| 【発明の名称】 |
遺伝子細胞治療剤 |
| 【発明者】 |
【氏名】福田 恵一
【氏名】澤 芳樹
【氏名】中村 敏一
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| 【要約】 |
【課題】
【解決手段】目的疾患治療用遺伝子及び細胞死誘導剤の標的遺伝子を発現可能に保持してなる細胞を含有する遺伝子細胞治療剤;並びに当該細胞と細胞死誘導剤を組み合せてなる遺伝子細胞治療剤キット。 |
【特許請求の範囲】
【請求項1】 目的疾患治療用遺伝子及び細胞死誘導剤の標的遺伝子を発現可能に保持してなる細胞を含有する遺伝子細胞治療剤。 【請求項2】 目的疾患治療用遺伝子が、目的疾患治療用タンパク全長をコードするDNA、及び目的疾患治療用タンパク部分長をコードするDNAから選ばれる遺伝子である請求項1記載の治療剤。 【請求項3】 目的疾患治療用遺伝子が、細胞増殖因子及びサイトカインから選ばれるタンパクをコードするDNAである請求項1又は2記載の治療剤。 【請求項4】 細胞死誘導剤の標的遺伝子が、抗ウイルス剤の標的遺伝子、抗癌剤の標的遺伝子及びアポトーシス促進剤の標的遺伝子から選ばれる遺伝子である請求項1〜3のいずれか1項記載の治療剤。 【請求項5】 目的疾患治療用遺伝子及び細胞死誘導剤の標的遺伝子を発現可能に保持してなる細胞、並びに細胞死誘導剤を組み合せてなる遺伝子細胞治療剤キット。
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【発明の詳細な説明】【0001】 【発明の属する技術分野】本発明は、治療効率が高く、かつ遺伝子療法の制御が可能な遺伝子細胞治療剤に関する。 【0002】 【従来の技術及び発明が解決しようとする課題】遺伝子治療には、患者の細胞を採取して、体外で目的疾患治療用遺伝子を導入した後、再移植する手法(ex vivo法)と、遺伝子直接導入法(直接法)とがある。このうち、直接法は、ex vivo法に比べて簡便性、普遍性等の利点を有することから、開発がさかんに行われている。しかし、プラスミドベクターやウイルスベクターは、体内における標的細胞へのトランスフェクション効率が低く、遺伝子発現が制御できない等の欠点がある。 【0003】これに対し、ex vivo法は、目的遺伝子の発現効率は高いものの、自家移植が原則であることから、細胞の調製に長い時間と多額の経費を要すること、免疫拒絶反応を抑制する必要があること、また一旦移植した細胞の増殖を制御ができない等の欠点がある。 【0004】 【課題を解決するための手段】従って、本発明の目的は、ex vivo法による遺伝子治療の欠点を改善すること、すなわち、遺伝子発現効率が高く、かつ治療後の細胞を制御でき、自家移植を必要としない遺伝子細胞療法を提供することにある。 【0005】 【課題を解決するための手段】そこで本発明者は、種々検討した結果、一つの細胞に目的疾患治療用遺伝子及び細胞死誘導剤の標的遺伝子をトランスフェクションし、これらの両遺伝子が発現可能に保持された細胞を用いれば、移植後の目的疾患治療用遺伝子の発現効率が原則として100%であることから治療効率が高く、治療終了後に細胞死誘導剤を投与すれば当該細胞の死滅を誘導可能であり、複数回の投与を行わなければ、自家移植によらなくとも免疫拒絶反応が生じないことから異種移植も可能になることを見出し、本発明を完成するに至った。 【0006】すなわち、本発明は、目的疾患治療用遺伝子及び細胞死誘導剤の標的遺伝子を発現可能に保持してなる細胞を含有する遺伝子細胞治療剤を提供するものである。また、本発明は、目的疾患治療用遺伝子及び細胞死誘導剤の標的遺伝子を発現可能に保持してなる細胞、並びに細胞死誘導剤を組み合せてなる遺伝子細胞治療剤キットを提供するものである。さらに、本発明は、目的疾患治療用遺伝子及び細胞死誘導剤の標的遺伝子を発現可能に保持してなる細胞を、ヒトを含む動物に投与し、目的疾患治療用遺伝子発現後細胞死誘導剤を投与することを特徴とする遺伝子細胞治療法を提供するものである。 【0007】 【発明の実施の形態】本発明に用いられる細胞は、目的疾患治療用遺伝子と細胞死誘導剤の標的遺伝子とを発現可能に保持してなる細胞である。ここで、目的疾患治療用遺伝子としては、目的疾患治療用タンパク全長をコードするDNA、目的疾患治療用タンパク部分長をコードするDNA等が挙げられる。 