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【発明の名称】 ゴルフクラブヘッド
【発明者】 【氏名】佐野 喜則
【住所又は居所】兵庫県神戸市中央区脇浜町3丁目6番9号 住友ゴム工業株式会社内

【要約】 【課題】フェース部の耐久性を向上する。

【解決手段】ヘッド体積が300cm3 以上でありかつボールを打球するフェース面Fのフェース高さAが45〜60mmである金属製のゴルフクラブヘッド1である。フェース面Fを形成するフェース部材は、圧延加工を経て形成された圧延材からなる。規定のライ角、ロフト角で水平面に載置した基準状態において、前記フェース部材の圧延加工時の圧延方向Kと、前記フェース面Fに直角な垂直面Vが該フェース面Fと交わるフェース垂直線Nとのなす鋭角側の角度θを20度以下とする。フェース面Fの中央部FCには、水平方向にのびるフェース溝を有していない。
【特許請求の範囲】
【請求項1】ヘッド体積が300cm3 以上でありかつボールを打球するフェース面のフェース高さが45〜60mmである金属製のゴルフクラブヘッドであって、前記フェース面を形成するフェース部材は、圧延加工を経て形成された圧延材からなるとともに、規定のライ角、ロフト角で水平面に載置した基準状態において、前記フェース部材の圧延加工時の圧延方向と、前記フェース面に直角な垂直面が該フェース面と交わるフェース垂直線とのなす鋭角側の角度θを20度以下とし、しかも前記フェース面の中央部に、水平方向にのびるフェース溝を有しないことを特徴とするゴルフクラブヘッド。
【請求項2】前記フェース面の中央部は、円ないし楕円形状の小凹部であるパンチマークを離散的に具え、該パンチマークは、凹部の面積が0.0044(平方インチ)以下、深さが0.04インチ以下あることを特徴とする請求項1記載のゴルフクラブヘッド。
【請求項3】前記フェース部材は、前記フェース面の中央部を含みかつ厚さが1.5〜2.9mmの中央厚肉部と、その外側に形成されかつ厚さが1.0〜2.8mmでかつ前記中央厚肉部よりも厚さが小の周辺薄肉部とを含むことを特徴とする請求項1又は2記載のゴルフクラブヘッド。
【請求項4】前記フェース部材は、前記圧延材を冷間又は温間でプレス加工することにより、前記中央厚肉部と前記周辺薄肉部とを形成してなることを特徴とする請求項3に記載のゴルフクラブヘッド。
【請求項5】前記フェース面の中央部が、フェースセンター点を中心とする直径15mmの円で囲まれる領域である請求項1乃至4のいずれかに記載のゴルフクラブヘッド。
【発明の詳細な説明】【0001】
【発明の属する技術分野】本発明は、反発性能を高めつつ耐久性を向上しうるゴルフクラブヘッドに関する。
【0002】
【従来の技術及び発明が解決しようとする課題】近年の金属製のゴルフクラブヘッドにあっては、反発性能の向上により飛距離を増大させる一方で、十分な耐久性の確保が重要な課題となっている。反発性能の向上に関しては、例えば高反発材料の金属材料、例えばβ型チタン合金をフェース部に用いることや、ヘッド体積を大型化しフェース面積を大きくすること、さらにはフェース部の厚さを薄くすること等が行われつつある。
【0003】また耐久性の向上に関しては、例えばフェース部材に圧延材を用いる場合、圧延方向とフェース溝(スコアライン)との交差する角度を規制することが提案されている。これは、圧延材が、その圧延方向に比べて該圧延方向と直角な方向の延性が小さくなるという特性に着目し、フェース溝に対してほぼ直角方向に圧延方向を位置させることにより、フェース溝を起点としたクラックを防止し、耐久性の向上を期待しようとするものである。しかしながら、近年の大型ヘッド、例えばヘッド体積が300cm3 以上であり、フェース面の高さが45mm以上のものにあっては、依然としてフェース溝を起点としたクラックを完全に抑制することは非常に困難である。
