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【発明の名称】 電極パッドおよび導電性粘着ゲル
【発明者】 【氏名】藤田 貴彦

【氏名】笹原 秀一

【氏名】吉川 和宏

【要約】 【課題】高周波電流を生体に通す際に、低周波電流による皮膚神経刺激を与えることを防止する。

【解決手段】電極パッドのエレメント11上には、誘電フィルム14が積層されており、この誘電フィルム14上に導電性粘着ゲル層12が積層されている。導電性粘着ゲル層12は、溝部15,16によって、ほぼ平面正方形状の28個の分割部分に分割されている。導電性粘着ゲル層12は、アクリルアミド系重合性単量体、架橋性単量体、水および多価アルコールを主成分とし、電解質塩の配合量が0.07重量%以下(零を含む。)である単量体配合液を重合架橋してなる導電性粘着ゲルを用いて形成されている。電極パッドは、周波数500kHzの電流に対するインピーダンスが10〜100Ωの範囲であって、周波数100Hz以下の電流に対するインピーダンスが周波数500kHzの電流に対するインピーダンスの3倍以上である。
【特許請求の範囲】
【請求項1】高周波電流を生体に流すための電極として用いられる電極パッドであって、導電性を有するシート状のエレメントと、このエレメントの一方面上に積層されており、生体に接着される導電性粘着ゲル層とを含み、周波数500kHzの電流に対するインピーダンスが10〜100Ωの範囲であって、周波数100Hz以下の電流に対するインピーダンスが周波数500kHzの電流に対するインピーダンスの3倍以上であることを特徴とする電極パッド。
【請求項2】周波数100Hz以下の電流に対するインピーダンスが40Ω以上であることを特徴とする請求項1記載の電極パッド。
【請求項3】高周波電流を生体に流すための電極として用いられる電極パッドであって、導電性を有するシート状のエレメントと、このエレメントの一方面上に積層されており、生体に接着される導電性粘着ゲル層とを含み、周波数500kHzの電流に対するインピーダンスが10〜100Ωの範囲であって、周波数100Hz以下の電流に対するインピーダンスが40Ω以上であり、さらに、周波数100Hz以下の電流に対するインピーダンスが周波数500kHzの電流に対するインピーダンスよりも大きいことを特徴とする電極パッド。
【請求項4】上記エレメントと上記導電性粘着ゲル層との間に介在された誘電フィルムをさらに含むことを特徴とする請求項1ないし3のいずれかに記載の電極パッド。
【請求項5】上記導電性粘着ゲル層が、所定幅の溝部によって複数の部分に分割されていることを特徴とする請求項1ないし4のいずれかに記載の電極パッド。
【請求項6】高周波電流を生体に流すための電極として用いられる電極パッドにおいて、生体に接着される粘着層を形成するための導電性粘着ゲルであって、アクリルアミド系重合性単量体、架橋性単量体、水および多価アルコールを主成分とし、水の配合量が12〜25重量%の範囲であり、電解質塩の配合量が0〜0.07重量%の範囲である単量体配合液を重合架橋してなることを特徴とする導電性粘着ゲル。
【請求項7】請求項1ないし5のいずれかに記載の電極パッドにおいて、上記導電性粘着ゲル層が、請求項6記載の導電性粘着ゲルを用いて形成されていることを特徴とする電極パッド。
【発明の詳細な説明】【0001】
【発明の属する技術分野】本発明は、たとえば、高周波電流を用いて治療またはモニタリングなどを行なう装置のアース電極やセンシング電極として使用する電極パッドに関する。
【0002】
【従来の技術】高周波電流を用いて治療を行なう装置の例として、たとえば、高周波治療器や電気メス装置が挙げられる。高周波治療器は、電極パッドを生体に密着させた状態で、その電極パッドから高周波の刺激電流を生体に通すことにより、筋肉の疲労回復やリハビリ効果を達成するものである。また、電気メス装置は、広く外科手術に用いられ、電極パッド(対極板)を生体に密着させた状態で、生体にメス先を近づけて、メス先と電極パッドとの間に高周波電流を流すことにより、メス先部分での生体組織の切開または凝固作用を発現させるものである。
【0003】
