トップ :: A 生活必需品 :: A63 スポ−ツ;ゲ−ム;娯楽




【発明の名称】 ゴルフボール
【発明者】 【氏名】岩見 聡
【住所又は居所】兵庫県神戸市中央区脇浜町3丁目6番9号 住友ゴム工業株式会社内

【氏名】矢吹 芳計
【住所又は居所】兵庫県神戸市中央区脇浜町3丁目6番9号 住友ゴム工業株式会社内

【要約】 【課題】本発明により、反発性、耐擦過傷性、耐変色性および生産性に優れ、かつ良好な成形性を有するゴルフボールを提供する。

【解決手段】本発明は、コアと該コア上に被覆形成されたカバーとから成るゴルフボールにおいて、該カバーが、脂環式ジイソシアネートと結晶性を有するポリオールとを使用して生成されたポリウレタン系熱可塑性エラストマーを基材樹脂として含有することを特徴とするゴルフボールに関する。
【特許請求の範囲】
【請求項1】 コアと該コア上に被覆形成されたカバーとから成るゴルフボールにおいて、該カバーが、脂環式ジイソシアネートと結晶性を有するポリオールとを使用して生成されたポリウレタン系熱可塑性エラストマーを基材樹脂として含有することを特徴とするゴルフボール。
【請求項2】 前記脂環式ジイソシアネートが、4,4’‐ジシクロヘキシルメタンジイソシアネート、1,3‐ビス(イソシアナトメチル)シクロヘキサン、イソホロンジイソシアネートおよびトランス‐1,4‐シクロヘキサンジイソシアネートから成る群から選択される1種以上である請求項1記載のゴルフボール。
【請求項3】 前記ポリウレタン系熱可塑性エラストマー中の前記結晶性を有するポリオールが、DSC測定による結晶融解熱0.1〜0.7mJ/℃・mgを有する請求項1記載のゴルフボール。
【請求項4】 前記結晶性を有するポリオールが、ポリカプロラクトンジオール(PCL)、ポリカーボネートジオール(PC)、ポリエチレンアジペート(PEA)、ポリブチレンアジペート(PBA)およびポリヘキサメチレンアジペート(PHMA)から成る群から選択される1種以上である請求項1または3のいずれか1項記載のゴルフボール。
【請求項5】 前記カバーが、ショアD硬度30〜55および厚さ0.3〜2.0mmを有する請求項1〜4のいずれか1項記載のゴルフボール。
【発明の詳細な説明】【0001】
【発明の属する技術分野】本発明は、反発性、耐擦過傷性、耐変色性および生産性に優れ、かつ良好な成形性を有するゴルフボールに関する。
【0002】
【従来の技術】近年、ゴルフボールのカバー材としてアイオノマー樹脂が広く使用されている。これは、アイオノマー樹脂が反発性、耐久性、加工性等に優れているためである。しかしながら、アイオノマー樹脂は高い剛性と硬度を有するため、カバー材としてアイオノマー樹脂のみを用いると、打球感が硬くて悪いものとなり、スピン性能も十分なものが得られずコントロール性が劣る等の問題があった。
【0003】そこで、上記の問題を解決するために、そのような硬質のアイオノマー樹脂に三元共重合体系の軟質アイオノマー樹脂をブレンドしたり(特開平5‐3931号公報、特許第2709950号公報等)、熱可塑性エラストマーをブレンドしたり(特開平6‐299052号公報、特開平6‐327794号公報等)することによってカバーを軟質化する試みが種々提案されている。しかしながら、そのような硬質アイオノマー樹脂と軟質アイオノマー樹脂とのブレンドでは、良好な打球感とスピン性能が実現できるように調整した場合、反発性能が大きく低下すると共に、特にアイアンショット時にクラブフェースの溝によりカバー表面が削れ易く、ゴルフボール表面が毛羽立ったり、ささくれ立ったりして耐擦過傷性が劣るものであった。また、上記硬質アイオノマー樹脂と熱可塑性エラストマーのブレンドでは、反発性能は上記の軟質アイオノマー樹脂とのブレンドより優れるが、両者の相溶性が悪いためアイアンショット時の耐擦過傷性が更に劣るという問題があった。
【0004】またカバー材として、熱硬化性ポリウレタン組成物を用いたり(特開昭51‐74726号公報、特許第2662909号公報、米国特許第4,123,061号等)、ポリウレタン系熱可塑性エラストマーを用いる(米国特許第3,395,109号、米国特許第4、248、432号、特開平9‐271538号公報、特開平11‐128401号公報、特開平11‐128402号公報等)ことによって上記の問題を解決しようとする試みも数多く提案されている。しかしながら、カバー材に熱硬化性ポリウレタン組成物を用いると、前述の軟質アイオノマー樹脂や熱可塑性エラストマーとのブレンドを用いる場合の欠点である耐擦過傷性には優れているものの、コアにカバーを被覆する工程が複雑化するため、量産化が困難であり、生産性が低下する。
