| 【発明の名称】 |
アンチトロンビン−III製剤の保存法 |
| 【発明者】 |
【氏名】牧島 敦 【住所又は居所】千葉県成田市新泉3番地の1 日本製薬株式会社成田工場内
【氏名】丸山 英也 【住所又は居所】千葉県成田市新泉3番地の1 日本製薬株式会社成田工場内
【氏名】田中 仁 【住所又は居所】千葉県成田市新泉3番地の1 日本製薬株式会社成田工場内
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| 【要約】 |
【課題】常温域を含む10℃を越え、45℃を越えない温度域で、長時間保存可能なアンチトロンビン−III乾燥製剤の保存法の提供。
【解決手段】乾燥加熱法によりウイルスの不活化を行ったアンチトロンビンーIII乾燥製剤、または低ヘパリン親和性アンチトロンビン−IIIが10%以上は含まないアンチトロンビン−III乾燥製剤を10℃を越え、45℃を越えない温度域で保存することにより前記課題を解決した。 |
【特許請求の範囲】
【請求項1】アンチトロンビン−III乾燥製剤を、10℃を超え45℃を超えない温度域で保存するアンチトロンビン−III製剤の保存法。 【請求項2】保存する温度域が12〜35℃である請求項1記載の保存法。 【請求項3】アンチトロンビン−III乾燥製剤が低ヘパリン親和性アンチトロンビン−IIIを10%以上は含まないものである請求項1記載の保存法。 【請求項4】アンチトロンビン−III乾燥製剤が低ヘパリン親和性アンチトロンビン−IIIを5%以上は含まないものである請求項1記載の保存法。 【請求項5】アンチトロンビン−III乾燥製剤が、ヒト血漿または誘導ヒト血漿画分を固定化ヘパリンを用いる精製工程に付し、さらに乾燥工程に付した後、乾燥状態のアンチトロンビン−IIIをウイルスが不活化されるまで加熱することにより得られたものである請求項1記載のアンチトロンビン−III製剤の保存法。 【請求項6】アンチトロンビン−III乾燥製剤が、固定化ヘパリンを用いる精製工程に付した後、乾燥工程に付す前に、アンチトロンビン−IIIを含む溶液を陰イオン交換体による吸脱着工程および固定化ヘパリンを用いる精製工程に付すことにより得られたものである請求項5記載の保存法。 【請求項7】アンチトロンビン−III乾燥製剤が、ウイルスの不活化を、50〜80℃、24〜120時間で行うことにより得られたものである請求項5または6記載の保存法。 【請求項8】保存する期間が2年以上である請求項1〜7のいずれかに記載の保存法。 【請求項9】アンチトロンビン−III乾燥製剤を100Pa(N/m2)以下の減圧下に保存する請求項1〜8のいずれかに記載の保存法。
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【発明の詳細な説明】【0001】 【発明の属する技術分野】本発明は、アンチトロンビン−III乾燥製剤の常温保存法に関する。 【0002】 【従来の技術】アンチトロンビン−III(AT-IIIと称することがある。)は血漿中に存在し、α2グロブリンに属する分子量65,000〜68,000の糖蛋白質の一種である。このAT-IIIはプロテアーゼ阻害活性を有し、トロンビンの血液凝固活性を強く阻害する。また、トロンビン以外の凝固因子、例えば活性化X因子、活性化IX因子などに対しても阻害作用を有している。その他プラスミンやトリプシンに対する阻害作用のあることも報告されている。 【0003】これらの阻害作用は通常ヘパリンの存在下で、より速やかに進行することが知られている。このような作用を有するAT-IIIは、血液凝固異常亢進の補正、具体的には汎発性血管内凝固症候群(DIC)や血中のAT-IIIレベルが低下することによる各種疾患の治療用に用いられている。AT-IIIは血漿由来の蛋白質であることから、それを治療用薬剤として用いる場合には混入の虞のあるウイルスを不活性化する工程を組み込むことが必須である。