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【発明の名称】 エレクトレット体の製造方法
【発明者】 【氏名】秋庭 治
【住所又は居所】茨城県猿島郡総和町大字北利根7番地 日本バイリーン株式会社内

【氏名】川部 雅章
【住所又は居所】茨城県猿島郡総和町大字北利根7番地 日本バイリーン株式会社内

【氏名】松林 章浩
【住所又は居所】茨城県猿島郡総和町大字北利根7番地 日本バイリーン株式会社内

【要約】 【課題】帯電量を多くすることができ、しかも繊維配向を変えることのないエレクトレット体の製造方法を提供すること。

【解決手段】本発明のエレクトレット体の製造方法は、体積固有抵抗値が1014Ω・cm以上の熱可塑性樹脂からなる不織布に水を担持させた後に、水を介して超音波振動を作用させて、前記不織布をエレクトレット化させる方法、体積固有抵抗値が1014Ω・cm以上の熱可塑性樹脂からなる不織布の水を供給した地点で、水を介して超音波振動を作用させて、前記不織布をエレクトレット化させる方法、或いは体積固有抵抗値が1014Ω・cm以上の熱可塑性樹脂からなる不織布を水中に浸漬した状態で、水を介して超音波振動を作用させて、前記不織布をエレクトレット化させる方法である。
【特許請求の範囲】
【請求項1】 熱可塑性樹脂からなる構造体に対して、極性液体を介して超音波振動を作用させて、前記構造体をエレクトレット化させることを特徴とするエレクトレット体の製造方法。
【請求項2】 エレクトレット化させる手段が、下記(1)〜(3)の中から選ばれる少なくとも1つの手段であることを特徴とする、請求項1記載のエレクトレット体の製造方法。
記(1)熱可塑性樹脂からなる構造体に極性液体を担持させた後に、極性液体を介して超音波振動を作用させて、前記構造体をエレクトレット化させる手段。
(2)熱可塑性樹脂からなる構造体に極性液体を供給した地点で、極性液体を介して超音波振動を作用させて、前記構造体をエレクトレット化させる手段。
(3)熱可塑性樹脂からなる構造体を極性液体中に浸漬した状態で、極性液体を介して超音波振動を作用させて、前記構造体をエレクトレット化させる手段。
【請求項3】 エレクトレット化させると共に、超音波振動により構造体を融着させることを特徴とする、請求項1又は請求項2に記載のエレクトレット体の製造方法。
【請求項4】 エレクトレット化させると共に、超音波振動により構造体から極性液体を除去して、構造体を乾燥することを特徴とする、請求項1〜請求項3のいずれかに記載のエレクトレット体の製造方法。
【請求項5】 体積固有抵抗値が1014Ω・cm以上の熱可塑性樹脂からなる構造体であることを特徴とする、請求項1〜請求項4のいずれかに記載のエレクトレット体の製造方法。
【請求項6】 体積固有抵抗値が1016Ω・cm以上の熱可塑性樹脂からなる構造体であることを特徴とする、請求項1〜請求項4のいずれかに記載のエレクトレット体の製造方法。
【請求項7】 熱可塑性樹脂中に、ヒンダードアミン系化合物、脂肪酸金属塩、不飽和カルボン酸変性高分子の中から選ばれる化合物を含有していることを特徴とする、請求項1〜請求項6のいずれかに記載のエレクトレット体の製造方法。
【請求項8】 極性液体が水であることを特徴とする、請求項1〜請求項7のいずれかに記載のエレクトレット体の製造方法。
【発明の詳細な説明】【0001】
【発明の属する技術分野】本発明はエレクトレット体の製造方法に関する。
【0002】
【従来の技術】従来から、気体中の塵埃等を除去するために、不織布からなる濾過材が使用されている。この不織布濾過材は主として物理的作用によるブラウン拡散、遮り、慣性衝突などによって塵埃等を除去するものであるため、不織布濾過材を構成する繊維の直径を小さくすれば、より小さな塵埃等を捕捉し、除去できるため、濾過効率を高めることができる。しかしながら、不織布濾過材を構成する繊維の直径を小さくすればするほど、圧力損失が大きくなり、不織布濾過材の寿命が短くなるという問題があった。
