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【発明の名称】 シリコーンゴム系粘膜調整材用接着材
【発明者】 【氏名】今倉 貴明
【住所又は居所】東京都台東区台東1丁目38番9号 株式会社トクヤマデンタル内

【氏名】山下 光弘
【住所又は居所】東京都台東区台東1丁目38番9号 株式会社トクヤマデンタル内

【要約】 【課題】接着直後は強固な接着力を発揮するが、経時的に接着力が低下して容易に剥離できるようになる義歯床とシリコーンゴム系粘膜調整材を接着するための接着材を得る。

【解決手段】下記一般式(1)、(2)、(2’)及び(3)で示される構造単位【化1】
【特許請求の範囲】
【請求項1】 下記一般式(1)、(2)、(2’)及び(3)で示される構造単位【化1】

〔式中、R、R、R13はそれぞれ水素原子、メチル基、又はエチル基を、Rは炭素数1〜13のアルキル基又は炭素数6〜14のアリール基を、R〜R10及びR15〜R21はそれぞれ炭素数1〜6のアルキル基又は炭素数6〜14のアリール基を、R11、R12及びR22はそれぞれ水素原子、炭素数1〜6のアルキル基又は炭素数6〜14のアリール基を、R14は主鎖中にエーテル結合もしくはエステル結合を有してもよい炭素数2〜20の不飽和炭化水素基を、Aは主鎖中にエーテル結合もしくはエステル結合を有してもよい炭素数2〜20の2価の炭化水素基を、c、dはそれぞれ平均繰り返し単位数を示し、cは1〜100、dは0〜100の整数であり、且つ10≦c+d≦100、0≦d/c≦10である。〕からなり、構造単位(1)、構造単位(2)及び/又は(2’)、並びに構造単位(3)の構成比が、(1)=10〜99.99モル%、(2)及び/又は(2’)=0.5〜0.01モル%、(3)=0〜89.5モル%で、重量平均分子量が5000〜1000000である、シロキサンで修飾された(メタ)アクリル系重合体の有機溶液からなるシリコーンゴム系粘膜調整材用接着材。
【請求項2】シリコーンゴム系粘膜調整材が、(A)末端に炭素−炭素不飽和結合を持つ有機基を分子中に少なくとも2個有するオルガノポリシロキサン、(B)ケイ素原子に直接結合している水素原子が分子中に3個存在するオルガノハイドロジエンポリシロキサン、及び(C)シリコーン樹脂系充填材及び/またはシリカ系充填材(D)ヒドロシリル化触媒からなるハイドロシリレーション反応による硬化性組成物を硬化させて得たものである請求項1記載のシリコーンゴム系粘膜調整材用接着材。
【発明の詳細な説明】【0001】
【発明の属する技術分野】本発明は、義歯床とシリコーンゴム系粘膜調整材を接着するための接着材に関する。
【0002】
【従来の技術】義歯、特に総義歯の対象患者は高齢者が多く、歯槽堤は一般に骨吸収が著しく、その単位面積当たりの負担する咬合力は大きくなる。歯槽堤粘膜も老人性萎縮により薄くなるので、咬合、咀嚼圧の衝撃は緩和されずに直接歯槽骨に伝えられることになる。また硬いレジン義歯床と硬い歯槽骨との間に挟まれた薄い粘膜は咬合する度に絞められて傷つき、痛みを発することになる。
【0003】この様な難症例では、通常用いられる(メタ)アクリル系樹脂のみでレジン義歯床を製作しただけでは、義歯の維持、安定、及び支持によい結果が得られない。そのためレジン義歯床の粘膜面を適度に弾性を有する材料で裏打ち(裏装)し、失われた顎堤粘膜の粘弾性を補い、咬合時の衝撃を緩和するクッション性を与える必要がある。
【0004】このような裏装材としては、50℃までの室温でハイドロシリレーション反応により硬化する室温硬化型シリコーンゴム系のものが優れた裏装材として用いられている。しかし、シリコーンゴム系裏装材は義歯床である(メタ)アクリル系樹脂との接着性に劣るという欠点があった。そこで、この義歯床である(メタ)アクリル系樹脂と、裏装材であるシリコーンゴム系材料との接着材が幾つか開発されており、側鎖にシリル基を有する特定のアクリル系共重合体を適当な揮発性有機溶媒に溶解させたものが知られている。
