| 【発明の名称】 |
アイアンゴルフクラブヘッド |
| 【発明者】 |
【氏名】長元 五志 【住所又は居所】静岡県浜松市中沢町10番1号 ヤマハ株式会社内
【氏名】土田 厚志 【住所又は居所】静岡県浜松市中沢町10番1号 ヤマハ株式会社内
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| 【要約】 |
【課題】打球に対する反発性及びスピン付与性が高く、耐傷付性及び強度が高く耐久性が良好であるアイアンゴルフクラブヘッドを提供する。
【解決手段】アイアンゴルフクラブヘッド1において、一体的に成形され鉄合金からなるヘッドフレーム2を設け、ヘッドフレーム2の開口部3内に板状のフェース材4及び板状のバックアップ材5を設ける。このとき、フェース材4の表面をアイアンゴルフクラブヘッド1の打球面とする。フェース材4はばね鋼により形成し、溶接によりヘッドフレーム2に連結する。バックアップ材5はFRM等の比重が4.4以下の高比強度且つ高比弾性材料により形成する。 |
【特許請求の範囲】
【請求項1】 金属又は合金からなりその表面における打球面相当領域及びバック面相当領域が開口するヘッドフレームと、前記打球面相当領域を覆うように前記ヘッドフレームに溶接により固定された金属又は合金からなるフェース材と、前記フェース材のバック面側の面に接触するように前記ヘッドフレームに配置されたバックアップ材と、を有することを特徴とするアイアンゴルフクラブヘッド。 【請求項2】 前記バックアップ材の端部が前記ヘッドフレームに嵌め込まれていることを特徴とする請求項1に記載のアイアンゴルフクラブヘッド。 【請求項3】 前記バックアップ材の比重が4.4以下であることを特徴とする請求項1又は2に記載のアイアンゴルフクラブヘッド。 【請求項4】 前記バックアップ材が複数の板材を重ね合わせて形成されていることを特徴とする請求項1乃至3のいずれか1項に記載のアイアンゴルフクラブヘッド。 【請求項5】 前記バックアップ材が2乃至5枚の板材を重ね合わせて形成されていることを特徴とする請求項4に記載のアイアンゴルフクラブヘッド。 【請求項6】 前記バックアップ材がCFRP、GFRP、CFRTP、Mg合金、Al合金、Be合金及びFRMからなる群より選択された1種又は2種以上の材料からなることを特徴とする請求項1乃至5のいずれか1項に記載のアイアンゴルフクラブヘッド。 【請求項7】 前記バックアップ材におけるバック面側の面に加飾処理が施されていることを特徴とする請求項1乃至6のいずれか1項に記載のアイアンゴルフクラブヘッド。 【請求項8】 前記加飾処理は、エッチング処理、ヘアライン加工、めっき処理、イオンプレーティング及び塗装からなる群より選択された1種又は2種以上の方法により施されたものであることを特徴とする請求項1乃至7のいずれか1項に記載のアイアンゴルフクラブヘッド。 【請求項9】 前記ヘッドフレームと前記フェース材とがレーザ溶接又は電子ビーム溶接により溶接されていることを特徴とする請求項1乃至8のいずれか1項に記載のアイアンゴルフクラブヘッド。 【請求項10】 前記フェース材の厚さが0.6乃至2.5mmであることを特徴とする請求項1乃至9のいずれか1項に記載のアイアンゴルフクラブヘッド。
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【発明の詳細な説明】【0001】 【発明の属する技術分野】本発明は、複数の部材からなり、強度、耐久性、打球に対する反発性及びスピン付与性の向上を図ったアイアンゴルフクラブヘッドに関する。 【0002】 【従来の技術】従来より、アイアンゴルフクラブヘッドは、複数の特性を併せ持つために、相互に異なる材料からなる複数の部材を複合させて形成されることが多い。図6(a)は従来のアイアンゴルフクラブヘッドを示すバック面側から見た背面図であり、(b)は(a)のA−A線による断面図である。また、図7(a)は他の従来のアイアンゴルフクラブヘッドを示す背面図であり、(b)は(a)のB−B線による断面図である。更に、図8(a)は更に他の従来のアイアンゴルフクラブヘッドを示す背面図であり、(b)は(a)のC−C線による断面図である。更にまた、図9(a)は更に他の従来のアイアンゴルフクラブヘッドを示す背面図であり、(b)は(a)のD−D線による断面図である。