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【発明の名称】 歯科用アルギン酸塩印象材組成物
【発明者】 【氏名】蒲原 敬
【住所又は居所】東京都板橋区蓮沼町76−1 株式会社ジーシー内

【氏名】渡邉 信孝
【住所又は居所】東京都板橋区蓮沼町76−1 株式会社ジーシー内

【氏名】竹尾 万紀子
【住所又は居所】東京都板橋区蓮沼町76−1 株式会社ジーシー内

【氏名】内藤 裕樹
【住所又は居所】東京都板橋区蓮沼町76−1 株式会社ジーシー内

【要約】 【課題】従来のpH指示薬を用いた変色性の歯科用アルギン酸塩印象材組成物のゲル化終了の確認が不正確で且つ確認が難いこと、及び練和時に用いる水との馴染みが悪いという欠点を解消した歯科用アルギン酸塩印象材組成物を提供する。

【解決手段】アルギン酸塩,ゲル化反応剤,ゲル化調整剤及び充填材を主成分とする歯科用アルギン酸塩印象材組成物に於いて、クレゾールレッド,α−ナフトールフタレイン,トロペオリン000,チモールブルー,フェノールフタレインより選ばれる1種又は2種以上のpH指示薬を0.001〜0.1重量%、25℃で液状である水溶性ポリエーテルを0.1〜10重量%、水と混和してゲル化した時にpH指示薬により発色する色調と明らかに異なる色の無機及び/又は有機の顔料を0.001〜5重量%含有させる。
【特許請求の範囲】
【請求項1】 アルギン酸塩,ゲル化反応剤,ゲル化調整剤及び充填材を主成分とする歯科用アルギン酸塩印象材組成物に於いて、クレゾールレッド,α−ナフトールフタレイン,トロペオリン000,チモールブルー,フェノールフタレインより選ばれる1種又は2種以上のpH指示薬が0.001〜0.1重量%、25℃で液状である水溶性ポリエーテルが0.1〜10重量%、水と混和してゲル化した時にpH指示薬により発色する色調と明らかに異なる色の無機及び/又は有機の顔料が0.001〜5重量%含有されていることを特徴とする歯科用アルギン酸塩印象材組成物。
【請求項2】 水溶性ポリエーテルが、ポリエチレングリコール,ポリプロピレングリコール,ポリエチレングリコール−ポリプロピレングリコールのいずれかである請求項1に記載の歯科用アルギン酸塩印象材組成物。
【発明の詳細な説明】【0001】
【産業上の利用分野】本発明は、歯科に於いて口腔内の印象採得を行うために用いる歯科用アルギン酸塩印象材組成物に関するものであり、特に水と混和してゲル化する前とゲル化した後の色調に明確な変化を生じ、且つ練和操作に於いても混和するための水との馴染みが良い歯科用アルギン酸塩印象材組成物に関するものである。
【0002】
【従来の技術】歯科に於いて補綴物作製の際に、口腔内の印象を採得する印象材として歯科用アルギン酸塩印象材組成物が広く用いられている。このアルギン酸塩印象材組成物は、アルギン酸塩,ゲル化反応材,ゲル化調整材,充填材を主成分とするものであり、水と練和することによりゲル状に硬化する。このアルギン酸塩印象材組成物は、通常粉末状で供給され、この粉末を所定量の水と混合・練和しペ−スト状にして口腔内に挿入し硬化させる。
【0003】この歯科用アルギン酸塩印象材組成物に於いて、口腔内でゲル化させて使用するため実際に組成物がゲル化し口腔内より取り出すことができるかどうかはメーカーの指示する口腔内保持時間に従うか、又はゲル化し硬化しているかを術者が口腔内の印象材を指で押して硬さを確認する方法により行われている。しかし、ゲル化の程度は気温や水温に左右され易いため、作業環境によってはメーカーが指示する口腔内保持時間ではゲル化していない場合が多く、その場合には不完全な印象となってしまう欠点があった。また、術者が指でゲル化を判定する方法も術者による差異が大きく、不完全な印象となる一因になっている。
【0004】このような不都合を解消するために、水と混和してゲル化する前後で変色するタイプの印象材が販売されており、これらの従来の変色性アルギン酸塩印象材組成物は後述する方法で変色を行っている。即ち一般的にアルギン酸塩印象材は、練和終了直後はpHが8より若干高く、ゲル化が進行することによりこのpHが低下してゲル化が終了すると8より小さくなる。そこで従来の変色するタイプの印象材組成物は、この現象を利用してゲル化前のpHで明確に発色するpH指示薬を含有させておき、ゲル化後のpHの変動を利用することによりそのpH指示薬が明確に発色しなくなりゲル化の終了を目視で確認できるようにしたものである。
