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【発明の名称】 放射線発生装置及び放射線エネルギー検出器
【発明者】 【氏名】川崎 定博
【住所又は居所】東京都千代田区丸の内二丁目2番3号 三菱電機株式会社内

【要約】 【課題】医療用ライナックにおいては、出力放射線量および照射野内における線量分布については線量モニターによって治療中にリアルタイムでモニターすることが可能であるが、深さ方向の線量分布に影響を与える放射線のエネルギーについては治療中にリアルタイムでモニターする手段はなかった。

【解決手段】放射線エネルギーが変化するとビーム軸上とその周辺部の照射野内における線量分布が変化することを利用し、ビーム軸上に配置された電極(8)とその周囲にビーム軸に対称に配置された線量分布監視用電極(5a、5b、5c、5d)によって線量の比を監視し、予め測定によって決定した線量比と放射線エネルギー変化の関係を用いて放射線エネルギーの現在値を算出する。
【特許請求の範囲】
【請求項1】 放射線ビームの中央部の放射線量を検出する第1の放射線検出器と、放射線ビームの周辺部の放射線量を検出する第2の放射線検出器と、上記第1の放射線検出器からの出力と第2の放射線検出器からの出力との比較に基づき放射線ビームのエネルギーを制御するビーム制御手段とを備えたことを特徴とする放射線発生装置。
【請求項2】 上記第1の放射線検出器は放射線ビームのビーム軸上に配置され、上記第2の放射線検出器は上記放射線ビームの周辺部に複数個配置されていることを特徴とする請求項1に記載の放射線発生装置。
【請求項3】 上記複数個の第2の放射線検出器は上記ビーム軸に対し対称な位置に配置されていることを特徴とする請求項2に記載の放射線発生装置。
【請求項4】 上記第1または第2の放射線検出器は、高圧電極とこの高圧電極に対向配置された検出電極とで構成される平行平板電離箱の構造を有することを特徴とする請求項1乃至3のいずれか1項に記載の放射線発生装置。
【請求項5】 上記第1の放射線検出器の高圧電極と上記第2の放射線検出器の高圧電極は、一枚の金属平板により形成され、上記第1の放射線検出器の検出電極と上記第2の放射線検出器の検出電極は、一枚の絶縁平板上に形成された分離した金属部により形成されていることを特徴とする請求項4に記載の放射線発生装置。
【請求項6】 放射線ビームの中央部の放射線量を検出する第1の放射線検出器と、放射線ビームの周辺部の放射線量を検出する第2の放射線検出器と、上記第1の放射線検出器からの出力と第2の放射線検出器からの出力との相対的な大きさを比較する比較手段とを備え、この比較結果に基づき放射線ビームのエネルギーを検出する放射線エネルギー検出器。
【発明の詳細な説明】【0001】
【発明の属する技術分野】この発明は、例えば医療用ライナック等の放射線発生装置に係り、特に出力放射線のエネルギーの分布を検出し、人体に対する放射線量を制御することができる放射線発生装置及び放射線エネルギー検出器に関するものである。
【0002】
【従来の技術】医療用ライナック等の放射線発生装置を用いて放射線治療を実施する場合、人体に与えられる(吸収される)放射線量は、医療用ライナックからの出力放射線量、放射線ビーム(以下「ビーム」という)のビーム軸に垂直な面内における放射線量の分布、及び放射線のエネルギーによって決定付けられる。通常、出力放射線量とは、基準となる一点(ビーム軸上で、放射線源から定められた距離であって、定められた人体組織の深さ(=定格治療距離)にある点)において、人体組織に与えられる吸収線量を意味し、放射線発生装置の出力を評価する基準となっている。
【0003】しかし、医療用ライナックから出力される放射線は放射状に広がっているので、放射線発生装置の出力を精度よく評価するためには、ビーム軸上のある一点の放射線量だけではなく、放射線が照射される領域内(照射野)における放射線量の分布も把握する必要がある。さらに、人体に照射された放射線は人体内部を透過する際、人体に放射線を与えながら徐々に減衰していくので、深さ方向にも線量の分布ができる。従って、人体に与えられる放射線量を見積もるには、厳密には深さ方向の線量分布も考慮する必要がある。そして、この深さ方向の線量分布は、放射線のエネルギーによって決定付けられている。
【0004】上記の人体に吸収される放射線量を治療中に直接測定することはできない。この直接測定に代わり、医療用ライナックは、放射線量をリアルタイムでモニターする線量モニターを備える。線量モニターは平行平板電離箱で構成される。図7にその概略の構成を示す。図において高圧電極1、3と出力放射線量検出用電極2がひとつの平行平板電離箱を形成している。
