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【発明の名称】 プリオンタンパク質構造変換阻害剤
【発明者】 【氏名】岩浪 直子

【要約】 【課題】プリオンタンパク質構造変換阻害剤を提供する。

【解決手段】クロロフィル誘導体を含むプリオンタンパク質構造変換阻害剤。特に、クロロフィル誘導体は、マグネシウム、銅、鉄、コバルトから選択される金属、又はアルカリ金属塩、アミン塩、及び水素又は炭化水素とのエステルから選択されるものである。
【特許請求の範囲】
【請求項1】 クロロフィル誘導体を含むプリオンタンパク質構造変換阻害剤。
【請求項2】 クロロフィル誘導体が、マグネシウム、銅、鉄及びコバルトから選択される金属を有するものである請求項1記載の阻害剤。
【請求項3】 金属が銅又は鉄である請求項2記載の阻害剤。
【請求項4】 クロロフィル誘導体が、アルカリ金属塩、アミン塩、及び水素又は炭素数1〜20の炭化水素とのエステルから選択されるものである請求項1記載の阻害剤。
【請求項5】 アルカリ金属塩がナトリウム塩又はカリウム塩である請求項4記載の阻害剤。
【請求項6】 クロロフィル誘導体が銅クロロフィリンナトリウムである請求項1記載の阻害剤。
【発明の詳細な説明】【0001】
【発明の属する技術分野】本発明は、クロロフィル誘導体を含むプリオンタンパク質構造変換阻害剤に関する。
【0002】
【従来の技術】近年、異常型プリオンという病原因子がクローズアップされ、世界を震撼させている。異常型プリオンの性状は不明の点が多いが、核酸の存在が証明できないことにより、DNA又はRNAを持たない感染性蛋白と言われている。この異常型プリオンを病原体とする疾病としては、伝達性海綿状脳症が知られている。伝達性海綿状脳症は、多くの哺乳動物種に見られる神経変性疾患であり、プリオン蛋白質の異常によって起こるプリオン病である。中でも、ヒトにおいてはクールー、クロイツフェルト・ヤコブ病(CJD)、ゲルストマン・シュトロイスラー・シャインカー病(GSS)が、ヒツジやウシなどの家畜反芻動物においてはスクレイピー、牛海綿状脳症(BSE、いわゆる狂牛病)が知られており、現在でも深刻な問題となっている。この伝播性病原体はクールー患者の脳や脊髄に大量存在することが示されており、またCJD、GSSの患者では、同様の伝播性病原体が脳、脾臓、肝臓、リンパ節、肺、脊髄、腎臓、角膜、レンズ、脳脊髄液、血液中で検出されている。
【0003】プリオンは抗体形成のような免疫応答を生じないためワクチンは存在せず、罹患の診断も極めて困難である。プリオンを不活化したり、感染力を減衰させる方法についてはこれまで種々試みられているが、放射線、煮沸、乾熱、化学薬品(ホルマリン、アルコール、アセトン等)などによる従来の不活化法又は感染力減衰法に対しては耐性力が極めて高い。
【0004】狂牛病の牛の脳や脊髄に含まれる異常型プリオンが人体に入ると、体内で正常型プリオンと結合する。そして、正常型プリオンは立体構造の異なる異常型に次々と変換される。従って、正常型プリオンから異常型プリオンへの変換を阻害する物質を探索することが急務となっている。
【0005】
【発明が解決しようとする課題】本発明は、プリオンタンパク質構造変換阻害剤を提供することを目的とする。
【0006】
【課題を解決するための手段】本発明者は、プリオン病に関与する異常型プリオンが、正常型プリオンのタンパク質構造を異常型へと変換する事象に着目し、この変換を阻害する物質をスクリーニングするため鋭意研究を重ねた結果、クロロフィル誘導体がプリオンタンパク質構造変換を阻害することを見出し、本発明を完成するに至った。すなわち、本発明は、クロロフィル誘導体を含むプリオンタンパク質構造変換阻害剤である。上記クロロフィル誘導体としては、例えばマグネシウム、銅、鉄、コバルトなどの金属を有するものが挙げられる。本発明においては、金属が銅又は鉄であることが好ましい。
【0007】また上記クロロフィル誘導体としては、アルカリ金属塩、アミン塩、及び水素若しくは炭素数1〜20の炭化水素とのエステルから選択されるものが挙げられる。本発明においては、塩がアルカリ金属塩であることが好ましく、さらにナトリウム塩又はカリウム塩であることが好ましい。本発明で用いるクロロフィル誘導体として最も好ましいものは、銅クロロフィリンナトリウムである。
