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【発明の名称】 医療用セラミック被覆針の製造方法
【発明者】 【氏名】井口 征夫
【住所又は居所】千葉県千葉市中央区川崎町1番地 川崎製鉄株式会社技術研究所内

【要約】 【課題】採取した組織片および病変部に刺した穿刺針のまわりの細胞に何ら悪影響を及ぼすことのない、絶縁性に極めて優れた医療用セラミック被覆針を提供する。

【解決手段】金属製の針の外表面および内表面に、抵抗率ρが105 Ω・m 以上の絶縁性のセラミック被膜をマグネトロン・スパッタ法を用いて被成するに際し、スパッタ・ターゲットとして、Al,BおよびSiの窒化物、炭化物または酸化物のうちから選んだ少なくとも一種を用い、かつ該ターゲットの周囲に高プラズマ雰囲気形成用の磁石およびRF装置を配置して異常放電を防止しつつ、上記した絶縁性セラミック被膜を被成する。
【特許請求の範囲】
【請求項1】 金属製の針の外表面の一部または全面ならびに内表面の針先端部から少なくとも1mm内部にわたって、抵抗率ρが105 Ω・m 以上の絶縁性のセラミック被膜をマグネトロン・スパッタ法を用いて被成するに際し、スパッタ・ターゲットとして、Al,BおよびSiの窒化物、炭化物または酸化物のうちから選んだ少なくとも一種を用い、かつ該ターゲットの周囲に高プラズマ雰囲気形成用の磁石およびRF装置を配置して異常放電を防止しつつ、上記した絶縁性セラミック被膜を被成することを特徴とする医療用セラミック被覆針の製造方法。
【請求項2】 請求項1において、上記のスパッタ・ターゲットを2基設置し、Wカソード方式により絶縁性セラミック被膜を被成することを特徴とする医療用セラミック被覆針の製造方法。
【請求項3】 請求項1または2において、上記金属製針を、蒸着粒子の進行方向に平行に、かつ該金属製針の先端部を進行してくる蒸着粒子に対向して設置することを特徴とする医療用セラミック被覆針の製造方法。
【請求項4】 請求項1,2または3において、マグネトロン・スパッタ工程の初期段階は、反応ガスの供給を停止しておくことを特徴とする医療用セラミック被覆針の製造方法。
【発明の詳細な説明】【0001】
【発明の属する技術分野】本発明は、主として注射針や肝生検・腎生検用の穿刺針としての用途に供して好適な医療用セラミック被覆針の製造方法に関するものである。そして、本発明の医療用セラミック被覆針は、その使用に際して従来懸念された生体組織や細胞に対する悪影響を完全に払拭したものである。
【0002】
【従来の技術】近年の医療技術の進歩は目ざましく、例えば肝臓や膵臓等の検査においては、患者の血液検査では得られないデータを得るために、エコーを利用した超音波検査や、CT(コンピューター断層撮影)検査、強い磁気と電波を使用して各種臓器の断面像を映し出すMRI(磁気共鳴画像)検査、細い管(カテーテル)を介して造影剤を注入し、血管の状態を画像化する血管造影検査等が広く用いられている。
【0003】これらの血液検査や各種画像診断によって、ガン等の病巣の存在は診断できるが、確定診断のためには、肝生検等により病変部の病理組織学的な検査が必要となる。通常、かような検査においては、特殊な穿刺針を直接病変部に刺して組織片を採取する方法が採用されている。
【0004】しかしながら、現行の穿刺針を用いた場合、針の基材が電気的特性に優れた導体金属(抵抗率ρ:10-6〜10-8Ω・m)であることから、病変部から採取した組織片や病変部に刺した穿刺針のまわりの細胞に悪影響を及ぼすことが指摘されている。
【0005】この点、セラミック製の穿刺針(以下、単にセラミック穿刺針あるいはセラミック針と呼ぶ)を使用すれば、採取した組織片や病変部に刺した穿刺針のまわりの細胞に悪影響を及ぼさないと考えられる。しかしながら、セラミック穿刺針やセラミック針は、非常に脆く、折れ易いため、現在では全く使用されていない。
【0006】上記の問題を解決するものとして、発明者らは、先に、「金属製の針の表面の一部または全面に、抵抗率ρが105 Ω・m 以上の絶縁性のセラミック被膜を有することを特徴とする医療用セラミック被覆針」を開発し、特願2002−12863 号明細書において開示した。上記の技術の開発により、使用中に折損などが生じることがなく、また病変部に刺した穿刺針のまわりの細胞に悪影響を及ぼすことなしに、組織片を採取することができるようになった。
