| 【発明の名称】 |
油脂類の処理方法 |
| 【発明者】 |
【氏名】中条 克彦 【住所又は居所】神奈川県横浜市磯子区新杉田8番地 株式会社東芝横浜事業所内
【氏名】村松 武彦 【住所又は居所】神奈川県横浜市磯子区新杉田8番地 株式会社東芝横浜事業所内
【氏名】前沢 幸繁 【住所又は居所】神奈川県横浜市磯子区新杉田8番地 株式会社東芝横浜事業所内
【氏名】今 雅夫 【住所又は居所】神奈川県横浜市磯子区新杉田8番地 株式会社東芝横浜事業所内
【氏名】轟木 朋浩 【住所又は居所】神奈川県横浜市磯子区新杉田8番地 株式会社東芝横浜事業所内
【氏名】西澤 克志 【住所又は居所】神奈川県川崎市川崎区浮島町2番1号 株式会社東芝浜川崎工場内
【氏名】小原 敦 【住所又は居所】神奈川県川崎市川崎区浮島町2番1号 株式会社東芝浜川崎工場内
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| 【要約】 |
【課題】従来困難であった低濃度のポリ塩化ビフェニル類のような芳香族ハロゲン化合物に汚染された鉱物油などの油脂類から、芳香族ハロゲン化合物を効率的に分離回収する処理方法を提供する。
【解決手段】芳香族ハロゲン化合物汚染油脂類を固体酸からなる吸着剤に接触させて、前記油脂類中の芳香族ハロゲン化合物を吸着させる工程と、前記吸着剤を有機溶媒と接触させて、前記吸着剤に吸着された前記芳香族ハロゲン化合物を前記有機溶媒へ抽出する工程とからなることを特徴とする油脂類の処理方法である。 |
【特許請求の範囲】
【請求項1】芳香族ハロゲン化合物を含有する油脂類を固体酸からなる吸着剤に接触させて、前記芳香族ハロゲン化合物を前記吸着剤に吸着させる吸着工程と、前記吸着剤を有機溶媒と接触させて、前記吸着剤に吸着された前記芳香族ハロゲン化合物を前記有機溶媒へ抽出する工程とからなることを特徴とする油脂類の処理方法。 【請求項2】前記吸着工程の前に、芳香族ハロゲン化合物を含有する汚染油脂類を酸処理する工程を有することを特徴とする油脂類の処理方法。 【請求項3】前記固体酸の酸性度(ルイス酸+ブレンステッド酸)が0.1mmol/g以上、1mmol/g以下で、かつ、前記固体酸の酸強度(ルイス酸+ブレンステッド酸)が+4.0以下であることを特徴とする請求項1または請求項2に記載の油脂類の処理方法。 【請求項4】前記固体酸が、金属酸化物、金属珪素複合酸化物、金属硫化物、金属塩化物、硫酸塩、リン酸塩、珪酸塩、合成ゼオライト(モレキュラーシーブ)、シリカゲル、へテロポリ酸、活性炭、粘土鉱質、H3PO4含有珪藻土、陽イオン交換樹脂から選ばれた少なくとも1種類であることを特徴とする請求項3に記載の油脂類の処理方法。
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【発明の詳細な説明】【0001】 【発明の属する技術分野】本発明は、油脂類の処理方法に係わり、特に、分離が困難な鉱物油中の低濃度ポリ塩化ビフェニル類(PCB)などの選択的に分離し、濃縮もしくは回収などの処理に好適な油脂類の処理方法に関する。 【0002】 【従来の技術】芳香族ハロゲン化合物は揮散移動性を有しており、様々な環境媒体中に広い濃度範囲で存在している。このような特徴を有する芳香族ハロゲン化合物を燃焼法および化学処理法で効率的に処理するためには、その存在する環境媒体から芳香族ハロゲン化合物のみを選択的に分離・回収することが重要となる。特に油脂類にppmオーダーという低濃度で存在している芳香族ハロゲン化合物の処理は、媒体と高い親和性を有する芳香族ハロゲン化合物の選択的な分離回収が困難であるため、その実質的処理量は膨大なものとなりエネルギー的に極めて非効率になる。