【0003】この問題点を解決する方法として、不織布濾過材をエレクトレット化し、物理的作用に加えて静電気的作用を利用することにより、濾過効率と圧力損失の両立を図るという試みがなされている。このエレクトレット化方法として、例えば、コロナ帯電させる方法、不織布に対して水流を衝突させる方法などが知られている。
【0004】
【発明が解決しようとする課題】しかしながら、前者のコロナ帯電させる方法では帯電量を十分に多くすることが困難であり、後者の水流の衝突による方法では水流の衝突によって不織布構成繊維が絡んでしまい、繊維配向が変わってしまうため、開口が形成されやすく、エレクトレット化による濾過効率と圧力損失を両立する不織布濾過材の設計が難しいなどの難点があった。
【0005】本発明は上述のような点を解決するためになされたものであって、帯電量を多くすることができ、しかも繊維配向を変えることのないエレクトレット体の製造方法を提供することを目的とする。
【0006】
【課題を解決するための手段】本発明のエレクトレット体の製造方法は、「熱可塑性樹脂からなる構造体に対して、極性液体を介して超音波振動を作用させて、前記構造体をエレクトレット化させることを特徴とするエレクトレット体の製造方法。」である。この製造方法によると、帯電量を多くできること、及び繊維配向を変えることがないため、開口が形成されないことを見出した。
【0007】前記製造方法において、エレクトレット化させる手段が、下記(1)〜(3)の中から選ばれる少なくとも1つの手段であるのが好ましい。
記(1)熱可塑性樹脂からなる構造体に極性液体を担持させた後に、極性液体を介して超音波振動を作用させて、前記構造体をエレクトレット化させる手段。
(2)熱可塑性樹脂からなる構造体に極性液体を供給した地点で、極性液体を介して超音波振動を作用させて、前記構造体をエレクトレット化させる手段。
(3)熱可塑性樹脂からなる構造体を極性液体中に浸漬した状態で、極性液体を介して超音波振動を作用させて、前記構造体をエレクトレット化させる手段。
【0008】前記製造方法において、エレクトレット化させると共に、超音波振動により構造体を融着させると、融着工程を省略することのできる簡略化されたエレクトレット体の製造方法である。
【0009】前記製造方法において、エレクトレット化させると共に、超音波振動により構造体から極性液体を除去して、構造体を乾燥すると、乾燥工程を省略することのできる簡略化されたエレクトレット体の製造方法である。
【0010】前記製造方法において、前記構造体を構成する熱可塑性樹脂の体積固有抵抗値が1014Ω・cm以上である場合、特には体積固有抵抗値が1016Ω・cm以上である場合、前記構造体を構成する熱可塑性樹脂中に、ヒンダードアミン系化合物、脂肪酸金属塩、不飽和カルボン酸変性高分子の中から選ばれる化合物を含有している場合、更に帯電量を多くできることも見出した。
【0011】前記製造方法において、極性液体が水であると、製造環境上、好適である。
【0012】
【発明の実施の形態】本発明のエレクトレット体の製造方法について、本発明のエレクトレット体を製造することのできる製造装置の模式的断面図である図1〜図3を参照しながら説明する。なお、図1〜図3において、同じ符号は同じ又は類似の部品を示している。また、図1〜図3においては構造体がシート形態である場合である。
【0013】まず、図1においては、供給ロール10からエレクトレット化されるべき熱可塑性樹脂シート14を極性液体浴槽30へ供給する。なお、図1においては、熱可塑性樹脂シート14はロール状に巻かれた状態から巻き出して極性液体浴槽30へ供給しているが、熱可塑性樹脂シート14の製造装置からロール状に巻くことなく、直接、極性液体浴槽30へ供給しても良い。また、図1においては、熱可塑性樹脂シート14はロールによって搬送して極性液体浴槽30へ供給しているが、ロールに替えてコンベアなどの搬送装置によって搬送しても良い。