【0005】また、カバー材にポリウレタン系熱可塑性エラストマーを用いると、熱硬化性ポリウレタン組成物に比較すると、生産性は向上するが、打球感、コントロール性および反発性が十分には得られない。更に、ジイソシアネートとして2,4−トリレンジイソシアネート、2,6‐トリレンジイソシアネート、それらの混合物(TDI)、4,4’‐ジフェニルメタンジイソシアネート(MDI)等を用いた一般的なポリウレタン系熱可塑性エラストマーは、強度が大きく耐擦過傷性には優れているものの、黄変し易く、白色ペイントが必要となるという問題点があった。そこでそのような耐変色性を改良するため、脂肪族ジイソシアネートを使用する試みも提案されている(特開平9‐271538号公報等)が、上記のような芳香族ジイソシアネートを使用したものに比較して、強度が低くて耐擦過傷性が低下してしまうという問題があった。
【0006】
【発明が解決しようとする課題】本発明は、上記のような従来のゴルフボールの有する問題点を解決し、反発性、耐擦過傷性、耐変色性および生産性に優れ、かつ良好な成形性を有するゴルフボールたゴルフボールを提供することを目的とする。
【0007】
【課題を解決するための手段】本発明者等は、上記目的を解決すべく鋭意研究を重ねた結果、カバーの基材樹脂として、脂環式ジイソシアネートと結晶性を有するポリオールとを使用して生成されたポリウレタン系熱可塑性エラストマーを用いることによって、反発性、耐擦過傷性、耐変色性および生産性に優れ、かつ良好な成形性を有するゴルフボールを提供し得ることを見出し、本発明を完成するに至った。
【0008】即ち、本発明は、コアと該コア上に被覆形成されたカバーとから成るゴルフボールにおいて、該カバーが、脂環式ジイソシアネートと結晶性を有するポリオールとを使用して生成されたポリウレタン系熱可塑性エラストマーを基材樹脂として含有することを特徴とするゴルフボールに関する。
【0009】更に本発明を好適に実施するために、上記脂環式ジイソシアネートが、4,4’‐ジシクロヘキシルメタンジイソシアネート、1,3‐ビス(イソシアナトメチル)シクロヘキサン、イソホロンジイソシアネートおよびトランス‐1,4‐シクロヘキサンジイソシアネートから成る群から選択される1種以上であり;上記結晶性を有するポリオールが、DSC測定による結晶融解熱0.1〜0.7mJ/℃・mgを有し;上記結晶性を有するポリオールが、ポリカプロラクトンジオール(PCL)、ポリカーボネートジオール(PC)、ポリエチレンアジペート(PEA)、ポリブチレンアジペート(PBA)およびポリヘキサメチレンアジペート(PHMA)から成る群から選択される1種以上であり;上記カバーが、ショアD硬度30〜55および厚さ0.3〜2.0mmを有する;ことが好ましい。
【0010】以下に本発明を更に詳細に説明する。本発明のゴルフボールは、コア上にカバーを被覆する。コアは、従来からソリッドゴルフボールに用いられているものであってもよく、例えばシス‐1,4‐ポリブタジエンゴム等の基材ゴム100重量部に対して、アクリル酸、メタクリル酸等のような炭素数3〜8のα,β‐不飽和カルボン酸またはその亜鉛、マグネシウム等の一価または二価の金属塩や、トリメチロールプロパントリメタクリレート等の官能性モノマーから成る加硫剤(架橋剤)を単独または合計で10〜60重量部、有機過酸化物等の共架橋開始剤0.5〜5重量部、酸化亜鉛、硫酸バリウム等の充填材10〜30重量部、要すれば有機硫黄化合物、老化防止剤等を含有するゴム組成物を、通常の混練ロール等の適宜の混練機を用いて均一に混練し、金型内で加硫成形することにより球状のコアを得ることができる。この際の条件は特に限定されないが、通常は130〜240℃、圧力2.9〜11.8MPa、15〜60分間で行われる。得られたコアは、その周りに被覆されるカバーとの密着性を向上するため、表面をバフ研磨しておくことが好ましい。但し、上記コアは単なる例示であって、それらに限定されるものではない。
【0011】更に、上記コアは単層構造を有しても、2層以上の多層構造を有していてもよい。多層構造を有するコアの場合、最内層は前述のような、基材ゴムとしてシス‐1,4‐ポリブタジエンを含有するゴム組成物から成ることが好ましいが、その他の層は熱可塑性樹脂等の樹脂を基材とする層であってもよい。
