物を利用し、この液晶組成物を内水相とするW/Oエマルションを調製した後に転移温度以下に冷却することにより、液晶を内水相とするW/O/Wエマルションを製造する方法(特開平10−137576号)がある。
【0006】例えば、多価アルコール類、糖類及びアミノ酸類の少なくとも1種と油性界面活性剤とからいったんゲルを形成した後、このゲルに親水性芯物質を含有する油相及び油分を添加するゲル乳化法によりW/Oエマルションをマイクロカプセル化する方法が開示されている。
【0007】例えば、ポリオキシエチレン鎖及び/又はポリオキシポリプロピレン鎖を有し、一部のみ又は完全に架橋されたオルガノオポリシロキサンエラストマーを用いたW/O/Wエマルション(特開2000−34221)が開示されている。
【0008】
【発明が解決しようとする課題】しかしながら、これらの技術では乳化安定性を高めることは可能であるものの、W/O液滴内部に含有させた有用物質が外水相に漏洩することを効果的に抑制するためにはさらなる改良が必要である。
【0009】本発明者の研究では、漏洩の問題を引き起こす原因は主に次の3点にあることが判明した。
【0010】第一に、W/O/Wエマルションの調製方法の問題である。ホモミキサー、高圧ホモジナイザー等の従来の乳化方法では、強烈な剪断力がかかるため、W/O液滴の少なくとも一部が機械的に破壊される結果、高い割合で内水相が外水相へ漏洩する。
【0011】第二に、W/O液滴自体の問題である。すなわち、W/O液滴が不安定であるか、あるいは浸透圧等の条件が不適当であるために、W/O/Wエマルションの調製後にW/O液滴が破壊され、漏洩が起こる。
【0012】第三に、油相の問題である。安定なW/O液滴を調製しても、油相中に一般に使用される油性界面活性剤が有用物質を運搬する役割を果たすことによって漏洩を引き起こす場合がある。
【0013】従って、本発明は、これらの問題を改善し、内水相中に含まれる有用物質の漏洩を効果的に抑制できるW/O/Wエマルションを提供することを主な目的とする。
【0014】
【課題を解決するための手段】本発明者は、かかる従来技術の問題点に鑑みて鋭意研究を重ねた結果、特定組成及び特定の製法を採用して得られるエマルションが上記目的を達成できることを見出し、ついに本発明を完成するに至った。
【0015】すなわち、本発明は、下記の安定化W/O/Wエマルション及びその製造方法に係る。
【0016】1.内水相に有用物質を含有し、かつ、外水相及び/又は内水相中に水性乳化剤を含有するW/O/Wエマルションにおいて、当該水性乳化剤が、炭素数18以上の脂肪酸とポリグリセリンとのエステルであることを特徴とするW/O/Wエマルション。
【0017】2.油相中に炭素数18以上の脂肪酸を含む前記項1記載のW/O/Wエマルション。
【0018】3.油相中にポリグリセリン縮合リシノレイン酸エステルを含む前記項1又は2に記載のW/O/Wエマルション。
【0019】4.有用物質が、水溶性生理活性物質である前記項1〜3のいずれかに記載のW/O/Wエマルション。
【0020】5.水溶性生理活性物質がアントシアニンである前記項4記載のW/O/Wエマルション。
【0021】6.有用物質を含む第一水相が油相中に分散したW/Oエマルションを多孔質膜に透過させて第二水相中に分散させることにより、当該第一水相を内水相とし、当該第二水相を外水相とするW/O/Wエマルションを製造する方法であって、水性乳化剤として、炭素数18以上の脂肪酸とポリグリセリンとのエステルを第一水相及び/又は第二水相中に含有させることを特徴とするW/O/Wエマルションの製造方法。
【0022】7.W/O/Wエマルションをさらに多孔質膜に透過させる前記項6記載の製造方法。
【0023】8.内水相に有用物質を含有し、かつ、外水相及び/又は内水相中に水性乳化剤を含有するW/O/Wエマルションにおいて、当該水性乳化剤が、炭素数18以上の脂肪酸とポリグリセリンとのエステルであることを特徴とするW/O/Wエマルションを用い、当該外水相に第二水性乳化剤(ただし、上記の水性乳化剤を除く。)をさらに添加することにより、有用物質の外水相への放出速度を制御する方法。
