| 【発明の名称】 |
細胞が播種されたステント |
| 【発明者】 |
【氏名】松田 武久
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| 【要約】 |
【課題】経皮的血管形成術において、治療施行部位の再度の狭窄(いわゆる再狭窄)が問題となっており、再狭窄率の低減が求められている。再狭窄率の低下については、ステントの治療施行部位への留置が有効であることが示されているが、その効果は十分なものではなく、更なる再狭窄率低下が求められている。
【解決手段】少なくともその一部分に血管内皮前駆細胞又はそれから誘導される血管内皮細胞が播種されたステントは、これら細胞に由来する細胞調整因子による血栓生成抑制及び過剰の平滑筋細胞増殖の抑制による血管丙色を抑制し、また血管の再内皮化を促進することにより、急性期及び慢性期の血管再狭窄を抑制することができる。 |
【特許請求の範囲】
【請求項1】少なくともその一部分に血管内皮前駆細胞又はそれから誘導される血管内皮細胞が播種されたステント。 【請求項2】ステント上に配置されたコーティング層に前記血管内皮前駆細胞又はそれから誘導される血管内皮細胞が播種された請求項1に記載のステント。 【請求項3】前記コーティング層が光照射によりゲル化する細胞接着性高分子からなる請求項2に記載のステント。 【請求項4】光照射によりゲル化する細胞接着性高分子が光感応性基を有する細胞接着性蛋白質誘導体である請求項3に記載のステント。 【請求項5】光照射によりゲル化する細胞接着性高分子が、光感応性基を有するゼラチンである請求項3もしくは4に記載のステント。 【請求項6】ステント上に配置された複数の微細孔が穿孔された薄膜の柔軟性ポリマー及び光照射によりゲル化する細胞接着高分子からなる層に前記血管内皮前駆細胞又はそれから誘導される血管内皮細胞が播種された請求項1もしくは2に記載のステント。 【請求項7】前記コーティング層が、生体適合性高分子である請求項2、3、4、5もしくは6のステント。 【請求項8】前記コーティング層がセグメントポリウレタンであることを特徴とする請求項2、3、4、5、6もしくは7のステント。 【請求項9】前記コーティング層のコーティング厚が10以上200μm以下である請求項2、3、4、5、6もしくは7のステント。 【請求項10】前記の微細孔がレーザーにより50以上500μm以下間隔で、5以上500μm以下の直径を有することを特徴とする請求項6のステント。 【請求項11】ヒト骨髄、ヒト末梢血又はヒト臍帯血から血管内皮前駆細胞を分離又は分離・培養した細胞を使用することを特徴とする請求項1、2、3、4、5、6、7、8、9もしくは10のステント製造方法。
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【発明の詳細な説明】【0001】 【発明の属する技術分野】本発明は血管内皮前駆細胞または当該細胞から誘導される血管内皮細胞が播種されたことを特徴とするステントに関する。 【0002】 【従来の技術】ステントとは、血管あるいは他の生体内管腔が狭窄もしくは閉塞することによって生じる様々な疾患を治療するために、その狭窄もしくは閉塞部位を拡張し、その管腔サイズを維持するため生体内に留置される医療用具である。ステントの形態としては、1本の線状の金属もしくは高分子材料からなるコイル状のステントからなるもの、金属チューブをレーザーによって切り抜いて加工したもの、線状の部材をレーザーによって溶接して組み立てたもの、複数の線状金属を織って作ったもの等がある。 【0003】これらのものはステントをマウントしたバルーンによって拡張されるものと、外部からの拡張を抑制する部材を取り除くことによって自ら拡張していくものとに分類することが出来る。この内、バルーンによって拡張されるステントは、広げようとする管状組織の状態やステントの機械的な強度によって拡張圧を調整して用いられる。 