【0005】例えば、(メタ)アクリル酸アルキルと(メタ)アクリル酸ジメチルビニルシリルアルキルエステルとの共重合体を用いたアクリル系共重合体(特開平2−43209号公報)や(メタ)アクリル酸アルキルと(メタ)アクリル酸ジメチルハイドロジェンシリルアルキルエステルとの共重合体を用いたアクリル系共重合体(特開平4−68007号公報)等が開発されている。
【0006】また、側鎖にSiH反応点を有するポリオルガノシロキサン基を有するシロキサンで修飾されたアクリル系ランダム共重合体(特許第3105733号、特許第3107702号)が開発されている。ここで、上記シロキサンで修飾されたアクリル系ランダム共重合体は、SiH反応点を有するポリオルガノシロキサン基の割合が、0.1〜90モル%の極めて広範な範囲になっており、具体的に示されているもののうち該値が最も小さいものは0.9モル%でしかない。
【0007】しかして、これらの側鎖にシリル基を有するアクリル系ランダム共重合体を用いた接着材は、20〜30℃程度の低温で、且つ数分間で、アクリル系樹脂とシリコーンゴム系材料とを強固に接着することができる。
【0008】
【発明が解決しようとする課題】上記した義歯床とシリコーンゴム系材料とからなる裏装材との接着に用いられている接着材は、長期間(望ましくは半永久的に)シリコーンゴムと、(メタ)アクリル系樹脂とを強固に接着させたままでおくことを目的としており、その接着力はできるだけ強く、また、該接着力は良好に維持されるように設計されている。
【0009】ところで、歯科用の裏装材の中には、最初は(メタ)アクリル系樹脂からなる義歯床に強固に接着させることが必要であるものの、一定期間口腔内で使用した後には、該義歯床から剥がさなければならないものがある。具体的には、使用していた義歯の適合が悪くなり、これに起因して口腔粘膜に潰瘍や炎症が生じている場合において、義歯修理の前段階で口腔粘膜の治療用として1週間〜数週間の短期間暫間的に使用される裏装材であり、一般に粘膜調整材と呼ばれている。
【0010】この粘膜調整材は、その目的からして、より高い柔軟性が必要とされ、アクリレート系ポリマーからなるものの他に、前記一般的な裏装材と同様にハイドロシリレーション反応による硬化性組成物を硬化させてなるシリコーンゴム系材料からなるもの(シリコーンゴム系粘膜調整材)が使用されている。ところが、これらシリコーンゴム系粘膜調整材を、前記側鎖にシリル基を有する高分子からなる接着材を用いて義歯床に接着した場合、接着直後より該義歯床に非常に強固に接着し、その接着力は使用期間中においても良好に保持されるため、使用期間終了後において両者を剥離させようとしても容易には剥離しないことが多かった。したがって、研削によってシリコーンゴムを除去する手間がかかったり、削りかすが多量に発生して衛生的でない等の問題が生じていた。
【0011】また、前記従来から使用されている側鎖にシリル基を有する高分子からなる接着材において、該高分子の濃度と接着力との関係を調べてみると、ある濃度以上ではシリコーンゴムの強度以上の接着力(この場合、シリコーンゴムの凝集破壊となる)が得られるものの、その濃度以下では急激に接着力が低下する傾向が見られた。したがって、上記シリコーンゴム系粘膜調整材の義歯床への接着力を、該接着材に含まれる接着性成分の濃度調製で制御することは極めて困難であった。
【0012】そこで、1)接着直後は強固な接着力を発揮するが、数日〜数週間経過後は接着力が低下して容易に剥離でき、且つ、2)接着力の制御が容易である、義歯床とシリコーンゴム系粘膜調整材とを接着するための接着剤の開発することが望まれていた。
【0013】
【課題を解決するための手段】本発明者等は上記課題を克服すべく鋭意検討を重ねたところ、特定の構造を有する、シロキサンで修飾された(メタ)アクリル系重合体を接着成分とする接着材を用いることにより、上記課題を克服できることを見い出し、本発明を完成するに至った。
【0014】即ち、本発明は、下記一般式(1)、(2)、(2’)及び(3)で示される構造単位【0015】
【化2】