【0014】次いで、このように極性液体浴槽30へ供給した熱可塑性樹脂シート14を極性液体浴槽30の極性液体32中へ浸漬して、熱可塑性樹脂シート14に極性液体32を担持させる。なお、熱可塑性樹脂シート14に効率よく極性液体32を担持させるために、含浸装置(例えば、Rodney Hunt社のサチュレーター)などを備えていても良い。
【0015】この極性液体32は特に限定するものではないが、例えば、水、アルコール、アセトン、アンモニアなどを挙げることができる。これらの中でも、水は製造環境的に優れているため、好適に使用することができる。
【0016】次いで、この極性液体32を担持した熱可塑性樹脂シート14を超音波振動発生装置20へ供給し、この超音波振動発生装置20により超音波振動を作り出し、この超音波振動を極性液体32を介して熱可塑性樹脂シート14へ伝え、熱可塑性樹脂シート14をエレクトレット化させる。この時、熱可塑性樹脂シート14が極性液体32を担持していないと、超音波振動発生装置20によって作り出された超音波振動が、熱可塑性樹脂シート14の内部へ十分に伝わりにくいため、超音波振動が熱可塑性樹脂シート14の内部まで伝わるように、熱可塑性樹脂シート14に十分な量の極性液体32を担持させるのが好ましい。この極性液体32の量は熱可塑性樹脂シート14の種類によって異なるが、実験を繰り返すことにより、適宜設定することができる。
【0017】この超音波振動発生装置20は一般的に知られているもので良く、図1においては、パワーユニット22、変換機24、ブースター26、ホーン28から構成されている。この超音波振動発生装置20においては、パワーユニット22で発生させた電気エネルギーを変換機24により、変換機24に入力された電気エネルギーの大きさに合わせて機械的な振動を生じさせ、変換機24で作り出された振動は機械的な動きをするブースター26に伝達され、この伝達された機械的振動の振幅がブースター26により増幅され、この増幅された振動が、さらにホーン28へと伝達されて、超音波振動を発生させる。本発明における超音波振動の発生方法はこの方法に限定されるものではなく、超音波振動を発生させることのできる方法であれば良い。なお、ホーン28の形状は、熱可塑性樹脂シート14のエレクトレット化に最適なように適宜改良することができる。例えば、ホーン28と可塑性樹脂シート14との接触面積を大きくしたり、小さくすることができる。
【0018】また、図1においては、超音波振動発生装置20により熱可塑性樹脂シート14に対して超音波振動を1回作用させているが、2回以上作用させても良い。このように2回以上超音波振動を作用させる場合には、例えば、2台以上の超音波振動発生装置20を設置したり、1台の超音波振動発生装置20に熱可塑性樹脂シート14を繰り返し供給して実施することができる。なお、超音波振動を2回以上作用させる場合には、熱可塑性樹脂シート14を極性液体浴槽30へ供給するなどの極性液体32の担持を、超音波振動を作用させる前に実施するのが好ましい。つまり、極性液体32の担持と超音波振動を繰り返し作用させるのが好ましい。この極性液体32の担持も、2つ以上の極性液体浴槽30を設置したり、1つの極性液体浴槽30に繰り返し供給して実施することができる。
【0019】なお、本発明の製造方法においては、熱可塑性樹脂シート14の下方にアンビルを配置した状態で超音波振動を作用させることで、熱可塑性樹脂シート14をエレクトレット化させると共に、熱可塑性樹脂シート14を融着させることもできる。このように融着させると、融着工程を省略することができるため、工程を簡略化することができる。
