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【発明の名称】 防火システムの評価方法および評価システム
【発明者】 【氏名】佐藤 博臣
【住所又は居所】東京都港区元赤坂一丁目2番7号 鹿島建設株式会社内

【氏名】栗岡 均
【住所又は居所】東京都港区元赤坂一丁目2番7号 鹿島建設株式会社内

【氏名】辻 利秀
【住所又は居所】東京都品川区上大崎二丁目10番43号 ホーチキ株式会社内

【氏名】林 龍也
【住所又は居所】東京都品川区上大崎二丁目10番43号 ホーチキ株式会社内

【要約】 【課題】水幕式の防火システムに適した効率のよい評価方法および評価システムを提供することを課題とする。

【解決手段】本発明にかかる防火システムの評価方法は、対象領域1に配置した放水ヘッド11を介して放水を行うことにより当該対象領域1の内部に防火用の水幕を形成する防火システム10に対する評価方法であって、少なくとも上記水幕の設計到達範囲W1の外部に、当該水幕から飛散した水を溜め得る採水升30を配置する採水手段配置手順と、放水ヘッド11を介して放水を行うことにより水幕を形成する水幕形成手順と、採水升30に溜められた水の量を測定する水量測定手順とを順次行う。
【特許請求の範囲】
【請求項1】 対象領域に配置した放水ヘッドを介して放水を行うことにより当該対象領域の内部に防火用の水幕を形成する防火システムに対する評価方法であって、少なくとも上記水幕の設計到達範囲の外部に、当該水幕から飛散した水を溜め得る採水手段を配置する採水手段配置手順と、上記放水ヘッドを介して放水を行うことにより上記水幕を形成する水幕形成手順と、上記採水手段に溜められた上記水の量を測定する水量測定手順と、を順次行うことを特徴とする防火システムの評価方法。
【請求項2】 上記採水手段配置手順において、複数の上記採水手段を、上記放水ヘッドの下方から上記設計到達範囲の外部に至る位置に、連続的または断続的に配置すること、を特徴とする請求項1に記載の防火システムの評価方法。
【請求項3】 上記採水手段配置手順において、複数の上記採水手段を、複数の上記放水ヘッドの併設方向に対して直交する隔絶方向に沿う位置であって、上記放水ヘッドの下方から上記設計到達範囲の外部に至る位置と、相互に隣接する放水ヘッドの間から上記設計到達範囲の外部に至る位置とに、連続的または断続的に配置し、上記水幕形成手順において、上記相互に隣接する放水ヘッドによる放水を同時に行うこと、を特徴とする請求項1に記載の防火システムの評価方法。
【請求項4】 対象領域に配置した放水ヘッドを介して放水を行うことにより当該対象領域の内部に防火用の水幕を形成する防火システムに対する評価方法であって、上記水幕から飛散した水を溜め得る採水手段を上記対象領域内に配置する採水手段配置手順と、上記放水ヘッドを介して放水を行うことにより上記水幕を形成する水幕形成手順と、上記採水手段に溜められた上記水の量を測定する水量測定手順とを備え、上記採水手段配置手順において、複数の上記採水手段を、複数の上記放水ヘッドの併設方向に沿う位置であって、相互に隣接する放水ヘッドにて形成される水幕が相互に重複する位置に、連続的または断続的に配置し、上記水幕形成手順において、上記相互に隣接する放水ヘッドによる放水を同時に行うこと、を特徴とする防火システムの評価方法。
【請求項5】 上記採水手段配置手順、上記水幕形成手順、および、上記水量測定手順を順次複数回繰り返す場合における、複数の採水手段配置手順のそれぞれにおいて、上記採水手段を、他の採水手段配置手順における配置位置に対して相互に高さのみが異なる位置に配置すること、を特徴とする請求項1〜4のいずれか一つに記載の防火システムの評価方法。
【請求項6】 対象領域に配置した放水ヘッドを介して放水を行うことにより当該対象領域の内部に防火用の水幕を形成する防火システムに対する評価システムであって、上記水幕の存在する領域と他の領域とを、相互に光学的に識別可能とするための識別手段、を備えることを特徴とする防火システムの評価システム。
【請求項7】 上記識別手段は、略垂直かつ複数の放水ヘッドの併設方向に略平行な網状部、を備えることを特徴とする請求項6に記載の防火システムの評価システム。
【請求項8】 上記識別手段を、上記放水ヘッドの近傍位置に配置すること、を特徴とする請求項6または7に記載の防火システムの評価システム。
【請求項9】 上記水幕またはその周囲領域に対して照明光を照射する照明手段、を備えることを特徴とする請求項6〜8のいずれか一つに記載の防火システムの評価システム。
【発明の詳細な説明】【0001】
