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【発明の名称】 美白性皮膚外用剤およびその製造方法
【発明者】 【氏名】田北 雅夫

【要約】 【課題】甘草の水性溶媒抽出物を含有する美白性外用皮膚剤において、美白効力が充分に発揮されるものを提供することである。

【解決手段】生薬である甘草、または甘草と柴胡を混ぜた混合生薬を100℃以上に加熱した水性溶媒で抽出し、分取した抽出液を活性炭で濾過するなどして懸濁物質を除去して得られる透明性抽出液を有効成分として配合した美白性皮膚外用剤とする。美白に必要な成分が選択的に残されて美白効力が充分に発揮される美白性皮膚外用剤になる。
【特許請求の範囲】
【請求項1】 生薬である甘草の水性溶媒抽出液から懸濁物質を分離して得られる透明性抽出液を有効成分として含有する美白性皮膚外用剤。
【請求項2】 分離が、活性炭で濾過する分離である請求項1に記載の美白性皮膚外用剤。
【請求項3】 生薬である甘草および柴胡の水性溶媒抽出液から懸濁物質を分離して得られる透明性抽出液を有効成分として含有する美白性皮膚外用剤。
【請求項4】 分離が、活性炭で濾過する分離である請求項3に記載の美白性皮膚外用剤。
【請求項5】 生薬である甘草、または甘草と柴胡を混ぜた混合生薬を100℃以上に加熱した水性溶媒で抽出し、これを濾過して得られる透明性抽出液を有効成分として配合することからなる美白性皮膚外用剤の製造方法。
【発明の詳細な説明】【0001】
【発明の属する技術分野】この発明は、皮膚の色素沈着を予防し、または沈着した色素を淡白化する化粧料等の美白性皮膚外用剤に関する。
【0002】
【従来の技術】通常、皮膚の表皮に存在するメラニン色素は、色素細胞によって産出されて皮膚の新陳代謝(28日周期)で自然に排出されるが、多量の紫外線を浴びた後に新陳代謝機能が充分に働かなければ、表皮、真皮内にメラニン色素が沈着して、シミ、ソバカスなどの皮膚に異常な色素沈着が起こる。
【0003】従来の美白性化粧料としては、甘草エキス、プラセンタエキス、アスコルビン酸などがある。これらの有効成分は、皮膚に取り込まれた場合に新陳代謝機能を活発化させ、メラニン色素の沈着を防止する効果のあることが知られている。
【0004】また、甘草からの抽出物を化粧料に配合してシミ防止を図ることが、例えば特開昭61−122209号公報や特開昭63−23809号公報に開示されている。
【0005】これらに開示された技術では、エタノールなどを抽出溶媒として使用し、甘草(カンゾウ)から抽出した局法に規定の甘草エキスを使用していた。
【0006】因みに、局法に規定される甘草エキスは、甘草の細切1kgに常水または精製水5リットルを加えて2日間冷浸し、布漉した後、常水または精製水3リットルを加えて12時間冷浸し、次いで布漉ししてろ液を合わせ、蒸発して3リットルとし、冷却した後、エタノール1リットルを加えて2日間冷所に放置した後にろ過し、ろ液を蒸発して軟エキスとしたものである。
【0007】
【発明が解決しようとする課題】しかし、このような局法エキスの製造方法では、濾過操作を遠心分離とするか、または布ごしで行うので、微粒子や比重の小さな物質は、水に不溶性の懸濁物質として抽出液中に残存する。そして、このような従来の甘草抽出物は、メラニン色素の沈着を抑制する作用が不安定であり、その効果に個人差が大きく現れて確実な美白作用を発揮させることが容易ではなかった。
【0008】本願の発明者は、上記の甘草抽出物とその作用について考察した結果、局法カンゾウエキスは抽出溶媒としてエタノールを用いているために多くの抽出物を含有するが、美白有効成分としては多くの成分は必ずしも必要ではなく、却って多くの成分が複雑な反応を招来して、本来得られるべき美白作用が充分に発揮されていないのではないかと考えた。
【0009】そこで、この発明の課題は上記した問題点を解決し、甘草の水性溶媒抽出物を含有する美白性外用皮膚剤において、美白に必要な成分を選択的に含有し効率よく美白作用が充分に発揮されることでありまたそのような美白性外用皮膚剤を効率よく製造することである。
【0010】
