トップ :: B 処理操作 運輸 :: B01 物理的または化学的方法または装置一般




【発明の名称】 洗車排水処理用の凝集剤
【発明者】 【氏名】浜田 豊三

【氏名】中塚 修志

【氏名】宮崎 泰光

【要約】 【課題】洗車排水を浄化して、再度洗車用の洗浄水として再利用できるようにする排水処理装置の提供。

【解決手段】油分及び界面活性剤を含有する洗浄排水を処理する装置であり、前記排水に有機凝集剤とイオン性鉱物を含む無機凝集剤との組み合わせからなる凝集剤を添加して凝集沈降処理する凝集沈殿部、前記凝集沈殿部における処理水を、5〜30kPaの範囲内で一定の膜間差圧で固液分離する膜分離部、前記膜分離部における処理水を貯留する貯水部を備えており、貯水部の処理水を洗浄水として再利用できる排水処理装置。
【特許請求の範囲】
【請求項1】 有機凝集剤2〜20質量%と無機凝集剤80〜98質量%との組み合わせからなる凝集剤であり、有機凝集剤としてアルギン酸塩及び/又はカチオン系高分子凝集剤を含み、無機凝集剤としてイオン性鉱物及び/又は硫酸アルミニウムを含んでいる油分及び界面活性剤を含有する洗車排水処理用の凝集剤。
【請求項2】 有機凝集剤としてアルギン酸塩とカチオン系高分子凝集剤を含むとき、それらの含有割合(質量比)が、アルギン酸塩/カチオン系高分子凝集剤=1:2〜4:1である請求項1記載の油分及び界面活性剤を含有する洗車排水処理用の凝集剤。
【請求項3】 無機凝集剤としてイオン性鉱物と硫酸アルミニウムを含むとき、それらの含有割合(質量比)が、イオン性鉱物/硫酸アルミニウム=1:2〜2:1である請求項1又は2記載の油分及び界面活性剤を含有する洗車排水処理用の凝集剤。
【請求項4】 油分及び界面活性剤を含有する洗浄排水を処理する装置であり、前記排水に有機凝集剤とイオン性鉱物を含む無機凝集剤との組み合わせからなる凝集剤を添加して凝集沈降処理する凝集沈殿部、前記凝集沈殿部における処理水を、5〜30kPaの範囲内で一定の膜間差圧で固液分離する膜分離部、前記膜分離部における処理水を貯留する貯水部を備えており、貯水部の処理水を洗浄水として再利用できる排水処理装置。
【請求項5】 凝集沈殿部において、請求項1〜3のいずれか1記載の洗車排水処理用の凝集剤を使用する排水処理装置。
【請求項6】 凝集沈殿部において、ブロッキング防止機構を備えた、凝集剤を粉体状態で添加する定量スクリューフィーダーが設けられている請求項4又は5記載の洗車排水処理用の凝集剤を使用する排水処理装置。
【請求項7】 膜分離部において、内圧型デッドエンド濾過方式で濾過運転する請求項4〜6のいずれか1記載の排水処理装置。
【請求項8】 膜分離部において、クロスフロー濾過方式で、平均膜面線速0.1m/秒以下で濾過運転する請求項4〜6のいずれか1記載の排水処理装置。
【請求項9】 更に膜分離部と貯水部との間に、膜分離部における処理水を活性炭処理する活性炭処理部を備えた請求項4〜8のいずれか1記載の排水処理装置。
【請求項10】 膜分離部で用いる膜が、酢酸セルロース系、ポリスルホン系及びポリアクリロニトリル系限外濾過膜から選ばれる中空糸膜である請求項4〜9のいずれか1記載の排水処理装置。
【請求項11】 既設の油水分離槽と組み合わせて使用する請求項4〜10のいずれか1記載の排水処理装置。
【請求項12】 洗車により生じた排水の処理用である請求項4〜11のいずれか1記載の排水処理装置。
【発明の詳細な説明】【0001】
【発明の属する技術分野】本発明は、車や機械の洗浄で生じた、ワックス、機械油、界面活性剤及び土砂等を含む排水の処理用として適した凝集剤及び排水処理装置に関する。
【0002】
