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【発明の名称】 インターフェロンγ産生促進剤
【発明者】 【氏名】國方 敏夫
【住所又は居所】岡山県岡山市下石井1丁目2番3号 株式会社林原生物化学研究所内

【氏名】石原 達也
【住所又は居所】岡山県岡山市下石井1丁目2番3号 株式会社林原生物化学研究所内

【氏名】栗本 雅司
【住所又は居所】岡山県岡山市下石井1丁目2番3号 株式会社林原生物化学研究所内

【要約】 【課題】生体へ安全に適用し得るインターフェロンγ産生促進剤とその用途を提供する。

【解決手段】三核型ポリメチン系シアニン色素を含んでなるインターフェロンγ産生促進剤と、そのインターフェロンγ産生促進剤を免疫担当細胞へ作用させる工程を含むインターフェロンγの産生方法を提供することによって前記課題を解決する。
【特許請求の範囲】
【請求項1】 三核型ポリメチン系シアニン色素を含んでなるインターフェロンγ産生促進剤。
【請求項2】 三核型ポリメチン系シアニン色素が一般式1又は一般式2のいずれかで表される請求項1に記載のインターフェロンγ産生促進剤。
【化1】

(一般式1において、R乃至Rは互いに同じか異なる脂肪族炭化水素基を表す。Xは生理学的に許容し得るアニオンを表す。)
【化2】

(一般式1において、R乃至Rは互いに同じか異なる脂肪族炭化水素基を表す。Xは生理学的に許容し得るアニオンを表す。)
【請求項3】 インターフェロンγ感受性疾患剤としての請求項1又は2に記載のインターフェロンγ産生促進剤。
【請求項4】 経口経路で生体へ適用される請求項1、2又は3に記載のインターフェロンγ産生促進剤。
【請求項5】 請求項1乃至4のいずれかに記載のインターフェロンγ産生促進剤を免疫担当細胞へ作用させる工程を含むインターフェロンγの産生方法。
【発明の詳細な説明】【0001】
【発明の属する技術分野】この発明はインターフェロンγ産生促進剤に関するものであり、とりわけ、三核型ポリメチン系シアニン色素を有効成分とする、生体へ直接適用し得る新規なインターフェロンγ産生促進剤に関するものである。
【0002】
【従来の技術】インターフェロンγ(以下、「IFN−γ」と略記する。)は、抗ウイルス作用、抗腫瘍作用、免疫調節作用などの多様な生理作用を有する蛋白質として知られ、抗原やマイトジェンにより刺激を受けた免疫担当細胞が産生すると言われている。これらの生理作用ゆえに、IFN−γは発見当初から抗ウイルス剤、抗腫瘍剤としての実用化が鶴首され、現在でも脳腫瘍をはじめとする悪性腫瘍一般の治療剤として精力的に臨床試験が進められている。現在入手し得るIFN−γは、免疫担当細胞が産生する天然型のものと、IFN−γ遺伝子により形質転換した大腸菌などが産生する組換え型のものとに分類され、上記した臨床試験においては、これらのうちのいずれかが「外来IFN−γ」として患者に適用されている。
【0003】このうち、天然型IFN−γは、通常、培養株化された免疫担当細胞をIFN−γ産生促進剤を含む培地で培養した後、培養物を精製して調製されている。この調製方法では、IFN−γ産生促進剤の種類がIFN−γの産生量や精製し易さ、さらには、製品の安全性などへ多大の影響をおよぼすと言われており、通常、コンカナバリンA、レンズ豆レクチン、アメリカヤマゴボウレクチン、エンドトキシン、リポ多糖などのマイトジェンが頻用される。ところが、これらの物質は、いずれも分子に多様性があり、給源や精製方法によって品質が変動し易く、IFN−γ産生促進能が一定した調製品を所望量入手し難いという問題があった。加えて、これらの物質の多くは、生体内において重篤な副作用を惹起したり、物質によっては毒性を有するものすらあり、生体へ直接適用してIFN−γの産生を促進することができなかった。
【0004】
【発明が解決しようとする課題】斯かる状況に鑑み、この発明の課題は、生体へ安全に適用し得るIFN−γ産生促進剤を提供することにある。
【0005】
【課題を解決するための手段】本発明者がポリメチン系シアニン色素に着目し、鋭意研究し、検索したところ、ポリメチン系シアニン色素の1種である三核型ポリメチン系シアニン色素は、免疫担当細胞においてIFN−γの産生を有意に促進するうえに、生体へ直接適用しても毒性や重篤な副作用を示さないことを見出した。