【0016】〔式中、R、R、R13はそれぞれ水素原子、メチル基、又はエチル基を、Rは炭素数1〜13のアルキル基又は炭素数6〜14のアリール基を、R〜R10及びR15〜R21はそれぞれ炭素数1〜6のアルキル基又は炭素数6〜14のアリール基を、R11、R12及びR22はそれぞれ水素原子、炭素数1〜6のアルキル基又は炭素数6〜14のアリール基を、R14は主鎖中にエーテル結合もしくはエステル結合を有してもよい炭素数2〜20の不飽和炭化水素基を、Aは主鎖中にエーテル結合もしくはエステル結合を有してもよい炭素数2〜20の2価の炭化水素基を、c、dはそれぞれ平均繰り返し単位数を示し、cは1〜100、dは0〜100の整数であり、且つ10≦c+d≦100、0≦d/c≦10である。〕からなり、構造単位(1)、構造単位(2)及び/又は(2’)、並びに構造単位(3)の構成比が、(1)=10〜99.99モル%、(2)及び/又は(2’)=0.5〜0.01モル%、(3)=0〜89.5モル%で、重量平均分子量が5000〜1000000である、シロキサンで修飾された(メタ)アクリル系重合体の有機溶液からなるシリコーンゴム系粘膜調整材用接着材である。
【0017】
【発明の実施の形態】本発明において使用される、シロキサンで修飾された(メタ)アクリル系重合体(以下、シロキサン修飾(メタ)アクリル系重合体と略する)は、接着成分として通常使用されるシロキサン修飾(メタ)アクリル系重合体と比較して、側鎖であるハイドロシリレーション反応の反応性官能基を有するシロキサン部分の割合が極めて小さいことを特徴とする。この部分の割合を小さくすることで、前記した義歯床とシリコーンゴム系粘膜調整材の接着に必要とされる、接着直後は強固な接着力を発揮するが、数日〜数週間経過後は接着力が低下して容易に剥離できる性質を発現させることができ、またその接着力の制御も容易に行なうことができる。
【0018】本発明において使用されるシロキサン修飾(メタ)アクリル系重合体は、下記式(1)、(2)、(2’)、及び(3)で表される構造単位【0019】
【化3】

【0020】〔式中、R、R、R13はそれぞれ水素原子、メチル基、又はエチル基を、Rは炭素数1〜13のアルキル基又は炭素数6〜14のアリール基を、R〜R10及びR15〜R21はそれぞれ炭素数1〜6のアルキル基又は炭素数6〜14のアリール基を、R11、R12及びR22はそれぞれ水素原子、炭素数1〜6のアルキル基又は炭素数6〜14のアリール基を、R14は主鎖中にエーテル結合もしくはエステル結合を有してもよい炭素数2〜20の不飽和炭化水素基を、Aは主鎖中にエーテル結合もしくはエステル結合を有してもよい炭素数2〜20の2価の炭化水素基をc、dはそれぞれ平均繰り返し単位数を示し、cは1〜100、dは0〜100の整数であり、且つ10≦c+d≦100、0≦d/c≦10である〕からなり、構造単位(1)、構造単位(2)及び/又は(2’)、並びに構造単位(3)の構成比が、(1)=10〜99.99モル%、(2)及び/又は(2’)=0.50〜0.01モル%、(3)=0〜89.50モル%である。
【0021】上記式(1)、(2)、(2’)、及び(3)中のR、R、R13は、それぞれ水素原子、メチル基及びエチル基の中から選ばれるものであり、原料入手のしやすさ、共重合体の合成のしやすさ、特に原料単量体{(メタ)アクリレート化合物}の共重合反応性の点から水素原子、メチル基又はこれらを併用した混合系が好ましい。
【0022】Rは、メチル基、エチル基、n−プロピル基、n−ヘキシル基、シクロヘキシル基、n−オクチル基、トリデシル基等の炭素数1〜13のアルキル基及びフェニル基、ベンジル基、ナフチル基等の炭素数6〜14のアリール基の中から選ばれるものであり、メチル基、エチル基、n−プロピル基等の低級アルキル基が最適であり、これらの内から選ばれる一種又は二種以上の基を併用した混合系が好ましい。
【0023】R〜R10及びR15〜R21はそれぞれメチル基、エチル基、n−プロピル基、n−ヘキシル基等の炭素数1〜6のアルキル基及びフェニル基、ベンジル基、ナフチル基等の炭素数6〜14のアリール基の中から選ばれるものであり、合成原料であるSiH反応点を有するオルガノ(ポリ)シロキサンの合成、入手のしやすさからメチル基、フェニル基又はこれらを併用した混合系が好ましい。
【0024】また、R11、R12及びR22は、それぞれ水素原子、R〜R10と同種のものが例示される炭素数1〜6のアルキル基及び炭素数6〜14のアリール基であり、合成原料であるSiH反応点を有するオルガノ(ポリ)シロキサンの合成、入手のしやすさ、得られる共重合体の反応性の高さからメチル基、フェニル基又はこれらを併用した混合系が好ましい。
【0025】またR14はビニル基、アリル基、1−ブテニル基、9−デセニル基、2−(2−(2−(2−プロペニルオキシ)エトキシ)エトキシ)エチル基、2−(3−ブテノイルオキシ)エチル基、オレイル基等の炭素数2〜20の不飽和炭化水素基である。
【0026】Aは主鎖中にエーテル結合もしくはエステル結合を有してもよい炭素数2〜20の2価の炭化水素基であり、合成のしやすさからエーテル結合もしくはエステル結合を有してもよい炭素数3〜10の2価の炭化水素基が好ましい。具体的には下記の炭化水素基が例示される。
【0027】
【化4】

