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【発明の名称】 ガット保護体及び、該ガット保護体を装着したラケットフレーム
【発明者】 【氏名】本多 洋二
【住所又は居所】岐阜県養老郡養老町高田3877−8 美津濃株式会社養老工場内

【氏名】金森 克二
【住所又は居所】岐阜県養老郡養老町高田3877−8 美津濃株式会社養老工場内

【氏名】小塚 晃弘
【住所又は居所】大阪府大阪市住之江区南港北1丁目12番35号 美津濃株式会社内

【要約】 【課題】打球部に張設されるガットの張設支持構造に工夫を施し、ラケットフレームに良好な操作性を確保させながら、優れた反発性とコントロール性を発現させることのできるガット保護体と、該ガット保護体が挿着されてなるラケットフレームを提供する。

【解決手段】ガット保護体8aの筒部14の通孔13aを大径とすると共に、前記筒部14の通孔13aが帯部18の外面に開口する縁部21のうちガット2が引き通される部分に、前記縁部21から前記通孔13aの内部に向けて延在するガット2の受承部22を設け、且つ該受承部22の延在端部23の形状が、前記通孔13aに挿通されるガット2を打球方向に摺動案内するように、前記通孔13aを打球方向に横切る直線形状或いは、直線に近い曲線形状を有する。
【特許請求の範囲】
【請求項1】 打球部に穿設されたガット挿通孔に嵌挿され、且つガットを遊挿する通孔が備えられた複数の筒部と、該複数の筒部同士を繋ぐ帯部とから構成されるガット保護体であって、前記通孔が前記帯部の外面に開口する縁部のうちガットが引き通される部分に、前記縁部から前記通孔の内部に向けて延在するガットの受承部が設けられていると共に、該受承部の延在端部が、前記通孔に挿通されるガットを打球方向に摺動案内するように、前記通孔を打球方向に横切る直線形状或いは、直線に近い曲線形状に構成されていることを特徴とするガット保護体。
【請求項2】前記隣接する筒部間の帯部の外面に、ガットの折り返し部を支持する膨出部が形成されていると共に、該膨出部の頂面部が、該膨出部の打球方向幅の中央部で最も窪む湾曲形状を呈していることを特徴とする請求項1記載のガット保護体。
【請求項3】 打球部とグリップ部及び、前記打球部とグリップ部とを繋ぐシャフト部とから構成されるラケットフレームにおいて、前記打球部に穿設されるガット挿通孔の少なくとも一部に、前記請求項1又は、2記載のガット保護体が挿着されてなることを特徴とするラケットフレーム。
【発明の詳細な説明】【0001】
【発明の属する技術分野】本発明は、ガット保護体及び、該ガット保護体が挿着されてなるラケットフレームに関するものであり、特に、ラケットフレームの打球部に張設されるガットの張設支持構造に工夫を施したものである。
【0002】
【従来の技術】従来、ラケットフレームは、木や金属などの材料を用いて形成されていたが、現在では、ラケットフレームに要求される強靭性、剛性及び、反発力等の諸特性を満足させ、しかも、必要な形状を得易いといった設計上の自由度が大きいことから繊維強化樹脂製のラケットフレームが主流を占めるようになった。
【0003】通常、硬式テニス用のラケットフレームを例にとって説明すれば、この種のラケットフレームの打球部の面積は、0.058m〜0.084mのものが一般的であり、又、ガット張設前の質量は、230g〜350g程度のものが殆どである。又、その構成としては、図12乃至図13に示すように、打球部31と、シャフト部32と、グリップ部33とが繊維強化樹脂製の外殻層34から構成される管状構造を有する構成となっており、前記ラケットフレーム30の打球部31には、その外周面35と、内周面36とを貫通する多数のガット挿通孔37が穿設されているとともに、前記打球部31の外周面35には、ガット保護溝38が凹設されている。前記したガット挿通孔37は、図13に示すように、中空管状構造を成す打球部31の外周面35側を構成する外殻層34に穿設した外側ガット挿通孔37aと、内周面36側を構成する外殻層34に穿設した内側ガット挿通孔37bとを連通するように構成されており、しかも、前記外側ガット挿通孔37aと内側ガット挿通孔37bとは同径で、且つガット保護体41の筒部40を密嵌する大きさに設定されている。