従来AT-III製剤の製造において用いられているAT-III含有水溶液の加熱によるウイルス不活性化処理は蛋白質に対しても負の影響を与え、それにより変性又は不活性AT-IIIが生成する。 【0004】そこで、熱により変性又は不活化されたAT-IIIの生成率をできる限り低く抑えるAT-III含有水溶液のウイルス不活化加熱処理法が種々提案されてきた(例えば特許文献1〜4参照)。しかしながら、ウイルス不活化のためにAT-III含有水溶液を加熱処理した後、前述の固定化ヘパリンを用いる精製法や他の精製法を実施してもなお製剤中には無視し得ない量の変性または不活性AT-IIIが含まれてくる。そして近年の研究により、この変性または不活性AT-IIIの殆どはヘパリン親和性の低下したAT-IIIであることが明らかにされた(非特許文献1参照)。 【0005】本発明者らはこの低ヘパリン親和性AT-IIIの中に、SDSポリアクリルアミドゲル電気泳動上でネイティブなAT-IIIよりも小さい移動度を示すものを見付け、これを取り出してN末端部分アミノ酸配列分析を行った結果、少なくともArg393−Ser394およびその周辺で開裂したAT-IIIであることを突き止めた(非特許文献2参照)。低ヘパリン親和性のAT-IIIの除去は、固定化ヘパリンによる精製では困難であり、またこれらは未変性のAT-IIIと化学構造や物性が極めて似ているため、それらの除去を厳密に行おうとすれば収率の低下を免れない。 【0006】本発明者らは低ヘパリン親和性である開裂したAT-IIIの生成を抑え、ウイルスを不活化する方法について種々研究を重ねた結果、低温で固定化ヘパリン等により精製したAT-IIIをなるべく低い温度で乾燥し、この乾燥状態のAT-IIIをウイルスの不活化がなされるまで加熱することによって得られた精製AT-IIIが開裂AT-IIIを実質的に含んでいないことを知見し、この知見に基づいて活性ウイルスおよび開裂したAT-IIIを実質的に含有しないAT-III及びその製法の発明をなし、特許出願した(特許文献5参照)。 【0007】この出願の発明に関する先行技術文献情報としては次のものが挙げられる。 【特許文献1】特開昭63−23896号公報【特許文献2】特開平1−275600号公報【特許文献3】特開平10−147538号公報【特許文献4】特開平11−49799号公報【特許文献5】特開2001−31698号公報【非特許文献1】Winkelman, L. & Haddon, M.E. Thromb. Res., 43:219〜227 (1986))。 【非特許文献2】牧島 敦ら、「薬理と臨床」医薬出版 第9巻(4):371〜379(1999) 【0008】 【発明が解決しようとする課題】既に述べたとおり、AT-IIIは血漿等に含まれ、トロンビンの血液凝固活性を阻害する作用等を有する蛋白であり、混在するウイルス不活化のための60℃前後の温度、10〜20時間の液状加熱により活性がかなり低下する。したがってAT-III製剤の保存は、AT-IIIの活性低下をなるべく低く抑えるため、その凍結乾燥剤を10℃以下の冷所に置くべきものとされてきた。しかし我が国において、夏期にこの温度を維持することは、コスト的にもかなり不利である。もし、10℃以上の常温を含む温度域でも力価がそれほど低下しないAT-III製剤の保存法が確立されるならば、貯蔵並びに運搬時のコストを大幅に低減させることができる。 【0009】 【課題を解決する手段】ところが、本発明者らが、ウイルス不活化のために乾燥加熱(65℃、96時間)を行ったAT-III製剤を30℃の高温下に約27ヶ月間保存した後その力価を測定してみたところ、意外にも活性の低下は10%にも満たない程度であることが判明した。また、乾燥加熱処理を行った製剤が低ヘパリン親和性AT-IIIを多くは含まないことから、低ヘパリン親和性AT-IIIを一定量以上は含まない製剤が常温保存可能なことも明らかになった。