| 【発明の名称】 |
歯科用ペースト系グラスアイオノマーセメント組成物 |
| 【発明者】 |
【氏名】小林 恵三 【住所又は居所】東京都板橋区蓮沼町76−1 株式会社ジーシー内
【氏名】加藤 伸一 【住所又は居所】東京都板橋区蓮沼町76−1 株式会社ジーシー内
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| 【要約】 |
【課題】グラスアイオノマーセメントの優れた特長を維持しながらも操作性が良く、重合性モノマーを用いないペースト状のグラスアイオノマーセメント組成物を提供する。
【解決手段】歯科用ペースト系グラスアイオノマーセメント組成物を、第1ペーストと第2ペーストとから成る構成とし、第1ペーストは、α−β不飽和カルボン酸の重合体:30〜70重量%と水:30〜70重量%とから成り、第2ペーストは、フルオロアルミノシリケートガラス粉末:50〜85重量%と水溶性の増粘剤:0.005〜1重量%と残部の水とから成る。 |
【特許請求の範囲】
【請求項1】 第1ペーストが、α−β不飽和カルボン酸の重合体:30〜70重量%と水:30〜70重量%とから成り、第2ペーストが、フルオロアルミノシリケートガラス粉末:50〜85重量%と水溶性の増粘剤:0.005〜1重量%と残部の水とから成る歯科用ペースト系グラスアイオノマーセメント組成物。 【請求項2】 水溶性の増粘剤の配合量が0.01〜0.4重量%である請求項1に記載の歯科用ペースト系グラスアイオノマーセメント組成物。
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【発明の詳細な説明】【0001】 【産業上の利用分野】本発明は、歯科用グラスアイオノマーセメントに関するものであり、更に詳細には、第1ペーストと第2ペーストとから成り、両者を混合することにより硬化するペースト状の歯科用グラスアイオノマーセメント組成物に関するものである。 【0002】 【従来の技術】歯科用セメントは種類が多く幅広い用途に使用されている。現在使用されている主なものは、酸化亜鉛とリン酸との反応を利用したリン酸亜鉛セメント,酸化亜鉛とポリカルボン酸との反応を利用したポリカルボキシレートセメント,酸化亜鉛とユージノールとの反応を利用した酸化亜鉛ユージノールセメント,フルオロアルミノシリケートガラスとポリカルボン酸との反応を利用したグラスアイオノマーセメント,更にはアクリル系モノマーの重合を利用したレジンセメント等が代表的なものである。 【0003】これらの歯科用セメントにはそれぞれ一長一短があり、例えばリン酸亜鉛セメントは歯質との接着性がないことや硬化初期におけるリン酸による刺激があることが、ポリカルボキシレートセメントは硬化体の最終硬化度が低いことが、酸化亜鉛ユージノールセメントは強度が低く口腔内耐久性が劣るため仮封や仮着に使用が限定されることやユージノール自体に刺激があることが問題点として挙げられる。また、レジンセメントは他のセメントに見られない優れた接着性や機械的強度等を利点として持つ反面、操作性が煩雑で生体親和性に疑問が残されている等の欠点を有している。 【0004】一方、グラスアイオノマーセメントは、ポリカルボン酸等の酸と、フルオロアルミノシリケートガラス粉末とを水の存在下で反応させ硬化させて使用される。このグラスアイオノマーセメントは生体に対する親和性が極めて良好であることや硬化体が半透明であり審美性に優れていること、エナメル質や象牙質等の歯質に対して優れた接着力を有していること、更にはガラス中に含まれるフッ素による抗齲蝕作用があること等優れた特長を有しているため歯科分野では齲蝕窩洞の充填,クラウン・インレー・ブリッジや矯正用バンドの合着,窩洞の裏層,根管充填用シーラー,支台築造や予防填塞等に広く使用されている歯科用セメントである。 【0005】このようにグラスアイオノマーセメントは様々な特長を有しているが、一般的な歯科用グラスアイオノマーセメントは粉成分と液成分とで構成されており、計量及び練和等の操作の煩雑さが短所の一つになっている。そこで、本出願人は特開平11−228327号公報に開示されているようなポリカルボン酸と水とポリカルボン酸と反応しない充填材とを主成分とする第1ペースト及びフルオロアルミノシリケートガラス粉末と酸基を持たない重合性モノマーとを主成分とする第2ペーストから成り、重合性モノマーの重合方法に応じて重合触媒を便宜配合したペースト状のグラスアイオノマーセメント組成物を提案した。 