【発明の属する技術分野】本発明は、対象領域に配置した放水ヘッドを介して放水を行うことにより当該対象領域の内部に防火用の水幕を形成する防火システムに関連し、特に、この防火システムの性能評価を行うための評価方法および評価システムに関する。
【0002】
【従来の技術】従来から、防火の対象領域内に水幕(ウォータースクリーン)を形成する、水幕式の防火システムが提案されている(本件出願人による特願2001−51520号参照)。この防火システムは、対象領域の天井に設けた放水ヘッドと、この放水ヘッドに水を加圧供給する水供給機構と、対象領域内における火災発生を感知する火災感知機構とを備えて構成されていた。そして、対象領域内で火災が発生したことが火災感知機構によって感知されると、水供給機構によって放水ヘッドに水が供給され、この放水ヘッドから対象領域に対して水が粒子状に放水されて円錐状に拡散し、水幕が形成される。
【0003】このような水幕式の防火システムによれば、水幕によって対象領域を隔絶して防火区画を形成し、この防火区画に上記火災による炎や煙が侵入することを防止して延焼等を防ぐことができる。また、この防火システムによれば、水幕の内外を人が出入りすることができるので避難活動や救助活動をスムーズに行うことができると共に、防火区画の境界上に障害物が存在していても、この障害物の形状に応じて水幕が形成されるので隔絶性を維持することができる。
【0004】また、従来から、対象領域において発生した火災を消火するため、対象領域内のスプリンクラーヘッドから放水して消火を行うスプリンクラーシステムが広く用いられている。そして、このようなスプリンクラーシステムにおける消火性能を評価する方法の一つとして、採水升を用いた放水量の測定を行うことが提案されていた。この評価方法は、スプリンクラーヘッドの放水範囲内の床面に採水升を配置し、スプリンクラーヘッドから放水されて落下した水を採水升に溜め、その水量に基づいて放水状態を定量的に把握する方法である。
【0005】
【発明が解決しようとする課題】ここで、上述した水幕式の防火システムに関しては、スプリンクラーシステムの場合と異なり、その水幕の形成状態を定量的に把握する方法が未だ確立されていないという問題があった。例えば、水幕式の防火システムに対して、上述したスプリンクラーシステム用の評価方法を単に適用することも考えられるが、この場合には下記のような問題があった。
【0006】すなわち、水幕形成用に放水された水は、スプリンクラーヘッドから放水された水に比べて粒子が小さく拡散し易いため、特に水幕の外縁近傍においては床面に落下せずに、床面に対して平行に流れてしまう。このため、単に水幕が形成される範囲内に採水升を配置した場合には、放水された水の一部が採水升に落下しないために水量を測定することができず、水幕の形成状態を定量的に把握する事が困難であった。
【0007】また、水幕式の防火システムに関しては、火炎や煙を遮断することを目的としているので、対象領域が広い場合には複数の放水ヘッドを併設し、各放水ヘッドからの放水で形成される水幕を相互に連続させて、極力隙間の無い水幕分布を形成する必要がある。このため、単体の水幕の形成状態を把握するだけでなく、複数の水幕を連続させた状態で評価を行うことが望ましい。しかしながら、従来のスプリンクラーシステム用の評価方法においては、連続的な散水状態が考慮されていなかったので、水幕を連続させた状態で評価を行うことができなかった。
【0008】さらに、スプリンクラーシステムの場合には、火源等に水を散水して消火することを目的としているため、床面付近に対する水の散水状態を把握することが重要であるが、水幕式の防火システムに関しては、火炎や煙を遮断することを目的としているので、床面付近のみならず、天井付近や中空位置での水幕の分布状態についても把握する必要がある。しかしながら、従来のように単に床面に採水升を設置する評価方法では、床面付近の水幕の分布状態しか把握することができず、天井付近や中空位置での水量を把握できないという問題があった。
【0009】さらには、従来の採水升を用いた評価方法では、評価を行う毎に、採水升に溜まった水の量を測定したり、条件を変えてテストを行う毎に、採水升の準備を行う必要があり、評価効率が悪かった。
【0010】本発明は上記問題に鑑みてなされたもので、水幕式の防火システムに適した効率のよい評価方法および評価システムを提供することを目的としている。
【0011】
