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【発明の名称】 細胞分化促進因子KKLFをコードする核酸含有脂肪蓄積促進剤
【発明者】 【氏名】松木 泰
【住所又は居所】兵庫県宝塚市高司4丁目2番1号 住友製薬株式会社内

【氏名】井口 晴久
【住所又は居所】兵庫県宝塚市高司4丁目2番1号 住友製薬株式会社内

【要約】 【課題】組織における前駆脂肪細胞から成熟脂肪細胞への分化誘導によって細胞内での脂肪蓄積を促進させる細胞分化促進因子を見出し、当該因子及びその遺伝子等を利用する。

【解決手段】特定の配列で示されるアミノ酸配列を有する細胞分化促進因子をコードする核酸を有効成分として含み、該有効成分が薬学的に許容される担体中に製剤化されてなることを特徴とする脂肪蓄積促進剤等が提供可能となった。また本発明を利用すれば、組織における前駆脂肪細胞から成熟脂肪細胞への分化誘導によって細胞内での脂肪蓄積を促進させ、これにより脂肪蓄積障害に伴う種々の疾患や異常の予防、治療に有用な方法や薬剤の開発に応用できる。
【特許請求の範囲】
【請求項1】下記のいずれかのアミノ酸配列を有する細胞分化促進因子をコードする核酸を有効成分として含み、該有効成分が薬学的に許容される担体中に製剤化されてなることを特徴とする脂肪蓄積促進剤。
<アミノ酸配列>(a)配列番号1、2又は3で示されるアミノ酸配列(b)配列番号1、2又は3で示されるアミノ酸配列において、1もしくは複数のアミノ酸が欠失、付加もしくは置換されたアミノ酸配列であり、かつ脂肪蓄積を促進する能力を有する蛋白質のアミノ酸配列、(c)配列番号1、2又は3で示されるアミノ酸配列と80%以上の配列同一性を有するアミノ酸配列であり、かつ脂肪蓄積を促進する能力を有する蛋白質のアミノ酸配列、(d)配列番号1、2又は3で示されるアミノ酸配列をコードする塩基配列を有するDNAと80%以上の配列同一性を有する塩基配列を有するDNAによりコードされるアミノ酸配列であり、かつ脂肪蓄積を促進する能力を有する蛋白質のアミノ酸配列、(e)配列番号1、2又は3で示されるアミノ酸配列をコードする塩基配列を有するDNAと、ストリンジェントな条件下でハイブリダイズするDNAによりコードされるアミノ酸配列であり、かつ脂肪蓄積を促進する能力を有する蛋白質のアミノ酸配列【請求項2】脂肪蓄積促進のための、下記のいずれかのアミノ酸配列を有する細胞分化促進因子をコードする核酸の使用。
<アミノ酸配列>(a)配列番号1、2又は3で示されるアミノ酸配列(b)配列番号1、2又は3で示されるアミノ酸配列において、1もしくは複数のアミノ酸が欠失、付加もしくは置換されたアミノ酸配列であり、かつ脂肪蓄積を促進する能力を有する蛋白質のアミノ酸配列、(c)配列番号1、2又は3で示されるアミノ酸配列と80%以上の配列同一性を有するアミノ酸配列であり、かつ脂肪蓄積を促進する能力を有する蛋白質のアミノ酸配列、(d)配列番号1、2又は3で示されるアミノ酸配列をコードする塩基配列を有するDNAと80%以上の配列同一性を有する塩基配列を有するDNAによりコードされるアミノ酸配列であり、かつ脂肪蓄積を促進する能力を有する蛋白質のアミノ酸配列、(e)配列番号1、2又は3で示されるアミノ酸配列をコードする塩基配列を有するDNAと、ストリンジェントな条件下でハイブリダイズするDNAによりコードされるアミノ酸配列であり、かつ脂肪蓄積を促進する能力を有する蛋白質のアミノ酸配列【請求項3】脂肪蓄積促進のための、下記のいずれかのアミノ酸配列を有する細胞分化促進因子の使用。
<アミノ酸配列>(a)配列番号1、2又は3で示されるアミノ酸配列(b)配列番号1、2又は3で示されるアミノ酸配列において、1もしくは複数のアミノ酸が欠失、付加もしくは置換されたアミノ酸配列であり、かつ脂肪蓄積を促進する能力を有する蛋白質のアミノ酸配列、(c)配列番号1、2又は3で示されるアミノ酸配列と80%以上の配列同一性を有するアミノ酸配列であり、かつ脂肪蓄積を促進する能力を有する蛋白質のアミノ酸配列、(d)配列番号1、2又は3で示されるアミノ酸配列をコードする塩基配列を有するDNAと80%以上の配列同一性を有する塩基配列を有するDNAによりコードされるアミノ酸配列であり、かつ脂肪蓄積を促進する能力を有する蛋白質のアミノ酸配列、(e)配列番号1、2又は3で示されるアミノ酸配列をコードする塩基配列を有するDNAと、ストリンジェントな条件下でハイブリダイズするDNAによりコードされるアミノ酸配列であり、かつ脂肪蓄積を促進する能力を有する蛋白質のアミノ酸配列【請求項4】前駆脂肪細胞から成熟脂肪細胞への分化誘導のための、下記のいずれかのアミノ酸配列を有する細胞分化促進因子をコードする核酸の使用。
<アミノ酸配列>(a)配列番号1、2又は3で示されるアミノ酸配列(b)配列番号1、2又は3で示されるアミノ酸配列において、1もしくは複数のアミノ酸が欠失、付加もしくは置換されたアミノ酸配列であり、かつ脂肪蓄積を促進する能力を有する蛋白質のアミノ酸配列、(c)配列番号1、2又は3で示されるアミノ酸配列と80%以上の配列同一性を有するアミノ酸配列であり、かつ脂肪蓄積を促進する能力を有する蛋白質のアミノ酸配列、(d)配列番号1、2又は3で示されるアミノ酸配列をコードする塩基配列を有するDNAと80%以上の配列同一性を有する塩基配列を有するDNAによりコードされるアミノ酸配列であり、かつ脂肪蓄積を促進する能力を有する蛋白質のアミノ酸配列、(e)配列番号1、2又は3で示されるアミノ酸配列をコードする塩基配列を有するDNAと、ストリンジェントな条件下でハイブリダイズするDNAによりコードされるアミノ酸配列であり、かつ脂肪蓄積を促進する能力を有する蛋白質のアミノ酸配列【請求項5】前駆脂肪細胞から成熟脂肪細胞への分化誘導のための、下記のいずれかのアミノ酸配列を有する細胞分化促進因子の使用。
<アミノ酸配列>(a)配列番号1、2又は3で示されるアミノ酸配列(b)配列番号1、2又は3で示されるアミノ酸配列において、1もしくは複数のアミノ酸が欠失、付加もしくは置換されたアミノ酸配列であり、かつ脂肪蓄積を促進する能力を有する蛋白質のアミノ酸配列、(c)配列番号1、2又は3で示されるアミノ酸配列と80%以上の配列同一性を有するアミノ酸配列であり、かつ脂肪蓄積を促進する能力を有する蛋白質のアミノ酸配列、(d)配列番号1、2又は3で示されるアミノ酸配列をコードする塩基配列を有するDNAと80%以上の配列同一性を有する塩基配列を有するDNAによりコードされるアミノ酸配列であり、かつ脂肪蓄積を促進する能力を有する蛋白質のアミノ酸配列、(e)配列番号1、2又は3で示されるアミノ酸配列をコードする塩基配列を有するDNAと、ストリンジェントな条件下でハイブリダイズするDNAによりコードされるアミノ酸配列であり、かつ脂肪蓄積を促進する能力を有する蛋白質のアミノ酸配列【請求項6】哺乳動物細胞に、下記のいずれかのアミノ酸配列を有する細胞分化促進因子をコードする外来遺伝子を、当該外来遺伝子が前記細胞で発現する位置に置かれるように提供する工程を有することを特徴とする哺乳動物における脂肪蓄積促進方法。
<アミノ酸配列>(a)配列番号1、2又は3で示されるアミノ酸配列(b)配列番号1、2又は3で示されるアミノ酸配列において、1もしくは複数のアミノ酸が欠失、付加もしくは置換されたアミノ酸配列であり、かつ脂肪蓄積を促進する能力を有する蛋白質のアミノ酸配列、(c)配列番号1、2又は3で示されるアミノ酸配列と80%以上の配列同一性を有するアミノ酸配列であり、かつ脂肪蓄積を促進する能力を有する蛋白質のアミノ酸配列、(d)配列番号1、2又は3で示されるアミノ酸配列をコードする塩基配列を有するDNAと80%以上の配列同一性を有する塩基配列を有するDNAによりコードされるアミノ酸配列であり、かつ脂肪蓄積を促進する能力を有する蛋白質のアミノ酸配列、(e)配列番号1、2又は3で示されるアミノ酸配列をコードする塩基配列を有するDNAと、ストリンジェントな条件下でハイブリダイズするDNAによりコードされるアミノ酸配列であり、かつ脂肪蓄積を促進する能力を有する蛋白質のアミノ酸配列【請求項7】脂肪過少蓄積又は脂肪蓄積障害に起因する疾患と診断されうる哺乳動物の体内にある細胞に、下記のいずれかのアミノ酸配列を有する細胞分化促進因子を導入する工程を有することを特徴とする脂肪蓄積促進方法。
<アミノ酸配列>(a)配列番号1、2又は3で示されるアミノ酸配列(b)配列番号1、2又は3で示されるアミノ酸配列において、1もしくは複数のアミノ酸が欠失、付加もしくは置換されたアミノ酸配列であり、かつ脂肪蓄積を促進する能力を有する蛋白質のアミノ酸配列、(c)配列番号1、2又は3で示されるアミノ酸配列と80%以上の配列同一性を有するアミノ酸配列であり、かつ脂肪蓄積を促進する能力を有する蛋白質のアミノ酸配列、(d)配列番号1、2又は3で示されるアミノ酸配列をコードする塩基配列を有するDNAと80%以上の配列同一性を有する塩基配列を有するDNAによりコードされるアミノ酸配列であり、かつ脂肪蓄積を促進する能力を有する蛋白質のアミノ酸配列、(e)配列番号1、2又は3で示されるアミノ酸配列をコードする塩基配列を有するDNAと、ストリンジェントな条件下でハイブリダイズするDNAによりコードされるアミノ酸配列であり、かつ脂肪蓄積を促進する能力を有する蛋白質のアミノ酸配列【請求項8】ファットレス症又は脂肪萎縮症に羅患していると診断されうる哺乳動物の体内にある細胞に、下記のいずれかのアミノ酸配列を有する細胞分化促進因子を導入する工程を有することを特徴とする脂肪蓄積促進方法。
<アミノ酸配列>(a)配列番号1、2又は3で示されるアミノ酸配列(b)配列番号1、2又は3で示されるアミノ酸配列において、1もしくは複数のアミノ酸が欠失、付加もしくは置換されたアミノ酸配列であり、かつ脂肪蓄積を促進する能力を有する蛋白質のアミノ酸配列、(c)配列番号1、2又は3で示されるアミノ酸配列と80%以上の配列同一性を有するアミノ酸配列であり、かつ脂肪蓄積を促進する能力を有する蛋白質のアミノ酸配列、(d)配列番号1、2又は3で示されるアミノ酸配列をコードする塩基配列を有するDNAと80%以上の配列同一性を有する塩基配列を有するDNAによりコードされるアミノ酸配列であり、かつ脂肪蓄積を促進する能力を有する蛋白質のアミノ酸配列、(e)配列番号1、2又は3で示されるアミノ酸配列をコードする塩基配列を有するDNAと、ストリンジェントな条件下でハイブリダイズするDNAによりコードされるアミノ酸配列であり、かつ脂肪蓄積を促進する能力を有する蛋白質のアミノ酸配列【請求項9】前駆脂肪細胞に、下記のいずれかのアミノ酸配列を有する細胞分化促進因子を導入する工程を有することを特徴とする前駆脂肪細胞から成熟脂肪細胞への分化誘導方法。
<アミノ酸配列>(a)配列番号1、2又は3で示されるアミノ酸配列(b)配列番号1、2又は3で示されるアミノ酸配列において、1もしくは複数のアミノ酸が欠失、付加もしくは置換されたアミノ酸配列であり、かつ脂肪蓄積を促進する能力を有する蛋白質のアミノ酸配列、(c)配列番号1、2又は3で示されるアミノ酸配列と80%以上の配列同一性を有するアミノ酸配列であり、かつ脂肪蓄積を促進する能力を有する蛋白質のアミノ酸配列、(d)配列番号1、2又は3で示されるアミノ酸配列をコードする塩基配列を有するDNAと80%以上の配列同一性を有する塩基配列を有するDNAによりコードされるアミノ酸配列であり、かつ脂肪蓄積を促進する能力を有する蛋白質のアミノ酸配列、(e)配列番号1、2又は3で示されるアミノ酸配列をコードする塩基配列を有するDNAと、ストリンジェントな条件下でハイブリダイズするDNAによりコードされるアミノ酸配列であり、かつ脂肪蓄積を促進する能力を有する蛋白質のアミノ酸配列【請求項10】脂肪蓄積非誘導条件下において下記のいずれかのアミノ酸配列を有する細胞分化促進因子を実質的に発現しない細胞に、前記細胞分化促進因子依存的脂肪蓄積促進経路の正又は負の調節因子を投与する工程を有することを特徴とする脂肪蓄積制御方法。
<アミノ酸配列>(a)配列番号1、2又は3で示されるアミノ酸配列、(b)配列番号1、2又は3で示されるアミノ酸配列において、1もしくは複数のアミノ酸が欠失、付加もしくは置換されたアミノ酸配列、(c)配列番号1、2又は3で示されるアミノ酸配列と80%以上の配列同一性を有するアミノ酸配列であり、かつ脂肪蓄積を促進する能力を有する蛋白質のアミノ酸配列、(d)配列番号1、2又は3で示されるアミノ酸配列をコードする塩基配列を有するDNAと80%以上の配列同一性を有する塩基配列を有するDNAによりコードされるアミノ酸配列であり、かつ脂肪蓄積を促進する能力を有する蛋白質のアミノ酸配列、(e)配列番号1、2又は3で示されるアミノ酸配列をコードする塩基配列を有するDNAと、ストリンジェントな条件下でハイブリダイズするDNAによりコードされるアミノ酸配列であり、かつ脂肪蓄積を促進する能力を有する蛋白質のアミノ酸配列【請求項11】脂肪蓄積非誘導条件下において下記のいずれかのアミノ酸配列を有する細胞分化促進因子を実質的に発現しない細胞に、前記細胞分化促進因子依存的脂肪蓄積促進経路の正の調節因子を投与する工程を有することを特徴とする脂肪蓄積促進方法。
<アミノ酸配列>(a)配列番号1、2又は3で示されるアミノ酸配列、(b)配列番号1、2又は3で示されるアミノ酸配列において、1もしくは複数のアミノ酸が欠失、付加もしくは置換されたアミノ酸配列、(c)配列番号1、2又は3で示されるアミノ酸配列と80%以上の配列同一性を有するアミノ酸配列であり、かつ脂肪蓄積を促進する能力を有する蛋白質のアミノ酸配列、(d)配列番号1、2又は3で示されるアミノ酸配列をコードする塩基配列を有するDNAと80%以上の配列同一性を有する塩基配列を有するDNAによりコードされるアミノ酸配列であり、かつ脂肪蓄積を促進する能力を有する蛋白質のアミノ酸配列、(e)配列番号1、2又は3で示されるアミノ酸配列をコードする塩基配列を有するDNAと、ストリンジェントな条件下でハイブリダイズするDNAによりコードされるアミノ酸配列であり、かつ脂肪蓄積を促進する能力を有する蛋白質のアミノ酸配列【請求項12】脂肪蓄積非誘導条件下において下記のいずれかのアミノ酸配列を有する細胞分化促進因子を実質的に発現しない細胞に、前記細胞分化促進因子依存的脂肪蓄積促進経路の負の調節因子を投与する工程を有することを特徴とする脂肪蓄積抑制方法。
<アミノ酸配列>(a)配列番号1、2又は3で示されるアミノ酸配列、(b)配列番号1、2又は3で示されるアミノ酸配列において、1もしくは複数のアミノ酸が欠失、付加もしくは置換されたアミノ酸配列、(c)配列番号1、2又は3で示されるアミノ酸配列と80%以上の配列同一性を有するアミノ酸配列であり、かつ脂肪蓄積を促進する能力を有する蛋白質のアミノ酸配列、(d)配列番号1、2又は3で示されるアミノ酸配列をコードする塩基配列を有するDNAと80%以上の配列同一性を有する塩基配列を有するDNAによりコードされるアミノ酸配列であり、かつ脂肪蓄積を促進する能力を有する蛋白質のアミノ酸配列、(e)配列番号1、2又は3で示されるアミノ酸配列をコードする塩基配列を有するDNAと、ストリンジェントな条件下でハイブリダイズするDNAによりコードされるアミノ酸配列であり、かつ脂肪蓄積を促進する能力を有する蛋白質のアミノ酸配列【請求項13】負の調節因子が、前記細胞分化促進因子のアンチセンス核酸であることを特徴とする請求項12記載の脂肪蓄積抑制方法。
【請求項14】負の調節因子が、前記細胞分化促進因子と特異的に結合する抗体であることを特徴とする請求項12記載の脂肪蓄積抑制方法。
【請求項15】脂肪蓄積調節能力を有する物質の探索方法であって、(1)脂肪蓄積非誘導条件下において下記のいずれかのアミノ酸配列を有する細胞分化促進因子を実質的に発現しない細胞に、脂肪蓄積非誘導条件下又は脂肪蓄積誘導条件下、被験物質を接触させる第一工程、及び、(2)前記第一工程後に、前記細胞分化促進因子又はその遺伝子の発現量をモニターする第二工程、及び(3)前記第二工程によりモニターされた発現量の変化に基づき前記物質の脂肪蓄積調節能力を評価する第三工程、及び(4)前記第三工程で評価された脂肪蓄積調節能力に基づき脂肪蓄積調節能力を有する物質を選抜する第四工程、を有することを特徴とする探索方法。
<アミノ酸配列>(a)配列番号1、2又は3で示されるアミノ酸配列、(b)配列番号1、2又は3で示されるアミノ酸配列において、1もしくは複数のアミノ酸が欠失、付加もしくは置換されたアミノ酸配列、(c)配列番号1、2又は3で示されるアミノ酸配列と80%以上の配列同一性を有するアミノ酸配列であり、かつ脂肪蓄積を促進する能力を有する蛋白質のアミノ酸配列、(d)配列番号1、2又は3で示されるアミノ酸配列をコードする塩基配列を有するDNAと80%以上の配列同一性を有する塩基配列を有するDNAによりコードされるアミノ酸配列であり、かつ脂肪蓄積を促進する能力を有する蛋白質のアミノ酸配列、(e)配列番号1、2又は3で示されるアミノ酸配列をコードする塩基配列を有するDNAと、ストリンジェントな条件下でハイブリダイズするDNAによりコードされるアミノ酸配列であり、かつ脂肪蓄積を促進する能力を有する蛋白質のアミノ酸配列【請求項16】第一工程において、前記細胞に被験物質を接触させる条件が脂肪蓄積非誘導条件であって、かつ、第三工程でいう発現量の変化が前記細胞分化促進因子又はその遺伝子の発現量の増加であることを特徴とする請求項15記載の探索方法。
【請求項17】第一工程において、前記細胞に被験物質を接触させる条件が脂肪蓄積誘導条件下であって、かつ、第三工程でいう発現量の変化が前記細胞分化促進因子又はその遺伝子の発現量の減少であることを特徴とする請求項15記載の探索方法。
【請求項18】脂肪蓄積調節能力を有する物質の探索方法であって、(1)下記のいずれかのアミノ酸配列を有する細胞分化促進因子をコードする遺伝子の発現調節領域を機能可能な形で連結されてなるレポーター遺伝子を含有しかつ脂肪蓄積非誘導条件下において下記のいずれかのアミノ酸配列を有する細胞分化促進因子を実質的に発現しない細胞に、脂肪蓄積非誘導条件下又は脂肪蓄積誘導条件下、被験物質を接触させる第一工程、及び、(2)前記第一工程後に、レポーター遺伝子の発現量をモニターする第二工程、及び(3)前記第二工程によりモニターされた発現量の変化に基づき前記物質の脂肪蓄積調節能力を評価する第三工程、及び(4)前記第三工程で評価された脂肪蓄積調節能力に基づき脂肪蓄積調節能力を有する物質を選抜する第四工程、を有することを特徴とする探索方法。
