トップ :: A 生活必需品 :: A63 スポ−ツ;ゲ−ム;娯楽




【発明の名称】 ゴルフボール物性の解析方法及びゴルフボール製造方法
【発明者】 【氏名】宮本 和佳
【住所又は居所】兵庫県神戸市中央区脇浜町3丁目6番9号 住友ゴム工業株式会社内

【氏名】角田 昌也
【住所又は居所】兵庫県神戸市中央区脇浜町3丁目6番9号 住友ゴム工業株式会社内

【氏名】白石 正貴
【住所又は居所】兵庫県神戸市中央区脇浜町3丁目6番9号 住友ゴム工業株式会社内

【要約】 【課題】有用なメッシュ分割に基づくシミュレーションによるゴルフボール物性解析方法の提供。

【解決手段】まず、コア、中間の薄肉層及びカバーを含むゴルフボールを多数の要素13a、13b、13cにメッシュ分割してゴルフボールモデル11を得る。次に、このゴルフボールモデル11を用いて、有限要素法等のシミュレーションによってゴルフボール物性の解析を行う。薄肉層に相当する部分の周方向分割数は、コアに相当する部分の周方向分割数及びカバーに相当する部分の周方向分割数よりも大きく設定される。薄肉層に相当する部分に含まれる要素13bの平均アスペクト比は、1/1以上4/1以下である。薄肉層に相当する部分に含まれる要素13bと、この薄肉層に隣接する層に相当する部分に含まれる要素13a、13cとは、固着結合される。
【特許請求の範囲】
【請求項1】 薄肉層を含むゴルフボールを多数の要素にメッシュ分割してゴルフボールモデルを得るステップと、このゴルフボールモデルを用いてシミュレーションによって物性解析を行うステップとを含むゴルフボール物性の解析方法であって、薄肉層に相当する部分の周方向分割数が他の部分の周方向分割数よりも大きく設定されており、薄肉層に相当する部分に含まれる要素の平均アスペクト比が1/1以上4/1以下とされていることを特徴とするゴルフボール物性の解析方法。
【請求項2】 薄肉層に相当する部分に含まれる要素と、この薄肉層に隣接する層に相当する部分に含まれる要素とが、固着結合されている請求項1に記載のゴルフボール物性の解析方法。
【請求項3】 請求項1又は請求項2に記載の解析方法によって得た情報に基づいて仕様を決定するステップと、この仕様に基づいてゴルフボールの製造を行うステップとを含むゴルフボール製造方法。
【発明の詳細な説明】【0001】
【発明の属する技術分野】本発明は、ゴルフボール物性の解析方法に関し、詳細には、有限要素法、有限体積法等のシミュレーションによってゴルフボールの物性を解析する際のゴルフボールモデル形成方法の改良に関するものである。
【0002】
【従来の技術】ゴルフボールは、ゴルフクラブで打撃されることによって飛行する。打撃時の反発特性、飛び出し方向、スピン速度、打球感等の打撃時物性は、その後の弾道(弾道高さや飛距離)に大きな影響を与える。ゴルファーは弾道(特に飛距離)に対する関心が高いので、ゴルフボールメーカーは打撃時物性の向上を目指し、常に開発努力を重ねている。
【0003】ゴルフボールの開発では、まず設計がなされ、ついで試作品が作製される。そして、この試作品が打撃試験に供され、打撃時物性とともに弾道が計測される。計測されたデータは判定され、得られた結果が不十分な場合はこのデータが次の設計にフィードバックされる。このように、ゴルフボール開発では設計、試作及び打撃試験が繰り返されるが、これには多大の労力と時間とが必要である。
【0004】打撃試験に代えて、又は打撃試験とともに、室内での物性測定がなされることもある。室内で測定されうる物性としては、例えば反発係数、圧縮変形量(いわゆるコンプレッション)、固有振動数、衝撃力等が挙げられる。室内での物性測定は、打撃試験に比べれば容易である。しかし、試作品を作製しなければならないという点において室内での物性測定も打撃試験と同様であり、やはりゴルフボール開発に多大の労力と時間とが必要である。
【0005】さらに、打撃試験であっても室内の物性測定であっても、得られるデータはゴルフボール全体としての物性にすぎない。従って、例えば衝突時や圧縮変形時にゴルフボールの各部位がどのような挙動を示しているかは、把握が困難である。このため、ゴルフボールの開発では、設計から評価までの試行錯誤が繰り返されることも多い。