【課題を解決するための手段】このような目的を達成するため、請求項1に記載の防火システムの評価方法は、対象領域に配置した放水ヘッドを介して放水を行うことにより当該対象領域の内部に防火用の水幕を形成する防火システムに対する評価方法であって、少なくとも上記水幕の設計到達範囲の外部に、当該水幕から飛散した水を溜め得る採水手段を配置する採水手段配置手順と、上記放水ヘッドを介して放水を行うことにより上記水幕を形成する水幕形成手順と、上記採水手段に溜められた上記水の量を測定する水量測定手順とを順次行うことを特徴とする。
【0012】この方法によれば、水幕の水が床面に平行に流れて設計到達範囲の外部に流出してしまった場合においても、この水が採水升に溜まるので、水量の測定を行うことができる。このため、水幕式防火システムの水幕分布の評価を正確かつ容易に行うことができる。
【0013】また、請求項2に記載の防火システムの評価方法は、請求項1に記載の防火システムの評価方法において、上記採水手段配置手順において、複数の上記採水手段を、上記放水ヘッドの下方から上記設計到達範囲の外部に至る位置に、連続的または断続的に配置することを特徴とする。
【0014】この方法によれば、設計到達範囲の内部から外部の各位置における水幕の分布を連続的または断続的に把握することができ、広範囲で水幕の評価を行うことができる。
【0015】また、請求項3に記載の防火システムの評価方法は、請求項1に記載の防火システムの評価方法において、上記採水手段配置手順において、複数の上記採水手段を、複数の上記放水ヘッドの併設方向に対して直交する隔絶方向に沿う位置であって、上記放水ヘッドの下方から上記設計到達範囲の外部に至る位置と、相互に隣接する放水ヘッドの間から上記設計到達範囲の外部に至る位置とに、連続的または断続的に配置し、上記水幕形成手順において、上記相互に隣接する放水ヘッドによる放水を同時に行うことを特徴とする。
【0016】この方法によれば、隣接する放水ヘッドから同時に放水を行った場合の隔絶方向に関する水幕の分布評価を行うことができ、重複部分における水幕相互の隔絶方向に関する影響状態等を把握することができる。
【0017】また、請求項4に記載の防火システムの評価方法は、対象領域に配置した放水ヘッドを介して放水を行うことにより当該対象領域の内部に防火用の水幕を形成する防火システムに対する評価方法であって、上記水幕から飛散した水を溜め得る採水手段を上記対象領域内に配置する採水手段配置手順と、上記放水ヘッドを介して放水を行うことにより上記水幕を形成する水幕形成手順と、上記採水手段に溜められた上記水の量を測定する水量測定手順とを備え、上記採水手段配置手順において、複数の上記採水手段を、複数の上記放水ヘッドの併設方向に沿う位置であって、相互に隣接する放水ヘッドにて形成される水幕が相互に重複する位置に、連続的または断続的に配置し、上記水幕形成手順において、上記相互に隣接する放水ヘッドによる放水を同時に行うことを特徴とする。
【0018】この方法によれば、隣接する放水ヘッドから同時に放水を行った場合の併設方向に関する水幕の分布評価を行うことができ、炎や煙が水幕を通って他の防火区画に至る危険度を把握することができる。
【0019】また、請求項5に記載の防火システムの評価方法は、請求項1〜4のいずれか一つに記載の防火システムの評価方法において、上記採水手段配置手順、上記水幕形成手順、および、上記水量測定手順を順次複数回繰り返す場合における、複数の採水手段配置手順のそれぞれにおいて、上記採水手段を、他の採水手段配置手順における配置位置に対して相互に高さのみが異なる位置に配置することを特徴とする。
【0020】この方法によれば、同一平面位置における異なる高さでの水幕の分布状態を把握でき、水幕の立体的な評価を行うことができる。
【0021】また、本発明は防火システムに対する評価システムに関するものであり、請求項6に記載の防火システムの評価システムは、対象領域に配置した放水ヘッドを介して放水を行うことにより当該対象領域の内部に防火用の水幕を形成する防火システムに対する評価システムであって、上記水幕の存在する領域と他の領域とを、相互に光学的に識別可能とするための識別手段を備えることを特徴とする。
【0022】このシステムによれば、水幕の存在する領域と他の領域とが相互に光学的に識別可能になるので、光学的な識別を行うことによって、水幕の形成状態を評価することができる。
【0023】また、請求項7に記載の防火システムの評価システムは、請求項6に記載の防火システムの評価システムにおいて、上記識別手段は、略垂直かつ複数の放水ヘッドの併設方向に略平行な網状部を備えることを特徴とする。
【0024】このシステムによれば、網状部の網目数を計数することで、水幕やその隙間の大きさ等を容易かつ正確に評価することができる。