【0004】近年、特に心臓の経皮的冠動脈血管形成術(PTCA)における急性期の冠閉塞抑制およびPTCA治療施行部位の再度の狭窄(いわゆる再狭窄)の程度、頻度を低減する目的で多用され,ステントを狭窄部又は本狭窄部をPTCA術により拡張した血管部位に留置することにより、再狭窄率の低減することひろく知られるところである。しかし、ステントの使用が普及するに従い、更なるステント留置後の再狭窄率の低減が臨床現場で求められている。これらを再狭窄率の更なる低減に向けて、ステントデザインの改良によるステント留置時の血管損傷の低減ならびにステント表面への抗血栓性の付与が考案されている。また,ステント留置血管の損傷修復過程における血管壁構成細胞である平滑筋細胞の過増殖を抑制する薬剤をステント表面にコーティングしたステント等が考案されている。しかしながら、薬剤コーティングステントにおいては、細胞増殖を抑制することより、損傷血管の修復遅延などの問題が指摘されている。 【0005】 【発明が解決しようとする課題】これらの状況を鑑み本発明が解決しようとするところは、血管などの生体内に留置された場合、抗血栓性表面を有することにより急性期の血栓形成などによる血管閉塞の発生を抑制し、または、血管平滑筋細胞細胞などの損傷血管修復過程における血管壁細胞の過増殖を抑制することにより血管の狭小化を抑制するとともに、留置ステント血管内面の血管内皮系細胞による内皮化を促進し、結果、遠隔期の再狭窄率を低減することが可能なステント及びその製造方法を提供することである。 【0006】 【課題を解決するための手段】生体組織中、血管などの内表面、つまり血液と接触する部分は内皮細胞と呼ばれる細胞層に覆われている。この内皮細胞はその表面がへパラン硫酸やトロンボモジュリンなどの抗子凝固作用物質で覆われることと、内皮細胞自体がプロスタグランジンやNO産生などの血小板の活性化を抑える物質を分泌し、また組織プラスミノーゲンアクチベーターの産生による線溶活性機能を発現するために、生体組織では血栓が抑止されている。PTCAによる狭窄部血管拡張ならび本部位へのステントの留置あるいは狭窄部への直接的なステントの留置による拡張(ダイレクトステンティング)においては、血管内皮細胞を含め血管損傷が発生する。ステント留置部の血管修復過程においては再内皮化、すなわち血管内皮細胞においてステントが覆われることが極めて重要な過程であるとされている。 【0007】血管内皮前駆細胞は、末梢血、骨髄等に存在し高い増殖能、血管内皮様機能ならびに血管内皮細胞を含む血管内皮系細胞への分化能を有する細胞である。これら特徴に着目し、心筋または末梢虚血組織における血管再生する細胞として虚血組織への移植による血管再生が検討されている。 【0008】ステントの少なくともその一部分に血管内皮前駆細胞あるいはそれから誘導される血管内皮細胞を播種することは、これら細胞から放出されるプロスタグランジン類、t−PAに代表される蛋白性因子、更にはNO(一酸化窒素)などの細胞調節因子により血栓形成、急性期閉塞を抑制する、又の血管平滑筋細胞増殖に代表される血管修復過程を制御することによる慢性期の血管肥厚、血管内腔狭窄を抑制することが期待される。また、少なくともその一部分に血管内皮前駆細胞あるいはそれから誘導される血管内皮細胞、または動静脈の血管内皮細胞を播種することは、これら細胞をシードとする増殖、分化により生体内留置ステントの内腔面の内皮化を促進することが期待される。 【0009】しかしながら、ステント上に細胞を播種することは一般には困難であり、特にステンレス等の金属又は生体適合性高分子から構成されるステントにおいては、ステントに細胞を播種・定着さらには増殖させることは極めて困難である。