【0012】本発明のゴルフボールに用いられるコアは、初期荷重98Nを負荷した状態から終荷重1275Nを負荷したときまでの変形量2.5〜4.5mm、好ましくは2.6〜4.2mm、より好ましくは2.7〜4.0mmを有することが望ましい。上記変形量が、2.5mm未満または4.5mmを超える範囲では、得られるゴルフボールの変形量を適正な範囲に調整することが困難となり、打球感や飛距離を損なうおそれがある。
【0013】本発明のゴルフボールに用いられるコアは、中心が最も軟らかく、外側に向って高硬度となる硬度分布を有するような構造であることが、ドライバーやミドルアイアンによる打撃時の飛距離の面で有利であり、ショアD硬度による表面硬度と中心硬度との硬度差が10以上、好ましくは15〜45、より好ましくは18〜40、最も好ましくは20〜40であることが望ましい。
【0014】本発明のゴルフボールに用いられるコアは、ショアD硬度による中心硬度20〜50、好ましくは30〜45を有することが望ましい。20より小さいとコアの変形量を適正な範囲に調整することが困難となり反発も低下する。45より大きいと、表面との硬度差が小さくなり打球感や飛距離を損なうおそれがある。
【0015】本発明のゴルフボールに用いられるコアは、ショアD硬度による表面硬度45〜72、好ましくは50〜70、より好ましくは50〜68を有することが望ましい。45より小さいとコアの変形量を適正な範囲に調整することが困難となり反発も低下する。72より大きいと、打球感が硬くなり過ぎる。本明細書中で、コアの表面硬度とは1層構造のものはもとより多層構造であってもコア全体の最外層の表面で測定した硬度を意味し、中心硬度とは通常コアを2等分切断し、その切断面においてコアの中心点で測定した硬度を意味する。
【0016】前述のように、本発明のコアが内側コアと1層以上の外側コアとから構成される多層構造を有する場合、外側コアは上記のような内側コアと同様のゴム組成物から形成されても、または熱可塑性樹脂、特に通常ゴルフボールのカバーに用いられるアイオノマー樹脂を基材樹脂として形成されてもよい。このようなアイオノマー樹脂としては、特にα‐オレフィンと炭素数3〜8個のα,β‐不飽和カルボン酸の共重合体中のカルボン酸の一部を金属イオンで中和したアイオノマー樹脂、α‐オレフィンと炭素数3〜8個のα,β‐不飽和カルボン酸とα,β‐不飽和カルボン酸エステルとの三元共重合体中のカルボン酸の少なくとも一部を金属イオンで中和したものまたはその混合物が用いられる。上記アイオノマー樹脂中のα‐オレフィンとしては、エチレン、プロピレンが好ましく、α,β‐不飽和カルボン酸としては、例えばアクリル酸、メタクリル酸、フマル酸、マレイン酸、クロトン酸等が挙げられ、特にアクリル酸、メタクリル酸等が好ましい。また、α,β‐不飽和カルボン酸エステルとしては、例えばアクリル酸、メタクリル酸、フマル酸、マレイン酸等のメチル、エチル、プロピル、n‐ブチル、イソブチルエステル等が用いられ、特にアクリル酸エステルとメタクリル酸エステルが好ましい。更に、中和する金属イオンとしては、アルカリ金属イオン、例えばNaイオン、Kイオン、Liイオン等;2価金属イオン、例えばZnイオン、Caイオン、Mgイオン等;3価金属イオン、例えばAlイオン、Ndイオン等;およびそれらの混合物が挙げられるが、Naイオン、Znイオン、Liイオン等が反発性、耐久性等からよく用いられる。
【0017】アイオノマー樹脂の具体例としては、それだけに限定されないが、ハイミラン(Hi‐milan)1555、ハイミラン1557、ハイミラン1601、ハイミラン1605、ハイミラン1652、ハイミラン1702、ハイミラン1705,ハイミラン1706,ハイミラン1707,ハイミラン1855,ハイミラン1856、ハイミランAM7316(三井デュポンポリケミカル社製)、サーリン(Surlyn)8945、サーリン9945、サーリン6320、サーリン8320、サーリンAD8511、サーリンAD8512、AD8542(デュポン社製)、アイオテック(Iotek)7010、アイオテック8000(エクソン(Exxon)社製)等を例示することができる。これらのアイオノマーは、上記例示のものをそれぞれ単独または2種以上の混合物として用いてもよい。