【0004】そして、前記ガット保護溝38及び、前記各々のガット挿通孔37には、前記ガット保護溝38及び、ガット挿通孔37に嵌合する帯部39と筒部40とを有するガット保護体41が挿着され、該ガット保護体41の筒部40に形成される通孔42内に、ナイロン、シープ、鯨筋等の材料からなるガット43が挿通されて打球面44が形成される構成となっている。
【0005】通常、前記ガット挿通孔37の径は、所謂「ダブル穴」と称されるガット挿通孔(ガット43を張設する際に、1つの穴に2本のガット43が挿通されるガット挿通孔)を除き、3.4mm〜3.6mmの範囲内にあるものが殆どであり、又、前記ガット保護体41の筒部40の外径は、前記ガット挿通孔37の径と略同等か、それよりも僅かに小さい3.2mm〜3.4mmの範囲内にある場合が多い。そして、前記ガット保護体41の筒部40に形成される通孔42の径は、該通孔42に挿通されるガット43の径(1.1mm〜1.4mm)と略同等或いは、それよりも僅かに大きい1.7mm〜2.0mmの範囲内にあるものが殆どである。
【0006】このように、従来のラケットフレーム30では、ガット保護体41の筒部40が、ガット挿通孔37に密着して不動状態に保持され、しかも、通孔42の径が、ガット43の径と略同等に構成されていることから、前記通孔42を挿通するガット43は、打球部31の内周面36側に開口する内側ガット挿通孔37bの開口端領域Pで固定された状態を呈する。
【0007】ところで、一般にラケットフレーム30は、打球部31の内外周面を貫通するように穿設されたガット挿通孔37内にガット43を挿通させて打球面44を構成している構造上、ボールを打撃する際、打球部31の一対の対抗するフレーム間に略直線状態に張られたガット43は、ボール打撃時に打球部31の内周面36側に開口する内側ガット挿通孔37bの開口端領域Pを起点として撓み、続いて反発するといった動作を呈するものである。
【0008】このようなボール打撃時のガット43の撓みを考察すると、図14に示すように、通常、スイートエリアと称される打球部31の略中央部領域でボール49を打撃すると、打撃点Dからガット挿通孔37の開口端までの距離L1が、対抗する一方のガット挿通孔37の開口端までの距離L2と略等しくなることから、前記開口端を起点として撓むガット43の撓み角θ1、θ2は双方で等しくなり、打撃時にガット43はボール49からの押圧力Fを受けて大きく撓んだ後に、ボール49に良好な反発力を与えながら押圧方向と同方向の返球方向、即ち、打球面44に対して垂直方向にボール49を正確に弾き返すことができる。一方、このような中央領域を外れたところ(打撃点Dn)でボール49を打撃した場合においては、打撃点Dnからガット挿通孔37の開口端までの距離L1と、これと対抗する一方の開口端までの距離L2の相違によって、前記開口端を起点として撓むガット43の双方の撓み角θ1、θ2は大きく相違することになる。これにより打撃時のボール49の押圧方向に対して返球方向が、双方の相違する撓み角θ1、θ2によって決まる傾斜角θn分だけ偏り、プレーヤーの意図する方向にボール49を返球することが難しくなり、又、それと同調してガット43の撓み量も減少し、反発性や打球感が低下するといった問題を呈することは知られている。
【0009】一般に、このような打撃点位置によって相違して生じるガット43の撓み角θ1、θ2及び、返球方向の偏りは、打球部31に張設されるガット43の張設長さによって大きく左右されるものである。つまり、ガット43は、打球部31に穿設されたガット挿通孔37の開口端を起点として撓む動作を呈することから、このようなガット43の撓みの起点となるガット挿通孔37の開口端間の距離Lが大きくなる程、幾何学的にガット43の撓み角θ1、θ2の相違は小さくなり、返球方向の偏りは少なくなる。即ち、打球部のスイートエリアは大きくなるものである。
【0010】従来では、このような事情に鑑みて、スイートエリアの拡大化を図るために、打球部に張設されるガットの張設長さを長く設計するための種々の試みがなされている。
【0011】例えば、所謂「デカラケ」や「ラージ」と称されるラケットフレームのように、打球部の面積を従来のものより20%〜30%程度も拡大させることによって、ガットの張設長さを長く設計するようにしたものが知られている。