【0025】また、請求項8に記載の防火システムの評価システムは、請求項6または7に記載の防火システムの評価システムにおいて、上記識別手段を、上記放水ヘッドの近傍位置に配置することを特徴とする。
【0026】このシステムによれば、識別手段と水幕との相互距離が小さくなり、識別手段と水幕との光学的な境界が一層明確になると共に、識別手段と水幕との遠近関係を考慮する必要がなくなるために識別手段に基づいた水幕の形状把握等を一層正確に行うことができる。
【0027】また、請求項9に記載の防火システムの評価システムは、請求項6〜8のいずれか一つに記載の防火システムの評価システムにおいて、上記水幕の存在する領域と他の領域との光学的差異を強調するため、上記水幕またはその周囲領域に対して照明光を照射する照明手段を備えることを特徴とする。
【0028】このシステムによれば、上記水幕またはその周囲領域に対して照明光が照射されるので、水幕や識別指標を一層明確に把握することができる。
【0029】
【発明の実施の形態】以下に、本発明にかかる評価システムおよび評価方法の実施の形態を図面に基づいて詳細に説明する。なお、この実施の形態によりこの発明が限定されるものではない。
【0030】〔第1の実施の形態〕
〔防火システムの構成〕まず、本発明の防火システムの評価方法にかかる第1の実施の形態について説明する。最初に、本実施の形態にかかる防火システムの構成について説明する。図1は本実施の形態にかかる防火システムを設置した建物の平面図、図2は図1の側面図、図3は防火システムの全体概要を示す斜視図である。これら図1〜3に示すように、建物内部において、防火および排煙の対象になる所定の対象領域1には、防火システム10および制御システム20が設置されている。
【0031】この防火システム10は、放水を行うことにより対象領域1の内部に水幕を形成する防火手段であり、対象領域1の天井に設けた複数の放水ヘッド11と、これら複数の放水ヘッド11に水を加圧供給する水供給機構12とを備えて構成されている。このうち、複数の放水ヘッド11は列状に配置されて、全体として放水列13が形成されている。また、水供給機構12は、ポンプ14、給水本管15、放水弁16、分岐管34を備えて構成されている。このような構成において、制御システム20の機能によって放水弁16が開放されると、図示しない水源の水がポンプ14によって加圧された水が給水本管15および分岐管17を経て各放水ヘッド11に供給され、この水が放水ヘッド11から粒子状に放水されて円錐状に拡散し、水幕が形成される。そして、この水幕を境界として、対象領域1が第1の防火区画2と第2の防火区画3とに区画される。
【0032】また、制御システム20は、対象領域1の内部において所定状態が検知された際、防火システム10を起動する制御手段である。図3に示すように制御システム20は、防火区画における火災発生を感知する火災感知器21と、この火災感知器21からの出力に基づいて、防火システム10の制御を行う制御盤22とを備えて構成されている。そして、火災感知器21によって火災発生が感知されると、上記水供給機構12の放水弁16に対して弁開放を指示する指示信号を出力する。このことにより、上述のように放水ヘッド11からの放水が行われる。
【0033】ここで、本実施の形態においては、防火システム10によって形成される水幕の到達範囲に関し、「設計到達範囲」および「実際到達範囲」を概念的に設定する。このうち、設計到達範囲とは、放水ヘッド11を中心として水幕が防火上有効な形態で(水が床面と平行に流れる以前の形態で)到達する平面的な範囲を示すものである。また、実際到達範囲とは、放水ヘッド11を中心として水幕が実際に到達する平面的な範囲を示すものであり、例えば、粒子が小さく拡散し易いため、床面に落下せずに水平に流れてしまった水の到達範囲を含むものであり、設計到達範囲より広い範囲である。以下、必要に応じて、設計到達範囲には符号W1、実際到達範囲には符号W2を付して説明する。
【0034】〔防火システム10の評価方法〕本実施の形態における防火システム10の評価方法について説明する。この評価方法は、(1)採水升30を配置する採水升配置手順(採水手段配置手順)と、(2)放水ヘッド11を介して放水を行うことにより水幕を形成する水幕形成手順と、(3)採水升30に溜められた上記水の量を測定する水量測定手順とを順次行うものである。
【0035】(4)また、さらに、水量測定手順によって測定された水の量に基づいて、対象領域1の各位置における水幕の分布状態を定量的に特定する水幕分布特定手順を行う。このように水幕の分布状態を定量的に特定することによって、水幕の形成範囲や散水密度を把握することができ、防火システム10の評価を行うことができる。
