| 【発明の名称】 |
形状記憶合金製部材を利用した駆動機構 |
| 【発明者】 |
【氏名】中山 征二 【住所又は居所】福岡県飯塚市大字立岩字帯田1049番地 九州ミツミ株式会社内
【氏名】中島 孝廉 【住所又は居所】福岡県飯塚市大字立岩字帯田1049番地 九州ミツミ株式会社内
|
| 【要約】 |
【課題】本発明は形状記憶合金製部材を利用した駆動機構に関し、簡単な構成で形状記憶合金製部材が破断する事故の発生を防止するようにすることを課題とする。
【解決手段】第1の線状部材31は、Ti−Ni系の形状記憶合金製であり、引っ張り変形させられている状態で通電されて加熱されと、収縮する。第1の過負荷吸収用ばね部材33が第1の線状部材31に直列に接続してある。第1の線状部材31は、本体11と脚部材12との間に張ってあり、収縮して、脚部材12を回動させる。足部12bが引っ掛って、第1の線状部材31に作用する引っ張り力が増すと、第1の過負荷吸収用ばね部材33が伸びて、第1の線状部材31に作用する過負荷を吸収して、第1の線状部材31が破断に到ることを防止する。 |
【特許請求の範囲】
【請求項1】 所定の温度にまで加熱されたときに変形する形状記憶合金製部材の変形によって被駆動部材を駆動させる駆動機構にあって、上記形状記憶合金製部材と直列に、該形状記憶合金製部材に作用する負荷が所定値を越えると弾性変形して該形状記憶合金製部材に上記所定値を越えて作用する負荷を吸収する過負荷吸収用ばね部材を設けた構成としたことを特徴とする形状記憶合金製部材を利用した駆動機構。 【請求項2】 請求項1記載の駆動機構において、上記被駆動部材の可動する範囲を上記形状記憶合金製部材に作用する負荷が過度にならない範囲に制限するストッパ機構を有する構成としたことを特徴とする駆動機構。 【請求項3】 請求項1又は請求項2記載の駆動機構を備えた構成としたことを特徴とするロボット装置。
|
【発明の詳細な説明】【0001】 【発明の属する技術分野】本発明は形状記憶合金製部材を利用した駆動機構に関する。 【0002】形状記憶合金製の部材は所定の温度にまで加熱することによって収縮又は膨張して記憶してある元の形状に戻る部材であり、人の筋肉と同じように収縮及び弛緩することから、小型のロボット等の駆動機構に利用されている。 【0003】 【従来の技術】従来の駆動機構は、所定の温度にまで加熱されたときに収縮する線状の形状記憶合金製部材を、本体と被駆動部材との間に張るように設けた構成である。形状記憶合金製部材を通電等によって加熱することによって、形状記憶合金製部材が収縮して、被駆動部材が駆動される。通電を停止すると、形状記憶合金製部材が冷却され、復帰用のばね部材によって、形状記憶合金製部材が伸ばされると共に、被駆動部材が元の位置へ戻される。 【0004】形状記憶合金製部材が収縮されて被駆動部材が駆動される過程で、被駆動部材が何かに当たった場合には、収縮動作中の形状記憶合金製部材に作用する引っ張り力が形状記憶合金製部材自体の引っ張り強度の限界を越えて、形状記憶合金製部材が破断することが起きてしまうことがある。 【0005】そこで、従来は、収縮動作中の形状記憶合金製部材に作用する引っ張り力を検知して、引っ張り力が引っ張り強度に至らないようにする制御を行っていた。 【0006】 【発明が解決しようとする課題】しかし、このためには、形状記憶合金製部材に作用する引っ張り力を検知する手段、引っ張り力が引っ張り強度より低く設定してある所定の値を越えたことを判断して、形状記憶合金製部材への通電を停止させる手段等が必要となって、駆動機構が複雑になってしまうという問題があった。 【0007】そこで、本発明は、上記課題を解決した形状記憶合金製部材を利用した駆動機構を提供することを目的とする。 【0008】 【課題を解決するための手段】請求項1の発明は、所定の温度にまで加熱されたときに変形する形状記憶合金製部材の変形によって被駆動部材を駆動させる駆動機構にあって、上記形状記憶合金製部材と直列に、該形状記憶合金製部材に作用する負荷が所定値を越えると弾性変形して該形状記憶合金製部材に上記所定値を越えて作用する負荷を吸収する過負荷吸収用ばね部材を設けた構成としたものである。 【0009】過負荷吸収用ばね部材は、形状記憶合金製部材に所定値を越えて作用する負荷を吸収して、形状記憶合金製部材に作用する負荷が過度にならないようにする。この過負荷吸収用ばね部材は、小さい部材であり、駆動機構のサイズを大きくさせない。