更にまた、図10(a)は更に他の従来のアイアンゴルフクラブヘッドを示す背面図であり、(b)は(a)のE−E線による断面図である。 【0003】図6(a)及び(b)に示すように、従来のアイアンゴルフクラブヘッド51a(以下、第1従来例という)においては、ステンレス等の鉄合金からなりフラットバック構造を有するヘッド本体52aが設けられ、このヘッド本体52aの打球面に相当する領域に、銅合金等のヘッド本体52aを形成する材料とは異なる材料からなるフェース材53aが埋め込まれている。フェース材53aはヘッド本体52aに対して、接着、嵌合、ロー付け、爆着等の手段により固定されている。これにより、打球時のフィーリング及びゴルフクラブヘッドのデザイン性を向上させることができる。 【0004】また、図7(a)及び(b)に示すように、他の従来のアイアンゴルフクラブヘッド51b(以下、第2従来例という)においては、ステンレス等からなるヘッド本体52bの打球面及びバック面を、CFRP(Carbon Fiber ReinforcedPlastics:炭素繊維強化プラスチック)からなる被覆層54により被覆している。これにより、ヘッドの重心位置を低くすることができる。 【0005】更に、図8(a)及び(b)に示すように、更に他の従来のアイアンゴルフクラブヘッド51c(以下、第3従来例という)においては、ヘッド本体52cをステンレスからなるキャビティ構造とし、ヘッド本体52cのバック面にCFPRからなる裏面材55を接着している。これにより、裏面材55が打球時の振動を吸収するため、打球時のフィーリングが向上する。 【0006】更にまた、図9(a)及び(b)に示すように、更に他の従来のアイアンゴルフクラブヘッド51d(以下、第4従来例という)においては、ステンレス、軟鉄又はBe−Cu合金からなり、その打球面相当領域及びバック面相当領域が開口するヘッドフレーム58dを設ける。そして、ヘッドフレーム58dの開口部56d内における前記打球面相当領域にチタンからなるフェース材53dを設けている。これにより、開口部56dを設け、フェース材53dを比重が4.5とステンレス及び軟鉄よりも小さいチタンにより形成することにより、ヘッドの軽量化を図ることができる。また、打球時にフェース材53dが撓むことにより、打球に対する反発性を高めることができる。 【0007】更に他の従来のアイアンゴルフクラブヘッドを図10(a)及び(b)に示す。このアイアンゴルフクラブヘッド51e(以下、第5従来例という)は、本発明者等が過去に開発し、特公平7−121284号公報において開示したものである。図10(a)及び(b)に示すように、このアイアンゴルフクラブヘッド51eにおいては、金属材料からなるヘッドフレーム58eを設けられており、このヘッドフレーム58eには、その打球面相当領域及びバック面相当領域を開口する開口部56eが形成されている。そして、開口部56e内における前記打球面相当領域にFRP(Fiber Reinforced Plastics:繊維強化プラスチック)からなるフェース材53eが設けられている。また、ヘッドフレーム58eの打球面相当領域及びフェース材53eの打球面には、蒸着等の手段により厚さが100μm以下の金属薄膜57が形成されている。本第5従来例においては、フェース材53eをFRPにより形成することにより、前述の第4従来例と比較して、ヘッドのより一層の軽量化を図ると共に、打球に対する反発性をより一層向上させることができる。また、打球面に金属薄膜57を形成することにより、金属材料からなるヘッドフレーム58eとFRPからなるフェース材53eとの間に生じる外観上の違和感を解消することができる。 【0008】 【発明が解決しようとする課題】しかしながら、上述の従来の技術には以下に示すような問題点がある。上述の第1従来例においては、前述の如く打球時のフィーリング及びゴルフクラブヘッドのデザイン性は高めることができるものの、打球に対する反発性が低く、打球の飛距離が伸びないという問題点がある。 【0009】また、上述の第2従来例においては、CFRPからなる被覆層54が傷つきやすいという問題点がある。また、被覆層54が磨耗することにより、打球に対するスピン付与性が低下するという問題点もある。 