【従来の技術及び発明が解決しようとする課題】水資源の有効利用への関心の高まりと共に、大量に水道水を消費する洗車場などの洗浄水(1台当たり150L以上必要)に対する節水の要望と、その一方で排水をそのまま垂れ流すことに対する水質汚染への懸念が大きくなっている。特に洗車場で生じる排水には、土砂と共にワックス等の油分と界面活性剤が含まれており、垂れ流した場合の環境に与える影響は大きいにも拘わらず、排水規制のない小規模事業所のガソリンスタンドや下水道が整備されていないような場所では、未処理のままで排水されていることも多い。このため、洗車排水を処理し、再利用することを目的として、下記の洗車排水処理技術が開発されているが、いずれも満足できるものではない。
【0003】砂濾過処理は、懸濁物を砂で濾過処理し、油分を含む濾過水を活性炭吸着処理する方法であるが、1μm以下の油分等を完全に除去することが困難であるほか、活性炭の吸着能力が早期に低下し易く、再生処理を頻繁に行う必要がある点で維持管理が煩雑となる。凝集沈澱処理は、凝集剤の添加量を原水組成の変動に応じて変化させることが必要となり、安定した処理が困難となる。更に、砂濾過法や凝集沈澱法では、バクテリアは除去できないため、処理水が腐敗臭を有することがあり、再利用がし難いという問題もある。
【0004】オゾン処理は、殺菌作用があるのでバクテリアの問題は解決できるものの、処理量が小さく、油分の除去が困難であるという問題がある。生物分解処理は、原水組成の変動への対応が困難で、使用する微生物が濾過水に混入して変質させ、再利用できない場合があるという問題がある。
【0005】その他、特開2000−127913号公報の請求項1には、中空糸膜を用いた濾過器を備えた濾過による洗車システムが開示されているが、前処理なしに中空糸膜を用いた濾過器のみで洗車排水を長期間安定して濾過することは困難であり、実質的には電解凝集と濾過器とを組み合わせる必要がある。しかし、電解凝集を組み込んだ洗車システムでは、装置費用及び電気消費量が多大となるため、再利用すべき処理水自体が高価なものとなる。
【0006】本発明は、各種洗車場等で生じる油分及び界面活性剤を含有する排水を処理し、洗浄水として再利用できる処理水を得るために使用する凝集剤及び排水処理装置を提供することを課題とする。
【0007】
【課題を解決するための手段】本発明者は、上記課題を解決するため、装置の運転及び維持管理が容易であること、長期間安定した処理能力が得られること、運転及び維持管理コストが低いこと、処理水を洗浄水として再利用した場合に使用者に不快感を与えたり、周辺環境を汚染したりすることがないこと等の各課題を、特定の凝集剤を含む有機凝集剤と無機凝集剤の組み合わせからなる凝集剤を使用すること、また凝集剤を用いた凝集沈殿部と、膜分離部とを組み合わせることで解決できることを見出し、本発明を完成したものである。
【0008】即ち本発明は、上記課題を解決する手段として、有機凝集剤2〜20質量%と無機凝集剤80〜98質量%との組み合わせからなる凝集剤であり、有機凝集剤としてアルギン酸塩を含み、無機凝集剤としてイオン性鉱物を含んでいる油分及び界面活性剤を含有する洗車排水処理用の凝集剤を提供する。
【0009】また本発明は、上記他の課題を解決する手段として、油分及び界面活性剤を含有する洗浄排水を処理する装置であり、前記排水に有機凝集剤とイオン性鉱物を含む無機凝集剤との組み合わせからなる凝集剤を添加して凝集沈降処理する凝集沈殿部、前記凝集沈殿部における処理水を、5〜30kPaの範囲内で一定の膜間差圧で固液分離する膜分離部、前記膜分離部における処理水を貯留する貯水部を備えており、貯水部の処理水を洗浄水として再利用できる排水処理装置を提供する。