【0004】本発明は、以上のような問題点に鑑み案出なされたもので、上述のような大型ヘッドを前提として、フェース面を形成するフェース部材に、圧延加工を経て形成された圧延材を用いるとともに、その圧延方向を一定の方向に限定ししかもフェース面の中央部に、水平方向にのびるフェース溝を設けないことを基本として、反発性能を高めつつ耐久性を向上しうるゴルフクラブヘッドを提供することを目的としている。
【0005】
【課題を解決するための手段】本発明のうち請求項1記載の発明は、ヘッド体積が300cm3 以上でありかつボールを打球するフェース面のフェース高さが45〜60mmである金属製のゴルフクラブヘッドであって、前記フェース面を形成するフェース部材は、圧延加工を経て形成された圧延材からなるとともに、規定のライ角、ロフト角で水平面に載置した基準状態において、前記フェース部材の圧延加工時の圧延方向と、前記フェース面に直角な垂直面が該フェース面と交わるフェース垂直線とのなす鋭角側の角度θを20度以下とし、しかも前記フェース面の中央部に、水平方向にのびるフェース溝を有しないことを特徴としている。
【0006】また請求項2記載の発明は、前記フェース面の中央部は、円ないし楕円形状の小凹部であるパンチマークを離散的に具え、該パンチマークは、凹部の面積が0.0044(平方インチ)以下、深さが0.04インチ以下あることを特徴とする請求項1記載のゴルフクラブヘッドである。
【0007】また請求項3記載の発明は、前記フェース部材が、前記フェース面の中央部を含みかつ厚さが1.5〜2.9mmの中央厚肉部と、その外側に形成されかつ厚さが1.0〜2.8mmでかつ前記中央厚肉部よりも厚さが小の周辺薄肉部とを含むことを特徴とする請求項1又は2記載のゴルフクラブヘッドである。
【0008】また請求項4記載の発明は、前記フェース部材は、前記圧延材を冷間又は温間でプレス加工することにより、前記中央厚肉部と前記周辺薄肉部とを形成してなることを特徴とする請求項3に記載のゴルフクラブヘッドである。
【0009】また請求項5記載の発明は、前記フェース面の中央部が、フェースセンター点を中心とする直径15mmの円で囲まれる領域である請求項1乃至4のいずれかに記載のゴルフクラブヘッドである。
【0010】
【発明の実施の形態】以下、本発明の実施の一形態を図面に基づき説明する。図1は本実施形態のゴルフクラブヘッド(以下、単に「ヘッド」ということがある。)1の正面図、図2はそのX−X線断面図をそれぞれ示しており、図1ではヘッド1を規定のライ角α、ロフト角βで水平面HPに載置した基準状態を示している。
【0011】図において、本実施形態のヘッド1は、ボールを打撃するフェース面Fを有するフェース部2と、前記フェース面Fの上縁2aに連なりヘッド上面をなすクラウン部3と、前記フェース面Fの下縁2bに連なりヘッド底面をなすソール部4と、前記クラウン部3とソール部4との間を前記フェース部2のトウ側縁2tからバックフェース部を通りヒール側縁2hまでのびるサイド部5と、図示しないシャフトが装着されるシャフト取付部6とを具える。該シャフト取付部6の内部にはシャフト(図示省略)を挿入し接着剤等にて固着しうるシャフト取付孔6aが形成されている。このシャフト取付孔6aの孔中心線CLは後に取り付けられるシャフトの軸中心線と実質的に一致するため、本明細書ではこの孔中心線CLを基準にライ角αを定めている。また本実施形態のヘッド1は、金属材料からなりかつ内部に中空部iを有するウッド型のものが例示されている。
【0012】また本発明にかかるヘッド1は、ヘッド体積を300cm3 以上とする。より好ましくは300〜500cm3 、さらに好ましくは310〜450cm3 が望ましい。また、このようなヘッド体積の大型化に伴い、前記フェース面Fのフェース高さAを45〜60mmと大きく設定する。このように、ヘッド体積やフェース高さなどを大きく限定した大型ヘッドにおいては、フェース面Fの面積を拡大することが可能となり、その結果、打球時に撓み得る撓み領域を増大させる。これによりヘッド1の反発性能を高め、打球の飛距離を向上するのに役立つ。