【0010】更に、上述の第3従来例においては、裏面材55が打球時の制振作用を持つため、打球時のフィーリングは向上するものの、打球に対する反発性及びスピン付与性を向上させることができないという問題点がある。即ち、第3従来例のアイアンゴルフクラブヘッド51cの打球に対する高反発性及びスピン付与性は、ヘッド全体をステンレスのみにより形成したアイアンゴルフクラブヘッドと同等である。 【0011】更にまた、上述の第4従来例においては、フェース材53dがチタンからなり、ヘッドフレーム58dがステンレス等からなるため、両者を溶接することができない。このため、フェース材53dはヘッドフレーム58dに、かしめにより固定するしかなく、十分な固定強度が得られないという問題点がある。また、チタンはステンレス及び軟鉄よりは比強度が大きいものの、FRPよりは比強度が小さく、より一層の軽量化は困難である。更に、チタンはFRPよりも剛性が高いため、打球に対する反発性の向上効果にも限界がある。 【0012】更にまた、上述の第5従来例においては、フェース材53eをFRPにより形成することにより、前述の第4従来例と比較して、ヘッドの軽量化及びスピン付与性を向上させることができる。しかしながら、フェース材53eがFRPからなり、ヘッドフレーム58eが金属材料からなるため、両者を溶接等の手段により強固に固定することができず、フェース材53eとヘッドフレーム58eとを接着又はかしめにより固定することになるため、両者の固定強度が低いという問題点がある。また、金属薄膜57が小石及び砂等の衝突により容易に剥離又は磨耗するため、耐久性が不十分であるという問題点がある。更に、アイアンゴルフクラブヘッド51eの製造に際しては、フェース材53eの表面にスコアラインを形成し、その後、金属薄膜57を成膜するため、打球面にサンドブラスト等による表面処理を施すことができず、スピン付与性が不十分であるという問題点もある。 【0013】本発明はかかる問題点に鑑みてなされたものであって、打球に対する反発性及びスピン付与性が高く、耐傷付性及び強度が高く耐久性が良好であるアイアンゴルフクラブヘッドを提供することを目的とする。 【0014】 【課題を解決するための手段】本発明に係るアイアンゴルフクラブヘッドは、金属又は合金からなりその表面における打球面相当領域及びバック面相当領域が開口するヘッドフレームと、前記打球面相当領域を覆うように前記ヘッドフレームに溶接により固定された金属又は合金からなるフェース材と、前記フェース材のバック面側の面に接触するように前記ヘッドフレームに配置されたバックアップ材と、を有することを特徴とする。 【0015】本発明においては、開口を有するヘッドフレームを設けているため、アイアンゴルフクラブヘッド(以下、単にヘッドともいう)の軽量化及び低重心化を図ることができる。また、打球面を形成する部分の構造をフェース材及びバックアップ材からなる多層構造としているため、単層構造とする場合と比較して弾性変形量を大きくとることが可能となる。この理由については後述する。弾性変形量を大きくとることにより、打球時における打球面とボールとの接触時間を長くすることができ、ヘッドからボールへのエネルギー変換効率を高めることができる。これにより、ヘッドの打球に対する反発性を向上させることができる。更に、フェース材をヘッドフレームに対して溶接可能な金属又は合金板により形成し、ヘッドフレームに溶接により固定することにより、ヘッドの強度を高めることができる。更にまた、フェース材を金属又は合金により形成することにより、打球面の耐傷付性を向上させることができると共に、フェース材の表面に所定の表面処理を施すことができるため、打球に対するスピン付与性を向上させることができる。 【0016】また、前記バックアップ材の端部が前記ヘッドフレームに嵌め込まれていることが好ましい。これにより、バックアップ材を両持梁状に支持し、フェース材から独立して変形させることができるため、フェース材及びバックアップ材からなるフェース部分の弾性変形量を大きくすることができる。この結果、打球に対する反発性がより一層向上する。 【0017】更に、前記バックアップ材の比重が4.4以下であることが好ましい。これにより、ヘッドのより一層の軽量化及び低重心化を図ることができる。この結果、ヘッドの重心位置及び慣性モーメントの大きさ等の選択範囲が拡大し、ヘッドの設計自由度が向上する。