【0005】しかし、実際にはアルギン酸塩印象材組成物中の色々な塩類の影響によりゲル化前のかなり早期に変色してしまってゲル化終了判定の確実な目安にはならず、現在はあまり使用されることがない。また、pH指示薬は練和時に用いる水との馴染みが悪く、練和操作の面に於いても非常に使用し難いものとなっていた。
【0006】
【発明が解決しようとする課題】本発明は、従来のpH指示薬を用いた変色性の歯科用アルギン酸塩印象材組成物のゲル化終了の確認が不正確であり且つ確認が難しいこと及び練和時に用いる水との馴染みが悪いという欠点を解消した歯科用アルギン酸塩印象材組成物を提供することを課題とする。
【0007】
【課題を解決するための手段】本発明者らは前記課題を解決すべく鋭意検討した結果、歯科用アルギン酸塩印象材組成物中に特定のpH指示薬を配合し、同時に特定の水溶性ポリエーテルを加えることによりpH指示薬が入った歯科用アルギン酸塩印象材組成物であっても水との馴染みが良くなり、またpH指示薬が早期に変化することを防ぐことが可能であり、更に水と混和してゲル化した時にpH指示薬により発色する色調と明らかに異なる色の無機及び/又は有機の顔料を共存させることによりpH指示薬の変化とゲル化とを一致させることができることを究明して本発明を完成した。
【0008】即ち本発明は、アルギン酸塩,ゲル化反応剤,ゲル化調整剤及び充填材を主成分とする歯科用アルギン酸塩印象材に於いて、クレゾールレッド,α−ナフトールフタレイン,トロペオリン000,チモールブルー,フェノールフタレインより選ばれる1種又は2種以上のpH指示薬が0.001〜0.1重量%、25℃で液状である水溶性ポリエーテルが0.1〜10重量%、水と混和してゲル化した時にpH指示薬により発色する色調と明らかに異なる色の無機及び/又は有機の顔料が0.001〜5重量%含有されていることを特徴とする歯科用アルギン酸塩印象材組成物である。
【0009】本発明で用いるアルギン酸塩,ゲル化反応剤,ゲル化調整剤及び充填材を主成分とするアルギン酸塩印象材に於いて、アルギン酸塩としては、アルギン酸のナトリウム,カリウム,アンモニウム,トリエタノ−ルアミンのような水に可溶な塩の1種以上が使用でき、通常のアルギン酸塩印象材組成物と同様に10〜20重量%含有される。ゲル化反応材としては、2価以上の難溶性の金属塩が使用され、好適には硫酸カルシウムの二水塩や半水塩が使用される。ゲル化調整材としては、ナトリウム又はカリウムの燐酸塩,ケイ酸塩,炭酸塩等の1種以上が使用される。充填材としては、一般的にケイソウ土,無水ケイ酸,タルク,炭酸カルシウム,パーライト等から選ばれる1種以上の粉末が使用される。これらの従来から使用されいるアルギン酸塩,ゲル化反応剤,ゲル化調整剤及び充填材を主成分とする歯科用アルギン酸塩印象材に本発明の特徴を付加するために後述する成分が配合される。
【0010】本発明で使用する特定のpH指示薬は、クレゾールレッド,α−ナフトールフタレイン,トロペオリン000,チモールブルー,フェノールフタレインより選ばれる1種以上のpH指示薬である。これらのpH指示薬は、歯科用アルギン酸塩印象材組成物の練和終了時のpHであるpH8より若干高い領域で特に明確な色を発するpH指示薬である。このようなpH指示薬を利用してゲル化の進行を確認する方法は従来より行われている技術であるが、このpH指示薬のみによる変色では前記のようにゲル終了前に不明瞭な色となってしまったり、ゲル化以前でも組成物中の他の塩によって変色してしまう問題がある。従って、本発明では後述する25℃で液状である水溶性ポリエ−テル、無機及び/又は有機の顔料を共存させることによってゲル化を正確に且つ明瞭に色で判断することが可能となる。このクレゾールレッド,α−ナフトールフタレイン,トロペオリン000,チモールブルー,フェノールフタレインより選ばれる1種以上のpH指示薬は、アルギン酸塩印象材中に0.001〜0.1重量%含有される。0.001重量%より少ないと正確な判断のために必要な発色が得られず、0.1重量%より多いとゲル化後の色の識別が不正確になる。