【0010】上記の排水処理装置に係る発明でいう「油分及び界面活性剤を含有する排水」は、各種車両、電車等の乗り物、各種工場の機械類、建築物等を、水を含む洗浄水で洗浄した際に生じる排水であるため、油分や界面活性剤は洗浄対象に応じて異なり、例えば、車のワックスや機械油等であり、界面活性剤は、陰イオン、陽イオン、非イオン及び両性界面活性剤である。
【0011】
【発明の実施の形態】本発明の洗車排水処理用の凝集剤は、アルギン酸塩及び/又はカチオン系高分子凝集剤を含む有機凝集剤と、イオン性鉱物及び/又は硫酸アルミニウムを含む無機凝集剤との組み合わせからなり、有機凝集剤としてアルギン酸塩及びカチオン系高分子凝集剤を含み、無機凝集剤としてイオン性鉱物及び硫酸アルミニウムを含むものが好ましい。
【0012】有機凝集剤と無機凝集剤の含有割合は、有機凝集剤が2〜20質量%、好ましくは4〜14質量%、より好ましくは5〜13質量%であり、無機凝集剤が98〜20質量%、好ましくは96〜86質量%、より好ましくは95〜87質量%である。
【0013】このような範囲で有機凝集剤と無機凝集剤とを組み合わせて使用することにより、凝集処理効果を著しく高めることができるので、添加量の格別な調整が不要となり、凝集処理後に膜分離処理する場合にはその負荷が軽減され、設計どおりの固液分離がなされることも、凝集剤の添加量の格別な調整が不要となることに寄与する。
【0014】有機凝集剤として使用するアルギン酸塩はアルギン酸ナトリウムが好ましく、カチオン系高分子凝集剤はポリアミン類、ポリジシアンジアミド類、カチオン化デンプン、カチオン系ポリ(メタ)アクリルアミド、水溶性アニリン樹脂、ポリチオ尿素、ポリエチレンイミン、第4級アンモニウム塩類、ポリビニルピリジン類、キトサン等を挙げることができ、これらの中でもカチオン化デンプン、カチオン系ポリ(メタ)アクリルアミド又はこれらの混合物が好ましい。
【0015】有機凝集剤としてアルギン酸塩とカチオン系高分子凝集剤を含むとき、それらの含有割合(アルギン酸塩/カチオン系高分子凝集剤で示される質量比)は1:2〜4:1であることが好ましく、1:1.5〜10:3であることがより好ましい。
【0016】無機凝集剤として使用するイオン性鉱物としては、ベントナイト、カオリン、モンモリロナイト等の粘土鉱物やゼオライト等を挙げることができ、これらの中でも、安価でかつ吸着面積が大きく、エマルション化された油分を吸着し易いため、モンモリロナイト、ベントナイトが好ましい。
【0017】無機凝集剤としてイオン性鉱物と硫酸アルミニウムを含むとき、それらの含有割合(イオン性鉱物/硫酸アルミニウムで示される質量比)は1:2〜2:1であることが好ましく、1:1.5〜1.5:1であることがより好ましい。
【0018】有機凝集剤としては、上記以外にも(メタ)アクリル酸や(メタ)アクリルアミド等の親水性単量体を共重合させたアクリル系共重合体等、カルボキシメチルセルロースのナトリウム塩、マレイン酸共重合体、ポリ(メタ)アクリルアミド、リグニンスルホン酸ナトリウム、可溶性デンプン、ポリオキシエチレンジプロピルアミン、ポリオキシエチレンラウリルエーテル、ポリオキシエチレンオクチルフェニルエーテル等の界面活性剤、(メタ)アクリル酸とアクリルアミドとの共重合体等のアニオン又はノニオン系の高分子凝集剤、両性高分子凝集剤、プロピレンジアミン等の低分子アミン凝集剤等を含有させることができる。
【0019】無機凝集剤としては、上記以外にもポリ塩化アルミニウム、塩化マグネシウム、塩化第二鉄、硫酸第一鉄、硫酸第二鉄、消石灰、ケイ酸ナトリウム、アルミン酸ナトリウム、アルミニウムミョウバン類等を含有させることができる。