【0008】ここで目的疾患治療用タンパクとしては、細胞増殖因子、サイトカイン等が挙げられる。ここで、サイトカインには、ケモカインも含まれ、その例としては、腫瘍壊死因子(TNF)、インターロイキン類、リンホカイン、GCSF、MCSF、GMCSF、SCF、MCP-1等が挙げられる。細胞増殖因子には、狭義の細胞増殖因子及び各種成長因子が含まれる。さらには各種の血管形成誘導因子、神経成長誘導因子、骨形成誘導因子、軟骨形成誘導因子、組織修復因子が含まれる。血管形成誘導因子としては、血管内皮細胞増殖因子(VEGF)、線維芽細胞増殖因子(FGF)、アンギオポイエチン、肝細胞増殖因子(HGF)、組織修復因子等が挙げられる。成長因子としては、各種の細胞成長因子、例えばエリスロポエチン、神経細胞成長因子、軟骨形成因子、骨形成因子(BMP等)等が挙げられる。また部分長タンパクは活性部分ポリペプチド、生体内タンパクの拮抗物質として働く不活型のリガンドや細胞内シグナル伝達ドメインを欠失させた受容体が挙げられる。 【0009】これらのタンパクをコードする遺伝子のうち、血管形成誘導因子をコードするDNA、例えばVEGF、FGF、アンギオポイエチン、HGF等をコードするDNAが特に好ましい。これらの血管形成誘導因子をコードするDNAを用いれば、心筋梗塞、狭心症等の虚血性心疾患や末梢循環障害に対する血管形成遺伝子治療が可能となる。 【0010】細胞死誘導剤の標的遺伝子は、遺伝子治療後に、外来性の細胞死誘導剤を投与して、前記細胞を選択的に死滅させるためのものであるから、正常細胞には存在しない遺伝子であって、外来性の細胞死誘導剤の標的遺伝子であるのが望ましい。当該細胞死誘導剤としては、細胞を壊死(直接壊死及び増殖抑制による壊死も含む)又は自然死させる成分、例えば抗ウイルス剤、抗癌剤、アポトーシス促進剤等の標的遺伝子が好ましい。より具体的には、単純ヘルペスウイルスのチミジンキナーゼ遺伝子、水痘ウイルスのチミジンキナーゼ、大腸菌のシトシンデアミナーゼが挙げられる。これらの遺伝子を用いた場合の抗ウイルス剤としてはアシクロビル、ガンシクロビル、6-メトシキプリン、アラビノヌクレオシド、抗癌剤としては5-フルオロシトシン等が挙げられる。 【0011】これらの遺伝子が導入されるべき細胞としては、生体内で増殖可能な細胞であれば特に限定されないが、目的疾患部位の細胞又はそれに近似した細胞が好ましい。本発明においては、本発明による遺伝子治療が効率が高いことから短期間の投与で十分な治療効果が得られる可能性が高い。かかる短期間の投与による治療を行う場合には、当該細胞は、自家細胞、すなわち患者由来の細胞である必要はなく、同種細胞あるいは異種細胞でもよい。 【0012】本発明の遺伝子治療用細胞は、例えば、細胞に目的疾患治療用遺伝子発現プラスミドをトランスフェクションして、永続的なトランスフェクションが生じた細胞を選択し、この細胞にさらに細胞死誘導剤の標的遺伝子発現プラスミドをトランスフェクションして、永続的なトランスフェクションが生じた細胞を選択することにより調製できる。 【0013】ここで発現プラスミドの調製に用いられる発現ベクターとしては、動物細胞の発現ベクターとして用いられているものであれば特に制限されず、例えばpUC-SRα、pGK、pcDNA3.1、pCMV-Script、pBK-CMV/pBK-RSV、pcDNA6/TR等が挙げられる。これらの発現ベクターに目的遺伝子を組み込むには、通常の制限酵素とDNAライゲースを用いればよい。また、永続的なトランスフェクションの有無を確認するには、各種薬剤耐性遺伝子の導入と、当該薬剤存在下の培養による選択によって行うことができる。 【0014】また、最終的に得られた細胞が、目的遺伝子を発現するか否かは、mRNAの発現と発現タンパクの産生を確認することにより行うことができる。mRNAの発現はRT-PCR法により行うことができ、発現タンパクの産生は、免疫学的測定法により行うことができる。 【0015】かくして得られた本発明の遺伝子治療用細胞は、目的疾患治療用遺伝子が発現することは確認済みであり、生体内に投与すれば理論上100%の効率で目的疾患治療用遺伝子が発現する。また、目的疾患の治療効果を確認した後、前記遺伝子治療用細胞に組み込まれた細胞死誘導剤の標的遺伝子に対応する細胞死誘導剤を投与すれば、この細胞に対して選択的に細胞死誘導剤が作用し、この細胞を死滅させることができるので、この細胞を生体内から消失させることができる。