【0011】本発明で使用される25℃で液状である水溶性ポリエーテルとしては、ポリエチレングリコール,ポリプロピレングリコール,ポリエチレングリコール−ポリプロピレングリコール等が挙げられる。これらの特定のポリエーテルは、アルギン酸塩印象材組成物中の他の塩類等によりゲル化終了前にpH指示薬が早期に変色してしまうのを防止する効果がある。また、これらの特定のポリエーテルは水溶性であるため、前記した特定のpH指示薬を含有する歯科用アルギン酸塩印象材組成物であっても練和時に用いる水との親和性も極めて良好となる。この25℃で液状である水溶性ポリエーテルは、歯科用アルギン酸塩印象材組成物中に0.1〜10重量%含有されており、0.1重量%より少ないと充分な効果が得られず、10重量%より多いと組成物の保存性及び硬化した印象材に石膏を注入して作製する石膏模型の表面性状が悪くなる。
【0012】本発明で使用する無機及び/又は有機の顔料は、前記した特定のpH指示薬と共存させることにより効果を有する。具体的には、前述したように本発明で用いるpH指示薬は水との練和直後のpH8より若干高い領域で発色し、ゲル化の進行に伴いpHが低下していってゲル化終了時のpHでは殆ど発色しない。そのため、練和直後はpH指示薬の色と顔料の色とが混合した色調になり、ゲル化終了時にはpH指示薬の発色がなくなるため顔料のみの色調になる。これは、従来の変色性アルギン酸塩印象材が最初に示す色調がゲル化の進行と共に薄くなって行くのとは異なり、初期のpH指示薬の色とは異なった顔料の色調に変化してくるため変色の確認が極めて明瞭になるのである。
【0013】本発明で用いる顔料は、無機,有機の何れの顔料でもよく、両者を組み合わせて使用してもよい。但し、変色を明瞭にするために、これらの顔料は練和終了時にpH指示薬により発色する色調と明らかに異なる色のものでなければならない。例えば、本発明で使用するpH指示薬のα−ナフトールフタレインは、アルギン酸塩印象材練和開始時には青色に発色するため、これとは異なる色調の顔料で例えば黄色の顔料(チタンイエロー,縮合アゾ系の黄色顔料)或いは赤色の顔料(べんがら,縮合アゾ系の赤色顔料)着色されていることが好ましい。無機及び/又は有機の顔料は、歯科用アルギン酸塩印象材組成物中に0.001〜5重量%含有されており、0.001重量%より少ないと色が明瞭でなく、5重量%より多いとpH指示薬による発色が打ち消されてしまって結果としてゲル化前後による色調変化の判別が難しくなる。
【0014】本発明に係る歯科用アルギン酸塩印象材組成物には、その特性を失わない範囲で各種消毒剤,香料等を含有させてもよいのは勿論である。
【0015】
【実施例】次に本発明について実施例を挙げて詳細に説明するが、本発明はこれ等に限定されるものではない。
【0016】
<実施例1>歯科用アルギン酸塩印象材組成物の基本組成として、 アルギン酸ナトリウム 15(重量%)
硫酸カルシウム二水塩 15 第三リン酸ナトリウム 0.8 炭酸ナトリウム 0.2 ケイソウ土 68.898特定の水溶性ポリエーテルとして、 ポリエチレングリコール 0.1特定のpH指示薬として、 α−ナフトールフタレイン 0.001無機及び/又は有機顔料として、 クロモフタルレッド(縮合アゾ系顔料) 0.001から成る成分をブレンダー中で充分に混合し、歯科用アルギン酸塩印象材組成物を得た。
【0017】<変色によるゲル化時間確認の正確さ>前記組成物17gと水40ccとを計量し、歯科用ラバ−カップにて混合して20秒間練和後、JIS T6505に規定されている永久歪試験体作製用金型に注入し35℃温水中に浸漬した後、目視にて変色が確認できた時点で温水より取り出し永久歪試験を行った。次に、同様にして前記組成物を練和後、永久歪試験用金型に注入し35℃温水中に浸漬し、変色が確認できた時点より更に1分長く経過した後に取り出して永久歪試験を行った。この両者の永久歪の差異が殆どなければ変色した時点でゲル化が完了していたと判断できる。結果を表1に纏めて示す。
【0018】<歯科用アルギン酸塩印象材組成物と水との馴染み易さ>前記組成物17gと水40ccとを計量し、歯科用ラバ−カップにて混合して混和する際に、前記組成物が水に馴染んで実際に練和操作を開始することができる時間を目安として歯科用アルギン酸塩印象材組成物と水との馴染みを「良好」及び「悪い」の2段階で評価した。結果を表1に纏めて示す。
【0019】
<実施例2>歯科用アルギン酸塩印象材組成物の基本組成として、 アルギン酸ナトリウム 14(重量%)