【0008】
【発明の実施の形態】以下、本発明を詳細に説明する。本発明は、クロロフィル誘導体の用途に係るものであり、クロロフィル誘導体がプリオンタンパク質構造変換を阻害することに着目して完成されたものである。本発明においては、クロロフィル誘導体を投与することにより、プリオンタンパク質構造変換を阻害し、異常型プリオンが関与するプリオン病の発症を予防又は治療するものである。
【0009】1.プリオンタンパク質構造変換阻害物質のスクリーニング本発明者は、プリオンタンパク質構造変換阻害物質を特定するために3工程からなる探索方法を実施した。ここで、「プリオンタンパク質構造変換」とは、正常型プリオンから異常型プリオンへのタンパク質構造の変化を指し、この構造変換は、正常型プリオンと異常型プリオンとが結合することにより起こることが知られている。従って、正常型プリオンと異常型プリオンとの結合を阻害すれば、プリオンタンパク質の正常型から異常型への変化を防止することができる。
【0010】以下に上記探索方法の概略を示す。第1工程では、プリオンペプチド106-126に結合する物質をスクリーニングし、第2工程では、スクリーニングされた物質のプリオンペプチドに対する結合選択性を評価し、第3工程では、プリオンタンパク質の正常型から異常型への変換に対する阻害効果を評価する。以上の工程によ正常型プリオンタンパク質と異常型プリオンタンパク質との相互作用部位に結合することによりタンパク質間の相互作用を阻害する物質、すなわちプリオンタンパク質構造変換阻害物質が特定される。
【0011】(1)プリオンペプチド106-126に結合する物質のスクリーニング第1工程では、イムノアッセイ法によりプリオンペプチド106-126に結合する物質をスクリーニングする。「スクリーニング」とは、プリオンタンパク質構造変換阻害物質、すなわちプリオンタンパク質の正常型構造から異常型構造への変換を阻害する物質の候補を選択する工程を意味し、無数の被検物質をふるい分けて候補物質を絞り込む工程である。ここで、被検物質が結合すべき相手となるペプチドは、プリオンペプチド106-126であり、21個のアミノ酸配列を有するものである(KTNMKHMAGAAAAGAVVGGLG:配列番号1)。このペプチドは、通常のペプチド合成により、あるいはペプチド合成装置により、化学合成することが可能である。
【0012】スクリーニングの対象となる物質は、天然のあらゆる物質が挙げられ、また人工的に作製された物質でもよい。天然の物質としては、例えば植物成分、カビの培養成分、放線菌の培養成分等が挙げられる。人工的に作製した物質としては、化学合成品、医薬品等が挙げられる。イムノアッセイ法としては、ELISA(enzyme-linked immunosorbent assay)法、RIA(radioimmunoassay)法、EIA(enzymeimmunoassay)法等が挙げられ、特に限定するものではないが、ELISA法が好ましい。例えば、固相にプリオンペプチドを固定した後、被検物質を添加してプリオンペプチドと反応させ、さらに抗プリオン抗体3F4を添加するというサンドイッチ式のアッセイを行うことができる。
【0013】(2)プリオン結合物質の結合選択性の評価第2工程は、上記の通りスクリーニングされた候補物質が、プリオンに選択的に結合するか否かを評価する工程である。この段階における結合物質の結合選択性は、分子間相互作用解析装置を用いて評価することができる。分子間相互作用は、表面プラズモン共鳴(Surface Plasmon Resonance, SPR)の光学原理を利用した検出系による解析法を利用して解析することができる。生体分子間相互作用解析には、IAsys(日立ハイテクノロジーズ社)、BIACORE(ビアコア社)などの解析装置を使用してもよい。