本発明者らはこれらの知見を基にさらに研究を重ね、発明を完成するに至った。 【0010】すなわち本発明は、(1)アンチトロンビン−III乾燥製剤を、10℃を超え45℃を超えない温度域で保存するアンチトロンビン−III製剤の保存法、(2)保存する温度域が12〜35℃である前記(1)記載の保存法、(3)アンチトロンビン−III乾燥製剤が低ヘパリン親和性アンチトロンビン−IIIを10%以上は含まないものである(1)記載の保存法、(4)アンチトロンビン−III乾燥製剤が低ヘパリン親和性アンチトロンビン−IIIを5%以上は含まないものである(1)記載の保存法、(5)アンチトロンビン−III乾燥製剤が、ヒト血漿または誘導ヒト血漿画分を固定化ヘパリンを用いる精製工程に付し、さらに乾燥工程に付した後、乾燥状態のアンチトロンビン−IIIをウイルスが不活化されるまで加熱することにより得られたものである保存法、(6)アンチトロンビン−III乾燥製剤が、固定化ヘパリンを用いる精製工程に付した後、乾燥工程に付す前に、アンチトロンビン−IIIを含む溶液を陰イオン交換体による吸脱着工程および固定化ヘパリンを用いる精製工程に付すことにより得られたものである前記(5)記載の保存法、(7)アンチトロンビン−III乾燥製剤が、ウイルスの不活化を、50〜80℃、24〜120時間で行うことにより得られたものである前記(5)または(6)記載の保存法、(8)保存する期間が2年以上である(1)〜(7)のいずれかに記載の保存法、および(9)アンチトロンビン−III乾燥製剤を100Pa(N/m2)以下の減圧下に保存する前記(1)〜(8)のいずれかに記載の保存法、である。 【0011】 【発明の実施の形態】これまで、AT-III乾燥製剤の保存や運搬は、力価の低下を極力抑えるために、通常0〜10℃の冷所でおこなわれてきた。しかし、前述のとおり本発明者らの実験によりAT-III乾燥製剤、特に低ヘパリン親和性AT-IIIを10%以上は含まない、より好ましくは5%以上は含まない乾燥製剤や乾燥状態のアンチトロンビン−IIIを、ウイルスが不活化されるまで加熱することによって得られる乾燥製剤は、例えば、12〜35℃の、いわゆる常温域でも2年以上の長期に亘り保存が可能であり、また45℃といった過酷な条件下でも10℃保存の場合と大差の無いことが判った。 【0012】本発明におけるAT-III乾燥製剤は、例えば、前述の特開2001−31698に記載されているように、血漿由来のAT-III含有画分を固定化ヘパリンを用いる精製工程と、乾燥加熱によるウイルス不活化工程を含む製法により製造することができる。より具体的には、原料ヒト血漿または誘導ヒト血漿画分を、好ましくは13℃以下で、固定化ヘパリンを用いる精製法、つまりヘパリン・アフィニティークロマトグラフィーに付す。この工程自体は公知であり、好適に用いられる吸着支持体は、たとえばヘパリンがセルロース、アガロース等の不溶性担体に共有結合したものである。この工程により大部分の夾雑物を除去することができる。得られたAT-IIIを含む溶液は、必要により自体公知の限外濾過に付し、さらに必要により陰イオン交換体による吸脱着処理工程に付される。これらの工程も13℃以下で行うことが好ましい。使用される陰イオン交換体としては、その解離度(pKa)が通常10.3以上、好ましくは10.5以上のものである。その構造的特徴として、4級アミノ基を有するもの、特にトリアルキルアミノアルキル基を有するものが好適に使用される。陰イオン交換体の具体例としては、たとえばトリメチルアミノメチル基、ジエチルヒドロキシプロピルアミノエチル基などのトリアルキルアミノアルキル基を有するものが挙げられる。これらの中でもトリメチルアミノメチル基を有するものが特に好ましい。 【0013】これらの官能基を有する不溶性担体としては、たとえばセルロース、アガロース、デキストラン、ポリアクリルアミド、アミノ酸共重合体、ポリビニル共重合体、ポリスチレン共重合体などが挙げられる。