【0028】一般式(2)又は(2’)中のc、dは、シロキサンユニットの平均繰り返し単位数を示し、1≦c≦100、0≦d≦100を満たす整数であり、且つ10≦c+d≦100、0≦d/c≦10の範囲から選択される。接着剤としての反応性の点から、オルガノ(ポリ)シロキサン基1単位中にSiH基を3個以上持つようにcを選ぶことがより好ましい。
【0029】構造単位(1)、構造単位(2)及び/又は(2’)、並びに構造単位(3)の構成比が、(1)=10〜99.99モル%、(2)及び/又は(2’)=0.5〜0.01モル%、(3)=0〜89.5モル%となるように選択される。好ましくは(1)=50〜99.99モル%、(2)及び/又は(2’)=0.10〜0.01モル%、(3)=0〜49.90モル%となるように選択される。尚、各構造単位は、前記一般式で表される範疇の構造単位を用いる限り各々一種の単位のみならず複数の単位から構成されていてもよい。
【0030】本発明では、全体に占める構造単位(2)及び/又は(2’)の割合が上記範囲であることが極めて重要である。すなわち、構造単位(2)及び/又は(2’)は、側鎖としてハイドロシリレーション反応の反応性官能基を有するシロキサン部分を有する構造単位であり、この構造単位の割合を前記特定の狭い範囲とすることにより、得られるシロキサン修飾(メタ)アクリル系重合体を、シリコーンゴム系粘膜調整材に求められる性状、すなわち、接着直後は義歯床とシリコーンゴム系粘膜調整材とを強固に接着させるが、その強固な接着力は経時的に徐々に低下し数日〜数週間経過後には該シリコーンゴム系粘膜調整材を容易に剥離できる程度に低下させることができるものとすることが可能になる。
【0031】ここで、上記構造単位(2)及び/又は(2’)の割合が0.10モル%を越える場合、義歯床とシリコーンゴム系粘膜調整材との接着力は強固になり過ぎ、それは義歯の使用期間中においても良好に保持され、使用後においてシリコーンゴム系粘膜調整材を義歯床から剥離させるのが難しくなる。他方、構造単位(2)及び/又は(2’)の割合が0.01モル%未満の場合、共重合体中に占める(ポリ)オルガノシロキサン部分の割合が小さくなり、シリコーンゴム系粘膜調整材とのなじみが悪くなるため、シリコーンゴムとの接着力が充分でなくなる。
【0032】また、構造単位(1)の割合が10モル%未満の場合、残りの構造単位(2)又は(2’)、構造単位(3)中の構造単位(3)の割合が大きくなる。その結果、過剰に存在する不飽和結合が被着体である室温硬化性(ハイドロシリレーション反応硬化性)シリコーンの硬化反応を阻害し、接着材として充分に作用しなくなる。
【0033】これらの共重合体の重量平均分子量は5000〜1000000であり、この範囲になるようにc、d、構造単位(1)、(2)、(2’)、及び(3)の共重合比、それらの総重合数が決定される。
【0034】更には、義歯床のアクリル系樹脂、シリコーンゴム部分との相溶性、反応性、また合成のしやすさより、(ポリ)オルガノシロキサン部分の分子量と(メタ)アクリル重合体部分の分子量との比が1:40〜400となるような組み合わせを選ぶのが好ましい。
【0035】尚、(ポリ)オルガノシロキサン部分とは、有機基を持ったSiO骨格部分のことをさし、R〜R12又はR15〜R22、c、dによって決定される部分をさす。また、(メタ)アクリル重合体部分とは、ポリ(メタ)アクリレート骨格部分のことをさし、共重合体中の(ポリ)オルガノシロキサン部分以外の部分であり、R〜R、R13、R14、A、構造単位(1)、構造単位(2)及び/又は(2’)、並びに構造単位(3)の数によって決定される部分をさす。
【0036】前記式(1)、(2)、(2’)、及び(3)で表される構造単位のうち、R、R、R13としては水素原子又はメチル基から選ばれた基であり、Rとしてはメチル基、エチル基等のアルキル基であり、R〜R12、及びR15〜R22としてはメチル基であり、R14としてはAの2価のアルキレン基に対応する不飽和炭化水素基であり、Aとしてはプロピレン基、ブチレン基、デシレン基等の2価のアルキレン基であり、c、dは、10≦c+d≦100、0≦d/c≦10となるように選択される1≦c≦100、0≦d≦100の整数であり、構造単位(1)、構造単位(2)及び/又は(2’)、並びに構造単位(3)の構成比は、(1)=50〜99.99モル%、(2)及び/又は(2’)=0.10〜0.01モル%、(3)=0〜49.90モル%であり、重量平均分子量が50000〜600000のものが、合成原料の入手の容易さ、及び義歯床とシリコーンゴム系粘膜調整材との接着に求められる前記接着特性をより良好に発現させることができ、またその接着力の制御も格別に容易であることから好ましい。
【0037】本発明におけるシロキサン修飾(メタ)アクリル系重合体の代表的なものを、構造単位の構造と、その平均繰り返し単位数で具体的に示せば、【0038】
【化5】