また使用する細胞は基本的に同種あるいは異種の細胞であるので、本細胞移植以後に開始した免疫抑制剤を中止すれば、すみやかに拒絶反応により消失する。 【0016】本発明による遺伝子治療用細胞は、疾患部位への局所投与が特に好ましい。投与量は、疾患の種類、症状等により異なるが、目的疾患治療用遺伝子の発現効率が高いので、計算して投与することができる。投与にあたっては、これらの細胞は各種緩衝剤、生理食塩液等に分散して投与するのが好ましい。また、治療後細胞を消失させるための細胞死誘導剤は、当該細胞死誘導剤に用いられている投与手段により、投与することができる。例えば、抗ウイルス剤等の場合、臨床的に認められている投与量を認められている投与手段により投与すればよい。 【0017】本発明の遺伝子細胞治療剤キットは、前記の遺伝子治療用細胞と細胞死誘導剤とを組み合せてなるが、前述のように細胞死誘導剤としては抗癌剤、抗ウイルス剤等の市販のものを用いてもよい。 【0018】 【実施例】次に実施例を挙げて本発明を更に詳細に説明するが、本発明はこれに何ら限定されるものではない。 【0019】A.方法(1)細胞培養NIH3T3細胞は、10%ウシ胎児血清(FBS)とペニシリン(100μg/ml)/ストレプトマイシン(250ng/ml)/アンフォテリシンB(85μg/ml)を添加したDubecco修正Eagle培地(DMEM)中で、5%CO2を含む加湿大気下、37℃にて培養し、3日ごとに継代した。 【0020】(2)hHGFおよびチミジンキナーゼ(TK)遺伝子の安定なトランスフェクションHGF cDNAは、pUC-SRα発現ベクタープラスミドのNotI部位に挿入した(Nakamura, T. et al, Nature 1989; 342: 440-443、Hayashi, S. et al, Biochem. Biophys. Res. Commun. 1996; 220: 539-545)。単純ヘルペスウイルスのTK遺伝子は、pGK発現ベクタープラスミドのEcoRI-HindIII部位に挿入した(Adra CN et al,Gene 1987; 60: 65-74: Mcknight SL, Nucleic Acids Res. 1980; 8: 5949-5964)。pPURおよびpcDNA3.1/Hygro(+)は、それぞれピューロマイシンおよびハイグロマイシン耐性を真核細胞に与える。これらのプラスミドは、両者のDNA分子が完全に組み込まれた組換え体を選択する目的で、別のプラスミドとコトランスフェクションすることができる。トランスフェクションにはEffectene試薬(QIAGEN)を用いた。pUC-SRα/hHGFとpPURをNIH3T3細胞にコトランスフェクションしたのち、ピューロマイシン非耐性細胞をピューロマイシン(3μg/ml)で除去し、hHGF産生細胞を選択した(NIH3T3+hHGF)。次に、pGK/TKおよびpcDNA3.1/Hygro(+)プラスミドを、NIH3T3+hHGF細胞に同様にコトランスフェクションした。ハイグロマイシン非耐性細胞をハイグロマイシン(200μg/ml)で除去し、ヒトHGFとTKを産生している細胞を選択した(NIH3T3+hHGF+TK)。 【0021】(3)逆転写ポリメラーゼチェインリアクション(RT-PCR) HGF mRNAの発現はRT-PCRにより解析した。TRIzol試薬(GIBCOBRL, Gaithersburg, Maryland, USA)を用いて、成熟マウス肝およびNIH3T3細胞から全RNAを抽出した。hHGF用に使用したプライマーは、フォワード:5'-GCCTCTGGTTCCCCTTCAATAG-3'、リバース:5'-CCATGAGACCTCGATAACTCTCC-3'である(Ueda H, Ann. Thorac.Sarg; 1999; 67: 1726-1731)。PCR条件は次のとおりだった:変性94℃30秒のあと、アニーリング55℃60秒および伸長72℃60秒。PCR産物は3%NuSieveアガロースゲルにて電気泳動し、臭化エチジウム染色後観察した。 【0022】(4)hHGFの酵素結合免疫吸着アッセイNIH3T3細胞を6cmディッシュに1×106細胞/ディッシュの密度となるように蒔き、48時間培養した。