AT-III含有液と陰イオン交換体との接触条件はpH6〜8程度、塩濃度0〜0.5M程度が好ましく、このような条件を具有する溶媒としては、たとえば0.05M塩化ナトリウム含有0.01Mリン酸緩衝液(pH6.5〜7.5)等が挙げられる。また、溶出条件はpH6〜8程度、塩濃度0.1〜0.5M程度のものがよく、具体例としては、溶媒として0.17M塩化ナトリウム含有0.01Mリン酸緩衝液(pH7)などが挙げられる。 【0014】接触方法はカラム法、バッチ法のいずれでもよい。バッチ法にて行う場合、上記接触条件に調整したAT-III含有水溶液を、同じ条件で平衡化した当該強陰イオン交換体に接触させる。その条件としては、該交換体1mlに対して該水溶液1〜100mlを用い、30分〜2時間程度混和した後に遠心分離して、該交換体を回収する。さらに、該交換体に上記溶出用溶媒を添加する。混和条件は接触時と同じであるが、遠心分離して上澄を回収する。一方、カラム法にて行う場合、上記の接触条件に調整したAT-III含有水溶液を同じ条件で平衡化し、且つカラムに充填された当該強陰イオン交換体に通し、非吸着画分を廃棄する。必要に応じてカラムを洗浄した後、溶出用溶媒を流して溶出画分を回収する。 【0015】この工程により、ヘパリン・アフィニティークロマトグラフィーによっても除去しきれなかった、ヘパリンと親和性を有する夾雑物および混在する可能性のある各種ウイルスが実質的に除去される。この後、必要により再度前述の固定化のヘパリンを用いる精製工程に付してもよい。このようにして得られた精製AT-IIIを含む水溶液は乾燥製剤、すなわち水分含量が5%以下、望ましくは3%以下となるよう乾燥される。この乾燥工程においても、処理温度はなるべく低い方が好ましく、通常の凍結乾燥によりこの条件は満たされる。乾燥製剤の形状は、粉末状、ケーキ状または他のいずれの形態でもよい。得られた乾燥状のAT-IIIは、さらにウイルスが不活化されるまで加熱される。加熱温度は50〜80℃、好ましくは55〜75℃、さらに好ましくは60〜70℃である、加熱時間は24〜120時間、好ましくは72〜108時間、さらに好ましくは84〜100時間程度である。加熱時の雰囲気としては通常大気圧の空気が用いられるが必要により減圧空気、窒素その他の不活性ガス中で行っても差し支えない。また加熱時のAT-IIIの熱変性を極力防止する目的で糖、糖アルコール、各種アミノ酸、有機酸塩類、及び無機酸塩類等を溶液中に添加しておき、それを乾燥して加熱処理に付してもよい。加熱はどのような手段でもよいが、オーブン、赤外線照射、砂浴または水浴などの手段が適宜使用される。 【0016】この加熱工程の操作によりウイルスは不活化され、しかも液状加熱の場合と違って低ヘパリン親和性AT-IIIの含量が少なく、且つ開裂したAT-IIIが実質的に含まれていない精製AT-IIIが得られる。ここに活性ウイルスを実質的に含まないAT-IIIとは、ウイルスの不活化処理によりウイルスが培養不可能なレベルにまで減少したAT-IIIを意味し、この状態に至ったAT-IIIはヒトに投与してもウイルス感染の恐れはない。なお、こうした精製工程中にウイルス除去膜処理等を施すことで、より安全な製剤を提供することができる。低ヘパリン親和性AT-IIIの含有率(%)は、後述の二次元交叉免疫電気泳動法による総AT-IIIの沈降線下面積に対する低ヘパリン親和性AT-IIIの沈降線下面積の百分率で表される。当該沈降線下面積での定量が困難な場合は、ヘパリンアフィニティーカラムによる分析において、AT−III抗原のピークのうち、ヘパリンへの親和性の低いピークのものの総AT−IIIピークに対する百分率で表すことにする。なお、簡易的には、加熱処理前後のAT−III活性(ヘパリンコファクター活性)の低下率(%)を低ヘパリン親和性AT−IIIの含量とすることも可能である。