【0039】
【化6】

【0040】
【化7】

【0041】
【化8】

【0042】(ただし、Phはフェニル基を示す)等が挙げられる。これらの重合体は、一般に白色粉末状固体である。
【0043】尚、上記共重合体及び後述する実施例、比較例に用いられる共重合体中の構造単位並びにシロキサンユニットの結合順序は全く任意であり、構造式中に示される繰り返し単位数は単に各構造単位並びに各シロキサンユニットの平均の総量を示すに過ぎない。
【0044】上記式(1)、(2)、(2’)、及び(3)で表される構造単位からなるシロキサン修飾(メタ)アクリル系重合体は、特許第3105733号及び特許第3107702号に記載された方法に準じて容易に製造することができる。
【0045】本発明における、上記シロキサン修飾(メタ)アクリル系重合体の配合量は、有機溶媒100重量部に対して、0.1〜20重量部が好ましい。粘性が低く、より良好な操作性を有することから0.1〜10重量部とすることがさらに好ましい。
【0046】有機溶媒は、上記接着成分を可溶なものであれば公知のものが何ら制限なく使用できる。具体的に例示すると、ヘキサン、ヘプタン、ペンタン等の炭化水素化合物、塩化メチレン、クロロホルム等のハロゲン化炭化水素化合物、トルエン、キシレン等の芳香族化合物、エタノール、1−プロパノール、2−プロパノール、1−ブタノール、2−ブタノール等のアルコール化合物、ジエチルエーテル、テトラヒドロフラン、t−ブチルメチルエーテル等のエーテル化合物、アセトン、メチルエチルケトン、メチルイソブチルケトン等のケトン化合物、ぎ酸エチル、酢酸メチル、酢酸エチル、酢酸プロピル、酢酸イソプロピル等のエステル化合物等が挙げられる。
【0047】これらの有機溶媒は単独で、もしくは数種類のものを混合して用いることができる。
【0048】本発明の接着材は、義歯床とシリコーンゴム系粘膜調整材との接着材として使用される。ここで、義歯床は、(メタ)アクリル系樹脂で構成されているのが一般的である。(メタ)アクリル系樹脂は、(メタ)アクリル酸又は(メタ)アクリル酸エステルを含む重合性単量体を重合して得られる樹脂であり、公知のものが制限なく使用できる。
【0049】シリコーンゴム系粘膜調整材は、シリコーンゴムと称されるオルガノポリシロキサンの重合体からなるものであり、ハイドロシリレーション反応による硬化性組成物を硬化させて得られるものである。これらシリコーンゴム系粘膜調整材は、通常、弾性歪みが20%以上、永久歪みが0.5%以上、ショアA硬度が15以下であり極めて柔軟な性状を呈している。
【0050】本発明の効果をより顕著に発揮させるうえでは、上記ハイドロシリレーション反応による硬化性組成物は、(A)末端に炭素−炭素不飽和結合を持つ有機基を分子中に少なくとも2個有するオルガノポリシロキサン、(B)ケイ素原子に直接結合している水素原子が分子中に3個存在するオルガノハイドロジエンポリシロキサン、及び(C)シリコーン樹脂系充填材及び/またはシリカ系充填材(D)ヒドロシリル化触媒からなるものを用いるのが好ましい。このハイドロシリレーション反応による硬化性組成物には、その弾性率をより小さくする観点から、(B’)ケイ素原子に直接結合している水素原子が分子中に1個又は2個存在するオルガノハイドロジエンポリシロキサンがさらに配合されているのがより好ましい。
【0051】上記ハイドロシリレーション反応硬化性組成物において、成分(A)と成分(B)との量比は、成分(A)の末端炭素−炭素不飽和結合の総数に対する成分(B)のケイ素原子に結合している水素原子の総数の比で表して0.2〜2、特に、0.3〜1となる量比であるのが好適である。また、成分(B’)を共存させる組成物においては、成分(A)、成分(B)及び成分(B’)の量比は、成分(A)の末端炭素−炭素不飽和結合の総数に対する成分(B)及び成分(B’)のケイ素原子に結合している水素原子の総数の比で表して0.7〜5、特に、0.7〜2となる量比であるのが好適である。
【0052】また、成分(C)の配合量は補強用充填材としてとしての効果が充分に発揮できる量であれば特に制限されないが、ペーストの操作性等の観点から、成分(A)100重量部に対して1〜300重量部であるのが好適である。
【0053】さらに、成分(D)の配合量は、ハイドロシリレーション反応が充分に進行する量であれば特に制限されない。具体的には、成分(C)が白金系触媒の場合であれば、白金量として成分(A)、成分(B)及び必要に応じて配合される成分(B’)の合計量に対して0.1〜1000ppmの範囲が好ましい。
【0054】なお、これらシリコーンゴム系粘膜調整材の各成分の詳細は、例えば特開2001−79020等に記載されているとおりである。
【0055】本発明の接着材を用いて義歯床とシリコーンゴム系粘膜調整材とを接着させる具体的な操作方法は、(メタ)アクリル系樹脂製の義歯床の粘膜面側に接着材を塗布し、溶媒を蒸発させ、その上にシリコーンゴム系粘膜調整材に硬化するハイドロシリレーション反応による硬化性組成物からなるシリコーンペーストを盛り、硬化させる方法により行われる。この場合、上記シリコーンペーストの硬化に併せて、シリコーンゴム系粘膜調整材は義歯床に接着していき、硬化終了時には接着は完了している。
【0056】本発明の接着剤は、本発明の効果を阻害しない範囲であれば、着色剤、香料、(メタ)アクリレート樹脂等の添加材を含有していてもよい。
【0057】
【実施例】本発明を更に具体的に説明するための実施例を示すが、本発明はこれらの実施例に限定されるものではない。以下の実施例及び比較例において試験に供した各材料の構造式を以下に示す。
1)シロキサン修飾(メタ)アクリル系重合体共重合体■【0058】
【化9】