【0006】
【発明が解決しようとする課題】有限要素法、有限体積法等を利用したシミュレーションを行うことにより、試作を行うことなくゴルフボールを評価する方法も考えられる。これらシミュレーションでは、解析対象物(ここではゴルフボール)が多数の要素にメッシュ分割される。
【0007】市販されている一般的なゴルフボールは、複数の層を備えている。例えば、ツーピースゴルフボールはコアとカバーとの2層構造であり、スリーピースゴルフボールはコア、中間層及びカバーからなる3層構造である。シミュレーションでは、各層がメッシュ分割される。
【0008】近年、肉厚が極めて薄い層を備えたゴルフボールが開発され、普及しつつある。図9は、従来のメッシュ分割方法がゴルフボールに適用されて得られたゴルフボールモデル51が示された断面図である。このゴルフボールモデル51は、コア、中間層及びカバーからなるゴルフボールが想定されたものである。中間層は、薄肉である。このゴルフボールモデル51では、半径方向線と周方向線とによって分割が達成されている。最外層の要素53は、カバーに相当する。外から第二番目及び第三番目の要素55は、中間層に相当する。第四番目以降の要素57は、コアに相当する。
【0009】前述のように中間層は薄肉なので、中間層に相当する部分の要素55は扁平である。この扁平な要素55がシミュレーションによる解析に用いられると、この要素55の挙動が実際の中間層の挙動からかい離するおそれがある。具体的には、要素55が実際の中間層よりも高剛性の挙動を示す。これにより、得られる解析結果の精度が不十分となる。半径方向線の数が増やされれば、中間層の要素55が立方体に近づき、解析の精度が向上する。しかしながら、この場合は要素55の総数が多くなり、コンピュータへの負荷が大きくなって演算時間が長時間となってしまう。
【0010】本発明はこのような実状に鑑みてなされたものであり、精度よく、かつ短時間でゴルフボールの物性が解析できる解析方法の提供をその目的とするものである。
【0011】
【課題を解決するための手段】上記の目的を達成するためになされた発明は、薄肉層を含むゴルフボールを多数の要素にメッシュ分割してゴルフボールモデルを得るステップと、このゴルフボールモデルを用いてシミュレーションによって物性解析を行うステップとを含むゴルフボール物性の解析方法であって、薄肉層に相当する部分の周方向分割数が他の部分の周方向分割数よりも大きく設定されており、薄肉層に相当する部分に含まれる要素の平均アスペクト比が1/1以上4/1以下とされていることを特徴とするゴルフボール物性の解析方法、である。
【0012】この解析方法では、薄肉層に相当する部分に含まれる要素の平均アスペクト比が1/1以上4/1以下と小さいので、解析精度に優れる。この解析方法では、薄肉層以外の層に相当する部分の分割数が少ないので、解析時間が抑制されうる。
【0013】この解析方法では、薄肉層に相当する部分に含まれる要素と、この薄肉層に隣接する層に相当する部分に含まれる要素とが、固着結合される。薄肉層に相当する部分の周方向分割数が他の部分の周方向分割数と異なっていても、固着結合によって好ましいゴルフボールモデルが得られる。
【0014】これらの解析に基づいてゴルフボールの好適な仕様が決定され、この仕様に基づいてゴルフボールの製造が行われる。
【0015】
【発明の実施の形態】以下、適宜図面が参照されつつ、好ましい実施形態に基づいて本発明が詳細に説明される。
【0016】図1は、本発明の一実施形態にかかる解析方法が適用されるゴルフボール1が示された一部切り欠き断面図である。このゴルフボール1は、コア3と、薄肉層5と、カバー7とを備えている。カバー7の表面には、多数のディンプル9が形成されている。このゴルフボール1は、カバー7の外側にペイント層及びマーク層を備えているが、これらの図示は省略されている。このゴルフボール1の直径は40mmから45mm、特には42mmから44mmとされている。米国ゴルフ協会(USGA)の規格を満たす範囲で空気抵抗を低減するという観点から、直径は42.67mm以上42.80mm以下とされるのが好ましい。また、このゴルフボール1の質量は44gから46g、特には45.00g以上45.93g以下とされている。