更にまた、前記バックアップ材は複数の板材を重ね合わせて形成されていてもよい。これにより、バックアップ材の弾性変形量をより大きくすることができ、打球に対する反発性をより一層高めることができる。また、材質が相互に異なる複数の板材を組み合わせることにより、ヘッドの強度、反発係数、打球時のフィーリング等を任意に調整することができ、多様なユーザーニーズに対応することが可能となる。 【0018】なお、前記バックアップ材はCFRP(Carbon Fiber Reinforced Plastics:炭素繊維強化プラスチック)、GFRP(Glass Fiber Reinforced Plastics:ガラス繊維強化プラスチック)、CFRTP(Carbon Fiber Reinforced Thermoplastics:熱可塑性炭素繊維強化プラスチック)、Mg合金、Al合金、Be合金及びFRM(Fiber Reinforced Metals:繊維強化金属)からなる群より選択された1種又は2種以上の材料からなることが好ましい。 【0019】更にまた、前記バックアップ材におけるバック面側の面に加飾処理が施されていてもよい。これにより、ヘッドの商品価値を向上させることができる。また、ヘッドを組み立てる前にバックアップ材のバック面側を加飾することができるため、高付加価値商品を低コストで実現することができる。 【0020】 【発明の実施の形態】以下、本発明の実施例について添付の図面を参照して具体的に説明する。先ず、本発明の第1の実施例について説明する。図1(a)は本実施例に係るアイアンゴルフクラブヘッドを示すフェース面側から見た正面図であり、(b)は(a)のF−F線による断面図であり、(c)は(b)の一部拡大断面図である。 【0021】図1(a)に示すように、本実施例に係るアイアンゴルフクラブヘッド1においては、軸部2a及びヘッド部2bが一体的に成形された軟鉄又は鉄合金からなるヘッドフレーム2が設けられている。図1(b)に示すように、ヘッドフレーム2には、その表面における打球面相当領域2c及びバック面相当領域2dを開口する開口部3が形成されている。ヘッドフレーム2における開口部3に面する表面(以下、ヘッドフレーム2の内面2eという)には、段差2f及び2gが形成されている。段差2f及び2gは内面2eの全周にわたって形成されている。 【0022】図1(a)及び(b)に示すように、アイアンゴルフクラブヘッド1においては、開口部3内にフェース材4及びバックアップ材5が設けられている。フェース材4の形状は四角形の板状であり、その端部は段差2fに嵌合されており、ヘッドフレーム2にレーザ溶接又は電子ビーム溶接により溶接されている。このため、フェース材4の端部には多数の溶接部6が形成されている。これにより、フェース材4は開口部3を塞ぐように配置されている。即ち、フェース材4は、ヘッドフレーム2の表面における打球面相当領域2cを覆うように配置されており、アイアンゴルフクラブヘッド1の外部に対して露出している。これにより、フェース材4の表面がアイアンゴルフクラブヘッド1の打球面となっている。また、バックアップ材5の形状は四角形の板状であり、開口部3内におけるフェース材4よりもバック面側の位置に、フェース材4に重なり合うように配置され、バックアップ材5の打球面側の面がフェース材4のバック面側の面に接触している。バックアップ材5はその端部が全周にわたって4辺とも段差2gに嵌合されている。これにより、図1(c)に示すように、バックアップ材5はフェース材4及びヘッドフレーム2により挟持されている。 【0023】フェース材4はばね鋼により形成されており、例えばCr−Mo鋼、マレージング鋼又はJISに記載されているSUP(ばね鋼鋼材)により形成されている。フェース材4の厚さは例えば0.6乃至2.5mmであり、その打球面となる表面には、例えば4本のスコアライン7が相互に平行に形成されている。スコアライン7が延びる方向は打球時に略水平方向となる方向である。また、バックアップ材5は高比強度且つ高比弾性材料であるCFRP、GFRP、CFRTP、Mg合金、Al合金、Be合金又はFRMにより形成されている。FRMには、例えば、アルミニウムボレート(9Al2O32B2O3)ウィスカにより強化したアルミニウム合金がある。