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【発明の名称】 固体懸濁物の除去方法
【発明者】 【氏名】河内 秀夫

【要約】 【課題】反応プロセスや発酵プロセスで発生する失活した触媒、反応副生成物、反応生成物又は菌体残渣といった微細な固体懸濁物を、目詰まりを頻発するような目開きの小さなフィルターや高価な遠心分離機を用いず、簡便に除去する方法を提供する。

【解決手段】液体中の微細な固体懸濁物を、液体に結晶性の化合物を含有させ、該化合物を冷却により結晶析出させて、その結晶により捕捉させる。微細な固体懸濁物はより粒径の大きな結晶に捕捉されることにより、容易に固液分離可能な状態にすることができ、簡便に除去される。
【特許請求の範囲】
【請求項1】 固体懸濁物、結晶性化合物を含有する液体を冷却し該化合物を析出させ固体懸濁物を除去することを特徴とする固体懸濁物除去方法。
【請求項2】 結晶性化合物が分子量1,000以下の有機化合物であることを特徴とする請求項1記載の固体懸濁物除去方法。
【請求項3】 塔型連続晶析装置を用いて冷却することを特徴とする請求項1記載の固体懸濁物除去方法。
【請求項4】請求項1記載の固体懸濁物の平均粒径が10μm以下である請求項1記載の固体懸濁物除去方法。
【発明の詳細な説明】【0001】
【発明の属する技術分野】本発明は、固体懸濁物を液体中より除去する方法に関する。
【0002】
【従来の技術】化学反応プロセスや発酵プロセスで取り扱われる液体には、プロセスにおいて発生する失活した触媒、反応副生成物、反応生成物又は菌体残渣が微細な固体懸濁物として分散している場合が一般的である。これらの微細な固体懸濁物(通常SSと言う。)は除去しないと製品に混入し、又除去しないで排出すると排出基準を満足しない上、環境に悪影響を与えるという問題を生じる。これらの問題を起こさないようにするため、製造工程において、配管途中にカートリッジフィルターやフィルタープレスを設け固体懸濁物を除去したり、遠心分離機を用いて除去する方法が採用されている。また排水に関しては有機系の高分子凝集剤を用いて、固体懸濁物(SS)をフロック状にした後固液分離する方法が知られている。晶析法を用いて固体懸濁物を除去する方法として、蒸発濃縮法により無機塩の結晶を析出させ、有機物を共晶する結晶として遠心分離器により分離する方法が知られている(特開平9−327688号)
【0003】
【発明が解決しようとする課題】しかし、カートリッジフィルターなどを用いる方法は、大きさが数ミクロン以下である微細な固体懸濁物を除去するためには目開きのごく小さいものを用いる必要があり、圧力損失が大きいという問題がある。また、目開きの小さいフィルターは目詰まりを頻発するため、短期間での交換、洗浄を余儀なくされ、安定操業の面でもコスト面でも問題となっていた。フィルタープレスや遠心分離機を用いる方法は、目詰まり対策として洗浄方法に工夫が必要であり、また機器自体が高価なものであるという問題があった。高分子凝集剤についても各種開発され、さまざまな系に対して単独、あるいは無機系凝集剤などとの組み合わせにより効果を発揮するものの、毒性のある残存モノマーが存在するという問題があった。また、蒸発濃縮法を用いた方法は、加熱を必要とするため、特に発酵プロセス等で得られる製品によくみられるような、熱的に不安定な物質を含む場合には適用できないという問題があった。
【0004】本発明は、このような問題を解決するため、微細な固体懸濁物を簡便に除去できる方法を提供する。
【0005】
【課題を解決するための手段】前述の目的を達成するために、本発明による固体懸濁物除去方法は、液体中より微細な固体懸濁物を除去するに際し、液体に結晶性の化合物を含有させ、冷却晶析法により該化合物を析出させて微細な固体懸濁物分を捕捉させ除去することを特徴とするものである。本発明によれば、微細な固体懸濁物は、析出してきた、粒径のより大きな結晶に捕捉される。
【0006】即ち、固体懸濁物、結晶性化合物を含有する液体を冷却し該化合物を析出させ固体懸濁物を除去することを特徴とする固体懸濁物除去方法。
【0007】結晶性化合物が分子量1,000以下の有機化合物であることを特徴とする請求項1記載の固体懸濁物除去方法。
【0008】塔型連続晶析装置を用いて冷却することを特徴とする請求項1記載の固体懸濁物除去方法。
【0009】請求項1記載の固体懸濁物の平均粒径が10μm以下である請求項1記載の固体懸濁物除去方法。である。
【0010】
【発明の実施の形態】本発明の実施の形態をさらに詳細に説明する。
