| 【発明の名称】 |
ビタミンCの安定化方法 |
| 【発明者】 |
【氏名】藤本 貴司
【氏名】加賀 順二
【氏名】庄司 英克
|
| 【要約】 |
【課題】微量元素共存下におけるビタミンCの安定性を向上させることができるビタミンCの安定化方法を提供することである。
【解決手段】輸液容器1内で、この輸液容器1の室2,3にそれぞれ収容されたビタミンCと微量元素とを混合する際または混合直後にクエン酸を存在させるビタミンCの安定化方法、および輸液容器内でビタミンCと微量元素とを混合する際の混合液のpHが3〜6であるビタミンCの安定化方法であり、好ましくは上記の各混合液に亜硫酸塩を存在させることにより、ビタミンCの分解が抑制され、安定性が向上する。 |
【特許請求の範囲】
【請求項1】輸液容器内でビタミンCと微量元素を混合する際または混合直後に、クエン酸を存在させることを特徴とするビタミンCの安定化方法。 【請求項2】前記クエン酸は、前記ビタミンCと微量元素の混合液に対し25〜100mEq/Lの割合で存在する請求項1記載の安定化方法。 【請求項3】輸液容器内でビタミンCと微量元素を混合する際の混合液のpHが3〜6であることを特徴とするビタミンCの安定化方法。 【請求項4】pHが4.0〜5.5である請求項3記載の安定化方法。 【請求項5】前記ビタミンCおよび微量元素を混合する際に亜硫酸塩を存在させる請求項1〜4のいずれかに記載の安定化方法。 【請求項6】前記亜硫酸塩は、前記ビタミンCと微量元素を混合する際の混合液に対し10〜200mg/Lの割合で存在する請求項5記載の安定化方法。 【請求項7】前記微量元素が銅または鉄である請求項1〜6のいずれかに記載の安定化方法。 【請求項8】前記輸液容器の一室にビタミンCを、他室に微量元素をそれぞれ収容したものである請求項1〜7のいずれかに記載の安定化方法。
|
【発明の詳細な説明】【0001】 【発明の属する技術分野】本発明は、輸液製剤に含有されるビタミンCの安定化方法に関する。 【0002】 【従来の技術】従来より、経口的に栄養補給が困難な患者に生命維持に必要な全ての栄養素を補給するために、静脈を通して輸液を投与する輸液療法が広く行われている。投与される栄養素には、糖、アミノ酸、電解質のほか、ミネラル、ビタミン等の生命維持に必要な栄養素が含まれる。 【0003】ビタミン類の中では、特にビタミンCが重要である。また、鉄、銅、亜鉛、マンガン、ヨウ素などの微量元素は生命にとって欠くことができないものである。これらの栄養素のうち、糖、アミノ酸および電解質を一剤化した製剤は、現在市販されている。さらに、糖、アミノ酸および電解質にビタミンを加えた製剤は、現在開発が進められている(WO99/39679、特開2000−5275)。 【0004】しかし、ビタミンCと微量元素を輸液成分として配合した製剤の開発は全く行われていない。これは、ビタミンCと微量元素を混合した輸液製剤では、混合後、鉄、銅等の微量元素の触媒的作用によってビタミンCの酸化分解が促進され、ビタミンCの含有量が短時間に減少するからである。 【0005】このため、従来は、輸液製剤にビタミンCと微量元素とを共存させずに、輸液投与時にビタミンCと微量元素とを混合していた。すなわち、輸液投与時にビタミンC含有輸液に微量元素を注射器にて注入していたのである。しかし、この場合であっても、混合後、輸液投与中にビタミンCの含有量は減少していたのである。このため、従来から、ビタミンCと微量元素とを投与直前に混合した場合に、投与中のビタミンCの減少が少ない輸液製剤の提供が望まれていた。 【0006】 【発明が解決しようとする課題】本発明の目的は、微量元素共存下におけるビタミンCの安定性を向上させることができるビタミンCの安定化方法を提供することである。 【0007】 【課題を解決するための手段】本発明者らは、上記課題を解決すべく鋭意研究を重ねた結果、輸液容器内でビタミンCと微量元素とを混合する際または混合直後にクエン酸を存在させるか、あるいは当該混合液のpHを所定範囲に調整することにより、ビタミンCの分解が抑制され、安定性が向上するという新たな事実を見出し、本発明を完成するに至った。 【0008】すなわち、本発明のビタミンCの安定化方法は以下の構成からなる。 (1) 輸液容器内でビタミンCおよび微量元素を混合する際または混合直後に、クエン酸を存在させることを特徴とするビタミンCの安定化方法。 (2)クエン酸は、前記ビタミンCおよび微量元素の混合液に対し25〜100mEq/Lの割合で存在する(1)記載の安定化方法。 (3)輸液容器内でビタミンCおよび微量元素を混合する際の混合液のpHが3〜6であることを特徴とするビタミンCの安定化方法。 (4)pHが4.0〜5.5である(3)記載の安定化方法。 (5)前記ビタミンCおよび微量元素を混合する際に亜硫酸塩を存在させる(1)〜(4)のいずれかに記載の安定化方法。 (6)前記亜硫酸塩は、前記ビタミンCと微量元素を混合する際の混合液に対し10〜200mg/Lの割合で存在する(5)記載の安定化方法。 (7)前記微量元素が銅または鉄である(1)〜(6)のいずれかに記載の安定化方法。 (8) 前記輸液容器が一室にビタミンCを、他室に微量元素をそれぞれ収容したものである(1)〜(7)のいずれかに記載の安定化方法。 【0009】 【発明の実施の形態】以下、本発明の方法を詳細に説明する。本発明の一実施形態にかかる安定化方法は、ビタミンCと微量元素の混合液にクエン酸を存在させたものである。ビタミンCと微量元素とは、使用時に、後述のように輸液容器内で混合される。 【0010】本発明における混合液中のビタミンCの含有量は10〜200mg/L、好ましくは20〜100mg/Lである。 【0011】微量元素としては、鉄、銅、亜鉛、マンガン、ヨウ素などが例示される。これらの微量元素は、例えば塩化物、硫酸塩等の塩として添加される。各微量元素はそれぞれ適量を添加すればよいが、少なくとも鉄および銅の含有量はそれぞれ鉄2〜200μmol/Lおよび銅0.5〜40μmol/L、好ましくは鉄5〜100μmol/Lおよび銅1〜20μmol/Lである。他にミネラルとして、カルシウム、マグネシウム、ナトリウム、カリウム等を添加することができる。 【0012】クエン酸は、混合液に対し約25〜200mEq/L、好ましくは25〜100mEq/Lの割合で存在するのがよい。クエン酸の量が25mEq/Lを下回る場合には、ビタミンCの安定化が不充分となるおそれがある。一方、クエン酸の量が200mEq/Lを超える場合にはコストアップとなるため好ましくない。 【0013】ビタミンC、微量元素およびクエン酸を混合した混合液のpHは、ほぼ中性に近い6〜8であるのが好ましい。 【0014】ビタミンC、微量元素およびクエン酸を混合した場合、当該混合液の組成は、ビタミンCおよび微量元素を含有する限り特に限定されるものではなく、アミノ酸、糖、油脂、電解質のほか、各種ビタミン類、ミネラル類を共存させることができ、これらの配合量も適宜決定することができる。 【0015】本発明において、例えばビタミンCと微量元素とは輸液容器内で混合される。この場合、図1に示すような輸液容器の構成とすることもできる。この実施形態で使用される輸液容器1は2つの室2,3を有し、一室2にビタミンCを、他室3に微量元素をそれぞれ収容する。室2には液流出口4が設けられている。室3は室2内に収容されている。使用時にビタミンCと微量元素とを混合できるように、微量元素を収容した他室3には、強い外圧が加わると破れるように弱シール部が形成されている。このため、図2に示すように、指5,5で他室3を強く挟むなどすることにより弱シール部が破れ、微量元素がビタミンCと混合される。また、本発明においては、従来と同様に輸液容器に収容されたビタミンC含有輸液に微量元素を注射器等で注入することもできる。 【0016】クエン酸はあらかじめ微量元素およびビタミンCの一方または両方、あるいはこれらの成分と混合するアミノ酸、糖質等の他の成分に含有させておけばよいが、混合時または混合直後の混合液にクエン酸を添加してもよい。なお、上記と逆に一室2に微量元素を、他室3にビタミンCをそれぞれ収容してもよく、また2つの室2、3の容量は適宜決定することができ、特に限定されるものではない。クエン酸は酸または塩の形態で添加することができる。無機塩としてはナトリウム塩、カリウム塩などの金属塩を、有機酸の塩としてはアミノ酸との塩などを挙げることができる。 【0017】図3は本発明で利用できる他の輸液容器の構成を示す。図1と異なる点は、輸液容器がダブルバッグとなっている点であり、例えばA室2aにブドウ糖が収容され、B室2bにアミノ酸とビタミンCが収容されていて、B室2bには、さらに微量元素を収容する第3の室3が収容されている点である。その他は、図1、図2と同様であるので、同一符号を付して説明を省略する。 【0018】本発明の他の実施形態にかかる安定化方法は、ビタミンCと微量元素とを混合する際の混合液のpHが3〜6、好ましくは4.0〜5.5となるようにするものである。これにより、ビタミンCの酸化分解を抑制することができる。混合液のpHが6を超える場合には、経時的にビタミンCが酸化分解するのを抑制する効果が充分でなく、またpHが3を下回る場合には酸性が強くなりすぎ、体内への投与に適さなくなる。 