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【発明の名称】 ゴルフクラブのヘッド及びこれを用いたゴルフクラブ
【発明者】 【氏名】中野 光一
【住所又は居所】福岡県北九州市八幡西区築地町1番1号 株式会社高田工業所内

【要約】 【課題】用途に応じてその特性の異なる新しいタイプのゴルフクラブのヘッド及びこれを用いたゴルフクラブを提供する。

【解決手段】使用時にゴルフボールが当たるフェイス部12の主要部又は全部に傾斜機能材料を用いた。フェイス部12を構成する傾斜機能材料は中央から左右方向に、中央から上下方向に、中央から同心状、あるいは左右の一方から他方に、上下の一方から他方にその物理的性質が変化する場合があり、これによって、ゴルフクラブのヘッド10のゴルフボールに対する打撃応答を制御する。
【特許請求の範囲】
【請求項1】 使用時にゴルフボールが当たるフェイス部の主要部又は全部に傾斜機能材料を用いたことを特徴とするゴルフクラブのヘッド。
【請求項2】 請求項1記載のゴルフクラブのヘッドにおいて、前記フェイス部の傾斜機能材料の中央部を硬質金属材料によって構成し、その周囲を中央部から周囲方向に向けて徐々に硬度が小さい金属材料によって構成したことを特徴とするゴルフクラブのヘッド。
【請求項3】 請求項1記載のゴルフクラブのヘッドにおいて、前記フェイス部の傾斜機能材料の中央部を軟質金属材料によって構成し、その周囲を中央部から周囲方向に向けて徐々に硬度の大きい金属材料によって構成したことを特徴とするゴルフクラブのヘッド。
【請求項4】 請求項1記載のゴルフクラブのヘッドにおいて、前記フェイス部の傾斜機能材料の中央部を比重の大きい金属材料によって構成し、その周囲を中央部から周囲方向に向けて徐々に比重の小さい金属材料によって構成したことを特徴とするゴルフクラブのヘッド。
【請求項5】 請求項1記載のゴルフクラブのヘッドにおいて、前記フェイス部の傾斜機能材料の中央部を比重の小さい金属材料によって構成し、その周囲を中央部から周囲方向に徐々に比重の大きい金属材料によって構成したことを特徴とするゴルフクラブのヘッド。
【請求項6】 請求項1記載のゴルフクラブのヘッドにおいて、前記フェイス部の傾斜機能材料の中央部をヤング率の大きい金属材料によって構成し、その周囲を中央部から周囲方向に向けて徐々にヤング率の小さい金属材料によって構成したことを特徴とするゴルフクラブのヘッド。
【請求項7】 請求項1記載のゴルフクラブのヘッドにおいて、前記フェイス部の傾斜機能材料の中央部をヤング率の小さい金属材料によって構成し、その周囲を中央部から周囲方向に徐々にヤング率の大きい金属材料によって構成したことを特徴とするゴルフクラブのヘッド。
【請求項8】 請求項2〜7のいずれか1項に記載のゴルフクラブのヘッドにおいて、前記傾斜機能材料の物理的性質が上下方向には同じであるが、中央部からその両側方向に向けて変化することを特徴とするゴルフクラブのヘッド。
【請求項9】 請求項2〜7のいずれか1項に記載のゴルフクラブのヘッドにおいて、前記傾斜機能材料の物理的性質が水平方向には同じであるが、中央部からその上下方向に向けて変化することを特徴とするゴルフクラブのヘッド。
【請求項10】 請求項2〜7のいずれか1項に記載のゴルフクラブのヘッドにおいて、前記傾斜機能材料の物理的性質が中心部を基準にして半径方向外側に向けて変わることを特徴とするゴルフクラブのヘッド。
【請求項11】 請求項10記載のゴルフクラブのヘッドにおいて、前記傾斜機能材料が半径方向に物理的性質の異なる円柱材をその軸心とは交差する方向にスライスした部材からなることを特徴とするゴルフクラブのヘッド。