【発明が解決しようとする課題】上記のような装置に備えられている電極パッドには、金属製のエレメント(電極シート)上に合成樹脂製の誘電フィルムおよび粘着層を順に積層した構成を有する静電容量型のもの(たとえば、特許第2874947号公報参照)と、金属製のエレメント上に導電性粘着ゲルからなる導電性粘着層を積層した構成を有する導電型のものとがある。
【0004】静電容量型の電極パッドでは、十分な粘着力を確保する必要があることから、一般に、アクリル系粘着剤で粘着層が形成されている。しかしながら、アクリル系粘着剤は、皮膚刺激性が高いため、発赤等の皮膚異常を引き起こすおそれがあった。また、手術時の乾燥した環境下では、術後に生体から電極パッドを剥離した時に、粘着剤が皮脂や角質等を過剰に剥ぎ取るおそれもある。さらに、アクリル系粘着剤で形成される粘着層は、薄くて自由度が小さいために、生体の表面状態(凸凹、皺など)に追随できず、部分的に生体から剥離するおそれがあった。生体から粘着層が部分的に剥離すると、粘着層と生体との接触面積が小さくなり、その接触部分で局所的な電流集中が発生するおそれがある。
【0005】一方、導電型の電極パッドでは、導電性粘着ゲルを用いているため、生体に貼付した時の皮膚刺激が弱く、また、生体の表面状態に応じて粘着層が変形可能であり、生体からの部分的な剥離を生じるおそれがない。しかし、従来の導電型電極パッドは、導電性粘着ゲルの性質上、高周波電流だけでなく低周波電流も通してしまうため、通電時に低周波電流によるチクチクとした皮膚神経刺激を与えるおそれがあった。すなわち、従来の導電型電極パッドに用いられている導電性粘着ゲルは、良好な導電性を得るために、NaClなどの電解質塩を加え、水の配合量を多くすることでインピーダンスが低く抑えられており、これにより、高周波電流に対してだけでなく低周波電流に対するインピーダンスも低いという特性を有している。そのため、従来の導電型電極パッドは、低周波電流を通してしまい、この低周波電流による皮膚神経刺激を与えるおそれがあった。生体に流れる低周波電流(刺激電流)の量が多くなると、皮膚の発赤等の皮膚障害を引き起こすおそれもある。
【0006】そこで、本発明の目的は、低周波電流による皮膚神経刺激を与えるおそれのない導電型の電極パッドおよびこの電極パッドに好適に用いることができる導電性粘着ゲルを提供することである。
【0007】
【課題を解決するための手段および発明の効果】本発明の発明者は、鋭意研究の結果、低周波電流による皮膚神経刺激は周波数50Hz程度の電流によって発生することを見出し、周波数500kHzの電流に対するインピーダンスが10〜100Ωの範囲(10Ω以上100Ω以下)であって、周波数100Hz以下の電流に対するインピーダンスが周波数500kHzの電流に対するインピーダンスの3倍以上であれば、生体に低周波電流が流れることを防止でき、低周波電流による皮膚神経刺激の発生を抑制できることを見出した。また、この場合に、周波数100Hz以下の電流に対するインピーダンスが40Ω以上であれば、生体に低周波電流が流れることをより良好に防止でき、低周波電流による皮膚神経刺激の発生を一層抑制できることを見出した。
【0008】さらに、周波数500kHzの電流に対するインピーダンスが10〜100Ωの範囲であって、周波数100Hz以下の電流に対するインピーダンスが40Ω以上であり、さらに、周波数100Hz以下の電流に対するインピーダンスが周波数500kHzの電流に対するインピーダンスよりも大きい場合にも、生体に低周波電流が流れることを防止でき、低周波電流による皮膚神経刺激の発生を抑制できることを見出した。
【0009】すなわち、請求項1記載の発明は、高周波電流を生体に流すための電極として用いられる電極パッドであって、導電性を有するシート状のエレメントと、このエレメントの一方面上に積層されており、生体に接着される導電性粘着ゲル層とを含み、周波数500kHzの電流に対するインピーダンスが10〜100Ωの範囲であって、周波数100Hz以下の電流に対するインピーダンスが周波数500kHzの電流に対するインピーダンスの3倍以上であることを特徴とする電極パッドである。