【0020】本発明の洗車排水処理用の凝集剤として、アルギン酸ナトリウム、カチオン系高分子凝集剤と、モンモリロナイト、硫酸アルミニウムとの有機及び無機凝集剤の組み合わせからなるものを使用したとき、水処理過程において、各成分が下記の通りの相乗作用をなすため、水処理能力が向上される。
【0021】モンモリロナイトは、単独ではアルカリ性を呈し、界面活性剤によりエマルション化された油分の吸着を行って溶液粘土を低下させるように作用する。アルギン酸ナトリウムは、油分を吸着したモンモリロナイトのマイクロカプセル化を行って、そのフロックの生成及び巨大化に寄与する。硫酸アルミニウムは、単独では酸性を呈するため、アルカリ性モンモリロナイトの電荷中和によるフロックの生成を促進するように作用する。カチオン系高分子凝集剤は、フロックの連結効果により巨大化を促進し、同時にフロックの脱水作用を行う。なお、モンモリロナイトに替えてベントナイトを用いても同様の作用がなされる。
【0022】次に、本発明の排水処理装置の概念を示した図1、図2により、排水処理装置の構成と、その動作を説明する。図1は内圧型デッドエンド濾過方式に適した排水処理装置、図2はクロスフロー濾過方式に適した排水処理装置である。図中、同一番号は同一のものを意味する。
【0023】本発明の排水処理装置は、凝集沈殿部、膜分離部及び貯水部を備えており、これらがパイプ等で連結されているものであるが、図1、図2に示すような又は図1、図2に示されていない排水の処理をするのに必要な構成を含んでいてもよい。図1、図2中、Pはポンプ、P1〜P4は圧力計、F1〜F2は流量計、MVは流量調整バルブを示し、開閉弁は全て同じ表示である。なお、図1、図2は、各構成部、各構成部の連結状態、排水の処理フローを示すものであり、各構成部の配置状態や装置全体の大きさを示すものではない。
【0024】洗車場等で生じた油分及び界面活性剤を含む排水は、通常は、排水ピットを経て洗車場等に設置されている油水分離槽20に貯水される。油水分離槽20には、雨水、施設の床面清掃時の洗剤や油混じりの排水等も合わせて回収されることもある。油水分離槽20は、図示するような計4槽の沈殿槽からなり、砂利のような大きな粒子の懸濁質(SS)から順に沈殿させていき、最終沈殿槽の排水をポンプにより汲み上げて、原水貯水タンク1に送って貯水する。これが処理用の原水となる。この油水分離槽20の排水が流入する沈殿槽には、砂利のような大きめの異物を取り除くため、図2に示すような濾網(金網等からなるもの)を設置することができる。
【0025】次に、原水貯水タンク1の原水を凝集沈殿部2に送る。このとき、油水分離槽20から直接凝集沈殿部2に排水を送ってもよいし、量が少なく、砂、泥等も少ないような排水であれば、油水分離槽20を使用せずに、排水を直接凝集沈殿部2に送ってもよい。
【0026】凝集沈殿部2では、原水に凝集剤を添加して、油分、界面活性剤、泥等のSSの一部を凝集沈降処理させ、次の膜分離部3における負荷を軽減すると共に、ポンプ、バルブ、連結パイプ等が目詰まりすることも防止する。
【0027】凝集沈殿部2は、図示するように、第1仕切り壁27、第2仕切り壁28により、第1槽24、第2槽25、第3槽26の3つの槽に分離されている。そして第1槽24内に、凝集剤供給機22により所要量の凝集剤を添加する。このとき、凝集剤が液状の場合は定量ポンプを作動させ、凝集剤が粉体状の場合は定量フィーダー(図示せず)を作動させて添加するが、操作法及び運転法が簡単であり、メンテナンスも容易であることから、粉体状の凝集剤を用いることが好ましい。粉体状の凝集剤を用いる場合には、粉体のブロッキングを防止し、供給量の調節が容易に行うことができる定量スクリューフィーダーを用いることが好ましく、更にホッパーに、アジテーションパドルやスクリューアジテーター等のブリッジング防止機構を備えた定量スクリューフィーダーを用いることがより好ましい。