【0012】又、特許第2534963号では、図15に示すように、中空構造のラケットヘッド45に備えられるスリーブ46の孔47の断面を、フレームの内側に向かってらっぱ形又は円錐形に大きく構成することによって、フレームの内側において弦48の面BEに垂直な軸線方向Aへの弦48の移動を可能とさせ、これにより有効な作用面を増大せしめるようにした提案がなされ公知となっている。
【0013】
【発明が解決しようとする課題】しかしながら、このように従来より知られるラケットフレームにおいては、以下のような欠点を有するものであった。
【0014】即ち、単に打球部の面積を拡大させたラケットフレームにあっては、打球部の面積の拡大化に伴って、必然的にラケットフレーム自体の質量及び、スイング時における風圧面積を増大させてしまうことから振り抜き性が悪くなってしまい、スピードのあるプレーに対応し難いといった欠点があった。
【0015】又、特許第2534963号に提案されるように、スリーブ46の孔47の断面を、フレームの内側に向かってらっぱ形又は円錐形に大きく構成するようにしたものにあっては、打球部の面積を拡大しなくても打撃時における弦48の撓みの起点となる弦48の変位支点Qを外周面側に移行させ、前記変位支点Qの移行分だけ弦48の張設長さを長く設定することができることから、その分スイートエリアの拡大を図ることができる。しかしながら、この種のスリーブ46にあっては、孔47の孔径をフレームの内周面側で弦48を移動可能に拡開させる一方で、フレームの外周面側では弦48と密接するような孔径に構成し、該部で弦48を不動状態に保持していることから、前記変位支点Qの移行量は、スリーブ46の孔47の長さw内の僅かな量に限られる。又、前記スリーブ46自体の外径が小さいことから、らっぱ形又は円錐形に拡開させた孔47内で弦48が移動できる範囲(弦の可動領域)は僅かなもので、スイートエリアの面積を大幅に拡大することは難しいものと予測される。
【0016】然るに、前記した特許第2534963号に提案されるラケットフレームにあっては、依然として打球部の中央領域を除いた広範囲に亘る領域で打撃時におけるボールの返球方向に大きな偏りが生じる他、ガットの撓み量が大幅に減少することによって、反発性や打球感が著しく低下するといった問題を有する。従って、このようなラケットフレームにおいても十分なスイートエリアを確保するためには、打球部の面積を拡大しなければならないが、この場合、上述したようにラケットフレーム自体の質量及び、風圧面積が増大して、振り抜き性が悪化してしまうなどの問題が生じるものであった。
【0017】このように、従来では、ラケットフレームのスイートエリアを拡大して安定したコントロール性と、良好な反発性及び、打球感を得ることと、良好な操作性(振り抜き性)を確保する要求特性は、互いに相反する設計構成となり、これら双方の要求を十分に満足させることのできるラケットフレームを得ることは現在では難しいものとなっている。
【0018】そこで本発明は、このような従来の問題点に鑑み、打球部に張設されるガットの張設支持構造に工夫を施し、ラケットフレームに良好な操作性を確保させながら、優れた反発性とコントロール性を発現させることのできるガット保護体と、該ガット保護体が挿着されてなるラケットフレームを提供することを目的とする。
【0019】
【課題を解決するための手段】上記目的を達成するために、本発明は以下のような構成とした。即ち、本発明の請求項1は、打球部に穿設されたガット挿通孔に嵌挿され、且つガットを遊挿する通孔が備えられた複数の筒部と、該複数の筒部同士を繋ぐ帯部とから構成されるガット保護体であって、前記通孔が前記帯部の外面に開口する縁部のうちガットが引き通される部分に、前記縁部から前記通孔の内部に向けて延在するガットの受承部が設けられていると共に、該受承部の延在端部が、前記通孔に挿通されるガットを打球方向に摺動案内するように、前記通孔を打球方向に横切る直線形状或いは、直線に近い曲線形状に構成されていることを特徴とするものである。
【0020】請求項2は、前記請求項1に係るガット保護体であって、前記隣接する筒部間の帯部の外面に、ガットの折り返し部を支持する膨出部が形成されていると共に、該膨出部の頂面部が、該膨出部の打球方向幅の中央部で最も窪む湾曲形状を呈していることを特徴とするものである。