【0014】SPRの検出系は、2分子間の結合と解離に伴なってセンサーチップ表面で生じる微量な質量変化をSPRシグナルとして検出するものである。生体分子の固定化されていない側の金薄膜に光を全反射するように当てると、反射光の一部に反射光強度が低下した部分が観察される(SPRシグナル発生)。この光の暗い部分の現れる角度、すなわち屈折率の変化はセンサーチップ上での質量に依存するため、センサーチップ表面上でリガンドとアナライトとの結合反応が起こると質量変化(質量増)が生じ、角度がシフトする。1mm2あたり1ngの物質が結合すると0.1度シフトすることが知られている。生体分子間相互作用解析装置では、角度がシフトする量、すなわちセンサーチップ表面での質量変化を縦軸にとり、質量の時間変化を測定データとして表示する(センサーグラム)。縦軸の単位は、Resonance Unit(RU、レゾナンスユニット)で表され、1RU=1pg/mm2に相当する。この屈折率変化の割合は、すべての生体分子(タンパク質・核酸・脂質)で実質的に同じであり、生体分子標識することなく、相互作用をリアルタイムで観察することができる。
【0015】本発明において、候補物質がプリオンペプチドに選択的に結合したといえるための評価基準は以下の通りである。
(1) プリオンペプチドの質量変化曲線が平衡に達した時点(例えば図1の10分)において、プリオンペプチド及びスクランブルペプチドの質量を比較したときに、プリオンペプチドの値(質量)がスクランブルペプチドの値よりも高い場合は、候補物質はプリオンペプチドに選択的に結合したと評価する。
【0016】(2) プリオンペプチドの質量変化曲線が平衡に達した時点において、プリオンペプチド及びスクランブルペプチドの質量を比較したときに、プリオンペプチドの値(質量)がスクランブルペプチドの値と同程度あるいは低い場合は、候補物質はプリオンペプチドに選択的に結合しなかったと評価する。ここで、スクランブルペプチドとは、プリオンペプチドの対照物質となるように、プリオンペプチドのアミノ酸配列の一部を置換したペプチドを意味し、配列は「ANAGLKMGAGVHMGVTAKAGA」で示される(配列番号2)。
【0017】(3)プリオンタンパク質の正常型から異常型への変換に対する阻害効果第3工程では、第2工程において評価された評価に適合する候補物質、すなわちプリオンタンパク質に選択的に結合すると評価された候補物質が、正常型プリオンタンパク質が異常型プリオンタンパク質に変換される現象を阻害する効果を有するか否かについて、海綿状脳症細胞を用いたアッセイ系により評価する。このアッセイ系には、例えばウエスタンブロッティング法を採用することができる。第3工程において使用する海綿状脳症細胞としては、スクレイピー持続感染細胞等が挙げられる。
【0018】マウスプリオンタンパク質、及び抗プリオンタンパク質抗体3F4のエピトープが発現するように、組換えベクターを作製し、該ベクターを上記細胞に感染させる。感染後、細胞を溶解しプロテイナーゼK(proteinase K)処理後、ペレットを得るこれを電気泳動にかけてウエスタンブロッティングを行う。正常型から異常型への構造変換を阻止する物質が存在しない場合は、細胞内にプロテイナーゼK処理に対し部分耐性がある異常型プリオンが蓄積するため、ウエスタンブロッティングにより異常型プリオンに対応するバンドが検出される。これに対し、構造変換を阻止する物質が存在する場合は、プロテイナーゼK処理によりプリオンタンパク質は分解されるため、異常型プリオンに対応するバンドは検出されない。従って、バンドが検出されなかったときの被検物質が、正常型から異常型への構造変換を阻止する物質であると判断することができる。
【0019】上記探索方法を実施した結果、特にクロロフィル誘導体にプリオンタンパク質構造変換阻害作用があることを確認した。従って、本発明者は、上記スクリーニングにより、クロロフィル誘導体をプリオンタンパク質構造変換阻害物質と特定した。
【0020】2.クロロフィル誘導体クロロフィル誘導体とは、一般的に下記の式Iで表されるものである。
【化1】

【0021】〔式中、Xは、マグネシウム、銅、鉄又はコバルトを表し、Yは、アルカリ金属、アミン、水素、又は直鎖状若しくは分枝状の炭素数1〜20の炭化水素を表し、Zは、アルカリ金属、アミン、水素、又は直鎖状若しくは分枝状の炭素数1〜20の炭化水素を表し、Rは、メチル基、エチル基、アルデヒド基等を表す。〕
【0022】本発明で使用するクロロフィル誘導体としては、金属(X)がマグネシウム、銅、鉄又はコバルトのものが挙げられる。また本発明で使用するクロロフィル誘導体としては、アルカリ金属塩、アミン塩、水素若しくは炭素数1〜20の炭化水素とのエステルのものが挙げられる。本発明では、特に金属が銅又は鉄であり、アルカリ金属塩のクロロフィル誘導体が好ましい。また、銅クロロフィリンナトリウムが最も好ましい。しかしながら本発明で使用可能なクロロフィル誘導体は、上記例示したものに限定されない。
