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【発明の名称】 抗菌性エアフィルタろ材およびこれを用いたフィルタユニット
【発明者】 【氏名】前岡 拓也
【住所又は居所】大阪府茨木市下穂積1丁目1番2号 日東電工株式会社内

【氏名】川野 栄三
【住所又は居所】大阪府茨木市下穂積1丁目1番2号 日東電工株式会社内

【要約】 【課題】水が豊富な環境においてもフィルタ性能が維持され、かつこのような環境下で細菌やかびの繁殖を抑制できる抗菌性フィルタろ材を提供する。

【解決手段】少なくとも1層のポリテトラフルオロエチレン多孔質膜と、少なくとも1層の抗菌性の補強材とを含むエアフィルタろ材とする。このろ材は、水洗後や高湿度な環境下で使用しても粒子捕集効率などのフィルタ特性が低下せず、しかも細菌やかびの繁殖を抑制できるものとなる。補強材にさらに着色処理を施して汚れを目立たなくしてもよい。
【特許請求の範囲】
【請求項1】 少なくとも1層のポリテトラフルオロエチレン多孔質膜と、少なくとも1層の抗菌性の補強材とを含むことを特徴とする抗菌性エアフィルタろ材。
【請求項2】 補強材の少なくとも1層が着色処理された請求項1に記載の抗菌性エアフィルタろ材。
【請求項3】 請求項1または2に記載の抗菌性エアフィルタろ材を用いたフィルタユニット。
【発明の詳細な説明】【0001】
【発明の属する技術分野】本発明は、抗菌性のエアフィルタろ材およびこれを用いたフィルタユニットに関するものである。
【0002】
【従来の技術】食品、医薬品などの製造施設や病院では、製品の品質確保や衛生面の要請から、かびや細菌などの微生物が除去された清浄度の高い空間が必要とされている。一般家庭においても、生活空間に浮遊する細菌やかびの除去に対する関心が高まっている。細菌やかびは、エアフィルタで捕捉できるが、捕捉された細菌などがフィルタ内で繁殖し、再飛散したり悪臭を発することがある。このため、エアフィルタろ材に抗菌性を付与することが提案されている。
【0003】例えば、特開昭62−42715号公報には、抗菌性の不織布とエレクトレット不織布とを積層したろ材が開示されている。特開昭62−42716号公報には、抗菌剤加工を施したエレクトレット不織布ろ材が開示されている。特開平5−92113号公報には、アクリル系のバインダーを用いて抗菌性ゼオライトを付着させたガラス繊維ろ材が開示されている。
【0004】
【発明が解決しようとする課題】しかし、上記従来のろ材は、高湿度下での使用や、水がフィルタにかかりやすい環境における使用には適していない。例えば、定期的に洗浄が行われる食品製造施設では、洗浄水がフィルタろ材にかかり、ガラス繊維ろ材の繊維が加水分解したり、エレクトレットフィルタの性能が大きく低下することがある。水が豊富な環境は、通常、微生物が繁殖しやすい条件を備えているから、かかる環境においてもフィルタ性能を維持できる抗菌性ろ材の必要性は高い。
【0005】そこで、本発明は、水が豊富な環境においてもフィルタ性能を維持できる抗菌性フィルタろ材およびこれを用いたフィルタユニットを提供することを目的とする。
【0006】
【課題を解決するための手段】上記目的を達成するために、本発明の抗菌性エアフィルタろ材は、少なくとも1層のポリテトラフルオロエチレン(以下、「PTFE」という)多孔質膜と、少なくとも1層の抗菌性の補強材とを含むことを特徴とする。この抗菌性エアフィルタろ材は、PTFE多孔質膜を抗菌性補強材とともに用いているため、高湿度下での使用や水洗を経てもフィルタ性能を維持できる抗菌性ろ材となる。このろ材では、補強材の少なくとも1層が着色処理されていることが好ましい。本発明のフィルタユニットは、上記抗菌性エアフィルタろ材を用いたことを特徴とする。
【0007】