【0018】更に、本発明の外側コアの好ましい材料の例としては、上記のようなアイオノマー樹脂のみであってもよいが、アイオノマー樹脂と熱可塑性エラストマーやジエン系ブロック共重合体等の1種以上とを組合せて用いてもよい。上記熱可塑性エラストマーの具体例として、例えば東レ(株)から商品名「ペバックス」で市販されている(例えば、「ペバックス2533」)熱可塑性ポリアミド系エラストマー、東レ・デュポン(株)から商品名「ハイトレル」で市販されている(例えば、「ハイトレル3548」、「ハイトレル4047」)熱可塑性ポリエステル系エラストマー、武田バーディシュ(株)から商品名「エラストラン」で市販されている(例えば、「エラストランET880」)ポリウレタン系熱可塑性エラストマー等が挙げられる。
【0019】上記ジエン系ブロック共重合体は、ブロック共重合体または部分水添ブロック共重合体の共役ジエン化合物に由来する二重結合を有するものである。その基体となるブロック共重合体とは、少なくとも1種のビニル芳香族化合物を主体とする重合体ブロックAと少なくとも1種の共役ジエン化合物を主体とする重合体ブロックBとから成るブロック共重合体である。また、部分水添ブロック共重合体とは、上記ブロック共重合体を水素添加して得られるものである。ブロック共重合体を構成するビニル芳香族化合物としては、例えばスチレン、α‐メチルスチレン、ビニルトルエン、p‐t‐ブチルスチレン、1,1‐ジフェニルスチレン等の中から1種または2種以上を選択することができ、スチレンが好ましい。また、共役ジエン化合物としては、例えばブタジエン、イソプレン、1,3‐ペンタジエン、2,3‐ジメチル‐1,3‐ブタジエン等の中から1種または2種以上を選択することができ、ブタジエン、イソプレンおよびこれらの組合せが好ましい。好ましいジエン系ブロック共重合体の例としては、エポキシ基を含有するポリブタジエンブロックを有するSBS(スチレン‐ブタジエン‐スチレン)構造のブロック共重合体またはエポキシ基を含有するポリイソプレンブロックを有するSIS(スチレン‐イソプレン‐スチレン)構造のブロック共重合体等が挙げられる。上記ジエン系ブロック共重合体の具体例としては、例えばダイセル化学工業(株)から商品名「エポフレンド」で市販されているもの(例えば、「エポフレンドA1010」)、(株)クラレから商品名「セプトン」で市販されているもの(例えば、「セプトンHG‐252」等)等が挙げられる。
【0020】上記の熱可塑性エラストマーやジエン系ブロック共重合体等の配合量は、外側コア用の基材樹脂100重量部に対して、1〜60重量部、好ましくは1〜35重量部である。1重量部より少ないとそれらを配合することによる打球感の向上等の効果が不十分となり、60重量部より多いと外側コアが軟らかくなり過ぎて反発性が低下したり、またアイオノマー樹脂との相溶性が悪くなって耐久性が低下しやすくなる。
【0021】上記コアが多層構造を有し、かつ外側コア層がゴム組成物から形成される場合、ゴム組成物を混合、混練し、内側コア上に同心円状に被覆し、金型内で160〜180℃で10〜20分間加熱プレスすることにより、上記内側コア上に上記外側コア層を被覆したコアを得ることができる。上記コアが多層構造を有し、かつ上記外側コア層が熱可塑性樹脂から形成される場合、樹脂組成物を、上記内側コア上に直接射出成形することによりコアを得ることができる。得られたコアは、その周りに被覆されるカバーとの密着性を向上するため、表面をバフ研磨しておくことが好ましい。
【0022】本発明のゴルフボールのコアは、直径39.6〜41.8mm、好ましくは39.8〜41.4mm、より好ましくは40.4〜41.2mmを有するのが好適である。上記コアの直径が39.6mmよりも小さいとカバーが厚くなり反発性が低下し、41.8mmよりも大きいとカバーの厚さが薄くなり過ぎて、カバーの効果が十分に得られず、また成形が困難となる。
【0023】本発明のゴルフボールのコアは、初期荷重98Nを負荷した状態から終荷重1275Nを負荷したときまでの変形量2.50〜3.20mm、好ましくは2.60〜3.10mm、より好ましくは2.70〜3.00mmを有することが望ましい。上記変形量が2.50mm未満では打球感が硬くて悪いものとなり、3.20mmを越えると軟らかくなり過ぎて打球感が重くて悪いものとなる。