【0005】高圧電極1、3に出力放射線量検出用電極2が挟まれて配置されているのは、検出用電極2の位置的な変位を補正するためである。また、このような構成とすることにより、電極間隔を広げることなく電離箱の有効体積を大きくすることができ、検出信号を大きくすることができる。電極間隔を広げても有効体積は大きくなるが、電極間の電界強度が弱くなるので電離したイオンが電極に収集されるまえに再結合する割合が大きくなり、検出性能が劣化する。
【0006】この線量モニターを用いて出力放射線量をモニターする手順を以下に説明する。治療に先だち、例えば水等の組織等価物質(放射線に対する特性が人体組織と等価な物質)をとりつけた標準線量計(各放射線治療施設の基準となる線量計)を上記の定格治療距離に配置し、出力放射線量及び分布を測定しておく。この測定は、実際の放射線治療時には、測定することができない人体に吸収される放射線量及び分布をあらかじめ見積もるものである。
【0007】一方、ライナックのヘッド部に組み込まれている線量モニターによりライナック出力口での放射線量及び分布も測定しておく。この線量モニターにより検出される放射線量は、上記標準線量計により測定される定格治療距離における放射線量とは異なる量となる。しかし、線量率やエネルギーが限られた範囲内では、両放射線量は比例関係を示す。また、分布も同様の傾向を示す。従って、線量モニターで測定した放射線量を、定格治療距離における放射線量を示すよう校正することにより、線量モニターによる出力放射線量の測定が可能となる。
【0008】図3において、5a、5b、5c、5dは絶縁シート4上に形成された放射線量分布監視用電極である。このような電極は、ビーム軸に対して対称な位置に配置されている。この電極は、放射線量の分布を検出し、かつその分布を制御するためのものである。電極5a、5cが前後の放射線量分布検出用とすれば、電極5b、5dは左右の放射線量分布検出用に相当する。治療に先だって、上記標準線量計等の測定器を用いて線量分布を測定しながら照射野内における線量分布がビーム軸からずれないようにビーム軌道が調整されているので、通常状態では線量モニターの電極5a、5b、5c、5dで検出される信号は等しくなる。
【0009】治療中になんらかの原因で電極5a、5cまたは電極5b、5dの検出信号に差違が生じた場合は、照射野内の線量分布の異常として放射線の発生を停止する等の安全策をとることができる。また、通常、医療用ライナックでは、ステアリング磁石と呼ばれる電磁石によってビーム軌道を前後および左右に変位させ、線量分布を前後および左右に変化させることができる機能を有している。従って、照射野内の線量分布の異常検出をフィードバックし、ビーム軌道をコントロールし、ビーム軸を中心とするビームの対称性を維持することにより、照射野内の線量分布を一定に保つシステムを構築することができる。
【0010】
【発明が解決しようとする課題】以上に述べてきたように、照射野内における線量分布については、線量モニターによって治療中にリアルタイムでモニターし、ステアリング磁石でビーム軌道を調整することにより一定にすることが可能である。しかし、ここでいう線量分布の一定性は、ビーム軸に対する対称性をいい、厳密な意味での照射野内での均一な分布をいうものではない。また、深さ方向の線量分布については何ら考慮されていなかった。そしてこの深さ方向の線量分布に影響を与える放射線のエネルギーについては、治療中にリアルタイムにモニターされていなかった。その結果、人体に与えられる放射線量を精度よく見積もれなかったという問題点があった。この発明は、このような問題を解決するためになされたものであり、従来装置ではできなかった治療中の放射線エネルギーのモニターを可能とする放射線発生装置及び放射線エネルギー検出器を提供することを目的とする。
【0011】
【課題を解決するための手段】この発明の請求項1に係る放射線発生装置は、放射線ビームの中央部の放射線量を検出する第1の放射線検出器と、放射線ビームの周辺部の放射線量を検出する第2の放射線検出器と、上記第1の放射線検出器からの出力と第2の放射線検出器からの出力との比較に基づき放射線ビームのエネルギーを制御するビーム制御手段とを備えたものである。
【0012】また、この発明の請求項2に係る放射線発生装置は、上記第1の放射線検出器は放射線ビームのビーム軸上に配置され、上記第2の放射線検出器は上記放射線ビームの周辺部に複数個配置されているものである。
【0013】また、この発明の請求項3に係る放射線発生装置は、上記複数個の第2の放射線検出器は上記ビーム軸に対し対称な位置に配置されているものである。