<アミノ酸配列>(a)配列番号1、2又は3で示されるアミノ酸配列、(b)配列番号1、2又は3で示されるアミノ酸配列において、1もしくは複数のアミノ酸が欠失、付加もしくは置換されたアミノ酸配列、(c)配列番号1、2又は3で示されるアミノ酸配列と80%以上の配列同一性を有するアミノ酸配列であり、かつ脂肪蓄積を促進する能力を有する蛋白質のアミノ酸配列、(d)配列番号1、2又は3で示されるアミノ酸配列をコードする塩基配列を有するDNAと80%以上の配列同一性を有する塩基配列を有するDNAによりコードされるアミノ酸配列であり、かつ脂肪蓄積を促進する能力を有する蛋白質のアミノ酸配列、(e)配列番号1、2又は3で示されるアミノ酸配列をコードする塩基配列を有するDNAと、ストリンジェントな条件下でハイブリダイズするDNAによりコードされるアミノ酸配列であり、かつ脂肪蓄積を促進する能力を有する蛋白質のアミノ酸配列【請求項19】請求項15又は19記載の探索方法により選抜された物質またはその薬学的に許容される塩を有効成分として含み、該有効成分が薬学的に許容される担体中に製剤化されてなることを特徴とする脂肪蓄積調節剤。
【請求項20】脂肪過少蓄積、脂肪過剰蓄積又は脂肪蓄積障害に起因する疾患と診断されうる哺乳動物の体内にある細胞に、下記のいずれかのアミノ酸配列を有する細胞分化促進因子の脂肪蓄積促進活性を調節する能力を有する物質を投与する工程を有することを特徴とする脂肪蓄積制御方法。
<アミノ酸配列>(a)配列番号1、2又は3で示されるアミノ酸配列(b)配列番号1、2又は3で示されるアミノ酸配列において、1もしくは複数のアミノ酸が欠失、付加もしくは置換されたアミノ酸配列であり、かつ脂肪蓄積を促進する能力を有する蛋白質のアミノ酸配列、(c)配列番号1、2又は3で示されるアミノ酸配列と80%以上の配列同一性を有するアミノ酸配列であり、かつ脂肪蓄積を促進する能力を有する蛋白質のアミノ酸配列、(d)配列番号1、2又は3で示されるアミノ酸配列をコードする塩基配列を有するDNAと80%以上の配列同一性を有する塩基配列を有するDNAによりコードされるアミノ酸配列であり、かつ脂肪蓄積を促進する能力を有する蛋白質のアミノ酸配列、(e)配列番号1、2又は3で示されるアミノ酸配列をコードする塩基配列を有するDNAと、ストリンジェントな条件下でハイブリダイズするDNAによりコードされるアミノ酸配列であり、かつ脂肪蓄積を促進する能力を有する蛋白質のアミノ酸配列【請求項21】ファットレス症又は脂肪萎縮症に羅患していると診断されうる哺乳動物の体内にある細胞に、下記のいずれかのアミノ酸配列を有する細胞分化促進因子の脂肪蓄積促進活性を向上させる能力を有する物質を投与する工程を有することを特徴とする脂肪蓄積促進方法。
<アミノ酸配列>(a)配列番号1、2又は3で示されるアミノ酸配列(b)配列番号1、2又は3で示されるアミノ酸配列において、1もしくは複数のアミノ酸が欠失、付加もしくは置換されたアミノ酸配列であり、かつ脂肪蓄積を促進する能力を有する蛋白質のアミノ酸配列、(c)配列番号1、2又は3で示されるアミノ酸配列と80%以上の配列同一性を有するアミノ酸配列であり、かつ脂肪蓄積を促進する能力を有する蛋白質のアミノ酸配列、(d)配列番号1、2又は3で示されるアミノ酸配列をコードする塩基配列を有するDNAと80%以上の配列同一性を有する塩基配列を有するDNAによりコードされるアミノ酸配列であり、かつ脂肪蓄積を促進する能力を有する蛋白質のアミノ酸配列、(e)配列番号1、2又は3で示されるアミノ酸配列をコードする塩基配列を有するDNAと、ストリンジェントな条件下でハイブリダイズするDNAによりコードされるアミノ酸配列であり、かつ脂肪蓄積を促進する能力を有する蛋白質のアミノ酸配列【請求項22】肥満であると診断されうる哺乳動物の体内にある細胞に、下記のいずれかのアミノ酸配列を有する細胞分化促進因子の脂肪蓄積促進活性を低下させる物質を投与する工程を有することを含むことを特徴とする脂肪蓄積抑制方法。
<アミノ酸配列>(a)配列番号1、2又は3で示されるアミノ酸配列、(b)配列番号1、2又は3で示されるアミノ酸配列において、1もしくは複数のアミノ酸が欠失、付加もしくは置換されたアミノ酸配列、(c)配列番号1、2又は3で示されるアミノ酸配列と80%以上の配列同一性を有するアミノ酸配列であり、かつ脂肪蓄積を促進する能力を有する蛋白質のアミノ酸配列、(d)配列番号1、2又は3で示されるアミノ酸配列をコードする塩基配列を有するDNAと80%以上の配列同一性を有する塩基配列を有するDNAによりコードされるアミノ酸配列であり、かつ脂肪蓄積を促進する能力を有する蛋白質のアミノ酸配列、(e)配列番号1、2又は3で示されるアミノ酸配列をコードする塩基配列を有するDNAと、ストリンジェントな条件下でハイブリダイズするDNAによりコードされるアミノ酸配列であり、かつ脂肪蓄積を促進する能力を有する蛋白質のアミノ酸配列
【発明の詳細な説明】【0001】
【発明の属する技術分野】本発明は、細胞分化促進因子KKLFをコードする核酸含有脂肪蓄積促進剤等に関する。
【0002】
【従来の技術】適切な量での脂肪蓄積は、多くの生命現象に不可欠な役割を果たしている。従って、遺伝子障害、生活習慣の変化・環境要因等により脂肪蓄積に異常な誘導(亢進)又は抑制がおこれば(即ち、脂肪の過少蓄積や過剰蓄積)、種々の病態や疾患が発生するのは必然である。一般に、細胞内での脂肪蓄積は、脂肪蓄積を促進する能力を有さない前駆脂肪細胞が何らかの刺激によって脂肪蓄積を促進する能力を有する成熟脂肪細胞へと分化誘導される結果、成熟脂肪細胞が有する脂肪合成機構によって当該細胞内で行われることが実験的に示されてきた。例えば、ファットレス症又は脂肪萎縮症等の病態・疾患では、当該病態・疾患において本来起こるべき脂肪蓄積が前駆脂肪細胞から成熟脂肪細胞への分化誘導不全により不適切に抑制されるような障害を発生していると考えられる。また逆に、肥満等の病態・疾患では前駆脂肪細胞から成熟脂肪細胞への分化誘導を抑制することにより過剰な脂肪蓄積を防ぐことが可能になると考えられる。
【0003】
【発明が解決しようとする課題】そこで、組織における前駆脂肪細胞から成熟脂肪細胞への分化誘導によって細胞内での脂肪蓄積を促進させ、これにより脂肪蓄積障害に伴う種々の疾患や異常の予防、治療に有用な方法や薬剤の開発が切望されている。
【0004】
【課題を解決するための手段】本発明者らはかかる状況の下、鋭意検討した結果、特定のアミノ酸配列を有する細胞分化促進因子が、組織における前駆脂肪細胞から成熟脂肪細胞への分化誘導し、その結果として細胞内での脂肪蓄積が促進されることを見出した。当該知見を基づき、脂肪蓄積障害に伴う種々の疾患や異常の予防、治療のための医療分野において有用となる、脂肪蓄積促進剤、脂肪蓄積促進方法、前駆脂肪細胞から成熟脂肪細胞への分化誘導方法、脂肪蓄積調節能力を有する物質の探索方法等を見出し、本発明に完成するに至った。
【0005】即ち、本発明は、1.下記のいずれかのアミノ酸配列を有する細胞分化促進因子をコードする核酸を有効成分として含み、該有効成分が薬学的に許容される担体中に製剤化されてなることを特徴とする脂肪蓄積促進剤、<アミノ酸配列>(a)配列番号1、2又は3で示されるアミノ酸配列(b)配列番号1、2又は3で示されるアミノ酸配列において、1もしくは複数のアミノ酸が欠失、付加もしくは置換されたアミノ酸配列であり、かつ脂肪蓄積を促進する能力を有する蛋白質のアミノ酸配列、(c)配列番号1、2又は3で示されるアミノ酸配列と80%以上の配列同一性を有するアミノ酸配列であり、かつ脂肪蓄積を促進する能力を有する蛋白質のアミノ酸配列、(d)配列番号1、2又は3で示されるアミノ酸配列をコードする塩基配列を有するDNAと80%以上の配列同一性を有する塩基配列を有するDNAによりコードされるアミノ酸配列であり、かつ脂肪蓄積を促進する能力を有する蛋白質のアミノ酸配列、(e)配列番号1、2又は3で示されるアミノ酸配列をコードする塩基配列を有するDNAと、ストリンジェントな条件下でハイブリダイズするDNAによりコードされるアミノ酸配列であり、かつ脂肪蓄積を促進する能力を有する蛋白質のアミノ酸配列(以下、上記のアミノ酸配列(a)〜(e)を総じてアミノ酸配列(I)と記することもある。)
2.脂肪蓄積促進のための、アミノ酸配列(I)のいずれかのアミノ酸配列を有する細胞分化促進因子をコードする核酸の使用、23.脂肪蓄積促進のための、アミノ酸配列(I)のいずれかのアミノ酸配列を有する細胞分化促進因子の使用、24.前駆脂肪細胞から成熟脂肪細胞への分化誘導のための、アミノ酸配列(I)のいずれかのアミノ酸配列を有する細胞分化促進因子をコードする核酸の使用、25.前駆脂肪細胞から成熟脂肪細胞への分化誘導のための、アミノ酸配列(I)のいずれかのアミノ酸配列を有する細胞分化促進因子の使用、26.哺乳動物細胞に、アミノ酸配列(I)のいずれかのアミノ酸配列を有する細胞分化促進因子をコードする外来遺伝子を、当該外来遺伝子が前記細胞で発現する位置に置かれるように提供する工程を有することを特徴とする哺乳動物における脂肪蓄積促進方法、27.脂肪過少蓄積又は脂肪蓄積障害に起因する疾患と診断されうる哺乳動物の体内にある細胞に、アミノ酸配列(I)のいずれかのアミノ酸配列を有する細胞分化促進因子を導入する工程を有することを特徴とする脂肪蓄積促進方法、28.ファットレス症又は脂肪萎縮症に羅患していると診断されうる哺乳動物の体内にある細胞に、アミノ酸配列(I)のいずれかのアミノ酸配列を有する細胞分化促進因子を導入する工程を有することを特徴とする脂肪蓄積促進方法、29.前駆脂肪細胞に、アミノ酸配列(I)のいずれかのアミノ酸配列を有する細胞分化促進因子を導入する工程を有することを特徴とする前駆脂肪細胞から成熟脂肪細胞への分化誘導方法、30.脂肪蓄積非誘導条件下においてアミノ酸配列(I)のいずれかのアミノ酸配列を有する細胞分化促進因子を実質的に発現しない細胞に、前記細胞分化促進因子依存的脂肪蓄積促進経路の正又は負の調節因子を投与する工程を有することを特徴とする脂肪蓄積制御方法、31.脂肪蓄積非誘導条件下においてアミノ酸配列(I)のいずれかのアミノ酸配列を有する細胞分化促進因子を実質的に発現しない細胞に、前記細胞分化促進因子依存的脂肪蓄積促進経路の正の調節因子を投与する工程を有することを特徴とする脂肪蓄積促進方法、32.脂肪蓄積非誘導条件下においてアミノ酸配列(I)のいずれかのアミノ酸配列を有する細胞分化促進因子を実質的に発現しない細胞に、前記細胞分化促進因子依存的脂肪蓄積促進経路の負の調節因子を投与する工程を有することを特徴とする脂肪蓄積抑制方法、33.負の調節因子が、前記細胞分化促進因子のアンチセンス核酸であることを特徴とする前項12記載の脂肪蓄積抑制方法、34.負の調節因子が、前記細胞分化促進因子と特異的に結合する抗体であることを特徴とする前項12記載の脂肪蓄積抑制方法、35.脂肪蓄積調節能力を有する物質の探索方法であって、(1)脂肪蓄積非誘導条件下においてアミノ酸配列(I)のいずれかのアミノ酸配列を有する細胞分化促進因子を実質的に発現しない細胞に、脂肪蓄積非誘導条件下又は脂肪蓄積誘導条件下、被験物質を接触させる第一工程、及び、(2)前記第一工程後に、前記細胞分化促進因子又はその遺伝子の発現量をモニターする第二工程、及び(3)前記第二工程によりモニターされた発現量の変化に基づき前記物質の脂肪蓄積調節能力を評価する第三工程、及び(4)前記第三工程で評価された脂肪蓄積調節能力に基づき脂肪蓄積調節能力を有する物質を選抜する第四工程、を有することを特徴とする探索方法、36.第一工程において、前記細胞に被験物質を接触させる条件が脂肪蓄積非誘導条件であって、かつ、第三工程でいう発現量の変化が前記細胞分化促進因子又はその遺伝子の発現量の増加であることを特徴とする前項15記載の探索方法、37.第一工程において、前記細胞に被験物質を接触させる条件が脂肪蓄積誘導条件下であって、かつ、第三工程でいう発現量の変化が前記細胞分化促進因子又はその遺伝子の発現量の減少であることを特徴とする前項15記載の探索方法、38.脂肪蓄積調節能力を有する物質の探索方法であって、(1)下記のいずれかのアミノ酸配列を有する細胞分化促進因子をコードする遺伝子の発現調節領域を機能可能な形で連結されてなるレポーター遺伝子を含有しかつ脂肪蓄積非誘導条件下においてアミノ酸配列(I)のいずれかのアミノ酸配列を有する細胞分化促進因子を実質的に発現しない細胞に、脂肪蓄積非誘導条件下又は脂肪蓄積誘導条件下、被験物質を接触させる第一工程、及び、(2)前記第一工程後に、レポーター遺伝子の発現量をモニターする第二工程、及び(3)前記第二工程によりモニターされた発現量の変化に基づき前記物質の脂肪蓄積調節能力を評価する第三工程、及び(4)前記第三工程で評価された脂肪蓄積調節能力に基づき脂肪蓄積調節能力を有する物質を選抜する第四工程、を有することを特徴とする探索方法、39.前項15又は19記載の探索方法により選抜された物質またはその薬学的に許容される塩を有効成分として含み、該有効成分が薬学的に許容される担体中に製剤化されてなることを特徴とする脂肪蓄積調節剤、40.脂肪過少蓄積、脂肪過剰蓄積又は脂肪蓄積障害に起因する疾患と診断されうる哺乳動物の体内にある細胞に、アミノ酸配列(I)のいずれかのアミノ酸配列を有する細胞分化促進因子の脂肪蓄積促進活性を調節する能力を有する物質を投与する工程を有することを特徴とする脂肪蓄積制御方法、41.ファットレス症又は脂肪萎縮症に羅患していると診断されうる哺乳動物の体内にある細胞に、アミノ酸配列(I)のいずれかのアミノ酸配列を有する細胞分化促進因子の脂肪蓄積促進活性を向上させる能力を有する物質を投与する工程を有することを特徴とする脂肪蓄積促進方法、42.肥満であると診断されうる哺乳動物の体内にある細胞に、アミノ酸配列(I)のいずれかのアミノ酸配列を有する細胞分化促進因子の脂肪蓄積促進活性を低下させる物質を投与する工程を有することを含むことを特徴とする脂肪蓄積抑制方法、等を提供するものである。
【0006】
【発明の実施の形態】以下に本発明を詳細に説明する。本発明蓄積促進剤(I)は、脂肪細胞における脂肪蓄積促進(特に前駆脂肪細胞から成熟脂肪細胞への分化誘導)のために使用される。本発明蓄積促進剤(I)において用いられる核酸によりコードされる細胞分化促進因子とは、下記のいずれかのアミノ酸配列を有する蛋白質である(以下、本蛋白質と記すこともある。)。
<アミノ酸配列>(a)配列番号1、2又は3で示されるアミノ酸配列;
(b)配列番号1、2又は3で示されるアミノ酸配列において、1もしくは複数のアミノ酸が欠失、付加もしくは置換されたアミノ酸配列であり、かつ脂肪蓄積を促進する能力を有する蛋白質のアミノ酸配列;
(c)配列番号1、2又は3で示されるアミノ酸配列と80%以上の配列同一性を有するアミノ酸配列であり、かつ脂肪蓄積を促進する能力を有する蛋白質のアミノ酸配列;
(d)配列番号1、2又は3で示されるアミノ酸配列をコードする塩基配列を有するDNAと80%以上の配列同一性を有する塩基配列を有するDNAによりコードされるアミノ酸配列であり、かつ脂肪蓄積を促進する能力を有する蛋白質のアミノ酸配列;
(e)配列番号1、2又は3で示されるアミノ酸配列をコードする塩基配列を有するDNAと、ストリンジェントな条件下でハイブリダイズするDNAによりコードされるアミノ酸配列であり、かつ脂肪蓄積を促進する能力を有する蛋白質のアミノ酸配列ここで、前記(b)にある「アミノ酸が欠失、付加もしくは置換」や前記(c)にある「80%以上の配列同一性」及び(d)にある「80%以上の配列同一性」には、例えば、配列番号1、2又は3で示されるアミノ酸配列を有する蛋白質が細胞内で受けるプロセシング、該蛋白質が由来する生物の種差、個体差、器官、組織間の差異等により天然に生じる変異や、人為的なアミノ酸の変異(例えば、部位特異的変異導入法や突然変異処理等によって、天然の蛋白質をコードするDNAに変異を導入し発現させることにより作出された蛋白質が有するアミノ酸配列中に存在するアミノ酸の変異)等が含まれる。
【0007】前記(b)にある「アミノ酸が欠失、付加もしくは置換」(以下、総じてアミノ酸の改変と記すこともある。)を人為的に行う場合の手法としては、例えば、配列番号1、2又は3で示されるアミノ酸配列をコードするDNAに対して慣用の部位特異的変異導入を施し、その後このDNAを常法により発現させる手法が挙げられる。ここで部位特異的変異導入法としては、例えば、アンバー変異を利用する方法(ギャップド・デュプレックス法、Nucleic Acids Res.,12,9441-9456(1984))、変異導入用プライマーを用いたPCRによる方法等が挙げられる。
【0008】前記で改変されるアミノ酸の数については、少なくとも1残基、具体的には1若しくは数個(ここで「数個」とは、2〜約10個程度である。)、又はそれ以上である。かかる改変の数は、脂肪蓄積を促進する能力を見出すことのできる範囲であれば良い。
【0009】また前記欠失、付加又は置換のうち、特にアミノ酸の置換に係る改変が好ましい。当該置換は、疎水性、電荷、pK、立体構造上における特徴等の類似した性質を有するアミノ酸への置換がより好ましい。このような置換としては、例えば、■グリシン、アラニン;■バリン、イソロイシン、ロイシン;■アスパラギン酸、グルタミン酸、アスパラギン、グルタミン、■セリン、スレオニン;■リジン、アルギニン;■フェニルアラニン、チロシンのグループ内での置換が挙げられる。
【0010】本発明において「配列同一性」とは、2つのDNA又は2つの蛋白質間の配列の同一性及び相同性をいう。前記「配列同一性」は、比較対象の配列の全領域にわたって、最適な状態にアラインメントされた2つの配列を比較することにより決定される。ここで、比較対象のDNA又は蛋白質は、2つの配列の最適なアラインメントにおいて、付加又は欠失(例えばギャップ等)を有していてもよい。このような配列同一性に関しては、例えば、Vector NTIを用いて、ClustalWアルゴリズム(Nucleic Acid Res.,22(22):4673-4680(1994)を利用してアラインメントを作成することにより算出することができる。尚、配列同一性は、配列解析ソフト、具体的にはVector NTI、GENETYX-MACや公共のデータベースで提供される解析ツールを用いて測定される。前記公共データベースは、例えば、ホームページアドレスhttp://www.ddbj.nig.ac.jpにおいて、一般的に利用可能である。
【0011】本発明における配列同一性は、例えば、アミノ酸配列基準の場合には80%以上であることが好ましく、また塩基配列基準の場合には80%以上であることが好ましい。もちろん上記条件を満たす限りにおいて、例えば、配列番号1、2又は3で示されるアミノ酸配列のうち、第52番から第130番までのアミノ配列における配列同一性が実質的にほぼ100%であり、第1番から第51番までのアミノ配列における配列同一性が50%以上であるような配列同一性であってもよい。