またの過負荷吸収用ばね部材は、安価な部材であり、駆動機構の製造コストを高くしない。 【0010】請求項2の発明は、請求項1記載の駆動機構において、上記被駆動部材の可動する範囲を上記形状記憶合金製部材に作用する負荷が過度にならない範囲に制限するストッパ機構を有する構成としたものである。 【0011】ストッパ機構は、被駆動部材に大きい外力が作用した場合でも、形状記憶合金製部材に作用する負荷が過度にならないようにする。 【0012】請求項3の発明は、請求項1又は請求項2記載の駆動機構を備えた構成としたものである。 【0013】 【発明の実施の形態】図1は本発明の一実施例になる形状記憶合金製部材を利用した駆動機構30を有する昆虫ロボット装置10の一部を示す。図2は図1の駆動機構30の一部を概略的に示す。図2(A)は駆動前の状態を示し、図2(B)は駆動した時の状態を示し、図2(C)は駆動途中で足部が引っ掛ったときの動作の状態を示す。X1−X2は昆虫ロボット装置10の長さ方向、Y1−Y2は昆虫ロボット装置10の幅方向であり、脚部材12が延びている方向、Z1−Z2は昆虫ロボット装置10の高さ方向である。X1が昆虫ロボット装置10が前進する方向である。 【0014】11は本体、12は被駆動部材である脚部材である。昆虫ロボット装置10は、本体11に脚部材12が複数本並んで取り付けてあり、各脚部材12毎に駆動機構30が設けてある構成である。 【0015】本体11には柱部20がZ1である上方に突き出て設けてあり、柱部21がZ2である下方に突き出て設けてある。柱部20の上方の端に引っ掛け部22−1が、柱部21の下方の端に引っ掛け部22−3が、本体11に引っ掛け部22−2が形成してある。後述するピン14を中心としてみると、引っ掛け部22−1はピン14よりX1側で且つZ1側の位置であり、引っ掛け部22−3はX1−X2上はピン14と同じ位置で、且つ、Z1−Z2上はピン14よりZ2側の位置であり、引っ掛け部22−2は、Z1−Z2上はピン14と同じ位置で、且つ、X1−X2上はピン14よりX2側の位置である。 【0016】12は脚部材である。脚部材12は、その基部12a側を関節部材13を介して本体11に取り付けられており、Y2方向に延びている。12bは先端の足部である。関節部材13は、図3に併せて示すように、本体11上に植わっているピン14によって軸線15Zを中心に回動可能である。脚部材12は、その基部を関節部材13の一対の腕部13aの間に嵌合して、ピン16によって支持されている。よって、脚部材12は、軸線15Zを中心にX−Y面内で回動可能であると共に、軸線15Xを中心にY−Z面内で回動可能である。位置P1、P2、P3は、脚部材12の位置であり、基部12a側に近い順である。位置P1、P2、P3に、引っ掛け部17−1、17−2、17−3が形成してある。 【0017】次に駆動機構30について説明する。駆動機構30は、第1の線状部材31、第2の線状部材32、第1の過負荷吸収用ばね部材33、第2の過負荷吸収用ばね部材34、復帰用ばね部材35、電源36,37、スイッチSW1,SW2等よりなる構成である。 【0018】第1及び第2の線状部材31、32は、Ti−Ni系の形状記憶合金製であり、径が100μm程度の線状の部材であり、図1に示す長さより短い長さの形状が記憶されている。図1は第1及び第2の線状部材31、32が引っ張り変形されている状態である。第1及び第2の線状部材31、32は、ニクロム線に近い高い電気抵抗を有しており、通電させることによって加熱させることが可能である。第1及び第2の線状部材31、32は、図1に示すように引っ張り変形させた状態で通電させて加熱させると筋肉のように収縮し、冷却すると弛緩する、通電加熱駆動型の小型のリニアアクチュエータである。第1及び第2の線状部材31、32は、例えば、トキ・コーポレーション株式会社製のバイオメタル・ファイバー(商品名)である。なお、バイオメタルはトキ・コーポレーション株式会社の登録商標である。第1及び第2の線状部材31、32は、引っ張り強度Q1を有する。第1及び第2の線状部材31、32の最大の収縮力は、引っ張り強度Q1より大きい。 【0019】第1、第2の過負荷吸収用ばね部材33、34は、本発明の要部をなす部品であり、引っ張りコイルばねであり、第1及び第2の線状部材31、32の引っ張り強度Q1より少し低く設定してある引っ張り力Q2が作用すると伸びを開始するばね定数を有するばね特性を有する。 