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【発明の名称】 医療用荷電粒子照射装置
【発明者】 【氏名】柳澤 正樹
【住所又は居所】茨城県日立市幸町三丁目1番1号 株式会社日立製作所原子力事業部内

【氏名】秋山 浩
【住所又は居所】茨城県日立市幸町三丁目1番1号 株式会社日立製作所原子力事業部内

【氏名】加藤 公平
【住所又は居所】茨城県日立市幸町三丁目1番1号 株式会社日立製作所原子力事業部内

【要約】 【課題】上方及び水平方向からの照射を可能としつつ、移動カプセル等の別途の移動機構を設けることなく照射準備・確認作業を行える医療用荷電粒子照射装置を提供する。

【解決手段】患者Kが横臥する患者ベッド8と、荷電粒子線のビームを入射し患者ベッド8側へと輸送する輸送装置4、及びこの輸送装置4で輸送したビームの照射野を形成する照射野形成装置5を備え、回転軸心2まわりに回転可能に設けられたガントリー1とを有し、照射野形成装置5は、その照射軸心6が回転軸心2と異なる位置を通るように偏心して配置されており、患者ベッド8は、回転軸心2を含み照射軸心6と略垂直な面を境として、輸送装置4と反対側に配設されている。
【特許請求の範囲】
【請求項1】荷電粒子を患者の患部に照射する医療用荷電粒子照射装置において、前記患者が横臥する患者ベッドと、荷電粒子線のビームを入射し前記患者ベッド側へと輸送する輸送手段、及びこの輸送手段で輸送したビームの照射野を形成する照射野形成手段を備え、回転軸心まわりに回転可能に設けられた回転照射体とを有し、前記照射野形成手段は、その照射軸心が前記回転軸心と異なる位置を通るように偏心して配置されており、前記患者ベッドは、前記回転軸心を含み前記照射軸心と略垂直な面を境として、前記輸送手段と反対側に配設されていることを特徴とする医療用荷電粒子照射装置。
【請求項2】請求項1記載の医療用荷電粒子照射装置において、前記患者ベッドは、前記照射野形成手段に回動可能に吊り下げ支持されていることを特徴とする医療用荷電粒子照射装置。
【請求項3】請求項2記載の医療用荷電粒子照射装置において、前記患者ベッドに、その姿勢を略水平に維持するための重量体を備えることを特徴とする医療用荷電粒子照射装置。
【請求項4】請求項2記載の医療用荷電粒子照射装置において、前記回動可能に吊り下げ支持された患者ベッドを駆動してその傾きを変化させるベッド駆動手段と、前記患者ベッドの傾きを検出する傾斜検出手段と、この検出結果に応じ前記ベッド駆動手段を制御する傾斜制御手段とを有することを特徴とする医療用荷電粒子照射装置。
【請求項5】請求項1記載の医療用荷電粒子照射装置において、前記回転照射体に固定されその中心軸が前記回転軸心を構成する回転軸部材と、この回転軸部材を回動自在に支持する支持手段とを有することを特徴とする医療用荷電粒子照射装置。
【請求項6】請求項5記載の医療用荷電粒子照射装置において、前記回転軸部材を回転駆動する回転駆動手段と、前記回転軸部材の回転位置を検出する回転検出手段と、この検出結果に応じ前記回転駆動手段を制御する回転制御手段とを有することを特徴とする医療用荷電粒子照射装置。
【発明の詳細な説明】【0001】
【発明の属する技術分野】本発明は、荷電粒子を用いてガンや腫瘍等を治療する医療用荷電粒子照射装置に関するものである。
【0002】
【従来の技術】陽子や炭素イオン等の荷電粒子を患者の患部に照射してガンや腫瘍等を治療する医療用荷電粒子照射装置は、イオン源で発生し、シンクロトロン等の加速器で加速した荷電粒子を輸送手段に入射してコリメータ等を含む照射野形成手段へ導入し、この照射野形成手段で照射範囲を患部形状に合わせて成型した後、照射野形成手段の下方に配置した患者ベッドに横臥した患者の患部に照射する。
【0003】このとき、通常は患者ベッドにて患者は仰向けに横臥した状態であり、この状態における患部の位置や状態に合わせて、適切な角度位置から(例えば上方から、あるいは略水平方向から等)の照射を行う必要がある。また患部に対して複数方向から(多門から)照射しつつ各方向からの照射量を抑制することにより、患部にはそれらの重畳により所定の照射線量を達成できると共に、患部以外の部分については照射線量を低くでき不要な被爆を少なくできるという効果がある。
【0004】このような点に配慮した従来技術として、例えば特開平5−192419号公報記載の回転照射治療装置がある。この装置は、略円筒形状の回転フレームの外周側をローラにて回転可能に支持するとともに、その回転フレーム内に、輸送手段(偏向装置及び真空ダクト)と、照射野形成手段(ビーム調整装置)と、患者ベッド(照射ベッド)を備える照射室とを設けている。輸送手段は、回転フレームの径方向中心部にて荷電粒子線のビームを入射し、径方向外周側に大きく振り上げつつ照射野形成手段へ輸送する。照射野形成手段は、回転フレームの回転軸心を通る直径方向に配設されており、回転フレームの外周部に配置された輸送手段の末端部からビームを回転フレーム径方向内向きに入射するとともに、そのビームの照射野を形成して照射室へと照射する。照射室は、回転フレーム内の照射野形成手段のビーム出射側位置にて回転(自転)可能に(言い換えれば回転フレームの回転軸心まわりに公転可能に)配設され、回転フレームの回転位置に関係なく常時患者ベッドを略水平に維持可能となっている。
【0005】以上のような構造により、上述した患部の位置や状態に応じて、例えば患部の上方からビームを照射したい場合には、回転フレームを回転させて輸送手段を上方側に、照射室を下方側に位置させ、輸送手段で回転フレーム径方向中心部から鉛直略上方へ振り上げたビームを照射野形成手段内で下方へ通過させ、照射野形成手段のさらに下方に位置する照射室内の患者ベッドへ上方から照射する。また例えば患部の側方(水平方向)からビームを照射したい場合には、回転フレームを回転させて輸送手段を横一方側(例えば左側)に、照射室を横他方側(例えば右側)に位置させ、輸送手段で回転フレーム径方向中心部から左側へ振り上げたビームを照射野形成手段内で左側から右側へと水平に通過させ、照射野形成手段のさらに右側に位置する照射室内の患者ベッドへ水平方向に照射する。
【0006】