いずれの方法を用いた場合においても、低ヘパリン親和性AT-IIIの含有率(%)は、総AT−III蛋白に占める低ヘパリン親和性のAT−III蛋白の百分率で示すものとする。乾燥製剤は、水分5重量%以下、好ましくは3重量%以下の製剤であることが望ましい。乾燥製剤は、通常バイアル瓶などの密閉容器に保存される。容器内の気体は、空気でもよく、窒素または炭酸ガスなどにより置換されていてもよい。更に減圧でもよく、その場合は、100Pa(N/m2)以下、好ましくは、50Pa以下、特に好ましくは10pa以下である。 【0017】このようにして得られた乾燥AT-III製剤は、10℃を越え45℃を越えない、いわゆる常温域を含む温度域で少なくとも2年、高い力価を保持したまま保存することができる。保存温度は、好ましくは12〜35℃、さらに好ましくは15〜30℃である。即ち、国内における通常の病院での室温保存管理下で保存することが可能である。製剤化は、医薬上許容される添加剤(希釈剤、等張化剤、界面活性剤等)を適宜混合し、製剤上の常套手段により行うことができる。乾燥製剤、特に凍結乾燥製剤は用事に注射用蒸留水等の溶解液に溶解して用いられる。本発明により保存されたAT-III乾燥製剤は、長期の常温保存にも拘わらず力価の低下が少なく、再溶解したときも無色透明であり、可視的異物も認められない。 【0018】 【実施例】以下に実施例および試験例をあげてさらに本発明を具体的に説明するが、本発明はそれらによって限定されるものではない。 実施例1コーン低温エタノール分画の上清I約175リットルをDEAE陰イオン交換体で処理した後、未吸着分をプールとして集めた。0.02Mのリン酸緩衝液(pH7.3)で予め平衡化したヘパリン−セファロース6FFゲル約3700mlを充填したカラムに前述のプール画分を5℃で負荷した。引き続き、5〜10℃で0.3M塩化ナトリウムを含む0.02Mのリン酸緩衝液(pH7.3)30リットルで洗浄した後、2.0M塩化ナトリウムを含む0.02Mリン酸緩衝液(pH7.3)30リットルでAT-IIIを溶出した。ヘパリン−セファロースゲルから溶出したAT-III画分を限外濾過装置(フィルトロン社製、ポアサイズ10K)を用い、5〜10℃で0.1M以下の塩濃度になるよう脱塩し、約2000mlになるまで濃縮した。前記画分を0.01Mのリン酸緩衝液(pH7.0)で約10リットルに希釈した。予め0.01Mのリン酸緩衝液(pH7.0)で平衡化したQ−セファロースFFゲル(ファルマシア製、トリメチルアミノメチル/架橋アガロース)約3400mlに前述の希釈液を5〜10℃で負荷した。次いで、同温度条件下で0.12M塩化ナトリウムを含む0.01Mリン酸緩衝液(pH7.0)を60リットル送液して洗浄した後、0.17M塩化ナトリウムを含む0.01Mのリン酸緩衝液(pH7.0)を30リットル送液しAT-IIIを溶出した。 【0019】この溶出画分をさらに精製するため、再度ヘパリン−セファロースゲル処理を行った。すなわち0.02Mのリン酸緩衝液(pH7.3)で予め平衡化したヘパリンセファロースゲル約3700mlを充填したカラムに、前述のQ−セファロースFFゲルの溶出液を5〜10℃で負荷した。引き続き、同温度条件下でそれぞれ0.3M塩化ナトリウムを含む0.02Mのリン酸緩衝液(pH7.3)30リットルで洗浄した後、2.0M塩化ナトリウムを含む0.02Mリン酸緩衝液(pH7.3)を30リットルでAT-IIIを溶出した。 【0020】ヘパリン−セファロースゲルから溶出した溶液を前述のものと同一の限外濾過装置を用い、10℃以下で濃縮・緩衝液交換を行った。交換緩衝液として、0.07M塩化ナトリウムを含む0.02Mクエン酸緩衝液(pH7.0)を用い、280nmの吸光度にて10になるよう希釈・調製したものを(a)液とした。その(a)液を凍結乾燥し、得られた乾燥品(水分1%)を品温65℃で96時間加熱処理を行った。