【0017】図2は、図1のゴルフボール1がメッシュ分割されて得られたゴルフボールモデル11が示された正面図である。また、図3は、図2のIII−III線に沿った断面図である。このゴルフボールモデル11は、多数の要素13にメッシュ分割されている。全ての要素13は、六面体である。各要素13の頂点は、節点15である。
【0018】最も外側に位置する要素13aは、カバー7に相当する部分に形成されたものである。この要素は、以下「カバー部要素」と称される。外側から2番目及び3番目の要素13bは、薄肉層5に相当する部分に形成されたものである。この要素は、以下「薄肉層要素」と称される。薄肉層要素13bのさらに内側の要素は、コア3に相当する部分に形成されたものである。この要素は、以下「コア部要素」と称される。コア部要素13cは、中心に位置する微小立方体を除き、半径方向に放射状に配列されている。微小立方体はメッシュ分割の起点として想定されるものであり、ゴルフボールモデル11の中では特異な部分である。この微小立方体の節点15が順次外向きに展開され、略球状のゴルフボールモデル11が形成される。
【0019】図3から明らかなように、カバー7に相当する部分には、周方向に32個のカバー部要素13aが連続している。換言すれば、カバー7に相当する部分の周方向分割数は、32である。コア3に相当する部分のうち微小立方体を除く部分には、周方向に32個のコア部要素13cが連続している。換言すれば、コア3に相当する部分の周方向分割数は、32である。一方、薄肉層5に相当する部分には、周方向に96個の薄肉層要素13bが連続している。換言すれば、薄肉層5に相当する部分の周方向分割数は、96である。
【0020】図4は、図3のゴルフボールモデル11の薄肉層要素13bが示された拡大斜視図である。前述のように、薄肉層要素13bは六面体である。この薄肉層要素13bの12本の辺のうち最長のものの長さはLaであり、最短のものの長さはLbである。両者の比(La/Lb)が、本明細書において「アスペクト比」と称される。要素13が六面体以外の立体である場合は、この立体の辺のうち最長のものの長さがLaとされ、最短のものの長さがLbとされて、アスペクト比(La/Lb)が算出される。
【0021】有限要素法等のシミュレーションにおいて理想的な要素13の形状は、アスペクト比が1/1である立方体である。要素13が立方体に近いほど、換言すれば要素13のアスペクト比が1/1に近いほど、解析精度が向上する。逆に、要素13のアスペクト比が大きいほど、換言すれば要素13の扁平の程度が大きいほど、解析精度が低下する。図2及び図3に示されたゴルフボールモデル11では、薄肉層要素13bの平均アスペクト比が、1/1以上4/1以下と小さくされている。従って、このゴルフボールモデル11が用いられたシミュレーションは、解析精度に優れる。解析精度の観点から、平均アスペクト比は1/1以上3/1以下がより好ましい。
【0022】薄肉層要素13bのアスペクト比が統一されていない場合は、平均値が算出され、このゴルフボールモデル11における薄肉層5の平均アスペクト比とされる。例えば、薄肉層5に相当する部分が、アスペクト比がA1であるN1個の薄肉層要素13bとアスペクト比がA2であるN2個の薄肉層要素13bとからなる場合、平均アスペクト比は、下記の数式(I)によって算出される。
(A1*N1+A2*N2)/(N1+N2) −−−(I)
【0023】薄肉層要素13bのアスペクト比が統一されていない場合は、薄肉層要素13bの総数に対して50%以上、さらには80%以上、特には100%の薄肉層要素13bにおいて、1/1以上4/1以下、特には1/1以上3/1以下のアスペクト比が達成されるのが好ましい。
【0024】薄肉層5は薄肉であるため、薄肉層要素13bの半径方向寸法が小さくなり、アスペクト比が大きくなる傾向がある。図2及び図3に示されたゴルフボールモデル11では、前述のように薄肉層5の周方向分割数が他の層の周方向分割数よりも大きく設定されており、これによってアスペクト比が小さな薄肉層要素13bが形成されている。