【0059】構造単位(1)=99.95モル%、構造単位(2)=0.05モル%、重量平均分子量=410000。
共重合体■【0060】
【化10】

【0061】構造単位(1)=99.95モル%、構造単位(2’)=0.05モル%、重量平均分子量=410000。
共重合体■【0062】
【化11】

【0063】構造単位(1)=99.98モル%、構造単位(2)=0.02モル%、重量平均分子量=410000。
共重合体■【0064】
【化12】

【0065】構造単位(1)=99.70モル%、構造単位(2)=0.30モル%重量平均分子量=420000。
共重合体■【0066】
【化13】

【0067】構造単位(1)=99.90モル%、構造単位(2)=0.10モル%重量平均分子量=110000。
共重合体■【0068】
【化14】

【0069】構造単位(1)=99.00モル%、構造単位(2)=1.00モル%重量平均分子量=110000。
これらの共重合体は以下に示す方法で合成して得た。
【0070】共重合体■の合成法フラスコにメチルメタクリレートを50g、アリルメタクリレートを0.03g、アゾビスイソブチロニトリルを0.18g、トルエンを100mlを入れ、窒素をバブリングしながら70℃に加熱攪拌してメチルメタクリレートとアリルメタクリレートの2000対1(モル比)共重合比の共重合体を得た。
【0071】フラスコに、下記構造を有するSiHシロキサン1を0.07g、トルエンを300ml、白金1000ppmに調節した白金/ジビニルシロキサン錯体溶液を0.33g入れ、窒素をバブリングしながら80℃に加熱、攪拌する。上述の方法で合成したメチルメタクリレートとアリルメタクリレートの2000対1(モル比)共重合比の共重合体5gをトルエン100mlに溶解した溶液を1時間かけて滴下する。その後、滴下終了後更に6時間加熱、攪拌し、トルエンを減圧除去後、メタノール/エタノール混合溶媒で過剰のSiHシロキサン1を洗浄した後、濾別、乾燥し、共重合体■を得た。SiHシロキサン1【0072】
【化15】