【請求項12】 請求項8及び9のいずれか1項に記載のゴルフクラブのヘッドにおいて、前記傾斜機能材料が半径方向に物理的性質の異なる円柱材をその軸心方向に平行にスライスした部材からなることを特徴とするゴルフクラブのヘッド。
【請求項13】 請求項1〜12のいずれか1項に記載のゴルフクラブのヘッドにおいて、前記フェイス部の厚みは中央部で薄くその周辺部が徐々に厚くなっていることを特徴とするゴルフクラブのヘッド。
【請求項14】 請求項1〜12のいずれか1項に記載のゴルフクラブのヘッドにおいて、前記フェイス部の厚みは中央部で厚くその周辺部が徐々に薄くなっていることを特徴とするゴルフクラブのヘッド。
【請求項15】 請求項1〜14のいずれか1項に記載のゴルフクラブのヘッドを用いたゴルフクラブであって、ウッド、アイアン及びパターのいずれか1のクラブからなることを特徴とするゴルフクラブ。
【発明の詳細な説明】【0001】
【発明の属する技術分野】本発明は、傾斜機能を有する複合材料を使用してゴルフクラブに従来のゴルフクラブとは異なる特性を与えたゴルフクラブのヘッド(以下、単に「ゴルフクラブヘッド」という場合もある)及びこれを用いたゴルフクラブに関する。
【0002】
【従来の技術】ゴルフクラブの歴史をふり返ると、ゴルフクラブのヘッドは当初柿の木から製造されていた。この場合、ゴルフクラブは中実で全体の弾性解析、反撥によってボールの打撃の解析が行われていた。その後、ゴルフクラブのヘッドに金属材料が適用されるようになり、中空の構造が可能となり、ステンレス鋼や、より軽量化を図るためにチタン等が適用されてきている。そして、この場合は、ゴルフクラブ(ウッド、アイアン、パター)の打撃面(フェイス部)の弾性解析、反撥によってボールの打撃の解析が行われていた。
【0003】
【発明が解決しようとする課題】ところが、従来のゴルフクラブのヘッドにおいては、ゴルフクラブのヘッドのフェイス部は、均一な一様金属材料で製造されていたので、フェイス部における諸物性(弾性係数、密度、弾性波の伝播速度)を変えることは不可能であった。一方、ゴルフクラブのヘッドは、競技時には打ったボールの飛距離を向上させ、フックやスライスを発生させないのが好ましいが、練習時に使用するゴルフクラブの場合には、飛距離がでないゴルフクラブ、フックやスライスが生じやすいゴルフクラブ等の要求があり、従来のフェイス部に単一の金属材料を使用したゴルフクラブにおいては、実施困難な場合があった。本発明はかかる事情に鑑みてなされたもので、用途に応じてその特性の異なる新しいタイプのゴルフクラブのヘッド及びこれを用いたゴルフクラブを提供することを目的とする。
【0004】
【課題を解決するための手段】前記目的に沿う第1の発明に係るゴルフクラブのヘッドは、使用時にゴルフボールが当たるフェイス部の主要部又は全部に傾斜機能材料を用いている。これによって、従来の単一の材料からなるゴルフクラブに比較して更に用途に応じたゴルフクラブ、例えば、飛距離の出る競技用のゴルフクラブ、飛距離の出ない練習用のゴルフクラブ、ゴルフボールの当たる位置が適切でないとスライスやフックを生じやすいゴルフクラブを提供できる。即ち、ゴルフクラブのヘッドで叩かれたゴルフボールの持つ運動エネルギーは、ゴルフクラブヘッドの重量及び材質によって変化する。即ち、ボールの飛距離を大きくしようとする場合には、大きなインパクトを一定時間与えるのが好ましい。大きなインパクトになる要素として、a)そのボールが当接した部分の材質が硬いこと、b)質量が大であること、長時間ボールとフェイス部が接しているためには、c)ボールが接している部分の弾性変形量が大きいことが必要である。従って、ゴルフクラブヘッドのフェイス部を単一の材料で構成したのでは、a)及びb)の条件を満足させることは可能であるが、c)の条件も併せて満足させることは難しい。ところが、フェイス部に傾斜機能材料を用いることによって、例えば、ボールが直接当接する部分は、イ)硬くて、ロ)比重の大きい金属材料にし、ボールが直接当接する部分の外側は、ハ)徐々に弾性変形量の大きな金属材料にすることができ、これによって打ったボールの飛距離を伸ばすことができる。