芳香族ハロゲン化合物汚染油から親油性物質である芳香族ハロゲン化合物を選択的に分離回収する方法としては蒸留法および液−液抽出法が従来技術として挙げられる。蒸留法では、鉱物油などでは、芳香族ハロゲン化合物と沸点が近いために、精度欲ハロゲン化合物を回収することが困難であった。また、液−液抽出法は、例えばUSP4,405,448に開示されており、油脂類(液体)中の芳香族ハロゲン化合物を非プロトン性極性溶媒へ抽出する第1工程と、油脂類と抽出した芳香族ハロゲン化合物を含有する非プロトン性極性溶媒とを分離する第2工程を得た後、分離した非プロトン性極性溶媒中の芳香族族ハロゲン化合物の濃度を高めている。しかしながら、第2工程での二つの液体を簡便に分離することはできないため、油脂類中に残存する芳香族ハロゲン化合物の量が多くなったり、分離した他の液体中に油脂類が混入したりするという問題があった。 【0003】 【発明が解決しようとする課題】本発明は、低濃度のポリ塩化ビフェニル類のような芳香族ハロゲン化合物を含有した鉱物油などの油脂類を、油脂類と芳香族ハロゲン化合物とに簡便に、精度良く分離する油脂類の処理方法を提供することを目的とする。 【0004】 【課題を解決するための手段】本発明は、PCBなどの芳香族ハロゲン化合物含有油脂類を吸着剤に連続的に接触させることにより、油脂類中の芳香族ハロゲン化合物を選択的に吸着分離する工程と吸着剤から有機溶媒へ芳香族ハロゲン化合物を抽出・濃縮する工程によって油脂類中に含まれる芳香族ハロゲン化合物を回収する技術について種々検討した結果なされたものである。 【0005】本発明は、芳香族ハロゲン化合物を含有する油脂類を固体酸からなる吸着剤に接触させて、前記芳香族ハロゲン化合物を前記吸着剤に吸着させる吸着工程と、前記吸着剤を有機溶媒と接触させて、前記吸着剤に吸着された前記芳香族ハロゲン化合物を前記有機溶媒へ抽出する工程とからなることを特徴とする油脂類の処理方法である。 【0006】前記本発明において、前記吸着工程の前に、芳香族ハロゲン化合物を含有する汚染油脂類を酸処理することができる。これによって、油脂中に含まれている芳香族ハロゲン化合物の吸着阻害となる極性物質を分解処理できる。また、前記本発明において、前記固体酸の酸性度(ルイス酸+ブレンステッド酸)が0.1mmol/g以上、1mmol/g以下で、かつ、前記固体酸の酸強度(ルイス酸+ブレンステッド酸)が+4.0以下であることが望ましい。 【0007】さらに、前記本発明において、前記固体酸が、金属酸化物、金属珪素複合酸化物、金属硫化物、金属塩化物、硫酸塩、リン酸塩、珪酸塩、合成ゼオライト(モレキュラーシーブ)、シリカゲル、へテロポリ酸、活性炭、粘土鉱質、H3PO4含有珪藻土、陽イオン交換樹脂から選ばれた少なくとも1種類であることが望ましい。 【0008】本発明において処理することのできる油脂類としては、芳香族ハロゲン化合物によって汚染された鉱物油、植物油、あるいは動物油など、その由来にとらわれず、常温もしくは加熱によって液状を呈する油脂であれば処理可能である。具体的には、石油、軽油、重油などの鉱物油、オリーブ油、綿実油、採種油、アマニ油、ヤシ油、キリ油などの植物油、牛脂、骨油、鯨油、魚油、肝油などの動物油が挙げられる。また、本発明は、100℃程度の温度で液状となる油脂に適用することもできる。具体的には、ワックス、ショートニングなどが挙げられる。これらの油脂類は、脂肪酸グリセリントリエステルを主成分とするもの、遊離脂肪酸、長鎖アルコール、炭化水素などを成分とするものである。