10%FBSを添加した新しいDMEM 2mlで培地を交換し、24時間培養したのち、培地中のHGF産生を抗hHGFモノクローナル抗体(Institute ofImmunology, Tokyo, Japan)を用いるELISAで測定した(Hayashi S,et al, Circ.1999: 100[Suppl. II]: II-301-II-308、Nakamura Y. et al, Biochem. Biophys. Res. Commun. 1995; 215: 483-488、Yamada A, et al, Biomed. Res. 1995; 16: 105-114)。抗体に交差反応性がないため、このELISAシステムはhHGFのみを特異的に検出する。 【0023】(5)マウス虚血後肢モデル研究で使用された全ての実験手順とプロトコールは、「慶應大学医学部動物管理使用委員会」の審査・承認を受けており、NIH Guide for the Care and Use of Laboratory Animals「実験動物の管理使用に関するNIH指針」に準拠したものである。NIH3T3細胞移植に対する生理学的反応をマウス虚血後肢モデル(Couffimhal T, et al, Am. J. Pathol. 1998; 152: 1667-1679、Murohara T, et al, J.Clin. Invest. 1998; 101: 2567-2578)で検討した。同一週齢(8週)のオスBALB/cヌードマウス(18〜32g)(Japan CLEA, Tokyo, Japan)をジエチルエーテルで麻酔した。左後肢中央の大腿動脈直上部に皮切を加えた。次いで大腿動脈を静かに露出し、大腿動脈の近位部を7-0絹縫合糸で結紮した。動脈を覆う皮膚を4-0絹縫合糸で閉鎖した。 【0024】(6)hHGF持続産生NIH3T3細胞の移植上記の後肢虚血モデルマウス(n=124)を無作為に3群に分割した。実験実施中に死亡したマウスはなかった。対照群には0.2ml生理食塩液(n=14)またはNIH3T3(n=14)を投与し、実験群(n=96)にはNIH3T3+hHGF+TKを投与した。各細胞は0.2ml DMEMに懸濁し、手術後第1日に虚血大腿骨格筋の2つの異なる箇所に移植した。細胞移植ないし生理食塩液注入後、第4週の時点で虚血肢組織の血管新生と側副血管形成を解析した。 【0025】(7)レーザードップラー血液潅流解析虚血(左)/正常(右)後肢の血液潅流率は、レーザードップラー潅流イメージ(LDPI)システム(Mmoor LDI, Moor Instruments, USA)(Murohara T, et al, J. Clin. Invest, 1998; 101: 2567-2578、Shintani, S, et al, Circ. 2001;103: 897-903)を用いて測定した。血液潅流が少ない部位や無い部位は濃青色で示され、潅流間隔が最高の部位は赤〜白で示される。 【0026】(8)病理組織学的検査側副血管は、後肢筋より作成された切片における微小血管の数を測定することにより、光学顕微鏡的に評価した。細胞移植から4週後に、頸部脱臼により動物を屠殺した。骨を注意深く除去したのち、全後肢筋を約5つの小片としてさいの目状に切り、OCT混合物(Miles Inc., Elkhart, IN)に包埋し、液体窒素中で瞬間凍結して、使用時まで-80℃で保存した。クリオスタット上で、組織標本から7μmの厚さの横断切片を切り出した(Takeshita S, et al, J. Clin. Invest. 1994; 93: 662-672)。内皮細胞検出のための免疫組織化学的染色は、ウサギ抗ヒトvon Willebrand因子(vWF)およびセイヨウワサビ・ペルオキシダーゼを結合させた不活性ポリマー担体(DAKO JAPAN CO., Ltd.)を用いて実施した(Hayashi S, etal,Circ. 1999; 100[Suppl.II]: II-301-II-308)。組織切片は2%パラホルムアルデヒドで5分間固定したのち、更に3%メタノールで15分間固定した。内因性のペルオキシダーゼ活性をブロックするために、切片を3%過酸化水素水中で10分間インキュベートした。適切に希釈した抗体との切片のインキュベーションは、室温で1時間行った。染色には、過酸化水素を0.0225%の濃度で含む0.05mol/lトリス緩衝食塩液(pH7.6)中に溶解した0.05% 3,3'-ジアミノベンジジン・4塩酸塩(DAB、褐色反応生成物)とともに、切片を10分間インキュベートした。