【0023】クロロフィル誘導体は、当技術分野で公知の手法を用いて調製することができる。例えば、クロロフィルは、緑色植物のアルコール抽出及び抽出物のクロマトグラフィーによる分離により得ることができ、このクロロフィルをアルカリで加水分解することにより水溶性のクロロフィリンに変換することができる。緑色植物由来のクロロフィル誘導体は金属としてマグネシウムを有するものであり、この金属は、銅塩溶液及び鉄塩溶液を用いることによりそれぞれ銅及び鉄に変換することができる。具体的な化合物を挙げて説明すると、例えば銅クロロフィリンナトリウムは、緑色植物由来の銅クロロフィルをエーテルで溶解し、5〜10%の炭酸ソーダ水溶液でアルカリ塩にすることにより得られる。また、クロロンG(日本葉緑素)などの市販品を用いてもよい。
【0024】3.プリオンタンパク質構造変換阻害剤本発明のプリオンタンパク質構造変換阻害剤は、上記クロロフィル誘導体を含むことを特徴とする。本発明のプリオンタンパク質構造変換阻害剤は、異常型プリオンタンパク質が原因で発症する疾患、例えばクロイツフェルト・ヤコブ病の予防又は治療に有用である。
【0025】従って、本発明の阻害剤を上記疾患の予防又は治療を目的とした医薬組成物として使用する場合は、医薬的に許容される担体又は添加物を共に含むものであってもよい。このような担体及び添加物の例としては、水、医薬的に許容される有機溶剤、コラーゲン、ポリビニルアルコール、ポリビニルピロリドン、カルボキシビニルポリマー、アルギン酸ナトリウム、水溶性デキストラン、カルボキシメチルスターチナトリウム、ペクチン、キサンタンガム、アラビアゴム、カゼイン、ゼラチン、寒天、グリセリン、プロピレングリコール、ポリエチレングリコール、ワセリン、パラフィン、ステアリルアルコール、ステアリン酸、ヒト血清アルブミン、マンニトール、ソルビトール、ラクトース、医薬添加物として許容される界面活性剤などの他、リポゾームなどの人工細胞構造物などが挙げられる。使用される添加物は、医薬組成物の剤形に応じて上記の中から適宜又は組み合わせて選択される。本発明のプリオンタンパク質構造変換阻害剤は、経口的又は非経口的に投与することができる。
【0026】上記プリオンタンパク質構造変換阻害剤を経口的に投与する場合は、それに適用される錠剤、顆粒剤、散剤、丸剤などの固形製剤、あるいは液剤、シロップ剤などの液体製剤等とすればよい。特に顆粒剤及び散剤は、カプセル剤として単位投与剤形とすることができ、液体製剤の場合は使用する際に再溶解させる乾燥生成物にしてもよい。これら剤形のうち経口用固形剤は、通常それらの組成物中に製剤上一般に使用される結合剤、賦形剤、滑沢剤、崩壊剤、湿潤剤などの添加剤を含有する。また、経口用液体製剤は、通常それらの組成物中に製剤上一般に使用される安定剤、緩衝剤、矯味剤、保存剤、芳香剤、着色剤などの添加剤を含有する。
【0027】本発明のプリオンタンパク質構造変換阻害剤を非経口的に投与する場合には、注射剤又は坐剤等とすることができる。注射の場合は、通常単位投与量アンプル又は多投与量容器の形態で提供され、使用する際に適当な担体、例えば発熱物質不含の滅菌した水で再溶解させる粉末であってもよい。これらの剤形は、通常それらの組成物中に製剤上一般的に使用される乳化剤、懸濁剤などの添加剤を含有する。注射手法としては、例えば点滴静脈注射、静脈内注射、筋肉内注射、腹腔内注射、皮下注射、皮内注射、局所注射などが挙げられる。
【0028】上記プリオンタンパク質構造変換阻害剤におけるクロロフィル誘導体量は、当業者であれば適切な量を決定することができる。また、クロロフィル誘導体量の有効量と適切な希釈剤及び薬理学的に使用しうる担体との組み合わせとして投与される有効量は、投与対象の年齢及び体重、投与経路、投与回数により異なり、広範囲に変えることができる。
【0029】本発明のプリオンタンパク質構造変換阻害剤を投与する対象としては、既に異常型プリオンに感染している動物であってもよいし、又は感染していない正常動物であってもよい。該動物としては、限定するものではないが、哺乳動物が挙げられ、特にヒト、ウシ、ヒツジ、マウスなどでありうる。