【0007】上記の発明の開発に際し、発明者らは、まず、採取した組織片や病変部に刺した穿刺針のまわりの細胞に悪影響を及ぼすことのない穿刺針として、通常の金属製の穿刺針の表面にセラミック膜を被成することを考えた。しかしながら、穿刺針のような極めて細い円筒体の表面にセラミック膜を被成したとしても、その密着性が悪ければ、使用時にセラミック膜が剥落して、所期した目的を達成することができない。特に、穿刺針や注射針などは、その使用に際してある程度撓むことが避けられないので、剥落の危険性は極めて大きい。
【0008】例えば、特公平6−20464 号公報には、医療用メスの表面にダイヤモンド膜をコーティングすることによって、切開時の摩擦抵抗を小さくした医療用切開・圧入器具が提案されている。しかしながら、上記のダイヤモンド膜は、基板を 500〜1300℃に加熱して形成するものであって、基板とダイヤモンド膜との熱膨張差が大きいために、ダイヤモンド膜が剥離し易いという問題があり、本発明で対象とする穿刺針等には適用することができない。
【0009】ところで、最近、発明者らにより、フェライト系ステンレス鋼板上に薄いTiNセラミック膜をプラズマ・コーティングした後、 180°曲げ変形による塑性加工を加えた場合において、TiNセラミック膜はクラック発生位置で金属のような凹状の独特の形態をして局所的な伸びを示す新事実が解明された〔井口征夫:2001年度国際写真展受賞作品参照(米国、インディアナポリス、2001. 11/5〜8.jointly IMS (International Metallographic Society)and ASM (American Society of Metals)〕。この現象は、非常に脆いとされるセラミック膜についても金属と同様に塑性加工において伸びが生じて、加工処理が可能であることを示唆している。
【0010】そこで、発明者らは、早速、上記した高真空中・高プラズマ雰囲気中でのセラミックコーティング法を用いて、ステンレス鋼製の穿刺針の表面にTiNセラミック膜の被成を試みた。その結果、得られたTiNセラミック膜は穿刺針に対する密着性が極めて良く、多少の撓みでは剥離が生じないことが確認された。
【0011】しかしながら、このTiNセラミック膜を被覆した穿刺針を用いた場合、従来の金属製穿刺針ほどではないにしても、採取した組織片や病変部に刺した穿刺針のまわりの細胞に対する悪影響を完全に払拭することはできなかった。
【0012】そこで、さらにこの点を解決すべく鋭意検討を重ねた結果、被覆用セラミックとしては、セラミックであれば何でも良いというわけではなく、抵抗率ρが大きい絶縁体材料である必要があることが究明された。
【0013】図1に、ステンレス製基体の表面に抵抗率ρが種々に異なるセラミック膜を被成した穿刺針を用いた場合に、生体組織に及ぼす影響について調べた結果を、抵抗率ρと組織損傷度(TDD:Texture Damage Degree ; 顕微鏡観察による病理学的検査) との関係で示す。なお、上記のTDDが0.40以下、好ましくは0.35以下であれば、生体組織に及ぼす悪影響はないといえる。同図に示したとおり、被覆用セラミックとして、抵抗率ρが105 Ω・m 以上のものを用いることにより、TDDが0.40以下の良好な結果を得ることができた。なお、図中、抵抗率ρが7×10-6のものはセラミックの被覆がないステンレス製の穿刺針、また抵抗率ρが3×104 のものはセラミックとしてTiNを被覆した穿刺針である。
【0014】かくして、発明者らは、前掲特願2002−12863 号明細書に開示した「金属製の針の表面の一部または全面に、抵抗率ρが105 Ω・m 以上の絶縁性のセラミック被膜を有することを特徴とする医療用セラミック被覆針」を開発したのである。
【0015】上記の発明は、高真空中・高プラズマ雰囲気中でのセラミックコーティング法を採用することによって、細部加工した金属製針と絶縁性を有するセラミック薄膜との密着性を強固にしたものである。すなわち、上記の発明は、鉄マトリックスとセラミック膜の混合層を介して複合構造(傾斜機能性をも含めて)を形成させ、かつそれぞれの持つ性能を巧みに利用したところに特徴がある。