【0006】しかし、前述したペースト状のグラスアイオノマーセメントは、フルオロアルミノシリケートガラス粉末を含む成分をペースト状とするために重合性モノマーを用いているため機械的強度には優れているものの、重合後に残留する未重合モノマーの生体への悪影響が生じる懸念があった。また、重合性モノマーを含まずにフルオロアルミノシリケートガラス粉末が含まれる成分をペースト状とする場合には、一般的に親水性の増粘剤を用いることとなるが、グラスアイオノマーセメント組成物中の増粘剤の配合量が増えれば増えるほど硬化体の圧縮強さ等の機械的強度が低下する傾向があるため、重合性モノマーを用いないペースト系のグラスアイオノマーセメント組成物は実用化されていないのが現状である。 【0007】 【発明が解決しようとする課題】本発明は、グラスアイオノマーセメントの優れた特長を維持しながらも操作性が良く、重合性モノマーを用いないペースト状のグラスアイオノマーセメント組成物を提供することを課題とする。 【0008】 【課題を解決するための手段】本発明者等は前記課題を解決すべく鋭意検討した結果、α−β不飽和カルボン酸と水溶液とから成る第1ペーストと、フルオロアルミノシリケートガラス粉末と水と僅かな量の水溶性の増粘剤とから成る第2ペーストとすると、優れた操作性を有するペースト状のグラスアイオノマーセメント組成物を得ることが可能であり、重合性モノマーを含まずともグラスアイオノマーセメントの優れた特長を最大限利用することができることを究明して本発明を完成したのである。 【0009】 【発明の実施の形態】即ち本発明に係る歯科用ペースト系グラスアイオノマーセメント組成物は、第1ペーストが、α−β不飽和カルボン酸の重合体:30〜70重量%と水:30〜70重量%とから成り、第2ペーストが、フルオロアルミノシリケートガラス粉末:50〜85重量%と水溶性の増粘剤:0.005〜1重量%と残部の水とから成る歯科用ペースト系グラスアイオノマーセメント組成物であり、水溶性の増粘剤の配合量が0.01〜0.4重量%であるとより好ましいのである。 【0010】本発明に係る歯科用ペースト系グラスアイオノマーセメント組成物の第1ペーストに使用するα−β不飽和カルボン酸の重合体は、従来のグラスアイオノマーセメントに使用されているようなα−β不飽和モノカルボン酸又はα−β不飽和ジカルボン酸の重合体であれば特に限定されずに使用可能であり、アクリル酸,メタアクリル酸,2−クロロアクリル酸,3−クロロアクリル酸,アコニット酸,メサコン酸,マレイン酸,イタコン酸,フマール酸,グルタコン酸,シトラコン酸の中から選ばれた1種以上を含む共重合体又は単独重合体を例示することができ、更に重合可能なエチレン性不飽和二重結合を含まない重量平均分子量5,000〜40,000の重合体であることが好ましい。これらのα−β不飽和カルボン酸重合体において、重量平均分子量が5,000未満である場合には硬化組成物の強度が低くなり易く、また歯質への接着力も低下する傾向がある。重量平均分子量が40,000を超える場合には練和時の稠度が大き過ぎて練和が困難になる傾向がある。このようなα−β不飽和カルボン酸重合体の第1ペースト中の割合は30〜70重量%であること必要である。30重量%未満では歯科用グラスアイオノマーの特長である歯質接着性が低下し、70重量%を超えるとペーストの粘度が高くなり練和性及び操作感が低下する。 【0011】本発明に係る歯科用ペースト系グラスアイオノマーセメント組成物の第1ペースト及び第2ペーストに使用する水は、第1ペーストで使用されるα−β不飽和カルボン酸重合体と、後述する第2ペーストで使用されるフルオロアルミノシリケートガラス粉末との中和反応のため必要である。第1ペースト中に含まれる水は30〜70重量%であり、30重量%未満ではペーストの粘度が高くなりすぎて操作性が低下し、70重量%を超えると歯科用グラスアイオノマーの特長である歯質接着性が低下する。また、第2ペースト中に含まれる水は第2ペーストの構成成分であるフルオロアルミノシリケートガラス粉末と水溶性の増粘剤との残部であり、少なすぎると歯科用グラスアイオノマーの特長である歯質接着性が低下し、多すぎると硬化体の物性が低下する傾向がある。 