後染色には、切片をMayerのヘマトキシリン液(Wako Pure Chemical Industries, Ltd.,Japan)と3分間インキュベートし、流水蒸留水で洗滌したのちマウントした。 【0027】(9)微小血管造影側副血管の形成状況を血管造影で評価した。血管造影手順は、つくば市の国立高エネルギー物理学研究所フォトンファクトリーにて実施した。このイメージングシステムの詳細は文献に従った(Takeshita S, et al, J. Clin. Invest. 1994; 93: 662-670、Takeshita S, et al, Circ. 1997; 95: 805-808)。簡単に説明すると、これは単色シンクロトロン放射光と空間分解能30μmの高解像度ビデオシステムを用いたものである。マウスはペントバルビタールナトリウム(50μg/g)で麻酔した。ポリエチレンカテーテルを小切開創から右総頸動脈にカニューレ挿入した。血管造影は、総量1mlの非イオン性造影剤を血管造影用自動注入器を用いて注入することにより行い、後肢血管のイメージをデジタルイメージとしてコンピューターに保存した。血管造影スコアの計算には、各血管造影図の上に固定グリッドを重ね、造影血管の総数を数えた。 【0028】(10)ガンシクロビルによる増殖阻害アッセイ9-(1,3-ジヒドロキシ-2-プロポキシメチル)グアニン(ガンシクロビル)はTKにより活性化され、適当な濃度のガンシクロビルはTK発現細胞を選択的に抑制する(Smee DF., et al, Antimicrob. Agents, Chemother. 1983; 23: 676-682、Cho HS et al, Acta. Oncol. 1997; 38: 1093-1097)。NIH3T3+hHGFないしNIH3T3+hHGF+TK細胞を6ウエルプレートに、1×105細胞/ウエルとなるように蒔き、24時間培養した。10% FBSを添加した新しいDMEM 2.5mlで培地を交換したのち、0〜1mg/mlの範囲のガンシクロビルで細胞を72時間処理した。細胞を新しいDMEMで洗滌し、トリプシン処理したのち、生細胞数を数えた。 【0029】(11)移植細胞による腫瘤形成とガンシクロビルおよびTKによる腫瘤形成阻害虚血後肢モデルマウス(n=42)を無作為に2群に分割した。さまざまな数(1×104、1×105、1×106、1×107、2×107、および4×107)のNIH3T3+hHGF+TK細胞を虚血後肢モデルマウスに移植し、生理食塩液(ビークル)0.1mlを毎日経口投与して4週間維持した(対照群、n=27)。ガンシクロビル投与群では、4×107のNIH3T3+hHGF+TK細胞を同様に移植し、2週間維持したのち、ガンシクロビル50μg/gを1日1回、2〜4週間経口投与した(n=15)。 【0030】(12)統計処理値は平均値±SDで示した。平均値の差の有意性をANOVAで検討した。対照群と投与群の統計学的比較は、ノンパラメトリックFisher多重比較検定を用いて行った。有意と考えられるレベルはp<0.05とした。 【0031】B.結果(1)永続的にトランスフェクションされたNIH3T3細胞におけるhHGF mRNAの発現永続的hHGFトランスフェクションNIH3T3細胞は、ピューロマイシン処理後2週間の時点で採取し、TKトランスフェクションNIH3T3+hHGF細胞は、更に2週間ハイグロマイシンで処理したのち採取した。hHGF mRNAの発現について解析を行った。hHGF cDNA発現プラスミドおよびマウス肝を、それぞれ陽性、陰性対照として用いた。NIH3T3+hHGFおよびNIH3T3+hHGF+TK細胞の両者でhHGF mRNAが発現されていることを確認した(図1)。 【0032】hHGF遺伝子をトランスフェクションしたNIH3T3細胞におけるhHGF mRNAの発現は、成熟マウス肝(2)、NIH3T3(3)、NIH3T3+hHGF(4)およびNIH3T3+hHGF+TK(5)から調製した全RNAを用いてRT-PCRで解析した。プライマーセットはhHGFは特異的に検出するが、マウスHGFは検出しない。hHGF cDNA発現プラスミド(pUC-SRα/hHGF)(1)を陽性対照として用いた。MはΦXHaeIII分子サイズマーカーを示す。 