【0005】また、練習用のゴルフクラブにおいては、飛距離を抑える場合がある。この場合には、フェイス部のうちボールが直接当たる部分には、衝撃力の小さい、即ちd)軟質の金属材料で、e)比重の小さい金属材料を使用し、更にその周囲をf)硬くて弾性変形量の小さい金属材料にすることになる。この場合も、傾斜機能材料をフェイス部に使用することによって、このような目的のゴルフクラブを提供することが可能である。更には、練習用又は競技用であっても初心者用のゴルフクラブにおいては、例えば、スライスやフックが生じにくいゴルフクラブを必要とする場合もある。この場合は、ボールが当たる部分を中心にして両側にその重心位置があると比較的フックやスライスが生じにくい。この場合も傾斜機能材料を使用することによって要求を満たすことができる。更には、ボールが当接する位置にフェイス部の重心位置を配置すると、その部分を中心にしていずれか一方にボールが当たった場合には、スライスやフックが生じ易く、上級者が練習するのに最適のゴルフクラブとなる。
【0006】一般に、ゴルフボールがゴルフクラブに当たった場合の衝撃力は、以下の式(1)に示すように、弾性波の伝播速度に密接な関係があり、剪断弾性係数Gと縦弾性係数Eとの関係は以下の式(2)に記載する関係がある。
C={(κ+4/3G)/ρ}1/2 ・・・・・(1)
G=E/2(1+ν) ・・・・・(2)
ここで、C:自由固体中の縦波(弾性波)の伝播速度、κ:体積弾性率、ρ:密度、G:剪断弾性係数、E:縦弾性係数、ν:ポアソン比これらは金属材料特有の定数であり、従来のゴルフクラブのヘッドにおいては、これらの性状は均一であったが、傾斜機能材料をフェイス部に用いることによって、これらの定数をフェイス部の場所によって変えることができる。従って、ゴルフボールが直接当たる場所の材料に、縦弾性係数(E)の大きい材料を使用し、その周囲に縦弾性係数(E)の小さい材料を使用し、縦弾性係数が連続的に変わるように傾斜配置すると、ゴルフクラブからゴルフボールに伝わる運動エネルギーが増加して飛距離がでる。
【0007】飛距離とフェイス部との関係は、縦弾性係数(E)のみではなく、ゴルフクラブが当たった場合のフェイス部の慣性力にも密接に関係する。慣性力はフェイス部材料の比重×容積に関係し、これらが大きいとより大きなインパクトをゴルフボールに与えることができる。また、ゴルフボールの飛距離はフェイス部の弾性変形速度にも密接に関係し、弾性変形速度は、前記した自由固体中の縦波の伝播速度(C)に密接に関係する。この縦波の伝播速度(C)が小さい場合には、ゴルフボールのフェイス部に衝突してから、フェイス部の弾性変形が遅れるので、フェイス部にゴルフボールを押し返す十分なエネルギーの蓄積が少なくなるので、結局は飛距離がでないことになる。従来はゴルフクラブヘッドのフェイス部は単一の材料しか使われておらず、これらを制御することは材料の選定、フェイス部の形状を制御することによって行われていたが、本発明ではフェイス部に傾斜機能材料の用いて、部分的にその物理的特性を変え、従来では不可能であった種々のゴルフクラブの特性を発揮させることにした。そして、ゴルフクラブのヘッドに求められるのは単に飛距離だけではなく、飛距離の出ないゴルフクラブや、スライスやフックを積極的に起こすゴルフクラブ、飛距離をより正確に制御可能なゴルフクラブ等の要求があり、フェイス部に傾斜機能材料を用いることはこれらの期待に応えるものである。更には、傾斜機能材料を用いたフェイス部の厚みを変えることもでき、これによって、更に全体的な質量の変化をフェイス部に与えることができる。