【0036】ここで、採水升30とは、上面を開放した立方体であり、対象領域1に配置されて、水幕の水および当該水幕から飛散した水を溜める採水手段である。ただし、採水手段としては水幕の水および当該水幕から飛散した水を溜め得る任意構造のものを採用することができる。
【0037】特に、本実施の形態においては、採水升30を、少なくとも水幕の設計到達範囲の外部に配置する。すなわち、図1に示すように、少なくとも設計到達範囲W1と実際到達範囲W2との間の領域に、少なくとも1つの採水升30を配置する。このことにより、設計到達範囲W1の内部にのみ採水升30を配置した場合には、水幕の水が床面に平行に流れて設計到達範囲の外部に流出してしまった場合においても、この水が実際到達範囲W2において採水升30に溜まり、測定を行うことができる。
【0038】このような設計到達範囲W1の外部に配置された採水升30に溜まった水は、水幕分布特定手順において、設計到達範囲W1の内部に散水された水であると判断される。すなわち、水幕の水が到達するのは、あくまで設計到達範囲W1の内部であり、実際到達範囲W2に配置された採水升30に溜まった水は、設計到達範囲W1の水が床面に平行に流れてきたものであり、あくまで設計到達範囲W1の内部に散水されたものであると考える。
【0039】そして、例えば、設計到達範囲W1の内部における最も外側の採水升30aに10mmの水が溜まり、設計到達範囲W1の外部に配置された採水升30bに5mmの水が溜まった場合には、採水升30aに15mmの水が溜まったものと考える。あるいは、設計到達範囲W1の外部に配置された採水升30bに溜まった水の量を、設計到達範囲W1の内部の複数の採水升30それぞれに溜まった水の量に割当てる。この割り当ては、設計到達範囲W1の外部の採水升30bからの距離に応じて割り当てことができ、この外部の採水升30bに近い採水升30に対しては多くの量の水を割り当てる。このような手順を実行することにより、設計到達範囲W1の水が床面に平行に流れた場合であっても、この水を加味した水幕の分布評価を行うことができる。
【0040】特に、本実施の形態においては、採水升配置手順において、複数の採水升30を、放水ヘッド11の下方から設計到達範囲W1の外部に至る位置に、連続的に配置している。すなわち、採水升30を、放水ヘッド11の下方から設計到達範囲W1の外部(ここでは、実際到達範囲W2の外縁近傍)に至る位置まで、相互に隙間なく隣接させることによって採水升群30Aを構成する。そして、水幕形成手順および水量測定手順を行うことによって、放水ヘッド11の下方から設計到達範囲W1の外部に至る各位置における水の量を測定する。このことにより、設計到達範囲W1の内部から外部の各位置における水幕の分布を連続的に把握することができる。
【0041】なお、本実施の形態においては、複数の採水升30を連続的に配置した例を示すが、複数の採水升30を所定間隔で断続的に配置してもよい。この場合においても、設計到達範囲W1の内部から外部の各位置における水幕の分布を断続的に把握することができる。
【0042】また、複数の採水升30の配置方向は、複数の放水ヘッド11の併設方向、この併設方向に直交する方向(隔絶方向)、あるいは、その他の任意の方向であってよい。特に、本実施の形態においては、複数の採水升30を隔絶方向に沿うように配置しているので、この隔絶方向に関する水幕の分布状態を評価することができる。このため、特定位置(採水升30の配置位置)における水幕の層の厚みを評価でき、炎や煙が当該特定位置を通って他の防火区画に至る危険度を把握することができる。
【0043】〔第2の実施の形態〕次に、本発明の防火システムの評価方法にかかる第2の実施の形態について説明する。ただし、特に説明なき構成および処理については第1の実施の形態と同様であり、同様の構成要素を実施の形態1と同じ名称および符号を付して説明する。この実施の形態は概略的に、複数の放水ヘッド11から同時に放水を行った状態で評価を行う方法に関するものである。図4は本実施の形態にかかる防火システム10を設置した建物の平面図、図5は図4の側面図である。
【0044】本実施の形態の採水升配置手順においては、2つの採水升群30B、30Cを配置する。第1の採水升群30Bは、第1の実施の形態と同様に、複数の採水升30を、放水ヘッド11の下方から設計到達範囲W1の外部に至る位置まで、相互に隙間なく隣接させることによって構成されている。特に、この第1の採水升群30Bは、複数の放水ヘッド11の併設方向に対して直交する隔絶方向に沿うように配置されている。