【発明が解決しようとする課題】しかしながら、上記従来技術には以下の課題が存在する。
【0007】すなわち、この従来技術では、前述のように患部の位置等に応じ患部の上方や水平方向からビームを照射するために、自転可能な照射室を備えた回転フレームを回転させる構造としている。この結果、回転フレームの回転による照射室の円運動(上下動)に伴い患者ベッドの高さ方向位置が大きく変動することとなる。具体的には、輸送手段及び照射野形成手段を備えた回転照射体の回転直径は例えば5m前後にもなるため、上方照射のための患者ベッド最下部位置から水平照射のための患者ベッド横方位置までの高さ方向上昇距離は、回転半径にほぼ相当する約2.5mにもなる。
【0008】上記従来技術では、これに対応するために、上記患者ベッドの位置変動に追従可能な移動カプセルを回転フレームの軸方向一方側に別途併設し、照射準備・確認を行う医者(あるいは放射線技術者等)がこの移動カプセルに乗って容易に患者ベッド位置へ到達可能として利便性向上が図られている。しかしながら、回転フレームとは別にこのような移動機構を設ける必要があることから、装置全体が(特に回転フレーム軸方向に)大型化するとともに、機構が複雑となる。
【0009】本発明の目的は、上方及び水平方向からの照射を可能としつつ、移動カプセル等の別途の移動機構を設けることなく照射準備・確認作業を行える医療用荷電粒子照射装置を提供することにある。
【0010】
【課題を解決するための手段】(1)上記目的を達成するために、本発明は、荷電粒子を患者の患部に照射する医療用荷電粒子照射装置において、前記患者が横臥する患者ベッドと、荷電粒子線のビームを入射し前記患者ベッド側へと輸送する輸送手段、及びこの輸送手段で輸送したビームの照射野を形成する照射野形成手段を備え、回転軸心まわりに回転可能に設けられた回転照射体とを有し、前記照射野形成手段は、その照射軸心が前記回転軸心と異なる位置を通るように偏心して配置されており、前記患者ベッドは、前記回転軸心を含み前記照射軸心と略垂直な面を境として、前記輸送手段と反対側に配設される。
【0011】患者が仰向けに横臥した状態で患部に対し上方から側方(略水平方向)まで照射を可能としたい場合、患者の横臥時の頭や足の向きを逆にして照射するようにすれば、照射装置としては患部に対し上方から左右いずれか一方の略水平方向まで照射方向可変(言い換えれば例えば90°範囲で可変)とすれば足りる。
【0012】このような90°可変範囲で考えた場合、上記従来構造では、前述したように患者ベッドを上方照射時には最下部位置、水平照射時には回転照射体を90°回転させた横方位置とすることとなり、この結果、最下部位置から横方位置までの患者ベッド上昇距離が前述のように回転照射体の半径にほぼ相当する例えば2.5m程度と著しく大きくなる。
【0013】これに対し、本発明においては、照射野形成手段の照射軸心を回転軸心と異なる位置を通るように偏心させている(言い換えれば照射軸心線が回転軸心線と交わらないように所定の角度をもっている)ことにより、上方照射時における患者ベッド位置を上記従来技術のように最下部位置でなく、上記偏心している分だけ、最下部位置からいずれか一方の横方位置にやや上昇した位置とすることができる。またこれに対応して水平照射時における患者ベッド位置も、上記従来技術のように横方位置(上記に対応させれば他方の横方位置)でなく、他方の横方位置からやや下降した位置とすることができる。すなわち、回転照射体を回転させて上方照射時から水平照射時まで患者ベッドを変位させるときの患者ベッドの動きは、上方照射時位置→徐々に下降して最下部位置→徐々に上昇して水平照射時位置というようになる。このように上方照射時の患者ベッド位置も水平照射時の患者ベッド位置も最下部位置でなく最下部位置より若干高い位置となるようにできるので、結果として、上記した上方照射時位置→最下部位置→水平照射時位置という変位における患者ベッドの高さ方向位置の変動(言い換えれば最下部位置から上方照射時位置または水平照射時位置までの高低差)を著しく抑制できる。
【0014】一方、回転照射体においては、荷電粒子線のビームを例えば回転照射体の径方向中心部(回転軸心)で入射した輸送手段が、そのビームを一旦径方向外周側に転向させた(振り上げた)後、回転照射体の軸方向に所定距離輸送し、末端部で再度回転照射体の径方向内周側に転向させて、照射野形成手段に入射する。輸送手段には、このようなビームの転向(偏向)を行わせるための偏向電磁石が、上記ビーム輸送経路上に複数個設けられている。このような構造上、例えば、患者ベッドの配置位置を回転照射体の回転軸心位置としその径方向外周側に径方向に照射野形成手段を配設するようにすると、上記輸送手段の末端部の位置は、ビームを照射野形成手段に入射するために照射野形成手段よりさらに径方向外周側となる。この結果、輸送手段は回転照射体の径方向外周側に大きく膨らんだ形状となり、回転照射体の回転直径が増大する。
【0015】そこで本発明においては、患者ベッドを、回転軸心の位置よりも反輸送手段側、詳細には回転軸心を含み照射軸心と略垂直な面を境として輸送手段と反対側に配設する。これにより、患者ベッドが反輸送手段側にずれた分照射野形成手段も反輸送手段側にずらすことができ、この結果上記径方向外周側への膨らみを低減することができる。この結果、回転照射体の回転直径をその分縮小することができる。
【0016】以上説明したように、本発明においては、前述した上方照射時位置から水平照射時位置までの患者ベッドの高さ方向位置の変動抑制作用に、さらに上記の回転照射体の回転直径縮小作用が加わることにより、その相乗効果によって、上記偏心寸法等の各部位置の設定を適宜行えば患者ベッドの高さ変動(高低差)を例えば最大1.5m程度に抑制することが可能となる。これにより、患者ベッドが最も高い位置にある状態(例えば上方照射位置又は水平照射位置)でも、特に別途装置を用いなくても、医者や技術者等は、床に立った状態のまま照射準備・確認作業等を行うことができ、利便性を大幅に向上することができる。また患者ベッドの高さ位置が抑制されることにより、患者の安全性をより高めることができる。
【0017】(2)上記(1)において、好ましくは、前記患者ベッドは、前記照射野形成手段に回動可能に吊り下げ支持されている。