【0025】本明細書において薄肉層5とは、厚みが1.7mm以下の層を意味する。図1のゴルフボール1ではコア3とカバー7との間の層が薄肉層5とされているが、コア3の一部やカバー7が薄肉層とされてもよい。これらの場合でも、薄肉層に相当する部分の要素13の平均アスペクト比が上記範囲内とされることにより、解析精度が向上する。厚みが1.5mm以下、さらには1.2mm以下の層に相当する部分の要素13の平均アスペクト比が上記範囲内とされることにより、解析精度低下が抑制される効果が大きい。
【0026】解析精度の観点から、コア3及びカバー7(すなわち、薄肉でない層)に相当する部分に含まれる要素13a、13cの平均アスペクト比も、1/1以上4/1以下、特には1/1以上3/1以下とされるのが好ましい。
【0027】薄肉層要素13bとは、薄肉層5が主体(60体積%以上、特には80体積%以上)となったものを意味する。従って、薄肉層要素13bとコア部要素13cとの境界が必ずしも薄肉層5とコア3との境界と完全に一致する必要はない。コア3の外面及び薄肉層5の内面は曲面であり、要素13の表面は平面なので、薄肉層要素13bとコア部要素13cとの境界と、薄肉層5とコア3との境界とを完全に一致させるのは困難である。同様に、薄肉層要素13bとカバー部要素13aとの境界が必ずしも薄肉層5とカバー7との境界と完全に一致する必要はない。
【0028】図3に示されるような、放射状に要素13が配列されるゴルフボールモデル11では、薄肉層5が外寄りであるほど、この薄肉層5に相当する部分の要素13bの周方向距離が大きくなり、これに伴って平均アスペクト比が大きくなる傾向がある。従って、薄肉層5が外寄りに位置するほど、周方向分割数が大きくされることによる解析精度向上の効果がより大きく発現される。具体的には、中心から12mm以上、さらには15mm以上、特には17mm以上離れてている薄肉層5を備えたゴルフボールにおいて、周方向分割数が大きく設定される場合に、解析精度向上の効果がより発現される。
【0029】解析精度の観点から、薄肉層5に相当する部分の周方向分割数は他の部分の周方向分割数の1.1倍以上が好ましく、2.0倍以上がより好ましく、3倍以上が特に好ましい。解析が長時間に及ぶことを抑制する観点から、薄肉層5に相当する部分の周方向分割数は他の部分の周方向分割数の10.0倍以下が好ましく、8.0倍以下がより好ましく、5.0倍以下が特に好ましい。他の部分の周方向分割数が薄肉層5に相当する部分の周方向分割数と対比される場合、この「他の部分」には、ゴルフボールモデル11の中心に位置する微小立方体は含まれない。
【0030】薄肉層5に相当する部分の周方向分割数は、32以上320以下が好ましい。この数が上記範囲未満であると、解析精度が不十分となるおそれがある。この観点から、この数は48以上が特に好ましい。この数が上記範囲を超えると、解析が長時間に及ぶおそれがある。この観点から、この数は240以下が特に好ましい。もちろん、計算機の処理能力が向上すれば、薄肉層5の周方向分割数が多く設定されうる。
【0031】薄肉層5以外の層に相当する部分(ゴルフボールモデル11の中心に位置する微小立方体を除く)の周方向分割数は、16以上160以下が好ましい。この数が上記範囲未満であると、解析精度が不十分となるおそれがある。この観点から、この数は24以上が特に好ましい。この数が上記範囲を超えると、解析が長時間に及ぶおそれがある。この観点から、この数は120以下が特に好ましい。もちろん、計算機の処理能力が向上すれば、薄肉層5以外の層に相当する部分の周方向分割数が多く設定されうる。
【0032】薄肉層5に相当する部分の周方向分割数は、コア3に相当する部分の周方向分割数及びカバー7に相当する部分の周方向分割数と異なっている。このように、周方向分割数が互いに異なる2つの層のそれぞれに含まれる要素13同士は、互いに固着処理(タイド処理)される。これにより、シミュレーションに適したゴルフボールモデル11が得られる。なお、コア3に相当する部分の周方向分割数とカバー7に相当する部分の周方向分割数とは、同一であってもよく、異なっていてもよい。