【0028】このようにして凝集剤を添加した後、凝集沈降処理し、第1槽24から第1仕切り壁27を越えて溢れた上澄み液を第2槽25に流入させ、同様にして第2仕切り壁28を越えて溢れさせた上澄み液を第3槽26に流入させる。21は第1槽24内をかき混ぜるための攪拌機である。凝集沈殿部2の各槽に溜まった沈殿物は、各開閉弁を操作して適宜底部から抜き出す。
【0029】凝集剤は、高度に安定化した低濃度油分を沈降処理し、膜分離部の負荷を軽減するため、有機凝集剤から選ばれる1又は2以上のものと、油分を吸着分離するイオン性鉱物を必須成分として含む無機凝集剤の1又は2以上とを組み合わせることが好適である。これらの有機及び無機凝集剤は公知のものを使用することができるが、上記した洗車排水処理用の凝集剤がより好ましく、特に有機凝集剤としてアルギン酸ナトリウム、高分子カチオン系凝集剤を含み、無機凝集剤としてモンモリロナイト、硫酸アルミニウムを含むものが好ましい。
【0030】有機凝集剤と無機凝集剤との組み合わせや添加の順序等は、被処理液により実験的に適宜選択決定されるが、有機凝集剤としてアルギン酸ナトリウムを含む水系凝集剤(水溶液又は水分散液)を添加する場合は、水系の多価金属イオン無機凝集剤とは別けて添加することが好ましい。
【0031】次に、凝集沈殿部2の第3槽26内の処理水を膜分離部3に送り、固液分離する。膜分離部3における濾過処理は、低圧力でかつ一定の膜間差圧で行われる。膜分離部3における濾過方式は、外圧型クロスフロー濾過方式、外圧型デッドエンド濾過方式、内圧型クロスフロー濾過方式及び内圧型デッドエンド濾過方式のいずれも採用できるが、濾過効率、均一性、膜濾過性能の回復のための洗浄性等を考慮すると、クロスフロー濾過方式が良く、中でも内圧型クロスフロー濾過方式が最良である。
【0032】一方、内圧型デッドエンド濾過方式は、クロスフロー濾過方式に比べて、低動力で運転できるという利点のほか、装置コストが低くなるという利点もある。更に、膜間差圧を一定にすることで、膜間差圧が変動する一定流量(フラックス)運転に比べて、膜のファウリングが抑制できる利点がある。
【0033】膜間差圧を一定にするには、圧力検知によりポンプの回転数をインバーター制御する方法のほか、モジュール入口手前に設置したバルブや、循環ポンプ流量を調整する方法によればよい。膜間差圧は5〜30kPa、好ましくは5〜25kPaの範囲の低圧力範囲から選択する。
【0034】膜間差圧を低圧力にすることにより、低動力化できると共に、膜圧損のロスによる濾過効率の低下を防ぐことができる。また、膜のファウリングが抑制されるため、長期間に渡って安定に処理水量が維持できる。このように低圧力で濾過することで、内圧式クロスフロー濾過方式における膜の入口と出口の平均膜面線速を小さくでき、好ましくは0.1m/秒以下、より好ましくは0.08m/秒以下の平均膜面線速で運転する。
【0035】膜分離部3で用いる膜は、酢酸セルロース系、ポリスルホン系及びポリアクリロニトリル系限外濾過膜から選ばれる中空糸膜であることが好ましく、耐ファウリング性の観点からは、酢酸セルロース系限外濾過膜がより好ましい。また、この膜は、分画分子量は1万〜50万が好ましく、10万〜30万がより好ましい。