【課題を解決するための手段】上記の課題を解決するため、この発明においては、生薬である甘草の水性溶媒抽出液から懸濁物質を分離して得られる透明性抽出液を有効成分として含有する美白性皮膚外用剤としたのである。
【0011】上記した成分からなる美白性皮膚外用剤は、その作用機構について充分に明らかではないが、活性炭で濾過後のグリチルリチンやリクイリチンの濃度が甘草エキス(日本薬局方)の1/1000濃度程度になるにも拘わらず、効率よく美白作用を発揮することからみて、濾液は他の競合する成分や不作用の成分を含んでいないのではないかと考えられる。少なくとも活性炭濾過などにより懸濁物質が除去された濾液などの透明性液体は、甘草エキス(日本薬局方)が遠心分離か布ごしで濾過されることにより、通常、含まれている水に不溶な微粒子や低比重物質からなる懸濁物質を含んでおらず、これらは競合する成分や不作用の成分であると考えられる。
【0012】すなわち、上記した美白性皮膚外用剤に係る発明では、甘草の水性溶媒抽出液で抽出された成分のうち、抽出液中に懸濁物質として存在するような微量な非水溶性の固形成分までもが完全に分離除去されているので、この発明の作用を制限するような不純物のない水溶性成分のみを有効成分とする美白性皮膚外用剤になる。
【0013】そのため、従来より少なく選択された美白有効成分からなる皮膚外用剤は後述の実験結果からも明らかなように、本来得られるべき美白作用が充分に発揮されるものになる。
【0014】美白作用は、上記の美白性皮膚外用剤において、分離が活性炭で濾過する分離である場合には、特に確実に奏される。
【0015】また、上記の課題を解決するため、生薬である甘草および柴胡の水性溶媒抽出液から懸濁物質を分離して得られる透明性抽出液を有効成分として含有する美白性皮膚外用剤としたのである。
【0016】上記した美白性皮膚外用剤に係る発明では、甘草および柴胡の水性溶媒抽出液で抽出された成分のうち、抽出液中に懸濁物質として存在するような微量な非水溶性の固形成分まで完全に分離除去されて、不純物のない水溶性成分のみを美白有効成分とする皮膚外用剤になる。
【0017】そのため、美白有効成分として従来よりも少ない成分からなるこの発明の美白性皮膚外用剤は、後述する実験結果からも明らかなように、本来得られるべき甘草および柴胡の美白作用が充分に発揮されるものになる。
【0018】このように確実な美白作用は、上記の美白性皮膚外用剤において、分離が活性炭で濾過される分離である場合に、いっそう確実に奏される。
【0019】また、上述した美白性皮膚外用剤の製造方法として、生薬である甘草、または甘草と柴胡を混ぜた混合生薬を100℃以上に加熱した水性溶媒で抽出し、分取した抽出液を活性炭で濾過して得られる透明性抽出液を有効成分として配合することからなる美白性皮膚外用剤の製造方法を採用することができる。
【0020】上記構成の美白性皮膚外用剤は、甘草を温水又は熱水で抽出し、活性炭素を濾過材として用いて不純物を取り除いた後、この抽出物を用いて美白化粧料を作成する。また、甘草および柴胡の混合物を上記の方法で処理して美白化粧料を作成することもできる。
【0021】
【発明の実施の形態】この発明に用いる甘草は、スペイン、シベリヤ、中国などに産するマメ科の薬用植物であるカンゾウであり、学名をグリシルリーザ ウラレンシス フィッシャー(Glycyrrhiza urarelensis Fischer)またはグリシルリーザ グラブラエル バー グランダリフェラ レグ エ ヘルド(Glycyrrhiza glabra L.var.glandulifera REG.et HERD)またはこれらの近縁種の根または根き茎(葡萄茎またはストロンとも呼ばれる)を皮つきのままか、またはコルク皮を除いて乾燥した生薬であって、粉末状のものか、または水性溶媒で抽出したものを皮膚外用剤の成分として用いる。
【0022】この発明で皮膚外用剤の他の成分として用いる柴胡(サイコ)は、セリ科のミシマサイコ、学名:バプラム ファルケイタム エル(Bupleum falcatum L.)またはその近縁種の根を乾燥した生薬であり、これを粉砕した粉末状のもの、または水性溶媒で抽出したもの等を用いることができる。
【0023】上記の生薬は保存性を高める目的で乾燥させたものであってもよく、これを粉砕または摩砕して粉末化したものであってもよい。