【発明の実施の形態】以下、本発明の好ましい実施形態について説明する。図1および図2は、それぞれ本発明の濾材の一例を示す断面図である。図1に示した形態では、PTFE多孔質膜1の上下に、一対の抗菌性補強材2が配置されており、図2に示した形態では、PTFE多孔質膜の一方の面に、抗菌性補強材2が配置されている。図1に示した形態では、双方の補強材2を抗菌性とすることが好ましいが、いずれか一方の補強材のみを抗菌性としてもよい。
【0008】補強材2の少なくとも1層には、着色処理を施すことが好ましい。捕集した塵埃によるろ材の変色を目立たなくするためである。特に、一般空調用のエアフィルタでは、大気塵による汚れの蓄積による変色が、使用者に不快感を与えることがあるが、予めろ材を着色しておくと、変色が目立たなくなる。図1に示した形態では、双方の補強材を着色することが好ましいが、いずれか一方の補強材のみを着色してもよい。また、一方の補強材を抗菌性とし、他方の補強材を着色処理してもよく、いずれか一方または双方の補強材を、抗菌性とするとともに着色処理してもよい。
【0009】抗菌性補強材としては、繊維の表面または内部に、抗菌剤を保有する繊維を用いた通気性の部材が適している。補強材の形状は、不織布、織布、ネットなどPTFE多孔質膜よりも通気性が高ければ特に限定はない。繊維としては、例えば、セルロース、ビスコースなどの半合成繊維、ポリエステル、ポリオレフィン、ポリアミド、アクリル、ポリスルフォン、ポリアミドイミド、ポリイミド、ポリフェニレンサルファイド、ポリ弗化ビニリデンなどの合成繊維を用いればよい。
【0010】抗菌剤にも特に限定はなく、無機系、有機系、天然性の抗菌剤をろ材の用途や目的に応じて、単独であるいは複合して使用することができるが、無機系抗菌剤であれば、銀イオン、銅イオン、亜鉛イオンを含有するものが、有機系であれば第4級アンモニウムイオンを含有するものが、天然系であればキトサンを含有するものが好ましい。
【0011】補強材の繊維に抗菌剤を保持する方法としては、例えば、含浸法、添着法、スプレー加工法などを用いることができる。これらの方法により、繊維表面に添着させたり、繊維の製造段階で練りこんだり、抗菌性を有するイオンを繊維にイオン交換で導入するとよい。
【0012】着色処理は、特に制限されないが、例えば、顔料、染料などの着色剤を補強材に混入してもよい。汚れを目立たなくするためには、補強材は、グレー系の色に着色することが好ましい。
【0013】PTFE多孔質膜1は、それ自体が撥水性を有しているから、水が豊富な環境下での使用に際して特に留意すべき点はなく、エアフィルタとしての性能を発揮できるものであれば、特に制限なく使用できる。PTFE多孔質膜の厚さは、5〜200μmが、平均孔径は0.1〜30μmが、気孔率は70〜95%が、圧力損失は50〜1000Pa(ただし透過流速5.3cm/秒とした後述する測定方法に基づく)がそれぞれ好適である。
【0014】PTFE多孔質膜と補強材との複合化の方法としては、例えば、補強材の原料繊維の融点およびPTFEの融点よりも低い融点を有するパウダーやウェブをPTFE多孔質膜と補強材との間に介在させて加熱する方法が挙げられる。補強材の原料繊維の融点がPTFEの融点よりも低ければ、補強材の繊維を溶融して複合化してもよい。また、PTFE多孔質膜と補強材とを接着剤を用いて複合化する方法を用いてもよい。この場合、接着剤としては、2液混合型や熱による自己架橋型の接着剤などを用いることができる。2液混合型としてはエポキシ樹脂、熱による自己架橋型としては酢酸ビニル−エチレン共重合体やエチレン−塩化ビニル共重合体などが好適である。
【0015】図3は、本発明のフィルタユニットの一例を示す斜視図である。PTFE多孔質膜と抗菌性の補強材とを含むエアフィルタユニットろ材3は、連続したW字状にプリーツ加工され、支持枠4(例えば、金属、プラスチック、繊維強化プラスチック、これらの複合材などの強度を有する材料から形成された枠材)内に収納されている。