【0008】第2の発明に係るゴルフクラブのヘッドは、第1の発明に係るゴルフクラブのヘッドにおいて、前記フェイス部の傾斜機能材料の中央部を硬質金属材料によって構成し、その周囲を中央部から周囲方向に向けて徐々に硬度が小さい金属材料によって構成している。第3の発明に係るゴルフクラブのヘッドは、第1の発明に係るゴルフクラブのヘッドにおいて、前記フェイス部の傾斜機能材料の中央部を軟質金属材料によって構成し、その周囲を中央部から周囲方向に向けて徐々に硬度の大きい金属材料によって構成している。第4の発明に係るゴルフクラブのヘッドは、第1の発明に係るゴルフクラブのヘッドにおいて、前記フェイス部の傾斜機能材料の中央部を比重の大きい金属材料によって構成し、その周囲を中央部から周囲方向に向けて徐々に比重の小さい金属材料によって構成している。第5の発明に係るゴルフクラブのヘッドは、第1の発明に係るゴルフクラブのヘッドにおいて、前記フェイス部の傾斜機能材料の中央部を比重の小さい金属材料によって構成し、その周囲を中央部から周囲方向に徐々に比重の大きい金属材料によって構成している。
【0009】第6の発明に係るゴルフクラブのヘッドは、第1の発明に係るゴルフクラブのヘッドにおいて、前記フェイス部の傾斜機能材料の中央部をヤング率の大きい金属材料によって構成し、その周囲を中央部から周囲方向に向けて徐々にヤング率の小さい金属材料によって構成している。第7の発明に係るゴルフクラブのヘッドは、第1の発明に係るゴルフクラブのヘッドにおいて、前記フェイス部の傾斜機能材料の中央部をヤング率の小さい金属材料によって構成し、その周囲を中央部から周囲方向に徐々にヤング率の大きい金属材料によって構成している。第8の発明に係るゴルフクラブのヘッドは、第2〜第7の発明に係るゴルフクラブのヘッドにおいて、前記傾斜機能材料の物理的性質が上下方向には同じであるが、中央部からその両側方向に向けて変化している。第9の発明に係るゴルフクラブのヘッドは、第2〜第7の発明に係るゴルフクラブのヘッドにおいて、前記傾斜機能材料の物理的性質が水平方向には同じであるが、中央部からその上下方向に向けて変化している。
【0010】第10の発明に係るゴルフクラブのヘッドは、第2〜第7の発明に係るゴルフクラブのヘッドにおいて、前記傾斜機能材料の物理的性質が中心部を基準にして半径方向外側に向けて変わっている。第11の発明に係るゴルフクラブのヘッドは、第10の発明に係るゴルフクラブのヘッドにおいて、前記傾斜機能材料が半径方向に物理的性質の異なる円柱材をその軸心とは交差する方向にスライスした部材からなる。第12の発明に係るゴルフクラブのヘッドは、第8、第9の発明に係るゴルフクラブのヘッドにおいて、前記傾斜機能材料が半径方向に物理的性質の異なる円柱材をその軸心方向に平行にスライスした部材からなる。
【0011】第13の発明に係るゴルフクラブのヘッドは、第1〜第12の発明に係るゴルフクラブのヘッドにおいて、前記フェイス部の厚みは中央部で薄くその周辺部が徐々に厚くなっている。第14の発明に係るゴルフクラブのヘッドは、第1〜第12の発明に係るゴルフクラブのヘッドにおいて、前記フェイス部の厚みは中央部で厚くその周辺部が徐々に薄くなっている。第13、第14の発明に係るゴルフクラブのヘッドにおいては、フェイス部の厚みを変えることによって、弾性変形量、蓄積される弾性エネルギー、弾性変形速度も制御され、更に多様な用途を有するゴルフクラブのヘッドとなる。そして、第15の発明に係るゴルフクラブは、第1〜第14の発明に係るゴルフクラブのヘッドを用いたゴルフクラブであって、ウッド、アイアン及びパターのいずれか1のクラブからなる。