バックアップ材5の比重は4.4以下である。 【0024】なお、フェース材4の厚さが0.6mm未満であると、フェース材4の材質によっては、フェース材4の強度が不足する場合がある。また、フェース材4にスコアライン(溝)7を形成するためには、0.6mm以上の厚さが必要である。一方、フェース材4の厚さが2.5mmを超えると、フェース材4の剛性が高くなりすぎ、打球に対する反発性が低下し、打球の初速が低下する。このため、フェース材4の厚さは0.6乃至2.5mmであることが好ましい。 【0025】次に、アイアンゴルフクラブヘッド1の製造方法について説明する。先ず、軟鉄又は鉄合金を鍛造又は鋳造してヘッドフレーム2を一体的に成形する。このとき、ヘッドフレーム2における開口部3に面する内面2eには、段差2f及び2gを同時に形成するか、又は、機械加工を加えて段差2f及び2gを順次形成する。次に、開口部3内における段差2gにバックアップ材5を嵌合させる。一方、Cr−Mo鋼、マレージング鋼又はSUPからなる厚さが0.6乃至2.5mmの板材を所定の形状に加工し、一方の表面に所定の表面処理を施した後、この表面にスコアライン7を形成することにより、フェース材4を作製する。このとき、バックアップ材5の縦及び横の寸法は、フェース材4の縦及び横の寸法よりも夫々1mm以上小さくする。次いで、段差2fにフェース材4を嵌合させ、フェース材4の端部をヘッドフレーム2に対してレーザ溶接又は電子ビーム溶接により溶接する。この際、パックアップ材5の端縁は、フェース材4の端縁よりも0.5mm以上内側に位置するように、バックアップ材5及びフェース材4を配置する。これにより、溶接時の熱によってバックアップ材5が燃焼又は気化し、ガスが発生することにより、ピンホール等の不具合を生じることを防止できる。このようにして、バックアップ材5の端部がヘッドフレーム2及びフェース材4により挟持される。このようにして、アイアンゴルフクラブヘッド1を製造することができる。 【0026】本実施例においては、アイアンゴルフクラブヘッド1の打球面に相当する部分(以下、フェース部分という)がフェース材4及びバックアップ材5からなる2層構造となっているため、第4及び第5従来例のようなフェース部分が単層構造である場合と比較して、弾性変形量を大きくとることが可能となる。このため、打球時における打球面とボールとの接触時間を長くすることができるため、ヘッドからボールへのエネルギー変換効率を高めることができ、打球に対する反発性が向上する。以下、この効果について、より詳細に説明する。 【0027】図2(a)乃至(d)はフェース部分の変形挙動を示す模式図であり、(a)はフェース部分8が1枚の板材により形成されている場合を示し、(b)はその変形挙動を示し、(c)はフェース部分9が厚さが相互に等しい2板の板材が重ねられて形成されている場合を示し、(d)はその変形挙動を示す。図2(a)及び(c)に示す板材は、同一の材料により形成されており、その材料の機械的特性は相互に等しくなっている。図2(a)及び(b)に示す板材の厚さをh1とし、フェース部分8に一定荷重Wが印加された場合のたわみ量をδ1とし、図2(c)及び(d)に示す板材の厚さを夫々(h2/2)とし、フェース部分9に一定荷重Wが印加された場合のたわみ量をδ2とする。 【0028】図2(a)及び(b)に示すフェース部分8の強度は下記数式1により与えられ、図2(c)及び(d)に示すフェース部分9の全体の強度は下記数式2により与えられる。また、フェース部分8の剛性は下記数式3により与えられ、フェース部分9の全体の剛性は下記数式4により与えられる。なお、a及びbは係数である。 【0029】 【数1】
【0030】 【数2】
【0031】 【数3】
【0032】 【数4】
【0033】ゴルフクラブのフェース部分については、強度は高い方がよく、剛性は低い方がよい。このため、フェース部分を2層構造とすることにより、単層構造の場合よりも、フェース部分の強度を高く且つ剛性を低くするためには、下記数式5及び6を満たすようにh2の値を選択すればよい。 【0034】 【数5】
【0035】 【数6】
【0036】上記数式5より下記数式7が導かれる。また、上記数式6より下記数式8が導かれる。 【0037】 【数7】
【0038】 【数8】
上記数式7及び8をまとめると、下記数式9が成立する。 【0039】 【数9】