【0012】前記(e)にある「ストリンジェントな条件下でハイブリダイズする」に関して、ここで使用されるハイブリダイゼーションは、例えば、Sambrook J., Frisch E. F., Maniatis T.著、モレキュラークローニング第2版(Molecular Cloning2nd edition)、コールド スプリング ハーバー ラボラトリー発行(Cold Spring Harbor Laboratory press)等に記載される通常の方法に準じて行うことができる。また「ストリンジェントな条件下」とは、例えば、6×SSC(1.5MNaCl、0.15M クエン酸三ナトリウムを含む溶液を10×SSCとする)を含む溶液中で45℃にてハイブリッドを形成させた後、2×SSCで50℃にて洗浄するような条件(Molecular Biology, John Wiley & Sons, N. Y. (1989), 6.3.1-6.3.6)等を挙げることができる。洗浄ステップにおける塩濃度は、例えば、2×SSCで50℃の条件(低ストリンジェンシーな条件)から0.2×SSCで50℃までの条件(高ストリンジェンシーな条件)から選択することができる。洗浄ステップにおける温度は、例えば、室温(低ストリンジェンシーな条件)から65℃(高ストリンジェンシーな条件)から選択することができる。また、塩濃度と温度の両方を変えることもできる。
【0013】尚、本蛋白質のうち、配列番号1、2又は3で示されるアミノ酸配列を有する細胞分化促進因子は、ヒト、マウス又はラット由来のKKLF(KLF15:GenBank Accession No.BAA88561,NP075673又はBAA78378)として知られている。
【0014】ここでKLF(Kruppel-like factors)とは、DNA結合能力を有する転写因子の一種であって、当該因子は発生・分化において重要な役割を担っている。KLFは、Cys2/His2 zinc fingerモチーフを有する転写因子であり、そのファミリーは現在までにEKLF(KLF1:Mol. Cell. Biol. 13, 2776-2786 (1993))、LKLF(KLF2:Mol. Cell. Biol. 15 (11), 5957-5965 (1995))、BKLF及びGKLF/EZF(KLF3及びKLF4:J. Biol. Chem. 271 (33), 20009-20017 (1996))、IKLF/BTEB2(KLF5:Nucleic Acids Res. 27 (5), 1263-1270 (1999))、Zf9/CPBP(KLF6:J. Am. Soc.Nephrol. 12 (4), 726-735 (2001))、UKLF(KLF7:Development 128 (7), 1147-1158 (2001))、BKLF3(KLF8:Nucleic Acids Res. 28 (9), 1955-1962 (2000))、BTEB1(KLF9:Mol. Cell. Biol. 19 (1), 194-204 (1999))、TIEG1/EGRα及びTIEG2/FKLF(KLF10及びKLF11:Mol. Cell. Biol. 19 (5), 3571-3579 (1999))、AP2rep及びFKLF2/RFLAT(KLF12及びKLF13:Blood. 2000 Jun 1;95(11):3578-84)、KLF14(KLF14:Genomics 70 (1), 93-101 (2000))、KKLF(KLF15:Mol Cell Biol. 2000 20(19):7319-31)の15種類が発見されている。KLFファミリーの特徴は、Cys2/His2 zinc fingerモチーフを3個有し、C末端側のKLFファミリー間の相同性が高いことにある。KLFファミリーの共通のDNA認識配列は「GT-box」、「CACCC element」と呼ばれるDNA motifである。KLFファミリーは共通のDNA配列に結合し、同じ器官・組織に複数のKLFファミリーが発現しているにも関わらず、個々のKLFの生理作用は大きく異なっている。(Nucleic Acids Res.27(15),2991-3000(1999))。例えば、KKLFについては、肝臓、腎臓及び心臓等の脂肪組織以外の器官・組織で発現していることが確認されているだけであり、さらに、その生理作用に関する知見は何ら存在していない。
【0015】このような蛋白質は、以下のように探索することができる。例えば、まず(1)前駆脂肪細胞に、被験蛋白質を接触させる第一工程、及び(2)前記第一工程後に、脂肪蓄積量を測定する第二工程を有する方法により脂肪蓄積量を分析する。この際に、被験蛋白質として異なる2種以上の蛋白質を各々独立して用いた区における脂肪蓄積量(第一の蓄積量、第二の蓄積量)を比較することにより差異を調べる。その結果、得られる差異(第一の蓄積量と第二の蓄積量との差)に基づき前記蛋白質の脂肪蓄積を促進する能力を評価する。このようにして評価された脂肪蓄積を促進する能力を有する蛋白質を選抜することにより探索することができる。もちろん、上記第一工程における被験蛋白質を接触させる代わりに、被験蛋白質をコードする遺伝子を前記脂肪細胞に導入し、そして上記第二工程における脂肪蓄積量を分析する代わりに、後述の脂肪細胞分化のマーカー(例えば、aP2等)を利用したレポーター遺伝子の発現量をモニターすることで脂肪蓄積を促進する能力を評価することにより、脂肪蓄積を促進する能力を有する蛋白質を探索してもよい。
【0016】上記の方法において、前記異なる2種以上の蛋白質のうち、少なくとも一つの蛋白質が脂肪蓄積を促進する能力を有さない蛋白質とすることで、他方の被験蛋白質が有する脂肪蓄積を促進する能力を評価してもよいし、また前記異なる2種以上の蛋白質のうち、少なくとも一つの蛋白質が有する脂肪蓄積を促進する能力を基準としながら他方の被験蛋白質が有する脂肪蓄積を促進する能力を評価してもよい。
【0017】本蛋白質は、SDS-PAGEでの分子量として約4万以上約5万以下の分子量であることが好ましく、特に約4.3以上約4.5以下程度の分子量が適している。
【0018】本蛋白質の調製方法(本蛋白質をコードする遺伝子の調製方法を含む)について以下に説明する。まず、本蛋白質をコードする遺伝子(以下、本遺伝子と記すこともある。)、例えば、(a)配列番号1、2又は3で示されるアミノ酸配列をコードする塩基配列を有するDNA;
(b)配列番号1、2又は3で示されるアミノ酸配列において、1もしくは複数のアミノ酸が欠失、付加もしくは置換されたアミノ酸配列であり、かつ脂肪蓄積を促進する能力を有する蛋白質のアミノ酸配列をコードする塩基配列を有するDNA;
(c)配列番号1、2又は3で示されるアミノ酸配列と80%以上の配列同一性を有するアミノ酸配列をコードする塩基配列を有するDNAであり、かつ脂肪蓄積を促進する能力を有する蛋白質のアミノ酸配列をコードする塩基配列を有するDNA;
(d)配列番号1、2又は3で示されるアミノ酸配列をコードする塩基配列を有するDNAと80%以上の配列同一性を有する塩基配列を有するDNAであり、かつ脂肪蓄積を促進する能力を有する蛋白質のアミノ酸配列をコードする塩基配列を有するDNA;
(e)配列番号1、2又は3で示されるアミノ酸配列をコードする塩基配列を有するDNAと、ストリンジェントな条件下でハイブリダイズするDNAであり、かつ脂肪蓄積を促進する能力を有する蛋白質のアミノ酸配列をコードする塩基配列を有するDNA等を、通常の遺伝子工学的方法(例えば、Sambrook J., Frisch E. F., Maniatis T.著、モレキュラークローニング第2版(Molecular Cloning 2nd edition)、コールド スプリング ハーバー ラボラトリー発行(Cold Spring Harbor Laboratory press)等に記載されている方法)に準じて取得する。次いで、得られた本遺伝子を用いることにより、通常の遺伝子工学的方法に準じて本蛋白質を製造・取得する。このようにして本蛋白質を調製することができる。
【0019】具体的には、まず、ヒト、マウス又はラット等の組織、細胞やこれらに由来する培養細胞などからRNAを調製する。例えば、ラット腹腔内脂肪細胞等を塩酸グアニジンやグアニジンチオシアネート等の強力な蛋白質変性剤を含む溶液中で粉砕し、さらに該粉砕物にフェノール、クロロホルム等を加えることにより蛋白質を変性させる。変性蛋白質を遠心分離等により除去した後、回収された上清画分から塩酸グアニジン/フェノール法、SDS−フェノール法、グアニジンチオシアネート/CsCl法等の方法により全RNAを抽出する。なお、これらの方法に基づいた市販の試薬としては、例えばISOGEN(ニッポンジーン製)、トリゾル試薬(Gibco BRL)等がある。
【0020】得られた全RNAを鋳型としてオリゴdTプライマーをRNAのポリA配列にアニールさせ、逆転写酵素を作用させることにより一本鎖cDNAを合成する。次いで、該一本鎖cDNAを鋳型とし、かつ本蛋白質のアミノ酸配列をコードする塩基配列(例えば、配列番号1、2又は3で示されるアミノ酸配列をコードする塩基配列)に基づいて設計されたオリゴヌクレオチドをプライマーとして用いてポリメラーゼチェイン反応(以下、PCRと記す。)を行うことにより、本遺伝子を増幅し、取得することができる。
【0021】また、上記の一本鎖cDNAを鋳型としてDNAポリメラーゼを作用させることにより二本鎖のcDNAを合成する。得られた二本鎖cDNAを、例えばプラスミドpUC118やファージλgt10などのベクターに挿入することによりcDNAライブラリーを作製する。このようにして得られるcDNAライブラリーや市販のcDNAライブラリーから、例えば、かつ本蛋白質のアミノ酸配列をコードする塩基配列(例えば、配列番号1、2又は3で示されるアミノ酸配列をコードする塩基配列)の部分塩基配列を有するDNAをプローブとして用いるハイブリダイゼーション法や、かつ本蛋白質のアミノ酸配列をコードする塩基配列(例えば、配列番号1、2又は3で示されるアミノ酸配列をコードする塩基配列)に基づいて設計されたオリゴヌクレオチドをプライマーとして用いるPCRにより、本遺伝子を取得することもできる。因みに、配列番号1、2又は3で示されるアミノ酸配列をコードする塩基配列のより具体的な例としては、配列番号11、14又は6で示される塩基配列(Gen Bank Accession No. AB029254, NM023184又はAB020759)等をあげることができる。
【0022】PCRに用いるプライマーとしては、例えば、約20bpから約50bp程度の長さでかつGまたはC塩基の割合が約40%から約60%程度の塩基配列を、上記のような本蛋白質をコードする既知の塩基配列から選択し、該塩基配列に基いてオリゴヌクレオチドを設計し、合成するとよい。具体的には、例えば、ヒト由来の本遺伝子を取得するには、フォワードプライマーとして配列番号9で示される塩基配列からなるオリゴヌクレオチドを用いることができ、リバースプライマーとして配列番号10で示される塩基配列からなるオリゴヌクレオチドを用いることができる。得られた本遺伝子の塩基配列は、Maxam Gilbert法 (例えば、Maxam,A.M & W.Gilbert, Proc.Natl.Acad.Sci.USA, 74, 560, 1977 等に記載される)やSanger法(例えばSanger,F. & A.R.Coulson, J.Mol.Biol., 94, 441, 1975、Sanger,F, & Nicklen and A.R.Coulson., Proc.Natl.Acad.Sci.USA, 74, 5463, 1977等に記載される)により確認することができる。このようにして、脂肪蓄積促進(特に前駆脂肪細胞から成熟脂肪細胞への分化誘導)のために使用される本発明蓄積抑制剤(I)の有効成分となる細胞分化促進因子をコードする核酸を調製することができる。
【0023】本遺伝子は、例えば、J.Sambrook,E.F.Frisch,T.Maniatis著;モレキュラークローニング第2版(Molecular Cloning 2nd edition)、コールドスプリングハーバー ラボラトリー(Cold Spring Harbor Laboratory)発行、1989年等記載の遺伝子工学的方法に準じてベクターにクローニングすることができる。
【0024】ベクターとしては、具体的には、大腸菌を宿主細胞とする場合には、例えばプラスミドpUC119(宝酒造(株)製)や、ファージミドpBluescriptII(ストラタジーン社製)等をあげることができる。出芽酵母を宿主細胞とする場合には、プラスミドpACT2(Clontech社製)などをあげることができる。また、哺乳類動物細胞を宿主細胞とする場合には、pRC/RSV、pRC/CMV(Invitrogen社製)等のプラスミド、ウシパピローマウイルスプラスミドpBPV(アマシャムファルマシア社製)、EBウイルスプラスミドpCEP4(Invitrogen社製)等のウイルス由来の自律複製起点を含むベクター、ワクシニアウイルス等のウイルスなどをあげることができる。昆虫類動物細胞(以下、昆虫細胞と記す。)を宿主細胞とする場合には、バキュロウイルス等の昆虫ウイルスをあげることができる。
【0025】本遺伝子の上流に、宿主細胞で機能可能なプロモーターを機能可能な形で結合させ、これを上述のようなベクターに組み込むことにより、本遺伝子を宿主細胞で発現させることの可能な発現ベクターを構築することができる。ここで、「機能可能な形で結合させる」とは、本遺伝子が宿主細胞に導入された際に、宿主細胞においてプロモーターの制御下に発現されるように、当該プロモーターと本遺伝子とを結合させることを意味する。宿主細胞で機能可能なプロモーターとしては、例えば、宿主細胞が大腸菌である場合には、大腸菌のラクトースオペロンのプロモーター(lacP)、トリプトファンオペロンのプロモーター(trpP)、アルギニンオペロンのプロモーター(argP)、ガラクトースオペロンのプロモーター(galP)、tacプロモーターもしくはtrcプロモーター等の大腸菌内で機能可能な合成プロモーター、T7プロモーター、T3プロモーター、λファージのプロモーター(λ-pL、λ-pR)等をあげることができる。また、宿主細胞が動物細胞や分裂酵母である場合には、例えば、ラウス肉腫ウイルス(RSV)プロモーター、サイトメガロウイルス(CMV)プロモーター、シミアンウイルス(SV40)の初期もしくは後期プロモーター、マウス乳頭腫ウイルス(MMTV)プロモーター等をあげることができる。宿主細胞が出芽酵母である場合には、ADH1プロモーター(尚、ADH1プロモーターは、例えばADH1プロモーター及び同ターミネーターを保持する酵母発現ベクターpAAH5 〔Washington Research Fundation から入手可能、Ammerer ら、Methodin Enzymology、101 part(p.192-201)〕から通常の遺伝子工学的方法により調製することができる。ADH1プロモーターは、Washington Research Fundationの米国特許出願第299,733 に含まれており、米国において、工業的、商業目的で使用する場合は、権利者からの権利許諾を必要とする。)などをあげることができる。
【0026】一般的には、宿主細胞で機能可能なプロモーターと本遺伝子とが機能可能な形で接続されてなるDNAを、宿主細胞で利用可能なベクターに組込んで、これを宿主細胞に導入する。宿主細胞において機能可能なプロモーターをあらかじめ保有するベクターを使用する場合には、ベクター保有のプロモーターと本遺伝子とが機能可能な形で結合するように、該プロモーターの下流に本遺伝子を挿入すればよい。例えば、前述のプラスミドpRC/RSV,pRC/CMV等は、動物細胞で機能可能なプロモーターの下流にクローニング部位が設けられており、該クローニング部位に本遺伝子を挿入し動物細胞へ導入することにより、本遺伝子を発現させることができる。また、前述の酵母用プラスミドpACT2はADH1プロモーターを有しており、該プラスミドまたはその誘導体のADH1プロモーターの下流に本遺伝子を挿入すれば、本遺伝子を例えばCG1945(Clontech社製)等の出芽酵母内で発現させることが可能な発現ベクターが構築できる。マーカー遺伝子(例えば、カナマイシン耐性遺伝子、ネオマイシン耐性遺伝子等の抗生物質耐性付与遺伝子など)を含むベクターを用いると、本遺伝子が導入された形質転換体を当該マーカー遺伝子の表現型等を指標にして選択する際に便利である。さらなる高発現を導くことが必要な場合には、本蛋白質をコードする遺伝子の上流にリボゾーム結合領域を連結してもよい。用いられるリボゾーム結合領域としては、Guarente L.ら(Cell 20, p543)や谷口ら(Genetics of Industrial Microorganisms, p202, 講談社)による報告に記載されたものを挙げることができる。
【0027】本遺伝子が組み込まれたベクター(以下、本ベクターと記すこともある。)を宿主細胞へ導入する方法としては、宿主細胞に応じた通常の導入方法を適用することができる。例えば、大腸菌を宿主細胞とする場合には、モレキュラー・クローニング(J.Sambrookら、コールド・スプリング・ハーバー、1989年)等に記載される塩化カルシウム法やエレクトロポレーション法等の通常の方法を用いることにより本ベクターを宿主細胞へ導入することができる。また、哺乳類動物細胞または昆虫細胞を宿主細胞とする場合には、例えば、リン酸カルシウム法、DEAEデキストラン法、エレクトロポレーション法またはリポフェクション法等の一般的な遺伝子導入法により前記細胞に本ベクターを導入することができる。酵母菌を宿主細胞とする場合には、例えば、リチウム法を基にしたYeast transformation kit(Clontech社製)などを用いて導入することができる。
【0028】本ベクターが導入された形質転換体を選抜するには、例えば、本ベクターと同時に下記のようなマーカー遺伝子を宿主細胞に導入し、導入されたマーカー遺伝子の性質に応じた方法で本ベクターが導入された宿主細胞を培養すればよい。例えば、当該マーカー遺伝子が、宿主細胞に致死活性を示す選抜薬剤に対する薬剤耐性を付与する遺伝子(薬剤耐性付与遺伝子)である場合には、該薬剤を添加した培地を用いて、本ベクターが導入された宿主細胞を培養すれば良い。薬剤耐性付与遺伝子と選抜薬剤との組み合わせとしては、例えば、ネオマイシン耐性付与遺伝子とネオマイシンとの組み合わせ、ハイグロマイシン耐性付与遺伝子とハイグロマイシンとの組み合わせ、ブラストサイジンS耐性付与遺伝子とブラストサイジンSとの組み合わせ等をあげることができる。また、当該マーカー遺伝子が宿主細胞の栄養要求性を相補する遺伝子である場合には、該栄養素を含まない最少培地を用いて、本ベクターが導入された細胞を培養すればよい。上述のようにして得られた本ベクターが導入された形質転換体(以下、本形質転換体と記すこともある。)を培養することにより本遺伝子にコードされる本蛋白質を産生させることができる。