よって、本発明者らは鋭意研究の結果、ステント上にコーティング層を配置するか又は複数の微細孔が穿孔された薄膜の柔軟性ポリマー及び光照射によりゲル化する細胞接着性高分子からなる層を配置し、血管内皮前駆細胞を播種、培養することにより、少なくともその一部分に血管内皮前駆細胞ならびにそれから誘導される血管内皮細胞が配置されたことを特徴とするステントを提供するに至った。ステント上へのコーティング層の配置は、ステント構成するストラット表面上に細胞接着性高分子をコーティング又は細胞接着性高分子誘導体をコーティングした後、該高分子誘導体を架橋などによりゲル化又は硬化することにより実現される。複数の微細孔が穿孔された薄膜の柔軟性ポリマー及び光照射よりゲル化する細胞接着性高分子からなる層を配置は、複数の微細孔が穿孔された薄膜の柔軟性ポリマーに光照射によりゲル化する細胞接着性高分子を該薄膜の表面に塗布し、また、微細孔中を光照射によりゲル化する細胞接着性高分子を注入し、光照射によりゲル化することにより実現される。また、本発明で使用する血管内皮前駆細胞は、末梢血または臍帯血などから分離される血管内皮細胞に比べ、極めて高い増殖力を有するとともに、血管内皮細胞と同様に、プロスタグランジン、t−PA等の代表される血管内皮細胞由来因子を産生することより、血管内皮細胞と同様の抗血栓性の発現ならびに血管修復増殖過程の制御能を有している。血管内皮前駆細胞は、骨髄、末梢血又は臍帯血からから分離した単球画分を血管内皮前駆細胞の培養に好適な培養条件で培養し、コロニー形成する細胞として分離される。該血管内皮前駆細胞は、ステントストラット上にコーティング層が配置されたステント又は複数の微細孔が穿孔された薄膜の柔軟性ポリマー及び光照射によりゲル化する細胞接着高分子からなる層が配置されたステントとともに培養することにより、これら少なくともその一部分に播種される。 【0010】また血管内皮前駆細胞は、特定の誘導条件下で、より分化した血管内皮細胞へ誘導可能であり、本分化細胞が播種されたステントも血管内皮前駆細胞が播種されたステントと同様に、血栓形成抑制、急性期閉塞を抑制する、又の血管平滑筋細胞増殖に代表される血管修復過程を制御することによる慢性期の血管肥厚、血管内腔狭窄を抑制し、該分化誘導された血管内皮細胞が播種されたステントも本発明に含まれる。 【0011】また、血管内皮前駆細胞又はそれから誘導される血管内皮細胞は、プロスタグランジン合成酵素、NO−シンテターゼ、t−PA等の血管内皮細胞が産生する因子をコードする遺伝子の人為的に導入が可能であり、これら遺伝子が導入された細胞が播種されたステントも本発明に含まれる。 【0012】 【発明の実施形態】以下、本発明に係わるステントの実施形態について説明するが、本発明はこれに制限されるものではない。 【0013】本発明で使用されるステントは、バルーン拡張型、自己拡張型いずれのステントも使用される。またステント材料としては、生体適合性のある金属ステント又は高分子ステントのいずれも使用可能である。金属ステントとしては生体適合性が高い、ステンレス、チタン、タンタル、アルミニウム、タングステン、金、白金、ニッケルーチタン合金、クロム−アルミニウムーマンガン合金などが例示されるがこれらに限定されるものではない。また、金属ステントの表面が酸化チタン、炭素、ダイヤモンド様炭素などでコーティングが施されたもの又はイオンプレーティングにより表面処理されたものの使用できる。高分子ステントとしては、生体適合性であり適切な剛性かつ弾性を有する高分子素材で作製されたものであれば使用可能であり、高分子ステントには、ポリ乳酸、ポリグリコール酸に代表される生分解性ポリマーを素材として作製されたステントが含まれる。 