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【発明の名称】 放射線治療装置
【発明者】 【氏名】宮野 巌
【住所又は居所】東京都千代田区内神田1丁目1番14号 株式会社日立メディコ内

【氏名】西村 正俊
【住所又は居所】東京都千代田区内神田1丁目1番14号 株式会社日立メディコ内

【氏名】上田 尚樹
【住所又は居所】東京都千代田区内神田1丁目1番14号 株式会社日立メディコ内

【要約】 【課題】平坦化フィルタを収納する照射ヘッドを大型にすることなく、小照射野において平坦化されたX線の線量率を高めるとともに、全照射野において平坦化されたX線の従来と同じ線量率での照射を可能とする放射線治療装置を提供する。

【解決手段】電子線発生源と、電子線の方向を変えるベンディングマグネット21と、真空を保持しながら電子線を通過させる真空窓22と、電子線を散乱させるスキャッタリングフォイル23aと電子線をX線に変換するターゲット23bを備えたフォイル・ターゲットレボルバ24と、電子線及びX線を絞り込むコリメータ25と、電子線及びX線の線量分布を照射面で一様にする平坦化フィルタ26と、電子線及びX線の線量を測定する透過線量計28などで放射線治療装置を構成する。前記平坦化フィルタ26を、上段と下段の二段に分割し、これら分割したフィルタは、小照射野用の第一のフィルタ5と、全照射野を形成する第二のフィルタ6とで構成する。
【特許請求の範囲】
【請求項1】 電子線発生源と、電子線の方向を変えるベンディングマグネットと、真空を保持しながら電子線を通過させる真空窓と、電子線を散乱させるスキャッタリングフォイルと電子線をX線に変換するターゲットを備えたフォイル・ターゲットレボルバと、電子線及びX線を絞り込むコリメータと、電子線及びX線の線量分布を照射面で一様にする平坦化フィルタと、電子線及びX線の線量を測定する透過線量計を含む放射線治療装置であって、前記平坦化フィルタは、上段と下段の二段に分割され、これら分割されたフィルタは、前記上段に配置する小照射野用の第一のフィルタと、前記下段に配置し前記上段の小照射野用第一のフィルタとを組み合わせて全照射野を形成する第二のフィルタとで構成して成る放射線治療装置。
【発明の詳細な説明】【0001】
【発明の属する技術分野】本発明は放射線治療装置に関し、特に照射ヘッドを大型にすることなく小照射野から全照射野までの放射線強度を平坦化するに好適な平坦化フィルタを備えた放射線治療装置に関する。
【0002】
【従来の技術】放射線治療装置は、特開平7-51395号公報に開示されているように、電子及び加速エネルギー発生装置からの電子線を照射ヘッド内の電子線をスキャッタリングフォイルで散乱させ、あるいは電子線をターゲットに衝突させてX線を発生させ、これらの電子線あるいはX線を患者の患部に照射して治療を行うものである。上記の電子線あるいはX線を発生させる照射ヘッドは、電子線の方向を変えるベンディングマグネットと、真空を保持しながら電子線を通過させる真空窓と、電子線を散乱させるスキャッタリングフォイルと電子線をX線に変換するターゲットをそれぞれ複数個備えたフォイル・ターゲットホルダと、電子線及びX線を絞り込むコリメータと、電子線及びX線の線量分布を照射面で一様にする平坦化フィルタをそれぞれ複数個備えたフィルタホルダと、電子線及びX線の線量を測定する透過線量計により構成される。
【0003】前記 スキャッタリングフォイルで散乱された電子線やターゲットで変換されたX線は、散乱により広がりを持っているため、電子線及びX線に対して垂直な平面における線量分布は一様にならず、照射面の中心が最も高く、この中心から遠ざかるほど低い線量分布となる。このような線量分布を有する放射線を患部に照射すると、照射面の中心となる患部では必要以上の放射線が照射され、それ以外の患部への照射量が不足して、患部全域に亘って所望の放射線を照射することができない。そこで、前記放射線の線量分布を一様にするために平坦化フィルタが必要となる。しかし、この平坦化フィルタがない場合の上記線量分布は放射線のエネルギーの値により異なるために、この放射線のエネルギーの値に対応した形状の複数の平坦化フィルタを用意しておき、前記放射線のエネルギーの値に応じて前記放射線の各エネルギー専用のフィルタを使い分けている。
【0004】
【発明が解決しようとしている課題】上記したように、従来の放射線治療装置は、該装置で形成可能な小照射野から大照射野までの広範囲の照射野サイズに対して、常に一様な線量分布が得られるように、各種エネルギーごとに、大照射野を基準とした1個の、もしくは複数個のフィルタを組み合わせて平坦化フィルタを構成していた。