【0012】
【発明の実施の形態】続いて、添付した図面を参照しつつ、本発明を具体化した実施の形態につき説明し、本発明の理解に供する。ここに、図1は本発明の第1の実施の形態に係るゴルフクラブヘッドの斜視図、図2は本発明の第2の実施の形態に係るゴルフクラブヘッドの説明図、図3(A)は本発明の第3の実施の形態に係るゴルフクラブヘッドの説明図、(B)は同フェイス部の縦断面図、図4は本発明の第4の実施の形態に係るゴルフクラブヘッドのフェイス部の断面図、図5(A)は本発明の第5の実施の形態に係るゴルフクラブヘッドの説明図、(B)は同フェイス部の横断面図、図6は本発明の第6の実施の形態に係るゴルフクラブヘッドの説明図、図7は本発明の第7の実施の形態に係るゴルフクラブヘッドの説明図、図8は本発明の第8の実施の形態に係るゴルフクラブヘッドの説明図、図9(A)は本発明の第9の実施の形態に係るゴルフクラブヘッドの斜視図、(B)は同説明図、図10(A)、(B)は円柱状の傾斜機能材料からゴルフクラブヘッドのフェイス部を製造する説明図、図11(A)、(B)は本発明の第10、第11の実施の形態に係るゴルフクラブヘッドの断面図、図12はゴルフクラブヘッドのフェイス部の製造過程を示す工程図である。
【0013】図1に示すように、本発明の第1の実施の形態に係るゴルフクラブヘッド10は全体が金属からなるアイアンクラブに使用され、ヘッド本体11と、その正面側のフェイス部12と、ヘッド本体11の一方側に設けられたロッドの取付け部13とを有し、フェイス部12に傾斜機能材料が用いられている。この傾斜機能材料は各層を形成する材料が、フェイス部12の外形に合わせて正面視して楕円形になるように構成されている。なお、ロッドの取付け部13に、周知のグリップ部が設けられた金属パイプからなる柄を取付けるとゴルフクラブになる(以下の、実施の形態も同様)。中央部の材質Aは、硬く(即ち、ヤング率が大)て比重の大きい例えば、タングステンを使用し、中央部から周囲方向に向けて徐々に硬度(ヤング率)、比重を小さくし、周囲の材質Bは柔らかく(即ち、ヤング率が小さく)て比重の小さい材質(例えば、チタン)を使用する。このような材質の製造方法について、図12を参照しながら説明する。
【0014】まず、材質Aと材質Bの選定を行う(ステップS1)。この実施の形態では材質Aにタングステン、材質Bにチタンを使用したが、製造しようとするゴルフクラブの用途を考慮して決める。その組み合わせの他の例としては、(1)銅とステンレス、(2)タングステンとマグネシウム(又はその合金)、(3)タングステンとアルミニウム(又はその合金)、(4)モリブデンとマグネシウム(又はその合金)、(5)モリブデンとアルミニウム(又はその合金)、(6)モリブデンと銅等がある。こらの金属は、その比重γ(即ち密度ρ)、縦弾性係数(E)及び硬度のいずれか2以上が異なる。従って、これらの材料を組み合わせた傾斜機能材料を用い、更には以上に説明した第1の実施の形態に係るゴルフクラブのヘッド及び以下に説明する第2〜第11の実施の形態に係るゴルフクラブのヘッドのようにその配置を変えることによって用途に応じたゴルフクラブを提供できる。
【0015】次に、このゴルフクラブのヘッドに使用する傾斜機能材料の製造方法について説明する。材料Aと材料Bは粉体に加工されており、その配合比を複数段階(例えば、11段階)に分けた混合粉体を用意する。従って、第1の粉体は材料Aが100%、第2の粉体は材料Aが90%で材料Bが10%、第3の粉体は材料Aが80%で材料Bが20%、第4の粉体は材料Aが70%で材料Bが30%、第5の粉体は材料Aが60%で材料Bが40%、第6の粉体は材料Aが50%で材料Bが50%、第7の粉体は材料Aが40%で材料Bが60%、第8の粉体は材料Aが30%で材料Bが70%、第9の粉体は材料Aが20%で材料Bが80%、第10の粉体は材料Aが10%で材料Bが90%、第11の粉体は材料Aが100である。これらの第1〜第11の粉体は材料Aと材料Bを所定の量だけ用意して、V型混合機を用いて混合して製造する(ステップS2)。