【0030】さらに本発明のプリオンタンパク質構造変換阻害剤は、医薬としての用途に限定されず、例えばヒトの食料又は動物の飼料中に配合されてもよい。従って、クロロフィル誘導体が配合された食料又は飼料は、プリオンタンパク質構造変換を阻害するための健康補助食品として有用である。食料又は飼料に配合するプリオンタンパク質構造変換阻害剤の量は、対象となる動物、所望の効果などに応じて変更することができる。さらに本発明のプリオンタンパク質構造変換阻害剤は、上述のように動物に投与してもよいし、その他、例えば医薬品開発又はプリオンタンパク質構造変換機構の解明のためのプローブとしても利用可能である。
【0031】
【実施例】以下、実施例により本発明をさらに具体的に説明する。但し、本発明は下記実施例にその技術的範囲が限定されるものではない。
〔実施例1〕プリオンペプチドの調製プリオンペプチド(106-126)及びスクランブルペプチドは、それぞれ下記の配列を有するものであり、これをペプチド合成機にて合成した後、HPLCで精製することにより調製した。
プリオンペプチド(106-126):KTNMKHMAGAAAAGAVVGGLG(配列番号1)
スクランブルペプチド:ANAGLKMGAGVHMGVTAKAGA(配列番号2)
【0032】〔実施例2〕 プリオンタンパク質結合物質検出のための第1段階スクリーニングペプチドコーティングキット(Takara社)付属のELISAプレート上に、該キット添付のプロトコールに従って、実施例1で調製したプリオンペプチドを固定化した後該キット付属のブロッキング剤によりブロッキングを行った洗浄後サンプル溶液を添加し室温にて1時間インキュベートしたなお、本実施例ではサンプルとして薬用植物、放線菌、カビ培養物、及びクロロフィル誘導体、ポルフィリン誘導体など全部で約千数百種類行った。
【0033】サンプルを洗浄除去後、抗プリオン抗体3F4溶液(SENETEK社)を添加し37℃にて1時間インキュベートしその後各ウェルをよく洗浄した続いて、ペルオキシダーゼ標識抗マウス抗体溶液(Sigma社)を添加し37℃にて1時間インキュベートした。各ウェルをよく洗浄後オルトフェニレンジアミン過酸化水素溶液を添加し暗所下室温にて30分間インキュベートし発色させた3 M 塩酸(発色溶液の1/4倍量)を添加して発色反応を停止後プレートリーダーを用いて492nmの吸光度を測定したサンプル溶液無添加時の値を0%抗プリオン抗体無添加時の値を100%として抗プリオン抗体結合阻害度を算出した。ELISAアッセイの発色が抑制された物質をプリオンペプチド結合物質として、下記実施例3の第2工程で使用した。
【0034】〔実施例3〕プリオンペプチドへの選択的結合分子間相互作用解析装置IAsys(日立ハイテクノロジーズ社)を用い添付のプロトコールに従って、1-エチル-3-(3-ジメチルアミノプロピル)カルボジイミド(EDC)とN-ヒドロキシスクシンイミド(NHS)により活性化したCMデキストランキュベットのセンサー表面に30mg/mlアジポイルジヒドラジド50μlを添加し室温で1時間反応させてセンサー表面に固定化した。続いて1Mエタノールアミンで5分間処理しブロッキングしたこれに上記実施例1で調製したプリオンペプチド又はスクランブルペプチド50μlを添加し、EDCと共に処理することによりC末端をセンサー表面に固定化した実施例2で得られたプリオンペプチド結合物質溶液をキュベットに添加し、プリオンペプチド結合物質とプリオンペプチド又はスクランブルペプチドとの結合及び解離を分子間相互作用測定装置(Iasys) によりモニターすることにより測定した。上記プリオンペプチド結合物質とプリオンペプチドとの結合・解離曲線は、スクランブルペプチドのそれを大きく上回り、該物質がプリオンペプチドに選択的に結合する物質が存在することが示された。
【0035】〔実施例4〕クロロフィル誘導体の調製上記実施例3で得られたプリオンペプチド選択的結合物質の性質を調べてみたところ、400 nm付近にUV吸収を示し、UV照射時に赤い蛍光を発することがわかった。この性質は、クロロフィル、ポルフィリン構造を持つ物質の特徴である。そのため、市販のクロロフィル誘導体及びポルフィリン誘導体を入手し、これらの化合物について実施例2の試験を行った。試験したクロロフィル誘導体及びポルフィリン誘導体は、クロロフィルa、クロロフィルb、銅クロロフィル、銅クロロフィリンナトリウム、鉄クロロフィリンナトリウム、ヘミン、ジュウテロポルフィリンIXジメチルエステル、5,10,15,20-テトラキス(4-メトキシフェニル)-21H,23H-ポリフィリン、及び2,3,7,8,12,13,17,18-オクタエチル-21H,23H-ポルフィリンであり、試験結果を表1に示す。