【0021】そして、請求項3は、打球部とグリップ部及び、前記打球部とグリップ部とを繋ぐシャフト部とから構成されるラケットフレームにおいて、前記打球部に穿設されるガット挿通孔の少なくとも一部に、前記請求項1又は、2記載のガット保護体が挿着されてなることを特徴とするラケットフレームである。
【0022】
【発明の実施の形態】以下に、図面と共に詳記する好適な実施例により本発明を説明する。図1は、本実施例のラケットフレーム1の正面と、側面とを表す外観図、図2(a)は、図1のA−A線部拡大端面図、図2(b)は、図1のB−B線部拡大端面図、図3は、図1のC部領域の拡大説明図を示す。
【0023】即ち、本実施例のラケットフレーム1は、図1乃至図3に示すように、ガット2が張設されて打球面3が形成される打球部4と、該打球部4とグリップ部5とを連結する左右2本のシャフト部6とが繊維強化樹脂によって一体的に形成される管状構造を有している。そして、前記打球部4には、その内外周面を貫通するように多数のガット挿通孔7が周方向に適宜の間隔を隔てて穿設されていると共に、前記各々のガット挿通孔7内にガット保護体8が挿着される構成となっている。前記ラケットフレーム1のガット張設前の質量は、250g〜270gの範囲内にあり、又、打球部4の大きさは、従来の一般的なラケットフレームと略同様の0.068m〜0.077mの範囲内に構成されている。
【0024】又、本実施例のラケットフレーム1では、前記した打球部4の内、縦方向のガット2が最も長く張設される領域、即ち、打球部4のトップ部9とヨーク部10(打球部4を正面から投影した時に、打球部4のトップ部9を12時とした場合、12時と6時に相当する近傍領域)にそれぞれ穿設される6本〜8本分のガット挿通孔7(例えば、トップ部9における8個のガット挿通孔7と、ヨーク部10における6個のガット挿通孔7)及び、横方向のガット2が最も長く張設される領域、即ち、打球部4の最大幅部を形成している左右両サイド部11a、11b(9時と3時に相当する近傍領域)に設ける8本〜10本分のガット挿通孔7(例えば、右サイド部11aにおける8個のガット挿通孔7と、左サイド部11bにおける8個のガット挿通孔7)とを除いた各々のコーナー部12a、12b、12c、12dに穿設されるガット挿通孔7は、図2(a)に示すように、従来の一般的なラケットフレームに穿設されるガット挿通孔と同様、3.4mm〜3.6mmの孔径を有するように構成されていると共に、前記ガット挿通孔7にガット2と同径或いは、それよりも僅かに大きい径の通孔13bを有したガット保護体8bが挿着されている。
【0025】そして、前記打球部4のトップ部9と、ヨーク部10及び、左右両サイド部11a、11bにおけるガット挿通孔7は、図2(b)に示すように、前記した各コーナー部12a、12b、12c、12dに穿設されるガット挿通孔7よりも一段と大きい孔径を有するように構成されており、該ガット挿通孔7に、以下に説明する本実施例のガット保護体8aが挿着されている。
【0026】即ち、本実施例のガット保護体8aは、図4乃至図6に示すように、前述した打球部4のトップ部9と、ヨーク部10及び、左右両サイド部11a、11bに穿設された大径のガット挿通孔7に嵌挿される比較的大きな外径を成した複数の筒部14と、該複数の筒部14同士を連結し、且つ前記打球部4の外周面15に形成されるガット保護溝16の底壁17に沿って添設される帯部18とを備えている。前記筒部14には、ガット2を遊挿するための比較的大きな孔径を有した通孔13aが形成されており、該通孔13aは、前記帯部18の外面まで貫通している。尚、図4中(a)は、本実施例のガット保護体8aを筒部14とは反対側の上面より投影した状態を表し、(b)は側面、(c)は底面側より投影した状態を表している。
【0027】又、前記ガット保護体8a内、ガット2が折り返し張設される箇所となる隣接する筒部14間の帯部18の外面には、ガット2の折り返し部を支持する膨出部19が一体的に設けられている。前記膨出部19は、隣接する筒部14間に跨って張設されるガット2の折れ曲がりを緩やかな状態とするように前記隣接する筒部14間をアーチ状に跨ぐような円弧形状を呈するように構成されており、その高さは、前記筒部14間の中央部領域で最も高くなるように構成されている。又、前記膨出部19のガット2を支持する頂面部20は、図6に示すように、該膨出部19の打球方向幅の中央部で最も窪む湾曲した形状を成すように構成されている。