これらの油脂類は、トランス油、コンデンサ油などの電気絶縁油、切削油、潤滑油、熱媒体、塗料、食用油、燃料油などとして用いられるものである。 【0009】これらの油脂類に含有される汚染物質の量としては、0.5ppm〜10000ppmの範囲のものが適切である。汚染物質の含有量が前記範囲を下回った場合、単位時間当たりの回収効率が低下し、実用的ではない。一方汚染物質の含有量が前記範囲を上回った場合、回収率が低下し、汚染物質濃度を所望の範囲にまで低下されるためには長時間の処理を要し、実用的ではない。 【0010】本発明で処理するのに適した汚染物質は、芳香族ハロゲン化合物であって、難燃性で、自然界において分解されることが無く、動植物に影響を及ぼす可能性のある物質であり、具体的には、ポリ塩化ビフェニル類、ポリ塩化ジベンゾパラジオキシン類(PCDDs)、ポリ塩化ジベンゾフラン類(PCDFs)、ヘキサクロロベンゼン(HCB)などが挙げられる。 【0011】 【発明の実施の形態】[第1の実施の形態]以下に本発明の第1の実施の形態について詳しく説明する。本実施の形態の処理方法は、芳香族ハロゲン化合物の吸着工程、および芳香族ハロゲン化合物の抽出工程からなっている。 【0012】1.吸着工程まず最初の工程は、芳香族ハロゲン化合物で汚染された油脂類を固体酸からなる吸着剤と接触させて芳香族ハロゲン化合物を選択的に吸着剤に吸着させる工程である。すなわち、例えば、0.5ppm〜数1000ppmのポリ塩化ビフェニル類を含有した鉱物油などの油脂類を固体酸に連続的に接触させ、選択的にポリ塩化ビフェニル類などの芳香族ハロゲン化合物を吸着剤に吸着させる。 【0013】この吸着工程における処理温度は、20℃〜100℃の範囲が好ましい。吸着温度がこの範囲を下回った場合、油脂類の粘度が上昇して取り扱いが困難になるばかりではなく、油脂類の流動性が失われるために芳香族ハロゲン化合物汚染物質の除去率が低下する。一方、温度が前記範囲を上回った場合、油脂類の酸化などの変質や、芳香族ハロゲン化合物の気化などが発生し、処理環境の制御が困難になる。 【0014】被処理油脂類と吸着剤とを接触させる吸着時間は、油脂類の粘度、被処理油脂類と吸着剤との混合比率、吸着剤表面の性状などの要因によって異なるが、通常30分〜48時間程度の範囲で選択される。吸着時間がこの範囲を下回った場合、芳香族ハロゲン化合物の除去率が低下し、一方、吸着時間がこの範囲を上回った場合は、工程の時間がかかる割には除去率改善の効果が見られず、不経済である。 【0015】吸着操作に関しては特に限定されないが、接触濾過法、流動層吸着法、固定層吸着法、移動層吸着法など吸着操作法として公知の連続式あるいはバッチ式の方法を使用することができる。連続式によって吸着処理を行う場合には、吸着剤を充填した容器に被処理油脂類を注入して吸着剤と被処理油脂類とを接触させながら処理することができる。また、バッチ式によって吸着処理を行う場合には、容器中に吸着剤を配置し、この容器に被処理油脂類を添加し、必要に応じて撹拌装置によって攪拌を行いながら、所定の時間吸着剤と被処理油脂類を接触させ吸着させる。いずれの方法においても、芳香族ハロゲン化合物の吸着は、吸着剤と被処理油脂類の接触によって生じることになるので、接触を促進させるように維持管理することが重要である。 【0016】(吸着剤材料)本発明で使用する吸着剤は固体酸を含有しており、固体酸が陽子供与体または、電子受容体として働くことで、芳香族ハロゲン化合物を選択的に吸着する。