【0024】有効成分を抽出する水性溶媒は、水(中性、弱酸または弱アルカリ性のいずれであってもよい。)または水を主成分とする水性の抽出溶剤であり、アルコール含有の水溶液なども採用できる。
【0025】水性溶媒は、温水または熱水の状態で抽出操作に用いることが効率よく好ましいが、特に100℃以上、好ましくは100〜130℃で抽出操作を行なうと、美白に有効な成分が効率よく抽出されることが判明している。
【0026】得られた抽出液は、活性炭などの多孔質剤を濾材に用いて濾過するか、または固体と液体の比重差重力または遠心力による沈降速度の差を利用して固液分離して、懸濁物質を除去すればよい。
【0027】この発明に用いられる活性炭は、その材質を特に限定して使用するものではないが、木炭、竹または椰子殻を原料としたものが、微小粒子からなる懸濁物質の吸着効率が良くて好ましいものである。
【0028】前述のように、濾過の操作は、活性炭の粒を詰めたカラムなどの容器に抽出液を通過させるか、または抽出液に活性炭粉末(必要に応じてタルクなどの濾過補助剤)を加えて攪拌された混合物をろ紙や濾布などの前記活性炭の粉末粒子を捕捉するフィルターでろ過する方法も採用することができその他に遠心分離沈降速度差による分離などの手段を採用することもできる。
【0029】固・液分離して得られた液状の濾液を有効成分として配合するには、抽出液を適当な親水性・親油性があって皮膚付着性の良い皮膚外用剤用の基剤に混和するか、または抽出液をクリーム、軟膏、乳液などに混合することが好ましい。
【0030】皮膚外用剤の形態は、特に限定するものではないが、水溶性、乳液(スキンミルク)、クリーム、軟膏、パウダーなどのように塗布の容易な製剤形態が好ましい。
【0031】
【実施例および比較例】〔実施例1〜3および比較例〕甘草1500グラムと精製水10〜15リットルをステンレス容器に入れ、100℃に加熱して30分間煎じて抽出し、抽出液に1500gの活性炭(和光純薬社製:活性炭素粉末)を加えてよく攪拌し、さらに3000gのタルク(丸石製薬社製)を加えて攪拌した後、濾紙にて濾過し、得られた濾液を加熱(100℃以下)してタール状になるまで濃縮した。
【0032】得られた濃縮物に親水軟膏(菱山製薬社製)を加えて15%クリームを作製した。
【0033】実地例2は抽出温度を120℃としたこと以外は、実施例1と全く同じ条件でクリームを作製した。
【0034】実施例3は甘草1500グラムと柴胡1500グラムを抽出材料として併用し、実施例2と同様の方法でクリームを作製した。
【0035】また、比較例1として、親水軟膏(菱山製薬社製)にカンゾウエキス(日本薬局方)を加えて15%クリームを作製した。
【0036】比較例2として、実施例2における甘草に代えて柴胡1500グラムを抽出材料として採用したこと以外は全て実施例2と同様の方法によりクリームを作製した。
【0037】なお、参考のため、以下の表1にそれぞれの濃縮液または甘草エキスのグリチルリチンとリクイリチンの含有量を示した。
【0038】
【表1】

【0039】表1の結果からも明らかなように、リクイリチンは、グリチルリチンと同様にカンゾウの品質表示の標準とされる物質であり、日局カンゾウエキスの場合は、グリチルリチンを4.5%(45mg/g)以上含有する。ここで、表1に示す結果からも明らかなように、カンゾウ及びその水溶液をろ過して得られるエキスは、比較例1のカンゾウエキスに比べてグリチルリチンを1/2000以下しか含まず、またリクイリチンは1/400以下であり、従来のカンゾウエキスとは全く別のエキスであることがわかる。
【0040】また、実施例と比較例とではグリチルリチンとリクイリチンの含有量が全く異なることから、特性も異なる組成物であると推定される。また、実施例1と実施例2でもグリチルリチンとリクイリチンの含有比率が異なるから特性の異なる組成物であると推定される。
【0041】得られた実施例1〜3および比較例1、2の皮膚外用クリームを、それぞれ顔面にシミのあるパネラー(成人)に対して表2中に示す例数だけ毎日塗布させ、使用1ヶ月後のシミの色の改善効果をアンケート調査した。この結果について以下の評価に従って点数化したものを表2中に併記した。