【0028】そして、本実施例のガット保護体8aでは、図5(a)に示すように、前記筒部14の通孔13aが前記帯部18の外面に開口する縁部21のうちガット2が引き通される部分に、前記縁部21から前記通孔13aの内部に向けて延在するガット2の受承部22が設けられている。前記受承部22は、前記帯部18の外面に設けられる膨出部19に一体的に連なる外形状を成すと共に、前記膨出部19に跨り、且つ前記受承部22に受承されて筒部14の通孔13a内に挿通されるガット2が、前記通孔13aの中央軸線Z上の領域に案内されるように、前記縁部21から前記通孔13aの内部に向けて適宜の延在長さNを有した形状に構成されている。
【0029】又、図5(b)に示すように、前記受承部22の内、該受承部22の延在端部23が、前記通孔13aを打球方向に横切って横断する直線或いは、直線に近い曲線形状を有するように構成されており、前記受承部22に受承されたガット2が、打撃時に加わる応力により、前記通孔13a内において打球方向に摺動するように構成されている。
【0030】このような本実施例の構成によれば、図7に示すように、ボール打撃時にガット2にボールからの押圧力Fが加わると、前記通孔13aに遊挿されたガット2が押圧方向に摺動して、ガット2の変位支点が前記ガット2の摺動分だけ押圧方向にずれを生ずる。これによりガット2は、打球部より外側の仮想点Qnで示した点を支点として撓む場合と同様な撓みを呈するようになることから、ガット2の張設長さによって特定されるスイートエリア以上の大きなスイートエリアが得られるものである。
【0031】更にまた、図8に示すように、中央領域から外れたところでボールを打撃した場合にあっては、打撃点に近い側の前記通孔13aに遊挿されるガット2が、対抗する一方の通孔13aに遊挿されるガット2よりも大きな摺動を呈し、ガット2の変位支点がその分押圧方向に大きなずれを生ずるようになる。これによりガットの撓みの仮想点Qnaは、対抗する一方のガット2の撓みの仮想点Qnbよりも大きく外側に移行するようになることから、これに伴い双方のガット2の撓み角は略等しくなって表れ、ボールの返球方向の偏りは少なくなると共に、中央領域でボールを打撃した場合と略同様な撓み量が得られるものである。
【0032】又、本実施例のガット保護体8aでは、図5(a)に示すように、各々隣接する筒部14間にアーチ状の膨出部19が設けられているため、前記隣接する筒部14間に跨って張設されるガット2が、通孔13aの縁部21に設けられた受承部22と、前記膨出部19の頂面部20に当接支持されるようになる。従って、ガット2から加わる応力は、前記受承部22だけでなく前記膨出部19の頂面部20によっても受承されて分散するようになることから、前記ガット保護体8aに加わる応力は極めて小さいものとなり、長期に亘り耐久性を維持させることができる。又、前記膨出部19の頂面部20が、図6に示すように、該膨出部19の打球方向幅の中央部で最も窪む湾曲した形状を成すように構成されていることから、ボール打撃時に打球方向に摺動したガット2を、ボールからの押圧力Fが解けた後に、前記した頂面部20の湾曲した面に沿わせて打撃前のもとの中央位置に摺動して戻らせることができ、打撃前のガット2を常に同じ位置に保つことができるものである。
【0033】前記ガット保護体8aの筒部14の通孔13aの径は、前記筒部14の外径や、ガット保護体8a自体の材質の相違によっても種々異なるものであるが、前記筒部14の保形性や耐久性等を考慮しつつ、ガット2の摺動域を十分に確保させることを前提として多くの実験を行った結果、4mm〜6mm、とりわけ4mm〜5mmの孔径に形成されることが好ましい。前記孔径が、4mmよりも小さい場合では、ガット2の摺動域を十分に確保することができないといった不具合が生じ、又、前記孔径が、6mmよりも大きい場合では、前記筒部14の肉厚が極めて薄く形成されてしまい、筒部14の耐久性を保持することが難しい。又、前記筒部14の外径としては、4.8mm〜7.8mmに形成されることが望ましい。