【0014】また、この発明の請求項4に係る放射線発生装置は、上記第1または第2の放射線検出器は、高圧電極とこの高圧電極に対向配置された検出電極とで構成される平行平板電離箱の構造を有するものである。
【0015】また、この発明の請求項5に係る放射線発生装置は、上記第1の放射線検出器の高圧電極と上記第2の放射線検出器の高圧電極は、一枚の金属平板により形成され、上記第1の放射線検出器の検出電極と上記第2の放射線検出器の検出電極は、一枚の絶縁平板上に形成された分離した金属部により形成されているものである。
【0016】また、この発明の請求項6に係る放射線エネルギー検出器は、放射線ビームの中央部の放射線量を検出する第1の放射線検出器と、放射線ビームの周辺部の放射線量を検出する第2の放射線検出器と、上記第1の放射線検出器からの出力と第2の放射線検出器からの出力との相対的な大きさを比較する比較手段とを備え、この比較結果に基づき放射線ビームのエネルギーを検出するものえある。
【0017】
【発明の実施の形態】この発明に係わる放射線発生装置は、線量モニター部にビーム軸上およびその周囲にビーム軸に対して対称に配置された一群の線量分布監視用電極を有しており、これらの電極によって治療中の線量分布を監視することができ、かつ検出されたビーム軸に垂直な面内の線量分布の変化からエネルギーの現在値を算出する機能を持たせたものである。
【0018】上記のとおり、治療に先だって標準線量計等の測定器を用いて線量分布を測定しながら照射野内における線量分布が均一になるようにビーム軌道が調整されているが、ビーム軌道が変化した場合には線量分布に傾きが生じる。その結果、ビーム軸に対称に配置された二つの電極で検出される信号に差違が生じる。これに対し、放射線のエネルギーが変動した場合には、ビーム中心軸上とその周囲との線量に差違が生じ、エネルギーが高くなるとビーム中心軸上の線量が高くなる傾向を持っている。
【0019】その結果、ビーム中心軸上の電極とその周囲に配置された電極の間で検出される信号に差違が生じる。この信号の差違とエネルギー変化の関係を予め測定によって決定しておけば、治療中にはこの信号の差違によってエネルギーを知ることができる。
【0020】また、この発明に係わる放射線発生装置では、算出したエネルギーの現在値が予め標準線量計等の測定器を用いて線量分布を測定した時点のエネルギーと異なる場合には、加速管内で加速されるビームエネルギーを自動的に変化させ、放射線のエネルギーを補正する機能を持たせたものである。
【0021】実施の形態1.以下、この発明の実施の形態を図1によって説明する。図において、6はライナック本体の放射線発生部、7はライナックヘッド部に組み込まれた線量モニターを示している。線量モニターは、線量分布監視用の電極として、ビーム軸上の電極8と、その周囲にビーム軸に対して対称に配置された電極5a、5b、5c、5dを有しており、図1ではこの様子を拡大して示している。
【0022】線量分布監視用の各電極の検出信号を、それぞれD8(ビーム軸上の電極8からの信号)、D5a、D5b、D5c、D5d(ビーム軸に対して対称に配置された電極5a、5b、5c、5dからの信号)とすると、治療に先だって標準線量計等の測定器を用いて線量分布を測定しながら照射野内における線量分布が均一になるようにビーム軌道およびエネルギーが調整されているので、このような正常状態では以下のように各検出信号は等しくなる。
D8=D5a=D5b=D5c=D5dこの正常状態において、上記標準線量計等の測定器を用いて深さ方向の線量分布が測定される。この深さ方向の線量分布の一例を図2に示す。図において、横軸は放射線量の分布を、縦軸は被照射体の表面からの深さを示す。一般には表面からある一定の深さのところで放射線の吸収量は最大となりその後減衰する。治療計画ではこの線量分布に基づいて、体内に存在する患部に与えられる線量が計算される。
【0023】周囲電極の検出信号D5a、D5cまたはD5b、D5dの間に差違が生じた場合は、均一に調整されていた線量分布に傾きが生じていることを示している。この様子の一例を図3に示す。図3に示すようにビームの対称性が崩れた場合にこのような信号の差異が生じる。このような場合はステアリング磁場をコントロールしてビーム軌道を変化させ、これらの検出信号の差違を0とする機能を有している。図1において、14はステアリング磁石を、10は線量分布の傾きを検出してステアリング磁場にフィードバックする制御部を示す。ステアリング磁場制御部の機能によって周囲電極の検出信号D5a、D5cおよびD5b、D5dは等しくなり、線量の分布に方向による傾きがなければ以下の関係が保たれる。