金属性ステントとしては具体的には「パルマッツーシャッツ」の商標でジョンソン・エンド・ジョンソン メディカル株式会社から販売されているバルーン・エキスパンダブル・ステント、ACS社の「MULTI−LINK」ステント、クック社の「GR2」ステント、コーディス社の「BXvelocity」ステント、AVE社の「マイクロステント「S670」ステント」、自己拡張型ステントであるボストンサイエンティフィック社の「Wall」ステントが例示されるが、これらに限定されるものではない。 【0014】ステント上に配置されたコーティング層に前記細胞が播種されたステントはステントストラット上にコーティング層を配置し、本コーティング層に血管内皮前駆細胞又はこれら細胞から誘導された血管内皮細胞を播種、培養することによりステント表面に細胞が定着されたステントである。ステント上に配置されたコーティング層には、生体適合性であり、ステントストラット表面への接着性及びステント拡張時、コーティング層がステント追従性を有し、かつ血管内皮前駆細胞及びこれら細胞から誘導される血管内皮細胞が定着するものであれば特に限定されものではないが、ゼラチン、コラーゲン、フィブロネクチン、ラミニンに代表される細胞接着性蛋白質又はこれら蛋白質の断片の誘導体が使用され、望ましく、ゼラチン、コラーゲン、フィブロネクチン、ラミニンに代表される細胞接着性蛋白質又はこれら蛋白質の断片の誘導体からなる物理または化学的刺激によりゲル化する誘導体が使用される。更には、光照射によりゲル化するゼラチン、コラーゲン、フィブロネクチン、ラミニンに代表される細胞接着性蛋白質又はこれら蛋白質断片の誘導体の使用が好ましい。また、これら細胞接着蛋白質又は蛋白質断片の誘導体は、各々単独で使用してもよく、これらより任意に選択されたものを混合、組み合わせて使用してもよい。光照射によりゲル化する細胞接着性蛋白質誘導体の例としては、光官能基が導入されたゼラチン、コラーゲン、フィブロネクチン、ラミニンに代表される細胞接着性蛋白質が挙げられ、好ましい例としては、ベンゾフェノン基、ビニルが導入されたゼラチンが挙げられる。ベンゾフェノン基含有ゼラチンとしては、ベンゾフェノン化ゼラチン(松田 他 JBMR 1995)、ビニル基が導入されたゼラチンとしてはスチレン化ゼラチン(特開2001−224677)等が使用可能である。コーティング層は、金属ステントストラット表面上に十分に接着し、また、ステント拡張時にステントストラット接着性及び細胞接着性を有し、かつステントストラット厚の増加による血流障害等を生じない適宜厚みに調整可能であるが、好ましくは10−200μm厚、より好ましくは20−100μm厚である。 【0015】ステント上に配置された複数の微細孔が穿孔された薄膜の柔軟性ポリマー及び光照射によりゲル化する細胞接着高分子からなる層に前記細胞が播種されたステントは、レーザー光などを使用して多孔化した生体適合性の薄膜の高分子膜がステント血管内面又は血管壁面又はその両面に配置され、該薄膜表面がゼラチン、コラーゲン、フィブロネクチン、ラミニンに代表される細胞接着性蛋白質又はこれら蛋白質の断片の誘導体により被膜され、また該薄膜に形成されている微細孔がゼラチン、コラーゲン、フィブロネクチン、ラミニンに代表される細胞接着性蛋白質又はこれら蛋白質の断片の誘導体により充填される、本被膜層及び微細孔表面に血管内皮前駆細胞又はこれら細胞から誘導された血管内皮細胞を播種、培養することによりステント表面にこれら細胞が定着されたステントである。薄膜の柔軟性ポリマーとしては、該薄膜をかぶせたステントの拡張に追従するものであれば特に限定するものではなく、各種エラストマー系ポリマーを用いることができる。具体的には、ポリウレタンエラストマー、ポリエステルエラストマー、ポリアミドエラストマー、ポリエチレンエラストマー、ポリプロピレンエラストマー、ポリエチレンテレフタレートエラストマーがあげられるが、セグメント化ポリウレタン、ゴアテックスに代表されるe−PTFE、ダクロンに代表されるポリエステルから構成される膜が好ましく、更にはセグメント化ポリウレタンからなる薄膜が好ましい。