【0016】次に、第1〜第11の材料を入れるカプセル(容器)の設計を行い(ステップS3)、これに合わせて例えば炭素鋼等でカプセルを製作し(ステップS4)、これに適合する加圧板を準備する。この加圧板は塑性変形を考慮し、端面処理を行っておく(ステップS5)。このそれぞれのカプセルに第1〜第11の材料を入れて(ステップS6)、真空脱気を行う(ステップS7)。真空脱気は600℃で約3時間程度行う。この後、カプセルを圧接又は溶接等の手段で封入し(ステップS8)、1回目のHIP処理を行う(約1000℃で4時間)。なお、このHIP処理の温度は材料A、Bの双方の融点以下の温度を用いる。これによって、第1〜第11の材料の焼結体ができあがる(ステップS9)ので、各焼結体を鋸切断、旋盤加工、ワイヤカットの手法を用いて機械加工を行う(ステップS10)。この場合の形状は、板状に積層する場合には、平面状の板材に、同心状に積層する場合には円筒状になる。各焼結体の接合面を研磨する(ステップS11)。そして、第1〜第11の材料の焼結体を順にカプセル内に入れて(ステップS12)、600℃で3時間程度の真空脱気処理を行い(ステップS13)、脱気管の圧接又は溶接によりカプセルの封入を行い(ステップS14)、2回目のHIP処理を行う(ステップS15)。この後、鋸切断、旋盤加工、ワイヤカット等の機械加工を行って(ステップS16)、二次製品であるフェイス部12が製造される(ステップS17)。
【0017】この実施の形態では、フェイス部12は楕円形であって、中央は材料A(例えば、タングステン)のみとなって、周端部は材料B(例えば、チタン)となっている。フェイス部12は楕円状となっているが、これは図10(A)に示す傾斜機能材料38を一点鎖線a4に示すように、同心円状の傾斜機能材料を製造し、これを斜めに切断することによって行うのが好ましいが、円筒状の傾斜機能材料を一方向に潰して楕円柱体を造り、これを輪切りにしてもよい。この実施の形態では、中央が硬く周囲ほど柔らかくなるが弾性力を有し、ゴルフボールの硬い面を弾性的に当接させるので、より飛距離のでるクラブとすることができる。ここで、フェイス部12の材料Aと材料Bとを入れ換えて、中央の材料Aを例えばチタンに、周端部の材料Bを例えばタングステンにした傾斜機能材料にすると、中央部分が非硬質で周囲が硬質であるので、ゴルフボールに対するインパクトが弱くなり大きな飛距離のでないクラブとなる。ここで、中央部分の材料Aをアルミニウムにすると更に飛距離は出なくなる。なお、説明を容易にするため、図1におけるフェイス部12を構成する傾斜機能材料は7層状態で示されているが、本発明は傾斜機能材料の各成分の層数によっては限定されず、前記した説明のように11層であってもよいし、その他の層数であってもよい(以下の実施の形態においても同様)。
【0018】図2は本発明の第2の実施の形態に係るゴルフクラブのヘッド14を示すが、フェイス部15に傾斜機能材料が使用されている。この傾斜機能材料は、その物理的性質が上下方向には同じであるが、中央部からその両側方向に向けて変化している。そして、製造にあっては、粉体材料を板状に積層して構成した同一種類の傾斜機能材料16、17を材料Aの部分を向かい合わせて固相接合し、両側が材料Bとなるようにしている。なお、この実施の形態では材料Bの両側には更に別の金属(例えば、鉄やステンレス、銅、真鍮)を設けているが、フェイス部15の全体を傾斜機能材料によって構成することもできる。なお、18はヘッド本体を、19は取付け部を示す(以下の第5〜第8の実施の形態においても同じ)。