【0024】上記コア上には、次いでカバーを被覆する。本発明のゴルフボールに用いられるカバーは、脂環式ジイソシアネートと結晶性を有するポリオールとを使用して生成されたポリウレタン系熱可塑性エラストマーを基材樹脂として含有することを要件する。カバー用組成物の基材樹脂として、脂環式ジイソシアネートを使用して生成されたポリウレタン系熱可塑性エラストマーを用いるメリットは、耐変色(黄変)性が良好であり、かつ耐擦過傷性に優れる点である。またカバー用組成物の基材樹脂として、結晶性を有するポリオールを使用して生成されたポリウレタン系熱可塑性エラストマーを用いるメリットは、成形性の向上する点である。カバー用組成物の基材樹脂として、脂環式ジイソシアネートと結晶性を有さないポリオールとを使用して生成されたポリウレタン系熱可塑性エラストマーを用いると、凝集力が非常に弱く、成形直後の固化速度が遅いため、成形(インジェクションまたはプレス)直後に生じるタック(粘着性)によりボールどうしが付着したり、型開き(離型)に要する時間が長くなる等、成形上のデメリットがあり、生産性が低下するという問題があった。そこで、本発明者等は、ポリウレタン系熱可塑性エラストマーに使用するポリオールに結晶性を付与することにより、上記のような問題を解決するに至ったものである。
【0025】ポリウレタン系熱可塑性エラストマーは、一般にハードセグメントとしてポリウレタン構造を含有し、ソフトセグメントとしてポリエステルポリオールまたはポリエーテルポリオール等のポリオールを含有する。上記ポリウレタン構造は一般に、ジイソシアネートとアミン系等の硬化剤を含有する。本発明のカバーに用いる上記ポリウレタン系熱可塑性エラストマーとしては、構成成分としての上記ジイソシアネートが脂環式ジイソシアネートであり、上記ポリオールが結晶性を有するポリオールである。
【0026】上記脂環式ジイソシアネートの例としては、4,4’‐ジフェニルメタンジイソシアネート(MDI)の水素添加物である4,4’‐ジシクロヘキシルメタンジイソシアネート(H12MDI)、キシリレンジイソシアネート(XDI)の水素添加物である1,3‐ビス(イソシアナトメチル)シクロヘキサン(HXDI)、イソホロンジイソシアネート(IPDI)およびトランス‐1,4‐シクロヘキサンジイソシアネート(CHDI)から成る群から選択される1種、または2種以上の組合せ等が挙げられ、汎用性および加工性の面からH12MDIが好適である。上記H12MDIを使用したポリウレタン系熱可塑性エラストマーの具体例として、BASFポリウレタンエラストマーズ(株)から市販の「エラストランXNY90A(商品名)」、「エラストランXNY97A(商品名)」、「エラストランXNY585(商品名)」等が挙げられる。
【0027】上記ポリウレタン系熱可塑性エラストマーは、耐変色(黄変)性の観点から、分子内の骨格構造中に二重結合を有さないジイソシアネート、即ち脂肪族ジイソシアネートおよび脂環式ジイソシアネート、を使用したポリウレタン系熱可塑性エラストマーが好ましい。また、耐擦過傷性等を考慮して、機械的強度の大きい脂環式ジイソシアネートおよび更に芳香族ジイソシアネートを使用したポリウレタン系熱可塑性エラストマーが好ましい。本発明のゴルフボールのカバーに用いるポリウレタン系熱可塑性エラストマーとしては、上記耐変色性および耐擦過傷性の両者を考慮して、脂環式ジイソシアネートを使用したポリウレタン系熱可塑性エラストマーを用いる。
【0028】本発明のゴルフボールのカバーに用いるポリウレタン系熱可塑性エラストマーにおいては、上記結晶性を有するポリオールが、DSC測定による結晶融解熱0.1〜0.7mJ/℃・mg、好ましくは0.1〜0.6mJ/℃・mg、より好ましくは0.1〜0.4mJ/℃・mg、最も好ましくは0.14〜0.33mJ/℃・mgを有することが望ましい。上記結晶融解熱が0.1mJ/℃・mgより小さいと結晶性付与の効果が小さくて成形性の向上(固化速度)に寄与せず、0.7mJ/℃・mgより大きいと流動性が悪いものとなる。ここで、上記結晶性を有するポリオールの結晶融解熱とは、DSC(示差走査熱量計)を用いて測定したポリウレタン系熱可塑性エラストマー中のポリオールの結晶の融解熱を意味する。具体的には、試料としての上記熱可塑性エラストマーを15mg秤量し、(1)−70℃から230℃まで10℃/分で昇温して10分間保持し、(2)230℃から−70℃まで10℃/分で降温して10分間保持し、(3)−70℃から230℃まで10℃/分で再昇温した。上記(3)におけるポリウレタン系熱可塑性エラストマー中のポリオールの結晶の融解に起因する吸熱ピークの面積より、上記結晶性を有するポリオールの結晶融解熱を算出した。DSC測定は、TAインスツルメント(Instrument)社製のDSC‐2920を使用し、自動測定モードで行った。