また、該薄膜の柔軟性ポリマーがステント血管壁面に配置されたステントの具体例及び製造方法としては、特開平成11−299901記載のステント及びその製造方法が挙げられるが、これに限定されるものではない。次に、該薄膜の柔軟性ポリマーがステント血管壁面に配置されたステントを製造する製造方法を説明する。この製方法は、薄膜の柔軟性ポリマー用マンドリルのポリマー溶液への含浸、乾燥、穿孔及びマンドリルを抜き去ることによる薄膜の柔軟性ポリマーの作成、ステント本体の支持薄膜の柔軟性ポリマー内に気体を送り該薄膜の柔軟性ポリマーが十分に開いた状態での、ステントを装着したステント用マンドリルの該薄膜の柔軟性ポリマー内への挿入気体の送風を止め、該薄膜の柔軟性ポリマーを収縮させることによる薄膜の柔軟性ポリマーのステントの外周部への密着及びステント部分の該薄膜の柔軟性ポリマーの切り取り、ポリマーフィルムの薄膜の柔軟性ポリマーにより被膜されたステントの完成及びステント用マンドリルからステントの取り外しを含む一連の過程を有する。薄膜の柔軟性ポリマー用マンドリルはこの回りに薄膜の薄膜の柔軟性ポリマーを作るためにもちられるものであり、あらかじめ所望の太さを有し好適にはステンレスでできた円柱である。この太さは被膜されるステント本体と同一の直径かそれよりわずかに小さい直径を有する。薄膜の柔軟性ポリマー用マンドリルをポリマー溶液に含浸し、マンドリルの周囲全体にポリマーをコートした後マンドリルを引き上げる。コートされたポリマーは自然乾燥されるか又はポリマーの種類によっては冷風乾燥させることもできる。乾燥が終わった時点で、薄膜の柔軟性ポリマー用マンドリルでコートされたポリマーを保持したままレーザーで均一の間隔に微細孔を穿孔する。レーザーとしては、炭酸ガスレーザーまたはエキシマレーザーであればいずれも使用できるが、好ましくは、エキシマレーザーが平均出力が大きいので適切である。該レーザーはプローブ部分を薄膜の柔軟性ポリマー用マンドリルの周囲に移動させても、または複数のレーザーから同時にレーザーを発振させて微細孔を穿孔することもできる。いずれにしても、該レーザーの動きは予め設定したソフトプログラムで制御され、所望の間隔で所望の大きさの微細孔が製造されるが、50−500μm間隔で、5−500μmの直径を有するが好ましい。複数の微細孔が穿孔された薄膜の柔軟性ポリマーは、支持体を保持したまま薄膜の柔軟性ポリマー用マンドリルを抜き去ることで製造される。次に、ステント本体を装着した状態のステント用マンドリルを、薄膜の柔軟性ポリマーに挿入する。ステント本体を装着した状態のステント用マンドリルは特別に用意されるまでもない。というのは、通常ステント本体を製造する場合には、ステンレスなどの金属の円柱をステント用マンドリルに支持し、その金属円柱をレーザーエッチングの手法により不要な部分を切り出すことによって製造されるので、ステント本体製造工程からそのまま続いて本工程に入ることができる。そのような製造方法については、特公平4−6377号公報、特開平6−181993号公報に詳述されている。 【0016】ステント用マンドリル及びステント本体を該薄膜の柔軟性ポリマー内に挿入するには、薄膜の柔軟性ポリマー内に気体を送りこむことによって、該薄膜の柔軟性ポリマーが十分に開いた状態にすると挿入しやすい。微細孔を穿孔された薄膜の柔軟性ポリマーの場合には送風された気体が該微細孔から抜け出るので、常に薄膜の柔軟性ポリマーが十分に開いた状態になるし、同時に微細孔も十分に開かれるのでので好ましい。薄膜の柔軟性ポリマーの直径は好ましくはそれにより被膜されるステント本体の直径よりわずかに小さいように設定されているので、自明なように薄膜の柔軟性ポリマー内に気体を送りこむことを止めることによって、薄膜の柔軟性ポリマーが収縮してステント本体10の外周部に密着される。この際さらに加熱した気体を送ることによって、熱融着によってステント本体の外周部への密着を確実にしてもよい。