【0013】ここで、前記フェース高さAが45mm未満であると、フェース面Fの面積を十分に大きく確保し得ず反発性能の向上が期待できない傾向があり、逆に60mmを超えると、フェース部2の撓みが大きくなりすぎて耐久性能の向上が困難となりやすい。特に好ましくは、フェース高さAの下限値を48mm以上、さらに好ましくは52mm以上とするのが望ましい。なおフェース高さAは、図1に示すように、フェース面Fの最高点と最低点との間の上下方向の距離を図2に示すように、フェース面Fに沿って測定した長さとする。
【0014】また特に限定されるわけではないが、フェース面Fの水平方向の最大長さであるフェース幅Bは、例えば90〜130mm、より好ましくは95〜115mmとするのが望ましい。該フェース幅Bが90mm未満では、フェース部2の撓みが十分に得られないため、反発性能の向上が期待できず、逆に130mmを超えると、フェース部2の撓みが大きくなりすぎて耐久性能の向上が困難となりやすい。なお、フェース高さAとフェース幅Bとの比(A/B)は、例えば0.346〜0.667程度とするのが望ましい。前記比(A/B)が0.346未満であると、フェース高さAが相対的に小となって大きな撓みが得られ難い傾向があり、逆に0.667よりも大であると、フェース部2の撓みが大きくなりすぎて耐久性の低下を招く傾向がある。
【0015】またフェース部2は、その中央部FCを少なくとも含みかつ厚さt1が1.5〜2.9mmの中央厚肉部2Aと、厚さt2が1.0〜2.8mmでかつ前記中央厚肉部2Aよりも小の周辺薄肉部2Bとを含んで形成されている。なおフェース面Fの中央部FCは、例えば前記フェース高さA、フェース巾Bの各中心であるフェースセンター点Cを中心とする直径15mmの円CRで囲まれる領域とする。本例では前記中央厚肉部2Aを、図6(A)に点線で示すように、前記円CRよりも大きくかつフェース面Fの輪郭に沿う横長状の領域として形成している。また本例の中央厚肉部2Aでは厚さがほぼ一定で形成されている。他方、周辺薄肉部2Bは、フェース部2の内面の端縁eからフェースセンター点Cに向かって巾7mmの領域を含み、本例ではこの部分も略一定の厚さで形成している。なお中央厚肉部2Aと周辺薄肉部2Bとの間は、厚さを滑らかに変化させている。
【0016】このようなフェース部2は、ボールと頻繁に接触するフェース面Fの中央部FCの強度を高める一方、周辺薄肉部2Bにより撓み易くすることにより、耐久性と反発性能とをバランス良く向上しうる。このような観点より、より好ましくは中央厚肉部2Aの厚さt1は1.8〜2.9mm、さらに好ましくは2.1〜2.9mmとするのが望ましい。また周辺薄肉部2Bの厚さt2は、1.0〜2.8mm、さらに好ましくは1.3〜2.8mmとするのが望ましい。とりわけ、厚さの差(t1−t2)は0.1〜1.9mm、より好ましくは0.2〜1.5mmとするのが望ましい。
【0017】また、前記ヘッド1は、図3に分解して示すように、フェース面Fを形成するフェース部材7と、このフェース部材7を前面に配するヘッド本体部9とを本例では溶接により一体固着して形成される。
【0018】前記フェース部材7は、本実施形態では前記フェース面Fの実質的な全域を形成する基部7Aと、この基部7Aの背面からバックフェース部側に小長さSでのびる延長部7Bとを含む。該延長部7Bは、本例ではクラウン部3の一部をなすクラウン部側の延長部7B1及びソール部4の一部をなすソール部側の延長部7B2を含むことにより、該フェース部材7が断面略コ字状に形成されたものが例示される。また前記ヘッド本体部9は、この各延長部7B1、7B2に合わせてクラウン部3、ソール部4を手前に控えて形成している。このようなヘッド1では、フェース部材7とヘッド本体部9との溶接を、フェース面Fの周縁からバックフェース部側に隔てた位置で行うことができ、溶接作業性を向上しうるとともに、フェース面Fの周縁部での溶接を極力減じ反発性能の低下を防止しうる。このような観点より前記小長さSは、例えば5〜20mm、さらに好ましくは5〜15mmとするのが望ましい。