具体的には、金属酸化物、金属珪素複合酸化物、金属硫化物、金属塩化物、硫酸塩、リン酸塩、珪酸塩、合成ゼオライト(モレキュラーシーブ)、シリカゲル、へテロポリ酸、活性炭、粘土鉱質、H3PO4含有珪藻土、陽イオン交換樹脂などの固体酸を用いることができる。これらの固体酸は、単独で用いても良いし、複数の固体酸を混合して用いても良い。前記金属酸化物としては、アルミナ、酸化マグネシウムなどが適している。また、金属珪素複合酸化物としては、シリカマグネシア、シリカボリア、シリカ酸化ニッケル、シリカジルコニアが適している。また、金属硫化物としては、硫化亜鉛(ZnS)などが適している。また、金属塩化物としては、塩化アルミニウム、塩化銅などが適している。また、硫酸塩としては、硫酸ニッケル、硫酸銅などが適している。また、リン酸塩としては、リン酸アルミニウム、リン酸チタニウムなどが適している。また、珪酸塩としては、珪酸カリウム、珪酸セシウム、珪酸カルシウムなどが適している。粘度鉱質としては酸性白土、モンモリロナイトなどが適している。前記固体酸においては、適切な表面改質処理を施すことで酸性度および酸強度を調節することができる。例えば、ゼオライトは加熱処理温度(200℃〜900℃)を施すことでブレンステッド酸点およびルイス酸点の量を調節できる。活性炭はスルホン化または硝酸酸化によりその表面にスルホン基またはカチオン交換基(フェノール性水酸基およびカルボキシル基などの表面酸性活性基)を導入することができる。また、400℃の空気酸化によっても、濃硝酸処理と同程度の酸性基を生成することができる。 【0017】いずれの材料を用いるにしても、その固体酸の酸性度(ルイス酸+ブレンステッド酸)は、0.1mmol/g以上、1mmol/g以下の範囲内に、また、固体酸の酸強度(ルイス酸+ブレンステッド酸)の値が+4.0以下であることが望ましい。この酸性度とは、固体表面の酸点あるいは酸性中心の数を測定したものであり、その測定方法は、無極性溶媒中の固体酸をアミン類で滴定することによって測定することができる。また、この強酸度とは、固体表面の酸点が塩基にプロトンを与える能力あるいは塩基から電子対を受け取る能力であり、その測定は、Pkaの知れた種々の酸塩基変換指示薬を使用して行うことができる。前記吸着剤の酸性度が前記範囲を下回った場合、著しい吸着効率の低下の問題が有り、一方吸着剤の酸性度が前記範囲を上回った場合、油脂類中の共存成分と芳香族塩素化合物の競争的吸着反応による選択的吸着能の低下の問題が生じるおそれがある。また、吸着剤の強酸度が、前記範囲を下回った場合、芳香族塩素化合物中の塩基との極性相互作用の低下つまりは吸着強度低下の問題が生じる恐れがある。 【0018】(吸着剤の構造)本発明で用いられる吸着剤は、平均粒径が、10〜1000μmの範囲の粒子状のものが好ましい。平均粒径が前記範囲を下回った場合、取り扱いが困難であるばかりでなく、吸着処理において吸着剤と被処理油脂類との接触が困難となり回収効率が低下する恐れがある。一方、平均粒径が前記範囲を上回った場合、吸着剤の比表面積が低下し、所要容積の油脂類を処理するために必要な吸着剤量が増大する傾向にある。また、吸着剤表面は、多孔質であることが好ましい。好ましい比表面積は、10〜3000m2/gの範囲のものが好ましい。この比表面積が、前記範囲を下回った場合、吸着効率が低下し、一方、比表面積が前記範囲を上回った場合、前記範囲の吸着剤に比べ製造が極めて困難なため、汎用性に欠ける。また、吸着剤粒子の機械的強度が低下して、作業性が悪化するため好ましくない。 【0019】塩素置換数の少ないポリ塩化ビフェニル類に対しては珪酸マグネシウムを、また平面構造を有するポリ塩化ビフェニル類に対しては活性炭を使用するのが好ましい。 