【0034】更に、前記ガット保護体8aが挿着されるトップ部9と、ヨーク部10及び、左右両サイド部11a、11bのガット挿通孔7の孔径としては、ラケットフレーム1自体の断面形状や設計強度及び、剛性等の相違によっても種々異なるものであるが、ラケットフレーム1として実用上十分な強度や剛性を発現できながら、前述したガット2の摺動域を十分に確保させることを前提として多くの実験を行った結果、5mm〜8mm、とりわけ6mm〜7mmの孔径に形成されることが好ましい。前記孔径が、5mmよりも小さい場合では、ガット2の摺動域を十分に確保することができないといった不具合が生じ、又、前記孔径が、8mmよりも大きい場合では、該部におけるフレームの強度や剛性が不足して打球面が安定しないといった問題を生ずる恐れがある。
【0035】本実施例では、前記ガット保護体8aに設けられる受承部22の延在端部23が、前記通孔13aを打球方向に横切って横断する直線或いは、直線に近い曲線形状を呈するように構成するものであるが、特に、前記延在端部23の形状を、図9に示すように、前記受承部22の延在方向とは反対側に凹んだ曲線形状を有するように構成した場合、前記した膨出部19の頂面部20において奏する作用と同様に、ボール打撃時に前記延在端部23に沿って打球方向に摺動したガット2を、ボールからの押圧力が解けた後に、前記曲線に沿わせて打撃前のもとの中央位置に摺動して戻らせることができることから、打撃前のガット2を常に同じ位置に保つことができ、より望ましい構成となる。尚、前記した延在端部23を大きく湾曲した曲線形状に形成する(曲率半径を小さくし過ぎる)と却ってガット2が打球方向に摺動し難くなってしまうことから、前記延在端部23は、前記ガット2が打球方向へ容易に摺動できる比較的大きな曲率を持った曲線形状に形成する必要があるが、種々の実験結果から、前記曲線は、半径Rが10mm、とりわけ15mmの円弧よりも直線に近い曲線により構成されることが望ましい。
【0036】尚、本実施例の繊維強化樹脂製のラケットフレーム1を構成する主たる補強繊維としては、炭素繊維、ガラス繊維、ボロン繊維、芳香族ポリアミド繊維等種々のものが使用できるが、強度や剛性、質量、コストの面からも炭素繊維が好適である。又、マトリックス樹脂としては、エポキシ樹脂、ナイロン樹脂等が使用できるが、強度、耐久性の点でエポキシ樹脂が好適である。
【0037】本実施例のガット保護体8aを構成する材料としては、成形性に優れ、しかも、高張力で張設されるガット2を支持するのに十分な保形性が保たれる比較的剛性を有した材料が望ましい。例えばその一例しては、ナイロン樹脂、ABS樹脂、ポリプロピレン樹脂、塩化ビニル樹脂等の材料からなる射出成形品等が挙げられる。なかでも、前記材料の曲げ弾性率が、1100MPa以上、1500MPa以下の特性を有するものが特に好ましい。前記材料の曲げ弾性率が1100MPaよりも小さいと、ガット張設時にガット2がガット保護体8aにくい込んでしまい、打撃時にガット2が摺動し難くなってしまう恐れが有り、又、前記曲げ弾性率が1500MPaよりも大きいと、柔軟性に欠けてしまいガット保護体8aを打球部の外周面の形状に沿わせて装着させることが困難となる恐れがある。又、本発明では、前記材料の他、ガット2の摺動特性を良好なものとするために、前記ガット保護体8aの全体或いは、ガット2と接触する一部をガット2との摩擦抵抗の少ない軽金属材料で形成する構成としても良い。前記軽金属材料としては、例えば、アルミニウム、マグネシウム、チタン或いは、それらの合金等が挙げられる。
【0038】尚、上記のように本実施例のラケットフレーム1では、前記打球部4のトップ部9と、ヨーク部10及び、左右両サイド部11a、11bに本実施例のガット保護体8aを挿着させる例を説明したが、本発明はこれに限定されず、前記ガット保護体8aを挿着する部位及び、範囲は任意に選定することができるものである。
【0039】
【実施例】本発明の効果を確認するために、以下の表1に示すような実施例1と、比較例1〜4のラケットフレームを用意した。
【0040】
【表1】