【0006】すなわち、この発明は、三核型ポリメチン系シアニン色素を含んでなるIFN−γ産生促進剤を提供することによって前記課題を解決するものである。
【0007】さらに、この発明は、斯かるIFN−γ産生促進剤を免疫担当細胞へ作用させる工程を含むIFN−γの産生方法を提供することによって前記課題を解決するものである。
【0008】三核型ポリメチン系シアニン色素自体は公知の物質であり、例えば、速水正明監修、『感光色素』、1997年10月17日、産業図書株式会社発行、138乃至154頁などに記載されているように、長年、貧血、食欲不振、虚弱体質、倦怠、湿疹、創傷、熱傷、凍傷、化膿性疾患、神経性疾患などの治療に用いられてきた。しかしながら、三核型ポリメチン系シアニン色素が免疫担当細胞においてIFN−γの産生を促進することを教示したり示唆する文献は存在せず、三核型ポリメチン系シアニン色素を含んでなるIFN−γ産生促進剤はこの発明をもって嚆矢とする。
【0009】
【発明の実施の形態】以下、この発明の実施の形態について説明すると、既述のとおり、この発明は三核型ポリメチン系シアニン色素を含んでなるIFN−γ産生促進剤に関するものである。この発明でいう三核型ポリメチン系シアニン色素とは、トリメチン鎖、ペンタメチン鎖、ヘプタメチン鎖などのポリメチン鎖の両端及びメソ位に、例えば、チアゾール骨格、キノリン骨格などを有する互いに同じか異なる複素環基がそれぞれ結合してなる有機色素化合物全般を意味する。この発明は、既述のとおり、三核型ペンタメチン系シアニン色素が免疫担当細胞においてIFN−γの産生を促進するという独自の知見に基づくものであり、したがって、いかなる構造の三核型ポリメチン系シアニン色素(以下、単に「シアニン色素」と略記することがある。)であっても、それが生体内又は生体外で免疫担当細胞におけるIFN−γの産生を有意に促進し得るものであるかぎり、この発明において有利に用いることができる。
【0010】好ましいシアニン色素としては、例えば、一般式1及び一般式2で表されるものが挙げられる。
【0011】
【化3】

【0012】
【化4】

【0013】一般式1において、R乃至Rは互いに同じか異なる脂肪族炭化水素基を表す。R乃至Rおける脂肪族炭化水素基としては、例えば、メチル基、エチル基、プロピル基、イソプロピル基、ブチル基、イソブチル基、sec−ブチル基、tert−ブチル基、ペンチル基、イソペンチル基、ネオペンチル基、tert−ペンチル基などの、直鎖状又は分岐を有する炭素数5までの短鎖長脂肪族炭化水素基が挙げられ、このうち、R乃至Rがすべてメチル基、エチル基又はプロピル基のいずれかであるものは、廉価に調製し得るうえに、生体への親和性が大きいので特に好ましい。
【0014】一般式2において、R乃至Rは互いに同じか異なる脂肪族炭化水素基を表す。R乃至Rにおける脂肪族炭化水素基としては、例えば、プロピル基、イソプロピル基、ペンチル基、イソペンチル基、ネオペンチル基、tert−ペンチル基、1−メチルペンチル基、2−メチルペンチル基、ヘキシル基、イソヘキシル基、5−メチルヘキシル基、ヘプチル基、オクチル基、ノニル基、デシル基などの炭素数4乃至10の、直鎖状又は分岐を有する中鎖長脂肪族炭化水素基が挙げられる。このうち、R乃至Rがすべて直鎖状のヘキシル基、ヘプチル基又はオクチル基のいずれかであるものは、廉価に調製し得るうえに、生体への親和性が大きいので特に好ましい。
【0015】一般式1及び一般式2において、X及びXは生理学的に許容し得るアニオンを表し、通常、例えば、弗素イオン、塩素イオン、臭素イオン、沃素イオン、過塩素酸イオンなどのハロゲンアニオン、硫酸イオン、硝酸イオン、燐酸イオンなどの無機酸アニオン、酢酸イオン、プロピオン酸イオン、安息香酸イオン、p−トルエンスルホン酸イオン、ベンゼンスルホン酸イオン、ニコチン酸イオン、オロト酸イオンなどの有機酸アニオンなどが採用され、このうち、弗素イオン、塩素イオン、臭素イオン、沃素イオンなどのハロゲンアニオンが好ましく、特に好ましいのは沃素イオンである。
【0016】この発明で用いるシアニン色素の具体例としては、例えば、化学式1及び化学式2で表されるものが挙げられる。これらは、いずれも、免疫担当細胞においてIFN−γの産生を安定して促進するうえに、かつ、生体内において毒性や重篤な副作用を示さないので、この発明において極めて有用である。
【0017】
【化5】