【0016】しかしながら、上記のセラミック被覆穿刺針を使用した場合であっても、採取した組織片に悪影響が生じる場合があった。すなわち、上記の穿刺針の外表面は絶縁性セラミックで被覆されているので、病変部に刺した穿刺針のまわりの細胞については何ら損傷を受けることはなかったのであるが、上記穿刺針の内部はかような絶縁性セラミックで必ずしも被覆されているとは限らないので、採取した組織片が金属面との接触により、悪影響が生じる場合があったのである。
【0017】そこで、発明者らは、上記の問題を解決すべくさらに研究を重ねた結果、ドライプレーティング法によってセラミック被膜を被成するに際し、被処理材である金属製針の設置状態に工夫を加えることによって、上記の問題が有利に解決できることの知見を得た。すなわち、「金属製の針の少なくとも先端部に、ドライプレーティング法によってセラミック被膜を被成するに際し、該金属製針を、蒸着粒子の進行方向に平行に、かつ該金属製針の先端部を進行してくる蒸着粒子に対向して設置すること」によって、所期した目的が有利に達成されることを見出し、特願2002−45894号明細書において開示した。
【0018】
【発明が解決しょうとする課題】本発明は、上記した特願2002−45894 号明細書に開示の製造技術の改良に係るもので、金属製の針に対するセラミック被膜の絶縁性をより一層向上させることにより、病変部に刺した穿刺針のまわりの細胞については勿論のこと、採取した組織片そのものについても何らの悪影響を及ぼすことのない、医療用セラミック被覆針の有利な製造方法を提案することを目的とする。
【0019】
【課題を解決するための手段】すなわち、本発明の要旨構成は次のとおりである。
1.金属製の針の外表面の一部または全面ならびに内表面の針先端部から少なくとも1mm内部にわたって、抵抗率ρが105 Ω・m 以上の絶縁性のセラミック被膜をマグネトロン・スパッタ法を用いて被成するに際し、スパッタ・ターゲットとして、Al,BおよびSiの窒化物、炭化物または酸化物のうちから選んだ少なくとも一種を用い、かつ該ターゲットの周囲に高プラズマ雰囲気形成用の磁石およびRF装置を配置して異常放電を防止しつつ、上記した絶縁性セラミック被膜を被成することを特徴とする医療用セラミック被覆針の製造方法。
【0020】2.上記1において、上記のスパッタ・ターゲットを2基設置し、Wカソード方式により絶縁性セラミック被膜を被成することを特徴とする医療用セラミック被覆針の製造方法。
【0021】3.上記1または2において、上記金属製針を、蒸着粒子の進行方向に平行に、かつ該金属製針の先端部を進行してくる蒸着粒子に対向して設置することを特徴とする医療用セラミック被覆針の製造方法。
【0022】4.上記1,2または3において、マグネトロン・スパッタ工程の初期段階は、反応ガスの供給を停止しておくことを特徴とする医療用セラミック被覆針の製造方法。
【0023】
【発明の実施の形態】以下、本発明を具体的に説明する。図2に、本発明のセラミック被覆針の製造に用いて好適なマグネトロン・スパッタ装置を模式で示す。また図3(a) には、素材である金属製穿刺針の設置形態を、同図(b) には、セラミック膜被覆後の穿刺針の先端部を拡大断面で示す。図中、番号1は真空槽、2は試料ホルダー、そして3が金属製の穿刺針である。また、4は、SiO2粉の焼結体からなる絶縁性のスパッタ・ターゲットである。5はマグネット、6はこれらの間に介挿された銅板、7はその水冷管である。さらに、8は反応ガスの装入口、9は蒸着粒子(主にイオン化したSi粒子で、一部SiO2粒子を含む)、10はRF(Radio Frequency)装置、11はRF装置の電源、12は高プラズマ雰囲気形成用の磁石である。なお、13は穿刺針3の固定治具、そして14, 15が穿刺針3の外表面および内表面にそれぞれ被成されたセラミック膜である。
【0024】図2に示したところにおいて、蒸着粒子(主にイオン化したSi粒子)9は、試料ホルダー2で固定した金属製穿刺針3に対して直進する間に、反応ガスであるO2ガスと反応し、SiO2として穿刺針3の表面に蒸着することになる。なお、ターゲットから出る蒸発粒子は全てがイオン化したSi粒子ではなく、一部はSiとO2に分離せず、そのままSiO2粒子の状態で金属製穿刺針3に付着する。本発明では、上記したようにSiO2などの絶縁体をターゲットとして使用し、またかかるターゲットの周囲に高プラズマ雰囲気形成用磁石およびRF装置を配置することによって、異常放電を発生することなしに高プラズマ雰囲気の達成が可能となるので、密着性を損なうことなしに、絶縁性に極めて優れた穿刺針の製造が可能になるのである。