【0010】請求項2記載の発明は、周波数100Hz以下の電流に対するインピーダンスが40Ω以上であることを特徴とする請求項1記載の電極パッドである。請求項3記載の発明は、高周波電流を生体に流すための電極として用いられる電極パッドであって、導電性を有するシート状のエレメントと、このエレメントの一方面上に積層されており、生体に接着される導電性粘着ゲル層とを含み、周波数500kHzの電流に対するインピーダンスが10〜100Ωの範囲であって、周波数100Hz以下の電流に対するインピーダンスが40Ω以上であり、さらに、周波数100Hz以下の電流に対するインピーダンスが周波数500kHzの電流に対するインピーダンスよりも大きいことを特徴とする電極パッドである。
【0011】なお、括弧内の英数字は、後述の実施形態における対応構成要素等を表す。以下、この項において同じ。塩化ナトリウムなどの電解質塩を含有し、かつ水が多く配合された導電性粘着ゲルを金属製のエレメント上に積層して構成された電極パッドは、図1(a)に示すように、電流周波数にかかわらず、ほぼ一定の低いインピーダンスを有している。このため、たとえば、電気メス装置に用いた場合、手術時に高周波電流と同時に低周波電流が生体に流れ、低周波電流による皮膚神経刺激を与えるおそれがある。
【0012】これに対し、たとえば、請求項1記載の電極パッドは、図1(b)に示すように、周波数500kHzの電流に対するインピーダンスが10〜100Ωの範囲であって、周波数100Hz以下の電流に対するインピーダンスが周波数500kHzの電流に対するインピーダンスの3倍以上であるというインピーダンスの周波数依存性を有しているため、電気メス装置などに用いた場合に、周波数50Hz程度の低周波電流が生体に流れることを防止でき、その低周波電流による皮膚神経刺激を与えるおそれがない。
【0013】周波数500kHzの電流に対するインピーダンスが10Ω未満の場合、周波数100Hz以下の電流に対するインピーダンスがその3倍以上あっても、インピーダンスが小さすぎるため、低周波電流が生体を流れることを防止できず、皮膚神経に刺激を与えるおそれがある。さらに、何らかの原因により電極パッド(導電性粘着ゲル層)の一部が生体から剥がれた場合、生体との接触部分を流れる電流の密度が上昇し、導電性粘着ゲル層の発熱の原因となるおそれがある。一方、周波数500kHzの電流に対するインピーダンスが100Ωを超える場合には、導電性粘着ゲル自体が抵抗となって発熱するおそれがある。
【0014】また、導電性粘着ゲル層は、生体に貼付した時の皮膚刺激が弱く、発赤等の皮膚異常を生じさせるおそれがない。また、柔軟で塑性変形性に優れているので、生体からの部分的な剥離を生じるおそれがない。さらに、導電性粘着ゲル層は、この導電性粘着ゲル層と同じ厚みを有する粘着層をアクリル系粘着剤で形成した場合と比較して安価である。導電性粘着ゲル層は、100μm〜1.4mmの範囲の厚みに形成されていることが好ましい。導電性粘着ゲル層の厚みが100μm未満であると、電極パッドが生体に貼付された状態を保持するのに十分な粘着力を得られない。また、生体の表面状態に応じて変形できないために、導電性粘着ゲル層が部分的に生体から剥離し、導電性粘着ゲル層と生体との接着部分に局所的な電流集中が発生するおそれもある。一方、導電性粘着ゲル層の厚みが1.4mmを超えると、生体の表面状態に応じた変形ができないうえに、インピーダンスが大きくなりすぎて、導電性粘着ゲルに電流を流しつづけると、導電性粘着ゲル自体が発熱するおそれがある。
【0015】請求項4記載の発明は、上記エレメントと上記導電性粘着ゲル層との間に介在された誘電フィルムをさらに含むことを特徴とする請求項1ないし3のいずれかに記載の電極パッドである。エレメントと導電性粘着ゲル層との間に誘電フィルムが介在されていることにより、周波数50Hz程度の低周波電流に対するインピーダンスが増加し、生体への低周波電流の流入をより良好に抑制することができる。
【0016】なお、誘電フィルムは、10〜200μmの範囲の厚みに形成されていることが好ましい。10μm未満の厚みであると、強度的に弱く、使用中に電極破壊が起こるおそれがある。また、厚さが200μmを超えると、エレメントにコシがでるために、生体に沿って変形しにくくなるおそれがある。また、誘電フィルムが介在されている場合、上記誘電フィルムの上記導電性粘着ゲル層との接触面に、上記導電性粘着ゲル層との接着性を高めるためのゲル易接着表面処理が施されていることが好ましい。