【0040】従って、例えばh2=1.5×h1とすれば、フェース部分を2層構造とすることにより、単層構造の場合と比較して強度を高め、且つ剛性を下げることができる。これにより、フェース部分を2層構造とした場合における全体のたわみ量δ2(図2(d)参照)を、フェース部分が単層構造である場合のたわみ量δ1(図2(a)参照)よりも大きくすることができる。この結果、フェース部分が2層構造である場合は、打球時のたわみ量が大きいため、打球時における打球面とボールとの接触時間を長くすることができる。これにより、ヘッドからボールへのエネルギー変換効率を高めることができ、打球に対する反発性を向上させることができる。 【0041】また、本実施例においては、ヘッドフレーム2に開口部3が形成されているため、ヘッドが軽く、その重心位置が低くなっている。更に、ヘッドフレーム2を軟鉄又は鉄合金により形成し、フェース材4をばね鋼により形成することにより、フェース材4をヘッドフレーム2に対して溶接することができる。これにより、フェース材4をかしめ等によりヘッドフレーム2に固定する場合と比較して、ヘッドの強度を高め、耐久性及び信頼性を向上させることができる。更にまた、フェース材4をばね鋼により形成することにより、打球面の耐傷付性を向上させることができると共に、その表面に所定の表面処理を施すことができるため、打球に対するスピン付与性を付加することができる。また、打球面が磨耗することを抑制できるため、打球面の摩擦係数が低下することによりスピン付与性が低下することを防止できる。 【0042】更にまた、本実施例においては、バックアップ材5をCFRP、GFRP、CFRTP、Mg合金、Al合金、Be合金又はFRMにより形成し、その比重を4.4以下としているため、ヘッドのより一層の軽量化及び低重心化が図られている。このため、本実施例のアイアンゴルフクラブヘッド1は、その重心位置及び慣性モーメントの大きさ等の選択範囲が広く、設計自由度が高い。また、強度、ヤング率、粘弾性等の材質が相互に異なるフェース材4及びバックアップ材5を任意に組み合わせることにより、ヘッドの強度、反発係数、打球時のフィーリング等を任意に調整することができる。これにより、ユーザーのヘッドスピード及びフィーリング(打球感)の好み等の違いに起因する多様なユーザーニーズに対応することが可能となる。 【0043】次に、本発明の第2の実施例について説明する。図3は本実施例に係るアイアンゴルフクラブヘッドの構成を示す一部拡大断面図である。本実施例のアイアンゴルフクラブヘッドは、バックアップ材5aが中間材10及び裏面材11が重ね合わされて形成されている。中間材10及び裏面材11はその端部がヘッドフレーム2に嵌め込まれている。中間材10はCFRP、GFRP、CFRTP、Mg合金、Al合金、Be合金又はFRMにより形成されている。裏面材11におけるバック面側の面はヘッドの外側に露出しており、この表面には加飾処理が施されている。裏面材11を形成する材料は任意であり、例えば中間材10と同じ材料でもよく、エポキシ又はABS樹脂(acrylonitrile butadiene styrene樹脂:アクリロニトリル・ブタジエン・スチレン樹脂)等のプラスチック類でもよいが、加飾処理が可能な材料である必要がある。また、バックアップ材5a全体の比重は4.4以下である。本実施例に係るアイアンゴルフクラブヘッドの上記以外の構成は、前述の第1の実施例に係るアイアンゴルフクラブヘッド1(図1(a)乃至(c)参照)と同一である。 【0044】次に、本実施例に係るアイアンゴルフクラブヘッドの製造方法について説明する。先ず、軟鉄又は鉄合金を鍛造又は鋳造してヘッドフレーム2を一体的に成形する。このとき、ヘッドフレーム2の内面2eには、段差2f及び2gが形成されている。一方、エッチング処理、ヘアライン加工、めっき処理、イオンプレーティング若しくは塗装又はこれらの方法を組み合わせた方法により、板材の表面に加飾処理を施し、裏面材11を作製する。次に、開口部3内における段差2gに裏面材11を嵌合させる。このとき、裏面材11における加飾処理を施した面がヘッドフレーム2のバック面側に露出するようにする。次に、この裏面材11に重ね合わせるように、段差2gに中間材10を嵌合する。 