【0020】第1の線状部材31の一端には第1の過負荷吸収用ばね部材33の一端が接続してある。第1の線状部材31の他端が引っ掛け部17−3に引っ掛けてあり、第1の過負荷吸収用ばね部材33の他端が引っ掛け部22−3に引っ掛けてある。第1の線状部材31は、本体11と脚部材12との間に張ってあり、収縮して、脚部材12を、足部12bがZ2方向に移動させるようにピン16に関して時計方向に回動させる。この第1の線状部材31は通電されるようになっている。 【0021】第2の線状部材32の一端には第2の過負荷吸収用ばね部材34の一端が接続してある。第2の線状部材32の他端が引っ掛け部17−2に引っ掛けてあり、第2の過負荷吸収用ばね部材34の他端が引っ掛け部22−2に引っ掛けてある。第2の線状部材32は、本体11と脚部材12との間に張ってあり、収縮して、脚部材12を、足部12bがX2方向に移動させるようにピン14に関して時計方向に回動させる。この第2の線状部材32は通電されるようになっている。第1、第2の過負荷吸収用ばね部材33、34は第1、第2の線状部材31、32と本体11との間に設けてある。 【0022】復帰用ばね部材35は、その端を引っ掛け部22−1及び引っ掛け部17−1に引っ掛けて、本体11と脚部材12との間に張ってあり、脚部材12を二方向に回動させる。復帰用ばね部材35は、足部12bがX1方向に移動するように脚部材12をピン14を中心に反時計方向に回動させて復帰させ、且つ、足部12bがZ1方向に移動するように脚部材12をピン16を中心に反時計方向に回動させて復帰させる。このように復帰用ばね部材35は脚部材12を二方向に回動させるため、復帰用ばね部材は単一で足りている。 【0023】次に上記の構成になる駆動機構30の動作について説明する。 【0024】スイッチSW1を閉成すると、電源36からの電流が第1の線状部材31に流れ、第1の線状部材31がそれ自体の電気抵抗によって発熱して収縮し、脚部材12が駆動されて復帰用ばね部材35を伸ばしつつY−Z面内で回動され、足部12bがZ2方向に移動される。この動作については後に詳述する。 【0025】スイッチSW2を閉成すると、電源37からの電流が第2の線状部材32に流れ、第2の線状部材32がそれ自体の電気抵抗によって発熱して収縮し、脚部材12が駆動されて復帰用ばね部材35を伸ばしつつX−Y面内で回動され、足部12bがX2方向に移動される。 【0026】スイッチSW1及びSW2を開成すると、第1及び第2の線状部材31、32には電流が流れなくなって、第1及び第2の線状部材31、32は空冷され、弛緩し、脚部材12は復帰用ばね部材35のばね力によって上記とは逆方向に回動されて元の位置に復帰される。続いて、スイッチSW1及びSW2が再度閉成され、第1及び第2の線状部材31、32が再度加熱されて収縮し、脚部材12が再度駆動される。 【0027】他の脚部材も同じように駆動されて、その後に復帰される。脚部材12及び他の脚部材がこのように駆動されて回動されることによって、昆虫ロボット装置10は上下動しつつ、X1方向に移動される。 【0028】次に、第1の線状部材31及び第1の過負荷吸収用ばね部材33の動作について、図2を参照して説明する。 【0029】図2(A)は図1に示す状態、即ち、駆動機構30が動作する前の状態である。図2(B)は第1の線状部材32が収縮した状態である。 【0030】第1の線状部材32は、長さL0に形状が記憶されている。第1の過負荷吸収用ばね部材33は自然長さがL10である。なお、L0、L1は、L0<L1の関係にあり、L10、L11は、L10<L11の関係にある。 【0031】図2(A)に示す駆動機構30が動作する前の状態では、脚部材12は復帰用ばね部材35のばね力によって反時計方向に回動されており、第1の線状部材32は引っ張り変形させられており、長さはL1である。 【0032】スイッチSW1を閉成すると電源36からの電流が第1の線状部材31に流れ、図2(B)に示すように、第1の線状部材31がそれ自体の電気抵抗によって発熱して収縮し、脚部材12が駆動されて復帰用ばね部材35を伸ばしつつY−Z面内で回動され、足部12bがZ2方向に移動される。このときに第1の線状部材31に作用している引っ張り力は、前記のQ2より低い値である。第1の過負荷吸収用ばね部材33は伸びないで、長さはL10のままである。 