【0029】例えば、本形質転換体が微生物である場合には、形質転換体は、通常、一般微生物における培養に使用される炭素源や窒素源、有機ないし無機塩等を適宜含む各種の培地を用いて培養される。培地のpHは約6〜約8程度が一般的である。培養は、一般微生物における通常の方法に準じて行い、固体培養、液体培養(試験管振とう式培養、往復式振とう培養、ジャーファーメンター(Jar Fermenter)培養、タンク培養等)などが可能である。培養温度は、微生物が生育する範囲で適宜変更できるが、例えば、約15℃〜約40℃の培養温度で培養するのが一般的である。培養時間は、種々の培養条件によって異なるが、通常約1〜約5日間である。温度シフト型やIPTG誘導型等の誘導型の発現ベクターを用いた場合には誘導時間は1日以内が望ましく、通常数時間程度である。
【0030】また、本形質転換体が哺乳類や昆虫類等の動物細胞である場合には、形質転換体は、通常、一般の培養細胞における培養に使用される培地を用いて培養することができる。本形質転換体の選択に選抜薬剤を用いた場合には、当該選抜薬剤の存在下に培養するのが望ましい。哺乳類動物細胞の場合には、例えば、終濃度が10%となるようFBSが添加されたD−MEM培地(ニッスイ社製等)を用い、37℃、5%CO2存在下等の条件下で数日毎に新しい培養液に交換しながら培養すればよい。細胞がコンフルエントになるまで増殖したら、例えば0.25(w/v)%程度のトリプシンPBS溶液を加えて個々の細胞に分散させ、得られた細胞の懸濁液を数倍に希釈して新しいぺトリディッシュに播種し継代を続ける。昆虫類動物細胞の場合も同様に、例えば10(v/v)%FBSおよび2(w/v)%Yeastlateを含むGrace'smedium等の昆虫細胞用培地を用いて約25℃〜約35℃の培養温度で培養すればよい。
【0031】本形質転換体を培養することにより産生された本蛋白質は、蛋白質の通常の単離、精製の方法を適宜組み合わせて回収することができる。例えば、培養終了後、本形質転換体の細胞を遠心分離等で集め、必要に応じて、集められた該細胞を適宜バッファーに懸濁した後、ポリトロン、超音波処理、ダウンスホモジナイザー等で破砕する。得られた破砕液から、遠心分離、メンブレンフィルターろ過等により不溶物を除去して無細胞抽出液を調製し、これをイオン交換,疎水,ゲルろ過、アフィニティ等の各種クロマトグラフィーに供することにより、本蛋白質を精製することができる。この際、本蛋白質をコードする塩基配列を含む約20塩基から約200塩基程度の長さのオリゴヌクレオチドをプローブとしたDNA結合アッセイなどにより、本蛋白質を含む画分を見分けることもできる。また、本蛋白質を、そのN末端側やC末端側に、例えば6〜10個のヒスチジンが並んだアミノ酸配列が融合された形で発現させると、金属キレート樹脂を用いたキレートクロマトグラフィーによって1段階で精製が可能となる。このようにして、本発明蓄積促進剤(I)において用いられる核酸によりコードされる細胞分化促進因子を調製することができる。
【0032】当該細胞分化促進因子は、これを特異的に認識する抗体の調製において抗原として用いることができ、また当該細胞分化促進因子のリガンド探索においてリガンドの特異的吸着を行わせるための支持体に固定化させるアフィニティークロマトグラフィー用蛋白質として用いることもできる。
【0033】本発明蓄積促進剤(I)の有効成分となる、本蛋白質をコードする核酸(即ち、本遺伝子)は、前述の如く調製すればよいが、例えば、当該核酸を含有する組換えベクター又は組換えウイルス等の形態で使用されることもある。このような形態では、例えば、レトロウイルスベクター、アデノウイルスベクター、アデノ関連性ベクター、単純ヘルペスウイルスベクター、SV40ベクター、ポリオーマウイルスベクター、乳頭腫ウイルスベクター、ピコルナウイルスベクター及びワクシニアウイルスベクター等のウイルスベクターをあげることができる。さらに、アデノウイルスベクターを使用する場合には、例えばQUANTUM社製のAdEasy Kitを用い、本遺伝子をTransfer Vectorのマルチクローニングサイトに組み込み、得られた組換えベクターを直線化した後に、pAdEasy vectorと共に大腸菌にトランスフォームし、相同組換え体DNAをヒト293A細胞に組み込むことにより、本遺伝子を含有する組換えウイルスを産生させ、これを回収し、使用することもできる。
【0034】また、ヒトサイトメガウイルスのプロモーター領域を有するプラスミドDNA等のような非ウイルス系のベクターを用いることもできる。本遺伝子を線維化組織部位に直接注入する場合のように、非ウイルスベクターを用いて本遺伝子を局所的に送達するシステムにおいては、プラスミドDNAの使用は極めて有益である。体外に取り出された細胞に発現ベクターを導入して体内に戻す方法、すなわち、ex vivo法を使えば、あらゆる既知の導入方法が利用可能である。例えば、a)直接注入、b)リポソームを介する形質導入、c)リン酸カルシウム法・エレクトロポレーション法・DEAE−デキストラン法による細胞トランスフェクション、d)ポリブレンを介した送達、e)プロトプラスト融合、f)マイクロインジェクション、g)ポリリシンを使った形質導入などによって、非ウイルスベクターを導入することができる。
【0035】本発明蓄積促進剤(I)は、その有効量を非経口的にヒト等の哺乳動物に対し投与することができる。例えば、非経口的に投与する方法としては、例えば、上述のような注射(皮下、静脈内等)等を挙げることができる。前記の適当な投与剤型は薬学的に許容される、例えば、水溶性溶剤、非水溶性溶剤、緩衝剤、溶解補助剤、等張剤、安定剤等の担体に本遺伝子(ベクター型もしくはウィルス型、又はプラスミド型の本遺伝子の形態を含む)を配合することにより製造することができる。必要に応じて、防腐剤、懸濁化剤、乳化剤等の補助剤を添加してもよい。また、非経口的に投与する場合には、本発明蓄積促進剤(II)を溶液等の通常の液剤の形態で使用することができる。
【0036】投与量は、投与される哺乳動物の年令、性別、体重、疾患の程度、本脂肪蓄積抑制剤の種類、投与形態等によって異なるが、通常は、患者細胞において本蛋白質が細胞内で有効に働くような濃度レベルと等しい、本蛋白質の細胞内レベルをもたらす有効成分量を投与すればよい。また、前記の1日の投与量を1回または数回に分けて投与することができる。本発明蓄積促進剤(I)の適用可能な疾患としては、脂肪過少蓄積又は脂肪蓄積障害(例えば、ファットレス症、脂肪萎縮症)等をあげることができる。
【0037】本発明は、哺乳動物細胞に、本蛋白質をコードする外来遺伝子を、当該外来遺伝子が前記細胞で発現する位置に置かれるように提供する工程を有することを特徴とする哺乳動物における脂肪蓄積促進方法[本発明蓄積促進方法(I)]も提供している。
【0038】哺乳動物細胞としては、ヒト、サル、マウス、ラット、ハムスター等の哺乳動物由来の細胞を挙げることができる。当該細胞は、組織から分離された細胞や、同一の機能・形態を持つ集団を形成している細胞や、前記哺乳動物の体内にある細胞であってもよい。
【0039】従って、哺乳動物がヒトである場合には、一般にいう遺伝子治療が施されたヒトから各種実験に使用されるような株化細胞までを意味し、また哺乳動物が非ヒト動物である場合には、一般にいう遺伝子治療が施された非ヒト動物から各種実験に使用されるようなモデル動物や株化細胞までを意味する。後者の場合には、ラット、マウス等を好ましい動物種として挙げることができる。
【0040】本蛋白質をコードする外来遺伝子の調製方法は、前述の「本蛋白質の調製方法(本蛋白質をコードする遺伝子の調製方法を含む)」において説明されたものと同等な方法に準じて調製すればよい。
【0041】このように調製された外来遺伝子を用いて後述のように形質転換細胞を調製することにより、当該外来遺伝子が哺乳動物細胞で発現する位置に置かれるように提供された形質転換細胞を得ることができる。
【0042】本発明蓄積促進方法(I)において「発現する位置に置かれた」とは、DNA分子が、その塩基配列の転写及び翻訳を指向する(即ち、例えば、本蛋白質又はそのRNA分子の産生を促進するような)DNA配列と隣接した位置に置かれていることを意味する。
【0043】本蛋白質の遺伝子の発現レベルは、本蛋白質の遺伝子が導入されていない細胞と比較して脂肪蓄積を促進するために十分である量であればよい。この場合、本蛋白質をコードする外来遺伝子は、本蛋白質の全体又は一部をコードする外来遺伝子であってもよい。
【0044】上記の脂肪蓄積促進方法において、本蛋白質をコードする外来遺伝子がゲノムに組み込まれた形質転換細胞を作製することにより脂肪蓄積を促進してもよい。
【0045】上記の脂肪蓄積促進方法において、本蛋白質をコードする外来遺伝子を哺乳動物細胞に導入するために用いられる遺伝子構築物(以下、本遺伝子構築物と記載することもある。)及び遺伝子移入到達手段としては、当該外来遺伝子が導入される哺乳動物細胞に対して親和性を有する、レトロウイルスベクター、アデノウイルスベクター、アデノ関連ウイルスベクター又はその他のウイルスベクターを用いるとよい。例えば、ミラー(Miller),Human Gene Therapy 15〜14,1990;フリードマン(Friedman),Science 244:1275〜1281,1989;エグリティス(Eglitis)およびアンダーソン(Anderson),BioTechniques 6:608〜614,1988;トルストシェフ(Tolstoshev)およびアンダーソン(Anderson),current opinion in Biotechnology 1;55〜61,1990;シャープ(Sharp),The Lancet 337:1277〜1278,1991;コルネッタ(Cornetta)ら、Nucleic Acid Research and Molecular Biology 36:311〜322,1987;アンダーソン(Anderson),Science 22-:401〜409,1984;モーン(Moen),Blood Cells 17:407〜416,1991;ミラー(Miller)ら、Biotechniques 7:980〜990,1989;Le Gai La Salleら、Science 259:988〜990,1993;およびジョンソン(Johnson),Chest 107:77S〜83S,1995等に記載される公知のベクターをあげることができる。ローゼンバーグ(Rosenberg)ら、N.Engl.J.Med 323:370,1990;アンダーソン(Anderson)ら、米国特許第5,399,346号等に記載されるレトロウイルスベクターは特に開発が進んでおり、臨床の場でもすでに使用されている。例えば、該細胞が動物細胞である場合には、SV40ウイルスプロモーター、サイトメガロウイルスプロモーター(CMVプロモーター)、Raus Sarcoma Virusプロモーター(RSVプロモーター)、βアクチン遺伝子プロモーター、aP2遺伝子プロモーター等が挙げられる。尚、このようなプロモーターをマルチクローニング部位の上流に含む市販のベクターを利用してもよい。
【0046】当該外来遺伝子は、本蛋白質の遺伝子を構成的に発現させるようなプロモーターの制御下に置かれていてもよい。また、当該外来遺伝子は、本蛋白質の遺伝子の発現を環境刺激により調節するようなプロモーターの制御下に置かれていてもよい。例えば、外来遺伝子は、組織特異的もしくは細胞型特異的なプロモーター、又は化学的信号もしくは薬物等の外来性の信号もしくは薬物の導入により活性化されるプロモーターを用いて発現させてもよい。
【0047】また、非ウイルス的手法も用いることができる。例えば、フェルグナー(Felgner)ら、Proc.Natl.Acad.Sci.USA 84:7413,1987;オノ(Ono)ら、Neurosci.Lett.117:259,1990;ブライアム(Brigham)ら、Am.J.Med.Sci.298:278,1989;シュタウビンガー(Staubinger)ら、Meth.Enz.101:512,1983)、アシアロソヌコイド・ポリリジン抱合(ウー(Wu)ら、J.Biol.Chem.263:14621,1988;ウー(Wu)ら、J.Biol.Chem.264:16985,1989等に記載されるリポフェクション、ウォルフ(Wolff)ら、Science 247:1465,1990等に記載されるマイクロインジェクション、リン酸カルシウム法、DEAEデキストラン法、エレクトロポレーション法及びプロトプラスト融合法、リポソーム法等があげられれる。
【0048】上記の適用手段のいずれについても、本遺伝子構築物は、脂肪過少蓄積又は脂肪蓄積障害が予想される部位に対して適用される(例えば、注入によって)ことがよいが、脂肪過少蓄積又は脂肪蓄積障害等の現象が予想される部位の近傍の組織又は脂肪過少蓄積又は脂肪蓄積障害が起こると予想される細胞に供給される血管に対してそれを適用してもよい。
【0049】本遺伝子構築物において、本蛋白質の遺伝子( cDNA)の発現は、任意の適したプロモーターにより指向させることができ(例えば、ヒト・サイトメガロウイルス(CMV)、シミアンウイルス40(SV40)又はメタロチオネインのプロモーター等)、任意の適切な哺乳動物調節要素によって調節することもできる。例えば、必要に応じて、本蛋白質の遺伝子を発現させるために、神経細胞、T細胞又はB細胞における遺伝子の発現を優先的に指向することが知られるエンハンサーを用いてもよい。当該エンハンサーには、その発現が組織又は細胞に特異的であると特徴づけられたものを無制限に含む。また、本蛋白質の遺伝子(ゲノム)のクローンを遺伝子構築物として用いる場合(例えば、上記の本蛋白質の遺伝子( cDNA)とのハイブリダイゼーションにより単離された本蛋白質の遺伝子(ゲノム)のクローン)には、コグネイト調節配列、必要に応じて、上記の任意のプロモーター又は調節要素を含む異種供給源に由来する調節配列を介して調節することもできる。
【0050】上記の脂肪蓄積促進方法を遺伝子治療の手段として応用する場合には、本蛋白質の遺伝子(mRNA)の細胞内への直接投与によって実施される。用いられるmRNAは、いかなる標準的手法により作製及び単離されたものであってもよいが、高効率プロモーター(例えば、ヒトサイトメガロウィルスプロモーター)の制御下にある本蛋白質の遺伝子( cDNA)を用いるインビボ転写によって最も容易に産生させることができる。本蛋白質の遺伝子(mRNA)の細胞内への投与は、上記の直接的な核酸投与の方法のいずれによっても実施することができる。
【0051】上記の脂肪蓄積促進方法は、患者の罹患細胞に対する正常な遺伝子の移植という遺伝子治療の手段として応用することもできる。当該手段では、患者にとって外因性又は内因性のいずれかである培養可能な細胞に対して正常な本蛋白質の遺伝子をトランスフェクションする。次いで、トランスフェクションされた細胞を血清学的に標的組織に対して注入する。
【0052】理想的には、あらゆる遺伝子治療の手法による本蛋白質の産生は、少なくとも非罹患細胞における正常な本蛋白質の細胞内レベルと等しい、本蛋白質の細胞内レベルをもたらす。
【0053】因みに、上記の脂肪蓄積促進方法とは異なる方法として、脂肪過少蓄積又は脂肪蓄積障害が起こると予測される部位に(例えば、注射によって)直接、又は、(例えば、従来からの組み換え蛋白質投与法によって)全身に、本蛋白質を投与することもできる。例えば、本蛋白質の投与量は、各患者の体格及び健康状態等、多くの要因に依存するが、通常、一日当たり0.1 mgから100 mgであり、本蛋白質は薬学的に許容される処方剤にして投与する。
【0054】以下に、一例として、哺乳動物が形質転換マウスである場合の本発明蓄積促進方法(I)についてより詳細に説明する。
【0055】形質転換マウスの作製における本遺伝子の導入法としては、例えば、マイクロインジェクション法、レトロウイルスを用いる方法、胚性未分化細胞(ES細胞)を用いる方法等を挙げることができる。このうち、マイクロインジェクション法が最も汎用されている。マイクロインジェクション法とは、マイクロマニピュレーターを用いて、顕微鏡下で受精卵の前核内部に外来遺伝子を含んだ溶液を注入する方法である。
【0056】まず、本遺伝子を受精卵に注入する。その際、遺伝子を高い確率で染色体へ組込むためには、本遺伝子の単離に用いたベクター領域を可能な限り除去すること、mRNAの不安定化に寄与するAUに富む領域を除くこと、直鎖状にすることが好ましい。また、本遺伝子に対してイントロンを予め挿入しておくことが好ましく、当該イントロンとしては、例えば、β−グロビンイントロン等を挙げることができる。
【0057】受精卵は、目的に応じた系統のマウスから採取する。近交系のC57BL/6マウスやC3Hマウス、あるいはC57BL/6マウスと他系統のマウスとの交雑系(例えば、(C57BL/6×DBA/2)F1等)、非近交系のICRマウスが挙げられる。受精卵は、通常、妊馬血清ゴナドトロピンとヒト絨毛性ゴナドトロピンとの両者の腹腔内投与により過剰排卵を誘発させた雌マウスと雄マウスとを交尾させた後、前記雌マウスから採取する。尚、採取した受精卵は培養用ドロップに入れ、CO2ガスインキュベーターで培養・維持することにより、本遺伝子の注入操作まで保管することができる。
【0058】本遺伝子の注入はマイクロマニピュレーターをセットした倒立顕微鏡下で行なう。用いられる受精卵としては、雄性前核が雌性前核より大きくなる頃から両前核が融合するまでの発達段階にあるものを用いるとよい。まず受精卵を固定し、当該受精卵の雄性前核内に本遺伝子を含有するDNA溶液を注入する。当該DNA溶液は必要に応じて複合体として調製する。複合体形成に用いられる物質としては、リポソーム、リン酸カルシウム、レトロウイルス等を挙げることができる。DNA溶液の注入は雄性前核が膨らむことにより確認できる。DNA注入量としては、例えば、約200〜約3,000コピーの本遺伝子を含む量を挙げることができる。
【0059】このようにして、本遺伝子が注入された受精卵は胚盤胞になるまで前記と同様にして培養した後、仮親の子宮に移植する。好ましくは本遺伝子の注入操作後ただちに仮親の卵管に移植するとよい。仮親としては、精管切断手術を施した雄マウスと交尾させて偽妊娠状態にしたICR雌マウスを用いるとよい。具体的には、まず当該ICR雌マウス背側の腎臓付近の皮膚と筋層を切開して卵巣・卵管・子宮を引き出し、卵巣膜を破いて卵管口を探し出す。次いで本遺伝子の注入操作後に生き残った受精卵を該卵管口から移入し、卵巣・卵管・子宮を腹腔内に戻した後、筋層を縫合し、皮膚をクリップでとめる。約20日後に仔が生まれる。
【0060】得られた仔の体組織の一部、例えば尾の一部、を切り取り、当該部位から抽出されたDNAのサザンブロッティング等により本遺伝子の存在有無を確認する。このようにして、本遺伝子が非ヒト動物に導入されたことを確認できる。あるいは他の方法、例えばPCRなどの確認方法を利用してもよい。