【0020】また、熱可塑性樹脂シート14と一緒に支持体を搬送すれば、超音波振動により、熱可塑性樹脂シート14と該支持体の双方を同時にエレクトレット化させることができる。さらには、積層された熱可塑性樹脂シート14と支持体よりも下方にアンビルを配置した状態で超音波振動を作用させることで、熱可塑性樹脂シート14と支持体とを融着一体化させることもできる。このように融着一体化させると、一体化工程を省略することができるため、工程を簡略化することができる。なお、熱可塑性樹脂シート14ではなく、支持体を融着させて一体化させることもできるし、双方を融着させて一体化させることもできる。
【0021】次いで、図1においては、このようにエレクトレット化させた熱可塑性樹脂シート14を乾燥装置60へ供給し、乾燥して、本発明のエレクトレットシートを形成し、その後、巻き取りロール12により巻き取る。この乾燥装置60での乾燥温度は、好ましくは120℃以下、より好ましくは90℃以下、さらに好ましくは60℃以下である。なお、エレクトレットシートは巻き取りロール12で巻き取ることなく、次の後処理工程へと供給しても良い。また、図1においては乾燥装置60を設置しているが、超音波振動発生装置20により熱可塑性樹脂シート14によりエレクトレット化させると共に、超音波振動により熱可塑性樹脂シート14から極性液体32を除去して乾燥することもできる。この場合、乾燥装置60は必ずしも必要ではない。なお、この超音波振動による乾燥条件は、例えば、熱可塑性樹脂シート14の種類、熱可塑性樹脂シート14による極性液体32の担持量、極性液体32の種類などによって異なるため、特に限定できるものではない。なお、この超音波振動による乾燥条件は、実験を繰り返すことによって適宜設定することができる。
【0022】次に、図2におけるエレクトレット体の製造方法においては、極性液体32を介在させる方法のみが、図1におけるエレクトレット体の製造方法と相違するため、この点に関してのみ説明する。
【0023】図2においては、図1のように熱可塑性樹脂シート14を極性液体浴槽30へ供給して熱可塑性樹脂シート14に極性液体32を担持させるのに替えて、熱可塑性樹脂シート14に極性液体32を供給できる極性液体付与装置40(例えば、フローコーターなど)を備えており、この極性液体付与装置40から極性液体32を熱可塑性樹脂シート14に供給した地点で、極性液体32を介して超音波振動を作用させている。このエレクトレット体の製造方法においても、図1の場合と同様に、超音波振動発生装置20により作り出した超音波振動を極性液体32を介して熱可塑性樹脂シート14へ伝え、熱可塑性樹脂シート14をエレクトレット化させる。
【0024】なお、図2においては、極性液体32を供給した地点で、極性液体32を介して超音波振動を作用させているが、極性液体32を供給した地点よりも後で極性液体32を介して超音波振動を作用させると、図1と同様に、熱可塑性樹脂シート14が極性液体32を担持した状態で超音波振動を作用させることができる。
【0025】また、図2においては、一対の極性液体付与装置40と超音波振動発生装置20とを設置しているが、これら二対以上設置して、2回以上超音波振動を作用させても良い。なお、極性液体付与装置40と超音波振動発生装置20とは必ずしも対で用いられる必要はないし、極性液体付与装置40と超音波振動発生装置20とは必ずしも、交互に設置されている必要もない。例えば、1つの極性液体付与装置40により極性液体32を供給した後、2つ以上の超音波振動発生装置20により2回以上超音波振動を作用させても良い。
【0026】次に、図3におけるエレクトレット体の製造方法においては、極性液体32を介在させる方法のみが、図1におけるエレクトレット体の製造方法と相違するため、この点に関してのみ説明する。
【0027】図3においては、図1のように熱可塑性樹脂シート14を極性液体浴槽30へ供給して熱可塑性樹脂シート14に極性液体32を担持させるのに替えて、熱可塑性樹脂シート14を極性液体浴槽30の極性液体中に浸漬した状態で、極性液体32を介して超音波振動を作用させている。このエレクトレット体の製造方法においても、図1の場合と同様に、超音波振動発生装置20により作り出した超音波振動を極性液体32を介して熱可塑性樹脂シート14へ伝え、熱可塑性樹脂シート14をエレクトレット化させる。