【0018】これにより、回転照射体の回転位置に応じて患者ベッドを適宜回動させるようにすることで、患者ベッドを水平に保つことが可能となる。また、照射時における患部ターゲット点と実際の照射点との間の相対位置精度を高く保てるという効果もある。
【0019】(3)上記(2)において、さらに好ましくは、前記患者ベッドに、その姿勢を略水平に維持するための重量体を備える。
【0020】これにより、患者ベッドの重心位置を吊り下げ位置より下方とすることができるので、ベッドを容易に水平に保つことが可能となる。また、ベッド重量を重くすることにより、回転照射体の回転軸心まわりに関し、輸送手段のカウンタウエイトとしての役割も果たすことが可能となる。
【0021】(4)上記(2)において、また好ましくは、前記回動可能に吊り下げ支持された患者ベッドを駆動してその傾きを変化させるベッド駆動手段と、前記患者ベッドの傾きを検出する傾斜検出手段と、この検出結果に応じ前記ベッド駆動手段を制御する傾斜制御手段とを有する。
【0022】これにより、強制的かつより確実にベッドを水平、あるいは所定の角度に保つことが可能となる。
【0023】(5)上記(1)において、また好ましくは、前記回転照射体に固定されその中心軸が前記回転軸心を構成する回転軸部材と、この回転軸部材を回動自在に支持する支持手段とを有する。
【0024】回転照射体の回転軸心を回転軸部材で構成する有軸構造とすることにより、例えば輸送手段、照射野形成手段等といった大型重量物を無軸の略円筒形状の回転フレームで支持する場合に比べ、その重量によるたわみ等の変形を著しく小さくすることが可能となる。これにより、そのたわみ等の発生に由来する照射点と患部ターゲット点との間の相対位置決め精度の低下を防止し、照射精度を向上することができる。また有軸構造として回転照射体の全部材の荷重を軸部材で支持可能となることにより、これによっても、上記無軸の略円筒形状の回転フレームで支持する場合に比べ、回転照射体の径方向寸法を低減できる。
【0025】(6)上記(5)において、さらに好ましくは、前記回転軸部材を回転駆動する回転駆動手段と、前記回転軸部材の回転位置を検出する回転検出手段と、この検出結果に応じ前記回転駆動手段を制御する回転制御手段とを有する。
【0026】
【発明の実施の形態】以下、本発明の一実施形態を図面を用いて詳細に説明する。
【0027】図2は、本実施形態の医療用荷電粒子照射装置を備えた荷電粒子照射治療システムの全体構成を表す概念的構成図である。
【0028】図2において、この照射治療システムは、治療計画装置103で策定した治療計画の下、制御装置100の制御に基づき、荷電粒子発生装置(=加速装置;この例ではシンクロトロンであるが、サイクロトロン等他の加速装置でもよい)101で加速した荷電粒子ビーム(以下適宜、ビームという)を照射装置102から出力して患者Kの患部にビームを照射するものであり、照射装置102は回転軸心(後述)を中心に回転することによって複数の方向から患部にビームを照射可能となっている。
【0029】(1)シンクロトロン101の構成シンクロトロン101は、ビームに高周波の磁場及び電場(以下、高周波電磁場という)を印加することによりビームのベータトロン振動振幅を増加させる高周波印加装置111と、ビームの軌道を曲げる偏向電磁石112と、ビームのベータトロン振動を制御する四極電磁石113と、ビーム出射時の共鳴を励起するための六極電磁石114と、ビームにエネルギを与える、すなわちビームを加速する高周波加速空胴115と、ビームをシンクロトロン101に入射する入射器116と、ビームをシンクロトロン101から出射する出射用デフレクター117とを備えている。
【0030】制御装置100が前段加速器104に出射指令を出力すると、前段加速器104はこれに従って低エネルギのビームを出射し、そのビームは、ビーム輸送系を介してシンクロトロン101の入射器116に導かれ、これによってシンクロトロン101に入射される。入射したビームは、偏向電磁石112により軌道が曲げられることによりシンクロトロン101内を周回する。このときビームは四極電磁石113によりシンクロトロン101内をベータトロン振動をしながら周回し、そのベータトロン振動の振動数が四極電磁石113の励磁量により適宜制御されることにより、シンクロトロン101内を安定に周回する。そしてその周回過程で、高周波加速空胴115からビームに高周波電場が印加されることにより、ビームにエネルギが与えられ、ビームは加速され、エネルギが増大する。シンクロトロン101内を周回するビームのエネルギが所定のエネルギEまで増加したら、高周波加速空胴115によるビームへのエネルギの付与を停止するとともに、四極電磁石113、六極電磁石114、及び高周波印加装置111による公知の制御によってビームの軌道勾配を変化させて共鳴によりベータトロン振動振幅を急激に増大させ、出射用デフレクター117によってビームをシンクロトロン101から出射させる。
【0031】以上のシンクロトロン101の動作において、制御装置100は、治療計画装置(詳細は後述)103から入力された患部の深さ位置に基づいて、所定の照射方向(複数の方向から照射する)から患部に照射するビームのエネルギEを決定する。また、シンクロトロン101においてビームをエネルギEまで加速するために必要とされる、偏向電磁石112、四極電磁石113、高周波加速空胴115の各々に供給する電流値のパターン、及びエネルギEのビームを出射するために必要とされる、高周波印加装置111、六極電磁石114に供給する電流値を計算する。計算された各電流値は、各装置毎にエネルギEに対応させて制御装置100内の記憶手段に記憶され、加速時や出射時に電源108或いは電源109に出力される。
【0032】(2)照射装置102の構成本発明の要部は、照射装置102の構造に係わるものである。以下、その詳細を順次説明する。