次にステント部分の該薄膜の柔軟性ポリマーを切り取り不要なポリマーフィルムを取り去ると、薄膜の柔軟性ポリマーにより被膜されたステントができる。その後、ステント用マンドリルを抜きとると複数の微細孔が穿孔された薄膜の柔軟性ポリマーが配置されたステントが製造される。 【0017】本発明に使用されるコラーゲン、フィブロネクチン、ラミニンに代表される細胞接着性蛋白質又はこれら蛋白質の断片誘導体としては、光照射によりゲル化するゼラチン、コラーゲン、フィブロネクチン、ラミニンに代表される細胞接着性蛋白質又はこれら蛋白質断片の誘導体が好ましい。また、これら細胞接着蛋白質又は蛋白質断片の誘導体は、各々単独で使用してもよく、これらより任意に選択されたものを混合、組み合わせて使用してもよい。光照射によりゲル化する細胞接着性蛋白質の例としては、光官能基が導入されたゼラチン、コラーゲン、フィブロネクチン、ラミニンに代表される細胞接着性蛋白質が挙げられ、好ましい例としては、ベンゾフェノン基、ビニルが導入されたゼラチンが挙げられる。ベンゾフェノン基含有ゼラチンとしては、前記のベンゾフェノン化ゼラチン、ビニル基が導入されたゼラチンとしてはスチレン化ゼラチンが挙げられる。細胞接着性蛋白質又はこれら蛋白質の断片誘導体による被膜層については、また、ステント拡張時に薄膜の柔軟性ポリマー膜の進展に追従する及び細胞接着性を有し、ステント厚みの増加による血流障害等を生じない適宜厚みに調整可能であるが、好ましくは10−200μm厚、より好ましくは20−100μm厚である。 【0018】ステント上に配置されたコーティング層を有するステント又はステント上に配置された複数の微細孔が穿孔された薄膜の柔軟性ポリマー及び光照射によりゲル化する細胞接着高分子からなる層を有するステントは、コーティング層または細胞接着高分子からなる層に血管内皮前駆細胞が播種、培養されることにより本発明に係わるステントが調整される。 【0019】本発明に使用される血管内皮前駆細胞は、骨髄、末梢血又は臍帯血から分離されたものが使用される。骨髄、末梢血としては、ステントを留置する患者の自己由来のものが望ましいが、主要抗原適合性が確認された他家由来の骨髄または末梢血または臍帯血由来のものも使用される。好ましくは、表面抗原CD34+,FLk−1陽性細胞である血管内皮前駆細胞が使用され、更に好ましくは、前記表面抗原を有し、骨髄、末梢血又は臍帯血から、フィコール密度勾配分離により単離された単核球画分を血管内皮前駆細胞に好適な培養条件において培養、分離された血管内皮前駆細胞が使用される。該血管内皮前駆細胞は、前記方法により調整されたステント上にコーティングが配置された又は複数の微細孔が穿孔された薄膜の柔軟性ポリマー及び光照射によりゲル化する細胞接着性高分子からなる層を配置されたステントとともに血管内皮前駆細胞を好適な条件下培養し、血管内皮前駆細胞をステント上に播種する。培養条件は、血管内皮前駆細胞が定着、増殖するものであれば、特に限定するものではないが、好ましくは蛋白性因子,酵素、ビタミン類、ステロイド類などを添加して培養する。添加物質としては、酸性繊維芽細胞増殖因子(aFGF)、塩基性繊維芽細胞増殖因子(bFGF)、血管内皮増殖因子(VEGF)、表皮増殖因子(EGF)、インスリン様成長因子(IGF)、トランスフォーミング増殖因子α及びβ(TGF−α及びTGF−β)、血小板由来内皮増殖因子(PD−ECGF)、血小板由来増殖因子(PDGF)、腫瘍壊死因子α(TNF−α)、肝細胞増殖因子(HGF)、インスリン様増殖因子(IGF)、エリスロポエチン、コロニー刺激因子(CSF)、マクロファージ−CSF(M−CSF)、アンジオポエチン−1(Ang1)等の蛋白性因子、NOシンターゼ(NOS)等の酵素龍、アスコルビン酸等のビタミン類もしくはハイドロコーチゾン等のステロイド類、またはそれらの断片又は誘導体の使用が例示される。