【0019】前記フェース部材7は、圧延加工を経て形成された圧延材10から構成されている。「圧延加工を経て形成される」とは、該フェース部材7を形成するまでの製造工程中に圧延加工、すなわち図4に示す如く回転する一対のロールR、R間に金属材料Mを摩擦によって噛み込ませ、厚さないし断面積を減じる加工を含むことを意味する。従って、この圧延工程の前に、例えば金属材料Mの鋳造、鍛造、研削工程等が行われていても良いし、また圧延工程の後工程としてプレス、打ち抜き又は切断工程、さらには必要により熱処理工程等が含まれても良い。図4において、圧延加工された圧延材は図中のQの向きへ圧延排出され、図中Kの方向が当該圧延材10の圧延方向となる。
【0020】圧延工程によって金属材料に変形を加えると、加工硬化により強度が高められ材料の機械的特性を向上しうる利点がある。圧延加工は、室温下で圧延加工を行う冷間圧延加工と、材料を加熱して圧延を行う熱間圧延加工とに大別されるが、好ましくは加工硬化の緩和が少なくかつ製造コストが低い冷間圧延加工を採用することが望ましい。
【0021】本発明のヘッド1は、図1に示すように、前記基準状態において、フェース部材7の圧延加工時の圧延方向Kと、前記フェース面Fに直角な垂直面Vが該フェース面Fと交わるフェース垂直線Nとのなす鋭角側の角度θを20度以下、より好ましくは10度以下に設定する。圧延加工時の圧延方向は、図4に示した如く金属材料がロールR、Rから順次押し出されていくときの送り方向である。また圧延工程において、複数段の圧延を繰り返す際にその都度送り方向を違える場合には最終段の圧延方向を基準とする。またフェース垂直線Nは、フェース高さA、フェース巾Bの各中心であるフェースセンター点Cを通るフェース面Fと直角な垂直面Vによって特定される。
【0022】図5(A)、(B)には、圧延材10の曲げに対する異方性を説明するために、圧延方向Kと、曲げモーメントmの曲げ中心線Lとの関係を示している。発明者らの実験の結果、図5(A)のように、圧延材10の圧延方向Kを、曲げモーメントMの回転中心線と平行な曲げ中心線Lと直角に揃えた場合、図5(B)のように、圧延材10の圧延方向Kを、曲げモーメントmの曲げ中心線と平行とした場合に比べ、曲げ強度で約5〜20%の向上があることが分かった。
【0023】一方、フェース面Fは、横長状をなすため、フェース幅Bに比してスパンが小となるフェース高さAの方向は、同一撓み量の場合、単位長さ当たりの撓み量が大となる。つまり、フェース部2においては、トウ−ヒール方向よりも、クラウン−ソール方向の強度、とりわけ撓みに対する曲げ強度を向上させる必要がある。
【0024】そこで、本発明では、圧延材10からなるフェース部材7の圧延方向Kと、フェース垂直線Nとのなす鋭角側の角度θを20度以下とすることにより、曲げ強度が大である前記圧延方向Kをクラウン−ソール方向と平行に近づけることで、耐久性を向上させる。これにより、例えばフェース部2の厚さtを増大させることなく耐久性を向上することが可能となるため、フェース部2の反発性能の悪化をも抑制しうる。なお前記角度θが20度を超えると、クラウン−ソール方向の耐曲げ性能の向上が十分に期待できない。好ましくは前記角度θを10度以下、より好ましくは5度以下とするのが望ましい。なお前記角度θが0度以外の場合、圧延方向Kは、右下がり又は右上がりのいずれの傾斜で傾いていても構わない。
【0025】また本発明では、フェース面Fの前記中央部FCに、水平方向にのびるフェース溝を有しないことを特徴事項の一つとする。フェース面Fの中央部FCに設けられたフェース溝の溝底部は、打球時の応力集中によりクラックの起点となりやすく、しかもクラウン−ソール方向の耐曲げ性能をさらに低下させる。本発明では、かかるフェース溝をフェース面Fの中央部FCから排除することで、大型ヘッドのフェース部2の耐久性をさらに向上させることができる。
【0026】本発明のヘッド1は、図1に示すように、フェース面Fの全ての領域に全く凹凸を設けない態様とすることができる。ただし、ボールとの摩擦をより向上するために、フェース面Fの中央部FCに、「水平方向にのびるフェース溝」以外の比較的小さな凹部を設けることが望ましい。例えば、図6(A)に示すように、フェース面Fの中央部FCに、円ないし楕円形状の小凹部であるパンチマーク11を離散的に設けることができる。このようなパンチマーク11は、フェース溝とは異なり、水平方向に連続するものではないため、フェース面下の中央部FCに設けてもクラウン−ソール方向の耐曲げ性能を実質的に低下させることがない。