【0073】共重合体■の合成法下記構造を有するSiHシロキサン2と、上述の方法で合成したメチルメタクリレートとアリルメタクリレートの共重合比2000対1(モル比)の共重合体を用いて共重合体■の合成と同様の方法で合成を行ない、共重合体■を得た。SiHシロキサン2【0074】
【化16】

【0075】共重合体■の合成法フラスコにメチルメタクリレートを50g、アリルメタクリレートを0.02g、アゾビスイソブチロニトリルを0.18g、トルエンを100mlを入れ、窒素をバブリングしながら70℃に加熱攪拌してメチルメタクリレートとアリルメタクリレートの4000対1(モル比)共重合比の共重合体を得た。
【0076】SiHシロキサン1と、上述の方法で合成したメチルメタクリレートとアリルメタクリレートの共重合比4000対1(モル比)の共重合体を用いて共重合体■の合成と同様の方法で合成を行ない、共重合体■を得た。
【0077】共重合体■の合成法フラスコにメチルメタクリレートを50g、アリルメタクリレートを0.18g、アゾビスイソブチロニトリルを0.18g、トルエンを100mlを入れ、窒素をバブリングしながら70℃に加熱攪拌してメチルメタクリレートとアリルメタクリレートの330対1(モル比)共重合比の共重合体を得た。
【0078】SiHシロキサン1と、上述の方法で合成したメチルメタクリレートとアリルメタクリレートの共重合比330対1(モル比)の共重合体を用いて共重合体■の合成と同様の方法で合成を行ない、共重合体■を得た。
【0079】共重合体■の合成法フラスコにメチルメタクリレートを50g、アリルメタクリレートを0.06g、アゾビスイソブチロニトリルを0.51g、トルエンを100mlを入れ、窒素をバブリングしながら70℃に加熱攪拌してメチルメタクリレートとアリルメタクリレートの1000対1(モル比)共重合比の共重合体を得た。
【0080】SiHシロキサン1と、上述の方法で合成したメチルメタクリレートとアリルメタクリレートの共重合比1000対1(モル比)の共重合体を用いて共重合体■の合成と同様の方法で合成を行ない、共重合体■を得た。
【0081】共重合体■の合成法フラスコにメチルメタクリレートを50g、アリルメタクリレートを0.63g、アゾビスイソブチロニトリルを0.51g、トルエンを100mlを入れ、窒素をバブリングしながら70℃に加熱攪拌してメチルメタクリレートとアリルメタクリレートの100対1(モル比)共重合比の共重合体を得た。
【0082】SiHシロキサン1と、上述の方法で合成したメチルメタクリレートとアリルメタクリレートの共重合比100対1(モル比)の共重合体を用いて共重合体■の合成と同様の方法で合成を行ない、共重合体■を得た。
2)シリコーンゴム系粘膜調整材ハイドロシリレーション反応による硬化性組成物として以下に示すA、B2種類のペーストを調製した。これらは同量づつ混練することにより室温で硬化し、シリコーンゴムとなる。
・Aペースト:下記式で表わされるα,ω−ジビニルポリジメチルシロキサン(ME91;GE東芝シリコーン製) 100重量部【0083】
【化17】

シリカ微粉;トクヤマ製レオロシールMT−10、粒径0.01μm【0084】100重量部白金/ビニルシロキサン錯体溶液(白金含有率3%) 0.5重量部・Bペースト:前記α,ω−ジビニルポリジメチルシロキサン(ME91;GE東芝シリコーン製) 100重量部前記SiHシロキサン1(KF9901;信越化学製) 0.3重量部下記式で表わされるSiHシロキサン(TSL9586;GE東芝シリコーン製) 2.0重量部【0085】
【化18】