【0005】しかし、平坦化フィルタの厚さは、平坦化する領域が大きいほど厚くなることから、大照射野を基準とした平坦化フィルタを使用すると、ターゲットで発生したX線は、この平坦化フィルタで大幅に減弱され、結果として治療用に照射されるX線の最大線量率は2〜4Gy/min程度の低いものに抑えられて所望の線量のX線を照射するのに要する時間が長くなるので、この点の改善が望まれていた。
【0006】さらに、最近の放射線治療においては、患者の呼吸などによる患部位置の変動を抑制するために、できるだけ短時間で照射して治療精度を高めるとともに、照射時間を短くして患者の拘束時間を短くすることで、患者の苦痛を軽減するためにも、できるだけ高いX線線量率で治療することが要望されている。このような高い線量率が特に必要とされるのは、定位的放射線治療などの比較的小さい照射野を対象とした精密照射による治療の場合である。
【0007】しかし、従来の技術では上記以上の高い線量率を得ようとすれば、電子及び加速エネルギーの発生装置が大型化するとともに、電子及び加速エネルギーの発生装置の寿命が短くなってしまい、実用性がなくなってしまうことになる。
【0008】そこで、照射野サイズを小照射野に限定し、通常よりも薄い平坦化フィルタを使用すれば、平坦化フィルタによる線量率の減弱が抑制されて、従来装置でも十分な線量率を得ることが可能である。
【0009】しかし、ここで問題となるのが、平坦化フィルタの収納手段である。小照射野だけでなく、大照射野までの全照射野にわたって各エネルギーのX線を利用しようとする場合に、上記の方法を採用すれば、従来の平坦化フィルタ以外に、小照射野専用のフィルタを具備しなければならず、結果として平坦化フィルタの数量が倍増することになる。多種類にわたるエネルギーの平坦化フィルタを使用可能とする手段に関する従来技術としては、特開平7-51395号公報に開示されているものがあるが、この方法を採用した場合、上記多種類にわたるエネルギーに対応した多数の平坦化フィルタを収納するための多段構成のフィルタホルダが必要となり、このフィルタホルダを照射ヘッドに収納すると該照射ヘッドのサイズが非常に大型化する。
【0010】そこで、本発明の目的は、平坦化フィルタを収納する照射ヘッドを大型にすることなく、小照射野において平坦化されたX線の線量率を高めるとともに、全照射野において平坦化されたX線の線量率での照射を可能とする放射線治療装置を提供することにある。
【0011】
【課題を解決するための手段】上記目的は、電子線発生源と、電子線の方向を変えるベンディングマグネットと、真空を保持しながら電子線を通過させる真空窓と、電子線を散乱させるスキャッタリングフォイルと電子線をX線に変換するターゲットを備えたフォイル・ターゲットレボルバと、電子線及びX線を絞り込むコリメータと、電子線及びX線の線量分布を照射面で一様にする平坦化フィルタと、電子線及びX線の線量を測定する透過線量計を含む放射線治療装置であって、前記平坦化フィルタは、上段と下段の二段に分割され、これら分割されたフィルタは、前記上段に配置する小照射野用の第一のフィルタと、前記下段に配置する前記上段の小照射野用のフィルタとを組み合わせて全照射野を形成する第二のフィルタとで構成することによって達成される。
【0012】このように構成された放射線治療装置は、二段に分割された第一、第二のフィルタを支持するホルダの上段に収納された小照射野用の第一の平坦化フィルタにより、小照射野の領域内の線量分布は平坦化される。このフィルタの厚さは、通常の全照射野用平坦化フィルタよりも薄いため、平坦化された小照射野内の線量率は、従来の線量率よりも大幅に高くなる。
【0013】また前記第一のフィルタと、下段の第二のフィルタとを組み合わせ、この第二のフィルタの断面形状を、組み合わされたフィルタを透過するX線の最終的な減弱効果が、通常の全照射野用平坦化フィルタと同じ減弱効果になるような形状にすることで、全照射野に対して従来と同様の線量率で平坦化することができる。
【0014】
【発明の実施の形態】以下、本発明の実施例を図面により説明する。図1に本発明による放射線治療装置の照射ヘッド部の断面図を示す。本発明による放射線治療装置は、電子線発生源(図示せず)と、照射ヘッド30とで構成され、照射ヘッド30は、電子線20の方向を変えるベンディングマグネット21と、真空を保持しながら電子線を通過させることの可能な真空窓22と、電子線20を散乱させるスキャッタリングフォイル23aと電子線20をX線に変換するターゲット23bを備えたフォイル・ターゲットレボルバ24と、電子線及びX線を絞り込むコリメータ25と、電子線及びX線の線量分布を照射面で一様にする平坦化フィルタ26を収納した平坦化フィルタボックス27と、電子線及びX線の線量を測定する透過線量計28により構成される。