【0020】(処理した油脂類の性状)この工程である吸着処理を行った後、吸着剤と被処理油脂類とを分離することで、我が国の環境基準濃度以下(0.5mg−PCB/kg−oil以下)まで被処理油脂類中の芳香族ハロゲン化合物を除去することも可能となり、鉱物油などの油脂類は非汚染油として回収、再利用が可能となる。再利用の用途としては、燃料油への使用に限らず、精製処理を施すことで電気絶縁油などとしても利用することができる。なお、固体の吸着剤と液体の被処理油脂類とは、ろ過などの簡便な作業で精度良く分離することが可能である。 【0021】2. 抽出工程被処理油脂類と分離された後、吸着工程で処理に用いた吸着剤は、有機溶媒で処理し、芳香族ハロゲン化物を吸着剤から分離することによって芳香族ハロゲン化合物を抽出することができる。この工程においては、芳香族ハロゲン化合物を吸着した吸着剤と有機溶媒とを接触させて、吸着剤に吸着されている芳香族ハロゲン化合物を有機溶媒で溶解し、その結果吸着剤から芳香族ハロゲン化合物が分離する。この抽出工程においては、ソックレー抽出機など、連続式あるいはバッチ式の公知の抽出装置を用いることができる。吸着剤と有機溶媒との接触時間は、5分ないし2時間の範囲で行うことが、抽出効率の点から好ましい。抽出後の芳香族ハロゲン化合物を、溶解した有機溶媒を蒸発分離することにより、芳香族ハロゲン化合物を濃縮することができる。なお、有機溶媒を蒸発する前に、吸着剤を有機溶媒から除去することが望ましい。 【0022】本発明で使用する有機溶媒は、ハロゲン化合物を溶解するものであれば特に限定はされないが、ヘキサン、石油エーテルなどの不活性無極性溶媒、アセトン、アセトニトリル、ジメチルスルホキシド(DMSO)、N,N−ジメチルホルムアミド(DMF)などの非プロトン性極性溶媒、エタノール、メタノール、プロパノール、2−プロパノール、ブタノール、2−ブタノールなどの低級アルコールを使用することができる。前記の溶媒は単独で使用しても、2種以上を混合して使用してもよい。好ましくは、回収後の芳香族ハロゲン化合物の濃縮が容易な低沸点の有機溶媒を使用する。 【0023】この工程によって、吸着剤上の芳香族ハロゲン化合物は有機溶媒により抽出・濃縮され、有機溶媒中に数%〜30%程度の濃度で回収することができる。こうして得られる芳香族ハロゲン化合物は、高濃度で得られるため、公知の方法によって効率よく燃焼、化学分解などの方法により無害化処理することができる。 【0024】[第2の発明の実施の形態]本発明の第2の実施の形態は、本発明の吸着処理および抽出処理に先立って、酸による前処理を行うものである。すなわち、本発明における吸着工程に先だって、被処理油脂類に対して濃硫酸、混酸(濃硫酸と濃硝酸の混合物)または発煙硫酸と濃硫酸との混合物などによる化学処理を行うことができる。この化学処理を行なうことで、主に油脂類の劣化により生成し、芳香族ハロゲン化合物の吸着阻害となり得る色素成分、油脂酸化物、多環芳香族炭化水素、不飽和炭化水素、フタル酸エステル類などの極性物質を分解処理できる。すなわち、長期使用または長期保管により劣化が進んだ油脂中の芳香族ハロゲン化合物に対しても効果的な吸着処理が可能となる。さらに、混酸(濃硫酸+濃硝酸)または発煙硫酸による化学処理は、芳香族ハロゲン化合物のニトロ化またはスルホン化を惹起させる。芳香族ハロゲン化合物にニトロ基やスルホン基が付加することで、吸着剤との極性相互作用が強化され、油脂類中の芳香族ハロゲン化合物の吸着効率向上が可能となる。