【0045】また、第2の採水升群30Cは、複数の採水升30を、相互に隣接する放水ヘッド11の間から設計到達範囲W1の外部に至る位置まで、相互に隙間なく隣接させることによって構成されている。特に、この第2の採水升群30Cは、第1の採水升群30Bと略平行に、複数の放水ヘッド11の併設方向に対して直交する隔絶方向に沿うように配置されている。そして、水幕形成手順においては、少なくとも、相互に隣接する放水ヘッド11による放水を同時に行う。
【0046】本実施の形態においては、このような手順を実施することにより、隣接する放水ヘッド11から同時に放水を行った場合の隔絶方向に関する水幕の分布評価を行うことができる。すなわち、隣接する放水ヘッド11から同時に放水を行った場合には、各放水ヘッド11によって形成される水幕が相互に影響を及ぼすため、1つの放水ヘッド11のみから放水を行った場合とは異なる分布で水幕が形成される可能性がある。このため、実施の形態1と同様に配置した第1の採水升群30Bに加えて、水幕が相互に重複する位置に第2の採水升群30Cを配置して測定を行うことにより、重複部分における水幕相互の隔絶方向に関する影響状態等を把握することができる。
【0047】図6には、このように測定した水の量を示す。この図6において、横軸は採水升30の位置(放水ヘッド11の下方位置を0とする)、縦軸は各採水升30に溜まった水の量であり、方形プロットは、天井高さが第1の高さである場合における、第1の採水升群30Bによる採水量、円形プロットは、天井高さが第1の高さである場合における、第2の採水升群30Cによる採水量である。ここでは、放水ヘッド11に対して最も近い位置(横軸=0)から、最も遠い位置(横軸=10)に至るにつれ、採水量が徐々に減少していることが分かる。なお、X形プロットは、天井高さが第2の高さである場合における、第1の採水升群30Bによる採水量、三角形プロットは、天井高さが第1の高さである場合における、第2の採水升群30Cによる採水量である。このように、天井高さを変えて水幕を形成することにより、天井高さが水幕分布に与える影響を把握することもできる。
【0048】〔第3の実施の形態〕次に、本発明の防火システムの評価方法にかかる第3の実施の形態について説明する。ただし、特に説明なき構成および処理については第1の実施の形態と同様であり、同様の構成要素を実施の形態1と同じ名称および符号を付して説明する。この実施の形態は概略的に、複数の放水ヘッド11から同時に放水を行った状態で評価を行う方法に関し、特に複数の採水升30を放水ヘッド11の併設方向に沿って配置したものである。図7は本実施の形態にかかる防火システム10を設置した建物の平面図、図8は図7の側面図である。
【0049】本実施の形態の採水升配置手順においては、1つの採水升群30Dを配置する。この採水升群30Dは、複数の放水ヘッド11の併設方向に沿う位置であって、相互に隣接する放水ヘッド11にて形成される水幕が相互に重複する位置に、連続的に配置されている。そして、水幕形成手順においては、少なくとも、相互に隣接する放水ヘッド11による放水を同時に行う。
【0050】本実施の形態においては、このような手順を実施することにより、隣接する放水ヘッド11から同時に放水を行った場合の水幕の分布評価を行うことができる。特に、第1および第2の実施の形態とは異なり、採水升30を併設方向に沿って配置しているので、併設方向に関する水幕の分布評価を行うことができる。このため、放水ヘッド11の下方位置や、放水ヘッド11と他の放水ヘッド11との間の位置等、放水ヘッド11の併設方向の各位置における水幕の状態を把握でき、炎や煙が水幕通って他の防火区画に至る危険度を把握することができる。
【0051】また、本実施の形態においては、採水手段配置手順、水幕形成手順、および、水量測定手順を行った後、再び、これら各手順を繰り返す。この時、各採水手段配置手順においては、採水升群30Dを、他の採水手段配置手順における配置位置に対して相互に高さのみが異なる位置(平面的には同一位置であって、高さが異なる位置)に配置する。例えば、第1回目の採水手段配置手順においては、図8のように採水升群30Dを床面に配置し、第2回目の採水手段配置手順においては、図9のように採水升群30Dを床面から高さhの位置に配置する。このように採水升群30Dの配置高さを変えることにより、同一平面位置における異なる高さでの水幕の分布状態を把握でき、水幕の立体的な評価を行うことができる。