【0033】スイッチSW1を開成すると、第1の線状部材31には電流が流れなくなって、第1の線状部材31は空冷され、弛緩し、脚部材12は復帰用ばね部材35のばね力によって上記とは逆方向に回動されて元の位置に復帰され、図2(A)に示す状態となる。 【0034】図2(C)は、第1の線状部材31が通電されそれ自体の電気抵抗によって発熱して収縮する途中で、足部12bが障害物40に当たって脚部材12がそれ以上は回動が出来なくなってしまった場合を示す。この場合には、第1の過負荷吸収用ばね部材33が伸ばされて、長さがL11となる。第1の過負荷吸収用ばね部材33は第1の線状部材31に作用している引っ張り力が前記のQ2を越えると伸びを開始して、第1の線状部材31に作用しようとする過負荷を吸収する。よって、収縮した第1の線状部材31に作用している引っ張り力はQ2程度に留まり、引っ張り強度Q1には到らず、第1の線状部材31が破断する事故は発生せず、防止される。 【0035】なお、第2の過負荷吸収用ばね部材34も、上記の第1の過負荷吸収用ばね部材33と同様に、第2の線状部材32に作用している引っ張り力が前記のQ2を越えると伸びを開始する。よって、第2の過負荷吸収用ばね部材34は第2の線状部材32に作用しようとする過負荷を吸収し、収縮した第2の線状部材32に作用している引っ張り力はQ2程度に留まり、引っ張り強度Q1には到らず、第2の線状部材32が破断する事故は発生せず、防止される。 【0036】なお、第1、第2の過負荷吸収用ばね部材33、34を第1、第2の線状部材31、32と脚部12との間に設けてもよく、上記と同じ効果が得られる。 【0037】駆動機構30は、第1、第2の過負荷吸収用ばね部材33、34を追加して、第1、第2の線状部材31、32と直列に設けた構成であり、従来に比べて小型であり、且つ、製造コストも安価である。また、駆動機構30が小型で且つ安価であるため、昆虫ロボット装置10も小型で且つ安価である。 【0038】図3(A)、(B)は、関節部材13の部分を拡大して示す。50,51はストッパであり、対をなし、本体11上に設けてあり、関節部材13の腕部13a,13bを係止して、脚部材12のX−Y面内での回動の範囲を規制する。規制する回動の範囲は、第2の線状部材32に引っ張り強度Q1に到る負荷が作用しないように定めてある。60,61はストッパであり、対をなし、関節部材13の腕部13a,13bにこれを跨ぐように設けてあり、脚部材12を係止して、脚部材12のY−Z面内での回動の範囲を規制する。規制する回動の範囲は、第1の線状部材31に引っ張り強度Q1に到る負荷が作用しないように定めてある。ストッパ50,51,60,61はストッパ機構70を構成し、脚部材12に強い外力が作用した場合に、脚部材12の回動する角度範囲が制限され、第1、第2の線状部材31,32に過度の負荷が作用することが防止される。 【0039】なお、本発明は、形状記憶合金製部材が加熱されて伸びるものである場合にも、また、形状記憶合金製部材が線状部材以外の部材である場合にも、過負荷吸収用ばね部材を形状記憶合金製部材と直列に設けることによって実現することが可能である。形状記憶合金製部材が加熱されて伸びるものである場合には、過負荷吸収用ばね部材は、圧縮コイルばねが最適である。 【0040】 【発明の効果】上述の如く、本発明は形状記憶合金製部材と直列に過負荷吸収用ばね部材を設けた構成としたものであるため、形状記憶合金製部材に作用する負荷が過度にならならず形状記憶合金製部材が破断する事故が発生しない駆動機構であって、且つ、小型で且つ製造コストが安価である駆動機構を実現することが出来る。 【0041】また、本発明はストッパ機構を設けた構成であるため、被駆動部材に大きい外力が作用した場合でも、形状記憶合金製部材に作用する負荷が過度にならならず形状記憶合金製部材が破断する事故が発生しない駆動機構を実現することが出来る。
|
| 【出願人】 |
【識別番号】000006220 【氏名又は名称】ミツミ電機株式会社 【住所又は居所】東京都多摩市鶴牧2丁目11番地2
|
| 【出願日】 |
平成14年2月5日(2002.2.5) |
| 【代理人】 |
【識別番号】100070150 【弁理士】 【氏名又は名称】伊東 忠彦
|
| 【公開番号】 |
特開2003−225474(P2003−225474A) |
| 【公開日】 |
平成15年8月12日(2003.8.12) |
| 【出願番号】 |
特願2002−28539(P2002−28539) |
|