【0017】誘電フィルムは、ゲルとの接着性が良くないため、導電性粘着ゲル層の剥離を生じさせるおそれがあるが、誘電フィルムの導電性粘着ゲル層との接触面にゲル易接着表面処理が施されていることにより、誘電フィルムと導電性粘着ゲル層との接着性が向上し、誘電フィルムと導電性粘着ゲル層との間での剥離を防止することができる。請求項5記載の発明は、上記導電性粘着ゲル層が、所定幅の溝部によって複数の部分に分割されていることを特徴とする請求項1ないし4のいずれかに記載の電極パッドである。
【0018】この電極パッドによれば、たとえば、汗などの液体が生体と電極パッド(導電性粘着ゲル層)との間に存在しても、その液体を溝部を通して逃がすことができ、液体による電極パッドの剥がれを防止することができる。また、柔軟性が増加するので、生体の凹凸や湾曲に対して追従しやすく、ゲルの膨潤などが発生した場合も、応力の集中が少ないために変形による破壊が発生しにくいといった利点がある。
【0019】さらには、複数に分割されているため、個々の分割部分を1つの電極と考えることもでき、これらの電極が並列に結合されていると考えることができる。これにより、一つの分割部分が剥がれて生体との接触面積が低下した場合でも、その他の分割部分に電流が集中するおそれがない。請求項6記載の発明は、高周波電流を生体に流すための電極として用いられる電極パッドにおいて、生体に接着される粘着層を形成するための導電性粘着ゲルであって、アクリルアミド系重合性単量体、架橋性単量体、水および多価アルコールを主成分とし、水の配合量が12〜25重量%の範囲であり、電解質塩の配合量が0〜0.07重量%の範囲である単量体配合液を重合架橋してなることを特徴とする導電性粘着ゲルである。
【0020】また、請求項7記載の発明は、請求項1ないし5のいずれかに記載の電極パッドにおいて、上記導電性粘着ゲル層が、請求項6記載の導電性粘着ゲルを用いて形成されていることを特徴とする電極パッドである。単量体配合液中における電解質塩の組成率を0.07重量%以下に抑えることにより、周波数100Hz以下の電流に対するインピーダンスが周波数500kHzの電流に対するインピーダンスよりも高い特性を有する導電性粘着ゲルを得ることができる。また、単量体配合液中の水の配合量を12〜25%の範囲にすることにより、周波数100Hz以下の電流に対するインピーダンスをより小さく抑えることができる。
【0021】したがって、請求項6記載の導電性粘着ゲルは、請求項1〜5記載の電極パッドに好適に用いることができる。そして、請求項6記載の導電性粘着ゲルを用いて、請求項1〜5記載の電極パッドの導電性粘着ゲル層を形成することにより、請求項1ないし5に関連して述べた効果を達成することができる。なお、上記導電性粘着ゲルは、周波数500kHzの電流に対するインピーダンスが10〜100Ωの範囲であって、周波数100Hz以下の電流に対するインピーダンスが周波数500kHzの電流に対するインピーダンスの3倍以上であるというインピーダンス特性を有するものであってもよい。また、周波数500kHzの電流に対するインピーダンスが10〜100Ωの範囲であって、周波数100Hz以下の電流に対するインピーダンスが40Ω以上であり、さらに、周波数100Hz以下の電流に対するインピーダンスが周波数500kHzの電流に対するインピーダンスよりも大きいというインピーダンス特性を有するものであってもよい。
【0022】
【発明の実施の形態】以下では、本発明の実施の形態を具体的に説明する。図2は、本発明の一実施形態に係る電極パッドの平面図であり、図3は、図2に示す切断面線A−Aで切断したときの断面図である。この電極パッドは、たとえば、電気メス装置の対極板として用いることができるものであり、導電性材料を用いて形成されたエレメント11上に、導電性粘着ゲルからなる導電性粘着ゲル層12を積層した導電型の構造を有している。