【0024】9.第二水性乳化剤が、ポリグリセリンラウリン酸エステル、ショ糖ラウリン酸エステル、ショ糖ステアリン酸エステル及びデカグリセリンカプリル酸エステルの少なくとも1種のエステル類である前記項8記載の方法。
10.有用物質がポリフェノールである前記項1〜3のいずれかに記載のW/O/Wエマルション。
11.内水相に有用物質を含有し、かつ、外水相のみに水性乳化剤を含有するW/O/Wエマルションにおいて、当該水性乳化剤が、炭素数18以上の脂肪酸とポリグリセリンとのエステルであることを特徴とするW/O/Wエマルション。
12.有用物質を含む第一水相が油相中に分散したW/Oエマルションを多孔質膜に透過させて第二水相中に分散させることにより、当該第一水相を内水相とし、当該第二水相を外水相とするW/O/Wエマルションを製造する方法であって、水性乳化剤として、炭素数18以上の脂肪酸とポリグリセリンとのエステルを第二水相中に含有させることを特徴とするW/O/Wエマルションの製造方法。
13.内水相に有用物質を含有し、かつ、外水相のみに水性乳化剤を含有するW/O/Wエマルションにおいて、当該水性乳化剤が、炭素数18以上の脂肪酸とポリグリセリンとのエステルであることを特徴とするW/O/Wエマルションを用い、当該外水相に第二水性乳化剤(ただし、上記の水性乳化剤を除く。)をさらに添加することにより、有用物質の外水相への放出速度を制御する方法。
【0025】
【発明の実施の形態】1.安定化W/O/Wエマルション本発明のW/O/Wエマルションは、内水相に有用物質を含有し、かつ、外水相及び/又は内水相中に水性乳化剤を含有するW/O/Wエマルションにおいて、当該水性乳化剤が、炭素数18以上の脂肪酸とポリグリセリンとのエステルであることを特徴とする。
【0026】本発明は、水相(内水相)/油相/水相(外水相)を基本構成とするエマルションであり、外水相及び/又は内水相中に水性乳化剤を含有する。
【0027】内水相及び外水相には、水を用いることができる。また、油相には、公知のW/O/Wエマルションで使用されている油相(油剤)から用途等に応じて適宜選択すれば良い。例えば、医薬品、食品等を製造する場合は、食用、飲用、皮膚塗布用等として利用できる油剤を用い、例えば大豆油、コーン油、落花生油、綿実油等の植物油、牛脂、豚脂、鯨脂等の動物油、中性トリグリセリド等の合成油が挙げられる。医薬品、食品等の製品以外のものを製造する場合は、その他にも灯油、軽油、重油等の燃料油、スピンドル油、コンプレッサー油、タービン油、マシン油、エンジン油、ギヤー油等の潤滑油、流動パラフィン、石油ワックス等のパラフィン油、シリコーン油、オレフィン重合油、ジエステル油、ポリアルキルグリコール油等の合成系油剤が挙げられる。これらは1種又は2種以上で用いることができる。
【0028】有用物質としては、内水相に水とともに含有させてW/O/Wエマルションを調製できれば限定されず、エマルションの使用目的等に応じて適宜選択すれば良い。また、天然物又は合成品のいかんを問わない。具体的な用途としては、化成品、薬品、医薬品、農薬、飼料、肥料、食品等が例示される。
【0029】本発明では、特に水溶性生理活性物質が好適に使用できる。水溶性生理活性物質は限定的でなく、公知のものも使用できる。例えば、動物、植物等の生物又は鉱物あるいはこれらの処理物から抽出又は精製された成分のほか、その成分をさらに変質処理して得られる成分を用いることができる。上記抽出方法も限定されず、例えば溶剤に水、アルコール、プロピレングリコール、グリセリン、液体炭酸ガス等を用い、原料と溶剤とを接触させた後、溶剤を取り除く方法が適用できる。精製方法も特に制限されず、吸着法、ろ過法、蒸留法等が例示できる。
