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【発明の名称】 睡眠時無呼吸症のためのペースメーカー・システム
【発明者】 【氏名】須賀 幾

【氏名】山下 哲以

【氏名】高野 豊

【要約】 【課題】無呼吸に伴う悪影響が発生する前に、レートを高くペーシングをする事により、脳血流の改善、咽喉頭部の筋肉弛緩改善、覚醒反応等を生ぜしめ、睡眠時無呼吸症候群を改善するペースメーカー・システムを提供する。

【解決手段】睡眠時の患者の無呼吸を感知する無呼吸感知手段と、該感知手段からの値によって、ペーシング・レートが変更されるように制御する制御装置を有するペースメーカー・システムであって、前記無呼吸感知手段は少なくとも単位時間当たりの無呼吸回数、無呼吸の継続した時間を含む複数の呼吸に関するするパラメータを検出するものである。
【特許請求の範囲】
【請求項1】睡眠時の患者の無呼吸を感知する無呼吸感知手段と、該感知手段からの値によって、ペーシング・レートが変更されるように制御する制御装置を有するペースメーカー・システムであって、前記無呼吸感知手段は少なくとも単位時間当たりの無呼吸回数、無呼吸の継続した時間を含む複数の呼吸に関するするパラメータ(以下、感知パラメータともいう)を検出するものであり、また前記制御装置は、患者から検出された前記各感知パラメータの実測値が、患者に対して予め設定された感知パラメータの各基準値を満たした(超えた)場合に、ペーシング・レートを変更することを特徴とするペースメーカー・システム。
【請求項2】前記制御装置において、前記各感知パラメータの実測値が、前記各基準値を満たした(超えた)場合、設定したレートでペースメーカがペーシングするように、事前に無呼吸時のレートを設定できるものである請求項1に記載のペースメーカー・システム。
【請求項3】無呼吸を検出した時に移行する前記設定(ペーシング)レートにおいて、該移行レートの適用される時間を任意に設定できるものである請求項2に記載のペースメーカー・システム。
【請求項4】無呼吸検出時に移行する設定(ペーシング)レートが適用された後、必要に応じて前記設定レート、またはその適用時間を適宜変更できるものである請求項2または3のいずれかに記載のペースメーカー・システム。
【請求項5】前記無呼吸検出時における設定レートによるペーシングの結果、前記各感知パラメータの実測値が、前記各基準値より低下した場合、通常のレートに復元するものである請求項2〜4のいずれかの項に記載のペースメーカー・システム。
【請求項6】前記無呼吸感知手段が、分時換気量(Minute Ventilation、以下 MVともいう)を計測するMVセンサである請求項1〜5のいずれかの項に記載のペースメーカー・システム。
【請求項7】前記無呼吸感知手段に加えて、患者の体動を計測することによって、患者が睡眠状態にあることを感知する睡眠感知手段を備えた請求項1〜6のいずれかの項に記載のペースメーカー・システム。
【請求項8】前記睡眠感知手段が、加速度(ACC)或いは体動(Activity)センサである請求項7に記載のペースメーカー・システム。
【請求項9】前記制御装置において、前記感知パラメータの実測値の変動履歴を保存する記憶手段を有する請求項1〜8のいずれかの項に記載のペースメーカー・システム。
【請求項10】前記記憶手段において、前記感知パラメータの実測値変動に対応して、前記制御装置によって適用されたペーシング・レートを記憶する請求項9に記載のペースメーカー・システム。
【請求項11】前記制御装置において、前記記憶手段に保存された前記感知パラメータの実測値変動から患者の呼吸の周期や強弱を認識するアルゴリズムを有し、それらの認識結果に基づいて、患者の睡眠中の無呼吸時と通常時とで比較し、基準以上の変異の有無を検出する検出手段を有する請求項9または10のいずれかの項に記載のペースメーカー・システム。
【発明の詳細な説明】【0001】
【発明の属する技術分野】患者の睡眠時の無呼吸症状を検知し、徐脈や無呼吸症状に伴う種々の不都合に対応して、それを改善するためのペースメーカー、またはペースメーカー・システムに関する。
【0002】
【従来の技術】睡眠時無呼吸症候群(Sleep Apnea Syndromeであり、以下 SASともいう)を有する患者は、高い割合で徐脈(洞性徐脈・房室ブロック)を合併している事が知られている。睡眠時無呼吸症候群は、1晩に30回以上、或いは1時間当り5回以上の頻度で10秒以上の無呼吸が生じる症状を定義し、鼻や喉に原因がある「閉塞型」、大脳、脳幹に器質的、機能的障害がある「中枢型」、それらの混合である「混合型」の3つの型に分類される。