【0015】電子線発生源から放出された電子線20は、ベンディングマグネット21により偏向され真空窓22に導かれ、真空窓22を通過し、スキャッタリングフォイル23aで散乱あるいはターゲット23bでX線に変換され、コリメータ25により照射野を絞り込み、平坦化フィルタ26により一様な線量分布をもつ治療用線束29となる。線量分布の一様性は透過線量計28により測定、確認される。なお、図1は、治療線束としてX線を用いた場合を示した。
【0016】本発明は、上記放射線治療装置の中の平坦化フィルタ部に関するもので、この平坦化フィルタ部について図面を用いて詳細に説明する。図2は平坦化フィルタの断面図と該フィルタ透過後のX線の線量分布を示す図で、従来のフィルタと本発明のフィルタとを並べて示した図である。
【0017】図2の(イ)は従来の平坦化フィルタ、(ロ)と(ハ)は本発明の平坦化フィルタで、それぞれ上段の図はフィルタの構成を示す断面図であり、下段の図はフィルタにより平坦化されたX線量分布を示す図で、縦軸がX線の線量強度、横軸が照射野内における位置を示す。図2(イ)において、従来の平坦化フィルタは、X線源1から発生したX線2をフィルタホルダ7に支持されたフィルタ4により、アイソセンタ9の位置における照射野8内のX線の線量分布を照射野中心軸3を中心として対称に平坦化する。
【0018】図2(ロ)は、小照射野8aで高X線量率の平坦化されたX線線量分布10aを形成するための第一の平坦化フィルタ構成を示すもので、上段と下段の二段に分割されたフィルタのうちの小照射野用の第一のフィルタ5を小照射野内に配置してX線の線量分布を平坦化する。
【0019】この小照射野用の第一の平坦化フィルタ5は、小照射野8aに限定して、照射野内のX線の線量分布を平坦化するための断面形状を有している。平坦化する領域が小さいことから、領域内の照射野のX線の線量分布を一様にするフィルタ5の厚さは薄い。したがって、フィルタ5によるX線2aの減弱も少ないことから、下段の図に示すように、平坦化された小照射野内のX線の線量強度10aは、図2(イ)の従来のX線強度10よりも大幅に高くなり、X線線量率も大きくなる。
【0020】このフィルタ5は、二段に分割されたフィルタホルダの一方(図2では上段側のフィルタホルダ7a)にあるフィルタ収納部11aに収納される。小照射野領域に限定して、このフィルタ5で平坦化された高X線線量率のX線2aは、他方(図2では下段側)のフィルタホルダ7bに設けた開口部12を通って、その下方にあるX線線量計(図1の28)を透過し、さらにその下方にあるコリメータ(図1の25b,25c)で小照射野に制限されて患者の患部にX線は照射される。
【0021】一方、図2(ハ)は全照射野8に対して従来と同様のX線線量強度の平坦化X線線量分布10を得るための第二の平坦化フィルタを示すもので、下段のフィルタホルダ7bのフィルタ収納部11bには、上段の第一のフィルタ5と組み合わせたときに、全照射野のX線線量分布を平坦化する第二の平坦化フィルタ6が収納される。上段と下段のフィルタ5,6を組み合わせたとき、これらのフィルタ5,6を透過するX線2は、従来のフィルタ4と同じ減弱効果を持つ厚さを有しており、結果として従来のX線線量率で、全照射野8において平坦なX線の線量分布10を形成することになり、従来と同様のX線照射が可能となる。
【0022】この全照射野の治療においては、上段と下段のフィルタを組み合わせて使用することから、組み合わせたときのフィルタ5と6の全体の厚みは、従来のフィルタ4とほぼ同等の厚さである。したがって、従来の機構とほぼ同じスペース内に収納することができる。
【0023】次に、図3,図4,図5を用いて、第一及び第二の平坦化フィルタの形状について説明する。図3は従来の平坦化フィルタの断面形状である。フィルタ4は、その中心が照射野中心軸3と一致し、中心からの距離によってその厚さが決まった回転体形状をしている。フィルタ4の底面における回転体中心からの距離をRとし、X線源1から発生したX線2が距離Rの位置でフィルタ4を透過するときの透過距離、すなわち透過方向におけるフィルタ4の厚さをL0とすれば、フィルタ4を透過したX線の減弱率αは、α=exp(-μ0・L0) (1)