【0016】このフィルタユニットでは、ろ材3の表面に筋状に設けられたスペーサ5を配置することにより、W字状にプリーツ加工されたろ材3相互が密接状態になるのを防止して、圧力損失の増加を抑制している。このスペーサには、プラスチック、金属など種々の材料を用いることができるが、ろ材の通気性を損なわない多孔質の材料が好ましい。なお、不織布、織布、プラスチックフィルムなどをプリーツのW字状間に配置してスペーサとすることもできる。そして、このフィルタユニットにより空気を清浄化するには、図中矢印Aに示した方向から送風するとよい。
【0017】
【実施例】以下、実施例を用いて本発明をさらに具体的に説明するが、本発明は以下の実施例に限定されるものではない。圧力損失、捕集効率、抗かび性の測定は、以下に示す方法により行った。
【0018】(圧力損失)サンプルを有効面積100cm2の円形のホルダーにセットし、上流側と下流側とに圧力差を与え、空気の透過速度を流量計で5.3cm/秒に調整したときの圧力損失を圧力計(マノメーター)で測定した。測定は1サンプルにつき10箇所行い、各測定値の平均をサンプルの圧力損失とした。
【0019】(捕集効率)圧力損失の測定と同一の装置を用い、空気の透過速度を5.3cm/秒に調整して、上流側に多分散ジオクチルフタレート(DOP)を粒径0.1〜0.2μmの粒子が約108個/リットルになるように供給し、上流側の粒子濃度とサンプルを透過してきた下流側の粒子濃度とをパーティクルカウンターで測定し、以下の式に基づいて捕集効率を求めた。
【0020】捕集効率(%)=(1−下流側粒子濃度/上流側粒子濃度)×100ただし、対象粒子は粒径0.1〜0.2μmの範囲のものとした。
【0021】(抗かび性能)JIS Z 2911に準じて測定した。予め調整された胞子懸濁液(湿式法4種混合)をシート状の検体に滴下し、7日間培養し、かびの発生の有無を観察した。増殖したかびが滴下面の面積全体の1/4を超えない状態を「抗かび性あり」、同面積全体の1/4を超えた状態を「抗かび性なし」と判定した。
【0022】(実施例1)ポリテトラフルオロエチレンファインパウダー(旭硝子社製フルオンCD−123)100重量部に対して液状潤滑剤(流動パラフィン)30重量部を均一に混合し、この混合物を20kg/cm2の条件で予備成形し、次いでこれをロッド状に押出成形し、さらにこのロッド状物を1対の金属製圧延ロール間に通して、厚さ0.2mmの長尺のシート状成形体を得た。次に、このシート状成形体から、ノルマルデカンを用いた抽出法により液状潤滑剤を除去した後、管状芯体にロール状に巻回した。
【0023】このシート状成形体をロール延伸法により長手方向に250℃で20倍に延伸し、さらにテンターを用いて幅方向に100℃で5倍で延伸して、未焼成状態のPTFE多孔質膜(厚さ15μm、平均孔径0.7μm、気孔率93%、圧力損失180Pa)を得た。この膜を380℃で30秒間加熱して焼成を行った。
【0024】こうして得たPTFE多孔質膜と積層させる補強材として、目付けが12g/m2の抗菌性不織布(ユニチカ社製T0123WGM)を用意した。この抗菌性不織布をPTFE多孔質膜の両面に配置して175℃のロールに沿わせることによりラミネートした。こうして得たPTFE多孔質膜エアフィルタろ材について、圧力損失および捕集効率の測定を行なった。さらに、このろ材について上記方法を適用して抗かび性試験を行った。結果を表1に示す。また、PTFE多孔質膜エアフィルタろ材を80℃、湿度90%の環境下に7日間放置して、圧力損失と捕集効率を測定した。結果を表2に示す。
【0025】(実施例2)実施例1と同様にして作製したPTFE多孔質膜と積層させる補強材として、目付けが30g/m2の抗菌性不織布(帝人社製ケミタックα)を用意した。この抗菌性不織布の片面に熱架橋型接着剤(住友化学工業社製S−900)を30g/m2塗布し、PTFE多孔質膜の一方の面に沿わせて175℃のロールに沿わせることによりラミネートした。こうして得たPTFE多孔質膜エアフィルタろ材について、実施例1と同様の特性評価を行った。結果を表1および表2に示す。