【0025】また、本発明では、絶縁性のスパッタ・ターゲットを2基設置し、これらを交互に放電させるWカソード方式とすることにより、より効果的にターゲット表面における異常放電の発生を防止することができ、また高速成膜も併せて達成することができる。
【0026】さらに、本発明では、図3(a) に示すように、SiO2セラミックの被成に際し、穿刺針3を、蒸着粒子9の進行方向に平行に、かつこの穿刺針3の先端部を進行してくる蒸着粒子に対向させて設置することが有利である。というのは、このような設置形態とすることにより、蒸着粒子9が穿刺針3の内部まで効果的に侵入・付着して、図3(b) に示したように、外表面についてはもとより、内表面についても絶縁性のセラミック膜15が効果的に被覆されるのである。
【0027】ここに、穿刺針の外表面に対するセラミック膜の被覆は、必ずしも針の全面に施す必要はなく、少なくともその使用に際して生体組織と接触する領域が被覆されていれば良い。この点については、穿刺針の内表面も同様で、針先端部(開口部の根元)から内部にわたって(図3(b) にhで示す領域)少なくとも1mmだけはセラミック膜で被覆する必要がある。というのは、穿刺針の内表面について、少なくとも1mm内部にわたって絶縁性セラミック膜を被覆しないと、採取した組織片に悪影響が生じる場合があるからである。好適には、針先端部(開口部の根元)から3〜10mm程度内部にわたってセラミック膜を被覆することが好ましい。
【0028】また、本発明では、針の表面にセラミックを被成するので、針の基材としては金属材料であれば何でも使用可能であるが、特に好ましくはステンレス鋼である。というのは、ステンレス鋼は、表面が錆びず、かつ精密加工処理が容易だからであり、とりわけフェライト系ステンレス鋼が有利に適合する。
【0029】例えば、ステンレス鋼によって穿刺針の基体を製造する場合、ステンレス鋼素材を、連続鋳造し、熱間圧延−冷間圧延−光輝焼鈍を行った後、精密加工により外径:0.05〜2.5 mm、長さ:100 〜250 mm程度の目的に応じた種々の針形状に加工処理する。なお、この際の処理工程は、従来技術に従って行えば良い。
【0030】ついで、得られた針の表面を、超音波洗浄や電解研磨等によって清浄にしたのち、上記のようにしてセラミック膜を被成するわけであるが、かようなセラミックとしては、抵抗率ρが105 Ω・m 以上の絶縁性セラミックを用いることが重要である。というのは、抵抗率ρが105 Ω・m 未満のセラミックでは、採取した組織片や病変部に刺した穿刺針のまわりの細胞に対する悪影響を完全に払拭することができないからである。
【0031】ここに、かかる絶縁性セラミックを得るためのスパッタ・ターゲットとしては、Al,BおよびSiの窒化物、炭化物または酸化物のうちから選んだ少なくとも一種がとりわけ有利に適合し、かような窒化物、炭化物または酸化物を用いることにより、確実に抵抗率ρが105 Ω・m 以上の絶縁性セラミックを得ることができる。
【0032】なお、本発明では、上記したように、絶縁物をターゲットとして使用するので、通常の金属・半金属のターゲットを使用した場合よりも、基材との密着性は若干劣るものの、金属・半金属のターゲットを使用し途中で反応性のセラミック膜を得る方法よりも、絶縁性に格段に優れたセラミック膜を得ることができる。
【0033】かかるセラミック膜の被覆厚みについては、0.05〜5.0 μm とすることが好ましい。というのは、セラミック膜厚が0.05μm に満たないと十分な絶縁性の確保が困難であり、一方セラミック膜厚が 5.0μm を超えると、セラミック膜とマトリックスとの密着性の確保が困難になるだけでなく、コーティングによるコストアップを招くからである。
【0034】さらに、上記のようなセラミック膜の被覆方法として、本発明では、セラミック膜の制御が容易で、かつコーティングが容易なマグネトロン・スパッタ法を用いるものとした。また、その場合に、異常放電の防止と高プラズマ雰囲気中でのコーティングを安定して行うために、カソードの周囲あるいは上部に高プラズマ雰囲気形成用磁石を配置すると共にRF装置を設置することが必須要件とする。この時、スパッタ・ターゲットを2基設置し、これらを交互に放電させるいわゆるWカソード方式とすれば、より効果的に異常放電の発生を防止することができる。