前記濃硫酸と濃硝酸の混合比および発煙硫酸濃度は特に限定されるものではないが、混酸は濃硫酸と濃硝酸の容積比が1:1ないし3:1の混酸、発煙硫酸は濃硫酸で希釈した6〜8%の三酸化硫黄の発煙硫酸が好ましい。この前処理による芳香族ハロゲン化合物のニトロ化及びスルホン化は、芳香族ハロゲン化合物の中でも極性の偏りが低い高塩素化された芳香族ハロゲン化合物の吸着に対して特に有効である。 【0025】この前処理は、被処理油脂類と酸とを混合し、攪拌することにより行われる。前処理の時間は、10分ないし1時間が適当である。また、温度は、10℃〜60℃の範囲が好ましい。混合の比率は、油脂類100質量部に対して、前記酸1〜20質量部の範囲が好ましい。 【0026】本実施の形態において、前処理としての酸処理後、被処理油脂と混酸とは静置などの手段により分離され、鉱物油などの油脂類に残留している酸は、純水による洗浄及び脱水処理により除去される。以降、前記第1の実施の形態と同様にして、吸着処理および抽出処理を行うことができる。 【0027】 【実施例】以下実施例により本発明をさらに説明するが、本発明はこれらの実施例に何ら制約されるものではない。 (実施例1)本実施例はA:吸着処理、B:抽出処理から成り、いずれも下記の試験条件下で接触濾過法を用いて行った。まず、処理対象物としては、電気絶縁油(鉱物油)200gとPCB(KC‐300)0.096g(ポリ塩化ビフェニル類濃度としては、480ppmに相当。)とを混合して処理対象試料とした。次に、吸着剤として、珪酸マグネシウム3g(粒経が200μm、比表面積が130.6m2/gのもの)を、へキサンにより洗浄後、120℃で4時間乾燥させて活性化させて用いた。反応温度は25℃、および反応圧力としては、常圧で行った。また、反応時間は、吸着処理時間を、48時間、抽出処理時間を2時間とした。 【0028】A:吸着処理25℃に調節済みの恒温水槽中の三口フラスコに、PCB含有電気絶縁油200g、珪酸マグネシウム3gを加えて、攪拌機を用いて、攪拌速度が300rpm以上で充分に攪拌した。48時間の攪拌後、吸引濾過装置により珪酸マグネシウムと絶縁油を固液分離し、99.9%以上の液体成分(絶縁油)を回収した。また、絶縁油10mlを採取、高分解能質量分析器付きのガスクロマトグラフィーにより絶縁油中のポリ塩化ビフェニル類の濃度を測定した。 【0029】B:抽出処理吸引濾過により回収された珪酸マグネシウムを、フラスコ中のn−へキサン100mlに加え、振とう攪拌機により2時間、充分攪拌した。攪拌後、吸引濾過装置により、珪酸マグネシウムとn−へキサンを分離し、n−へキサン中のポリ塩化ビフェニル類濃度を高分解能質量分析器付きのガスクロマトグラフィーにより測定した。 【0030】本実施例の実験結果を図1および表1に示す。この結果から、珪酸マグネシウムによる吸着で絶縁油中ポリ塩化ビフェニル類の除去率が87%に達し、絶縁油中ポリ塩化ビフェニル類吸着における珪酸マグネシウムの有効性が確認できた。表1中の除去率は、被処理油脂類に含有されていた芳香族ハロゲン化合物汚染物質の量と、この処理前の汚染物質の量から処理後の油脂類に残存している汚染物質の量を減じた汚染物質の量、すなわち本発明の処理によって除去された汚染物質の量との比であり、また回収率は、処理後の有機溶媒中に含有されている汚染物質の量と、処理前の比処理油脂類に含有されていた汚染物質の量との比である。 【0031】(実施例2〜4)酸性度および酸強度が本発明の範囲内であるシリカ・アルミナを用いたこと以外には、実施例1と同様の処理条件で、ポリ塩化ビフェニル類含有廃油を用いて、吸着処理および抽出処理を行なった。 【0032】(実施例5〜6)吸着剤を種々変更したこと以外には、実施例1〜4と同様の処理条件で、ポリ塩化ビフェニル類含有廃油を用いて、吸着処理および抽出処理を行った。この比較例で用いた吸着剤を表1に示す。その結果、表1に示すように、酸性度および強酸度が本発明の範囲に入らない吸着剤を用いた場合には、被処理油脂類中の芳香族ハロゲン化合物の除去率がいずれも実施例1〜4の結果をわずかに下回ることがわかった。 【0033】 【表1】