これら添加物質またはそれらの断片又は誘導体は、単独で又は複数を組み合わせ使用することができる。ステント上に配置された複数の微細孔が穿孔された薄膜の柔軟性ポリマー及び光照射によりゲル化する細胞接着高分子からなる層に前記細胞が播種されたステントは、前記の方法により分離・培養された血管内皮前駆細胞がステント血管壁面に播種され、培養することにより、薄膜上の皮膜層または細胞接着性素材が充填された細孔内に血管内皮前駆細胞又はこれら細胞から分化誘導される血管内皮細胞が被膜又は植え込まれる。また、上記血管内皮前駆細胞に代わり、公知方法により(Shi Q et al. Blood 92, 362, 1998)本細胞から誘導された血管内皮細胞も同様に使用される。更には、コーティング層または細胞接着高分子からなる層に血管内皮前駆細胞が播種された本発明に係わるステントを前述の公知の方法により血管内皮細胞が播種されたステントに誘導される。 【0020】これら血管内皮前駆細胞から誘導された血管内皮細胞が播種されたステントは、血栓形成抑制、急性期閉塞を抑制する、又の血管平滑筋細胞増殖に代表される血管修復過程を制御することによる慢性期の血管肥厚、血管内腔狭窄を抑制し、本発明に含まれる。 【0021】本発明に係わる血管内皮前駆細胞又はこれら細胞から誘導された血管内皮細胞が播種されたステントは、プロスタグランジン合成酵素、NO−シンテターゼ、t−PA等の血管内皮細胞が産生する因子をコードする遺伝子の人為的に導入することが可能である。これら所望遺伝子の導入は公知の遺伝子導入方法により実現される(Boyer M et al. J. Vasc. Surg. 31, 181, 2000)、これら所望遺伝子が導入された血管内皮前駆細胞またはこれらから誘導されるステントも本発明に含まれる。 【0022】本発明に係わるステントは拡張型ステントを使用した場合にはバルーンカテーテルに装着し、PTCA術により拡張された血管部位またはダイレクトステンティングの為に、血管狭窄部位にデリバリーされ拡張・留置される。また、自己拡張型ステントを使用した場合には、保護スリーブ中に格納し、留置部位までデリバリーしたのち保護スリーブをから抜きだし使用する。 【0023】以下ベンゾフェノン化ゼラチンの使用を例として、より具体的に本発明を説明するが、これに限定されるものではない。 【0024】実施例1金属性ステントをベンゾフェノン化ゼラチン(MW 95000、導入量 12.1個/ 1ゼラチン分子)の2w%水溶液に浸漬し、本水溶液から取りだし、30分程乾燥させたのち、紫外線発生装置(浜松ホトニックス社、Photocure 200)により紫外光(270nm, 10分)照射させ金属ステントストラット表面上でゲル化させる。本工程を3回繰り返し、ステントストラット表面上にゲル化ベンゾフェノンゼラチンコーティング層を形成する。次に上記方法に代表される方法により作製されたステントに骨髄、末梢血等に由来する血管内皮前駆細胞を播種する。ここで使用される骨髄、末梢血は、ステントを留置する患者の自己由来のものが望ましいが、主要抗原適合性が確認された他家由来の骨髄または末梢血または臍帯血由来のものが使用される。患者自己末梢血を使用を例にとり、より具体的説明する。患者静脈より末梢血100mlを採取し、フィコール密度勾配遠心分離により単核球画分(細胞数 約1×108個)を分離取得する。本単核球成分を培養液(EBM−2,クロネティックス社),に分散し、本分散液をフィプロネクチンがコートされた細胞培養皿に播種、クロネティックス社ブレットキットEGM−2MVを添加し1時間培養し、非接着細胞を培養液により洗浄・除去する。接着細胞をフィブロネクチンコートされた培養皿に播種し、敷石状コロニーが形成されるまで培養する。培養開始後18日目、敷石状コロニー形成した細胞を分離し、表面抗原として、CD34+, FLk−1陽性細胞である血管内皮前駆細胞を分離した。