【0026】(比較例1)実施例1と同様にして作製したPTFE多孔質膜と積層させる補強材として、目付けが30g/m2の芯鞘構造を有する不織布(ユニチカ社製ELEVEST0303WDO)を用いた。この不織布は抗菌剤を保有していない。この不織布をPTFE多孔質膜の両面に配置して175℃のロールに沿わせることによりラミネートした。こうして得たPTFE多孔質膜エアフィルタろ材について、PTFE多孔質膜複合材の両面に上記不織布を配置し、175℃のロールに沿わせることによりラミネートした。こうして得たPTFE多孔質膜エアフィルタろ材について、実施例1と同様の特性評価を行った。結果を表1および表2に示す。
【0027】(比較例2)ポリプロピレン繊維不織布をエレクトレット化したフィルタろ材の片面に、目付が12g/m2の抗菌性不織布(ユニチカ社製T0123WGM)を140℃の熱ロールに沿わせて熱ラミネートした。こうして得たエアフィルタろ材について、実施例1と同様の特性評価を行った。結果を表1および表2に示す。
【0028】
(表1)
――――――――――――――――――――――――――――――― 圧力損失 捕集効率 抗かび性 (Pa) (%)
――――――――――――――――――――――――――――――― 実施例1 220 99.999 ○ 実施例2 250 99.999 ○ 比較例1 200 99.999 × 比較例2 300 99.995 ○ ――――――――――――――――――――――――――――――― ○:抗かび性あり、×:抗かび性なし【0029】
(表2) 80℃、90%Rh、7日後の特性 ――――――――――――――――――――――――――――― 圧力損失 捕集効率 (Pa) (%)
――――――――――――――――――――――――――――― 実施例1 220(±0) 99.999(±0)
実施例2 250(±0) 99.999(±0)
比較例1 200(±0) 99.999(±0)
比較例2 300(±0) 99.923(−0.072 )
――――――――――――――――――――――――――――― *カッコ内は初期値からの変化量【0030】実施例1,2では、抗かび性が確認され、しかも高温高湿の環境下でも特性劣化がないことが確認できた。これに対し、比較例2のろ材では、高温高湿の環境下において捕集効率が低下した。
【0031】(参照例1,2)着色処理を施した補強材と、着色処理を施していない補強材とを用いて、塵埃による変色の程度を確認した。着色処理を施した補強材としては、ポリエステル繊維にカーボンを混入してグレーとした不織布(ユニチカ社製SB46−50503GSO)を、着色処理を施していない補強材としては、比較例1で用いた不織布をそれぞれ準備した。これらの補強材に、5.3cm/秒の風速で大気塵を14日間透過させて、汚れの度合いを比較した。結果を図4,図5に示す。
【0032】さらに、実施例1で用いた抗菌性不織布にさらにカーボンを混入してグレーに着色した抗菌着色不織布を用いた点を除いては、実施例1と同様にしてエアフィルタろ材を作製した。このろ材からも、実施例1と同様の特性が得られた。
【0033】
【発明の効果】以上説明したとおり、本発明によれば、水洗後や高湿度な環境下で使用しても粒子捕集効率などのフィルタ特性が低下せず、しかも細菌やかびの繁殖を抑制できるエアフィルタ用ろ材およびそれを用いたフィルタユニットを提供できる。
【出願人】 【識別番号】000003964
【氏名又は名称】日東電工株式会社
【住所又は居所】大阪府茨木市下穂積1丁目1番2号
【出願日】 平成14年6月6日(2002.6.6)
【代理人】 【識別番号】110000040
【氏名又は名称】特許業務法人池内・佐藤アンドパートナーズ
【公開番号】 特開2003−205211(P2003−205211A)
【公開日】 平成15年7月22日(2003.7.22)
【出願番号】 特願2002−166276(P2002−166276)