【0036】
【表1】

【0037】表1において、*印は阻害作用が小さいが作用があることを意味し、*印が2つの場合は、40%程度の阻害、*印が3つの場合は60%程度の阻害、*印が4つの場合は80%程度の阻害、*印が5つの場合はほぼ完全に阻害することを意味する。
【0038】表1の結果から、3種のクロロフィル誘導体(クロロフィルb、銅クロロフィリンナトリウム及び鉄クロロフィリンナトリウム)がプリオンペプチドに結合することが判明した。続いて、実施例3の試験を行い、この3種のクロロフィル誘導体が選択的にプリオンペプチドに結合することを確認した(図1)。図1において、矢印で指した曲線がプリオンペプチドの質量変化曲線である。
【0039】〔実施例5〕プリオンタンパク質構造変換阻害作用最初に、マウスプリオンタンパク質(配列番号3)に3F4エピトープ配列を組み込んだMo3F4遺伝子配列を調製し、このMo3F4遺伝子配列をpSPOXベクターに組み込んでpSPOX/Mo3F4プラスミドを作製した。このベクターを、DOTAP(N-[1-(2,3-ジオレオイルオキシ)プロピル]-N,N,N-トリメチルアンモニウムメチルスルフェート)リポソームトランスフェクション試薬(Boehringer Mannheim)を用いて、スクレイピー持続感染細胞ScN2aにトランスフェクションしたトランスフェクト細胞は、上記実施例4で得られた3種のクロロフィル誘導体及びミント活性画分(Menthae herbaから抽出したもの)の溶液10μg/mlを添加したDMEM培地中で37℃にて3日間培養した。3日後溶解バッファー(10mM Tris-HCl,pH 7.5/100 mM NaCl/l mM EDTA/0.5 % Triton-X/0.5 %デオキシコール酸ナトリウム)にて細胞を溶解し続いて5μg/ml プロテイナーゼKを添加して37℃にて15分間インキュベートした。プロテイナーゼKを添加すると、正常型プリオンは分解されるが、異常型プリオンは分解されない。最終濃度が2 mMとなるようにPefabloc(Roche)を添加して分解反応を停止した。その後100,000gにて1時間超遠心しペレットを得た該ペレットを1×SDS ローディングバッファーに懸濁し、100℃にて10分間加熱し15% SDS-PAGE ゲルにて電気泳動した。常法にてウェスタンブロッテイングを行い3F4抗体とECLプラスウエスタンブロッティング検出システム(Amersham)を用いて、Mo3F4プリオンタンパク質を検出した。本実施例では、正常型であればプロテイナーゼKにより分解され、異常型であれば分解されずに検出されることを利用する。この結果を図2に示す。プロテイナーゼKを添加しなかった場合には、全ての試験群においてバンドが認められた(図2A)。プロテイナーゼKを添加した場合には、化合物を添加していないコントロールでは、異常型プリオン蓄積によるプロテイナーゼK耐性のバンドが検出されたが、ミント活性画分、銅クロロフィリンナトリウムを添加した場合には、このバンドが消失し、異常型へのタンパク質構造変換が阻害されたことが示された(図2B)。
【0040】
【発明の効果】本発明により、プリオンタンパク質構造変換阻害剤が提供される。本発明のプリオンタンパク質構造変換阻害剤は、プリオン病の予防及び治療、並びにプリオンタンパク質構造変換機構の解明に有用である。
【0041】
【配列表】