このようにして得られた乾燥品13gを注射用水325ミリリットルに溶解した。この溶液にL−グルタミン酸ナトリウムを10mg/mlとなるように添加し、ウイルス除去膜(旭化成製、プラノバ(登録商標)35N)処理を実施した。得られた溶液各10mlをバイアル瓶に分注して凍結乾燥し、減圧下(10Pa)に密栓し、AT-III乾燥製剤(A)を得た。 【0021】試験例1乾燥製剤の保存期間、保存温度とAT-IIIの力価の関係乾燥製剤(A)は、それぞれのバイアル瓶3本を遮光下、10℃、25℃および40℃の各温度において0〜27ヶ月保存したものの外観等を観察し、注射用水に溶解して10mlとしたものを試料液とした。ついで、それぞれの試験項目について観察、測定し、数値に関しては3本の平均値を〔表1〕〜〔表3〕に示した。AT-III活性は、生物学的製剤基準記載のAT-III力価測定法により測定した。製造直後の乾燥製剤(A)中の低ヘパリン親和性AT-IIIの含有率は試料液の二次元交叉免疫電気泳動法での沈降線下面積を算出することにより求めたが、検出限界以下であった。なお、二次元交叉免疫電気泳動は、Sasらの方法〔BritishJournal of Haematology 30巻 265−272(1975)〕に従って、42単位/mlのヘパリンナトリウム(SIGMA社製 H−7005)の存在下で1次元目の泳動を、抗AT-III抗体(SIGMA社製 A−8904)の存在下で2次元目の泳動を行った。低ヘパリン親和性AT-IIIはヘパリンの存在下での一次元目の泳動において動きが遅く、ヘパリン親和性AT-IIIよりも陰極側に寄った沈降線として現れる。 【0022】 【表1】
【0023】 【表2】
【0024】 【表3】
【0025】試験例2実施例1に準じて別途調製した乾燥製剤(B)とウイルス不活化を60℃、10時間の液状加熱により実施した市販のAT-III凍結乾燥製剤(C)について、遮光下、55℃,1ヶ月間保持後、性状を観察し、AT-IIIの力価等を測定して、その結果を〔表4〕に示した。なお、製剤(C)は、低ヘパリン親和性AT-IIIの含有率が17%であった。なお、低ヘパリン親和性AT-IIIの含有率は二次元交叉免疫電気泳動法により測定した。 【0026】 【表4】
【0027】〔表1〕〜〔表3〕から明らかなように、本発明の試料(A)は、保存温度10℃、25℃および40℃のいずれの場合においても、性状には全く問題がなく、かつAT-III力価は初期値に対して90%以上の力価を保持していた。また、〔表4〕に示されているように、試料(B)は、55℃、2ヶ月の苛酷条件によっても、AT-IIIの残存力価は殆ど低下しなかったのに対し、試料(C)は同条件で残存力価が90%を割り、長期の保存は困難であることを示した。 【0028】実施例2コーンエタノール分画の上清I約175Lを、0.02Mリン酸緩衝液(pH7.3)で平衡化したヘパリンセファロース6FFゲル3700mlを充填したカラムに4℃で負荷した。引き続き、5〜10℃で0.3Mのリン酸緩衝液(pH7.3)30Lで洗浄後、2.0M塩化ナトリウムを含む0.02Mリン酸緩衝液(pH7.3)30LでAT-IIIを溶出した。この溶出画分を限界濾過装置(フィルトロン社製、ポアサイズ10K)を用い、0.1M以下の塩濃度になるように脱塩し、約2000mlとなるように濃縮した。前記画分を予め0.01Mのリン酸緩衝液(pH7.0)で平衡化したQ−セファロースFFゲル(ファルマシア社製)約3400mlに5〜10℃で負荷した。ついで0.12M塩化ナトリウムを含む0.01Mのリン酸緩衝液(pH7.0)で洗浄後、0.17M塩化ナトリウムを含む0.01Mのリン酸緩衝液(pH7.0)30LでAT-IIIを溶出した。この溶出画分を再度、0.02Mリン酸緩衝液(pH7.3)で平衡化したヘパリンセファロース6FFゲルを3700ml充填したカラムに4℃で負荷した。