【0019】図3(A)、(B)は本発明の第3の発明に係るゴルフクラブのヘッド20を示すが、フェイス部21に、物理的性質が水平方向には同じであるが、中央部からその上下方向に向けて変化する傾斜機能材料を使用している。具体的には上下方向に異なる材料A、Bの粉体が積層された傾斜機能材料22、23を図3(B)に示すように対向状態で接合して構成されている。なお、符号24はヘッド本体、25は取付け部を示している。図4は第3の実施の形態に係るゴルフクラブのヘッド20を更に変形させた本発明の第4の実施の形態に係るゴルフクラブのヘッドに使用するフェイス部26を示すが、図に示すようにフェイス部26を構成する傾斜機能材料が、同心円状に積層されて半径方向に物理的性質の異なる円柱材をその軸心方向に平行にスライスした部材によって構成されている。なお、その他の構造はゴルフクラブのヘッド20と同じである。
【0020】図5(A)、(B)は本発明の第5の実施の形態に係るゴルフクラブのヘッド27を示すが、フェイス部28は図に示すように上下方向は同一の材料からなっているが左右方向に徐々に物理的性質の異なる傾斜機能材料を用いている。そして、この傾斜機能材料は、図5(B)に示すように、同心円状に積層されて半径方向に物理的性質の異なる円柱材をその軸心方向に平行にスライスした部材によって構成されている。即ち、図10(B)に示す傾斜機能材料38を一点鎖線a1又はa2に示すように切断した部材によって構成されている。図6は本発明の第6の実施の形態に係るゴルフクラブのヘッド29を示すが、フェイス部30に、材料Aを中心にして同心状にその物理的性質が変化する円柱材からなる傾斜機能材料を用いている。この傾斜機能材料は、図10(A)に示す傾斜機能材料38を一点鎖線a3で示すように、同心円状に積層された傾斜機能材料をその軸心と直交する方向に切断したものを使用している。
【0021】以上の第1〜第6の実施の形態においては、いずれもフェイス部の中心位置から上下、左右及び周囲に向けて物理的性質が変化する傾斜機能材料を用いているので、例えば、中央に密度(ρ)が大きく縦弾性係数(E)の大きい硬い材料を使用し、外方向に向けて密度を小さくすると共に、縦弾性係数を小さくすると、飛距離を稼ぐことができるゴルフクラブを提供できる。なお、中央部のみ密度を高くすると、ゴルフクラブ全体の重心が中央に集中して打撃力を中央に集中できるゴルフクラブとなるが、初心者がゴルフクラブの中心にゴルフボールを当てるのは困難であるので、上級者向きのゴルフクラブとなる。一方、周囲に密度の大きい材料を使用すると、重心が両側に形成されるので、スライスやフックが生じにくい初心者向きのゴルフクラブとなる。逆に、中心部に縦弾性係数が小さくて密度の小さい材料を使用すると、飛距離がでなく練習用のゴルフクラブとなる。
【0022】次に、図7、図8に示す本発明の第7、第8の実施の形態に係るゴルフクラブのヘッド32、33を示すが、フェイス部34、34aの傾斜機能材料は左右方向、上下方向に材料の物理的性質が変わっている。左右方向にその物理的特性が変わる場合には特殊の用途(例えば、スライスやフックを発生しやすい)のゴルフクラブとなり、上下方向にその物理的性質が変わる場合には、サンドエッジやパター等のゴルフクラブのヘッドに最適に使用できる。図9は本発明の第9の実施の形態に係るゴルフクラブ(ウッド)のヘッド35を示すが、フェイス部36に楕円の半径方向にその物理的性質が変わる傾斜機能材料を用いている。そして、一方側の材料Aはフェイス部36の下側位置に偏って配置させている。材料Aに密度(ρ)が大きく、縦弾性係数(E)の大きい材料を使用し、材料Bに縦弾性係数の小さく、密度も小さい材料を使用することによってその飛距離を伸ばすことができる。なお、材料の入手にあっては、図10(A)に示すように、円柱状に形成された傾斜機能材料38を一点鎖線a4に示すように斜めに切断し、その一部を加工する。図9において、39はヘッド本体、40は取付け部である。