【0011】本発明でいう固体懸濁物除去法で除去される固体懸濁物とは、液体に溶解せず懸濁しているものであり、単に放置又は静置するのみでは液体から単離できないものをいう。固体懸濁物の平均粒径については、特に制限ないが、フィルターによる処理が困難になる10μm以下である場合に本発明は特に効果を発揮する。固体懸濁物としては、例えばプロセスにおいて発生する失活した触媒、反応副生成物、反応生成物が固体の場合はその微紛、あるいは菌体残渣などがある。本発明で用いる結晶性化合物は原料自体に含まれている化合物又は化学反応プロセス、発酵プロセスにおいて副生する化合物等、固体懸濁物の除去処理の際に既に系中に存在している化合物でもよい。また固体懸濁物の除去処理を行う際に添加する化合物であってもよい。新たに添加する必要がないという観点から固体懸濁物の除去処理の際に既に系中に存在している化合物であることが好ましい。結晶性化合物としては、塩化ナトリウム、塩化カリウム等の無機化合物、ステアリン酸、尿素などの有機化合物が挙げられるが、化学反応プロセスや発酵プロセスの精製工程で多く用いられている有機溶媒への溶解性の観点から有機化合物が好ましい。結晶性とは該化合物が固体として出現した際にX線回折等により測定される構造の規則性を持つ性質を示すが、その規則性が固体中に占める割合は特に制限されない。好適な結晶性化合物は、冷却により結晶として析出するものであるので溶解度の温度依存性が大きく、低温における溶解度が小さいものである。溶解度の温度依存性は結晶性化合物を含有している液体との組合せによっても変化するので、結晶性化合物はそれを含有する液体に着目して選択する。例えば、ステアリン酸は40℃において100gの酢酸エチルに約20g溶解するが、0℃においては0.5g以下しか溶けないので、冷却により容易に結晶が析出する。また、エルゴステロールは40℃において100gのヘキサンに約0.5gしか溶けないが、0℃においてはさらに溶解度は低下して0.1g以下しか溶けなくなるので、やはり結晶を析出する。以上のような例が好適な組み合わせである。一方、安息香酸ナトリウムは40℃において100gの水に約60g溶解するが、0℃においてもその溶解度はほとんど変化しないので冷却による結晶の析出はない。このようなものが好ましくない例である。高分子凝集剤が毒性が問題となり又分子量が大きいほど良好な固体懸濁物除去性能を示すのに対し、本結晶性化合物は毒性がより少なく、比較的単純な構造を持つ化合物、即ち低分子化合物でも十分良好な固体懸濁物除去性能を示すことができる。分子量については、特に制限はないが安価で入手しやすいという観点から1,000以下であることが好ましく分子量500以下であることが更に好ましい。固体懸濁物、結晶性化合物を含有する液体としては、化学反応プロセスや発酵プロセスの精製工程で多く用いられている有機溶媒乃至水、又は有機溶媒同士や有機溶媒と水との混合物が用いられる。結晶性化合物を冷却により析出させるために結晶性化合物の溶解度の温度依存性が大きく、低温にて十分低い溶解度となる液体が選ばれる。結晶性化合物も上記のような溶解度の観点から液体との組み合わせによって選ばれる。具体的には液体としてメタノール、エタノール、イソプロパノールのようなアルコール類、これらアルコールと水との混合物、あるいは酢酸エチルを選択する場合は、通常、結晶性化合物としてステアリン酸、ステアリン酸メチル、ステアリン酸エチル、パルミチン酸、パルミチン酸メチル、ミリスチン酸、ラウリン酸、チオ尿素、尿素が好ましい。また液体としてノルマルヘキサン、シクロヘキサン、ヘプタンといった飽和炭化水素類を選択する場合は、通常、コレステロール、シトステロール、エルゴステロールを選択することが好ましい。冷却する方法としては、一般に行われているようなジャケット付き撹拌槽のジャケット部に冷凍機により冷却された冷媒を通液するような間接冷却方法が使用できるが、例えば、図1に示す塔型連続晶析装置を用いて行うことが、操作の簡便性や装置のコンパクトさの観点から好ましい。本発明で使用する装置については特に制限はなく、一般的に回分式晶析に用いられるジャケット付き撹拌槽で何ら問題はないが、図1に示したような塔型の連続晶析装置も用いることができる。前述したように本発明でいう微細な固体懸濁物には失活した触媒や反応副生成物、反応生成物が固体が固体の場合にはその微紛、あるいは菌体残渣等の無機物、有機物が考えられるが、この装置ではこれらを含有する液体を装置下部の供給ノズル1より供給する。供給された液体は冷却部2において冷却され、既に含有されている、あるいは予め含有させておいた結晶化する物質を析出し、析出した結晶は固体懸濁物を捕捉するとともに沈降する。冷却部2には撹拌装置を備えるが、例えば冷却部壁面に結晶が付着するような場合には、かきとり板付きの撹拌装置とすることもできる。