【0033】図1は、照射装置102の全体概略構造を表す正面図である(但し後述のガントリー回転駆動用モータ9及びその周辺構造は図示省略)。この図1及び前述の図2において、照射装置102は、輸送装置4、照射野形成装置5、及び回転支持構造体3を備えたガントリー(回転照射体)1と、ガントリー1に固定され、その中心軸がガントリー1の回転中心(回転軸心)2を構成する回転ロッド13と、照射野形成装置5に回動可能に吊り下げ支持された患者ベッド8と、回転ロッド13を回転自在に支持する支持架台14と、回転ロッド13の回転駆動力を発生するガントリー回転駆動用モータ9とを有している。
【0034】ガントリー1に備えられた輸送装置4は、例えば偏向電磁石、四極電磁石等(いずれも図示省略)を備えており、シンクロトロン101から出射されたビームをガントリー1の回転中心(回転軸心)2と同軸上に入射する。入射されたビームは、まず偏向電磁石により軌道が曲げられ、かつ四極電磁石によってベータトロン振動が調節されて照射野形成装置5側へと輸送されるようになっている。
【0035】また照射野形成装置5は、例えば走査電磁石、散乱体、リッジフィルタ、ボーラス、コリメータ等(いずれも図示省略)を備えており、ビームの強度、形状を治療計画装置103によって設定された値となるように照射野を形成する。すなわち、照射野形成装置5内に導かれたビームは、まず走査電磁石の磁極間を通過して患部位置において円形に走査されるように偏向された後、散乱体により散乱されてビームの径が拡大された後、リッジフィルタにてビームのエネルギに患部の厚さに応じた分布をもたせる。その後、ボーラスに入力されて患部の下部形状に応じたエネルギ分布とされ、さらにコリメータ(マルチリーフコリメータ等)により患部の水平方向形状に成形された後、患部に照射される。
【0036】このとき、本発明の特徴の一つとして、照射野形成装置5は、その照射軸心(照射軸)6が、ガントリー1の回転軸心2と異なる位置を通るように(言い換えれば回転軸心2を通らないように)偏心して配置されている(後述する回転基準位置(=図1に示す状態)においては、略鉛直上下方向となっている)。またこれに対応して輸送装置4は、上記回転基準位置においては、シンクロトロン101から入射したビームを径方向外周側に向かって斜め上方に振り上げた後、ガントリー1の軸方向に輸送し、さらに末端部では略鉛直下方に向けて照射野形成装置5に入射させるようになっている。なお、回転ロッド13のガントリー1の反対側には、重量バランス調整用のカウンタウエイト12が固定されている。
【0037】上記輸送装置4及び照射野形成装置5は、それぞれ回転ロッド13に固定された上記回転支持構造体3(あるいはロッド13を支持架台14に固定し、回転支持構造体3がそのロッド13まわりに周回自在に支持された構造としてもよい)に取り付けられている。これによって回転ロッド13と、回転支持構造体3、輸送装置4、及び照射野形成装置5からなるガントリー1とが一体となって回転軸心2まわりに回転可能となっている。
【0038】本実施形態の照射装置102においては、この回転軸心2まわりに回転可能に構成されたガントリー1が、図1に示すような照射野形成装置5における照射軸心6が鉛直上下方向となる垂直照射位置(=基準位置、言い換えればカウンタウェイト12の軸心線が水平方向となす角θ=0°となる位置、後述の図3(a)参照)から、ガントリー1を図1で見て時計まわりに90°回転させた照射軸心6が水平方向となる水平照射位置(後述の図3(b)参照、言い換えればθ=90°となる位置)まで、回転可能となっている。 これにより、患者ベッド8に横臥した患者Kに対する鉛直上方よりの照射(θ=0°に対応、図3(a))から、左右方向一方側(図1の例では右側、図3(b))よりの照射に至るまでの範囲の方向からの照射を可能としている。このとき、患者ベッド8での患者Kの横臥の向きを頭と足とを逆に横臥させることで、患者ベッド8に横臥した患者Kに対する鉛直上方よりの照射から、左右方向他方側(図1の例では左側)よりの照射に至るまでの範囲の方向からの照射が可能となることから、これらを併せて、患者Kに対し180°の範囲でのあらゆる方向から(垂直照射から左・右水平照射まで)の照射を可能とするようになっている。
【0039】なお、本実施形態の例では、θ=0°の回転基準位置の設定は、図1に示すように、設置面Dから患者ベッド8までの高さが、θ=45°の位置で最も低くなり、θ=0°及びθ=90°で最も高くなる(互いに同一高さ)ようになっている。なお、患者ベッド8の高さが最も低くなる位置(θ=45°)で患者Kが患者ベッド8への昇降を行うようにすることはいうまでもない。
【0040】図4は、ガントリー1の回転駆動に係わる詳細構成を示す図1中要部抽出図である。この図4において、回転ロッド13の軸端部には滑車15が固定されており、上記回転ガントリー回転駆動用モータ9の回転軸9aの一方側(図2中左側)の軸端部に設けた滑車16との間を例えばチェーン17等により接続し、チェーン17をガントリー回転駆動用モータ9の駆動力で循環駆動することによって回転ロッド13に駆動力を伝達可能としている。
【0041】ガントリー回転駆動用モータ9は、例えば公知のサーボモータであり、上記制御装置100からの制御信号に基づきガントリー回転コントローラ18から出力される駆動指令信号によって駆動される。このとき、ガントリー回転駆動用モータ9の回転軸9aの他方側(図2中左側)の軸端部には、モータ部と同軸に一体化されてロータリーエンコーダ部19が配置されており、ある定まった微小回転角ごとにパルス信号(言い換えればモータ回転軸9aの回転数の検出信号)をガントリー回転コントローラ18に出力するようになっている。
【0042】そして、ガントリー1から患者Kの患部への照射方向の設定あるいは変更の際には、制御装置100からガントリー回転コントローラ18に照射方向に対応した制御信号が出力される。ガントリー回転コントローラ18は、制御装置100からの制御信号及びエンコーダ部19からの上記検出信号に基づき、ガントリー1が所定の角度位置となるように、ガントリー回転駆動用モータ9をフィードバック制御する。これによってガントリー1は上述の設定角度位置まで回転駆動し、前述の照射方向から患部にビームを照射できる位置に移動される。