【0023】エレメント11は、平面視における形状がほぼ長方形状に形成されており、このエレメント11よりも少し大きいサイズに形成された合成樹脂製の柔軟な基材13の一方面に保持されている。エレメント11の一辺には、リード線取付部111が外側に突出して形成されており、使用時には、リード線取付部111に通電のためのリード線が取り付けられる。エレメント11上には、誘電フィルム14が積層されており、この誘電フィルム14上に導電性粘着ゲル層12が積層されている。導電性粘着ゲル層12は、たとえば、エレメント11の長手方向に延びた3本の溝部15とその長手方向に直交する方向に延びた6本の溝部16とによって、ほぼ平面正方形状の28個の分割部分に分割されている。各分割部分の表面が、生体への粘着面(接着面)となっており、未使用状態では、不所望な粘着を防ぐために、各分割部分の表面を覆うように保護シート(図示せず)が仮着されている。
【0024】導電性粘着ゲル層12が複数の部分に分割されていることにより、たとえば、汗などの液体が生体と導電性粘着ゲル層12との間に進入しても、その液体を溝部を通して逃がすことができ、液体による電極パッドの剥がれを防止することができる。また、柔軟性が増加するので、生体の凹凸や湾曲に対して追従しやすく、ゲルの膨潤などが発生した場合も、応力の集中が少ないために変形による破壊が発生しにくいといった利点がある。さらには、個々の分割部分を1つの電極と考えることもでき、これらの電極が並列に結合されていると考えることができる。これにより、一つの分割部分が剥がれて生体との接触面積が低下した場合でも、その他の分割部分に電流が集中するおそれがない。
【0025】なお、溝部15,16の幅は、2〜20mmの範囲であることが好ましい。2mm未満であると、導電性粘着ゲル層12の分割部分の間隔が狭いために、電極パッドが生体に沿って湾曲した状態に貼付された場合に、互いに隣接する導電性粘着ゲル層12の分割部分が付着してしまうので好ましくない。また、20mmを超えると、個々の分割部分と生体との接触面積が大きくなり、生体に安定して貼付できなくなるため好ましくない。
【0026】エレメント11の材料としては、電気的抵抗が低いものであれば限定はなく、たとえば、プラスチックフィルム上にカーボンや銀/塩化銀等の導電性材料を印刷したもの、アルミニウム、ステンレス、銅またはニッケル等の金属箔などを用いることができる。特に好ましいのは、5〜50μmの範囲の厚みを有するアルミニウム箔でエレメント11を形成した場合である。アルミニウム箔は、他の材料と比較して、柔軟であって、電気導電性が高く、腐食しにくいという利点を有している。なお、エレメントの厚みが5μm未満であると、強度的に弱く、使用中にエレメント破壊が起こる可能性がある。また、50μmを超える厚さは、エレメント11に腰がつき、生体に沿って変形しにくくなるおそれがある。
【0027】導電性粘着ゲル層12は、アクリルアミド系重合性単量体、架橋性単量体、水および多価アルコールを主成分とし、電解質塩の配合量が0.07重量%以下(零を含む。)である単量体配合液を重合架橋してなる導電性粘着ゲルを用いて形成することができる。電解質塩の配合量を0.07重量%以下としたのは、それ以上の電解質塩が含まれると、導電性粘着ゲルのインピーダンスが小さくなりすぎ、導電性粘着ゲルが周波数100Hz以下の低周波電流の導通を阻止するという性質を有しなくなるからである。
【0028】アクリルアミド系重合性単量体としては、CH2=CR1−CONR23(R1は水素原子またはメチル基を意味し、R2およびR3は水素原子または低級アルキル基をそれぞれ意味する。)で表されるアクリルアミドまたはメタクリルアミド系化合物が挙げられる。アクリルアミド系重合性単量体は、導電性粘着ゲル中に13〜25重量%の範囲の組成率で含まれるのが好ましい。アクリルアミド系重合性単量体の組成率の下限を13重量%とした理由は、アクリルアミド重合性単量体量を13重量%未満にして導電性粘着ゲルを作成した場合、ゲル中に示す高分子主鎖の割合が低すぎるため、十分に腰強度の大きなゲル体を得ることができず、ゲル体の網目構造中に封じ込められた内包成分を安定な状態に維持することが困難となるためである。一方、アクリルアミド重合性単量体の組成率の上限を25%とした理由は、25%を超えたアクリルアミド重合性単量体を用いて導電性粘着ゲルを作成した場合、ゲル強度が高くかつ腰強度の大きなゲル体を得ることができる反面、ゲル体の網目構造が密になりすぎて、粘着性能が低下するとともに、網目構造に封じ込めることができる内包成分の絶対量が小さいため、内包成分のブリードが起こりやすいからである。