【0023】図11(A)、(B)はそれぞれ本発明の第10、第11の実施の形態に係るゴルフクラブのヘッド42、43を示すが、図11(A)のゴルフクラブのヘッド42においては、フェイス部44に傾斜機能材料を使用し、その厚みを中央部分が薄く、その周囲を同心状に厚くしている。勿論、使用する傾斜機能材料の種類にもよるが、例えば、中央部の材料Aにアルミニウムやマグネシウム等の比重の小さい材料を使用し、周囲にモリブデン等の比重の大きい材料を使用すると、中央部が全体的に重量密度が減少すると共に、反撥力が低下し、飛距離のでないゴルフクラブを提供できる。図11(B)に示すように、ゴルフクラブのヘッド43のフェイス部45の厚みを中央部分を水平方向に厚くし、上下方向に徐々に薄くすることもできる。この場合、中央部分の材料Aに比較的比重が大きく、縦弾性係数の大きいモリブデンを使用し、周辺に進むに従って、チタンの量を増やした傾斜機能材料をフェイス部45に使用すると、インパクトの大きい飛距離の出るゴルフクラブを提供できる。なお、図11において、46はヘッド本体を、47はロッドの取付け部を示す。
【0024】本発明は前記実施の形態に限定されるものではなく、本発明の要旨を変更しない範囲で変形例にも本発明は適用される。特に、前記第1〜第11の実施の形態の構成要素の一部を部分的に入れ換えてゴルフクラブのヘッドを構成するすることもできる。そして、前記実施の形態はアイアンとウッドのゴルフクラブに適用した例を示したが、いずれの実施の形態もアイアン、ウッド、パターのいずれであっても適用できる。更には、前記実施の形態においては、各ヘッドのフェイス部にゴルフボールとの接触性を向上するために、物理的な凹凸や溝を設けることは周知であるのでその説明は省略している。前記実施の形態においては、傾斜機能材料の厚みや距離に直線的に比例してその物理的性質が異なるように構成していたが、厚みや距離に応じて成分比が対数的、放物線状、あるいはその他の曲線状に変化する場合であってもよい。特に、2枚の傾斜機能材料を接合してフェイス部を構成する場合には、例えば、中央部が材料Aとなって周辺が材料Bとなるように傾斜機能材料を構成してもよい。なお、材料A、材料Bにその他の物理的性質が異なる金属又はその合金を使用した傾斜機能材料を用いてゴルフクラブヘッドを構成する場合も当然本発明は適用される。
【0025】
【発明の効果】本発明に係るゴルフクラブのヘッドは、フェイス部に物理的性質が徐々に異なる傾斜機能材料を用いているので、従来の単一材料のフェイス部とは異なる特性をゴルフクラブに与えることができる。これによって、飛距離の有無、スライスやフックを起こしにくいようにするか、あるいは積極的にスライスやフックを起こすようにするか、重心位置を底に持たせて飛距離を出すようにするか等の用途に応じたゴルフクラブのヘッドを提供できる。
【出願人】 【識別番号】000143455
【氏名又は名称】株式会社高田工業所
【住所又は居所】福岡県北九州市八幡西区築地町1番1号
【出願日】 平成14年3月1日(2002.3.1)
【代理人】 【識別番号】100090697
【弁理士】
【氏名又は名称】中前 富士男
【公開番号】 特開2003−250936(P2003−250936A)
【公開日】 平成15年9月9日(2003.9.9)
【出願番号】 特願2002−55922(P2002−55922)