【0034】(実施例7)吸着工程に先だって前処理として、混酸処理を施したポリ塩化ビフェニル類含有絶縁油を用いて、前記実施例1〜6と同様に吸着処理および抽出処理を行なった。混酸による化学処理については、混酸(濃硫酸30ml+濃硝酸10ml)40mlを前記ポリ塩化ビフェニル類含有絶縁油に添加して、分液漏斗で振り混ぜ、混酸が淡黄色に着色するまで操作を続けた(約20分間)。ここで混酸分離後の絶縁油には、微量の混酸が残留しているため、純水による洗浄および無水硫酸ナトリウムによる脱水処理を施した。なお、使用後の純水および混酸中のポリ塩化ビフェニル類濃度は全て環境基準をクリアしていることを確認した。 【0035】この吸着工程の前処理として混酸処理を施すことで、絶縁油中ポリ塩化ビフェニル類除去率は、97%にまで達した。塩素置換数が4以上のポリ塩化ビフェニル類除去率が向上していることから、前処理による妨害除去やポリ塩化ビフェニル類のニトロ化が高塩素化ポリ塩化ビフェニル類の吸着に特に効果的であることが示された。ポリ塩化ビフェニル類回収率に関しても、「吸着処理」および「化学処理+吸着処理」の両条件で95%以上と高く、本発明による絶縁油中ポリ塩化ビフェニル類の濃縮・回収が確認された。これらの結果を図1のグラフに示す。図1は、電気絶縁油中に含まれるPCBの濃度と、吸着処理を行った電気絶縁油中に含まれるPCBの濃度、および酸処理である化学処理を行った電気絶縁油中に含まれるPCBの濃度を測定した結果である。図中の1ないし10の数値は、含有しているPCBの塩素置換数を表している。この結果から明らかなように本発明の処理によって、効率的に絶縁油からPCBが除去できていることが明らかとなった。 【0036】 【発明の効果】本発明によれば、低濃度の芳香族ハロゲン化合物からなる汚染物質を含有する油脂類から、簡単な方法によって効率よく芳香族ハロゲン化合物汚染物を除去し、汚染物質を高濃度に回収することができる。また、これにより汚染物質の無害化処理に適した回収方法を実現することができる。
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| 【出願人】 |
【識別番号】000003078 【氏名又は名称】株式会社東芝 【住所又は居所】東京都港区芝浦一丁目1番1号
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| 【出願日】 |
平成14年2月5日(2002.2.5) |
| 【代理人】 |
【識別番号】100088487 【弁理士】 【氏名又は名称】松山 允之 (外1名)
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| 【公開番号】 |
特開2003−225507(P2003−225507A) |
| 【公開日】 |
平成15年8月12日(2003.8.12) |
| 【出願番号】 |
特願2002−28370(P2002−28370) |
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