【0012】本発明に係る歯科用ペースト系グラスアイオノマーセメント組成物の第2ペーストに使用するフルオロアルミノシリケートガラス粉末としては、具体的には特公平6−27047号公報に開示されているようなシリカとアルミナを主成分とし、それにフッ化カルシウム,フッ化アルミニウム,リン酸アルミニウム等を混合し溶融し冷却した後に粉砕するという公知のガラス作製法により作製したフルオロアルミノシリケートガラス粉末等を挙げることができる。 【0013】そしてこのような本発明に係る歯科用ペースト系グラスアイオノマーセメント組成物の第2ペーストに使用するフルオロアルミノシリケートガラス粉末は、その平均粒径は0.02〜10μm、比重が2.4〜4.0であることが好ましい。これは平均粒径が10μmを超えると表面の平滑性が研磨によって得られないので口腔内での接触感が良くないからであり、0.02μm未満の微粉であると絶対量として粉末が入り難く物性が低下してしまう虞があるからである。なお、粒径は通常の手段を用いて測定することができ、長径と短径の平均値である。 【0014】このフルオロアルミノシリケートガラス粉末は、第2ペースト中に50〜85重量%の範囲で用いる。50重量%未満では硬化体の物性が劣り、85重量%を超えると第2ペーストが堅くなり混合時の操作性が悪化する。 【0015】本発明に係る歯科用ペースト系グラスアイオノマーセメント組成物では、第2成分において重合性モノマーを用いずに操作性の高いペースト状とすることを目的として水溶性の増粘剤を用いる。本発明に用いる水溶性の増粘剤は物性に影響を与えない程の僅かな量、具体的には第2ペースト中に1重量%以下、好ましくは0.4重量%以下の配合量であることが必要である。具体的には1重量%水溶液としたときに温度が25℃においてB型粘度計を用いて測定した値が500〜10,000mPa・sとなる増粘効果を有する水溶性の増粘剤であることが好ましい。1重量%水溶液としたときに温度が25℃においてB型粘度計を用いて測定した値が500mPa・s未満の増粘剤では、少ない配合量で充分な増粘効果を得難い。一方、1重量%水溶液としたときに温度が25℃においてB型粘度計を用いて測定した値が10,000mPa・sを超える増粘剤ではペーストの練和性が低下する傾向がある。 【0016】このような本発明に使用する水溶性の増粘剤としては、無機系,有機系のどちらを使用しても構わず、例えば、カルボキシメチルセルロースカルシウム,カルボキシメチルセルロースナトリウム,デンプン,デンプングリコール酸ナトリウム,デンプンリン酸エステルナトリウム,メチルセルロース,ポリアクリル酸ナトリウム,アルギン酸,アルギン酸ナトリウム,アルギン酸プロピレングリコールエステル,カゼイン,カゼインナトリウム,ポリエチレングリコール,エチルセルロース,ヒドロキシエチルセルロース,グルテン,ローカストビーンガム,ゼラチン等が挙げることができ、中でもカルボキシメチルセルロースカルシウム,カルボキシメチルセルロースナトリウムが僅かな量でも増粘効果が高く安価であるために好ましい。これらの水溶性の増粘剤は2種以上を混合して用いても良いのは勿論である。水溶性の増粘剤は第2成分中に0.005〜1重量%の範囲にあることが好ましい。0.005重量%未満では増粘剤による効果が得られず、1重量%を超えると硬化体の物性が低下する傾向がある。更に、この水溶性の増粘剤の配合量はできる限り少ないことが硬化体の物性を低下させないので、第2成分中に0.01〜0.4重量%の範囲にあることがより好ましい。 【0017】なお、本発明に係る歯科用ペースト系グラスアイオノマーセメント組成物には必要に応じて通常用いられる抗菌剤,顔料等の着色剤を適宜配合することもできるのは勿論である。 【0018】 【実施例】以下実施例を挙げて本発明を具体的に説明する。 <フルオロアルミノシリケートガラス粉末A>酸化アルミニウム22g,無水珪酸23g,フッ化カルシウム12g,リン酸カルシウム15g及びフッ化ストロンチウム28gを乳鉢にて充分に混合撹拌して得たバッチを磁器るつぼに入れ、電気炉にて約7℃/分の昇温速度にて1200℃の温度に昇温し3時間係留した後、融液を水中に流し出して得た急冷ガラスを粉砕して、フルオロアルミノシリケートガラス粉末Aとした。この粉末の平均粒径は2.5μmであった。 