引き続き、5〜10℃で0.3Mのリン酸緩衝液(pH7.3)30Lで洗浄後、2.0M塩化ナトリウムを含む0.02Mリン酸緩衝液(pH7.3)30LでAT-IIIを溶出した。上記のヘパリンセファロースゲルから溶出したものを前述の限外濾過装置で10℃で0.07M塩化ナトリウムを含む0.02Mクエン酸緩衝液(pH7.0)に置換し、最終濃度として10mg/mlとなるようにL−グルタミ酸ナトリウムを加え(X)液を得た。(X)液を0,5Mクエン酸ナトリウムを含む20mMリン酸緩衝液(pH7.5)に置換後、60℃10時間の液状加熱処理を行い、前述の(X)液を同様の緩衝液組成に再度置換した液を(Y)液とした。さらに(X)液と(Y)液を等量混合した液を(Z)液とした。(X)、(Y)、(Z)の各液は、10mlずつバイアル瓶に充填後、凍結乾燥し、その後密栓して(X)製剤、(Y)製剤、(Z)製剤をそれぞれ得た。 【0029】試験例3低ヘパリン親和性のAT-III含量の違いによる保存期間中のAT-III残存力価への影響を確認するため、低ヘパリン親和性AT-IIIを産生する液状加熱処理を行い、加熱処理をしていないもの及び両者の混合物を調製し、40℃及び55℃での残存力価を検討した。液状加熱処理をしていない上記製剤(X)製剤とウイルス不活化処理として60℃10時間加熱処理を行った(Y)製剤、並びに(X)と(Y)液を等量混合して得られた(Z)製剤について、40℃及び55℃による経時的な保存期間(0〜7ヶ月)後に注射用水10mlを加え、AT-III活性を生物学的製剤基準に記載のAT-III力価測定方法により測定した。その結果を表5および表6に示した。残存力価は、調製直後の保存期間0ヶ月のものを100として所定保存期間後の残存活性を百分率にて示した。低ヘパリン親和性AT-IIIの含有率は、(X)製剤のAT-III活性(ヘパリンのコファクター活性)を100とし、保存試験開始前の(Y)及び(Z)製剤のAT-III活性を測定し、その活性低下率を低ヘパリン親和性AT-III含有率として表示した。なお、(X)製剤の低ヘパリン親和性AT-IIIの含有率は、二次元交叉免疫電気泳動法による測定で検出限界以下であった。 【0030】 【表5】
【0031】 【表6】
表5及び表6から明らかなように、製剤中の低ヘパリン親和性AT-IIIの含有率が高くなるほど残存力価が低下した。この結果は、表4に示す市販の液状加熱処理を行った低ヘパリン親和性のAT-IIIを多く含む試料における残存力価の低下が低ヘパリン親和性AT-IIIによるものであることを示すものである。 【0032】 【発明の効果】本発明によれば、アンチトロンビン−III乾燥製剤を10℃を越え、45℃を越えない、いわゆる常温域を含む温度域で少なくとも2年以上その力価をあまり低下させず保存することができ、また溶解時、無色澄明で可視的異物を認めない溶液が得られる。
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| 【出願人】 |
【識別番号】000231648 【氏名又は名称】日本製薬株式会社 【住所又は居所】東京都千代田区東神田1丁目9番8号
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| 【出願日】 |
平成14年9月24日(2002.9.24) |
| 【代理人】 |
【識別番号】100071973 【弁理士】 【氏名又は名称】谷 良隆
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| 【公開番号】 |
特開2003−171308(P2003−171308A) |
| 【公開日】 |
平成15年6月20日(2003.6.20) |
| 【出願番号】 |
特願2002−277419(P2002−277419) |
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