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【発明の名称】 胃蠕動抑制剤
【発明者】 【氏名】比企 直樹

【氏名】上西 紀夫

【氏名】黒板 判造

【要約】 【課題】従来、胃内視鏡検査時においては、胃蠕動抑制剤として抗コリン剤である臭化ブチルスコポラミンやグルカゴンが使用されてきたが、臭化ブチルスコポラミンは、緑内障、前立肥大症、不正脈患者には使用禁忌であり、グルカゴンは胃蠕動抑制効果が低いといった問題点があった。

【解決手段】本発明のペパーミントオイル又はL−メントールを配合してなる胃蠕動抑制剤は、胃幽門前庭部に直接散布することにより速効性且つ持続的にその効果が発揮され、臭化ブチルスコポラミン使用禁忌患者に対しても安全に使用することができる。
【特許請求の範囲】
【請求項1】ペパーミントオイル又はL−メントールを含んでなる胃幽門前庭部直接投与用胃蠕動抑制剤。
【請求項2】胃蠕動渦動抑制剤が、さらに水および界面活性剤を含有する乳剤である請求項1記載の胃蠕動抑制剤。
【請求項3】ペパーミントオイルを0.5〜3v/v%又はL−メントールを0.1〜3v/v%含有してなる請求項1または2記載の胃蠕動抑制剤。
【請求項4】界面活性剤がソルビタンモノ脂肪酸エステルである請求項2記載の胃蠕動抑制剤。
【請求項5】請求項1〜4記載の胃蠕動抑制剤が内視鏡鉗子孔から注入する一回投与分を押し出し式容器に収容された胃蠕動抑制剤。
【発明の詳細な説明】【0001】
【発明の属する技術分野】本発明は、ペパーミントオイル又はL−メントールを主薬として含有する胃蠕動抑制剤に関するものであり、より詳しくは、ペパーミントオイル又はL−メントールに水と界面活性剤を加えて乳化したものを、内視鏡鉗子孔を通じて胃の幽門前庭部に直接散布するための簡便、安全にして効果的な胃蠕動抑制剤に関する。また、内視鏡鉗子孔からの投与を簡便とするため、本剤を押し出し可能な容器に充填した胃蠕動抑制剤に関する。
【0002】
【従来の技術】胃内視鏡検査における胃の過剰な蠕動は正確な診断の妨げとなり、微小癌等の微細な病変を見逃す原因ともなっている。従来、内視鏡検査時の抗蠕動薬として抗コリン剤である臭化ブチルスコポラミン(商品名;ブスコパン他)やグルカゴンが用いられてきた。しかしながら、ブスコパンは緑内障、前立腺肥大症、不整脈を有する患者等には使用禁忌であり、グルカゴンは胃蠕動抑制効果が非常に弱い等の問題があった。さらに、これらの薬剤は、静脈投与用又は筋肉内投与用であるため、検査直前又は検査中に行なわなければならない。またこれらの製剤は投与により眼の調節障害、めまい等をおこす可能性があり、内視鏡検査時にこれらの製剤を投与された人は、たとえば自動車などの運転を避けねばならないという問題もあった。
【0003】
【発明が解決しようとする課題】本発明は、胃部内視鏡検査時に、内視鏡鉗子孔等を通して胃幽門前庭部に直接散布することにより、従来静脈内又は筋肉内投与されている抗コリン剤やグルカゴンと比較してより優れた胃蠕動抑制作用を示す安全な胃蠕動抑制剤を提供することを目的とするものである。
【0004】
【課題を解決するための手段】本発者らは、抗コリン剤やグルカゴンに代わる胃蠕動抑制剤につき、平滑筋弛緩作用を有するとされる多数の物質について動物実験並びに臨床試験を繰り返した。その結果ペパーミントオイル又はL−メントールが、ブスコパンを使用することができない患者にも使用でき、且つグルカゴンより強い胃蠕動抑制作用を示すことを突き止め、更に検討を重ねて本発明を完成した。すなわち本発明は、(1)ペパーミントオイル又はL−メントールを含んでなる胃幽門前庭部直接投与用胃蠕動抑制剤、(2)胃蠕動渦動抑制剤が、さらに水及び界面活性剤を含有する乳剤である(1)記載の胃蠕動抑制剤、(3)ペパーミントオイルを0.5〜3v/v%又はL−メントールを0.1〜3v/v%含有してなる請求項1または2記載の胃蠕動抑制剤、(4)界面活性剤がソルビタンモノ脂肪酸エステルである請求項2記載の胃蠕動抑制剤、および(5)請求項1〜4記載の胃蠕動抑制剤が内視鏡鉗子孔から注入する一回投与分を押し出し式容器に収容された胃蠕動抑制剤、である。
【0005】
【発明の実施の形態】本発明に使用されるのはL−メントール又はペパーミントオイルである。ペパーミントオイルは、セイヨウハッカMentha piperita又はニホンハッカMentha avensisの植物を水蒸気蒸留することにより得られる精油で、L−メントールを30v/v%以上含有するものであるが、その他にメントン、メンテン、テルペン類も含まれている。本発明においては、好ましくは、L−メントールを50v/v%以上含むものが用いられる。L−メントールはペパーミントオイルから精製したものもあるが、化学合成により製造することもできる。界面活性剤は可食性のものが用いられ、たとえばソルビタンモノラウレート、ソルビタンモノパルミテート、ソルビタンモノステアレートなど、ソルビタンC10−20脂肪酸エステルが好ましく用いられる。特に好ましいのは、ソルビタンモノステアレートである。