【0029】上記結晶性を有するポリオールの例としては、ポリカプロラクトンジオール(PCL)、ポリカーボネートジオール(PC)およびアジペート系ポリエステルポリオール(ポリエチレンアジペート(PEA)、ポリブチレンアジペート(PBA)およびポリヘキサメチレンアジペート(PHMA))から成る群から選択される1種、または2種以上の組合せ等が挙げられ、ポリカーボネートジオールが好ましい。
【0030】本発明のゴルフボールにおいて、カバー材には、上記のような樹脂成分以外に、必要に応じて、二酸化チタン等の着色剤、分散剤、老化防止剤、紫外線吸収剤、光安定剤、蛍光材料、蛍光増白剤等の添加剤等をゴルフボールカバ−による所望の特性が損なわれない範囲で含有してもよいが、通常、着色剤の配合量は0.1〜5重量部が好ましい。
【0031】上記カバーを被覆する方法についても、特に限定されるものではなく、通常のカバーを被覆する方法で行うことができる。カバー用組成物を予め半球殻状のハーフシェルに成形し、それを2枚用いてコアを包み、160〜200℃で1〜10分間プレス成形するか、または上記カバー用組成物を直接コア上に射出成形してコアを包み込む方法が用いられる。カバー厚さの均一性の点で、上記プレス成形する方法が好ましい。
【0032】上記カバーは、厚さ0.3〜2.0mm、好ましくは0.5〜1.6mm、より好ましくは0.5〜1.2mmを有することが望ましい。0.3mmより小さいと薄くなり過ぎて成形が困難となり、2.0mmより大きいと厚くなり過ぎて反発性が低下して飛距離が低下する。
【0033】本発明のゴルフボールのカバーは、ショアD硬度30〜55、好ましくは35〜55、より好ましくは38〜50を有することが望ましい。上記カバー硬度が、30より低いと反発性および耐擦過傷性が低下し、55より高いと好適なスピン量が得られず、また打球感が硬くて悪いものとなる。尚、本明細書中で、カバー硬度とは、カバー用組成物から作製された熱プレス成形シートを用いて測定した硬度(スラブ硬度)を意味する。
【0034】本発明のゴルフボールでは、カバー成形時に、必要に応じて、ボール表面にディンプルを形成し、また、カバー成形後、ペイント仕上げ、マーキングスタンプ等も必要に応じて施し得る。
【0035】本発明のゴルフボールは、初期荷重98Nを負荷した状態から終荷重1275Nを負荷したときまでの変形量2.50〜3.10mm、好ましくは2.60〜3.00mm、より好ましくは2.65〜2.90mmを有することが望ましい。2.50mm未満では打球感が硬くて悪いものとなり、またドライバーやアイアンクラブでの打撃時のスピン量が大きくなる、3.10mmを越えると軟らかくなり過ぎて反発性が低く打球感が重くて悪いものとなる。
【0036】本発明のゴルフボールは、ゴルフボール規則に基づいて、直径42.67mm以上(好ましくは42.67〜42.80mm)、重量45.93g以下に形成される。
【0037】ゴルフボールの直径は規格にて42.67mm以上と制限されているが、直径が大きくなると飛行中の空気抵抗が大きくなって飛距離が低下するため、通常のゴルフボールの直径は42.67〜42.80mmに設定されており、本発明はこの直径のゴルフボールに適用し得る。また、ゴルフボールの直径を大きくして打ち易さの向上を狙った大径のゴルフボール等も存在し、更に顧客の要望や目的に応じて上記規格を外れるゴルフボールが必要とされる場合もあり、それらを含めると、ゴルフボールの直径は42〜44mm、更には40〜45mmというような範囲も想定され得るものであり、本発明はこれらの直径範囲のゴルフボールにも適用し得るものである。
【0038】本発明では、脂環式ジイソシアネートと結晶性を有するポリオールとを使用して生成されたポリウレタン系熱可塑性エラストマーを基材樹脂として含有するカバーを用いることにより、成形性に優れ、よく飛んで止まり、かつ耐擦過傷性および耐変色性に優れたゴルフボール提供する。
【0039】
【実施例】次に、本発明を実施例により更に詳細に説明する。但し、本発明はこれら実施例に限定されるものではない。
【0040】コアの作製(コアI)以下の表1に示した配合のコア用ゴム組成物を混合、混練し、金型内で170℃で15分間加熱プレスすることにより直径40.0mmを有する球状のコアを得た。
【0041】(コアII)
(i)内側コアの作製以下の表1に示した配合のコア用ゴム組成物を混合、混練し、金型内で170℃で15分間加熱プレスすることにより直径37.0mmを有する球状のコアを得た。