【0027】前記パンチマーク11は、その断面図である図6(B)に示すように、凹部の面積(フェース面Fに投影される面積)が0よりも大かつ0.0044(平方インチ)以下、深さdが0よりも大かつ0.04インチ以下あることが望ましい。凹部の面積が0.0044平方インチよりも大又は深さが0.04インチよりも大になると、フェース部2の耐久性を損ねる傾向がある。より好ましくは凹部の面積を0.0010〜0.0040平方インチとし、深さdを0.01〜0.03インチとするのが望ましい。また、パンチマーク11の断面形状は、図6(B)に示すように、底部にクラックの起点となり易い角張った部分を持たない断面形状とするのが望ましく、限定はされないが、例えば半円状やU字状などが望ましい。また隣り合うパンチマーク11、11の中心間距離Pは、好ましくは0.1〜1.0インチ、より好ましくは0.2〜0.5インチとするのが望ましい。なお本例では、パンチマーク11を厚さt1が大の中央厚肉部2Aにのみ設け、周辺薄肉部2Bには設けていない態様を示す。これにより、さらにフェース部2の耐久性の低下が防止される。なおフェース面Fの中央部FC以外には、フェース溝を設けても良い。
【0028】本実施形態のフェース部材7に使用される金属材料は、圧延加工を経て形成しうるものであれば特に限定はされないが、好ましくは低比重かつ高強度のチタン合金が好ましく、とりわけ冷間圧延加工が比較的容易なβ型チタン合金が望ましい。β型チタン合金は、安定してβ型結晶構造を安定して保有するチタン合金であって、多数のすべりを有する体心立方構造(bcc)からなるため、すべりの少ない最密立方構造からなるα型チタン合金に比べて変形に要する抵抗が小さく比較的低温での塑性加工性に優れる。このようなβ型チタン合金としては、例えば、Ti−15V−3Cr−3Al−3Sn、Ti−15Mo−5Zr−3Al、Ti−13V−11Cr−3Al、Ti−8Mo−8V−2Fe−3Al、Ti−22V−4Al、Ti−15Mo−5Zr等が挙げられる。
【0029】本実施形態のフェース部材7を製造する工程としては、先ず上記合金原料を真空アーク溶解炉等にて溶解して鋳塊を成型する。そして、これを圧延加工機で所定の圧下率にて冷間ないし熱間圧延加工、より好ましくは冷間圧延加工を施して一定厚さの板素材を得る。次に、この板素材を前記角度θが20度以下となるようにフェース部材7の下地素材となるフェース部材片として打ち抜き加工する。
【0030】しかる後、図7(A)、(B)に示すようなプレス型20を用いて冷間又は温間にてフェース部材片25をプレス加工する。熱間で行うと、フェース部材片の結晶構造が変態し、圧延材の利点を損ねるため好ましくない。プレス型20は、本例では固定の下型21と、この下型21に対して上下に移動しかつ合わさることにより、フェース部材7を成形するキャビティ23を形成する上型22とを具える。該キャビティ23は、フェース部2の前記中央厚肉部2Aを成形する中央成形部23aと、その外側に形成されかつ前記周辺薄肉部2Bを成形する周辺成形部23bとを有する。
【0031】このようなプレス型20を用いてフェース部材片25をプレス加工することにより、板状のフェース部材片25を前記断面略コ字状のフェース部材7に形成しうる。また、このプレス加工の際に、ロール、バルジといった滑らかな曲面形状をフェース部材7のフェース部2に付与する。また必要によりパンチマークなどが凹設される。さらに、このプレス加工では、フェース部2の各部で圧縮率を違えることにより、フェース部2に前記中央部2Aと周辺薄肉部2Bとを形成しうる。このようにして形成されたフェース部材7は、周辺薄肉部2Bの圧縮率が中央厚肉部2Aに比して大となるため、薄肉であるにも拘わらず、結晶構造のさらなる緻密化によって機械的強度を増し、さらに耐久性を向上するのに役立つ。なおフェース部材片25の厚さt3は、前記厚さt1と実質的に等しくしても良い。この場合、周辺薄肉部2Bだけをプレスにより圧縮成型し薄肉化することができる。