【0019】ビタミンCと微量元素の混合液のpHが3〜6、好ましくは4.0〜5.5となるようした輸液製剤の場合も、ビタミンCおよび微量元素を含有する限り特に組成が限定されるものではなく、アミノ酸、糖、油脂、電解質のほか、各種ビタミン類、ミネラル類を共存させることができ、これらの配合量も適宜決定することができる。この実施形態でも、ビタミンCと微量元素とは図1または図3に示すような輸液容器1内で混合される。 【0020】本発明では、クエン酸を添加するか、あるいはpHが前記範囲内にある前記混合液に、さらに亜硫酸塩を存在させるのが好ましい。 【0021】亜硫酸水素塩としては、例えば亜硫酸水素ナトリウム、亜硫酸水素カリウム、亜硫酸ナトリウムなどが挙げられる。亜硫酸塩は混合液1リットルあたり0〜600mg、好ましくは10〜200mgの割合で存在するのがよい。亜硫酸塩の量が600mg/Lを超える場合には、ビタミンC以外のビタミン、例えばビタミンB1等が不安定となるおそれがある。亜硫酸塩は、図1または図3に示すような輸液容器1において、あらかじめ微量元素およびビタミンCの一方または両方に含有させておくのがよいが、混合時または混合直後の混合液に亜硫酸塩を添加してもよい。 【0022】 【実施例】以下、実施例を挙げて本発明の安定化方法を説明するが、本発明は以下の実施例のみに限定されるものではない。 【0023】処方例この実施例で使用した輸液製剤の処方を表1に示す。輸液製剤の調製にあたっては、まず同表に示す基本組成の各成分を注射用蒸留水に溶解し、全量を1リットルとした。この基本組成液1リットルを図1に示す室2に収容し、微量元素製剤(味の素ファルマ(株)製の「エレメンミック注」)2mLを室3に収容した。そして、室3を指で強く挟んで室3のシール部を破り、上記基本組成に微量元素製剤を添加混合し輸液製剤を得た。 【表1】
【0024】以下に上記処方例で得た輸液製剤を用いた試験例を示す。各試験例において、ビタミンCの含有量は、試料溶液中のアスコルビン酸およびデヒドロアスコルビン酸の総量を液体クロマトグラフ法にて測定することによって求めた。 【0025】試験例1(クエン酸の添加効果) 表1に示した処方の輸液製剤1リットルあたりクエン酸30mEqおよび100mEqをそれぞれ添加した。輸液製剤のpHは水酸化ナトリウムで6.8に調整した。そして、輸液製剤を25℃の雰囲気下で遮光して保存し、輸液製剤中のビタミンCの含有量を所定時間ごとに測定した。その結果を表2に示す。なお、比較のため、クエン酸を添加しなかった他は上記と同様にして調製した試料溶液についても、ビタミンCの含有量を所定時間ごとに測定した。 【表2】
【0026】試験例2(pHの効果) 表1に示した処方の輸液製剤のpHを塩酸にて表3に示す値に調整した。そして、輸液製剤を25℃の雰囲気下で遮光して保存し、輸液製剤中のビタミンCの量を所定時間ごとに測定した。その結果を表3に示す。 【表3】
【0027】試験例3(亜硫酸塩の添加効果) 表1に示した処方の輸液製剤のpHを塩酸にて5.5および4.3に調整した後、亜硫酸水素ナトリウムを500mg/Lとなるように輸液製剤に添加した。ついで、各輸液製剤を25℃の雰囲気下で遮光して保存し、輸液製剤中のビタミンCの量を所定時間ごとに測定した。その結果を表4に示す。表4は同じpHで亜硫酸水素ナトリウムを添加した場合と、添加しなかった場合とについて、ビタミンC量の変化を比較したものである。 【表4】
【0028】 【発明の効果】以上のように、本発明の安定化方法は、輸液容器内でビタミンCと微量元素を混合する際または混合直後にクエン酸を存在させるか、あるいはビタミンCと微量元素とを混合する際の混合液のpHが3〜6であることにより、微量元素との共存下でのビタミンCの分解が抑制され、ビタミンCの安定性が向上するという効果がある。 【0029】さらに、本発明においては、クエン酸の添加および/またはpH調整に加えて、亜硫酸塩を混合液に存在させることにより、ビタミンCの分解をより一層抑制することができるという効果がある。
|
| 【出願人】 |
【識別番号】000149435 【氏名又は名称】株式会社大塚製薬工場
|
| 【出願日】 |
平成14年9月12日(2002.9.12) |
| 【代理人】 |
【識別番号】100104318 【弁理士】 【氏名又は名称】深井 敏和
|
| 【公開番号】 |
特開2003−171312(P2003−171312A) |
| 【公開日】 |
平成15年6月20日(2003.6.20) |
| 【出願番号】 |
特願2002−267337(P2002−267337) |
|