【0029】架橋性単量体としては、N,N’−メチレンビスアクリルアミド、N,N’−メチレンビスメタクリルアミド、N,N’−エチレンビスアクリルアミド、N,N’−エチレンビスメタクリルアミド、1,2−ジアクリルアミドエチレングリコール、ジ(トリまたはポリ)アクリレート、ジ(トリまたはポリ)メタクリレート等が挙げられる。架橋性単量体の組成率は、0.001〜0.3重量%の範囲が好ましく、0.01〜0.2重量%の範囲がより好ましい。これは、架橋性単量体の組成率が0.3%より多くなると、主鎖間を結ぶ網目架橋点が増大し、見かけ上、ゲル強度の強いゲル体が得られるが、ゲル体のもろさ(切断性)が増大し、引っ張りや圧縮による切断および破壊が生じやすくなるためである。また、架橋点の増大が主鎖の疎水化を増大させ、網目構造中に封じ込めた内包成分を安定な状態に保持することを困難にし、ブリードが起こりやすくなるためであり、さらに架橋点の増大におよる主鎖の自由度の低下によって、動きに対する追従性が低下するためである。一方、架橋性単量体の組成率が0.001%未満であると、ゲル体が得られないためである。
【0030】多価アルコールとしては、ソルビトール、グリコール、グリセリン等が挙げられる。また、多価アルコールは、組成率が20〜65重量%の範囲に設定されていることが好ましい。多価アルコールの組成率の下限を20重量%とした理由は、多価アルコールの組成率が20重量%未満の場合、乾燥性が増大して経時安定性が得られず、粘着力の低下が起こるためである。一方、多価アルコールの組成率の上限を65重量%とした理由は、ゲル体が65%を超える多価アルコールの乾燥性の低下を得ることができる反面、多価アルコールがゲル体を構成する網目構造中に十分に保持されなくなり、ゲル体からブリードして粘着性を低下させるためである。
【0031】また、水の組成率は、12〜25重量%の範囲に設定されていることが好ましい。これは、水の組成率が12重量%未満である場合、アクリルアミドなどの内包成分が溶解せず、均一なゲル体が作成できないためである。また、水の組成率が25%を超える場合には、ゲル体のインピーダンスが低下し、高周波電流を良好に導通し、100Hz以下の低周波電流の導通を阻止するというインピーダンス特性(性能)が得られないためである。また、ゲル体を構成する網目構造中に安定に存在できなくなって、乾燥性が増大し、ゲル体のインピーダンスが変動してしまうためである。
【0032】誘電フィルム14の素材は、特に限定されるものではないが、たとえば、ポリエチレンテレフタレート、ポリプロピレンまたはポリエチレンなどからなる非導電性フィルムで10〜200μmの範囲の厚みを有するものが挙げられる。10μm未満の厚みのものは、強度的に弱く、使用中に電極破壊が起こるおそれがあるので好ましくない。また、200μmを超える厚みを有するものは、誘電フィルム14に腰がつき、生体に沿って変形しにくくなるので好ましくない。
【0033】また、誘電フィルム14の素材として非導電性フィルムを用いた場合、非導電性フィルムがゲルとの接着性が良くないことから、誘電フィルム14の導電性粘着ゲル層12への接着性を高めるために、誘電フィルム14の導電性粘着ゲル層12との接触面に、導電性粘着ゲル層12との接着性を高めるためのゲル易接着表面処理が施されていることが好ましい。このゲル易接着表面処理としては、たとえば、多孔質処理、アクリル易接着層の塗布、コロナ処理、サンドブラスト処理、ケミカルマット処理等のマット処理、易接着層や粘着層のコーティング処理、ラミネート処理などが挙げられるが、これらに限定されるものではない。ゲル易接着表面処理により形成されるコーティング層の厚みは、50μm以下であることが好ましい。50μmを超えると、電気的抵抗が上昇してしまうからである。
【0034】なお、本発明の電極パッドは、電気メス装置の対極板として用いることができるだけでなく、高周波治療器の電極として用いることができるなど、高周波電流を用いて治療またはモニタリングなどを行なう装置のアース電極やセンシング電極として広く用いることができる。
【0035】
【実施例】次に、より具体的な実施例について説明する。