【0028】図3においては、一対の極性液体浴槽30と超音波振動発生装置20を設置して、1回だけ超音波振動を作用させているが、二対以上設置して、2回以上超音波振動を作用させても良い。また、図3においては、1機の極性液体浴槽30中に、1台の超音波振動発生装置20を設置しているが、1機の極性液体浴槽30中に超音波振動発生装置20を2台以上設置しても良い。
【0029】なお、図1〜図3に示すようなエレクトレット化させる手段を併用することができる。つまり、(1)図1のように、熱可塑性樹脂シート14に極性液体32を担持させた後に、極性液体32を介して超音波振動を作用させて、熱可塑性樹脂シート14をエレクトレット化させる手段、(2)図2のように、熱可塑性樹脂シート14に極性液体32を供給した地点で、極性液体32を介して超音波振動を作用させて、熱可塑性樹脂シート14をエレクトレット化させる手段、(3)図3のように、熱可塑性樹脂シート14を極性液体中に浸漬した状態で、極性液体32を介して超音波振動を作用させて、熱可塑性樹脂シート14をエレクトレット化させる手段、を併用することができる。例えば、熱可塑性樹脂シート14を極性液体浴槽30へ供給して極性液体32を担持させた後に、極性液体32を介して超音波振動を作用させて、熱可塑性樹脂シート14を1度エレクトレット化させた後、この熱可塑性樹脂シート14に極性液体付与装置40から極性液体32を供給した地点で、極性液体32を介して超音波振動を再度作用させて、熱可塑性樹脂シート14を再度エレクトレット化させてエレクトレット体を製造することができる。
【0030】本発明の構造体は図1〜図3に示すようなシート形態である必要はなく、立体的な形態であっても良い。しかしながら、構造体に対して均一に超音波振動を与えて、均一にエレクトレット化するという観点からはシート形態であるのが好ましい。また、構造体はどのような構造からなっていても良く、例えば、繊維集合体、フィルムなどであることができる。本発明の製造方法により製造したエレクトレット体を濾過材として使用する場合には、構造体は繊維集合体からなるのが好ましく、径が細く、集塵効率の優れるメルトブロー繊維集合体からなるのが更に好ましい。
【0031】本発明の構造体を構成する熱可塑性樹脂は特に限定されるものではないが、帯電量を多くすることができる、体積固有抵抗値が1014Ω・cm以上の熱可塑性樹脂から構成されているのが好ましく、体積固有抵抗値が1016Ω・cm以上の熱可塑性樹脂から構成されているのがより好ましい。なお、体積固有抵抗値の上限は特に限定するものではない。本発明における「体積固有抵抗値」は、JIS K 6911に定められている「熱硬化性プラスチック一般試験方法」に準じた3端子法による絶縁抵抗試験に用いられる体積固有抵抗値測定装置により測定して得られる値をいう。より具体的には、ポリオレフィン系樹脂(例えば、ポリエチレン系樹脂、ポリプロピレン系樹脂、ポリメチルペンテン系樹脂、ポリスチレン系樹脂など)、ポリ四フッ化エチレン、ポリ塩化ビニリデン、ポリ塩化ビニル、ポリウレタンなどを挙げることができる。これらの中でもポリオレフィン系樹脂は特に体積固有抵抗値が高く、しかも加工性に優れているため好適に使用することができ、特にポリプロピレン系樹脂又はポリメチルペンテン系樹脂は耐熱性の点でも優れているため、好適に使用することができる。
【0032】このような熱可塑性樹脂は帯電性を高めることができるように、ヒンダードアミン系化合物、脂肪族金属塩(例えば、ステアリン酸のマグネシウム塩、ステアリン酸のアルミニウム塩など)、不飽和カルボン酸変性高分子の中から選ばれる化合物を1種類又は2種類以上含有しているのが好ましい。これらの中でも、ヒンダードアミン系化合物は特に帯電量を多くすることができるため、特に好適である。