【0032】またプレス加工後、時効処理が行われる。時効処理は、例えばフェース部材7を温度500〜730℃程度、より好ましくは500〜620℃程度の溶体化温度を超えない温度で4〜20時間程度加熱した後、空冷する。これにより、β型チタン合金のフェース部材3に微細なα相、金属間化合物などを析出させ、その強度、硬度を向上させる。
【0033】
【実施例】ウッド型のゴルフクラブヘッドを表1の仕様にて試作するとともに、反発性能と耐久性能とをテストした。なおいずれの実施例もフェース部材には、β型チタン合金であるTi−15Mo−5Zr−3Alの圧延材をプレス加工し時効処理したものを使用し、一方ヘッド本体部にはTi−6Al−4Vの鋳造品を用いた。テスト方法は、次の通りである。
【0034】<反発性能>ヘッドの反発特性は、U.S.G.A.の Procedure for Measureing the Velocity Ratio of a Club Head for Conformance to Rule 4-1e, Revision 2 (February 8, 1999) に基づき反発係数eを算定した。数値が大きいほど良好である。
【0035】<耐久性能>耐久性能は、各ヘッドに同一のシャフトを装着してゴルフクラブとし、これをツルーテンパー社製のスイングロボットに取り付けてヘッドスピード50m/sでゴルフボールを試打し、フェース部が割れるまでの打球数を計測した。評価は比較例1を100とする指数で表示した。数値が大きい程良好である。
【0036】テストの結果を表1に示すが、実施例のものは、いずれも反発性能と耐久性能とをバランス良く向上していることが確認できた。
【0037】
【表1】

【0038】
【発明の効果】上述したように、請求項1記載の発明では、ヘッド体積、フェース高さを規制した大型ヘッドとし反発性能を高める。また圧延材からなるフェース部材の圧延方向と、フェース垂直線とのなす鋭角側の角度θを20度以下とすることにより、圧延材の曲げに対する異方性を利用してクラウン部−ソール部方向の耐曲げ性能を高めることができる。またフェース面の中央部には、水平方向にのびるフェース溝を有しないことにより、該フェース溝を起点としたクラック等の発生を抑制しフェース部の耐久性をさらに向上しうる。
【0039】また請求項2記載の発明のように、フェース面の中央部に、円ないし楕円形状の小凹部であるパンチマークを離散的に設けたときには、フェース部の耐久性低下を伴うことなくボールとの摩擦力を高めることができる。
【0040】また請求項3記載の発明のように、フェース部材が、フェース面の中央部をなしかつ厚さが1.5〜2.9mmの中央厚肉部と、その外側に形成されかつ厚さが1.0〜2.8mmでかつ前記中央厚肉部よりも厚さが小の周辺薄肉部とを含むときには、強度を確保しつつフェース部を大きく撓ませることができ、反発性能と耐久性能とをさらにバランス良く向上しうる。
【0041】また請求項4記載の発明のように、前記フェース部材は、圧延材を冷間又は温間でプレス加工することにより、前記中央厚肉部と前記周辺薄肉部とを形成したときには、厚さが小の周辺薄肉部の圧縮率を大として強度を高め、さらにヘッドの耐久性を向上しうる。また熱間プレスではないため、圧延時の結晶構造を損ねることもなくその特性をそのまま利用することができる。
【出願人】 【識別番号】000183233
【氏名又は名称】住友ゴム工業株式会社
【住所又は居所】兵庫県神戸市中央区脇浜町3丁目6番9号
【出願日】 平成13年12月5日(2001.12.5)
【代理人】 【識別番号】100082968
【弁理士】
【氏名又は名称】苗村 正 (外1名)
【公開番号】 特開2003−169869(P2003−169869A)
【公開日】 平成15年6月17日(2003.6.17)
【出願番号】 特願2001−371823(P2001−371823)