【0003】従来のペースメーカでは、呼吸・無呼吸の有無に関わらず、一定のペーシングレート、或いはセンサーレートでペーシングするアルゴリズムであるが、睡眠時無呼吸症の場合、そのままのレートでペーシングしてやると、徐脈が更に進行し、心拍数の減少により肺から脳への循環時間が延長し、脳血流の低下を引き起こす。その結果、更なる無呼吸間隔の延長と酸素飽和度の低下が発生するといわれており、特に無呼吸症候群において、上記のアルゴリズムを持つ従来のペーシングシステムの改善が求められていた。
【0004】このような経緯で、米国特許 第6126611号や国際公開特許 WO01/41868A1号に開示されているような無呼吸症患者に対応したペースメーカーが研究されてきた。即ち、睡眠時の無呼吸をセンサによって感知すると、ペーシング・レートを上げて、徐脈や心拍数現象に伴う身体の不具合を改善しようとするものである。
【0005】しかし、上記公報に開示されたものは、無呼吸を感知する基準値を設定することはできるものの、ペーシング・レートの設定が固定されたものであり、患者の症状によって、自在に適応できるものではなかった。また、覚醒時の安静状態での呼吸状態と睡眠時の呼吸状態とを比較する機能が無かった為、閉塞性睡眠時無呼吸など胸郭運動が完全に消失しないタイプの睡眠時無呼吸に対する対応が困難であった。
【0006】また、従来のペースメーカーには、患者の日内変動の再現を目的としてペーシングレートを変更する機能が備わっているが、これがSASを持つ患者には好ましくない作用をもたらしていた。つまり、最近のペースメーカーには、安静(睡眠)時に通常のベーシックレートより低めのペーシングレートになるように設定され、安静時の患者の生理的機能における負担を軽減する機能が備わっている。その機能は、一般にレストレート、ナイトレートドロップ、スリープレート等と言われている。
【0007】ところが、SASを有する患者の場合、レストレート機能によって、ペーシングレートが低下した状態をつくると、無呼吸発生時には、減少している心拍数がさらに減少することになり、その結果 徐脈の促進、脳血流への低下、等の様々な問題を引き起こす危険性がある。従って、SASの患者にレストレート機能を備えたペースメーカを適用することは少なく、万が一適用する場合には、細心の注意が必要であった。
【0008】
【発明が解決しようとする課題】従って、本発明の目的は無呼吸に伴う上記現象(徐脈、脳血流低下等)が発生する前に、レートを高くペーシングをする事により、脳血流の改善、咽喉頭部の筋肉弛緩改善、覚醒反応等を生ぜしめ、睡眠時無呼吸症候群を改善しようとするものである。特に、睡眠時無呼吸を感知した時点でペーシングレートをある一定期間、指定したレートで高めにペーシングすることによって、患者の症状に応じた対応を行う機能を有するペースメーカー、或いはペースメーカー・システムの提供を目的とする。
【0009】
【課題を解決するための手段】本発明において、以下の手段によって上記課題を解決した。即ち、本発明は睡眠時の患者の無呼吸を感知する無呼吸感知手段と、該感知手段からの値によって、ペーシング・レートが変更されるように制御する制御装置を有するペースメーカー・システムであって、前記無呼吸感知手段は少なくとも単位時間当たりの無呼吸回数、無呼吸の継続した時間を含む複数の呼吸に関するするパラメータ(以下、感知パラメータともいう)を検出するものであり、また前記制御装置は、患者から検出された前記各感知パラメータの実測値が、患者に対して予め設定された感知パラメータの各基準値を満たした(超えた)場合に、ペーシング・レートを変更することを特徴とするペースメーカー・システムである。
【0010】本発明では、睡眠時の無呼吸が患者にとって悪影響を及ぼす程度のものである場合に、初めてペーシングレートを増加させて、患者の症状を改善し、それ以外の軽微なものでは、徒らにペーシングレートを変更して、安静状態を乱さないようにするものである。
【0011】そして、患者に悪影響を及ぼすか、否かを判断するために無呼吸感知のためのパラメーターを採用し、特にその無呼吸感知パラメータとして、少なくとも患者の単位時間当たりの無呼吸回数と、無呼吸が継続された時間の2つを選択した。患者の状態や要因などの種々の事情を考慮した上で、医師は前記2つの感知パラメータにおいて、基準値を設定し、患者から検出した感知パラメータの実測値が、その基準値を満たした(超えた)場合にペーシングレートを増加(増減)する。
【0012】上記の構成によって、SASとして判断されないものに関しては無意味なペーシングレートの上昇を行わず、問題のあるSA(睡眠時無呼吸)のみ検出し、それに基いてペーシングレートを制御することができる。その結果、SAによって誘起される症状のみ抑制することができる。
【0013】