【0045】一方、Cr−Mo鋼、マレージング鋼又はSUPからなる厚さが0.6乃至2.5mmの板材を所定の形状に加工し、一方の表面に所定の表面処理を施した後、この表面にスコアライン7を形成することにより、フェース材4を作製する。次いで、段差2fにフェース材4を嵌合させ、フェース材4の端部をヘッドフレーム2に対してレーザ溶接又は電子ビーム溶接により溶接する。これにより、裏面材11及び中間材10からなるバックアップ材5aは、ヘッドフレーム2及びフェース材4により挟持される。このようにして、本実施例に係るアイアンゴルフクラブヘッドを製造することができる。 【0046】本実施例においては、バックアップ材5aが裏面材11及び中間材10により形成されているため、アイアンゴルフクラブヘッドのフェース部分がフェース材4、中間材10及び裏面材11からなる3層構造となる。これにより、前述の第1の実施例と比較して、フェース部分の弾性変形量をより大きくすることができ、打球に対する反発性をより一層高めることができる。また、材質が相互に異なる3枚の板材を組み合わせることにより、ヘッドの強度、反発係数、打球時のフィーリング等をより広い範囲で調整することができ、ヘッドの設計自由度が増大する。 【0047】更に、裏面材11の表面に加飾処理を施すことにより、ヘッドのバック面側のデザイン性が向上する。これにより、商品の付加価値を高めることができる。また、裏面材11に加飾処理を施した後に、裏面材11をヘッドフレーム2に取り付けているため、ヘッドを組み立てる前に加飾処理を施すことができる。このため、加飾処理による製造コストの増大を抑えることができ、デザイン性が優れた高付加価値商品を低コストで実現することができる。本実施例における上記以外の効果は、前述の第1の実施例における効果と同様である。 【0048】 【実施例】以下、本発明の効果について、その特許請求の範囲から外れる比較例と比較して具体的に説明する。 【0049】第1試験例図4(a)は本発明の実施例に係るアイアンゴルフクラブヘッドを示す断面図であり、(b)は比較例に係るアイアンゴルフクラブヘッドを示す断面図である。先ず、図4(a)及び(b)に示すようなアイアンゴルフクラブヘッドを作製した。図4(a)に示すように、本発明の実施例に係るアイアンゴルフクラブヘッド12の構成は、前述の第1の実施例と同様とし、フェース材4は厚さが1.0mmの高張力鋼により形成し、バックアップ材5は厚さが3mmのFRTP積層材により形成した。即ち、フェース部分13の厚さは合計で4mmとした。なお、図4(a)に示すアイアンゴルフクラブヘッド12においては、FRTP積層材として、カーボンクロス及びポリカーボネートシートを交互に12層積層したものを使用した。また、ヘッドフレーム2は炭素(C)を0.2質量%含有する軟鉄であるS−20Cにより形成した。アイアンゴルフクラブヘッド12のロフト角は21°とし、ヘッドの質量は242gとした。 【0050】また、図4(b)に示すように、比較例に係るアイアンゴルフクラブヘッド14は、S−20Cにより一体的に形成した。このアイアンゴルフクラブヘッド14のフェース部分15の厚さは4mmとした。アイアンゴルフクラブヘッド14のロフト角は21°とし、ヘッドの質量は242gとした。 【0051】次に、アイアンゴルフクラブヘッド12及び14を装着したゴルフクラブを使用して実打テストを行った。これらのゴルフクラブにおけるヘッド以外の部分には同じ物を使用した。また、ボールには、B/Sニューイングを使用した。なお、テスト時における天候は晴れであり、無風であった。本実打テストの結果を表1及び表2に示す。表1には本発明の実施例の試験結果、即ち、アイアンゴルフクラブヘッド12を使用した試験結果を示し、表2には比較例の試験結果、即ち、アイアンゴルフクラブヘッド14を使用した試験結果を示す。 【0052】 【表1】
【0053】 【表2】