で表わされる。ただし、expは自然対数、μ0はフィルタ4の材質(鉄、鉛、アルミニウムなど)によって決まるX線の減弱係数である。フィルタ中心からの任意の距離RにおけるX線の入射方向に対するフィルタの厚さL0は、アイソセンタ9における照射野8でのX線の線量分布を平坦にするための寸法であり、最終的にはX線の線量分布の実測値から決定される。図4は本発明による高X線線量率を得るためのフィルタの断面形状である。X線源1から発生したX線2が、図3のフィルタ中心からの距離Rに相当する位置で、フィルタ5を透過するときの透過距離、すなわち透過方向におけるフィルタ5の厚さをL1とすれば、フィルタ5を透過したX線の減弱率βは、β=exp(-μ1・L1) (2)
で表わされる。ここで、μ1はフィルタ5の材質(鉄、鉛、アルミニウムなど)によって決まるX線の減弱係数である。フィルタ中心からの任意の距離RにおけるX線の入射方向に対するフィルタの厚さL1は、アイソセンタ9における小照射野8aでの線量分布を平坦なものにするための寸法であり、最終的にはX線の線量分布の実測値から決定される。
【0024】図5は図4の高X線線量率フィルタと組み合わせて、図2(イ)の従来のフィルタと同様の効果を得るためのフィルタの断面形状である。X線源1から発生したX線2が、図2のフィルタ中心からの距離Rに相当する位置で、フィルタ6を透過するときの透過距離、すなわち透過方向におけるフィルタ6の厚さをL2とγ=exp(-μ2・L2) (3)
で表わされる。ここで、μ2はフィルタ6の材質(鉄、鉛、アルミニウムなど)によって決まるX線の減弱係数である。したがって、図4の第一のフィルタ5及び図5の第二のフィルタ6を透過したX線の減弱率δは、 δ=exp(-μ1・L1-μ2・L2) (4) で表わされる。 フィルタ6は、フィルタ5と組み合わせた結果、フィルタ4と同じ減弱率となるべきものであるから、 exp(-μ0・L0)=exp(-μ・L1-μ・L2) (5) となり、(6)式が成り立つ。
【0025】
−μ0・L0=−μ1・L1−μ2・L2 (6) 上記(6)よりL2は(7)式で表わされる。
【0026】
L2=(μ0・L0−μ1・L1)/μ2 (7)
上式においてフィルタ4,5,6がすべて同じ材質であれば、μ0=μ1=μ2であるからL2は、L2=L0−L1 (8)
となる。すなわち、フィルタ6の形状は(8)式のL2を満足する値になるように以下の手順で決めれば良い。
【0027】(1)全照射野のX線線量強度及びその分布曲線を設定する。
(2)上記(1)のX線強度よりフィルタ4のL0を決める。
(3)小照射野のX線量強度及びその分布曲線を設定する。
(4)上記(3)のX線強度よりフィルタ5のL1を決める。
(5)上記L0とL1より(8)式に基づいてフィルタ6のL2を求める。
【0028】なお、フィルタホルダ7a,7bの駆動機構等に関しては、前記の特開平7-51395号公報に開示されている周知の駆動機構の適用が可能であることから、その説明は割愛する。なお、本発明は、電子線及びX線を使用する放射線治療装置だけでなく、コバルト線源などから発生したガンマ線を使用する放射線治療装置などにも適用可能である。
【0029】
【発明の効果】以上、本発明によれば、平坦化フィルタを上段と下段の二段に分割し、これら分割されたフィルタは、前記上段に配置する小照射野用の第一のフィルタと、前記下段に配置する前記上段の小照射野用のフィルタと組み合わせて全照射野を形成する第二のフィルタとで構成し、高いX線量率が必要とされる定位的放射線治療などの比較的小さい照射野を対象とした精密照射による治療の場合は、前記小照射野用の第一のフィルタによりX線の線量分布を平坦化し、それほど高いX線の線量率を必要としないが比較的照射野が広い治療の場合は、前記上段の第一のフィルタと下段の第二のフィルタとを組み合わせてX線の線量分布を平坦化するようにしたので、平坦化フィルタを収納する照射ヘッドを大型にすることなく、小照射野において平坦化されたX線の線量率を高めるとともに、全照射野において平坦化されたX線の従来と同じ線量率での照射を可能とする放射線治療装置を提供することができる。
【出願人】 【識別番号】000153498
【氏名又は名称】株式会社日立メディコ
【住所又は居所】東京都千代田区内神田1丁目1番14号
【出願日】 平成13年9月10日(2001.9.10)
【代理人】
【公開番号】 特開2003−79753(P2003−79753A)
【公開日】 平成15年3月18日(2003.3.18)
【出願番号】 特願2001−274242(P2001−274242)