【発明の実施の形態】また、本発明においては、以下に記載するような実施形態をとることによって、後述するような様々な利点や効果を得ることができる。1つの実施態様として、前記制御装置において、前記各感知パラメータの実測値が、前記各基準値を満たした(超えた)場合、設定したレートでペースメーカがペーシングするように、事前に無呼吸時のレートを設定できる前記ペースメーカー・システムが挙げられる。事前に無呼吸検出時のペーシングレートを設定することによって、患者の状況に応じたペーシングを行うことができる。
【0014】別の実施態様として、無呼吸を検出した時に移行する前記設定(ペーシング)レートにおいて、該移行レートの適用される時間を任意に設定できる前記ペースメーカー・システムがある。無呼吸検出時に適用される増減したペーシングレートを、どのくらいの時間継続するのか事前に設定することで、患者の症状を効率的に改善することができる。
【0015】別の実施態様として、無呼吸検出時に移行する設定(ペーシング)レートが適用された後、必要に応じて前記設定レート、またはその適用時間を適宜変更できるものである前記ペースメーカー・システムである。このような構成とすることにより、万一患者に適合していないと判った時点で、事前に設定したペーシングレートや適用(継続)時間を変更することが可能となり、その結果、患者の症状を迅速に改善できる。
【0016】別の実施態様として、前記無呼吸検出時における設定レートによるペーシングの結果、前記各感知パラメータの実測値が、前記各基準値より低下した場合、通常のレートに復元するものである前記ペースメーカー・システムである。このような構成とすることにより、患者の睡眠中の生理的機能に適合した状態にすることができる。即ち、患者の症状が改善した時点では、上昇したペーシングレートが元の状態に戻ることによって、患者に適応した安静状態とすることができる。
【0017】前記無呼吸感知手段の一例として、前記無呼吸感知手段が、分時換気量(Minute Ventilation、以下 MVともいう)を計測するMVセンサである前記ペースメーカー・システムがある。MVセンサを利用することで、簡単に且つ確実に無呼吸を感知することが可能となる。
【0018】さらに確実性を向上するために、前記無呼吸感知手段に加えて、患者の体動を計測することによって、患者が睡眠状態にあることを感知する睡眠感知手段を備えた前記ペースメーカー・システムとしても良い。睡眠感知手段の例として、加速度(ACC)センサ或いは体動(Activity)センサが挙げられる。
【0019】また、別の実施態様として、前記制御装置において、前記感知パラメータの実測値の変動履歴を保存する記憶手段を有する前記ペースメーカー・システムがある。患者の正常な状態での分時換気量MV(感知パラメータ感知手段)の変動を捕らえる事により、無呼吸の基準値として検出され難い閉塞型無呼吸に対しても、確実に通常の睡眠状態とは区別し、必要ならば、何らかの対応を取ることで改善が期待できる。
【0020】例えば、前記制御装置において、前記記憶手段に保存された前記感知パラメータの実測値変動から患者の呼吸の周期や強弱を認識するアルゴリズムを有し、それらの認識結果に基づいて、患者の睡眠中の無呼吸時と通常時とで比較し、基準以上の変異の有無を検出する検出手段を有する前記ペースメーカー・システムである。上記態様をとることによって、MVの変化率からアルゴリズムによって、患者の呼吸の周期・強弱から通常時であるか、無呼吸にあるか、さらに無呼吸の場合は閉塞性か、中枢性か等、無呼吸のタイプの違いについても判断することができる。
【0021】或いは、別の実施態様として、前記記憶手段において、前記感知パラメータの実測値変動に対応して、前記制御装置によって適用されたペーシング・レートを記憶する前記ペースメーカー・システムがある。例えば、制御装置が SASセンサーヒストグラム機能を有し、SAが発生した時間帯と、そのイベント数及びセンシング・ペーシングレートをメモリしておく事により、どの時点でSAS機能の作動の必要性が有ったか、或いは無かったという確認や、その時点で高ペーシングレートが適用されたことによる治療効果が確認できる。
【0022】
【実施例】本発明の1つの実施例を以下に簡単に説明する。本ペースメーカー・システムはSSI(R)、VDD(R)、DDD(R)等様々なモードの機種に対応可能である。また、本システムは上述したSAS患者が被るレストレート機能による不利益を解消するため、レストレートをONにした場合、SAS機能は必ずONになるような設定としておくのが望ましい。しかし、SAS機能は単独としても使用可能である。
【0023】次に本発明のペースメーカー・システムの感知手段の構成について、簡単に説明する。体内に植込まれたリードから胸郭インピーダンスを測定する電気回路をペースメーカー本体に内蔵する。(この胸郭インピーダンスを測定する電気回路がMVセンサーの一部であり、無呼吸感知手段となる。)また、MVセンサーヒストグラムをメモリーする記憶回路をペースメーカー本体に内蔵する。