【0043】なお、ガントリー1のどこかあるいはカウンタウェイト12に公知の傾斜計を設けてその検出信号をガントリー回転コントローラ18に入力し、その検出信号と制御装置100からの制御信号とに基づきガントリー回転駆動用モータ9をフィードバック制御するようにしてもよい。いずれにしても、所定の角度位置になったら、例えば滑車15の外周側に設けた回転制動用ブレーキ20によりガントリー1をその回転位置で静止させることが好ましい。
【0044】なお、ガントリー1の回転駆動源としては、ガントリー回転駆動用モータ9のような電動式には限られず、油圧、空圧等を用いることが可能であり、また、その駆動力伝達方式としても、上記滑車方式以外に、ラック・ピニオン、複数ギア駆動、ベルト、バネ機構等を用いることが可能である。角度位置検出についてもエンコーダに限られず公知の角度計を用いても良い。
【0045】一方、上記のように回転軸心2まわりに種々の回転方向位置をとりうるガントリー1に対して、どの位置でも患者ベッド8が水平状態を維持できるように(あるいは照射軸心6に対して所定の角度だけ患者ベッド8を傾斜できるように)、患者ベッド8についても回転駆動可能な構成となっている。
【0046】図5は、患者ベッド8の詳細支持構造を表す図2中B部の拡大図である。この図5において、照射野形成装置5の下端部における患者ベッド8の回転軸心線mと同軸にベッド回転駆動用モータ21,21(患者ベッド8の長手方向に2箇所設置)が設けられている。このベッド回転駆動用モータ21の回転軸21aの一方側(図5中左右方向中央側)の軸端部は、患者ベッド8のブラケット部8aに設けた貫通孔22に挿通されるとともにストッパ部材23によってブラケット部8aに固定されており、これにより、ベッド回転駆動用モータ9の駆動力を伝達して患者ベッド8を回転させ、照射野形成装置5に対する患者ベッド8のなす相対回転角度(言い換えれば傾斜角度)を変化可能としている。
【0047】ベッド回転駆動用モータ21は、前述したガントリー回転駆動用モータ9と同様、例えば公知のサーボモータであり、前述の図2に示すように、上記制御装置100からの制御信号に基づきベッド回転コントローラ24から出力される駆動指令信号によって駆動される。
【0048】このとき、前述のベッド回転駆動用モータ回転軸21aの他方側(図5中左右方向両端側)の軸端部には、上記ガントリー回転駆動用モータ9と同様、モータ部と同軸に一体化されてロータリーエンコーダ部19が配置されており、ある定まった微小回転角ごとにパルス信号(モータ回転軸21aの回転数の検出信号)をベッド回転コントローラ24に出力するようになっている。そして、ガントリー1から患者Kの患部への照射方向の設定あるいは変更に伴う患者ベッド8の姿勢の設定あるいは変更の際には、制御装置100からベッド回転コントローラ24に照射方向に対応した制御信号が出力される。ベッド回転コントローラ24は、制御装置100からの制御信号及びエンコーダ部25からの上記検出信号に基づき、患者ベッド8が照射野形成装置5に対して所定の相対角度位置となるように、ベッド回転駆動用モータ21をフィードバック制御する。これによって患者ベッド8は上述の設定角度位置まで回転駆動し、所定の照射方向から患部にガントリー1からのビームを照射できるような位置に姿勢変更される。
【0049】なお、患者ベッド8のどこかに公知の傾斜計を設けてその検出信号をベッド回転コントローラ24に入力し、その検出信号と制御装置100からの制御信号とに基づきベッド回転駆動用モータ21をフィードバック制御するようにしてもよい。いずれにしても、所定の相対角度位置になっても、患者Kの微妙な体勢変化に伴う重心移動等を考慮し、患者Kが患者ベッド8に搭載されている間は上記フィードバック制御を継続することが好ましい。また、より質の高い照射を行うために、患者ベッド8には3軸の移動機構や3軸の回転機構を設けるようにしてもよい。
【0050】また、患者ベッド8の回転駆動源については、ベッド回転駆動用モータ21のような電動式には限られず、油圧、空圧等を用いることが可能であり、駆動力伝達方式としても、上記直結方式以外に、滑車、ワイヤー、ラック・ピニオン、複数ギア駆動、ベルト、バネ機構等を用いることが可能である。角度位置検出についてもエンコーダに限られず公知の角度計を用いても良い。
【0051】なお、患者ベッド8は、本実施形態の特徴の一つとして、ガントリー1のどの回転方向位置においても(前述のθ=0°〜90°の範囲内で)、かつ患者ベッド8自体が照射野形成装置5に対してどの回転方向相対位置にあっても、前述の回転軸心2を含み照射軸心6と略垂直な面S(図1や前述の図3(a)及び図3(b)参照)を境として、輸送装置4と反対側となるように配設されている。
【0052】またこのとき、患者ベッド8及び照射野形成装置5は、患者ベッド8の回転軸心線mが、図6(a)及び図6(b)に示すように垂直照射時(図6(a)の状態;前述の図3(a)に対応)においても水平照射時(図6(b)の状態;前述の図3(b)に対応)においてもビームの実際の照射点7に一致するように、構成されていることが好ましい。
【0053】さらに、照射軸心6の患者ベッド8を超えた延長上には、照射軸心6側に常に正面に対向して臨むようにX線の受像装置が設置されていることが望ましい。また、患者附近には、患者位置決めを行う為のレーザマーカが設置されていることが望ましい。
【0054】(3)荷電粒子照射治療システムによる治療手順以下、上記のように構成した荷電粒子照射治療システムを用いた治療手順について、照射装置102の動作を含めつつ、詳細に説明する。
【0055】治療計画装置103は、例えば、計算機、複数のディスプレイ装置、入力装置、及び患者データベースから構成されており(患者データーベースを別体とし、ネットワークを介し接続する構成としてもよい)、実際の照射を行う前段階として医師によって行われる治療計画作業を補助する機能を持つものである。ここで、治療計画作業としては、具体的には、患部の同定、照射範囲及び照射方向の決定、患者への照射線量の決定、及び患者体内での線量分布の算出等が行われる。