【0030】水溶性生理物質としては、具体的には赤キャベツ色素、シソ色素、紅花色素等の色素、キシロール、ソルビトール、カンゾウ抽出物、オリゴ糖等の甘味料、グアニル酸、イノシン酸、アルパラギン酸、アルギニン、アスパラギン、タウリン等の調味料、アミノ酸、カテキン、エラグ酸等の保存料等が例示できる。また、例えばカフェイン、ステビア抽出物、甘茶抽出物、抽出タンニン、柑橘種子抽出物、桑抽出物、赤キャベツ抽出物、シソ抽出物、紫甘藷抽出物、ブルーベリー抽出物、ブドウ種皮抽出物 等も使用できる。さらに、肉エキス、魚貝エキス、酵母エキス、HAP(動物性蛋白加水分解物)、HVP(植物性蛋白加水分解物)等も使用できる。また、ポリフェノール等も使用できる。
【0031】本発明では、これらのうちポリフェノール(特にアントシアニン)を好適に用いることができる。アントシアニンは、一般的に赤キャベツ、シソ、紫甘藷、ブルーベリー、ブドウ種皮等から抽出したものを使用できるが、合成品であっても良い。
【0032】水性乳化剤は、外水相及び内水相の少なくとも一方の水相中に含まれていれば良いが、本発明では少なくとも外水相に含まれていることが望ましい。また、外水相のみに水性乳化剤が含まれている態様も好ましい。
【0033】水性乳化剤は、炭素数18以上の脂肪酸とポリグリセリンとのエステルを用いる(以下「本発明乳化剤」ともいう。)。上記脂肪酸としては、例えばステアリン酸、オレイン酸、アラキジン酸、イコセン酸、ベヘン酸、エルカ酸、リグノセン酸、テトラコセン酸等が好ましい。上記ポリグリセリンとしては、例えばデカグリセリン、ヘキサグリセリン等が好ましい。
【0034】上記エステルは、モノエステル、ジエステル、トリエステル等のいずれのタイプであっても良い。上記エステルは、そのHLBが通常7以上であれは良く、好ましくは8以上、より好ましくは10以上とする。
【0035】本発明の水性乳化剤として使用できるエステルとしては、具体的にはデカグリセリンステアリン酸モノエステル、ヘキサグリセリンステアリン酸モノエステル、デカグリセリンオレイン酸モノエステル、ヘキサグリセリンオレイン酸モノエステル、デカグリセリンエルカ酸モノエステル、ヘキサグリセリンエルカ酸モノエステル等が好適に使用できる。これらの水性乳化剤は1種又は2種以上で使用できる。また、これらの水性乳化剤は公知の製法により得られたもの、市販品等であっても良い。従って、一般に市販されているグリセリンの重合度、エステル化率が異なる乳化剤が混合した形態の乳化剤であっても良い。
【0036】水性乳化剤は、パルミチン酸又はパルミトレイン酸とポリグリセリンとのエステルが混合した乳化剤でも良い。また、本発明の効果を妨げない限り、他の乳化剤を併用することも可能である。
【0037】水性乳化剤の濃度は、用いる有用物質又は水性乳化剤の種類、水相の種類(内水相又は外水相)等に応じて適宜決定することができる。特に、内水相に含有させる場合は、通常0.05〜50重量%程度、好ましくは0.5〜30重量%とすれば良い。また、外水相に含有させる場合は、通常0.01〜30重量%程度、好ましくは0.1〜10重量%とすれば良い。
【0038】本発明では、必要に応じて、油相中に炭素数18以上の脂肪酸を含有させることもできる。上記脂肪酸を含有させることにより、漏洩抑制効果をいっそう高めることができる。
【0039】上記脂肪酸は限定的でなく、例えばステアリン酸、オレイン酸、アラキン酸、イコセン酸、ベヘン酸、エルカ酸、リグノセン酸、テトラコセン酸等を好適に用いることができる。これらは1種又は2種以上で用いることができる。
【0040】上記脂肪酸の濃度は、用いる脂肪酸の種類、水性乳化剤の種類等に応じて適宜決定することができるが、通常は0.01〜50重量%程度、好ましくは0.5〜30重量%とすれば良い。