【0041】即ち、実施例1として用意したラケットフレーム1は、上述した実施の形態と同様、打球部4のトップ部9と、ヨーク部10及び、左右両サイド部11a、11bに上述した構成のガット保護体8aを装着させたものを用意した。前記ガット保護体8aは、ポリアミド樹脂より形成されてなるもので、筒部14に設けられる通孔13aの孔径は4mmとし、且つ受承部22の延在端部23の形状が、前記通孔13aを打球方向に横切って横断する半径Rが20mmの曲線形状を呈したものを用いた。尚、前記した打球部4のトップ部9と、ヨーク部10及び、左右両サイド部11a、11bを除いた各コーナー部12a、12b、12c、12dには、3.4mmの孔径を有するガット挿通孔7が穿設されており、該ガット挿通孔7に、ガット2と略同径の通孔を備えたガット保護体8bが挿着されている。
【0042】又、比較例1としては、図10に示すように、前記した打球部4のトップ部9と、ヨーク部10及び、左右両サイド部11a、11bに装着されるガット保護体において、前記した受承部22を備えない構成のガット保護体とした他は、実施例1のラケットフレーム1と略同様とした。
【0043】そして、比較例2としては、図11に示すように、前記した実施例1のガット保護体8aに備えられる前記受承部22の延在端部23の形状を、半径Rが5mmとなるように構成した他は、実施例1のラケットフレーム1と略同様としたものを用意した。
【0044】又、比較例3としては、前記した実施例1のガット保護体8aを備えない構成のラケットフレームであって、打球部4の全周に亘って3.4mmの孔径を有したガット挿通孔7を穿設し、該ガット挿通孔7にガット2と略同径の通孔13bを備えたガット保護体8bを挿着させた構成のラケットフレームを用意した。
【0045】更に、比較例4としては、前記比較例3と同様に、打球部4の全周に亘って3.4mmの孔径を有したガット挿通孔7を穿設した構成のラケットフレームであって、打球部4の面積を大きく構成したものを用意した。
【0046】これらの実施例1と、比較例1〜4のラケットフレームについて実打試験を行った。この実打試験では、主として中上級者を対象にして、実際に、実施例1と、比較例1〜4のラケットフレームでボールを打撃し、その際、プレーヤーが体感したラケットフレームの操作性(振り抜き易さ)、打撃時の反発性、コントロール性、更に、プレー時における違和感等の評価を行った。この時の試験結果を以下の表2に示す。
【0047】
【表2】

【0048】このような試験結果より、本実施例1のラケットフレーム1では、比較例1〜4のラケットフレームに比し、優れた反発性、コントロール性が得られると共に、操作性に優れながらも、プレー時に違和感を与えないラケットフレームであることが確認できた。
【0049】尚、比較例1、2では、ガット保護体8aの通孔13aを大径としている分、比較例3に比して反発性及び、コントロール性に優れた評価が得られたが、本実施例1のラケットフレーム1ほど良好な評価を得るものではなかった。これは、打撃時にガット2が打球方向に摺動し難い構成を成していることに起因する。又特に、比較例1にあっては、通孔13a内に向けた受承部22を備えない分、図10(a)に示すように、前記通孔13a内に引き通し挿通されるガット2の変位支点Qが、筒部の下方側に位置するようになることから、比較例2に比して、反発性及び、コントロール性の評価は低く表れた。
【0050】
【発明の効果】以上のように、本発明では、打球部に穿設されたガット挿通孔に嵌挿して挿着されるガット保護体の筒部の通孔を大径とし、且つ前記筒部の通孔が前記帯部の外面に開口する縁部のうちガットが引き通される部分に、前記縁部から前記通孔の内部に向けて延在するガットの受承部を設けると共に、該受承部の延在端部が、前記通孔に挿通されるガットを打球方向に摺動案内するように、前記通孔を打球方向に横切る直線形状或いは、直線に近い曲線形状に構成しているため、打球部の面積を拡大せずともスイートエリアを大幅に拡大することができる。従って、打撃時には、良好な操作性が得られながらも優れた反発性、コントロール性及び、打球感が得られるものである。
【出願人】 【識別番号】000005935
【氏名又は名称】美津濃株式会社
【住所又は居所】大阪府大阪市中央区北浜4丁目1番23号
【出願日】 平成14年1月31日(2002.1.31)
【代理人】
【公開番号】 特開2003−225330(P2003−225330A)
【公開日】 平成15年8月12日(2003.8.12)
【出願番号】 特願2002−24860(P2002−24860)