【0033】図3から明らかなように、このゴルフボールモデル11では、薄肉層5に相当する部分が半径方向において2層に分割されている。換言すれば、2個の薄肉層要素13bが半径方向において隣接している。もちろん、薄肉層5の半径方向分割数は1でもよく、3以上でもよい。
【0034】前述のように、このゴルフボールモデル11では、全ての要素13が六面体である。六面体は、頂点(すなわち節点15)を8個備えている。一般に、シミュレーションでは四面体、五面体、六面体等の要素が想定されるが、これらの中で最も変形挙動の表現の精度に優れる要素は、8点の積分点を使用できるという理由により、六面体の要素である。図2及び図3に示されたゴルフボールモデル11は全ての要素13が六面体なので、解析の精度に優れる。もちろん、全ての要素13が六面体とされる必要はなく、四面体等の六面体以外の要素と六面体の要素とが併存してもよい。解析精度の観点から、全要素の数に占める六面体の要素の数の比率は70%以上が好ましく、80%以上が特に好ましく、理想的にはこの比率は100%である。
【0035】ゴルフボールモデル11に含まれる要素13の数は、864個以上100000個以下が好ましい。要素13の数が上記範囲未満であると、解析精度が不十分となるおそれがある。この観点から、要素13の数は1664個以上がより好ましく、2816個以上が特に好ましい。要素13の数が上記範囲を超えると、解析が長時間となるおそれがある。この観点から、要素13の数は50000個以下がより好ましく、20000個以下が特に好ましい。もちろん、計算機の処理能力が向上すれば、要素13の数が多く設定されうる。図2及び図3に示されたゴルフボールモデル11の要素13の数は、2816個である。
【0036】このゴルフボールモデル11は、各層のヤング率が10MPa以上500MPa以下、特には15MPa以上450MPa以下のゴルフボール1の物性解析に適している。
【0037】図5は、図2及び図3に示されたゴルフボールモデル11が用いられた物性解析方法の一例が示されたフローチャートである。この解析方法では、まずゴルフボール1の構造及び材質が、机上で設計される(STP1)。次に、この設計データに基づいて、ゴルフボールモデル11が作成される(STP2)。次に、圧縮変形量(STP3)、固有振動数(STP4)、反発特性(STP5)及び打撃時物性(STP6)が評価される。打撃時物性とは、ゴルフクラブで打撃された際のゴルフボール1の初速、スピン速度、打ち出し方向等を意味する。STP3からSTP6の評価は、既知の有限要素法等を用いたシミュレーションによってなされる。これらの結果が総合的に評価され(STP7)、結果が満足であったか否かが判定される(STP8)。満足な結果が得られなかった場合は、この評価結果が設計にフィードバックされ、ゴルフボール1の構造や材質が再度設計される(STP9)。満足な結果が得られた場合は、この設計に基づいてゴルフボール1が製造される(STP10)。
【0038】なお、ゴルフボールモデル11の、圧縮変形量の解析の際の各要素13の挙動の一例が図6(a)に示されており、圧縮モードの固有振動数の解析の際の各要素13の挙動の一例が図6(b)に示されており、ねじれモードの固有振動数の解析の際の各要素13の挙動の一例が図6(c)に示されており、中空金属柱15との衝突における反発特性の解析の際の各要素13の挙動の一例が図6(d)に示されており、ゴルフクラブ17による打撃時の物性解析の際の各要素13の挙動の一例が図6(e)に示されている。この解析方法では、ゴルフボール1全体の物性のみならず、各部位における変形形状、応力分布、歪み分布、エネルギー分布等が、時刻歴として得られる。
【0039】図5及び図6に示された解析方法はあくまで一例であり、必ずしもこの手順で解析が行われる必要はない。例えば、STP3からSTP6までの評価の順序が異なってもよく、また、一部の評価項目が省略されてもよい。さらに、図5及び図6に示された項目以外の項目が、シミュレーションによって評価されてもよい。