【0061】このようにして構築された形質転換非ヒト動物を動物の体内にある細胞として後述のような本発明探索方法に利用する場合において、当該形質転換非ヒト動物への被験物質の投与は、通常の方法を用いればよい。例えば、被験物質を飼料や飲水に混合する方法や、直接投与する方法(例えば静脈内投与や、筋肉内、皮内、皮下もしくは腹腔内投与)が挙げられる。また、必要に応じて、被験物質を投与する前に予備飼育を行ってもよい。投与量および投与期間は、動物の種類、週齢、採用される投与方法等により適宜選択することができるが、例えば、げっし類動物等の非ヒト動物に対する腹腔内投与の場合には、約0.1mg/kg−体重/日〜約10mg/kg−体重/日、げっし類動物等の非ヒト動物に対する経口投与の場合には、約1mg/kg−体重/日〜約100mg/kg−体重/日の被験物質を2〜4週間程度投与すればよい。
【0062】本発明蓄積促進方法(I)のうち、アミノ酸配列(I)を有する細胞分化促進因子依存的脂肪蓄積促進経路の負の調節因子が前記細胞外に存在する条件下において、前記外来遺伝子を提供することもできる。このような場合には、例えば、脂肪蓄積促進経路の負の調節因子が細胞外に、下記のような脂肪過少蓄積に起因する疾患と診断されうる哺乳動物の体内(例えば、ファットレス又は脂肪萎縮症に羅患していると診断されうる哺乳動物の体内)における当該因子の存在量と同等な量存在するような条件であることが好ましい。
【0063】ここで、アミノ酸配列(I)を有する細胞分化促進因子依存的脂肪蓄積促進経路の負の調節因子とは、アミノ酸配列(I)を有する細胞分化促進因子(即ち、本蛋白質)に依存的な脂肪蓄積促進経路を抑制させるように作用する物質を意味し、細胞が有する当該細胞分化促進因子の働き(即ち、前駆脂肪細胞から成熟脂肪細胞への分化誘導)を介した脂肪合成機構による細胞内での脂肪蓄積を、抑制させる物質を挙げることができる。
【0064】上記の負の調節因子としては、例えば、前記細胞分化促進因子のアンチセンス核酸や前記細胞分化促進因子と特異的に結合する抗体等を挙げることができる。このような物質は、前記細胞分化促進因子を不活性化させることにより、細胞内での脂肪蓄積を抑制させる。
【0065】本発明は、脂肪過少蓄積又は脂肪蓄積障害に起因する疾患と診断されうる哺乳動物の体内にある細胞、例えば、ファットレス症又は脂肪萎縮症に羅患していると診断されうる哺乳動物の体内にある細胞に、本蛋白質を導入する工程を有することを特徴とする脂肪蓄積促進方法も提供する。
【0066】ここで「本蛋白質を導入する」とは、本蛋白質を哺乳動物の体内にある細胞内に存在させるような処理を行なうことを意味し、例えば、前述のような本発明蓄積促進剤(I)の形態にして直接的に投与してもよいし、また前述のような本発明蓄積促進方法(I)の形態にて間接的に投与してもよい。尚、この場合には、例えば、本蛋白質が細胞内で有効に働くような濃度レベルと等しい、本蛋白質の細胞内レベルをもたらすように導入すればよい。
【0067】本発明は、前駆脂肪細胞に本蛋白質を導入する工程を有することを特徴とする前駆脂肪細胞から成熟脂肪細胞への分化誘導方法[本発明分化誘導方法]も提供している。
【0068】また本発明は、脂肪蓄積非誘導条件下においてアミノ酸配列(I)を有する細胞分化促進因子(即ち、本蛋白質)を実質的に発現しない細胞に、前記細胞分化促進因子依存的脂肪蓄積促進経路の正又は負の調節因子を投与する工程を有することを特徴とする脂肪蓄積制御方法[本発明蓄積制御方法]も提供している。
【0069】「脂肪蓄積非誘導条件下において本蛋白質を実質的に発現しない細胞」(以下、本細胞とも記載することもある。)とは、本蛋白質に応答性の細胞分化誘導由来の変化を生じる細胞であって、脂肪蓄積非誘導条件下では本蛋白質を実質的に発現しないが、脂肪蓄積誘導条件下では本蛋白質を実質的に発現するように変化を生じる細胞を意味する。具体的には、前駆脂肪細胞を挙げることができる。ここで「実質的に発現しない」とは、例えば、通常のノーザンハイブリダイゼーション方法等によってmRNAの存在を検出できないような場合を意味するものであって、核酸の増幅方法等の特殊な方法を組み合わせて高感度でmRNAの存在を検出する場合を意味するものではない。
【0070】用いられる細胞が本細胞であることを確認するには、脂肪蓄積誘導刺激により生じる、本蛋白質に応答性の細胞分化誘導由来の変化を観察又は測定すればよい。このほかの確認方法としては、例えば、前駆脂肪細胞に特異的に発現しているマーカー遺伝子(例えばPref1(preadipocyte factor-1) 医学のあゆみ 184(6)p.513,(1998)参照)の発現をRTPCR等により検出する方法をあげることができる。
【0071】本細胞は、動物の組織(例えば腹腔内脂肪等の組織)由来の細胞(例えば、腹腔内脂肪等の細胞)である。前記動物としては、例えば哺乳動物等を挙げることができ、さらに具体的にはヒト、サル、マウス、ラット、ハムスターなどを挙げることができる。
【0072】本細胞のより具体的な例としては、例えば、ラット腹腔内脂肪細胞や3T3L1細胞等の株化細胞を挙げることができる。
【0073】本細胞は、基本的には下記と同様な方法に準じて調製すればよい。まず、動物から腹腔内脂肪組織を摘出する。摘出された腹腔内脂肪組織を細断した後、これを、例えばコラゲナーゼ等の組織分解性酵素で消化することにより細胞懸濁液を得る。得られた細胞懸濁液を、例えばShillabeer G. et al., International Journal of Obesity 20, S77-S83等に記載される方法に準じて、具体的には、遠心分離等によって分画された沈殿を回収することにより、前駆脂肪細胞に富む画分を調製する。
【0074】「前記細胞分化促進因子依存的脂肪蓄積促進経路の正又は負の調節因子」(以下、本調節因子とも記載することもある。)とは、本蛋白質が関与する脂肪蓄積促進経路を正又は負に調節する因子を意味する。即ち、本蛋白質が有する脂肪蓄積促進活性(又は分化誘導活性)を向上又は低下させる物質を意味するものである。このような物質は、例えば、本蛋白質が有する脂肪蓄積促進活性により、対照群に比較して当該調節因子投与群において、例えば、蛋白質又はRNAレベルでの本蛋白質の発現量を増加又は低下させるような物質であれば特に制限されるものではない。
【0075】ここで、「正の調節因子」を投与するとは、本蛋白質が有する脂肪蓄積促進活性を向上させる物質を有効量だけ投与することを意味する。尚、このような物質は、本蛋白質の細胞内での発現レベルを高め、それによって本蛋白質が有する脂肪蓄積促進活性を引き出す治療薬の有効成分として有用な物質であって、脂肪蓄積促進方法において利用される。
【0076】逆に「負の調節因子」を投与するとは、本蛋白質が有する脂肪蓄積促進活性を低下させる物質を有効量だけ投与することを意味する。尚、このような物質は、本蛋白質の細胞内での発現レベルを低下させ、それによって本蛋白質が有する脂肪蓄積促進活性を抑制する治療薬の有効成分として有用な物質であって、脂肪蓄積抑制方法において利用される。
【0077】本細胞に本調節因子を投与するには、例えば、経口的または非経口的に本細胞に対し本調節因子の有効量を与えればよい。この場合、本細胞は、動物の組織から分離された細胞であってもよいし、また同一の機能・形態を持つ集団を形成している細胞、さらには動物の体内にある細胞であってもよい。ここで「非経口的」とは、本調節因子を直接的に投与する場合だけではなく、例えば、本調節因子をコードする外来遺伝子を本細胞で発現する位置に置かれるように提供することにより、本調節因子を間接的に投与する場合も含むものである。
【0078】上記の「本蛋白質が有する脂肪蓄積促進活性を低下させる物質」は、本蛋白質が有する脂肪蓄積促進活性を低下させる能力を有する限り、例えば、低分子化合物、ポリヌクレオチド、蛋白質又はペプチド等のいかなる物質であってもよい。より具体的には、例えば、(a)本蛋白質の脂肪蓄積促進活性を低下させる低分子化合物、(b)本蛋白質のアンチセンス核酸、(c)本蛋白質と特異的に結合する抗体等を挙げることができる。
【0079】(a)本蛋白質の脂肪蓄積促進活性を低下させる低分子化合物に関して:本蛋白質の脂肪蓄積促進活性を低下させる低分子化合物は、例えば、脂肪蓄積調節能力を有する物質として下記の方法によって探索することが可能である。即ち、脂肪蓄積調節能力を有する物質の探索方法であって、(1)脂肪蓄積非誘導条件下においてアミノ酸配列(I)を有する細胞分化促進因子(即ち、本蛋白質)を実質的に発現しない細胞(即ち、本細胞)に、脂肪蓄積非誘導条件下又は脂肪蓄積誘導条件下、被験物質を接触させる第一工程、及び、(2)前記第一工程後に、前記細胞分化促進因子又はその遺伝子の発現量をモニターする第二工程、及び(3)前記第二工程によりモニターされた発現量の変化に基づき前記物質の脂肪蓄積調節能力を評価する第三工程、及び(4)前記第三工程で評価された脂肪蓄積調節能力に基づき脂肪蓄積調節能力を有する物質を選抜する第四工程、を有することを特徴とする探索方法[本発明探索方法(I)]である。尚、上記の探索方法では、被験物質の存在下における脂肪蓄積非誘導条件又は脂肪蓄積誘導条件と、被験物質の非存在下における脂肪蓄積非誘導条件又は脂肪蓄積誘導条件とを同一条件下で比較するとよい。
【0080】第一工程において、本細胞に被験物質を接触させる条件が「脂肪蓄積非誘導条件下」であるとは、本細胞が外部刺激を受けることがないような環境条件下又は本細胞が外部刺激を受けてもその応答現象として当該細胞内に脂肪が蓄積されないような環境条件下を意味する。例えば、本細胞が動物の組織から分離された前駆脂肪細胞である場合には、当該細胞の通常の継代培養条件下を意味し、また本細胞が動物の体内に存在する場合には、当該動物が後述の脂肪蓄積誘導条件下に存在することなく、通常の飼育又は生活条件下で存在することを意味する。
【0081】一方、第一工程において、本細胞に被験物質を接触させる条件が「脂肪蓄積誘導条件下」であるとは、本細胞が外部刺激を受けることによりその応答現象として当該細胞内に脂肪が蓄積されるような環境条件下を意味する。例えば、本細胞が動物の組織から分離された前駆脂肪細胞である場合には、インシュリン、デキサメサゾン、3−イソブチル−1−メチル−キサンチン、プロスタグランジンJ2活性を有する物質等の分化誘導物質が一種以上添加された培地にて本細胞を培養するような処理条件下等を意味する。具体的には、Wu Z. et al., Genes & Dev.9, 2350-2363(1992)等に記載された方法に準じて行えばよい。ここで、プロスタグランジンJ2活性を有する物質とは、前駆脂肪細胞に接触させた場合に、当該前駆脂肪細胞を成熟脂肪細胞に分化させる能力がプロスタグランジンJ2と同程度である物質を意味し、例えば、プロスタグランジンJ2、15−デオキシ−Δ12,14−プロスタグランジンJ2等を挙げることができる。分化誘導物質の培地への添加濃度は、分化誘導物質に応じて適宜選択すればよいが、例えば、インシュリンの場合には、約0.1μM〜約10μM、デキサメサゾンの場合には、約0.1μM〜約2μM、3−イソブチル−1−メチル−キサンチンの場合には、約0.1mM〜約5mM、プロスタグランジンJ2の場合には、通常約5μM〜約25μM、15−デオキシ−Δ12,14−プロスタグランジンJ2の場合には、通常約1μM〜約10μMで良い。また本細胞が動物の体内に存在する場合には、当該動物が脂肪蓄積誘導条件下に存在することを意味し、例えば、高脂肪食負荷や脂肪蓄積障害に起因する任意の疾患の発病下等を意味する。
【0082】第二工程において、細胞分化促進因子又はその遺伝子の「発現量」とは、蛋白質又はRNAレベルでの発現量を意味する。もちろん、これら発現量に相関関係を有する指標値を前記発現量の代わりに利用してもよく、本発明ではこの場合も上記「発現量」の中に含んで解釈されるものである。上記の発現量は、例えば、リアルタイム−ポリメラーゼチェイン反応(以下、RT-PCRという。)やノーザンハイブリダイゼーション法、DNAチップを用いた方法、二次元電気泳動法、免疫化学的な検出法(例えば、ELISAN、ウェスタンブロット、RIA)等の方法によって増減等をモニターすればよい。また当該発現量は、例えば、公知の脂肪細胞分化マーカーであるaP2の発現量、AP−2をコードする遺伝子の発現調節領域を機能可能な形で連結されてなるレポーター遺伝子の発現量等の上記「発現量」に相関関係を有する指標値を代わりにモニターしてもよい。尚、ここで使われる「発現調節領域」及び「機能可能な形で連結(する)」とは、後述において説明される「発現調節領域」及び「機能可能な形で連結(する)」と同様な意味である。
【0083】さらにまた、インサイチューハイブリダイゼーションも、本蛋白質又はその遺伝子の発現量の増減をモニターするために用いることができる。当該インサイチューハイブリダイゼーション法は、特異的に標識化された核酸プローブと、個々の細胞または組織中の細胞RNAとのハイブリダイゼーションに基づく。従って、これにより、完全な組織の内部のmRNAの同定が可能となる。この方法では、本蛋白質の遺伝子の特定の部分に対応するオリゴヌクレオチド又はクローニングしたヌクレオチド(RNAまたはDNA)の断片を、例えば、特定な組織内の特異的mRNA種を検出するために用いる。この方法では、ラットに麻酔を施し、低温PBSによる経心臓的潅流を行った後、ホルムアルデヒド溶液を用いて潅流する。続いて、脂肪またはその他の組織を摘出し、液体窒素中にて凍結させ、その微小薄層切片を作成する。切片をスライドグラス上に置き、プロテイナーゼK中にてインキュベートする。DEP、水、およびエタノールで洗浄した後、スライドグラスをプレハイブリダイゼーション緩衝液中にてインキュベートする。プライマーに対応した放射性プローブをニックトランスレーション(nick translation)によって作製し、切片化した脂肪組織とともにインキュベートする。インキュベートおよび自然乾燥の後、標識された領域をオートラジオグラフィーによって可視化した。組織試料中の暗点は、プローブが蛋白質が発現したことを示す本蛋白質のmRNAとハイブリッドを形成したことを意味する。
【0084】第二工程において、本蛋白質又はその遺伝子の発現量をモニターする方法としては、例えば、以下の方法があげられる。本蛋白質の遺伝子(mRNA)を発現している細胞の培養液に種々の濃度の被験物質を添加する。続いて、例えば、本蛋白質の遺伝子(cDNA)又はその断片(cDNAもしくはRNAの断片)をハイブリダイゼーションプローブとして用いるノーザンブロット分析により、本蛋白質の遺伝子(mRNA)の発現量を測定する。その他のすべての条件(例えば、細胞の種類及び培養条件)を同一にして、被験物質の存在下における本蛋白質の遺伝子の発現量を、被験物質の非存在下における本蛋白質の遺伝子の発現量と比較する。
【0085】またノーザンブロット分析の代わりに、本蛋白質に特異的な抗体を用いるウェスタンブロット分析又は免疫沈降分析等の通常の蛋白質検出法(翻訳のレベルでの方法)を用いることにより、本蛋白質の発現量を測定する。
【0086】本発明探索方法のうち、第一工程において、本細胞に被験物質を接触させる条件が脂肪蓄積非誘導条件であって、かつ、第三工程でいう発現量の変化が前記細胞分化促進因子又はその遺伝子の発現量の増加である場合には、脂肪蓄積促進能力を有する物質を探索することが可能である。
【0087】また、本発明探索方法のうち、第一工程において、本細胞に被験物質を接触させる条件が脂肪蓄積誘導条件であって、かつ、第三工程でいう発現量の変化が前記細胞分化促進因子又はその遺伝子の発現量の減少である場合には、脂肪蓄積抑制能力を有する物質を探索することが可能である。
【0088】このような本発明探索方法により選抜された物質またはその薬学的に許容される塩は、それらを有効成分として含み、該有効成分が薬学的に許容される担体中に製剤化されてなることを特徴とする脂肪蓄積調節剤として利用することもできる。
【0089】さらに上記の本発明探索方法以外の方法として、例えば、本遺伝子の発現調節領域を機能可能な形で連結されてなるレポーター遺伝子を含有しかつ脂肪蓄積非誘導条件下において本蛋白質を実質的に発現しない細胞に被験物質を接触させる方法を用いてもよい。即ち、脂肪蓄積調節能力を有する物質の探索方法であって、(1)アミノ酸配列(I)を有する細胞分化促進因子をコードする遺伝子の発現調節領域を機能可能な形で連結されてなるレポーター遺伝子を含有しかつ脂肪蓄積非誘導条件下において前記細胞分化促進因子を発現しない細胞(以下、本発明形質転換細胞と記すこともある。)に、脂肪蓄積非誘導条件下又は脂肪蓄積誘導条件下、被験物質を接触させる第一工程、及び、(2)前記第一工程後に、レポーター遺伝子の発現量をモニターする第二工程、及び(3)前記第二工程によりモニターされた発現量の変化に基づき前記物質の脂肪蓄積調節能力を評価する第三工程、及び(4)前記第三工程で評価された脂肪蓄積調節能力に基づき脂肪蓄積調節能力を有する物質を選抜する第四工程、を有することを特徴とする探索方法[本発明探索方法(II)]であってもよい。当該探索方法は、いわゆるレポータージーンアッセイを用いる、脂肪蓄積調節能力を有する物質の探索方法である。
【0090】当該工程において、本発明形質転換細胞と接触させる被験物質の濃度は、通常、約0.1μM〜約10μMであればよく、1μM〜10μMが好ましい。本発明形質転換細胞と被験物質とを接触させる時間は、通常、18時間以上60時間程度であり、好ましくは24時間から40時間程度が挙げられる。
【0091】前記本発明形質転換細胞は、以下のようにして調製することができる。まず本蛋白質をコードする遺伝子の発現調節領域を、必要に応じて例えば、(i)5’-レース法(5'-RACE法)(例えば、5’full Race Core Kit(宝酒造社製)等を用いて実施されうる)、オリゴキャップ法、S1プライマーマッピング等の通常の方法により、5’末端を決定するステップ;(ii)Genome Walker Kit(クローンテック社製)等を用いて5’-上流領域を取得し、得られた上流領域について、プロモーター活性を測定するステップ;を含む手法等により発現調節領域を同定した後、通常の遺伝子工学的手法に従って切り出し、切り出された発現調節領域を、グルクロニダーゼ(GUS)、ルシフェラーゼ、クロラムフェニコールトランスアセチラーゼ(CAT)、β-ガラクトシダーゼ及びグリーン蛍光蛋白質(GFP)等のレポーター遺伝子(その発現を解析することができる遺伝子)に機能可能な形で連結することにより、本蛋白質をコードする遺伝子の発現調節領域を機能可能な形で連結されてなるレポーター遺伝子を調製する。ここで「機能可能な形で連結する」とは、ある遺伝子と一つまたはそれ以上の調節配列とが、適した外来性のシグナル又は因子が調節配列に結合した時に遺伝子発現が可能となるような様式で連結することを意味する。また「発現調節領域」とは、細胞型特異的もしくは組織特異的な制御を受けるプロモーター要素、又は外来性のシグナルもしくは因子(例えば、転写活性化蛋白質)によって誘導されるプロモーター依存的遺伝子発現を引き起こすために十分なプロモーター要素を含み、かつ転写を促すために必要な配列を意味する。尚、このような要素は、本来の遺伝子の5’または3’領域のいずれに位置させればよい。次に、本蛋白質をコードする遺伝子の発現調節領域を機能可能な形で連結されてなるレポーター遺伝子を通常の遺伝子工学的手法を用いて、当該レポーター遺伝子を導入する細胞において使用可能なベクターに挿入することにより、プラスミドを作製する。次いで、前記プラスミドを細胞へ導入する。細胞への導入法としては、例えば、リン酸カルシウム法、電気導入法、DEAEデキストラン法、ミセル形成法等を挙げることができる。リン酸カルシウム法としてはGrimm, S. et al., Proc. Natl. Acad. Sci. USA, 93, 10923-10927等に記載される方法、電気導入法及びDEAEデキストラン法としてはTing, A. T. et al., EMBO J., 15, 6189-6196等に記載される方法、ミセル形成法としてはHawkins, C. J. et al., Proc. Natl. Acad. Sci. USA, 93, 13786-13790等に記載される方法を挙げることができる。ミセル形成法を用いる場合には、リポフェクトアミン(ギブコ製)やフュージーン(ベーリンガー製)等の市販の試薬を利用するとよい。