シリカ微粉;トクヤマ製レオロシールMT−10、粒径0.01μm【0086】100重量部また、実施例及び比較例において、評価した各種物性は、次の方法により測定した。
1)接着性の評価表面を800番の耐水研磨紙で注水下研磨した義歯床用レジン板(GC製アクロン)に、調製した接着材溶液を筆で塗布した。乾燥後、ペーストAとペーストBの等量混合物を、接着材溶液を塗布したアクロン板上に盛り付けた。その後、37℃水中で5分間放置して硬化させ、シリコーンゴムとした。硬化反応終了後、スパチュラを用いて、アクロン板とシリコーンゴムの界面から剥離させようとし、そのときの破壊の様子を観察し評価した。評価点は以下の判定に従い◎〜×で評価した。すべてシリコーンゴムの凝集破壊である◎が最も優れている。
【0087】◎:全てシリコーンゴムの凝集破壊○:凝集破壊と界面破壊の混合破壊△:界面破壊(剥離時に抵抗感がある)
×:界面破壊(全く接着していない)
2)除去性の評価接着性の評価方法と同様の手順で調製したサンプルを、熱衝撃試験機(トーマス社製)にて4℃と60℃の恒温水に各1分間ずつ交互に浸漬するサイクルを1000回行った。(なお、この1000回の熱サイクルは、ケースにより差があるが、ほぼ、平均的な粘膜調整材の使用期間に相当する。)その後、上記と同様に、アクロン板とシリコーンゴムの剥離状態を評価した。評価点は、接着性とは逆順に以下の判定に従い◎から×で評価した。除去性は剥離時に抵抗感がある界面破壊(評価◎)が最も優れている。
【0088】◎:界面破壊(剥離時に抵抗感がある)
○:界面破壊(全く接着していない)
△:凝集破壊と界面破壊の混合破壊×:全てシリコーンゴムの凝集破壊実施例1酢酸エチル100重量部に対して、シロキサン修飾(メタ)アクリル共重合体として共重合体■1.0重量部を添加、混合して溶液状の本発明のシリコーンゴム系粘膜調整材用接着剤を調製した。
【0089】調製した接着剤を用いて接着性及び除去性を評価したところ、ともに◎であり粘膜調整材用接着剤として好適に使用できることが明らかになった。
【0090】実施例2〜5表1に示す組成とする他は実施例1と同様にしてシリコーンゴム系裏装材用接着剤を調製し、評価を行った。
【0091】それらの結果を表1に示した。いずれのシリコーンゴム系粘膜調整材用接着剤を用いた場合においても接着性及び除去性ともに良好であった。
【0092】実施例6,7表1に示す濃度とする他は実施例1と同様にしてシリコーンゴム系裏装材用接着剤を調製し、評価を行った。
【0093】それらの結果を表1に示した。いずれのシリコーンゴム系粘膜調整材用接着剤を用いた場合においても接着性及び除去性ともに良好であり、本接着剤は幅広い濃度領域で好適な接着力を実現できることがわかった。
【0094】比較例1(シロキサン修飾(メタ)アクリル共重合体を含まない場合)
酢酸エチルを用いて接着性を評価したところ、初期段階で全く接着しなかった。
【0095】比較例2(共重合比が範囲外である場合)
酢酸エチル100重量部に対して、シロキサン修飾(メタ)アクリル共重合体として共重合体■1.0重量部を添加、混合して接着材を調製した。
【0096】この接着材を用いて実施例1と同様にして接着力と接着耐久性を評価したところ、接着性は良好であったが、熱衝撃試験付加後もシリコーンゴムを除去する事が困難であり、粘膜調整材用接着材として好適に使用できないことが明らかであった。
比較例3表1に示す濃度とする他は比較例2と同様にして接着材を調製し、評価を行った。
【0097】それらの結果を表1に示した。シロキサン修飾(メタ)アクリル共重合体■は、非常に狭い濃度範囲中にありながらその接着性、除去性ともに大きく変化している。すなわち、この共重合体を用いると、その接着力制御が容易でなく粘膜調整材用接着材として好適に使用できないことが判った。として好適に使用できないことが判った。
【0098】
【表1】

【発明の効果】本発明のシリコーンゴム系粘膜調整材用接着材を用いて義歯床とシリコーンゴム系粘膜調整材を接着させると、義歯床と接着直後は強固な接着力を発揮するが、数日〜数週間経過後は接着力が低下して容易に義歯床から剥離できる。また、好適に使用できる濃度範囲が広く接着力の制御が容易であり、シリコーンゴム系粘膜調整材用接着材として極めて好適に使用できる。
【出願人】 【識別番号】000003182
【氏名又は名称】株式会社トクヤマ
【住所又は居所】山口県徳山市御影町1番1号
【識別番号】391003576
【氏名又は名称】株式会社トクヤマデンタル
【住所又は居所】東京都台東区台東1丁目38番9号
【出願日】 平成13年12月20日(2001.12.20)
【代理人】
【公開番号】 特開2003−183110(P2003−183110A)
【公開日】 平成15年7月3日(2003.7.3)
【出願番号】 特願2001−387271(P2001−387271)