【0036】次に、膜分離部3で処理した処理水はそのまま貯水タンク5に送って貯水し、再利用することができるが、膜分離部3と貯水タンク5の間に設けた活性炭処理部4に送り活性炭処理して、主として油分等に起因する臭気成分と、残存する界面活性剤を吸着除去することが望ましい。この活性炭処理部4における活性炭と処理水との接触方法は制限されず、例えば、活性炭フィルターに処理水を通す方式を適用できる。
【0037】本発明の排水処理装置では、凝集沈殿部2と膜分離部3とを組み合わせることで、油分、界面活性剤、SS等の除去率を相乗的に高めることができるので、排水組成の変動に応じて凝集剤の添加量を格別調整する必要がなくなる。
【0038】次に、活性炭処理部4で処理した処理水を貯水部5に送って、貯水する。この貯水部5に送った水は、再度洗車等の洗浄水として再利用できる。このように貯水部5を設けることにより、処理水の再利用が容易になる。
【0039】なお、図2に示すように、膜分離部3と活性炭処理部4との間に逆圧洗浄用タンク6を設けることができる。この逆圧洗浄用タンク6には、膜分離部3で固液分離処理した処理水が貯水され、逆圧洗浄水として使用される。
【0040】本発明の排水処理装置では、油分及び界面活性剤を含有する排水は、凝集沈殿部2、膜分離部3、場合により更に活性炭処理部4の順に処理されるが、この処理を継続して行った場合、膜分離部3の膜面に汚れが付着して、固液分離性能が低下することがある。このため、適当間隔で逆圧洗浄することにより、固液分離性能を安定した状態に保持することが望ましい。
【0041】逆圧洗浄は、膜分離部3の透過液側から原液側に、貯水部5内の処理水を圧入させる方法が適用できる。逆圧洗浄の間隔は、15〜60分が好ましく、20〜45分がより好ましい。逆圧洗浄時の流量は、2〜20m/dayが好ましく、5〜15m/dayがより好ましい。
【0042】また逆圧洗浄に際しては、洗浄効果を高めるため、薬液タンク30から次亜塩素酸ナトリウム水溶液等の薬液を、ポンプを作動させることで洗浄水に添加して、薬液洗浄することができる。薬液の添加量は、次亜塩素酸ナトリウムを用いる場合、逆洗後の残留塩素濃度が1〜100mg/Lの範囲になるようにすることが好ましい。
【0043】本発明の排水処理装置は、排水の流入量に応じて処理量を自動制御できるように設定したり、円滑な洗車作業ができるように、洗車作業時の水の使用量等に応じて貯水部5の処理水を自動供給できるように設定することもできる。
【0044】本発明の排水処理装置は、排水処理現場の実状に応じて、家庭用の洗濯機や冷蔵庫程度の大きさから、更に大きなものまで適宜大きさを調節することができ、車に積んで移動できるようにすることもできる。
【0045】
【実施例】以下に、実施例に基づいて本発明をより詳細に説明するが、本発明はこれらの実施例によって限定されるものではない。
(1)排水処理装置の詳細図1に示す排水処理装置を用いた。各部の詳細は次のとおり。
(凝集沈殿部)攪拌槽、沈殿槽、膜原水貯留槽の3槽からなり、各槽の容量は全て10Lである。攪拌槽は薬液タンクと連結され、攪拌機が設置されている。
(凝集剤)下記の凝集剤を、表1に示す量(排水1Lに対する添加量)用いた。
有機凝集剤1:ハクトロンZ−123(伯東社製;天然系芳香族化合物)
有機凝集剤2:ハクトロンZ−A−320(伯東社製;アクリル酸とアクリルアミドの共重合体)
有機凝集剤3:ハイモロックSS−500(ハイモ社製;ポリアクリルアミド)無機凝集剤:硫酸アルミニウム混合凝集剤1(有機及び無機凝集剤が混合されたもの):モンモリロナイト90質量%とアルギン酸ナトリウム10質量%の混合物混合凝集剤2:硫酸アルミニウム97質量%とカチオン系高分子凝集剤(カチオン系ポリアクリルアミドとカチオン化デンプンの混合物)3重量%の混合物混合凝集剤3:オイルシャットH(三井金属エンジ社製;硫酸アルミニウム、ベントナイト、プロピレンジアミンの混合物)