【0018】
【化6】

【0019】斯かるシアニン色素は、公知の方法によるか、あるいは、公知の方法に準じて所望量を得ることができる。例えば、化学式1及び化学式2で表されるシアニン色素は、例えば、前掲の速水正明監修、『感光色素』、1997年10月17日、産業図書株式会社発行、24乃至30頁に記載された方法か、あるいは、それらの方法に準じて所望量を得ることができる。シアニン色素の市販品がある場合には、必要に応じて、それを適宜精製したうえで用いればよく、例えば、化学式1及び化学式2で表されるシアニン色素の市販品としては、それぞれ、『NK−4』及び『NK−19』(いずれも、株式会社林原生物化学研究所製造)として販売されているものが挙げられる。
【0020】次に、この発明によるIFN−γ産生促進剤の用途について説明すると、既述のとおり、この発明で用いるシアニン色素は、免疫担当細胞においてIFN−γの産生を促進する性質を具備することから、斯かるシアニン色素を含んでなるこの発明のIFN−γ産生促進剤は、例えば、細胞培養法によりIFN−γを製造する際に、培養培地へ共存させることによって、免疫担当細胞においてIFN−γの産生を促進するためのIFN−γ産生促進剤として有用である。さらに、この発明のIFN−γ産生促進剤は、生体へ直接適用しても毒性や重篤な副作用を示さないことから、諸種のIFN−γ感受性疾患を治療・予防するためのIFN−γ感受性疾患剤としても有用である。
【0021】この発明によるIFN−γ産生促進剤を用いてIFN−γを産生させるには、この発明によるIFN−γ産生促進剤の有効量を免疫担当細胞へ作用させればよい。具体的には、例えば、哺乳類の末梢血やリンパ液を構成する免疫担当細胞である白血球、リンパ球などの血球や、KG−1細胞(ATCC CCL−246)、Mo細胞(ATCC CRL−8066)、Jurkat細胞(ATCCTIB−52)、HuT78細胞(ATCC TIB−161)、EL4細胞(ATCC TIB−39)などの培養株化された免疫担当細胞を、この発明によるIFN−γ産生促進剤を1乃至10,000μg/ml、好ましくは、10乃至1,000μg/ml含む温度30乃至40℃に予温しておいた汎用の培養培地へ浮遊させる。さらに、必要に応じて、培養培地へ、例えば、マイトジェン、インターロイキン2、インターロイキン12、抗CD3抗体などのT細胞刺激物質を加えた後、培養培地を温度30乃至40℃、pH5乃至8に保ちつつ、必要に応じて、培養培地を新鮮なものと定期的に取り替えながら、通常一般の方法により1乃至100時間培養する。
【0022】斯くして得られた培養物からIFN−γを採取するには、培養物へ、例えば、透析、塩析、傾斜、濾過、濃縮、分別沈澱、ゲル濾過クロマトグラフィー、イオン交換クロマトグラフィー、疎水クロマトグラフィー、アフィニティークロマトグラフィー、クロマトフォーカシング、ゲル電気泳動、等電点電気泳動などの生理活性蛋白質を精製するための汎用の方法を適用すればよく、必要に応じて、これらの方法は適宜組み合わせて適用される。