硫酸カルシウム二水塩 15 第三リン酸ナトリウム 0.8 炭酸ナトリウム 0.2 弗化チタン酸カリウム 1 ケイソウ土 67特定の水溶性ポリエーテルとして、 ポリプロピレングリコール 1特定のpH指示薬として、 α−ナフトールフタレイン 0.01無機及び/又は有機顔料として、 チタンイエロー 0.99から成る成分をブレンダー中で充分に混合し、歯科用アルギン酸塩印象材組成物を得た。実施例1と同様の試験を行い結果を表1に纏めて示す。
【0020】
<実施例3>歯科用アルギン酸塩印象材組成物の基本組成として、 アルギン酸ナトリウム 15(重量%)
硫酸カルシウム二水塩 15 第三リン酸ナトリウム 0.7 炭酸ナトリウム 0.3 弗化チタン酸カリウム 1 ケイソウ土 57.9特定の水溶性ポリエーテルとして、 ポリプロピレングリコール 5.5特定のpH指示薬として、 フェノールフタレイン 0.1無機及び/又は有機顔料として、 コバルトブルー 4.5から成る成分をブレンダー中で充分に混合し、歯科用アルギン酸塩印象材組成物を得た。実施例1と同様の試験を行い結果を表1に纏めて示す。
【0021】
<実施例4>歯科用アルギン酸塩印象材組成物の基本組成として、 アルギン酸ナトリウム 15(重量%)
硫酸カルシウム二水塩 15 第三リン酸ナトリウム 0.5 炭酸ナトリウム 0.5 弗化チタン酸カリウム 1 ケイソウ土 66.475特定の水溶性ポリエーテルとして、 ポリプロピレングリコール 1.5特定のpH指示薬として、 α−ナフトールフタレイン 0.01 フェノールフタレイン 0.005無機及び/又は有機顔料として、 クロモフタルイエロー(縮合アゾ系顔料) 0.01から成る成分をブレンダー中で充分に混合し、歯科用アルギン酸塩印象材組成物を得た。実施例1と同様の試験を行い結果を表1に纏めて示す。
【0022】
<比較例1>歯科用アルギン酸塩印象材組成物の基本組成として、 アルギン酸ナトリウム 15(重量%)
硫酸カルシウム2水塩 15 第3リン酸ナトリウム 0.8 炭酸ナトリウム 0.2 弗化チタン酸カリウム 1 ケイソウ土 67.99特定のpH指示薬として、 α−ナフトールフタレイン 0.01から成る成分をブレンダー中で充分に混合し、歯科用アルギン酸塩印象材組成物を得た。実施例1と同様の試験を行い結果を表1に纏めて示す。
【0023】
<比較例2>歯科用アルギン酸塩印象材組成物の基本組成として、 アルギン酸ナトリウム 15(重量%)
硫酸カルシウム2水塩 15 第3リン酸ナトリウム 0.8 炭酸ナトリウム 0.2 弗化チタン酸カリウム 1 ケイソウ土 66.99特定のpH指示薬として、 α−ナフト−ルフタレイン 0.01特定の水溶性ポリエーテルとして、 ポリプロピレングリコ−ル 1から成る成分をブレンダー中で充分に混合し、歯科用アルギン酸塩印象材組成物を得た。実施例1と同様の試験を行い結果を表1に纏めて示す。
【0024】
【表1】

【0025】表1より明らかなように、本発明に係る歯科用アルギン酸塩印象材組成物は、変色直後に取り出した時とそれより1分経過した後の永久歪の間に差異はなく、ゲル化の終了と変色を確認した時間とが一致していることが分かる。これに対して、比較例1のpH指示薬のみを含有した組成物は、ゲル化終了前のかなり早い時期に変色してしまい変色直後の永久歪と変色から1分経過した後の永久歪とで著しく違いが大きい。また比較例2は、比較例1よりは変色時間が延長しゲル化終了と変色時間との差異が小さいが、顔料を含んでいないため変色の判断が明確でなく実際のゲル化時間と変色の確認時間との差が大きく問題である。
【0026】
【発明の効果】以上に詳述したように、本発明に係る歯科用アルギン酸塩印象材組成物は従来のpH指示薬を用いた変色性の歯科用アルギン酸塩印象材組成物のゲル化終了の確認が不正確で且つ確認が難しいこと、及び練和時に用いる水との馴染みが悪いという欠点を解消し、水との馴染みが良く且つ正確にゲル化時間を変色により確認することが可能であり、その歯科分野に貢献する価値は非常に大きなものである。
【出願人】 【識別番号】000181217
【氏名又は名称】株式会社ジーシー
【住所又は居所】東京都板橋区蓮沼町76番1号
【出願日】 平成13年12月25日(2001.12.25)
【代理人】 【識別番号】100070105
【弁理士】
【氏名又は名称】野間 忠之
【公開番号】 特開2003−192519(P2003−192519A)
【公開日】 平成15年7月9日(2003.7.9)
【出願番号】 特願2001−391026(P2001−391026)