【0056】(a)患部の同定例えば治療前の診断時に、X線CT検査及びMRI検査により体内腫瘍の3次元画像データが予め取得される。これらのデータは患者ごとにナンバリングされ、デジタルデータとして患者データーベースに保存・管理される。患者データーベースには、この他に、患者名、患者番号、年齢、身長、体重、診察・検査記録、罹病履歴、治療履歴、治療データなどの情報から成る、患者の治療に必要なデータの全てが記録・管理される。医師は適宜、上記患者データーベースにアクセスして、前述の患部画像データを取得し、治療計画装置103のディスプレイ装置上に表示でき、患部画像データを任意の方向からの見た3次元画像、または任意の方向からの見て深さごとにスライスした断面画像として表示することが可能である。また、各画像に対してコントラスト強調、ある階調を閾値とした領域塗りつぶし等の患部同定を補助する機能を持つ。医師はこれらの補助機能を利用しながら患部領域を同定する。
【0057】(b)照射範囲及び照射方向の仮選択続いて医師の操作により患部領域を包絡し、呼吸などによる患部の体内での移動等の可能性を考慮した適切なマージンを持たせて照射範囲が決定される。さらに、脊椎など放射線感受性の高い臓器を避けた照射方向(例えば前述のθ=0°〜90°の範囲内)が医師により幾つか(複数を含む)選択される。
【0058】(c)照射野輪郭の決定幾つか選択された照射方向をもとに、照射方向から見た照射野画像が表示され、腫瘍全体をカバーする照射野輪郭が強調表示される。また三次元画像が表示され、最大断面の位置と断面以降の三次元形状が表示される。これらの画像は例えばディスプレイ装置における複数のディスプレイに分けて表示する。このときの最大断面以降の3次元形状データあるいは照射野輪郭は照射野形成装置5で整形する照射野あるいは照射補正用の基礎データ(元データ)となる。
【0059】(d)照射方向及び照射線量等の最終決定治療計画装置103は照射野輪郭情報を元に、照射野形成装置のコリメータの各リーフ板の位置と最大照射野断面画像を重ね合わせて表示する。このとき、医師はこの重ね合わせ画像をもとにリーフ板の位置を決定し、決定結果は即座にディスプレイ装置上の表示に反映される。その後、治療計画装置103は、上記のリーフ板位置設定情報をベースに、体内での放射線線量分布を計算によりシミュレートし線量分布計算結果としてディスプレイ装置に表示する。このとき、医師により照射線量や放射線エネルギなどの照射パラメータが与えられ、先に選ばれた幾つかの照射方向に対してこのシミュレーションを実施して、最も好適な結果が得られた照射方向が医師により最終的に選択される。
【0060】なお、選択された照射方向設定情報、それに基づくコリメータのリーフ板設定位置情報、照射補正具データ、及び照射パラメータは患者固有の治療データとして患者データベースに保存される。
【0061】(e)ガントリー及び患者ベッドの回転駆動制御装置100は、ユーザの操作インタフェースとしての入力装置及び表示装置を備えており、またネットワーク接続を介して上記治療計画装置103で決定した照射方向設定情報を含む患者治療データを、治療計画装置103に付随する患者データーベースから取得し、それらを上記表示装置上で表示し医師らの確認を受けることが可能となっている。
【0062】そして、実際の照射に際しては、制御装置100が、上記照射方向設定情報に基づき、照射軸心6上に位置し照射を行うための照射目標点としての患部ターゲット点10(図1及び図2参照)を目標とし、例えば医師、あるいは上記治療計画に基づき医師の治療補助に従事する放射線技師等からの照射治療開始の入力に応じ、ガントリー回転コントローラ18及びベッド回転コントローラ24に対しガントリー1及び患者ベッド8の回転開始指令をそれぞれ出力する。
【0063】ガントリー回転コントローラ18は、制御装置100からの指令に応じ必要な制御指令を下位機構にあたるガントリー回転駆動用モータ9に出力するものであり、制御装置100からの上記回転開始指令を受信すると、前述のようにガントリー回転駆動用モータ9をフィードバック制御して回転ロッド13を回転中心として(詳細には回転軸心2を中心として)ガントリー1を回転させ、所定の回転方向設定位置(設定角度)に移動させる。このとき、回転ターゲット点10に対して実際に照射される照射点7と回転軸心2との間隔をdとすれば、照射点7は回転軸心2を中心として、θ=0°の位置からθ=90°の位置までの範囲で半径dの弧を描きながら移動することになる(図1参照)。
【0064】同様に、ベッド回転コントローラ24は、制御装置100からの指令に応じ必要な制御指令を下位機構にあたるベッド回転駆動用モータ21に出力するものであり、制御装置100からの上記回転開始指令を受信すると、前述のようにベッド回転駆動用モータ21をフィードバック制御して患者ベッド8を照射野形成装置5に対して相対回転させ、患者ベッド8を水平状態に維持する(あるいは所定の傾斜角度に設定する)。
【0065】なお、以上の手順において、ガントリーコントローラ18で管理されるガントリー1の現在位置情報及び駆動状態と、ベッド回転コントローラ24で管理される患者ベッド8の現在位置情報と駆動状態は、制御装置100に常時送信されており、制御装置100の上記表示装置上に表示される。
【0066】なお、以上において、輸送装置4が、荷電粒子線のビームを入射し患者ベッド側へと輸送する輸送手段を構成し、照射野形成装置5が、輸送手段で輸送したビームの照射野を形成する照射野形成手段を構成し、回転ロッド13が、回転照射体に固定されその中心軸が回転軸心を構成する回転軸部材を構成し、支持架台14が、回転軸部材を回動自在に支持する支持手段を構成する。
【0067】また、ガントリー回転駆動用モータ9が、回転軸部材を回転駆動する回転駆動手段を構成し、ロータリーエンコーダ部19が、回転軸部材の回転位置を検出する回転検出手段を構成し、ガントリー回転コントローラ18が、この検出結果に応じ回転駆動手段を制御する回転制御手段を構成する。
【0068】さらに、ベッド回転駆動用モータ21が、回動可能に吊り下げ支持された患者ベッドを駆動してその傾きを変化させるベッド駆動手段を構成し、エンコーダ部25が、患者ベッドの傾きを検出する傾斜検出手段を構成し、ベッド回転コントローラ24が、この検出結果に応じ前記ベッド駆動手段を制御する傾斜制御手段を構成する。
【0069】(5)本実施形態の効果上記荷電粒子照射治療システムに備えられた本実施形態の医療用荷電粒子照射装置によれば、以下のような効果を奏する。