【0035】ここに、マグネトロン・スパッタ法による、セラミック膜の好適被覆条件は次のとおりである。例えば、SiO2コーティングを行うためには、焼結したSiO2ターゲットを使用し、また SiNX コーティングを行うためには、焼結した SiNX ターゲットを使用すれば良い。このような場合には、投入パワー:5〜50 kW 、真空度:0.8 ×10-4〜3×10-3Torr、Arガス流量:50〜500 sccm、反応ガス(O2ガスやN2ガスなど)流量:50〜2000sccm程度が最適条件である。なお、絶縁性のターゲットを使用し、かつ反応ガスを流しながら、全ての粒子を窒化物や炭化物、酸化物の形態で被覆した場合には、基材である針との密着性が金属ターゲットを使用してイオン化粒子の状態で被覆した場合に比べると若干劣化するので、コーティングの初期段階ではO2やN2などの反応ガスを供給せずに、幾分イオン化粒子が存在する状態でコーティングを行うことが、密着性の劣化を防止する上でより有利である。
【0036】なお、本発明で対象とする針は、前述した穿刺針や注射針に限るものではなく、造影剤注入用の造影針など、生体に刺して用いる中空の医療用針であればいずれもが適合する。
【0037】上述したとおり、本発明では、絶縁性に優れたセラミック被膜を被成するために、ターゲットとして金属材料を使用せず、SiO2焼結体のようなセラミック絶縁材料を使用し、かつカソードの周囲に高プラズマ雰囲気形成用磁石とRF装置を設置することによって、異常放電のない良好なプラズマ雰囲気中で絶縁性に優れたセラミック・コーティングを行うところに特長がある。
【0038】
【実施例】C:0.033 mass%, Si:0.3 mass%, Mn:0.13mass%, P:0.009 mass%, S:0.011 mass%およびCr:17.9mass%を含有し、残部はFeおよび不可避的不純物の組成になるフェライト系ステンレス鋼素材を、連続鋳造し、熱間圧延−冷間圧延−光輝焼鈍を行った後、精密加工により外径:0.9 mm、内径:0.75mm、長さ:230 mmの穿刺針を作成した。ついで、この穿刺針を超音波洗浄した後、図2に示したマグネトロン・スパッタ装置を用いて高プラズマ雰囲気中で種々のセラミック膜を成膜した。この時、穿刺針の設置状態は、図2の場合と同じとし、またスパッタ・ターゲットとしては表1に示す種々のものを用いた。特に表1中のNo.2およびNo.3についてはWカソード方式を利用した。なお、このマグネトロン・スパッタ法によるセラミック膜の被覆領域は、外表面については針の先端部から50〜80mm程度、内表面については針の先端部(開口部の根元)から5〜8mm程度であった。
【0039】かくして得られたセラミック被覆穿刺針におけるセラミック膜の密着性および絶縁性(抵抗率ρ)について調べた結果を、表1に併記する。ここに、セラミック膜の密着性は、別途用意したステンレス鋼板の表面に、同様の方法でセラミック膜を成膜したセラミック被覆鋼板を、種々の径の棒材に巻付け、被膜剥離が生じなかった最小径で評価した。
【0040】
【表1】

【0041】同表に示したとおり、本発明に従い得られたセラミック被覆針は、絶縁性に極めて優れ、また被膜密着性も良好であった。
【0042】
【発明の効果】かくして、本発明によれば、採取した組織片や病変部に刺した穿刺針のまわりの細胞に悪影響を全く及ぼすことのない、絶縁性に極めて優れた医療用セラミック被覆針を、安定して製造することができる。
【出願人】 【識別番号】000001258
【氏名又は名称】JFEスチール株式会社
【住所又は居所】東京都千代田区内幸町二丁目2番3号
【出願日】 平成14年4月16日(2002.4.16)
【代理人】 【識別番号】100072051
【弁理士】
【氏名又は名称】杉村 興作
【公開番号】 特開2003−305121(P2003−305121A)
【公開日】 平成15年10月28日(2003.10.28)
【出願番号】 特願2002−112764(P2002−112764)