【0042】(ii)2層コアの作製(コア配合I)以下の表1に示した配合の外側コア用組成物を、上記(i)で作製したセンター上に直接射出成形することにより、直径40.0mmを有する球状の2層コアを作製した。
【0043】(コアIII)
(i)内側コアの作製以下の表1に示した配合のコア用ゴム組成物を混合、混練し、金型内で170℃で15分間加熱プレスすることにより直径32.5mmを有する球状のコアを得た。
【0044】(ii)2層コアの作製以下の表1に示した配合の外側コア用ゴム組成物を混合、混練し、上記(i)で作製した内側コア上に同心円状に被覆し、金型内で170℃で15分間加熱プレスすることにより直径40.0mmを有する球状の2層コアを作製した。得られた1層コアおよび2層コアの圧縮変形量、中心硬度(a)および表面硬度(b)を測定し、その結果から硬度差(b−a)を計算により求めた。それらの結果を同表に示した。
【0045】
【表1】

【0046】(注1) JSR(株)から商品名「BR‐18」で市販のハイシスポリブタジエンゴム(シス‐1,4‐ポリブタジエン含量=96%)
(注2) 住友精化(株)から市販のジフェニルジスルフィド(注3) 日本油脂(株)から商品名「パークミルD」で市販のジクミルパーオキサイド(注4) 三井デュポンポリケミカル(株)から商品名「ハイミラン1605」で市販のナトリウムイオン中和エチレン‐メタクリル酸共重合体系アイオノマー樹脂(注5) 三井デュポンポリケミカル(株)から商品名「ハイミラン1706」で市販の亜鉛イオン中和エチレン‐メタクリル酸共重合体系アイオノマー樹脂【0047】カバー用組成物の調製以下の表2に示すカバー用配合材料を二軸混練型押出機によりミキシングし、ペレット状のカバー用組成物を得た。押出条件は、スクリュー径 45mmスクリュー回転数 200rpmスクリューL/D 35であり、配合物は押出機のダイの位置で200〜260℃に加熱された。上記カバー用組成物から作製された厚さ2mmの熱プレスシートを、23℃で2週間保存後、そのシートを3枚以上重ねて、ASTM‐2240‐68に規定のスプリング式硬度計ショアD型を用いて測定した硬度を、カバー硬度として表2〜4に示した。
【0048】
【表2】

【0049】*: 本測定条件では吸熱ピークが小さ過ぎて測定不可(注6) BASFポリウレタンエラストマーズ(株)から商品名「エラストランXNY90A」で市販の4,4’‐ジシクロヘキシルメタンジイソシアネート(H12MDI)‐ポリオキシテトラメチレングリコール(PTMG)系ポリウレタン系熱可塑性エラストマー、JIS‐A硬度=90(注7) BASFポリウレタンエラストマーズ(株)から商品名「エラストランXNY97A」で市販のH12MDI‐PTMG系ポリウレタン系熱可塑性エラストマー、JIS‐A硬度=97(注8) BASFポリウレタンエラストマーズ(株)から商品名「エラストランET890(クリア)」で市販の4,4’‐ジフェニルメタンジイソシアネート(MDI)系ポリウレタン系熱可塑性エラストマー、JIS‐A硬度=90(注9) BASFポリウレタンエラストマーズ(株)製のH12MDI‐ポリカプロラクトンジオール(PCL)系ポリウレタン系熱可塑性エラストマー、JIS‐A硬度=97(注10) BASFポリウレタンエラストマーズ(株)製のH12MDI‐ポリカーボネートジオール(PC)系ポリウレタン系熱可塑性エラストマー、JIS‐A硬度=94(注11) 大日本インキ化学工業(株)から商品名「パンデックスT7890」で市販のヘキサメチレンジイソシアネート(HDI)系ポリウレタン系熱可塑性エラストマー【0050】実施例1〜4および比較例1〜4得られたカバー用組成物を上記のようにして得られたコア上に直接射出成形して、厚さ1.4mmを有するカバー層を形成した。成形性としての離型性およびタック性を評価し、その結果を以下の表3(実施例)および表4(比較例)に示した。次いで、表面にクリアーペイントを塗装して、直径42.8mmおよび重量45.4gを有するゴルフボールを得た。得られたゴルフボールの圧縮変形量、反発係数、飛距離、耐擦過傷性および耐変色性(黄変性)を測定または評価し、その結果を同表に示した。試験方法は以下の通り行った。
【0051】(試験方法)
(1)圧縮変形量コアまたはゴルフボールに初期荷重98Nを負荷した状態から終荷重1275Nを負荷したときまでの変形量を測定した。
【0052】(2)カバー硬度(スラブ硬度)