【0052】〔第4の実施の形態〕最後に、本発明の防火システムの評価システムにかかる第4の実施の形態について説明する。ただし、特に説明なき構成および処理については第1の実施の形態と同様であり、同様の構成要素を実施の形態1と同じ名称および符号を付して説明する。この実施の形態は概略的に、光学的に水幕の評価を行うものである。図10は本実施の形態にかかる防火システム10を設置した建物の平面図、図11は図10の側面図である。
【0053】図10、11に示すように、対象領域1の天井には複数の放水ヘッド11が併設されており、各放水ヘッド11から放水が行われることによって水幕が形成される。ここで、対象領域1には、識別指標40、撮像部50、および、照明部60が配置されている。
【0054】このうち、識別指標40は、水幕の存在する領域と他の領域とを、相互に光学的に識別可能とするための識別手段である。この識別指標40は、水幕を他の空間から識別可能とするものである限り、任意に構成することができるが、本実施の形態においては、図12の正面図に示すように、略垂直の網状部として構成されている。この識別指標40は、天井から錘41を用いて垂下された複数の垂直線42と、左右の支柱43の相互間に張設された複数の水平線44とを交差させることによって構成されるもので、その網状面が略垂直に、かつ、放水ヘッド11の併設方向と略平行になるように配置されている。
【0055】また、撮像部50は、水幕と識別指標40とを同時に撮像することができる撮像手段であり、例えば、デジタルカメラとして構成されている。この撮像部50は、水幕および識別指標40に対向するように配置されており、手動または自動にて水幕と識別指標40とを撮像する。特に、撮像部50は、隙間の空き易い水幕上部付近を撮像可能なように、当該水幕上部付近に対応する高さになるように、脚立51によって支持されている。
【0056】また、照明部60は、水幕の存在する領域と他の領域との光学的差異を強調するため、水幕またはその周囲領域に対して照明光を照射する照明手段である。この照明部60は、例えば、撮像部50の撮像タイミングに連動して光るフラッシュライトとして構成されており、水幕および識別指標40を挟んで撮像部50と対向する位置に配置され、水幕および識別指標40に光を照射する。
【0057】このように本実施の形態においては、これら識別指標40、撮像部50、および、照明部60を配置し(配置手順)、水幕を形成し(水幕形成手順)、撮像部50による撮像を行う(撮像手順)。そして、撮像部50にて撮像された画像を目視または公知の方法にて画像解析することにより、識別指標40によって光学的に識別可能とされた水幕の存在する領域と他の領域とを把握し、水幕の形成状態を評価する。例えば、本実施の形態においては、図12に示すように、水幕の隙間位置に見える識別指標40の網目数を計数することによって、この水幕の隙間の大きさを把握することができる。特に、本実施の形態においては、上記のように水幕および識別指標40が照明部60によって照らされていることから、水幕や識別指標40を一層明確に把握することができる。
【0058】このように網目数を計数することで水幕の隙間の大きさを評価するためには、識別指標40には、略垂直かつ複数の放水ヘッド11の併設方向に略平行な網状部を設けることが必要になる。しかしながら、必ずしも識別指標40自身を網状構造にする必要はなく、例えば、薄厚の布に網目模様を印刷等して識別指標40を構成することもできる。ただし、本実施の形態のように、識別指標40自身を網状構造にした場合には、放水された水がこの識別指標40の各網目を通って水幕を形成するので、水幕の形成過程に与える影響が小さいため、一層正確な水幕評価を行うことができる。
【0059】また、このように網目数を計数することで水幕の隙間の大きさを評価するためには、識別指標40の網状部は、計数可能な範囲で、極力小さな網目を有することが好ましい。この場合には、1つの水幕の隙間に、より多くの網目数を計数でき、隙間の大きさを一層詳細に把握できる。
【0060】また、本実施の形態において、識別指標40は、放水ヘッド11を通る水幕の縦断面の近傍位置に配置されている。すなわち、図11に示すように、識別指標40の隔絶方向における配置位置は、放水ヘッド11の配置位置とほぼ同位置である。このように、識別指標40を放水ヘッド11に極力近づけて配置することにより、これら識別指標40と水幕との相互距離が小さくなり、識別指標40と水幕との光学的な境界が一層明確になると共に、識別指標40と水幕との遠近関係を考慮する必要がなくなるために識別指標40に基づいた水幕の形状把握等を一層正確に行うことができる。