【0041】本発明では、油相中に油性乳化剤を含有させることが望ましい。油性乳化剤を含有させることによって、エマルションの安定性保持等の点で優れた効果を得ることができる。油性乳化剤の種類は限定されないが、特にHLB6以下の油性乳化剤を好適に用いることができる。このような乳化剤としては、例えばグリセリン高級脂肪酸エステル、ポリグリセリン高級脂肪酸エステル、ポリグリセリン縮合リシノレイン酸エステル、ショ糖脂肪酸ポリエステル、ポリオキシエチレン硬化ヒマシ油、ソルビタン高級脂肪酸エステル、ポリオキシエチレンソルビタン高級脂肪酸エステル等が挙げられる。これらは1種又は2種以上で使用することができる。また、これらの乳化剤は市販品も使用できる。
【0042】特に、本発明では、ポリグリセリン縮合リシノレスン酸エステル(以下「PGCR」と略記する。)が最も好ましい。PGCRは特に限定されず、市販品を使用することもできる。PGCRは重合度により種別されており、例えばテトラグリセリン縮合リシノレイン酸エステル、デカグリセリン縮合リシノレイン酸エステル等があるが、いずれも本発明で用いることができる。これらも1種又は2種以上で使用することができる。
【0043】油性乳化剤を用いる場合の濃度は、用いる油性乳化剤の種類等に応じて適宜決定することができるが、通常は0.1〜50重量%程度、好ましくは1〜30重量%とすれば良い。かかる範囲内において、より優れた安定性を達成でき、これにより漏洩抑制効果の向上にも寄与することができる。
2.安定化W/O/Wエマルションの製造方法本発明の安定化W/O/Wエマルションの製造方法は、有用物質を含む第一水相が油相中に分散したW/Oエマルションを多孔質膜に透過させて第二水相中に分散させることにより、当該第一水相を内水相とし、当該第二水相を外水相とするW/O/Wエマルションを製造する方法であって、水性乳化剤として、炭素数18以上の脂肪酸とポリグリセリンとのエステルを第一水相及び/又は第二水相中に含有させることを特徴とするものである。
【0044】本発明方法では、第一水相及び第二水相の少なくともいずれか一方に上記水性乳化剤を含有させれば良い。特に、少なくとも第二水相に水性乳化剤を含有させることが好ましい。また、第二水相のみに水性乳化剤を含有させることも好ましい。上記乳化剤の種類及び濃度は、上記1と同様の内容に設定すれば良い。また、油相も、上記1と同様の内容に設定すれば良いまず、有用物質を含む第一水相が油相中に分散したW/Oエマルションは、公知の方法等に従って調製すれば良い。
【0045】第一水相には、有用物質を水に溶解又は分散させて調製できる。有用物質の種類及び濃度を前記した内容に従って設定すれば良い。また、第一水相には、必要に応じて浸透圧を調整するための物質を添加しても良い。このような物質としては、例えば食塩、塩化カルシウム、塩化マグネシウム、塩化鉄等の塩類、グルコース、ラクトース、デキストリン等の糖類のほか、グリセリン類等を用いることができる。
【0046】第一水相を油相中に乳化させる方法は限定的でなく、公知の乳化方法によって実施することができる。例えば、ホモミキサー、攪拌機、高圧ホモジナイザー、多孔質膜等を用いる方法が挙げられる。この場合、内水相となる粒子の平均粒径又は粒度分布は、W/O/Wエマルションの用途、使用目的等に合わせて適宜設定できるが、目的とするW/O/WエマルションのW/O液滴の平均粒径以下の平均粒径とすることが、漏洩抑制効果をより高めることができるので望ましい。
【0047】第一水相と油相との体積比は限定的でなく、用いる水性乳化剤又は油相の種類、目的とするW/O/Wエマルションの用途、使用目的等に応じて適宜設定することができる。
【0048】W/Oエマルションを調製する工程における温度条件も適宜設定すれば良いが、漏洩抑制効果をより高めるためには比較的低温で実施することが望ましい。具体的には、好ましくは0〜60℃程度、より好ましくは1〜30℃、最も好ましくは3〜10℃とする。
【0049】次いで、上記で得られたW/Oエマルションを多孔質膜に透過させて第二水相中に分散させることにより、当該第一水相を内水相とし、当該第二水相を外水相とするW/O/Wエマルションを得る。第二水相には、必要に応じて浸透圧を調整するための物質を添加しても良い。具体的には、第一水相に適用できるものと同様のものを使用できる。