【0006】ペパーミントオイル、界面活性剤および水を用いて乳剤を調製する場合、それぞれの使用割合は、乳液1000ml中、ペパーミントオイルが5〜50ml、好ましくは10〜20ml、界面活性剤が0.5〜5g、好ましくは1〜3gであり、L−メントールを使用する場合は、L−メントールが1.0ml〜30ml、好ましくは1.5ml〜15mlである。さらに必要により、増粘剤、安定化剤、保存剤、消泡剤などを適宜添加することができる。増粘剤としては、カラギナン、メチルセルロース(MC)、カルボキシメチルセルロース(CMC)、グァーガム、ペクチンなどが挙げられる。これらの増粘剤を添加することにより乳液が胃幽門前庭部に散布されたときの垂下速度を適当なものに調節することができる。増粘剤の添加量は増粘剤の種類により異なるが、通常0.01〜5w/v%の範囲で選択される。安定化剤としては、たとえばエデト酸ナトリウムなどが、保存剤としては、たとえばソルビン酸、塩化ベンザルコニウム、パラベンなどが、消泡剤としてはたとえばジメチルポリシロキサンなどのシリコーンオイルが挙げられ、それぞれの適量が添加される。
【0007】本発明の胃蠕動抑制剤は、胃部検査時に内視鏡鉗子孔等を通じて、胃幽門前庭部に直接散布される。内視鏡先端の鉗子孔からの直接投与を可能とするため、前記の調整した乳剤をプレフィルシリンジ等の押し出し可能な容器に一回投与分を充填することが好ましい。勿論本発明の製剤はバイアル、アンプルなどの容器に充填し保存することもできる。
【0008】
【実施例】以下に実施例、比較例、試験例をあげて本発明を具体的に説明する。
【0009】
実施例1 処方 ペパーミントオイル(L−メントール含有率約50%) 16ml 精製水 1000ml ソルビタンモノステアレート 2g ホモミキサーに精製水とソルビタンモノステアレートを入れて1分間撹拌した後、ペパーミントオイル(L−メントル含有率50%)を加えて5分間撹拌し、乳剤を調整した。後述の試験のために、これとは別に筋肉注射用生理食塩水を用意した。
【0010】
比較例1 処方 オリーブオイル 16ml 精製水 1000ml ソルビタンモノステアレート 2g実施例1と同様の操作によりブスコパンの乳剤を調整した。これとは別に、試験のためにブスコパン筋肉注射液(臭化ブチルスコポラミン2.0w/v%)を用意した。
【0011】試験例1胃部内視鏡時における抗蠕動薬としてペパーミントオイルがブスコパンと比較して有効且つ安全であることを100名(各グループ50名)の上部消化管検査被者による二重盲検二重ダミー無作為試験(Double-blind double-dummy randomized trial)で幽門の開大率、収縮率、蠕動停止時間および副作用につき確認した。
ペパーミントオイル投与群 :生理食塩水筋肉注射+ペパーミントオイル乳液消化管管腔内散布ブスコパン投与群 :ブスコパン筋肉内注射+オリーブオイル乳液消化管管腔内散【0012】幽門開大率(%)は〔(投与後幽門輪長径−投与前幽門輪長径)/投与後幽門輪長径〕X100で、幽門収縮率(%)は〔(開大時幽門輪長径−収縮時幽門輪長径)/収縮時幽門輪長径〕X100で算出した。蠕動停止時間は胃前庭部の収縮輪の消失に至る時間を測定した。
【0013】図1および2にペパーミントオイル投与群とブスコパン投与群の幽門の開大時および収縮時の開大率を示すが、開大時および収縮時ともにペパーミントオイル投与群が開大率が有意に大きく蠕動運動を抑制していることがわかる。
【0014】図3にペパーミントオイルまたはブスコパンの投与前後の幽門の収縮率を示した。ペパーミントオイル投与後の幽門収縮率はブスコパンに比べて有意に小さくなっており、蠕動をよく抑制していることがわかる。
【0015】表1にペパーミントオイル投与群とブスコパン投与群での胃蠕動抑制時間を示した。
【0016】
【表1】

表1から明らかなように、ペパーミントオイル投与後すみやかに蠕動は停止し、蠕動停止までの時間はブスコパンに比べて有意に短く、作用時間はブスコパンに比べて長かった。また、ペパーミントオイル投与群では投与患者の2%(1名)に腹部膨満を認めたのみであったが、ブスコパン投与群では26%(13名)の口渇感、16%(8名)に視力調節障害、頭痛および排尿障害がおのおの1%(1名)に認められた。
【0017】
【発明の効果】本発明の胃蠕動抑制剤を、たとえば胃内視鏡鉗子孔から胃幽門前庭に直接散布すると、短時間に効果が発揮され、また長時間効果が持続するうえ、ブスコパンのようにその使用が禁止されている緑内障、前立肥大症、不整脈患者に対しても何ら支障なく使用することができるなどの利点を有している。
【0018】
【出願人】 【識別番号】502039506
【氏名又は名称】比企 直樹
【出願日】 平成14年8月29日(2002.8.29)
【代理人】 【識別番号】100071973
【弁理士】
【氏名又は名称】谷 良隆
【公開番号】 特開2003−292450(P2003−292450A)
【公開日】 平成15年10月15日(2003.10.15)
【出願番号】 特願2002−250780(P2002−250780)