【0033】(2)NIH3T3+hHGFおよびNIH3T3+hHGF+TK細胞におけるhHGFタンパク質の産生hHGFタンパク質の産生は、調整培地を用いてELISAで測定した。野生型NIH3T3細胞では調整培地中にhHGFは検出されなかった。永続的にトランスフェクションされたNIH3T3細胞からは、hHGFタンパク質が分泌されていることを確認した。NIH3T3+hHGFおよびNIH3T3+hHGF+TK細胞は、hHGFタンパク質をそれぞれ17.3±1.4および19.1±2.0pg/106細胞/24時間の割合で産生していた(図2)。使用した抗体はマウスHGFとは交差反応しなかった。図2の値は、細胞数で補正したHGF濃度として表す。各群ともn=5。p<0.001対NIH3T3。 【0034】(3)ガンシクロビルによる増殖阻害アッセイhHGFが、さまざまなタイプの細胞の細胞増殖、細胞運動性、形態形成を制御していることはよく知られている。hHGF発現プラスミドのトランスフェクションが、NIH3T3細胞自身の細胞増殖に影響を与える可能性を調べるために、対照細胞とhHGFトランスフェクションNIH3T3細胞のin vitroの細胞数を測定した(図3)。hHGFプラスミドのNIH3T3細胞へのトランスフェクションは、細胞の増殖速度をわずかに上昇させるようであるが、第3日の時点では有意ではなかった。NIH3T3+hHGF細胞へのTK遺伝子のトランスフェクションは、それらの増殖速度に影響を与えなかった。 【0035】次に、NIH3T3+hHGFおよびNIH3T3+hHGF+TK細胞に対するガンシクロビルの増殖阻害作用について検討した(図4)。NIH3T3+hHGF細胞の生存率は、10-6g/ml濃度のガンシクロビルでは影響を受けず、10-7g/mlを超える濃度では用量相関的に阻害された。これに対して、NIH3T3+hHGF+TK細胞の生存率はガンシクロビルが、10-8g/mlを超える濃度で低下し、10-6g/mlを超える濃度ではほとんど全ての細胞が生存不能だった。NIH3T3+hHGF+TK細胞に対するガンシクロビルのIC50は、NIH3T3+hHGF細胞に対するIC50の約1000倍低かった。これらの所見より、TKプラスミド遺伝子が効率よくトランスフェクションされたこと、そして、ガンシクロビルを、対照細胞には影響を与えない10-6g/mlの濃度で用いると、TK遺伝子を発現している細胞はほとんど生存不能であることが確認された。図4中、各群ともn=5である。 【0036】NIH3T3+hHGF+TK細胞にガンシクロビルを用いた後の該細胞の膜におけるEGFP蛍光を検出した(図5)。細胞死はアポトーシスによることが示された。 【0037】(4)hHGF産生細胞療法は、マウス虚血後肢モデルにおける血管新生と側副血管形成を促進した。hHGF産生細胞の移植が虚血後肢の潅流を改善するかどうかを評価するために、細胞移植後4週間における虚血後肢の壊死率を算定した。後肢の虚血は、足部壊死、足指壊死、または壊死なしの3群に分類した。足部または足指の壊死率は、生理食塩液注入マウス(対照)では、それぞれ35.7%と42.9%だった。pUC-SRα/hHGF群における足部及び足指の壊死率は、それぞれ20.0%と40.0%であり、アデノウィルスベクタープラスミドAd.CA-hHGF群における足部及び足指の壊死率は、それぞれ10.0%と40.0%だった。NIH3T3細胞移植群における足部及び足指の壊死率は、それぞれ14.3%と35.7%で、細胞移植そのものも虚血肢の潅流をある程度改善する可能性が示唆された。これに対して、NIH3T3+hHGF+TK群における足部及び足指の壊死率は、それぞれ5.8%と14.5%だった(図6)。NIH3T3+hHGF+TK群では、移植により壊死率は驚異的に低下し、hHGF産生細胞移植が虚血肢モデルを改善する有効な方法であることが示された。 【0038】(5)微小血管造影壊死率の成績は、hHGF産生細胞の移植が、in vivoの虚血後肢の血管新生と側副血管形成を促進することを示した。次に、細胞移植の4週後に虚血後肢の微小血管造影を施行した。代表的な血管造影図と血管造影スコアをそれぞれ図7及び図8に示した。hHGF産生細胞の移植は、側副血管形成を強く誘導した。これらの側副血管の直径は約0.15mmで小動脈のレベルと考えられた。 【0039】更に、虚血肢の皮膚を剥離して、表層の動脈や静脈も観察した。