【0019】<フルオロアルミノシリケートガラス粉末B>酸化アルミニウム23g,無水珪酸31g,フッ化カルシウム1g,クライオライト9g,リン酸アルミニウム2g及びフッ化ストロンチウム34gを乳鉢にて充分に混合撹拌して得たバッチを磁器るつぼに入れ、電気炉にて約7℃/分の昇温速度にて1200℃の温度に昇温し3時間係留した後、融液を水中に流し出して得た急冷ガラスをを粉砕して、フルオロアルミノシリケートガラス粉末Bとした。この粉末の平均粒径は2.5μmであった。 【0020】<実施例1〜8,比較例1〜3>表2に示す第一工業製薬株式会社製のカルボキシメチルセルロースナトリウム(商品名:セロゲン)の各品番のものを水溶性の増粘剤として使用して、表1に示す配合にて歯科用ペースト系グラスアイオノマーセメント組成物を調製した。第1ペースト1.0gと第2ペースト1.3gとをそれぞれ計り採り、練和紙上でスパチュラを用いて15秒間練和した時の操作性及び以下の試験を行った。 【0021】<圧縮強度>練和後の試料を内径4mm,高さ6mmの金属製割型内に填入し、金属板にて上下を塞ぎクランプで圧接・固定した。これを温度37℃,湿度100%の雰囲気中に1時間後放置して硬化させて金属製割型より外し、得られた円柱状の試料を温度37℃の蒸留水に24時間浸漬した。その後、その試験片を万能試験機(商品名:オートグラフ,株式会社島津製作所製)にてクロスヘッドスピード1mm/分の条件にて圧縮試験を行った。その結果を表1に纏めて示した。 【0022】<接着強さ>牛歯下顎前歯の歯根部を切断し抜随した後、#600の耐水研磨紙を用いて被着象牙質を露出した。この牛歯象牙質面に直径3mmの穴を穿ったマスキングテープを貼り、練和後の試料を穴の上に載せ、上からステンレス棒を押し付けて立て硬化させた試験片を温度37℃,湿度100%の雰囲気中に1時間放置した後に更に温度37℃の蒸留水に24時間浸漬した。その後、その試験片を万能試験機(商品名:オートグラフ,株式会社島津製作所製)にてクロスヘッドスピード1mm/分の条件で引張って接着強さを測定した。その結果を表1に纏めて示した。 【0023】 【表1】
【0024】 【表2】
【0025】実施例1〜6は操作性の良い歯科用ペースト系グラスアイオノマーセメント組成物であった。一方、第2ペースト中の水溶性の増粘剤が0.001重量%と少ない比較例1はペースト状のグラスアイオノマーセメント組成物を得ることができず、10重量%と多く配合した比較例2は操作性の良いペースト状のグラスアイオノマーセメント組成物を得ることができたものの硬化体の圧縮強さ等の機械的強度が実施例の歯科用ペースト系グラスアイオノマーセメントと比較して劣っていた。 【0026】 【発明の効果】前記実施例及び比較例から明らかなように本発明に係る歯科用ペースト系グラスアイオノマーセメント組成物は、重合性モノマーを用いずともフルオロアルミノシリケートガラスを含む第2ペーストをペースト状とすることが可能であり、且つ第1ぺーストと第2ペーストとを混合して硬化させた場合にも物理的強度が低下することがなく従来のグラスアイオノマーセメントと同等の優れた接着性を有する歯科用ペースト系グラスアイオノマーセメント組成物であり、その歯科分野に貢献する価値は非常に大きなものである。
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| 【出願人】 |
【識別番号】000181217 【氏名又は名称】株式会社ジーシー 【住所又は居所】東京都板橋区蓮沼町76番1号
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| 【出願日】 |
平成13年12月17日(2001.12.17) |
| 【代理人】 |
【識別番号】100070105 【弁理士】 【氏名又は名称】野間 忠之
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| 【公開番号】 |
特開2003−183112(P2003−183112A) |
| 【公開日】 |
平成15年7月3日(2003.7.3) |
| 【出願番号】 |
特願2001−383273(P2001−383273) |
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