【0061】(他の実施の形態)さて、これまで本発明の実施の形態について説明したが、本発明は、上述した実施の形態以外にも、上記特許請求の範囲に記載した技術的思想の範囲内において種々の異なる実施の形態にて実施されてよいものである。例えば、上記の第1〜第4の実施の形態を相互の混在させることもでき、隔絶方向および並設方向の両方に連続配置した採水升30による測定を行なったり、採水升30による測定と識別指標40等による測定を同時に行なうこともできる。
【0062】この他、「識別指標40によって光学的に識別可能とする」とは、放水用の水を着色して水幕自体を識別指標40としたり、撮像部50によって撮像される水幕の背景を、特定の色や模様とすることを含む。また、光学的な識別手段は、必ずしも撮像部50の如き機械的手段である必要はなく、例えば、評価員が目視で評価することもできる。
【0063】また、識別指標40には必ずしも網状部を設ける必要はなく、例えば、識別指標40を垂直線42または水平線44のみで構成した場合においても、水幕やその隙間の形状を光学的に把握することができる。
【0064】また、照明部60は、必ずしも水幕および識別指標40を照明する必要はなく、例えば、水幕のみを照明したり、識別指標40のみを照明してもよい。すなわち、少なくとも、上記水幕またはその周囲領域に対して照明を行うことにより、水幕の存在する領域と他の領域との相互の光学的な差異を強調できればよい。
【0065】また、実施形態において説明した各処理のうち、自動的に行なわれるものとして説明した処理の全部または一部を手動的に行うこともでき、あるいは、手動的に行なわれるものとして説明した処理の全部または一部を公知の方法で自動的に行うこともできる。この他、上記文書中や図面中で示した処理手順、制御手順等については、特記する場合を除いて任意に変更することができる。また、上述した制御装置の構成は任意であるが、例えば、上記測定方法を実現するプログラムを記憶手段に記憶させると共に、このプログラムを逐次呼び出してCPU(Central Processing Unit)にて実現することができる。
【0066】
【発明の効果】以上に説明したように、本発明によれば、水幕の水が床面に平行に流れて設計到達範囲の外部に流出してしまった場合においても、この水が採水升に溜まるので、水量の測定を行うことができる。このため、水幕式防火システムの水幕分布の評価を正確かつ容易に行うことができる。
【0067】また、本発明によれば、設計到達範囲の内部から外部の各位置における水幕の分布を連続的または断続的に把握することができ、広範囲で水幕の評価を行うことができる。
【0068】また、本発明によれば、隣接する放水ヘッドから同時に放水を行った場合の隔絶方向に関する水幕の分布評価を行うことができ、重複部分における水幕相互の隔絶方向に関する影響状態等を把握することができる。
【0069】また、本発明によれば、隣接する放水ヘッドから同時に放水を行った場合の併設方向に関する水幕の分布評価を行うことができ、炎や煙が水幕を通って他の防火区画に至る危険度を把握することができる。
【0070】また、本発明によれば、同一平面位置における異なる高さでの水幕の分布状態を把握でき、水幕の立体的な評価を行うことができる。
【0071】また、本発明によれば、水幕の存在する領域と他の領域とが相互に光学的に識別可能になるので、光学的な識別を行うことによって、水幕の形成状態を評価することができる。
【0072】また、本発明によれば、網状部の網目数を計数することで、水幕やその隙間の大きさ等を容易かつ正確に評価することができる。
【0073】また、本発明によれば、識別手段と水幕との相互距離が小さくなり、識別手段と水幕との光学的な境界が一層明確になると共に、識別手段と水幕との遠近関係を考慮する必要がなくなるために識別手段に基づいた水幕の形状把握等を一層正確に行うことができる。
【0074】また、本発明によれば、上記水幕またはその周囲領域に対して照明光が照射されるので、水幕や識別指標を一層明確に把握することができる。
【出願人】 【識別番号】000001373
【氏名又は名称】鹿島建設株式会社
【住所又は居所】東京都港区元赤坂一丁目2番7号
【識別番号】000003403
【氏名又は名称】ホーチキ株式会社
【住所又は居所】東京都品川区上大崎2丁目10番43号
【出願日】 平成14年3月4日(2002.3.4)
【代理人】 【識別番号】100089118
【弁理士】
【氏名又は名称】酒井 宏明 (外1名)
【公開番号】 特開2003−250929(P2003−250929A)
【公開日】 平成15年9月9日(2003.9.9)
【出願番号】 特願2002−57951(P2002−57951)