径が大きく長い血管は、NIH3T3+hHGF+TK細胞移植群の虚血肢では観察できたが、NIH3T3群には認められなかった(図9)。 【0040】(6)微小血管の密度とサイズ虚血後肢の骨格筋のvWF(von Willebrand因子)に対する免疫染色の代表的な顕微鏡写真を図10a〜iに示す。免疫染色は、NIH3T3+hHGF+TK移植群(図10c,d)では、非常に多数の微小血管の存在を明瞭に示したが、生理食塩液注入群(図10a)およびNIH3T3移植群(図10b)では微小血管の数は少なかった。骨格筋の血管形成において、移植細胞を囲む領域(図10e)と移植細胞から離れた領域(ひ腹筋、図10f)とで有意な差異はなかった。定量的な解析では、虚血部位の微小血管密度は、NIH3T3+hHGF+TK移植群では、他の2群よりも有意に高いことがわかった(図11)。更に、vWF陽性微小血管の最大径は他の2群よりも有意に大きかった(図12)。 【0041】(7)血管の成熟血管の成熟を、虚血骨格筋の3つの連続した凍結部分を染色することにより調べた。驚くべきことに、NIH3T3+hHGF+TK移植群においては血管の殆どはvWF及びα-SMA共に陽性であった(図10g,h、図13)。しかし、弾性線維陽性細胞は、生理食塩液注入群及びNIH3T3移植群と比べて増加していなかった(図10i,図13)。この発見は、NIH3T3+hHGF+TK細胞移植治療が、毛細管レベルだけでなく微小血管(細動脈)レベルにおいても血管形成を強く誘発したが、大きい血管レベルにおいては血管形成を行わないことを示す。 【0042】(8)レーザードップラー血液潅流虚血後肢の皮下血液潅流を解析するために、LDPI解析を実施した。代表的なイメージを図14a〜fに示す。大腿動脈結紮直後には、血液潅流は後肢全域で観察されなかった(a)。生理食塩液注入群およびNIH3T3細胞移植群では、大腿近位部の潅流は4週の時点で回復していたが、足関節よりも遠位の後肢の潅流は著明に減少していた(b,c)。NIH3T3+HGF+TK(104細胞)移植群では、虚血後肢の潅流はほとんど対照(非虚血)レベルまで回復したが、かかとよりも遠位の潅流は対照レベルに比べてわずかに減少していた(d)。NIH3T3+HGF+TK(4×107細胞)移植群では、虚血後肢の潅流は対照群の後肢よりもはるかに大きく(e)、虚血後肢の血液潅流の回復には、この細胞数では多すぎるか、投与期間が長すぎることがわかった。 【0043】図15は、種々のHGF産生法についての定量的分析結果を示す。pUC-SRα/hHGF群及びAd.CA-hHGF群における血液灌流速度は、対照群の後肢のそれぞれ87.7%および93.3%であり、生理食塩液注入群よりも高かった。これと対照的に、NIH3T3+HGF+TK(4×107細胞)移植群の血液灌流速度は132.6%であり、他の方法よりもずっと高かった。図16は虚血肢における血液灌流速度は投与量(移植細胞数)に依存して増加したことを示す。 【0044】(9)ガンシクロビルとTKを用いるin vivo細胞制御虚血肢の血液潅流回復を適正レベルに調節するために、このモデルにNIH3T3+hHGF+TK細胞(4×107細胞)を移植し、LDPIレベルを連日観察して、血液潅流のレベルが対照レベルに達した時点(2週間)で、ガンシクロビルの経口連日投与を開始した。この方法を用いることにより、虚血肢の血液潅流速度を対照肢(非虚血肢)と同じレベルに調節することができた(図14f)。種々の群の虚血/非虚血肢の血液潅流速度を定量した(図17)。これらの所見は、hHGF産生NIH3T3細胞の移植により、血液潅流を対照レベルまで改善できることを示す。 【0045】図18は、血液潅流に対するガンシクロビルの阻害作用の定量的分析結果を示す。図19に示された結果は、4週間のガンシクロビル投与が増殖停止に充分であることを示唆する。ガンシクロビル投与によるアポトーシスのため、移植したNIH3T3+HGF+TK細胞が消失してから少なくとも3ヶ月、改良された血液潅流が維持された(図20)。 【0046】1×107個以上の細胞を移植した場合、4週の時点で境界明瞭な細胞塊(NIH3T3+hHGF+TK)を観察した(図21)。組織学的な検索では、注入部位に境界明瞭な1個の細胞塊が認められたが、これらの細胞塊は隔離されており隣接組織に浸潤していなかった(図22A)。