実施例1〜3アクリルアミド(20重量%)、N,N’−メチレンビスアクリルアミド(0.002重量%)、湿潤剤としてのグリセリン(60重量%)、溶媒としての水を残りの重量%(約20重量%)からなる混合物を溶解攪拌して、モノマー配合液を得た。次に、モノマー配合液100重量部に対して、光重合開始剤として1−ヒドロキシ−シクロヘキシルフェニルケトン(商品名イルガキュア184:チバ・スペシャリティーケミカルズ社製)を0.3重量部加え、さらに攪拌して溶解した。これにより得られたモノマー配合液を、初期温度を4℃に調整した後、ポリエチレンテレフタレートフィルム上に薄く展開した。次いで、そのモノマー配合液に50mW/cm2の強度の紫外線を60秒間照射し、重合架橋反応を行い、厚さ500μmのシート状の導電性粘着ゲル体を得た。そして、その導電性粘着ゲル体を10cm角のサイズに切り出し、その切り出した10cm角のゲル体を、このゲル体よりも少し大きなサイズで厚さが10μmのアルミ箔(エレメント)に貼り合わせた。これにより得られた試料を実施例1とした。
【0036】また、実施例1と同様な方法により得られた導電性粘着ゲル体を10cm角のサイズに切り出し、その切り出した10cm角のゲル体を、このゲル体よりも少し大きなサイズで厚さが10μmのアルミ箔(エレメント)上に、誘電フィルムとしてのラミネート処理した厚さ50μmの合成紙(販売名クリスパー:東洋紡製)を介して貼り合わせた。これにより得られた試料を実施例2とした。さらに、実施例1と同様な方法により得られた導電性粘着ゲル体を10cm角のサイズに切り出し、10cm角よりも少し大きいサイズで厚さが10μmのアルミ箔(エレメント)に、誘電フィルムとしてのラミネート処理した厚さ50μmの合成紙(販売名クリスパー:東洋紡製)を貼り合わせ、その合成紙上に、実施例1と同様な方法により得られた導電性粘着ゲル体を2.5cm角のサイズに切り出したものを、各ゲル体の間に3mmの間隔をあけて、縦横各4列に配設した。これにより得られた試料を実施例3とした。
【0037】比較例1アクリルアミド(18重量%)と、N,N’−メチレンビスアクリルアミド(0.002重量%)、湿潤剤としてのグリセリン(50重量%)、電解質塩としての塩化ナトリウム(4重量%)、溶媒としての水を残りの重量%からなる混合物を溶解攪拌して、モノマー配合液を得た。次に、モノマー配合液100重量部に対して、光重合開始剤として1−ヒドロキシ−シクロヘキシルフェニルケトン(商品名イルガキュア184:チバ・スペシャリティーケミカルズ社製)を0.3重量部加え、さらに攪拌して溶解した。これにより得られたモノマー配合液を、初期温度を4℃に調整した後、ポリエチレンテレフタレートフィルム上に薄く展開した。次いで、このモノマー配合液に50mW/cm2の強度の紫外線を60秒間照射し、重合架橋反応を行い、厚さ500μmのシート状の導電性粘着ゲル体を得た。そして、その導電性粘着ゲル体を10cm角のサイズに切り出し、その切り出した10cm角のゲル体を、このゲル体よりも少し大きなサイズで厚さが10μmのアルミ箔(エレメント)に貼り合わせた。これにより得られた試料を比較例1とした。すなわち、この比較例1は、電解質塩を0.07重量%よりも多く含む場合の例である。
【0038】比較例2アクリルアミド(20重量%)と、N,N’−メチレンビスアクリルアミド(0.002重量%)、湿潤剤としてのグリセリン(45重量%)、溶媒としての水を残りの重量%(約35重量%)からなる混合物を溶解攪拌して、モノマー配合液を得た。次に、モノマー配合液100重量部に対して、光重合開始剤として1−ヒドロキシ−シクロヘキシルフェニルケトン(商品名イルガキュア184:チバ・スペシャリティーケミカルズ社製)を0.3重量部加え、さらに攪拌して溶解した。これにより得られたモノマー配合液を、初期温度を4℃に調整した後、ポリエチレンテレフタレートフィルム上に薄く展開した。次いで、このモノマー配合液に50mW/cm2の強度の紫外線を60秒間照射し、重合架橋反応を行い、厚さ500μmのシート状の導電性粘着ゲル体を得た。そして、その導電性粘着ゲル体を10cm角のサイズに切り出し、その切り出した10cm角のゲル体を、このゲル体よりも少し大きなサイズで厚さが10μmのアルミ箔(エレメント)に貼り合わせた。これにより得られた試料を比較例2とした。すなわち、この比較例2は、水を25重量%よりも多く含む場合の例である。