【0024】本発明のペースメーカー・システムでは、既述したように患者の睡眠時無呼吸(SA)を感知した場合に、予め設定したペーシング・レートに、(同じく設定した)適用時間だけ自動的に移行する。従来のペースメーカーでは、固定された高レートに移行するものであったが、本発明のペースメーカーは問題となる無呼吸を感知する基準値として、単位時間当りの無呼吸の回数[SAS検知回数]、及び無呼吸の持続時間[SAS検知期間]を設定できるだけでなく、患者に合わせて変更するペーシングレートの値[SAS設定レート]やその適用時間[SASペーシング期間]も設定できるようになっている。
【0025】本願で、SASを検出し、その結果によってペーシングレートを変更する機能を便宜的にSAS機能と呼ぶが、本システムにおいて、SAS機能をONにした場合、上記のSAS検知期間、SAS検知回数、SAS設定レート、SASペーシング期間のパラメーターが設定可能となる。
【0026】SAS検知回数は、通常1時間当り何回SASを検知するかを設定するものであり、例えば1時間当り呼吸停止が5回(基準値)以上を目安とする。SAS検知期間は1回のSASが何秒間持続したかを設定するもので、例えば10秒(基準値)を目安とする。
【0027】SAS設定レートはSAになった時、上述した少なくとも2つの感知パラメータ一(SAS検知期間、SAS検知回数)が一定の条件を満たした場合にのみ、自動的に変更される高ペーシングレートの値である。SASペーシング期間は、SAS設定レートでペーシングする期間である。また、変更されたペーシングレートを継続、または中止するため、制御装置にSASモード ON、OFF機能が設けられている。ONの場合、設定した期間の間SAS設定レートでペーシングし、OFFの場合、呼吸が回復した時点でSAS設定レートでのペーシングを解除する。
【0028】SAS検知、SASペーシングに関するフローチャートによって、本発明のペースメーカー・システムによるSAS検知機構、SASペーシング機構を簡単に説明する。まず、無呼吸感知手段によって、患者の睡眠時無呼吸(SA)の有無について、確認がなされる。感知手段によって、SAを感知しない場合、現状のレートのままでメインルーチンに入る。一方、感知手段がSAを感知した場合、(感知手段は)1時間内に予め設定した無呼吸時間のSAが、設定した回数検出されたかの確認を行う。設定した無呼吸時間の、或いは設定した回数のSAが検出されない場合には、現状と同じレートでメインルーチンに入る。
【0029】SAが予め設定した基準を満たした場合、その患者の状況に応じて、(患者のSAS状況には関係なく)一定期間高いレート(SAS設定レート)でペーシングを行うモードにするか、或いは患者のSAS状況に応じて、ペーシングレートを変更するモードにするかの選択を行う。ここで、SASペーシング期間をONにして、その継続期間を1分間、SAS設定レートを90回/分と設定してやると、その高レートのまま 1分間ペーシングを行う。
【0030】反対にSASペーシング期間をOFFにするモードを選択し、SAS設定レートを90回/分と設定してやると、取敢えずはその高レートのままペーシングを行う。そして、感知手段がSA(SAS)を感知している期間はそのままの高レートでのペーシングを維持しつつ、メインルーチンに入る。しかし、感知手段がSAを感知しなくなった時点で、即ち(感知手段が)SASが停止したとの確認ができた時点で、SAS設定レート(高レート)でのペーシングはOFFになる。そして、通常の低レートに戻った状態でメインルーチンに入る。
【0031】
【発明の効果】本発明のペースメーカー・システムによって、以下に記載するような様々な効果を得ることができる。
1.患者の状況に応じて、適応したペーシングレートと時間を設定することができ、各患者に対して効率的に且つ確実にSASによる症状を改善できる。
2.レストレート時において、患者がSA(睡眠時無呼吸)を起こした場合でも、徐脈や脳血流の低下を防止することができる。しかも、無呼吸が改善した場合には、元のペーシングレートに戻ることにより、患者の安静時における生理的機能に負担を与えない。
3.特定の実施態様を取ることによって、SASへの対応の必要性、対応の必要な時点、治療効果が確認できる。
【出願人】 【識別番号】000153030
【氏名又は名称】株式会社ジェイ・エム・エス
【出願日】 平成14年3月4日(2002.3.4)
【代理人】
【公開番号】 特開2003−250915(P2003−250915A)
【公開日】 平成15年9月9日(2003.9.9)
【出願番号】 特願2002−56776(P2002−56776)