【0040】図2及び図3に示されたゴルフボールモデル11はいずれも略球状であるが、略半球状(1/2球状)又は略1/4球状のゴルフボールモデルが想定されてもよい。図7(a)は半球状ゴルフボールモデル19が1/2中空金属柱21と衝突する際の反発特性の解析の様子が示された斜視図であり、図7(b)は1/4球状ゴルフボールモデル23が1/4中空金属柱25と衝突する際の反発特性の解析の様子が示された斜視図である。ゴルフボール1は球状であって対称性が良好なので、半球状ゴルフボールモデル19及び1/4球状ゴルフボールモデル23であっても、並進拘束及び回転拘束を利用することによって測定精度が低下することなく解析が行われうる。しかも、半球状ゴルフボールモデル19及び1/4球状素ゴルフボールモデル23が用いられることにより、モデル形成及び解析処理に要する時間が短縮されうる。
【0041】
【実施例】[ゴルフボールモデルの作成]図1に示されるような、コア、薄肉層及びカバーからなるゴルフボールを用意した。コアの半径は18.0mmであり、薄肉層の厚みは1.0mmであり、カバーの厚みは2.34mmである。コアは架橋ゴムからなり、中心のヤング率は28.13MPaであり、表面近傍のヤング率は74.28MPaである。このコアでは、中心から表面に向けてヤング率が徐々に大きくなる。薄肉層は架橋ゴムからなり、ヤング率は約39.20MPaである。カバーはアイオノマー樹脂からなり、ヤング率は343.00MPaである。
【0042】このゴルフボールをメッシュ分割して、図2及び図3に示されるゴルフボールモデルを得た。このゴルフボールモデルの薄肉層要素のアスペクト比は、2/1から3/1の範囲内である。
【0043】メッシュ分割の方法を変更した他は上記方法と同様にして、図9に示されるゴルフボールモデルを得た。このゴルフボールモデルの薄肉層要素のアスペクト比は、5/1から9/1の範囲内である。
【0044】[圧縮変形量の実測]上記ゴルフボールにまず98Nの初荷重をかけ、徐々に荷重を高めて終荷重として1274Nをかけ、この初荷重から終荷重までのゴルフボールの変形量を測定した。変形量は、3.000mmであった。
【0045】[シミュレーションによる解析]薄肉層要素のアスペクト比が2/1から3/1の範囲内であるゴルフボールモデルを用い、有限要素法によって圧縮変形量測定のシミュレーションを行った。圧縮変形量は2.890mmであった。この解析における最小主歪み分布が、図8に示されている。
【0046】薄肉層要素のアスペクト比が5/1から9/1の範囲内であるゴルフボールモデルを用い、有限要素法によって圧縮変形量測定のシミュレーションを行った。圧縮変形量は2.777mmであった。この解析における最小主歪み分布が、図10に示されている。
【0047】図8と図10との対比より、薄肉層要素のアスペクト比が2/1から3/1の範囲内であるゴルフボールモデルを用いた方が、薄肉層要素のアスペクト比が5/1から9/1の範囲内であるゴルフボールモデルを用いた場合よりも、微細な歪み分布がより正確に反映されていることが解る。しかも、シミュレーションによる圧縮変形量は、薄肉層要素のアスペクト比が2/1から3/1の範囲内であるゴルフボールモデルを用いた方が、薄肉層要素のアスペクト比が5/1から9/1の範囲内であるゴルフボールモデルを用いた場合よりも、実測値に近い。この評価結果より、本発明の優位性は明らかである。
【0048】
【発明の効果】以上説明されたように、本発明によって、有用で簡便なゴルフボールのメッシュ分割法が提供される。このメッシュ分割によって得られたゴルフボールモデルが用いられることにより、シミュレーションによるゴルフボール物性の解析が容易且つ精度よく行われる。これにより、ゴルフボールの設計から製造までのスピードアップが図られる。
【出願人】 【識別番号】000183233
【氏名又は名称】住友ゴム工業株式会社
【住所又は居所】兵庫県神戸市中央区脇浜町3丁目6番9号
【出願日】 平成13年12月5日(2001.12.5)
【代理人】 【識別番号】100107940
【弁理士】
【氏名又は名称】岡 憲吾
【公開番号】 特開2003−169864(P2003−169864A)
【公開日】 平成15年6月17日(2003.6.17)
【出願番号】 特願2001−371339(P2001−371339)