SEQUENCE LISTING <110> RIKEN<120> Inhibitor for the transformation of the prion protein structure<130> RJH13-132N<140><141><160> 3 <170> PatentIn Ver. 2.0<210> 1<211> 21<212> PRT<213> Artificial Sequence<220> <223> Description of Artificial Sequence: synthetic peptide<400> 1Lys Thr Asn Met Lys His Met Ala Gly Ala Ala Ala Ala Gly Ala Val 1 5 10 15 Val Gly Gly Leu Gly 20 <210> 2<211> 21<212> PRT<213> Artificial Sequence<220> <223> Description of Artificial Sequence: synthetic peptide<400> 2Ala Asn Ala Gly Leu Lys Met Gly Ala Gly Val His Met Gly Val Thr 1 5 10 15 Ala Lys Ala Gly Ala 20 <210> 3<211> 254<212> PRT<213> Mus musculus<400> 3Met Ala Asn Leu Gly Tyr Trp Leu Leu Ala Leu Phe Val Thr Met Trp 1 5 10 15 Thr Asp Val Gly Leu Cys Lys Lys Arg Pro Lys Pro Gly Gly Trp Asn 20 25 30 Thr Gly Gly Ser Arg Tyr Pro Gly Gln Gly Ser Pro Gly Gly Asn Arg 35 40 45 Tyr Pro Pro Gln Gly Gly Thr Trp Gly Gln Pro His Gly Gly Gly Trp 50 55 60 Gly Gln Pro His Gly Gly Ser Trp Gly Gln Pro Pro Gly Gly Ser Trp 65 70 75 80Gly Gln Pro His Gly Gly Gly Trp Gly Gln Gly Gly Gly Thr His Asn 85 90 95 Gln Trp Asn Lys Pro Ser Lys Pro Lys Thr Asn Leu Lys His Val Ala 100 105 110 Gly Ala Ala Ala Ala Gly Ala Val Val Gly Gly Leu Gly Gly Tyr Met 115 120 125 Leu Gly Ser Ala Met Ser Arg Pro Met Ile His Phe Gly Asn Asp Trp 130 135 140 Glu Asp Arg Tyr Tyr Arg Glu Asn Met Tyr Arg Tyr Pro Asn Gln Val 145 150 155 160Tyr Tyr Arg Pro Val Asp Gln Tyr Ser Asn Gln Asn Asn Phe Val His 165 170 175 Asp Cys Val Asn Ile Thr Ile Lys Gln His Thr Val Thr Thr Thr Thr 180 185 190 Lys Gly Glu Asn Phe Thr Glu Thr Asp Val Lys Met Met Glu Arg Val 195 200 205 Val Glu Gln Met Cys Val Thr Gln Tyr Gln Lys Glu Ser Gln Ala Tyr 210 215 220 Tyr Asp Gly Arg Arg Ser Ser Ser Thr Val Leu Phe Ser Ser Pro Pro 225 230 235 240Val Ile Leu Leu Ile Ser Phe Leu Ile Phe Leu Ile Val Gly 245 250 【0042】
【配列表フリーテキスト】配列番号1:合成ペプチド配列番号2:合成ペプチド
【出願人】 【識別番号】000006792
【氏名又は名称】理化学研究所
【出願日】 平成13年11月16日(2001.11.16)
【代理人】 【識別番号】100091096
【弁理士】
【氏名又は名称】平木 祐輔 (外2名)
【公開番号】 特開2003−155239(P2003−155239A)
【公開日】 平成15年5月27日(2003.5.27)
【出願番号】 特願2001−352189(P2001−352189)