【0033】この特に好適であるヒンダードアミン系化合物として、例えば、ポリ[{(6−(1,1,3,3−テトラメチルブチル)イミノ−1,3,5−トリアジン−2,4−ジイル){(2,2,6,6−テトラメチル−4−ピペリジル)イミノ}ヘキサメチレン{(2,2,6,6−テトラメチル−4−ピペリジル)イミノ}}、コハク酸ジメチル−1−(2−ヒドロキシエチル)−4−ヒドロキシ−2,2,6,6−テトラメチルピペリジン重縮合物、2−(3,5−ジ−t−ブチル−4−ヒドロキシベンジル)−2−n−ブチルマロン酸ビス(1,2,2,6,6−ペンタメチル−4−ピペリジル)などを挙げることができる。
【0034】このような帯電性を高めることのできる化合物の含有量は特に限定されるものではないが、熱可塑性樹脂全体の質量の0.01〜5%であるのが好ましい。化合物の含有量が0.01%未満では含有しているにもかかわらず、十分な帯電が得られない傾向があるためで、0.05%以上であるのがより好ましく、0.1%以上であるのが更に好ましい。他方、化合物の含有量が5%を超えると、エレクトレット体の強度が低下する傾向があるため、2.5%以下であるのがより好ましい。
【0035】本発明のエレクトレット体の製造方法によって製造したエレクトレット体は、帯電量の多いものであるため、例えば、空気などの気体フィルタ用濾過材、オイルや水などの液体フィルタ用濾過材、成型マスクなどのマスク用濾過材、ワイピング材、防塵衣料、音波又は振動の検出素子などの各種用途に使用することができる。
【0036】本発明のエレクトレット体は上記のような用途に好適に使用できるものであるが、各種用途に適合するように、各種後加工を実施することができる。例えば、エレクトレット体を好適である濾過材として使用する場合、襞折り加工を実施して濾過面積を広くするのが好ましい。
【0037】以下に、本発明のエレクトレット体の製造方法について実施例を記載するが、本発明は以下の実施例に限定されるものではない。
【0038】
【実施例】(実施例1)ヒンダードアミン(登録商標:CHIMASSORB 944FD、チバ・スペシャルティ・ケミカルズ株式会社製)を樹脂全体の2.5mass%含むポリプロピレンからなるメルトブロー繊維集合体シート(目付:45g/m、厚さ0.38mm、平均繊維径:5μm)を、図1のように、水を溜めた浴槽30へ供給し、供給したメルトブロー繊維集合体シートを浴槽30の水中へ浸漬して、メルトブロー繊維集合体シートに約90g/m量の水を担持させた。
【0039】次いで、水を担持したメルトブロー繊維集合体シートを超音波振動発生装置20(パワーユニット22、変換機24、ブースター26、及びホーン28から構成)へ供給し、この超音波振動発生装置20により2kWの出力設定値おいて振動数20kHzの超音波振動を作り出し、この超音波振動を水を介してメルトブロー繊維集合体シートへ伝える、メルトブロー繊維集合体シートのエレクトレット化処理を4回行った。なお、このエレクトレット化処理によってメルトブロー繊維集合体シートは融着させなかった。
【0040】次いで、このエレクトレット化させたメルトブロー繊維集合体シートを乾燥装置へ供給し、温度40℃以下で乾燥し、本発明のエレクトレット体を製造した。
【0041】次いで、エレクトレット化する前のメルトブロー繊維集合体シート、及びエレクトレット体の捕集効率を、大気塵0.3〜0.5μm、風速10cm/秒の条件下で測定した。また、エレクトレット化する前のメルトブロー繊維集合体シート、及びエレクトレット体の圧力損失を、風速10cm/秒の条件下で測定した。これらの結果は表1に示す通りであった。
【0042】
【表1】

【0043】表1の結果から明らかなように、本発明の製造方法により製造されたエレクトレット体は、メルトブロー繊維集合体シートと同じ見掛密度であるにもかかわらず、圧力損失が低く、しかも捕集効率の高いものであったため、帯電量が多いことが推測できるものであった。