【0092】前記プラスミドの導入処理を施した細胞を、例えば、当該ベクターに予め含まれる選抜マーカー遺伝子を利用し、当該選択マーカー遺伝子に応じた選抜条件の培地で培養することにより、本発明形質転換細胞(本遺伝子が一過性に導入された細胞)を選抜することができる。さらに選抜を続けて、本遺伝子が染色体に導入されてなる安定形質転換体となった本発明形質転換細胞を取得してもよい。導入された本遺伝子が細胞中に存在する染色体上に組込まれたことを確認するには、当該細胞のゲノムDNAを通常の遺伝子工学的方法に準じて調製し、本遺伝子の部分塩基配列を有するDNAをプライマーとして用いるPCRや、本遺伝子の部分塩基配列を有するDNAをプローブとして用いるサザンハイブリダイゼーション等の方法を利用して、ゲノムDNA中の本遺伝子の存在を検出・確認すればよい。また、本発明形質転換細胞は、後述する形質転換非ヒト動物の組織から通常の方法により調製してもよい。このような探索方法により選抜された物質またはその薬学的に許容される塩は、それらを有効成分として含み、該有効成分が薬学的に許容される担体中に製剤化されてなることを特徴とする脂肪蓄積調節剤として利用してもよい。
【0093】上記の探索方法において、「レポーター遺伝子の発現量をモニターする」方法としては、本形質転換細胞中におけるレポーター遺伝子の発現量を時間経過に沿って連続的に又は不連続に測定できる方法であればどのような方法であってもよいが、例えば、発現抑制剤のスクリーニングの場合には、本形質転換細胞をインシュリン、デキサメサゾン、3−イソブチル−1−メチル−キサンチン、プロスタグランジンJ2活性を有する物質などの分化誘導物質等を一種以上添加された培地下での培養により脂肪蓄積を誘発した後、被験化合物を前記培地に添加することにより、対照群と比較してレポーター遺伝子の発現量が10%以上、好ましくは30%以上、更に好ましくは50%以上、最も好ましくは100%減少するような変化が認められた化合物を選択する。一方、発現促進剤のスクリーニングの場合には、得られる形質転換細胞あるいは一過性に導入した細胞を被験化合物を培地に添加することにより、対照群と比較してレポーター遺伝子の発現量が10%以上、好ましくは30%以上、更に好ましくは50%以上、最も好ましくは100%増加するような変化が認められた化合物を選択する。例えば、レポーター遺伝子がルシフェラーゼ遺伝子である場合には、ルシフェラーゼアッセイ試薬(プロガメ社)等の市販品を利用すればよい。もちろん、細胞分化促進因子と被験物質との両者を接触させた後の細胞における(1)本蛋白質又はその遺伝子の発現量、あるいは(2)本蛋白質をコードする遺伝子の発現調節領域を機能可能な形で連結されてなるレポーター遺伝子の発現量(以下、測定値1と記す。)を、本蛋白質を接触させ、かつ被験物質を接触させなかった後の細胞における前記発現量(以下、測定値2と記す。)と比較することによって、該被験物質の脂肪蓄積調節能力を評価してもよい。この場合、脂肪蓄積調節能力を、前記測定値を用いて、下記の式に従って脂肪蓄積調節率として求めるとよい。
脂肪蓄積調節率(%)={(測定値2−測定値1)/測定値2}×100被験物質の脂肪蓄積調節能力を表わす脂肪蓄積調節率が、統計学的に有意な値を示す物質、具体的に好ましくは、例えば、30%以上を示す物質、より好ましくは50%以上を示す物質を、脂肪蓄積調節能力を有する物質として選抜する。尚、当該物質は、脂肪蓄積調節能力を有する限り、低分子化合物のみならず、ポリヌクレオチド、蛋白質又はペプチド等のいかなる物質でも適用可能である。
【0094】さらに上記の探索方法では、被験物質として異なる2種以上の物質を各々独立して用いた区におけるレポーター遺伝子の発現量の変化を比較することにより得られる差異に基づき前記物質の脂肪蓄積調節能力を評価してもよい。このようにして評価された脂肪蓄積調節能力に基づき脂肪蓄積調節能力を有する物質を選抜することもできる。
【0095】上記の探索方法において、被験物質として異なる2種以上の物質を各々独立して用いた区におけるレポーター遺伝子の発現量の変化を比較することにより得られる差異に基づき前記物質の脂肪蓄積調節能力を評価してもよい。このようにして評価された脂肪蓄積調節能力に基づき脂肪蓄積調節能力を有する物質を選抜することもできる。さらにまた、前記異なる2種以上の物質のうち、少なくとも一つの物質が脂肪蓄積調節能力を有さない物質(例えば、溶媒、バックグランドとなる試験系溶液等であってもよい。)とすることで、他方の被験物質が有する脂肪蓄積調節能力を評価してもよいし、また前記異なる2種以上の物質のうち、少なくとも一つの物質が有する脂肪蓄積調節能力を基準としながら他方の被験物質が有する脂肪蓄積調節能力を評価してもよい。
【0096】(b)本蛋白質のアンチセンス核酸に関して:本蛋白質のアンチセンス核酸は、本蛋白質の遺伝子が有する塩基配列に対して相補的な塩基配列を有する核酸であって、細胞の中で当該核酸と本蛋白質の遺伝子(特にmRNA)との間にハイブリッドが形成されることによって、本蛋白質の遺伝子の発現を塩基配列特異的に抑制する。従って、本蛋白質依存的脂肪蓄積経路の負の調節因子として機能する。
【0097】上記のハイブリッド形成されたRNA二本鎖は、プロセッシング/輸送/翻訳、及び/又は、標的となった本蛋白質のmRNAの安定化を妨げる。上記の脂肪蓄積制御方法において、本細胞に本蛋白質のアンチセンス核酸を投与するには、本細胞中にアンチセンス核酸を注入したり、又は本細胞にアンチセンス核酸発現ベクターをトランスフェクションさせる等、種々の方法を用いればよい。アンチセンス効果は、本蛋白質の発現量、本蛋白質の脂肪蓄積促進活性測定、又は本蛋白質のmRNAの発現量等の変化に基づいて容易に判断することができる。
【0098】このような探索方法により選抜された物質またはその薬学的に許容される塩は、それらを有効成分として含み、該有効成分が薬学的に許容される担体中に製剤化されてなることを特徴とする脂肪蓄積調節剤として利用してもよい。尚、上記の脂肪蓄積制御方法には、関連するもう一つの面において、アンチセンス核酸を発現する形質転換動物の場合も含まれる。このような場合は、上記の脂肪蓄積制御方法を遺伝子治療の手段として応用する場合であり、本蛋白質の遺伝子のアンチセンスmRNAの細胞内への直接投与によって実施される。用いられるアンチセンスmRNAは、いかなる標準的手法により作製及び単離されたものであってもよいが、高効率プロモーター(例えば、ヒトサイトメガロウィルスプロモーター)の制御下にある本蛋白質の遺伝子( cDNA)に相補する塩基配列からなるDNAを用いるインビボ転写によって最も容易に産生させることができる。本蛋白質の遺伝子のアンチセンスmRNAの細胞内への投与は、前述の直接的な核酸投与の方法のいずれによっても実施することができる。
【0099】(c)本蛋白質と特異的に結合する抗体に関して:本蛋白質と特異的に結合する抗体は、例えば、脂肪蓄積調節能力を有する物質として下記の方法によって探索することが可能である。ここで「特異的に結合する」とは、本蛋白質を認識して結合するが、自然の状態では本蛋白質を含む生物試料等の試料中のその他の分子は実質的に認識せず結合もしない抗体を意味する。
【0100】以下、具体例を述べる。まず、本蛋白質の(候補)抗体を調製する。
【0101】(1)抗原の調製前記の方法で調製される本蛋白質を抗原として用いることができるが、例えば、本蛋白質のアミノ酸配列のうち特有な部分アミノ酸配列を含む抗原性ペプチドを高分子量化する方法、または該抗原性ペプチドを直接的またはスペーサーを介して間接的に高分子量担体分子に結合した複合体を得る方法等により抗原を作製することもできる。これらの方法は、それ自身では低分子量で抗原性が低い、すなわち不完全抗原である抗原性ペプチドを、高分子量化することで完全抗原化する方法である。
【0102】抗原性ペプチドの選抜方法は、例えば、抗ペプチド抗体実験プロトコール(大海忍、辻村邦夫、稲垣昌樹著、秀潤社刊、1994年発行)に記載される蛋白質中のエピトープ予測法を用いて行うことができる。通常、10〜20個のアミノ酸からなるペプチドを抗原性ペプチドとして選抜する。選抜された抗原性ペプチドは、抗ペプチド抗体実験プロトコール(大海忍、辻村邦夫、稲垣昌樹著、秀潤社刊、1994年発行)に記載された通常の合成及び精製方法に準じて調製すればよく、さらに必要に応じて高速液体クロマトグラフィー等の通常の方法により純度の高いものにすることができる。
【0103】抗原性ペプチドを高分子量化する方法としては、例えば、Tamらの考案したMAP(Multiple antigen peptide)法(Proc. Natl. Acad. Sci. USA, 85, p5409)を挙げることができる。
【0104】抗原性ペプチドを直接的にまたはスペーサーを介して間接的に高分子量担体分子に結合した複合体を得る方法において使用される高分子量担体分子は、抗原性ペプチド及びこれらにスペーサーが結合した化合物(以下、両者をまとめて不完全抗原と記す。)との結合反応に利用可能な反応基を有し、かつ該不完全抗原に結合されることにより免疫原性を獲得し得るか、または既に存在する免疫原性を高められ得る巨大分子化合物であればよい。
【0105】(2)哺乳動物の免疫感作化工程および(候補)抗体取得(1)に記載される方法により調製した抗原を用いて、例えば、J. Assoc. Off. Anal. Chem. 70, 1025-1027等に記載されるNewsome W. H.らによる通常の免疫感作の方法に従い、例えば、マウス、ハムスター、モルモット、ニワトリ、ラット、ウサギ、イヌ等の哺乳動物を免疫する。抗原は、1回または複数回投与すればよい。
【0106】抗原は、例えば、約7ないし約30日、特に約12ないし約16日間隔で、3または4回の投与等が好ましい。投与量は1回につき、例えば、抗原約0.05から2mg程度を目安とする。投与方法は、皮下投与、皮内投与、腹膜腔内投与、静脈内投与、筋肉内投与等を選択することができる。好ましくは静脈内、腹膜腔内もしくは皮下投与を挙げることができ、特に好ましくは皮下注射と腹膜腔内注射との組合せが挙げられる。
【0107】そして、上記の哺乳動物を0.5ないし4ケ月間処置せずに放置した後、該哺乳動物の血液を耳静脈等から少量サンプリングし、抗体価を測定する。抗体価が上昇したら、状況に応じて抗原の投与を適当回数実施する。例えば100μgないし1mgの抗原の投与量で1回ないし5回の投与が行われる。最後の投与の1ないし2ケ月間後に免疫感作した哺乳動物から通常の方法により血液を採取して、該血液を、例えば遠心分離、硫酸アンモニウムまたはポリエチレングリコールを用いることによる沈澱、ゲルろ過クロマトグラフィー、イオン交換クロマトグラフィー、アフィニティクロマトグラフィー等のクロマトグラフィー等の通常の方法によって分離、精製することにより、ポリクローナル抗血清を調製する。このようにして本蛋白質の(候補)抗体を得ることができる。
【0108】また、上記の免疫感作した哺乳動物から免疫適格B細胞を単離し、該免疫適格B細胞を、連続的に細胞分裂し得る腫瘍細胞と融合し、生成する融合細胞を単離する。所望の抗体を産生する融合細胞を選択し、クローン化し、該融合細胞からモノクローナル抗体を調製することにより、本蛋白質の抗体を得ることも可能である。以下にこのような(候補)抗体の取得方法について詳述する。
【0109】モノクローナル抗体を産生する融合細胞の作製は通常の方法、例えば、ハイブリドーマテクニックス(コールド スプリング ハーバー ラボラトリー発行(Cold Spring Harbor Laboratory press)又は細胞組織化学(山下ら,日本組織細胞化学学会編,1986)等に記載される方法により行うことができる。免疫動物としては、マウス、ラット、ハムスター等の哺乳動物を用いることができる。通常マウスが最も汎用され、Balb/cマウス、その他の系(strain)のマウスを用いることができる。この際、十分な量の抗原刺激を受けたリンパ球が形成されるように、免疫計画および抗原の濃度を選べばよい。例えばマウス1匹に50から2mgの抗原を2週間間隔で腹腔に3回免疫する。必要に応じてさらに50から2mgを静脈に投与してもよい。最終免疫の数日後に細胞融合のための脾臓を摘出する。
【0110】前記のように免疫した哺乳動物の個体から脾臓を無菌的に摘出し、当該組織から細胞懸濁液状態の脾臓細胞を調製する。該脾臓細胞(抗体産生細胞)を適当な骨髄腫細胞と、適当な融合促進剤の存在下で細胞融合させる。骨髄腫細胞としては免疫動物と同種の哺乳動物に由来するものが望ましいが、ラット、ハムスター等の脾臓細胞とマウスの骨髄腫細胞とを融合させることもできる。好ましい融合の比率は約20:1〜約2:1の範囲である。約108個の脾臓細胞について0.5〜1.5mlの融合促進剤の使用が適当である。好ましい融合促進剤としては、例えば平均分子量1000〜4000ポリエチレングリコールを使用できるが、この分野で知られている他の融合促進剤、例えばセンダイウイルス(別名HVJ)を用いることもできる。また、融合促進剤を使用せずに電気ショックを用いる方法により細胞融合を行ってもよい。
【0111】融合細胞は、未融合の脾臓細胞、未融合の骨髄腫細胞および融合細胞の混合物を、未融合の骨髄腫細胞が生育できない選択培地で希釈し、未融合の細胞を死滅させるのに十分な時間(約1時間)培養することにより選択する。培地は薬剤抵抗性(例えば8−アザグアニン抵抗性)かつ未融合の骨髄腫細胞が生育できない選択培地(例えばHAT培地)が使用される。該選択培地中では未融合の骨髄腫細胞は死滅する。また、未融合の脾臓細胞は非腫瘍性細胞なので、ある一定期間(例えば1週間)後に死滅する。これに対して、融合細胞は親骨髄腫細胞の腫瘍性と、親脾臓細胞の性質を併せ持つため、選択培地中で生育できる。
【0112】得られた融合細胞についてスクリーニングを行い、本蛋白質と特異的に結合するモノクローナル抗体を産生する融合細胞を選択する。スクリーニング方法としては、得られた抗体の特異性について、多くの検体を簡単、迅速に、感度よく検出できる方法であればよく、例えば、ラジオイムノアッセイ(RIA)法、酵素標識抗体測定法(Enzyme Linked Immunosorbent Assay;ELISA)、マイクロウエスタンブロッティング等が挙げられる。酵素標識抗体測定法としては、さらに具体的には、ストレプトアビジンとビオチンを利用した方法、二抗体サンドイッチ法等が挙げられる。選択された融合細胞を適当な方法(例えば限界希釈法)でクローン化した後、モノクローナル抗体を得る。融合細胞を一定期間、適当な培地で培養することにより、その培養上清からモノクローナル抗体を得ることができる。また、融合細胞を免疫動物の腹腔内に注射し、一定時間後の当該免疫動物の血液および腹水からモノクローナル抗体を得ることもできる。
【0113】次に抗体クラスの決定・確認を行う。抗体クラスは、通常の方法、例えばアイソタイピングキット(アマシャムファルマシア製)を用いて添付のプロトコールに基づき決定・確認することができる。さらに、抗体クラスに適した方法で、抗体を精製する。モノクローナル抗体はもともと特異性、抗体価ともに高いので、融合細胞を無血清培地で培養し、培養上清を濃縮、硫酸アンモニウムによる塩析行うことによって免疫グロブリン画分を調製すれば簡便に純度の高い抗体を得ることができる。抗体クラスがIgMの場合には、ゲル濾過により夾雑する非特異的IgGを除くことができる。また、市販のHiTrap IgMカラム(アマシャムファルマシア製)を用いて、添付のプロトコールに基づき精製してもよい。一方、IgGクラスの抗体の場合には、プロテインA又はプロテインG(アマシャムファルマシア製)を用いたアフィニティークロマトグラフィーにより精製が可能である。他の方法としては、抗原結合担体によるアフィニティークロマトグラフィーや種々の担体(例えば陰イオン交換体、陽イオン交換体、ハイドロキシアパタイト、シリカ)を用いた高速液体クロマトグラフィーを挙げることができる。
【0114】上記のようにして調製された(候補)抗体が本蛋白質に結合しかつ脂肪蓄積抑制能力を有し得る抗体[いわゆる中和抗体:「中和抗体」とは、本細胞分化促進因子のあらゆる生物活性、特に本細胞分化促進因子の脂肪蓄積促進(特に前駆脂肪細胞から成熟脂肪細胞への分化誘導)能力を低下させる抗体を意味する。]であることは、例えば、ウェスタンブロット解析(厳密な意味では結合能力の確認であるが、ここで結合能力が確認できるような物質であれば、本細胞分化促進因子の脂肪蓄積促進(特に前駆脂肪細胞から成熟脂肪細胞への分化誘導)能力を低下させる抗体である、即ち中和抗体である、ことが一般的である。)や以下のような方法を利用して調べることができる。まず、(1)脂肪蓄積非誘導条件下において本細胞分化促進因子を実質的に発現しない細胞の無細胞抽出液に、脂肪蓄積誘導開始と同時に、被験物質を接触させ(第一工程)、次いで、(2)前記第一工程後に、本細胞分化促進因子の遺伝子の発現量及び本細胞における脂肪蓄積量をモニターし(第二工程)、次いで、(3)前記第二工程によりモニターされた遺伝子の発現量(前記細胞分化促進因子の遺伝子の発現量の増加)と前記細胞における脂肪蓄積量との両者の変化に基づき前記物質の脂肪蓄積調節能力を評価し(第三工程)、次いで、(4)前記第三工程で評価された脂肪蓄積調節能力に基づき脂肪蓄積調節能力を有する物質を選抜すればよい(第四工程)。この場合、当該発現量が増加であって、かつ、前記細胞における脂肪蓄積量が減少していれば、当該被験物質が中和抗体であると確認することができる。
【0115】このような中和抗体又はその薬学的に許容される塩は、それらを有効成分として含み、該有効成分が薬学的に許容される担体中に製剤化されてなることを特徴とする脂肪蓄積調節剤として利用することもできる。