NIH3T3+hHGF+TK細胞の移植後2週間の時点で、2または4週間のガンシクロビル経口連日投与を開始し、組織標本の検索を行った(図22B,C)。NIH3T3+hHGF+TK細胞は、細胞塊中心から徐々にアポトーシスを示し、4週の時点では全ての移植細胞が観察不能となった。周囲の骨格筋細胞及び形成した血管はガンシクロビル投与の影響を受けなかった。細胞クラスターを全体的に且つ明瞭にX-gal1で染色した(図22D)。これらの細胞塊は非血管性腫瘍であり、ガンシクロビル投与後に完全に消失したことから、細胞塊はドナー由来であることが確認された。 【0047】上記の結果から、本発明の血管形成遺伝子細胞療法には次のような長所があることがわかった。 (1)この血管形成遺伝子細胞療法では、これまでのVEGF、FGFないしHGFを用いた報告に比べて、より有効な血管新生と側副血管形成が得られた。(2)TKとガンシクロビルを組み合わせて用いることにより、血管新生と側副血管形成をLDBPを観察しながら制御することが可能だった。(3)何らかの理由で血管形成療法を中止したい場合には、いつでも血管形成遺伝子増殖療法を中止できる。(4)プラスミド又はウイルスベクターを用いる場合のように漏出または拡散により、hHGF遺伝子が非標的器官あるいは非標的細胞に発現される可能性がない。(5)遺伝子のトランスフェクション効率は常に100%なので、血管形成効果は容易に予測可能である。これに対して、プラスミドまたはウイルスベクターを用いる場合には、トランスフェクション効率は常に変動する。(6)患者に迅速な血管形成が必要な場合には、細胞ベクターはより優れた効果を発揮する。プラスミドないしウイルスベクターを用いる場合では最大発現まで1週間を要し、最大発現の持続期間も短いからである。 【0048】 【発明の効果】本発明の遺伝子治療用細胞は、目的疾患治療用遺伝子が発現することは確認済みであり、生体内に投与すれば理論上100%の効率で目的疾患治療用遺伝子が発現する。また、目的疾患の治療効果を確認した後、前記遺伝子治療用細胞に組み込まれた細胞死誘導剤の標的遺伝子に対応する細胞死誘導剤を投与すれば、この細胞に対して選択的に細胞死誘導剤が作用し、この細胞の死滅を誘導できるので、この細胞を生体内から消失させることができる。さらに本法では同種細胞あるいは異種細胞を用いるため治療中に使用していた免疫抑制剤を中止することにより、拒絶反応により、移植細胞は完全に消失する。 【0049】 【配列表】 SEQUENCE LISTING<110> Cardio Incorporated Fukuda, Keiichi<120> Gene-modified Cell Therapeutic Agent<130> P01081503<150> JP 2002-078717<151> 2002-03-20<160> 2<170> PatentIn version 3.1<210> 1<211> 21<212> DNA<213> Artificial Sequence<220><223> Designed primer based on hHGF gene<400> 1gcctctggtt ccccttcaat a 21<210> 2<211> 23<212> DNA<213> Artificial Sequence<220><223> Designed primer based on hHGF gene<400> 2ccatgagacc tcgataactc tcc 23 |
| 【出願人】 |
【識別番号】502100138 【氏名又は名称】株式会社カルディオ 【識別番号】502100149 【氏名又は名称】福田 恵一
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| 【出願日】 |
平成15年3月20日(2003.3.20) |
| 【代理人】 |
【識別番号】110000084 【氏名又は名称】特許業務法人アルガ特許事務所
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| 【公開番号】 |
特開2003−342201(P2003−342201A) |
| 【公開日】 |
平成15年12月3日(2003.12.3) |
| 【出願番号】 |
特願2003−77314(P2003−77314) |
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