(膜分離部)表1に示す素材の中空糸膜からなる膜モジュール(モジュール膜面積0.2m2、分画分子量:酢酸セルロース15万、ポリエーテルスルホン15万、ポリアクリロニトリル15万)を用い、膜間差圧は10kPaに維持した。
(活性炭処理部)ヤシ殻活性炭(CW130A,二村化学工業(株)製)1kgを充填したカラム(直径15cm×長さ30cm)を膜透過液ラインに取り付けて行った。
(2)測定方法実施例及び比較例における測定方法は、次のとおり。
(処理速度)運転開始から24時間後の膜分離部3に設置した透過液流量計(図1中のF1)の値とした。
(COD)運転開始から24時間後の透過液のCODを、HACH製の水質分析計により測定した。
【0046】実施例1〜7、比較例1、2ガソリンスタンドにおける洗車排水を集液した油水分離槽(図1の20と同構造の4つの槽を持つもの)の最終槽の排水を原水(COD98mg/L)とし、図1に示す排水処理装置を用いて処理を行った。濾過は内圧型デッドエンド濾過方式で行った。結果を表1に示す。
【0047】実施例8実施例1〜7に準じ、図2に示す排水処理装置を用いて処理を行った。但し、有機凝集剤としてアルギン酸ナトリウム5質量%及びカチオン系ポリアクリルアミド5質量%を含有し、無機凝集剤としてベントナイト45質量%及び硫酸アルミニウム45質量%を含有する混合凝集剤4を用いて、凝集沈殿処理を行った。更に、濾過は内圧型クロスフロー濾過方式で行い、膜間差圧15±5kPaの低圧力かつ定圧で、平均膜面線速0.05m/秒で濾過運転した。
【0048】
【表1】

【0049】表1から明らかなとおり、実施例1〜8では、有機及び無機凝集剤を併用することで、処理速度及びCOD除去率が、比較例1及び2の有機凝集剤のみに比べて大幅に向上していた。更に実施例1、5及び6は、活性炭処理がないが、COD除去率が高く、処理速度も高くなっており、実施例1は実施例5及び6よりも良い結果が得られていることから、中空糸膜としては酢酸セルロースを用いた場合が、処理効果が高かった。また、中空糸膜として酢酸セルロースを用いた実施例1〜3を比較すると、モンモリロナイトやベントナイトという無機の吸着性粘土鉱物を含む混合凝集剤(実施例1及び3)がよいことが解った。これらの結果から、凝集沈殿部において凝集剤として有機凝集剤と無機鉱物凝集剤とからなる混合凝集剤1(アルギン酸ナトリウムとモンモリロナイトの混合物)と、混合物凝集剤2(カチオン系ポリアクリルアミドと硫酸アルミニウムの混合物)とを併用し、中空糸膜として酢酸セルロースを用いた場合が、最も処理効果が高いことが確認された。
【0050】
【発明の効果】本発明の洗車排水処理用の凝集剤及び排水処理装置によれば、凝集剤処理と膜分離処理を組み合わせているので、油分や界面活性剤だけでなく、バクテリアの除去率も高い処理水が得られ、洗浄水としての再利用が容易となる。また凝集剤処理と膜分離処理との相乗的な処理作用の結果、排水の組成変動に応じて凝集剤の添加量を格別調整する必要はない。
【出願人】 【識別番号】000002901
【氏名又は名称】ダイセル化学工業株式会社
【識別番号】594152620
【氏名又は名称】ダイセン・メンブレン・システムズ株式会社
【出願日】 平成14年4月11日(2002.4.11)
【代理人】 【識別番号】100063897
【弁理士】
【氏名又は名称】古谷 馨 (外4名)
【公開番号】 特開2003−170007(P2003−170007A)
【公開日】 平成15年6月17日(2003.6.17)
【出願番号】 特願2002−108767(P2002−108767)