【0050】多孔質膜による乳化方法自体は公知の膜乳化方法に従って行うことができる。例えば、特許第2106958号、特許第2733729号等に示された多孔質ガラス膜及び操作条件を適宜用いて乳化することができる。これらの多孔質膜は市販品を用いることもできる。
【0051】W/Oエマルションと第二水相との体積比は限定的でなく、用いるW/Oエマルションの種類、目的とするW/O/Wエマルションの用途、使用目的等に応じて適宜設定することができる。
【0052】また、第二水相においても、必要に応じて浸透圧を調整するための物質を添加しても良い。このような物質としては、例えば食塩、塩化カルシウム、塩化マグネシウム、塩化鉄等の塩類、グルコース、ラクトース、デキストリン等の糖類のほか、グリセリン類等を挙げることができる。
【0053】多孔質膜による乳化工程における温度条件は、用いる有用物質、外水相等の種類の応じて適宜設定すれば良いが、漏洩抑制効果をより高めるためには比較的低温で実施することが望ましい。具体的には、好ましくは0〜60℃程度、より好ましくは1〜30℃、最も好ましくは3〜10℃とする。
【0054】本発明では、上記のようにして得られたW/O/Wエマルションをさらに多孔質膜に透過させることもできる。透過させる回数は1回又は2回以上であっても良い。具体的には、多孔質膜を介して両側にW/O/Wエマルションを存在させ、一方側から他方側にエマルションを向かって透過させた後、一方側にそのエマルションを循環させ、ふたたび多孔質膜を透過させる方法を採用することができる。これにより、上記W/Oエマルションをより効果的に細分化することができる。
3.放出速度の制御方法本発明では、得られたW/O/Wエマルションの外水相に水性乳化剤を添加することによって、有用物質を積極的に外水相に放出させることもでき、しかもその放出速度を制御することができる。また、有用物質の放出開始時間の調整も行うことが可能である。
【0055】すなわち、本発明は、内水相に有用物質を含有し、かつ、外水相及び/又は内水相中に水性乳化剤を含有するW/O/Wエマルションにおいて、当該水性乳化剤が、炭素数18以上の脂肪酸とポリグリセリンとのエステルであることを特徴とするW/O/Wエマルションを用い、当該外水相に第二水性乳化剤(ただし、上記の水性乳化剤を除く。)をさらに添加することにより、有用物質の外水相への放出速度を制御する方法も包含している。
【0056】内水相、外水相及び油相、炭素数18以上の脂肪酸とポリグリセリンとのエステルである水性乳化剤等は、上記1又は2で示したものと同様のものを採用すれば良い。
【0057】本発明方法では、W/O/Wエマルションの調製後、その外水相に第二水性乳化剤を添加する。第二水性乳化剤としては、本発明乳化剤以外の水性乳化剤であれば何でも良く、公知又は市販の水性乳化剤の中から適宜採択することができる。例えば、本発明乳化剤以外のエステル類を用いることができる。特に、ポリグリセリンラウリン酸エステル、ショ糖ラウリン酸エステル、ショ糖ステアリン酸エステル、デカグリセリンカプリル酸エステル等のエステル類を好適に用いることができる。これらは1種又は2種以上で使用できる。
【0058】本発明方法では、第二水性乳化剤の種類又は添加量を適宜変えることによって、有用物質の放出速度、放出開始時間等の制御が可能となる。従って、例えば薬理活性成分を体内の特定臓器(肝臓、小腸等)に吸収させたい場合には、上記成分を内水相に含むW/O/Wエマルションを使用(経口使用等)する時点で第二水性乳化剤を所定量添加しておけば、その成分の放出開始時間及び放出速度を制御して所定の目的を達成することができる。
【0059】
【発明の効果】本発明によれば、水相に本発明乳化剤を適用するので、内水相中に存在する有用物質の外水相への漏洩を効果的に抑制ないしは防止することができる。このように安定したエマルションは、外相が水であること(すなわち、外水相を有すること)と相俟って応用範囲を拡大でき、内水相に封入する有用物質の選択により様々な製品を効率的に提供することが可能となる。