【0116】本発明探索方法により選抜される物質またはその薬学的に許容される塩を有効成分とする脂肪蓄積調節剤は、前述の脂肪蓄積促進剤(I)の説明と同様に、その有効量を経口的または非経口的にヒト等の哺乳動物に対し投与することができる。例えば、経口的に投与する場合には、本脂肪蓄積調節剤は錠剤、カプセル剤、シロップ剤、懸濁液等の通常の形態で使用することができる。また、非経口的に投与する場合には、本脂肪蓄積調節剤を溶液、乳剤、懸濁液等の通常の液剤の形態で使用することができる。前記形態の本脂肪蓄積調節剤を非経口的に投与する方法としては、例えば注射する方法、坐剤の形で直腸に投与する方法等を挙げることができる。
【0117】前記の適当な投与剤型は許容される通常の担体、賦型剤、結合剤、安定剤、希釈剤等に本発明探索方法により選抜される物質またはその薬学的に許容される塩を配合することにより製造することができる。また注射剤型で用いる場合には、許容される緩衝剤、溶解補助剤、等張剤等を添加することもできる。
【0118】投与量は、投与される哺乳動物の年令、性別、体重、疾患の程度、本脂肪蓄積調節剤の種類、投与形態等によって異なるが、通常は経口の場合には成人で1日あたり有効成分量として約1mg〜約2g、好ましくは有効成分量として約5mg〜約1gを投与すればよく、注射の場合には成人で有効成分量として約0.1mg〜約500mgを投与すればよい。また、前記の1日の投与量を1回または数回に分けて投与することができる。
【0119】本脂肪蓄積調節剤の適用可能な疾患としては、脂肪過少蓄積、脂肪過剰蓄積又は脂肪蓄積障害に起因する任意の疾患を治療するために用いることができる。例えば、ファットレス症、脂肪萎縮症、肥満(特に有害レベルの脂肪蓄積を有する患者の場合)等の疾患をあげることができる。
【0120】さらに、本発明は、本蛋白質をコードする遺伝子(DNA又はRNA)のアンチセンス鎖の全部又は一部よりなる、脂肪蓄積障害を伴う疾患の診断用プローブ及び当該プローブを含有してなる脂肪蓄積障害を伴う疾患の診断薬をも提供するものである。例えば、病理切片に対して本蛋白質の遺伝子のIn situハイブリダイゼーションを行うことにより、脂肪蓄積障害を伴う疾患の有無や進行具合を検出することができる。脂肪過剰蓄積に係る診断の場合には、好ましくは発現量が2倍に増強されることによってなされ、より好ましくは、発現量が少なくとも10倍に増強されることによってなされる。ここで診断用プローブとしては、本蛋白質をコードする遺伝子(DNA、RNA、cDNA)のアンチセンス鎖の全部又は一部であり、プローブとして成立する程度の長さ(少なくとも20ベース以上)を有するものであれば特に制限されるものではない。当該プローブを診断薬の有効成分とするためには、プローブが分解されないような適当なバッファー類や滅菌水に溶解することが好ましい。また、In situハイブリダイゼーションの方法としては、例えば、J. Neurobiol. 29, 1-17 (1996)に記載の手法が挙げられる。また、In situ PCRの方法を利用することも可能である。前記診断においては、プローブのみならず、本蛋白質に対する抗体を使用することができ、この場合には、免疫染色法により脂肪蓄積を伴う疾患の有無や進行具合を検出することができる(Dev. Biol. 170, 207-222 (1995); J. Neurobiol. 29, 1-17 (1996)参照)。使用される抗体は、例えば、Antibodies; A Laboratory Manual, Lane, H, D. ら編、Cold Spring Harber Lboratory Press 出版NewYork 1989等に記載の方法により容易に作製される。
【0121】
【実施例】以下に、実施例により本発明をさらに詳細に説明するが、本発明はこれらに限定されるものではない。
【0122】実施例1 (ラット由来の腹腔内脂肪細胞培養液の調製)
WO-00/44754公報記載の方法で調製されたラット腹腔内脂肪細胞を6ウエルプレート(住友ベークライト社製)に1ウエル当たり3.0×105細胞になるように添加した。各ウェルに、10%ウシ胎児血清(Gibco-BRL社製。以下、10%FBSと記す。)及び200μMアスコルビン酸(和光純薬工業社製)が添加されたD-MEM培地(高グルコース、Gibco-BRL社製)(以下、FBS含有培地と記す。)を添加した後、この状態で当該細胞を37℃、5%二酸化炭素下で2日間培養した。
【0123】実施例2 (totalRNAの調製)
実施例1で得られた細胞培養液を含む各ウエルから培地を除いた後、各ウエルにTRIZOL Reagent(Gibco-BRL社製)を1ウェル当たり0.5mL加えて細胞を溶解した。得られた細胞溶解液を15mL遠心チューブ(IWAKI社製)に集め、これに0.6mLクロロホルム(関東化学社製)を添加した。この混合溶液を15秒間上下に激しく攪拌した後、 5分間室温で静置した。次いで、当該混合溶液を4℃、9,000rpm、10分間遠心分離した後、水層を新しい15mL遠心チューブに回収した。回収された水層に、3mL 2-プロパノール(関東化学社製)を添加した後、この混合溶液を混和した。その後、室温で10分間静置した。次いで当該混合溶液を4℃、8,000rpm、10分間遠心分離後、上清を除去しペレットを得た。得られたペレットを、0.1mLのDEPC処理滅菌蒸留水(和光純薬工業社製)で溶解した。得られた溶解液に、RNeasy Mini Kit(QIAGEN社製)添付の350μL RLT buffer (10μL β−メルカプトエタノール/mL RLT buffer) を添加し、この混合溶液を混和した。更に、当該混合溶液に250μL エタノール(関東化学社製)を添加し、これを混和した。当該混和液をRNeasy Mini Kit添付のRNeasy Spin Columnにアプライし、当該カラムを室温、10,000rpm、15秒間遠心分離した。遠心分離後、当該カラムからの溶出液を再度同じRNeasy Spin Columnにアプライし、当該カラムを室温、10,000rpm、15秒間遠心分離した。遠心分離後、当該カラムからの溶出液を捨て、次いで当該カラムにエタノールで4倍希釈したRNeasy Mini Kit添付のRPE bufferを500μLアプライし、当該カラムを室温、10,000rpm、15秒間遠心分離した。遠心分離後、当該カラムからの溶出液を捨て、再度当該カラムにエタノールで希釈したRPE bufferを500μLアプライし、当該カラムを室温、14,000rpm、2分間遠心分離した。その後、カラムを新しいエッペンドルフチューブに移してRNeasy Mini Kit添付の蒸留水を50μL添加し、これを1分間室温で静置した。静置後、当該チューブを室温、10,000rpm、1分間遠心分離によってカラムからRNAを溶出させることにより、total RNAを得た。
【0124】実施例3 (cDNAの調製)
実施例2で調製されたtotal RNA 10μg、T7-(dT)24プライマー(Amersham社製)100pmolを含む11μLの混合液を、70℃、10分間加熱後、氷上で冷却した。冷却後、当該混合液に、SuperScript Choice System for cDNA Synthesis(Gibco-BRL社製)に含まれる5×First Strand cDNA Buffer 4uL、該キットに含まれる0.1M DTT 2μL及び当該キットに含まれる10mM dNTP Mix 1μLを添加し、この混合液を42℃、2分間加熱した。更に、当該混合液に、当該キットに含まれるSuper ScriptII RT 2μL(400U)を添加し、この混合液を42℃、1時間加熱後、氷上で冷却した。冷却後、当該混合液にDEPC処理滅菌蒸留水91μL、当該キットに含まれる5×Second Strand Reaction Buffer 30μL、10mM dNTP Mix 3μL、当該キットに含まれるE. coli DNA Ligase 1μL(10U)、当該キットに含まれるE. coli DNA Polymerase I 4μL(40U)及び当該キットに含まれるE. coli RNaseH 1μL(2U)を添加し、この混合液を16℃、2時間反応させた。次いで、当該混合液に当該キットに含まれるT4 DNA Polymerase 2μL(10U)を加え、この混合液を16℃、5分間反応させた後、当該混合液に0.5M EDTA 10μLを添加した。次いで、この混合液にフェノール/クロロホルム/イソアミルアルコール溶液(ニッポンジーン社製)162μLを添加し、混合した。当該混合液を、予め室温、14,000rpm、30秒間遠心分離しておいたPhase Lock Gel Light(エッペンドルフ社製)に移し、これを室温、14,000rpm、2分間遠心分離した。遠心分離後、145μLの水層をエッペンドルフチューブに回収した。回収された水層に、7.5M酢酸アンモニウム溶液72.5μL及びエタノール362.5μLを加え混合した後、この混合液を4℃、14,000rpm、20分間遠心分離した。遠心分離後、上清を捨て、DNAペレットを得た。その後、DNAペレットに80%エタノール0.5mLを添加した。この混合液を4℃、14,000rpm、5分間遠心分離した後、上清を捨て、DNAペレットを再び得た。得られたDNAペレットに再度80%エタノール0.5mLを添加した。この混合液を4℃、14,000rpm、5分間遠心分離した後、上清を捨て、DNAペレットを得た。得られたDNAペレットを乾燥させた後、DEPC処理滅菌蒸留水12μLに溶解することにより、cDNA溶液を得た。
【0125】実施例4 (ラット由来の本遺伝子のクローニング)
PCRを行なう実施例3で得られたcDNA溶液1μL、配列番号4で示された塩基配列からなるプライマー1 20pmol、配列番号5で示される塩基配列からなるプライマー2 20pmol、TaKaRa Ex-Taqポリメラーゼ(宝酒造社)2U、TaKaRa Ex-Taqポリメラーゼ添付のバッファー 5μL及びTaKaRa Ex-Taqポリメラーゼ添付のdNTP mixture(2.5mM)4μLを含む50μLの反応液を調製した。PCRは、まず94℃で30秒間、次いで60℃で30秒間、更に72℃で1分間からなる保温サイクルを50回繰り返し、最後に72℃で5分間保温する条件にて行われた。PCR後、アガロース電気泳動で約1.2kbpを示すPCR産物を回収した。次いで回収されたPCR産物をpT7-Blue vector(Novagen社)にサブクローニングした後、当該プラスミドでE.coliJM109株コンピテントセル(東洋紡社)を形質転換した。形質転換された細胞を50μg/mLアンピシリン含有LB培地100mLで培養することにより得られる培養菌体からQIAGEN Plasmid Maxi kit(QIAGEN社)を用いて分離・精製することにより、ラット由来の本遺伝子(rKKLF)を含むプラスミドを得た。
【0126】実施例5 (ラット由来の本遺伝子(rKKLF)の塩基配列の決定)
実施例4で得られたPCR産物(約1.2kbp)を含むプラスミドを鋳型として、Thermo Sequenase IIダイ・ターミネーターキット(Amersham Pharmacia Biotech社)及びABI373DNA配列読み取り装置(PE Applied Biosystems社)を用いて、サンガーの方法〔F.Sanger,S.Nicklen,A.R.Coulson著、Proceedings of National Academy of Science U.S.A.(1977), 74, 5463-5467〕により、配列番号6で示される塩基配列からなるラット由来の本遺伝子の塩基配列を決定した。
【0127】実施例6 (pSRα-pUCの構築)
pcDL-SRα296(Molecular and Cellular Biology (1988) 8.(1).466-472)5μg、pUC118(宝酒造社)をAfl III 5U、Sca I 5Uを用いて70μLの反応液中で37℃で1時間消化した。得られた消化物をそれぞれアガロースゲル電気泳動に供して、pcDL-SRα296の場合には3kbpのバンドを、pUC118の場合には1kbpのバンドを切り出した。切り出されたDNAをQIAEXII Gel Extraction Kit(QIAGEN社)を用いて精製した。精製されたpcDL-SRα296、pUC118の消化物をそれぞれ水20μlに溶解した。溶解された各消化物1μLを混合した後、ライゲーションキットver.1(宝酒造社)を用いて16℃で1時間ライゲーション反応した。反応後、当該ライゲーション反応液20μL及びE.coliJM109株コンピテントセルを用いた通常の方法により、E.coliJM109形質転換細胞を得た。形質転換された細胞を50μg/mLアンピシリン含有LB培地100mLで培養することにより得られる培養菌体からQIAGEN Plasmid Maxi kitを用いて分離・精製することにより、pSRα-pUCを得た。
【0128】実施例7 (ラット由来の本遺伝子の活性測定)
(7−1)哺乳動物発現用ベクター構築実施例4で得られたラット由来の本遺伝子を含むプラスミド5μgをEcoT22I 5Uを用いて70μLの反応液中で37℃で1時間消化した。一方、pSRα-pUC 5μgをPstI 5Uを用いて70μLの反応液中で37℃で1時間消化した後、得られた消化物はBAP10Uを用いて脱リン酸化処理された。上記の両酵素反応物をそれぞれアガロースゲル電気泳動に供して、目的とするDNAを切り出した。切り出されたDNAをQIAEXIIGel Extraction Kit(QIAGEN社)を用いて精製した。精製されたラット由来の本遺伝子断片、pSRα-pUCの消化物をそれぞれ水20μlに溶解した。ラット由来の本遺伝子断片1μLとpSRα-pUC消化物の水溶液1μLとを混合した後、ライゲーションキットver.1(宝酒造社)を用いて16℃で1時間ライゲーション反応した。反応後、当該ライゲーション反応液20μL及びE.coliJM109株コンピテントセルを用いた通常の方法により、E.coliJM109形質転換細胞を得た。形質転換された細胞を50μg/mLアンピシリン含有LB培地100mLで培養することにより得られる培養菌体からQIAGEN Plasmid Maxi kitを用いて分離・精製することにより、ラット由来の本遺伝子 をSRαプロモーターの制御下に置いたプラスミドrKKLF/pSRαを得た。
(7−2)pGL3-aP2の構築マウスゲノムライブラリー(CLONTECH社)1μL、配列番号7で示される塩基配列からなるプライマー3 20pmol、配列番号8で示される塩基配列からなるプライマー4 20pmol、TaKaRa Ex-Taqポリメラーゼ(宝酒造社)2U、TaKaRa Ex-Taqポリメラーゼ添付のバッファー 5μL及びTaKaRa Ex-Taqポリメラーゼ添付のdNTP mixture(2.5mM)4μLを含む50μLの反応液を調製した。PCRは、まず94℃で30秒間、次いで50℃で30秒間、更に72℃で1分間からなる保温サイクルを35回繰り返し、最後に72℃で5分間保温する条件にて行われた。PCR後、アガロース電気泳動で約0.5kbpを示すPCR産物を回収した。次いで回収されたPCR産物をKpnI、XhoIで消化した後、消化物をpBluescriptII SK(-)へサブクローニングした。尚、サブクローニングされたDNAは、その塩基配列を通常の方法に準じて調べることにより確認された。その後、pGL3-promoter(Promega社)のKpnI、XhoIにサブクローニングした後、当該プラスミドでE.coliJM109株コンピテントセル(東洋紡社)を形質転換した。形質転換された細胞を50μg/mLアンピシリン含有LB培地100mLで培養することにより得られる培養菌体からQIAGEN Plasmid Maxi kit(QIAGEN社)を用いて分離・精製することにより、マウスaP2遺伝子のプロモーター配列を含むレポータープラスミドpGL3-aP2を得た。
(7−3)aP2プロモーターへの影響測定WO-00/44754公報記載の方法で調製されたラット腹腔内脂肪細胞を24ウエルプレート(住友ベークライト社)に1ウエル当たり7.5×104細胞になるように添加した各ウェルに、FBS及び200μMアスコルビン酸(和光純薬工業(株)社)が添加されたD-MEM培地(高グルコース、Gibco-BRL社)を添加した後、この状態で当該細胞を37℃、5%二酸化炭素下で一晩培養した。次いで、pGL3-aP2 0.5μgとシーパンジールシフェラーゼ遺伝子を含んだベクターpRL-null(Promega社)0.2μgとrKKLF/pSRα 0.1又は0.5又は1.0μgとを混合した混合物に、D-MEM(Gibco-BRL社)97μL及びフュージーン(ベーリンガー・マンハイム社)3μLを添加し、これを混合した。当該混合液を24ウエルプレート1ウエル分のトランスフェクション用DNA液とした。このDNA液を前記の培養された細胞に添加した後、さらに当該細胞を2日間培養した。培養後、当該細胞が有するホタル・ルシフェラーゼ活性及びシーパンジー・ルシフェラーゼ活性をピッカジーンデュアルキットによって測定した。即ち、当該細胞をD-PBSで1回洗浄後、該キットに付属する5倍濃細胞溶解剤が水で5倍希釈された液を24ウエルプレート1ウエル当たり100μLずつ添加し、これを室温で15分間放置することにより細胞溶解液を得た。得られた細胞溶解液をピペットを用いてエッペンドルフチューブに移し、これを遠心分離(10,000rpm、1分間、室温)することにより上澄み液を得た。得られた上澄み液のうち20μLをキットに付属するホタルルシフェラーゼ発光基質液100μLに添加した。そして、当該溶液について30秒間の発光量をルミノメーター(TURNER社、TD-20e)で定量して得られた値をホタルルシフェラーゼ活性測定値(測定値A)とした。次いで、上澄み液とホタルルシフェラーゼ発光基質液との混合液に前記キット付属のシーパンジールシフェラーゼ用発光基質液100μLを添加し、当該溶液について30秒間の発光量をルミノメーターで定量して得られた値を、シーパンジールシフェラーゼ活性測定値(測定値B)とした。測定値Aを測定値Bで割った値(A/B値)を算出した後、各細胞のA/B値を対照細胞のA/B値で割って、各細胞の相対ルシフェラーゼ活性(相対値)を算出した。ここで対照細胞とは、rKKLF/pSRα(ラット由来の本遺伝子をSRαプロモーターの制御下に置いたプラスミド)の代わりにpSRα-pUC(対照:ラット由来の本遺伝子を含まない、SRαプロモーター含有プラスミド)を同様の方法で、トランスフェクションした細胞を意味する。その結果を図1(A)に示す。一方、pGL3-aP2(マウスのaP2遺伝子のプロモーター配列を含むレポータープラスミド)の代わりに、pGL3-promoter(対照:マウスのaP2遺伝子のプロモーター配列を含まないレポータープラスミド)をトランスフェクトする以外には上記の試験方法と同様な方法で試験を実施した結果を図1(B)に示す。図1から明らかなように、哺乳動物の脂肪細胞内において、本遺伝子が転写され、そして本蛋白質が発現されることにより、脂肪細胞分化のマーカーであるaP2を利用したレポーター遺伝子の発現量が増加しており、これは本蛋白質(又は本遺伝子)が脂肪蓄積を促進する能力(前駆脂肪細胞から成熟脂肪細胞への分化誘導能力)を有することを示している。