D5a=D5b=D5c=D5d【0024】一般に、電子ビームが医療用ライナックで使用されているターゲット等の金属に衝突した場合に発生する制動X線の線量分布は、電子ビームのエネルギーが高くなるほど前方への指向性が強くなる傾向にある。そして、平坦化フィルターと呼ばれる円錐形の金属によってビーム中心部の線量を減衰させることによって照射野面内の線量分布を均一にしている(図4(a))。しかし、例えば電子ビームのエネルギーが通常状態より高くなると、前方への指向性がさらに強くなるので、線量分布はビーム軸付近が高くなる(図4(b))。一方、電子ビームのエネルギーが通常状態より低くなると、前方への指向性が弱くなるので、線量分布はビーム軸付近が低くなる(図4(c))。
【0025】したがって、ビーム軸上電極と周囲電極の検出信号D8とD5a(=D5b=D5c=D5d)の間に差違が生じた場合は、放射線のエネルギーに差違が生じたと判断することができる。そして、予めエネルギーの変化と検出信号の比(=D5a/D8)の関係を実測によって決定しておけば、D5a/D8の値によってエネルギーを知ることができる。
E=E0+f(D5a/D8)
E :治療中の放射線エネルギーE0 :通常時の放射線エネルギー(治療前にあらかじめ測定)
f(X):D5a/D8とエネルギー変化の関数、実測によって求める【0026】図5は、上記関数f(X)の概略を示すグラフである。D5a/D8=1の場合(ビーム軸上電極と周囲電極の検出信号が等しい場合)には、f(1)=0となり、E=E0となる。したがって、治療中の放射線エネルギーは治療前に測定された通常時の放射線エネルギーと同じである。D5a/D8<1の場合(周囲電極の検出信号がビーム軸上電極の検出信号より低い場合)には、f(1)<0となり、E<E0となる。したがって、治療中の放射線エネルギーは治療前に測定された通常時の放射線エネルギーより低い。D5a/D8>1の場合(周囲電極の検出信号がビーム軸上電極の検出信号より高い場合)には、f(1)>0となり、E>E0となる。したがって、治療中の放射線エネルギーは治療前に測定された通常時の放射線エネルギーより高い。この関係によって線量分布監視用電極の検出信号からエネルギーを算出する手段が、図1における9に示すブロックである。
【0027】実施の形態2.次に、実施の形態2について図6を用いて説明する。図2において、11は電子ビームを加速する加速管(共振空洞とも呼ばれる)に加速電界を形成するためのマイクロ波増幅管であるクライストロン、12はクライストロンに印加電圧(具体的にはクライストロンのカソード電極への印加電圧)を供給するクライストロン電源である。上記クライストロンで増幅されたマイクロ波が加速管に入力されて加速管中に加速電界が形成される。13は算出したエネルギーが通常状態と異なっている場合にクライストロン印加電圧にフィードバックするブロックを示している。
【0028】クライストロンへの印加電圧を増加すると、マイクロ波出力が増加し、加速管の加速電界が増加する。この加速電界の増加によって電子ビームのエネルギーが増加し、上記ビーム線量分布の中心部の線量が増加する(上記D5a/D8が減少する)。このようにクライストロンの印加電圧を調整することにより、放射線エネルギーが常に一定になるように加速電子ビームのエネルギーをコントロールすることができる。上記クライストロン印加電圧の増減により加速電界の強弱が決まる。加速管の加速電界をこの例では電子ビームエネルギーをコントロールするためにクライストロン印加電圧にフィードバックする例を示したが、クライストロン発振源であるRF発振器の出力にフィードバックしてもよい。
【0029】
【発明の効果】この発明によれば、従来装置ではできなかった治療中の放射線エネルギーのモニターが可能となるので、治療に先だって標準線量計等の測定器を用いて測定された深さ方向の線量分布と同じ線量分布が人体に与えられていることが確認できるので、従来装置よりも信頼性の高い放射線治療を実施することができる。
【出願人】 【識別番号】000006013
【氏名又は名称】三菱電機株式会社
【住所又は居所】東京都千代田区丸の内二丁目2番3号
【出願日】 平成14年2月5日(2002.2.5)
【代理人】 【識別番号】100102439
【弁理士】
【氏名又は名称】宮田 金雄 (外1名)
【公開番号】 特開2003−225315(P2003−225315A)
【公開日】 平成15年8月12日(2003.8.12)
【出願番号】 特願2002−28152(P2002−28152)