【0060】また、本発明では、第二水性乳化剤の使用により、有用物質の放出速度を制御することも可能であるため、例えば有用物質が徐放性を有するW/O/Wエマルションを提供することも可能である。このようなエマルションは、特に食品、医薬品等の分野をはじめとして、様々な用途への幅広い応用が期待される。
【0061】
【実施例】以下に実施例及び比較例を示し、本発明の特徴を一層明確にする。但し、本発明の範囲は、実施例の範囲に限定されるものではない。
【0062】実施例1〜5及び比較例1〜5紫甘藷からの抽出物をイオン交換樹脂で精製することにより、アントシアニンを主成分とするエキスを製造した。このエキスに蒸留水を加え、Brix(固形分%)50に調整して内水相とした。市販の大豆油90重量%及びポリグリセリン縮合リシノレイン酸エステル(商品名「CR−310」阪本薬品工業製)10重量%を混合して油相を調製した。蒸留水にグルコース10重量%と表1に示す水性乳化剤1重量%を熱溶解し、25℃に冷却したものを外水相とした。
【0063】上記油相3重量部に対して内水相1重量部を滴下しながらホモミキサー(商品名「PT−45」ポリトロン製)を用いて乳化分散させることにより、W/Oエマルションを得た。
【0064】なお、表1中の水性乳化剤は、それぞれ下記のものを使用した。
【0065】デカグリセリン・ステアリン酸エステル…商品名「SWA−10D」三菱化学フーズ製ヘキサグリセリン・ステアリン酸エステル…商品名「HS11」三菱化学フーズ製デカグリセリン・エルカ酸エステル…商品名「ER−30E」三菱化学フーズ製デカグリセリン・オレイン酸エステル…商品名「O−15D」三菱化学フーズ製デカグリセリン・オレイン酸モノエステル…商品名「MSW−750」阪本薬品工業製デカグリセリン・ラウリン酸エステル…商品名「L−7D」三菱化学フーズ製ショ糖ラウリン酸エステル…商品名「L−1695」三菱化学フーズ製ショ糖ステアリン酸エステル…商品名「S−1670」三菱化学フーズ製ヘキサグリセリン・ラウリン酸モノエステル…商品名「ML−500」阪本薬品工業製デカグリセリン・カプリル酸モノエステル…商品名「MCA−750」阪本薬品工業製次いで、上記W/Oエマルション4重量部を用い、多孔質ガラス膜(SPGテクノ製、平均孔径1.7μm)を介して上記外水相100重量部に圧入分散させ、25℃において膜乳化を行うことにより、W/O/Wエマルションを得た。
【0066】得られたエマルションについて漏洩率を調べた。W/O/Wエマルションを毎分5000回転で10分間遠心分離し、分離した外水相に含まれるアントシアニン濃度を測定し、その測定値を全量が漏洩したときのアントシアニン濃度に対する重量%を漏洩率とした。アントシアニン濃度は、1.25重量%トリフルオロ酢酸を加えたエチルアルコールで試料を希釈し、536nmの吸光度からシアニジン−3−クロライドを標準として算出した。各エマルションの漏洩率を表1にそれぞれ示す。
【0067】
【表1】

【0068】以上の結果より、比較例の漏洩率54%以上であるのに対し、実施例のエマルションは漏洩率が25%以下と低いことがわかる。これより、本発明W/O/Wエマルションは、漏洩抑制効果に優れていることがわかる。
【0069】実施例6〜9及び比較例6〜11市販のカラメル色素(商品名「コクヨカラメルS」池田糖化製)100重量部に対し、蒸留水100重量部を加えて内水相(1)を調製した。これとは別に、合成着色料赤102号を蒸留水で1%水溶液としたものを内水相(2)とした。市販の大豆油90重量%とPGCR10重量%とを混合して油相を調製した。また、蒸留水にグルコース10重量%及び表2に示す割合(重量%)で水性乳化剤をそれぞれ加熱溶解し、25℃に冷却することにより、外水相を調製した。