カバー用組成物から作製された厚さ2mmの熱プレス成形シートを、23℃で2週間保存後、そのシートを3枚以上重ねて、ASTM‐2240‐68に規定のスプリング式硬度計ショアD型を用いて測定した。
【0053】(3)成形性(離型性)
ゴルフボールを自動ハンドリングマシンを用いて成形後30秒間冷却した後、自動取り上げ装置を用いてゴルフボールを取り上げるまでを1サイクルとし、取り上げを失敗した場合には上記装置の寸動を行って取り上げる。この取り上げができるまでに必要な寸動の回数により離型性を評価した。寸動なしに取り上げが可能であれば、離型性が良好であることを表す。成形を10サイクル行って寸動の回数の合計により評価し、評価基準は以下の通りとした。
判定基準〇 … 寸動回数0回△ … 寸動回数1〜4回× … 寸動回数5回以上【0054】(4)成形性(タック性)ゴルフボールを成形後30秒間冷却した後、金型から取り出したゴルフボールを接触させた状態で約1分間保持し、ゴルフボールのタック性(付着状態)を評価した。判定基準は以下の通りとした。
判定基準有 … ゴルフボールどうしが付着する無 … ゴルフボールどうしが付着しない【0055】(5)反発係数各ゴルフボールに200gのアルミニウム製円筒物を45m/秒の速度で衝突させ、衝突後の上記円筒物およびゴルフボールの速度を測定し、それぞれの衝突前後の速度および重量から各ゴルフボールの反発係数を算出した。測定は各ゴルフボールについて5回ずつ行って、その平均値を各ゴルフボールの反発係数とした。実施例1の反発係数を100とした指数を各ゴルフボールの結果として表示した。
【0056】(6)耐擦過傷性ツルーテンパー社製スイングロボットに市販のピッチングウェッジ(PW)を取り付け、ヘッドスピード36m/秒に設定して各ゴルフボールの2箇所を各1回打撃し、2箇所打撃部を目視で観察した。判定基準は以下の通りとした。
判定基準○ … ゴルフボール表面に傷がわずかに残るがほとんど気にならない程度。
△ … ゴルフボール表面に傷がはっきり残り、若干の毛羽立ちが見られる。
× … ゴルフボール表面がかなり削れ、毛羽立ちが目立つ。
【0057】(7)耐変色性(黄変性)
スガ試験機(株)のサンシャインウェザーメーターを用いて、各ゴルフボールに120時間照射した。その前後のLab色差を色彩色差計(ミノルタ(株)から市販のCR−221)を使用して測定し(ΔL、ΔaおよびΔb)、ΔEで表した。ΔEは以下の式を用いて求められる。この色差値が大きい程、変色(黄変)し易いことを表す。
ΔE=[(ΔL)+(Δa)+(Δb)1/2【0058】(試験結果)
【表3】

【0059】
【表4】

【0060】以上の結果より、実施例1〜4の本発明のゴルフボールは、比較例1〜4のゴルフボールに比べて、成形性、反発性、耐擦過傷性および耐変色性に優れることがわかった。
【0061】これに対して、比較例1および2のゴルフボールでは、カバー用基材樹脂として用いたポリウレタン系熱可塑性エラストマーのポリオール成分の結晶性が低いため、反発係数が小さくなると共に、離型性やタック性等の成形性が悪いものとなっている。
【0062】比較例3のゴルフボールでは、カバー用基材樹脂として芳香族ジイソシアネートを使用したポリウレタン系熱可塑性エラストマーのみを用いているため、非常に黄変し易いものとなっており、反発係数が小さくなると共に、耐擦過傷性も悪いものとなっている。
【0063】比較例4のゴルフボールでは、カバー用基材樹脂として脂肪族ジイソシアネートを使用したポリウレタン系熱可塑性エラストマーのみを用いているため、黄変はしにくく成形性は良好であるものの、耐擦過傷性が悪いものとなっている。
【0064】
【発明の効果】本発明によれば、カバーの基材樹脂として、脂環式ジイソシアネートと結晶性を有するポリオールとを使用して生成されたポリウレタン系熱可塑性エラストマーを用いることによって、反発性、耐擦過傷性、耐変色性および生産性に優れ、かつ良好な成形性を有するゴルフボールを提供し得たものである。
【出願人】 【識別番号】000183233
【氏名又は名称】住友ゴム工業株式会社
【住所又は居所】兵庫県神戸市中央区脇浜町3丁目6番9号
【出願日】 平成13年11月27日(2001.11.27)
【代理人】 【識別番号】100062144
【弁理士】
【氏名又は名称】青山 葆 (外1名)
【公開番号】 特開2003−159351(P2003−159351A)
【公開日】 平成15年6月3日(2003.6.3)
【出願番号】 特願2001−360628(P2001−360628)