【0070】(5−1)患者高さを抑制しつつ上方・水平照射が可能例えば、自転可能な照射室を備えた回転フレームを回転させる構造の前述の従来技術では、回転フレームの回転による照射室の円運動(上下動)に伴い患者ベッドの高さ方向位置が大きく変動する。すなわち、輸送手段及び照射野形成手段を備えた回転照射体の回転直径が例えば5m前後にもなることから、上方照射のための患者ベッド最下部位置から水平照射のための患者ベッド横方位置までの高さ方向上昇距離は、回転半径にほぼ相当する約2.5mにもなる。
【0071】これに対し、本実施形態の照射装置102においては、照射野形成装置5の照射軸心6をガントリー1の回転軸心2と異なる位置を通るように偏心させている(言い換えれば照射軸心6が回転軸心2と交わらないように所定の角度をもっている)ことにより、上方照射時(本実施形態ではθ=0°位置に相当)における患者ベッド8の位置を上記従来技術のように最下部位置でなく、上記偏心している分だけ、図1に示すように、最下部位置(本実施形態ではθ=45°位置に相当)からいずれか一方の横方位置(図1中の右側位置)にやや上昇した位置とすることができる。またこれに対応して水平照射時(本実施形態ではθ=90°位置に相当)における患者ベッド位置も、上記従来技術のように横方位置(上記に対応させれば他方の横方位置)でなく、他方の横方位置からやや下降した位置とすることができる。
【0072】すなわち、ガントリー1を回転させて上方照射時(θ=0°)から水平照射時(θ=90°)まで患者ベッドを変位させるときの患者ベッド8の動きは、上方照射時位置(θ=0°)→徐々に下降して最下部位置(θ=45°)→徐々に上昇して水平照射時位置(θ=90°)というようになる。このように上方照射時(θ=0°)の患者ベッド8の位置も水平照射時(θ=90°)における患者ベッド8の位置も、最下部位置でなく最下部位置より若干高い位置となるようにできるので、結果として、上記した上方照射時位置→最下部位置→水平照射時位置という変位における患者ベッドの高さ方向位置の変動(言い換えれば最下部位置(θ=45°)から上方照射時位置(θ=0°)または水平照射時位置(θ=90°)までの高低差)を著しく抑制できる。
【0073】一方、ガントリー1においては、図7に概念的に示したように、荷電粒子線のビームをガントリー1の回転軸心2で入射した輸送装置4がそのビームを一旦径方向外周側に転向させた(振り上げた)後、ガントリー1の軸方向に所定距離輸送し、末端部で再度ガントリー1の径方向内周側に転向させて、照射野形成装置5に入射する。輸送装置4には、前述したように、このようなビームの転向(偏向)を行わせるための偏向電磁石が上記ビーム輸送経路上に複数個設けられている。このような構造上、例えば前述の従来技術と同様に、回転可能に支持された略円筒形状の回転フレーム内に輸送装置4を設け、患者ベッド8を回転フレーム内のガントリー回転軸心2位置に配設し、さらに照射野形成装置をその径方向外周側に配設した場合、図8(a)に概念的に示すように、上記輸送装置4の末端部の位置は、ビームを照射野形成装置5に入射するために照射野形成装置5よりさらに径方向外周側となる。この結果、輸送装置4はガントリー1の径方向外周側に大きく膨らんだ形状となり、ガントリー1の回転直径が増大する。
【0074】一方、図8(b)に概念的に示すような、ガントリー回転軸上を照射軸心が通るとともに患者ベッド8を回転フレーム内のガントリー回転軸心2位置よりも径方向外周側(反搬送装置4側)に配設した場合は、図8(a)と比較して分かるように、患者ベッド8が反輸送装置4側にずれた分、照射野形成装置5も反輸送装置4側(図8(b)中では下側)にずらすことができ、この結果上記径方向外周側への膨らみを低減することができる。この結果、図8(b)に示すようにガントリー1の回転直径をその分縮小することができる。本実施形態においても、上記図8(b)の比較例と同様、患者ベッド8を、回転軸心2の位置よりも反輸送装置4側、詳細には、前述したように回転軸心2を含み照射軸心6と略垂直な面を境として輸送装置4と反対側(図8(b)中では下側)に配設しているので、同様の効果を得ることができる。
【0075】以上説明したように、本実施形態においては、前述した上方照射時位置(θ=0°)から水平照射時位置(θ=90°)までの患者ベッド8の高さ方向位置の変動抑制作用に、さらに上記のガントリー1の回転直径縮小作用が加わることにより、その相乗効果によって、上記した照射軸心6の偏心寸法等の各部位置の設定を適宜行うことで患者ベッド8の高さ変動(この例ではθ=45°位置からθ=0°又は90°位置までの高低差)を最大1.5m程度に抑制することが可能となる。これにより、患者ベッド8が最も高い位置にある状態(θ=0°の上方照射位置又はθ=90°水平照射位置)でも、特に別途装置を用いなくても、医者や技術者等は、床に立った状態のまま照射準備・確認作業等を行うことができ、利便性を大幅に向上することができる。また患者ベッド8の高さ位置が抑制されることにより、患者の安全性をより高めることができる。
【0076】(5−2)照射精度の向上等例えば上記(5−1)で図8(a)を用いて説明したような、略円筒形状の回転フレーム内にガントリー1の各構成要素を配設した構造の場合、輸送装置4、照射野形成装置5等といった大型重量物を無軸の略円筒形状の回転フレームで支持することとなる。このため、その重量によって回転フレーム等にたわみ等の変形が発生するのを抑制するのは困難であり、この結果、そのたわみ等に由来する患部ターゲット点10と照射点7との間の相対位置決め精度の低下を防止するのは困難となる。
【0077】これに対し、本実施形態の照射装置102によれば、前述したような回転ロッド13にガントリー1の各要素が固定される有軸構造であることにより、上記回転フレームによる荷重支持構造に比べれば、たわみ等の発生を低減することができる。これにより、患部ターゲット点10と照射点7との間の相対位置決め精度の低下を防止し、照射精度を向上することができる。
【0078】また、有軸構造としてガントリー1の全部材の荷重を回転ロッド13で支持可能となることにより、これによっても、図8(a)に示した無軸の略円筒形状の回転フレームで支持する場合に比べガントリー1の径方向寸法を低減できる効果がある。