非常に有効:本人及び他の人も薄くなったと感じる。
有効 :本人又は他の人のどちらかが薄くなったと感じる。
やや有効 :本人又は他の人のどちらかが薄くなったかもしれないと感じる。
無効 :本人及び他の人のどちらも薄くなったと感じない。
無効 :0点 やや有効:1点 有効:2点 非常に有効:3点【0042】
【表2】

【0043】また、表2の結果からも明らかなように、比較例1、実施例1、実施例2、実施例3の順に効力の増強があることがわかり、実施例1〜3では0.92以上の評価点であり、有効な美白作用であった。
【0044】これに対して、比較例1は、最も評価点数の低い実施例1の評価点の半分以下しか得られないものであった。また、比較例2の濃度では、実質的に有効な美白効果はなかったと考えられる。
【0045】次に、以下の吸光度法で実施例2、3と比較例2のチロシナーゼ活性阻害率を測定した。
<吸光度法によるチロシナーゼ活性抑制作用(阻害率の計算)>フナコシ社製のマッシュルーム由来のチロシナーゼを用い、以下の試薬A〜Eを用いてチロシナーゼ活性阻害作用について検討した。
A.L−チロシン溶液(0.5mg/ml) 0.1 mlB.7.8mM アスコルビン酸を含む1/5Mリン酸緩衝液(pH7.0)
0.025mlC.0.1%硫酸銅液 0.025mlD.チロシナーゼ溶液(37.5mg/100ml) 0.02 mlE.希釈した試料溶液 0.1 ml【0046】酵素反応は、大日本製薬社製マルチプレートリーダー(マルチスキャンアセント)を用い、FALCON社の96穴マルチウェルプレートで反応を行って吸光度を測定した。すなわち、最初にA、B、C、D、Eの各液を加えて0時間での620nmの吸光度(Ao)を測定した。その後37℃で一時間インキュベートし、再び620nmの吸光度(At)を測定した。また同時にE液の代わりに精製水を0.1ml加えた物を用意し、同様の反応を行って吸光度(Ab)を測定し、下記の式に従ってチロシナーゼ活性阻害率を算出した。
阻害率(%)=[Ab−(At−Ao)/Ab]×100【0047】実施例2、3と比較例2の濃度と阻害率をグラフにプロットし、50%阻害に必要なそれぞれの濃度を測定した。なお、表3には実施例2、実施例3および比較例2が50%チロシナーゼ活性阻害に必要な濃度を示した。
【0048】
【表3】

【0049】表3の結果からも明らかなように、カンゾウのみの抽出液である実施例2よりも、カンゾウと柴胡を併用した実施例3の50%チロシナーゼ活性阻害必要濃度のほうが高いことから、カンゾウに対して柴胡を加えてもチロシナーゼ活性阻害効果が増強されるものではない。
【0050】しかし、前述の表2の結果からも明らかなように、実施例3の美白効果は、実施例2の効果よりも優れていることから、美白効果はチロシナーゼ活性阻害効果にだけよるものでなく、他の要因、例えば柴胡に含まれる水溶性液状成分がカンゾウの美白効果を増強しているとも推測できる。
【0051】
【発明の効果】本願の美白性皮膚外用剤に係る発明は、以上説明したように、生薬である甘草の水性溶媒抽出液から懸濁物質を分離して得られる透明性抽出液を有効成分として含有するものであるから、美白に必要な成分が選択的に残されて効率よく作用し、美白作用が充分かつ確実に発揮されるという利点がある。
【0052】また、甘草と共に柴胡を抽出材料とする本願の美白性皮膚外用剤に係る発明では、上記の利点と共に柴胡の有効成分の作用が加わって美白効果がより確実に発揮される。
【0053】さらにまた、本願の美白性皮膚外用剤の製造方法に係る発明では、所定温度での抽出操作が行なわれることにより、有効成分が充分な量だけ確実に含まれており美白作用が確実に奏される美白性皮膚外用剤を効率よく製造できる。
【出願人】 【識別番号】596162360
【氏名又は名称】田北 雅夫
【出願日】 平成14年9月19日(2002.9.19)
【代理人】 【識別番号】100074206
【弁理士】
【氏名又は名称】鎌田 文二 (外2名)
【公開番号】 特開2003−183123(P2003−183123A)
【公開日】 平成15年7月3日(2003.7.3)
【出願番号】 特願2002−273255(P2002−273255)