【0070】上記油相3重量部に対して内水相1重量部を滴下しながらホモミキサー(商品名「PT−45」ポリトロン製)を用いて乳化分散させることにより、W/Oエマルションを得た。
【0071】なお、表2中の水性乳化剤は、それぞれ下記のものを使用した。
【0072】デカグリセリン・ステアリン酸エステル…商品名「SWA−10D」三菱化学フーズ製ヘキサグリセリン・ステアリン酸エステル…商品名「HS11」三菱化学フーズ製デカグリセリン・ラウリン酸エステル…商品名「L−7D」三菱化学フーズ製ショ糖ラウリン酸エステル…商品名「L−1695」三菱化学フーズ製ショ糖ステアリン酸エステル…商品名「S−1670」三菱化学フーズ製次いで、上記W/Oエマルション4重量部を用い、多孔質ガラス膜(SPGテクノ製、平均孔径4.7μm)を介して上記外水相100重量部に圧入分散させ、25℃において膜乳化を行うことにより、W/O/Wエマルションを得た。
【0073】得られたエマルションについて漏洩率を調べた。W/O/Wエマルションを毎分5000回転で10分間遠心分離し、分離した外水相の吸光度を測定し、全量が漏洩した濃度試料の吸光度に対する割合を求めた。吸光度は、カラメル色素を封入物質とした内水相(1)は284nmの吸光度、赤102号を封入物質とした内水相(2)は511nmの吸光度とした。
【0074】
【表2】

【0075】表2の結果より、比較例の漏洩率が58%以上であるのに対し、実施例では17%以下という低い漏洩率を維持できることがわかる。
【0076】試験例1精製アントシアニンを主成分とするエキスに蒸留水を加え、Brix(固形分%)50に調整したものを内水相とした。油相としては、実施例1と同じものを使用した。蒸留水にグルコース10重量%及びデカグリセリン・ステアリン酸エステル(商品名「SWA−10D」三菱化学フーズ製)1重量%を熱溶解し、25℃に冷却したものを外水相とした。
【0077】上記油相3重量部に対して内水相1重量部を滴下しながらホモミキサー(商品名「PT−45」ポリトロン製)を用いて乳化分散させることにより、W/Oエマルションを得た。
【0078】さらに、上記W/Oエマルション4重量部を用い、多孔質ガラス膜(SPGテクノ製、平均孔径1.7μm)を介して上記外水相100重量部に圧入分散させ、25℃において膜乳化を行うことにより、W/O/Wエマルションを得た。
【0079】得られたW/O/Wエマルションを3分割し、それぞれの外水相に対し、第二水性乳化剤としてショ糖ラウリン酸エステル(商品名「L−1695」三菱化学フーズ製)を0.1重量%、0.3重量%及び0.5重量%の濃度となるようにそれぞれ添加した。添加1時間後に外水相をそれぞれ採取し、実施例1と同様にして漏洩率を求めた。その結果を図1に示す。
【0080】図1の結果より、第二水性乳化剤の添加量の増加に伴ってアントシアニンの漏洩率が増加することが確認できる。表1及び表2の結果を併せると、水性乳化剤「SWA−10D」は漏洩抑制効果を示し、第二水性乳化剤「L−1695」は漏洩抑制効果がほとんどないことがわかる。すなわち、漏洩抑制効果を示す水性乳化剤を使用して調製した安定化W/O/Wエマルションから有効成分を任意の時間に放出させる場合には、上記「L−1695」のような漏洩抑制効果のない水性乳化剤を添加することにより放出を開始させることができる。この場合には、第二水性乳化剤の添加量を調節することにより放出速度を制御することも可能である。
【出願人】 【識別番号】391011700
【氏名又は名称】宮崎県
【識別番号】395018354
【氏名又は名称】社団法人宮崎県ジェイエイ食品開発研究所
【出願日】 平成13年11月29日(2001.11.29)
【代理人】 【識別番号】100065215
【弁理士】
【氏名又は名称】三枝 英二 (外8名)
【公開番号】 特開2003−164754(P2003−164754A)
【公開日】 平成15年6月10日(2003.6.10)
【出願番号】 特願2001−364337(P2001−364337)