【0044】(実施例2)ヒンダードアミン(登録商標:CHIMASSORB 944FD、チバ・スペシャルティ・ケミカルズ株式会社製)を樹脂全体の2.5mass%含むポリプロピレンからなるメルトブロー繊維集合体シート(目付:41g/m、厚さ0.41mm、平均繊維径:5μm)を、図3のように、水を溜めた浴槽30へ供給し、供給したメルトブロー繊維集合体シートを浴槽30の水中に浸漬した状態で、超音波振動発生装置20(パワーユニット22、変換機24、ブースター26、及びホーン28から構成)により、2kWの出力設定値おいて振動数20kHzの超音波振動を作り出し、この超音波振動を水を介してメルトブロー繊維集合体シートへ伝える、メルトブロー繊維集合体シートのエレクトレット化処理を1回行った。なお、このエレクトレット化処理によってメルトブロー繊維集合体は融着させなかった。
【0045】次いで、このエレクトレット化させたメルトブロー繊維集合体シートを乾燥装置へ供給し、温度40℃以下で乾燥し、本発明のエレクトレット体を製造した。
【0046】次いで、エレクトレット化する前のメルトブロー繊維集合体シート、及びエレクトレット体の捕集効率ならびに圧力損失を、実施例1に示した条件と同じ条件下で測定した。これらの結果は表2に示す通りであった。
【0047】
【表2】

【0048】表2の結果から明らかなように、本発明の製造方法により製造されたエレクトレット体は、メルトブロー繊維集合体シートと同じ見掛密度であるにもかかわらず、略同等の圧力損失で、捕集効率の高いものであったため、帯電量が多いことが推測できるものであった。
【0049】
【発明の効果】本発明のエレクトレット体の製造方法によれば、帯電量を多くでき、繊維配向を変えることがないため、開口が形成されない。
【0050】本発明のエレクトレット体の製造方法において、エレクトレット化させる手段が、下記(1)〜(3)の中から選ばれる少なくとも1つの手段であるのが好ましい。
記(1)熱可塑性樹脂からなる構造体に極性液体を担持させた後に、極性液体を介して超音波振動を作用させて、前記構造体をエレクトレット化させる手段。
(2)熱可塑性樹脂からなる構造体に極性液体を供給した地点で、極性液体を介して超音波振動を作用させて、前記構造体をエレクトレット化させる手段。
(3)熱可塑性樹脂からなる構造体を極性液体中に浸漬した状態で、極性液体を介して超音波振動を作用させて、前記構造体をエレクトレット化させる手段。
【0051】前記製造方法において、エレクトレット化させると共に、超音波振動により構造体を融着させると、融着工程を省略することのできる簡略化されたエレクトレット体の製造方法である。
【0052】前記製造方法において、エレクトレット化させると共に、超音波振動により構造体から極性液体を除去して、構造体を乾燥すると、乾燥工程を省略することのできる簡略化されたエレクトレット体の製造方法である。
【0053】前記製造方法において、前記構造体を構成する熱可塑性樹脂の体積固有抵抗値が1014Ω・cm以上である場合、特には体積固有抵抗値が1016Ω・cm以上である場合、前記構造体を構成する熱可塑性樹脂中に、ヒンダードアミン系化合物、脂肪酸金属塩、不飽和カルボン酸変性高分子の中から選ばれる化合物を含有している場合、更に帯電量を多くできる、前記製造方法において、極性液体が水であると、製造環境上、好適である。
【出願人】 【識別番号】000229542
【氏名又は名称】日本バイリーン株式会社
【住所又は居所】東京都千代田区外神田2丁目14番5号
【出願日】 平成14年1月11日(2002.1.11)
【代理人】
【公開番号】 特開2003−205210(P2003−205210A)
【公開日】 平成15年7月22日(2003.7.22)
【出願番号】 特願2002−5233(P2002−5233)