【0129】実施例8 (ヒト由来の本遺伝子のクローニング)
Human Adipocyte Marathon-Ready cDNA (CLONTECH社)1μL、配列番号9で示される塩基配列からなるプライマー5 20pmol、配列番号10で示される塩基配列からなるプライマー6 20pmol、TaKaRa Ex-Taqポリメラーゼ(宝酒造社)2U、TaKaRa Ex-Taqポリメラーゼ添付のバッファー 5μL及びTaKaRa Ex-Taqポリメラーゼ添付のdNTP mixture(2.5mM)4μLを含む50μLの反応液を調製した。PCRは、まず94℃で30秒間、次いで65℃で30秒間、更に72℃で2分間からなる保温サイクルを50回繰り返し、最後に72℃で5分間保温する条件にて行われた。PCR後、アガロース電気泳動で約1.2kbpを示すPCR産物を回収した。回収されたPCR産物をpT7-Blue vector(Novagen社)にサブクローニングした後、当該プラスミドでE.coliJM109株コンピテントセル(東洋紡社)を形質転換した。形質転換された細胞を50μg/mLアンピシリン含有LB培地100mLで培養することにより得られる培養菌体からQIAGEN Plasmid Maxi kit(QIAGEN社)を用いて分離・精製することにより、ヒト由来の本遺伝子(hKKLF)の塩基配列を含むプラスミドを得た。
【0130】実施例9 (ヒト由来の本遺伝子(hKKLF)の塩基配列の決定)
実施例8で得られたPCR産物(約1.2kbp)を含むプラスミドを鋳型として、Thermo Sequenase IIダイ・ターミネーターキット(Amersham Pharmacia Biotech社)及びABI373DNA配列読み取り装置(PE Applied Biosystems社)を用いて、サンガーの方法〔F.Sanger,S.Nicklen,A.R.Coulson著、Proceedings of National Academy of Science U.S.A.(1977), 74, 5463-5467〕により、配列番号11で示される塩基配列からなるヒト由来の本遺伝子の塩基配列を決定した。
【0131】実施例10 (ヒト由来の本遺伝子の活性測定)
(10−1)哺乳動物発現用ベクター構築実施例9で得られたヒト由来の本遺伝子を含むプラスミド5μgをEcoT22I 5Uを用いて70μLの反応液中で37℃で1時間消化した。一方、pSRα-pUC 5μgをPstI 5Uを用いて70μLの反応液中で37℃で1時間消化した後、得られた消化物はBAP10Uを用いて脱リン酸化処理された。上記の両酵素反応物をそれぞれアガロースゲル電気泳動に供して、目的とするDNAを切り出した。切り出されたDNAをQIAEXII Gel Extraction Kit(QIAGEN社)を用いて精製した。精製されたヒト由来の本遺伝子断片、pSRα-pUCの消化物をそれぞれ水20μlに溶解した。ヒト由来の本遺伝子断片1μLとpSRα-pUC消化物の水溶液1μLとを混合した後、ライゲーションキットver.1(宝酒造社)を用いて16℃で1時間ライゲーション反応した。反応後、当該ライゲーション反応液20μL及びE.coliJM109株コンピテントセルを用いた通常の方法により、E.coliJM109形質転換細胞を得た。該形質転換された細胞を50μg/mLアンピシリン含有LB培地100mLで培養することにより得られる培養菌体からQIAGEN Plasmid Maxi kitを用いて分離・精製することにより、ヒト由来の本遺伝子 をSRαプロモーターの制御下に置いたプラスミドhKKLF/pSRαを得た。
(10−2)aP2プロモーターへの影響測定WO-00/44754公報記載の方法で調製されたラット腹腔内脂肪細胞を24ウエルプレート(住友ベークライト社)に1ウエル当たり7.5×104細胞になるように添加した。各ウェルに、FBS及び200μMアスコルビン酸(和光純薬工業(株)社)が添加されたD-MEM培地(高グルコース、Gibco-BRL社)を添加した後、この状態で当該細胞を37℃、5%二酸化炭素下で一晩培養した。次いで、pGL3-aP2 0.5μgとシーパンジールシフェラーゼ遺伝子を含んだベクターpRL-null(Promega社)0.2μgとhKKLF/pSRα 0.1又は0.5μgとを混合した混合物に、OPTI-MEM(Gibco-BRL社)97μLおよびフュージーン(ベーリンガー・マンハイム社)3μLを添加し、これを混合した。当該混合液を24ウエルプレート1ウエル分のトランスフェクション用DNA液とした。このDNA液を前記の培養された細胞に添加した後、さらに当該細胞を2日間培養した。培養後、当該細胞が有するホタル・ルシフェラーゼ活性及びシーパンジー・ルシフェラーゼ活性をピッカジーンデュアルキットによって測定した。即ち、当該細胞をD-PBSで1回洗浄後、該キットに付属する5倍濃細胞溶解剤が水で5倍希釈された液を24ウエルプレート1ウエル当たり100μLずつ添加し、これを室温で15分間放置することにより細胞溶解液を得た。得られた細胞溶解液をピペットを用いてエッペンドルフチューブに移し、これを遠心分離(10,000rpm、1分間、室温)することにより上澄み液を得た。得られた上澄み液のうち20μLをキットに付属するホタルルシフェラーゼ発光基質液100μLに添加した。そして当該溶液について30秒間の発光量をルミノメーター(TURNER社、TD-20e)で定量して得られた値をホタルルシフェラーゼ活性測定値(測定値A)とした。次いで、上澄み液とホタルルシフェラーゼ発光基質液との混合液に前記キット付属のシーパンジールシフェラーゼ用発光基質液100μLを添加し、当該溶液について30秒間の発光量をルミノメーターで定量して得られた値を、シーパンジールシフェラーゼ活性測定値(測定値B)とした。測定値Aを測定値Bで割った値(A/B値)を算出した後、各細胞のA/B値を対照細胞のA/B値で割って、各細胞の相対ルシフェラーゼ活性(相対値)を算出した。ここで対照細胞とは、hKKLF/pSRα(ヒト由来の本遺伝子をSRαプロモーターの制御下に置いたプラスミド)の代わりにpSRα-pUC(対照:ヒト由来の本遺伝子を含まない、SRαプロモーター含有プラスミド)を同様の方法で、トランスフェクションした細胞を意味する。その結果を図2(A)に示す。また、pGL3-aP2(マウスのaP2遺伝子のプロモーター配列を含むレポータープラスミド)の代わりにpGL3-promoter(対照:マウスのaP2遺伝子のプロモーター配列を含まないレポータープラスミド)をトランスフェクトする以外には上記の試験方法と同様な方法で試験を実施した結果を図2(B)に示す。図2から明らかなように、哺乳動物の脂肪細胞内において、本遺伝子が転写され、そして本蛋白質が発現されることにより、脂肪細胞分化のマーカーであるaP2を利用したレポーター遺伝子の発現量が増加しており、これは本蛋白質(又は本遺伝子)が脂肪蓄積を促進する能力(前駆脂肪細胞から成熟脂肪細胞への分化誘導能力)を有することを示している。
【0132】実施例11 (マウス由来の本遺伝子のクローニング)
Mouse Normal Adipose cDNA (BioChain社)1μL、配列番号12で示される塩基配列からなるプライマー7 20pmol、配列番号13で示される塩基配列からなるプライマー8 20pmol、TaKaRa Ex-Taqポリメラーゼ(宝酒造社)2U、TaKaRa Ex-Taqポリメラーゼ添付のバッファー 5μL及びTaKaRa Ex-Taqポリメラーゼ添付のdNTPmixture(2.5mM)4μLを含む50μLの反応液を調製した。PCRは、まず94℃で30秒間、次いで65℃で30秒間、更に72℃で2分間からなる保温サイクルを50回繰り返し、最後に72℃で5分間保温する条件にて行われた。PCR後、アガロース電気泳動で約1.2kbpを示すPCR産物を回収した。回収されたPCR産物をpT7-Blue vector(Novagen社)にサブクローニングした後、当該プラスミドでE.coliJM109株コンピテントセル(東洋紡社)を形質転換した。形質転換された細胞を50μg/mLアンピシリン含有LB培地100mLで培養することにより得られる培養菌体からQIAGENPlasmid Maxi kit(QIAGEN社)を用いて分離・精製することにより、マウス由来の本遺伝子(mKKLF)の塩基配列を含むプラスミドを得た。
【0133】実施例12 (マウス由来の本遺伝子の塩基配列の決定)
実施例11で得られたPCR産物(約1.2kbp)を含むプラスミドを鋳型として、Thermo Sequenase IIダイ・ターミネーターキット(Amersham Pharmacia Biotech社)及びABI373DNA配列読み取り装置(PE Applied Biosystems社)を用いて、サンガーの方法〔F.Sanger,S.Nicklen,A.R.Coulson著、Proceedings of NationalAcademy of Science U.S.A.(1977), 74, 5463-5467〕により、配列番号14で示される塩基配列からなるマウス由来の本遺伝子(mKKLF)の塩基配列を決定した。
【0134】実施例13 (マウス由来の本遺伝子の活性測定)
(13−1)哺乳動物発現用ベクター構築実施例12で得られたマウス由来の本遺伝子を含むプラスミド5μgをEcoT22I5Uを用いて70μLの反応液中で37℃で1時間消化する。一方、pSRα-pUC 5μgをPstI 5Uを用いて70μLの反応液中で37℃で1時間消化した後、得られた消化物はBAP 10Uを用いて脱リン酸化処理される。上記の両酵素反応物をそれぞれアガロースゲル電気泳動に供して、目的とするDNAを切り出した。切り出されたDNAをQIAEX? Gel Extraction Kit(QIAGEN社)を用いて精製する。精製されるマウス由来の本遺伝子断片、pSRα-pUCの消化物をそれぞれ水20μlに溶解した。マウス由来の本遺伝子断片1μLとpSRα-pUC消化物の水溶液1μLとを混合した後、ライゲーションキットver.1(宝酒造社)を用いて16℃で1時間ライゲーション反応する。反応後、当該ライゲーション反応液20μL及びE.coliJM109株コンピテントセルを用いた通常の方法により、E.coliJM109形質転換細胞を得る。形質転換される細胞を50μg/mLアンピシリン含有LB培地100mLで培養することにより得られる培養菌体からQIAGEN Plasmid Maxi kitを用いて分離・精製することにより、マウス由来の本遺伝子 をSRαプロモーターの制御下に置いたプラスミドmKKLF/pSRαが得られる。
【0135】(13−2)aP2プロモーターへの影響測定WO-00/44754公報記載の方法で調製されたラット腹腔内脂肪細胞を24ウエルプレート(住友ベークライト社)に1ウエル当たり7.5×104細胞になるように添加した。各ウェルに、FBS及び200μMアスコルビン酸(和光純薬工業(株)社)が添加されたD-MEM培地(高グルコース、Gibco-BRL社)を添加した後、この状態で当該細胞を37℃、5%二酸化炭素下で一晩培養する。次いで、pGL3-aP2 0.5μgとシーパンジールシフェラーゼ遺伝子を含んだベクターpRL-null(Promega社)0.2μgとmKKLF/pSRα 0.5μgとを混合した混合物に、これにOPTI-MEM(Gibco-BRL社)97μLおよびフュージーン(ベーリンガー・マンハイム社)3μLを添加し、これを混合した。当該混合液を24ウエルプレート1ウエル分のトランスフェクション用DNA液とする。このDNA液を前記の培養された細胞に添加した後、さらに2日間培養した。培養後、当該細胞が有するホタル・ルシフェラーゼ活性及びシーパンジー・ルシフェラーゼ活性をピッカジーンデュアルキットによって測定する。即ち、当該細胞をD-PBSで1回洗浄後、該キットに付属する5倍濃細胞溶解剤が水で5倍希釈された液を24ウエルプレート1ウエル当たり100μLずつ添加し、これを室温で15分間放置することにより細胞溶解液を得る。得られる細胞溶解液をピペットを用いてエッペンドルフチューブに移し、これを遠心分離(10,000rpm、1分間、室温)することにより上澄み液が得られる。得られる上澄み液のうち20μLをキットに付属するホタルルシフェラーゼ発光基質液100μLに添加した。そして当該溶液について30秒間の発光量をルミノメーター(TURNER社、TD-20e)で定量して得られた値をホタルルシフェラーゼ活性測定値(測定値A)とする。次いで、上澄み液とホタルルシフェラーゼ発光基質液との混合液に前記キット付属のシーパンジールシフェラーゼ用発光基質液100μLを添加し、当該溶液について30秒間の発光量をルミノメーターで定量して得られた値を、シーパンジールシフェラーゼ活性測定値(測定値B)とする。測定値Aを測定値Bで割った値(A/B値)を算出した後、各細胞のA/B値を対照細胞のA/B値で割って、各細胞の相対ルシフェラーゼ活性(相対値)を算出する。ここで対照細胞とは、mKKLF/pSRα(マウス由来の本遺伝子をSRαプロモーターの制御下に置いたプラスミド)の代わりに pSRα-pUC(対照:マウス由来の本遺伝子を含まない、SRαプロモーター含有プラスミド)を同様の方法で、トランスフェクションした細胞を意味する。また、pGL3-aP2(マウスのP2遺伝子のプロモーター配列を含むレポータープラスミド)の代わりにpGL3-promoter(対照:マウスのP2遺伝子のプロモーター配列を含まないレポータープラスミド)をトランスフェクトする以外には上記の試験方法と同様な方法で試験を実施する。この結果から、哺乳動物の脂肪細胞内において、本遺伝子が転写され、そして本蛋白質が発現されることにより、脂肪細胞分化のマーカーであるaP2を利用したレポーター遺伝子の発現量が増加すれば、これは本蛋白質(又は本遺伝子)が脂肪蓄積を促進する能力(前駆脂肪細胞から成熟脂肪細胞への分化誘導能力)を有することを示すことになる。
【0136】実施例14 (被験化合物のルシフェラーゼアッセイ)
実施例10に記載された方法を用いて、hKKLF/pSRα及びpGL3-aP2がトランスフェクションされた細胞を96ウエルプレートに1ウエル当たり1×104細胞になるように添加する。次いで、被験物質の1μM DMSO溶液0.5μLを添加した後、この状態で当該細胞を一晩培養する。同時に、対照細胞として、被験物質の1μM DMSO溶液の代わりにDMSO溶液0.5μLを添加すること以外は上記と同様な方法で細胞を培養する。培養された各細胞について、実施例10に記載された方法を用いてホタルルシフェラーゼ活性(測定値A)とシーパンジールシフェラーゼ活性(測定値B)の測定を行う。次いで、測定された値に基づき測定値Aを測定値Bで割った値(A/B値)を算出した後、各細胞のA/B値を対照細胞のA/B値で割って、各細胞の相対ルシフェラーゼ活性(相対値)を算出する。この相対ルシフェラーゼ活性(相対値)が1より大きい場合の被験物質を、本細胞分化因子依存的脂肪蓄積促進経路の正の調節因子として選抜することができる。逆に、この相対ルシフェラーゼ活性(相対値)が1より小さい場合の被験物質を、本細胞分化因子依存的脂肪蓄積促進経路の正の調節因子として選抜することができる。
【0137】実施例15 (ヒト由来の本遺伝子発現脂肪細胞を使った化合物のスクリーニング)
レトロウイルス感染法(M. Onishi et al. Experimental Hematology 24:324-329 (1996))、電気導入法(A. Ting et al. EMBO J. 15: 6189-6196)、リン酸カルシウム法(S. Grimm et al. Proc. Natl. Acad. Sci. USA 93:10923-10927)等の通常の方法でhKKLF/pSRαが発現導入された3T3-L1細胞(脂肪細胞)を、1〜2×105細胞/mlになるようにFBS含有培地を加えて希釈する。当該希釈液を96ウエルプレート(接着細胞培養用。岩城硝子製)に1ウエル当り100μlずつ分注し、5%CO2存在下、37℃にて2〜3日間培養する。96ウエルプレートの各ウエルから培地を除き、被験物質1μMを含むDMSO溶液0.5μlが添加されたFBS含有培地100μlを各ウエルに添加して、5%CO2存在下、37℃で培養する操作を繰り返し5〜6日間培養した後、96ウエルプレートの各ウエルから培地を除き、イソプロピルアルコール60μlを添加する。室温で5分間放置後、イソプロピルアルコールで抽出されたトリグリセライド量(μg/ウエル)をトリグリセライド−テストワコー(和光純薬工業(株)製)で測定する(以下、測定値1と記す。)。一方、供試化合物無添加区については、被験物質を添加しないこと以外は同様の操作を行い、得られる細胞内のトリグリセライド量を測定する(以下、測定値2と記す。)。これらの測定値から、下記の式に従って、供試化合物による脂肪蓄積率を算出する。
脂肪蓄積率(%)=(測定値1/測定値2)×100この脂肪蓄積率が100より大きい場合の被験物質を、本細胞分化因子依存的脂肪蓄積促進経路の正の調節因子として選抜することができる。逆に、この脂肪蓄積率が100より小さい場合の被験物質を、本細胞分化因子依存的脂肪蓄積促進経路の負の調節因子として選抜することができる。
【0138】実施例16 (脂肪蓄積調節能力を有する物質の探索方法)
実施例1で得られた腹腔内脂肪細胞培養液中の細胞数を1.4×105細胞/mlになるようにFBS含有培地を加えて希釈する。該希釈液を96ウエルプレート(接着細胞培養用。岩城硝子社製)に1ウェルあたり100μlずつ分注し、5%CO2存在下、37℃にて培養する。2〜3日後、96ウエルプレートの各ウェルから培地を除き、10μg/mlインシュリン(シグマ社製)、0.25μMデキサメサゾン[和光純薬工業(株)]、0.5mM 3−イソブチル−1−メチル−キサンチン(シグマ社製)および5μM 15−デオキシ−Δ12,14−プロスタグランジンJ2(Cayman社製)を含むFBS含有培地100μlを各ウェルに添加して5%CO2存在下、37℃にて2日間培養する。次いで、96ウエルプレートの各ウエルから培地を除き、10μg/mlインシュリンおよび5μM 15−デオキシ−Δ12,14−プロスタグランジンJ2を含むFBS含有培地100μlを各ウェルに添加して5%CO2存在下、37℃にて2日間培養する。次いで96ウエルプレートの各ウェルの培地を除き、10μg/mlインシュリン、5μM 15−デオキシ−Δ12,14−プロスタグランジ