固体懸濁物を捕捉した結晶はスラリーとしてスラリー出口ノズル3より払い出され、固液分離装置4にて回収される。一方結晶とともに固体懸濁物が除去された後の液体については処理液出口ノズル5より払い出される。なお固液分離装置4については処理液出口ノズル5に設置して、結晶をオーバーフローにより回収することも可能である。微細な固体懸濁物についても特に制限はないが、その存在量が少量の場合は結晶内、あるいは結晶に囲まれた状態で捕捉されるのに対して1000mg/Lを越えるような大量の固体懸濁物が存在する場合は析出する結晶性化合物の量にもよるが結晶表面に付着したような状態となって捕捉されるようになる。このような場合は繰り返し処理をおこなうか、他の除去方法を併用して処理することが考えられ、そのような処理方法を採用することに何ら問題はない。
【0012】
【実施例】次に本発明を実施例により具体的に説明する。
(実施例1)微細な固体懸濁物として平均粒径0.26μmの酸化チタン(石原産業製「タイペーク」R−820)を約50mg/l含有する抽出液(溶媒はメタノール)1リットルにステアリン酸を濃度6g/Lになるよう添加し、内径30mm、高さ450mmの塔型連続晶析装置に連続的に供給した。晶析装置の操作は塔頂の抜き出し口温度5℃、撹拌回転速度100rpm、液供給速度5ml/分(供給液は約50℃に保温)、平均滞留時間60分でおこなった。装置内で結晶が発生し、沈降するのが確認された。サンプリングした結晶は約200〜300μm四方の薄板状であり、容易にろ過のできるサイズであった。装置出口から出てくる処理液を目視確認したところほぼ清澄であり、固体懸濁物である酸化チタン分が除去されていることが確認できた。
【0013】(実施例2)微細な固体懸濁物として平均粒径0.26μmの酸化チタン(実施例1と同一のもの)を約50mg/l含有する反応液(溶媒は酢酸エチル)1リットルに尿素を約5g添加し、実施例1と同一の装置に連続的に供給して処理をおこなった。晶析装置の操作は実施例1と同一とした。装置内で結晶が発生し、沈降するのが確認された。サンプリングした結晶は粒径約50〜100μmの凝集結晶であり、容易にろ過のできるサイズであった。装置出口から出てくる処理液を目視確認したところ完全に清澄となっており、固体懸濁物は認められなかった。
(実施例3)微細な固体懸濁物として平均粒径4.6μmの酸化マンガン(工程発生品、平均粒径は島津製作所製レーザー回折式粒度分布計SALD−300Vにより測定)を約50mg/l含有する抽出液(溶媒はヘキサン)を実施例1と同一の装置に連続的に供給し、抽出液に約4g/L含有されているエルゴステロールを析出させる処理をおこなった。晶析装置の操作は実施例1と同一とした。装置内でエルゴステロールの結晶が発生し、沈降するのが確認された。サンプリングした結晶は粒径約100μmの凝集結晶であり、容易にろ過のできるサイズであった。装置出口から出てくる処理液を目視確認したところ清澄であり、固体懸濁物は認められなかった。
(実施例4)微細な固体懸濁物として平均粒径4.6μmの酸化マンガン(実施例3と同一のもの)を約5000mg/l含有する抽出液(溶媒はヘキサン)を実施例1と同一の装置に連続的に供給し、抽出液に約4g/L含有されているエルゴステロールを析出させる処理をおこなった。晶析装置の操作は実施例1と同一とした。装置内でエルゴステロールの結晶が発生し、沈降するのが確認された。サンプリングした結晶は粒径約100μmの凝集結晶であり、表面のほとんどを固体懸濁物が覆っている状態となったが、結晶は容易にろ過できた。装置出口から出てくる処理液を目視確認したところ、濁りは残っており固体懸濁物の存在が認められたが、その量は明らかに少なくなっていた。
(比較例1)実施例1と同一の液に対し、吸引ろ過装置(ヌッチェ)を用いたろ過処理により固体懸濁物の除去をおこなった。ろ紙はNo.2、70mm径のものを用いた。ろ紙はすぐに目詰まりを起こしはじめ、ろ過不能となった。
(比較例2)実施例3と同一の液に対し、比較例1と同様にして固体懸濁物の除去をおこなった。ろ紙は比較例1と同様、すぐに目詰まりを起こしはじめ、ろ過不能となった。
【0014】
【発明の効果】反応プロセスや発酵プロセスで発生する微細な固体懸濁物を、目詰まりの頻発等の問題のある目開きの小さなフィルターや高価な遠心分離機を用いずとも容易に除去することが可能となる。
【出願人】 【識別番号】000000941
【氏名又は名称】鐘淵化学工業株式会社
【出願日】 平成13年12月11日(2001.12.11)
【代理人】
【公開番号】 特開2003−170006(P2003−170006A)
【公開日】 平成15年6月17日(2003.6.17)
【出願番号】 特願2001−377155(P2001−377155)