上記方法で分離されたCD34陽性、FLK−1陽性細胞を培養液(クロネティックス社製 EBM−2+EBM−2MVブレットキット)に懸濁し、4×106細胞/mlの濃度に調整する。本培養液をベンゾフェノン化ゼラチンの光硬化ゲルで表面コートされたステントを静置した培養皿に注入し、1時間細胞培養器内にて37℃、5%二酸化炭素の条件に維持する。1時置後、長軸方向に120℃回転させ、同様の工程を繰り返す。計3回同工程を繰り返すことにより、血管内皮前駆細胞により表面皮膜されたステントを得た。本工程で調整された本発明に係わるステントは、そのストラット表面に血管内皮前駆細胞が定着している。緑色蛍光ラベルした細胞播種後4日目のステント外表面写真(共焦点レーザー顕微鏡写真)が図1および図2であり、図1は倍率20倍、図2は倍率100倍である。また、本ステントをバルーンカテーテルに装着し、ポリテトラフルオロエチレン製疑似血管内で拡張し、本血管は軸方向に切断し、ステント内腔面を観察した。図3に示す様に、バルーン装着更には拡張後もステント内腔面には十分な細胞量が定着・保持されていることが確認された。 【0025】実施例2薄膜のセグメント化ポリウレタンポリマーフィルムはテトラハイドロフランとジオキサンの混合溶液にCapdiomat(商標)SPU:セグメント化ポリウレタン(Kontoron CardiovascularInc.製)の10重量%溶液にガラスのマンドリルを含浸させた後空冷して、厚み100μmの円筒状SPUフィルムを調製した。このSPUフィルムにエキシマレーザーにより例えば直径100μmの穴を200μmの間隔で略均一に穿けた。長軸方向に一列穴を穿けた後、SPUフィルムを円周上に例えば15°ずつ回転させ全周上で24列の穴を穿けた。この穴穿は、浜松フォトニクス社製モデルL4500のレーザー装置を用いて行った。作成した円筒SPUの表面及び細孔部にベンゾフェノンゼラチン溶液を塗布または充填し、紫外線発生装置(浜松ホトニックス社、Photocure 200)により紫外光(270nm, 10分)照射させSPUフィルム上及びまたは細孔内でゲル化させる。本ゲル化処理を施したステントを実施例1と同様に血管内皮前駆細胞を播種、培養した。本ステントは、SPU膜上に形成されたゲル層上血管内皮前駆細胞が定着しており、また細孔中のゲル層にも同種細胞が植え込まれている。 【0026】 【発明の効果】本発明者により提供されるステントは、ステントの少なくとも一部に血管内皮前駆細胞、血管内皮様細胞或いは血管内皮細胞が播種されており、これら細胞によるステント留置部における抗血栓性の実現ならびにステントの再内皮化促進により、血栓形成によって生じる血管閉塞、機械的な血管損傷による慢性期における血管壁肥厚,内腔狭窄の発生を低減する。
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| 【出願人】 |
【識別番号】300090835 【氏名又は名称】松田 武久 【識別番号】000000941 【氏名又は名称】鐘淵化学工業株式会社
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| 【出願日】 |
平成14年4月15日(2002.4.15) |
| 【代理人】 |
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| 【公開番号】 |
特開2003−305124(P2003−305124A) |
| 【公開日】 |
平成15年10月28日(2003.10.28) |
| 【出願番号】 |
特願2002−112075(P2002−112075) |
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