【0039】比較例3比較例3としての試料を得るために、アクリルアミド(20重量%)と、N,N’−メチレンビスアクリルアミド(0.002重量%)、溶媒としての水(10重量%)、湿潤剤としてのグリセリンを残りの重量%からなる混合物を溶解攪拌したが、アクリルアミドが溶解せず、均一な導電性粘着ゲル体を得ることができなかった。
【0040】[インピーダンス測定]実施例1〜3、比較例1,2の試料を15cm×20cmのステンレス板に貼りつけた。次いで、このステンレス板および各試料のエレメントを、リード線の先端に取り付けられた導電性クリップで挟み、リード線の他端をインピーダンスアナライザ(ヒューレットパッカード社製4192A)に接続し、測定周波数50Hz〜1MHzでインピーダンス測定を行った。周波数50Hzおよび500kHzでの測定結果をそれぞれA、Bとし、この測定結果を、周波数50HzでのインピーダンスAおよび500kHzでのインピーダンスBの比A/Bとともに表1に示す。
【0041】
【表1】

【0042】上記の表1に示す測定結果から、実施例1〜3の試料は、周波数500kHzでのインピーダンスBが10Ω以上100Ω以下であり、インピーダンス比A/Bが3以上であることが判る。また、比較例1,2の試料は、周波数500kHzでのインピーダンスBが10Ω未満であり、また、インピーダンス比A/Bが3未満であることが判る。
[高周波電流通電試験]実施例1〜3および比較例1,2の各試料について、その性能を評価するために高周波電流通電試験を行った。
【0043】高周波電流通電試験では、図4に示すように、試料1をボランティア(生体)2の背中に貼りつけた。次いで、導電性クリップを用いてリード線3の一端を試料1に接続し、リード線3の他端を電気メス装置(セムコ社製BM−1)4の対極板接続部に接続した。また、泉工医科工業社製メラSASパッドをリファレンス電極5としてボランティア2の腹部に貼り付け、付属のリード線6を高周波電流計7を介してメス先電極8と接続した。そして、電気メス装置4を切開モードに設定し、700mAの電流を1分間流し(出力44W)、低周波刺激の有無と試料1の発熱状態を確認した。実施例1〜3および比較例1,2の各資料についての高周波電流通電試験の結果を表2に示す。
【0044】また、実施例1〜3および比較例1,2の各試料をボランティア2に1/4だけ接触させた状態で、高周波電流通電試験と同様な試験を行い、低周波刺激の有無と試料1の発熱状態を確認した(低面積高周波電流通電試験)。実施例1〜3および比較例1,2の各資料についての底面積高周波電流通電試験の結果も表2に併せて示す。なお、低周波刺激の評価において、低周波刺激をまったく感じない場合を「−」とし、低周波刺激をわずかに感じる場合を「−+」とし、低周波刺激をはっきりと感じる場合を「+」とした。また、発熱評価については、発熱をまったく感じない場合を「−」とし、発熱をわずかに感じるが熱くはない場合を「−+」とし、発熱を感じて熱い場合を「+」とした。実使用可能であるのは、低周波刺激について「−」の評価が得られ、かつ、発熱について「−+」または「−」の評価が得られたものである。
【0045】
【表2】

【0046】表2に示す評価結果から、実施例1〜3の試料については、低周波刺激を全く感じず、わずかな発熱が感じられたものもあるが、その評価は「−+」と実用に耐え得るものであった。これに対し、比較例1,2の試料については、高周波電流を流すとチクチクした痛みが感じられた。また、試験後にボランティアから比較例1,2の試料を剥がすと、ボランティアの皮膚が赤くなっていることが観察された。さらに、低面積高周波電流通電試験では、比較例1,2の試料については途中で発熱して赤くなったため、その時点で試験を中断した。
【0047】以上の結果から、比較例1,2は実使用には耐えられないと考えられる。
【出願人】 【識別番号】000002440
【氏名又は名称】積水化成品工業株式会社
【出願日】 平成14年3月5日(2002.3.5)
【代理人】 【識別番号】100087701
【弁理士】
【氏名又は名称】稲岡 耕作 (外1名)
【公開番号】 特開2003−250913(P2003−250913A)
【公開日】 平成15年9月9日(2003.9.9)
【出願番号】 特願2002−59017(P2002−59017)