【0079】(5−3)建屋の小型化上記(5−1)で説明したように、本実施形態においては、ガントリー1の回転直径(言い換えれば径方向寸法)や軸方向寸法が縮小できることにより、荷電粒子照射装置102全体を小型化できる。これによって、例えばシンクロトロン101を、そのビーム入射軸をガントリー1の回転軸心2の位置にビーム入射軸を合わせて通常の床面Fに設置した場合でも、前述した照射装置102の設置面Dの高さは上記床面Fよりもそれほど低くする必要がなく、せいぜい半地下構造程度で足りる。したがって、例えば上記図8(a)に示した構成ではシンクロトロン101及び照射装置102を内包する建屋として3階建て構造程度が必要となるのに比べて、建屋全体の寸法(特に高さ方向寸法)を大きく低減できる。
【0080】(5−4)照射装置の軽量化上記(5−1)で説明したように照射野形成装置5をずらした構造及びこれに伴う輸送装置4の膨らみを低減した構造により、例えば上記図8(a)に示した構成に比べ、輸送装置4及び照射野形成装置5を備えた照射装置102全体の重心位置を回転軸心2に近づけることができる。これにより、重量バランスのため必要となるカウンタウェイト12の必要量が減るので、その分、照射装置102全体の軽量化を図れる。
【0081】(5−5)その他■遊休空間の利用本実施形態の照射装置102においては、水平方向照射時のθ=90°の位置では、患者Kの上方に大きな空間が確保される(図1や図3(b)参照)ため、この位置にX線CT装置等を設置し、患者Kを患者ベッド8から降ろさずにCT撮影を行うことが可能となる。そのほか、この空間の利用方法として、照射野形成装置5に備えられる上記ボーラス、コリメータ等、患者毎に交換あるいは設定が必要な機器を装填・設定するための装置を、当該位置に設置することも可能である。
【0082】■ベッド重量制限がなくなる例えば図8(a)に示した略円筒形状の回転フレーム内にガントリー1の各構成要素を配設した構造の場合、上記(5−2)で説明したように、照射精度の低下をなるべく抑制する観点等から、患者ベッド8は極力軽量化が望まれるものである。これに対して、本実施形態の照射装置102によれば、輸送装置4や照射野形成装置5のカウンタウェイトとしての役割を果たすことも可能であることから、重量物であることの問題性は低くなって重量制限は必要なくなる。
【0083】なお、上記実施形態においては、例えばガントリー1の回転方向位置(θ=0°〜90°)によらず患者ベッド8を水平状態に維持するために、ガントリー回転駆動用モータ9の駆動力を用いて患者ベッド8を強制回転駆動したが、これに限られない。すなわち、患者ベッド8を照射野形成装置5の下端部に対し自由回動可能に吊り下げ支持するとともに、この患者ベッド8に重量体(おもり等)を設け、その重量によって患者ベッド8の水平姿勢を自然に維持するようにしてもよい。また患者ベッド8を重い材質で製造し、患者ベッド8自体を重量体としてもよいことは言うまでもない。これらの場合、上記■で説明したような輸送装置4等に対するカウンタウェイトとしての機能がさらに増大する。
【0084】また、上記実施形態においては、ガントリー1の回転角度をθ=0°〜90°の範囲としたが、これに限られるものではない。すなわち、回転照射装置102の回転軸心2と照射点7の位置関係を適宜設定することで、もう少し広い範囲、例えばθ=0°〜120°等の範囲とすることもできる。また逆に90°より狭い範囲とすることもでき、この場合、例えば水平照射及びこれに近い方向の照射については、患者ベッド8を若干の角度(患者に無理な体勢を強いない程度の)だけ傾けることでガントリー回転角度不足を補って行えばよい。本願発明者等の検討によれば、少なくともθ=0°〜60°程度の回転が行えれば、あとは上記の患者ベッド8の回転駆動による傾斜角度調整や、患者Kの搭載位置、方向等により、実際上、患部に対して、十分に多数の角度から荷電粒子を照射することが可能である。
【0085】
【発明の効果】本発明によれば、上方照射時位置から水平照射時位置までの患者ベッドの高さ方向位置の変動抑制作用と、回転照射体の回転直径縮小作用との相乗効果によって、上記偏心寸法等の各部位置の設定を適宜行えば患者ベッドの高さ変動(高低差)を例えば最大1.5m程度に抑制することが可能となる。したがって、患者ベッドが最も高い位置にある状態(上方照射位置又は水平照射位置)でも、特に別途装置を用いなくても、医者や技術者等は、床に立った状態のまま照射準備・確認作業等を行うことができ、利便性を大幅に向上することができる。また患者ベッドの高さ位置が抑制されることにより、患者の安全性をより高めることができる。
【0086】また、上記のように回転照射体の回転直径(言い換えれば径方向寸法)や軸方向寸法が縮小できることにより荷電粒子照射装置全体を小型化できる。これによって、通常、回転照射体の回転軸心位置にビーム入射軸を合わせて設置される荷電粒子発生装置の設置スペースを含め、これらの荷電粒子照射装置及び荷電粒子発生装置を内包する建屋全体の寸法(特に高さ方向寸法)を大きく低減できる効果もある。
【0087】さらに、上記した照射野形成手段をずらした構造及びこれに伴う輸送手段の膨らみを低減した構造によって、前述したような患者ベッドの配置位置を回転照射体の回転軸心位置としその径方向外周側に径方向に照射野形成手段を配設した場合に比べ、医療用荷電粒子照射装置全体の重心位置を回転軸心に近づけることができる。これにより、例えば前述の構造で必要となるカウンタウェイトが不要となるか、あるいはその必要量が減り、医療用荷電粒子照射装置全体の軽量化を図れる効果もある。
【出願人】 【識別番号】000005108
【氏名又は名称】株式会社日立製作所
【住所又は居所】東京都千代田区神田駿河台四丁目6番地
【出願日】 平成14年2月28日(2002.2.28)
【代理人】 【識別番号】100077816
【弁理士】
【氏名又は名称】春日 讓
【公開番号】 特開2003−250917(P2003−250917A)
【公開日】 平成15年9月9日(2003.9.9)
【出願番号】 特願2002−52708(P2002−52708)