【0054】表1及び表2に示すように、本発明の実施例に係るアイアンゴルフクラブヘッド12を使用した場合は、比較例に係るアイアンゴルフクラブヘッド14を使用した場合と比較して、ヘッドスピードは同程度であったが、ボールに対する反発性及びスピン付与性が優れているため、ボール初速は平均54.9m/秒と比較例におけるボール初速(平均54.0m/秒)よりも平均0.9m/秒大きく、バックスピンの回転数も平均2648rpmと比較例における回転数(平均2486rpm)よりも162rpm大きかった。この結果、本発明の実施例におけるキャリー(平均178.0m)は比較例におけるキャリー(平均170.5m)よりも平均7.5m大きく、実施例における合計飛距離(平均192.1m)は、比較例における合計飛距離(平均185.7m)よりも平均6.4m大きかった。一方、実施例におけるラン(平均14.1m)は、比較例におけるラン(平均15.2m)よりも平均1.1m短くなった。また、本発明の実施例においては、比較例よりもボールの打出し角が高かった。なお、一般にドライバーを使用する場合は、ボール初速が1m/秒大きくなると、キャリーが5〜10yard増加する。アイアンゴルフクラブヘッドについても同様であると考えられる。 【0055】第2試験例打球面を形成する部分(フェース部分)の厚さを2乃至6mmの範囲で相互に異ならせたアイアンゴルフクラブヘッドを5個作製した。フェース部分はフェース材及びバックアップ材の2枚の板材から構成し、この2枚の板材の合計の厚さをヘッド毎に異ならせた。即ち、これらのヘッドの構成は、図4(a)に示す第1試験例において使用したヘッドの構成と類似しているが、フェース材及びバックアップ材の板厚は、図4(a)に示す寸法と同一とは限らない。本第2試験例にて使用したヘッドにおけるフェース材、バックアップ材及び合計の板厚を表3に示す。これらのヘッドを装着したゴルフクラブでボールを打ち、その初速を測定した。ボールの打ち出しは機械により行い、ヘッドスピードは30m/秒及び40m/秒の2水準とした。 【0056】 【表3】
【0057】図5は横軸にフェース部分の剛性をとり、縦軸に打出されたボールの初速をとって、フェース部分の剛性がボールの初速に及ぼす影響を示すグラフ図である。図5の横軸には、フェース部分を形成する材料の弾性率をE(kg/mm2)とし、フェース部分の板厚をt(mm)とするとき、E×t3(kg・mm)の値をとっている。この値は剛性の大きさを示す指数である。また、図中の黒丸(●)はヘッドスピードが40m/秒の場合の試験結果を示し、図中の黒三角(▲)はヘッドスピードが30m/秒の場合の試験結果を示す。なお、図中の数字はフェース部分の合計板厚である。 【0058】図5に示すように、フェース部分の板厚が薄くなり、フェース部分の剛性が低減するほど、フェース部分が柔らかくなり弾性変形量が大きくなるため、ボールに対する反発性が増加し、ボールの初速が大きくなった。これにより、ボールの飛距離が増加する。初速が1m/秒増加すると、ボールの飛距離は4.7m増加した。 【0059】 【発明の効果】以上詳述したように、本発明によれば、アイアンゴルフクラブヘッドのフェース部分をフェース材及びバックアップ材の2枚の板材により形成することにより、フェース部分の剛性が減少し、打球時の打球に対する接触時間が長くなり、打球に対する反発性が向上する。これにより、打球の初速が増大し、飛距離を伸ばすことができる。また、フェース材を金属又は合金により形成するため、耐傷付性及び打球に対するスピン付与性が良好であり、フェース材をヘッドフレームに溶接するため、ヘッドの強度が高く、耐久性が優れたアイアンゴルフクラブヘッドを得ることができる。
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| 【出願人】 |
【識別番号】000004075 【氏名又は名称】ヤマハ株式会社 【住所又は居所】静岡県浜松市中沢町10番1号
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| 【出願日】 |
平成14年2月6日(2002.2.6) |
| 【代理人】 |
【識別番号】100090158 【弁理士】 【氏名又は名称】藤巻 正憲
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| 【公開番号】 |
特開2003−225332(P2003−225332A) |
| 【公開日】 |
平成15年8月12日(2003.8.12) |
| 【出願番号】 |
特願2002−29365(P2002−29365) |
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