【0023】一方、この発明のIFN−γ産生促進剤をIFN−γ感受性疾患剤として用いる後者の用途においては、この発明によるIFN−γ産生促進剤の有効量を生体へ直接適用する。この発明でいうIFN−γ感受性疾患とは、IFN−γが生体内で病因へ直接又は間接に作用して治療及び/又は予防し得る疾患全般を意味するものとし、個々の疾患としては、例えば、肝炎、口内炎、ヘルペス症、尖圭コンジロム、後天性免疫不全症候群(AIDS)などのウイルス性疾患、カンジダ症、マラリヤ症、薬剤耐性結核、非定形抗酸菌感染症などの細菌感染症、皮膚癌、腎細胞癌、肺小細胞癌、菌状息肉腫、悪性黒色腫、慢性肉芽種、神経芽細胞腫などの固形悪性腫瘍、成人T細胞白血病、慢性骨髄性白血病、悪性リンパ腫などの血球系悪性腫瘍、アトピー性皮膚炎、慢性関節リウマチなどの免疫疾患、さらには、ケロイド、骨化石症、スーパーオキシドジスムターゼ欠損症などを挙げることができる。
【0024】斯くして、この発明によるIFN−γ産生促進剤は、上記したごときIFN−γ感受性疾患を治療・予防するための抗腫瘍剤、抗ウイルス剤、抗感染症剤、免疫疾患剤などとして多種多様な用途を有することとなる。配合するシアニン色素や適用対象となるIFN−γ感受性疾患の種類にもよるけれども、この発明のIFN−γ産生促進剤は、適用経路に応じて、通常、シアニン色素を0.005%(w/w)以上、好ましくは、0.01乃至1%(w/w)含有せしめ、用途に応じて、エキス剤、エリキシル剤、下気道用吸入剤、カプセル剤、顆粒剤、眼科用徐放剤、丸剤、眼軟膏剤、口腔粘膜貼付剤、懸濁剤、乳剤、硬膏剤、坐剤、散剤、酒精剤、錠剤、シロップ剤、浸剤剤、煎剤、注射剤、チンキ剤、点眼剤、点耳剤、点鼻剤、トローチ剤、軟膏剤、パップ剤、芳香水剤、鼻用噴霧剤、リニメント剤、リモナーデ剤、流エキス剤、ローション剤などに調製される。
【0025】この発明によるIFN−γ産生促進剤をIFN−γ感受性疾患剤として用いる場合、この発明のIFN−γ産生促進剤は、有効成分としてのシアニン色素以外の、例えば、賦形剤、軟膏基剤、溶解剤、矯味剤、矯臭剤、着色剤、乳化剤などの薬剤一般に汎用される適宜の調剤用薬を配合することを妨げない。また、この発明の目的を逸脱しない範囲で、例えば、外皮用殺菌消毒剤、創傷保護剤、消炎剤などの外皮用薬、ビタミンA剤、ビタミンB剤、ビタミンC剤、ビタミンD剤、ビタミンE剤、ビタミンK剤などのビタミン剤、カルシウム剤、無機質製剤、糖類剤、有機酸製剤、蛋白アミノ酸製剤、臓器製剤などの滋養強壮薬、クロロフィル製剤、色素製剤などの細胞賦活用薬、アルキル化剤、代謝拮抗剤、抗腫瘍性抗生物質製剤、抗腫瘍性植物成分製剤などの腫瘍用薬、抗ヒスタミン剤などのアレルギー用薬、抗結核剤、合成抗菌剤、抗ウイルス剤などの化学療法剤、さらには、ホルモン剤、抗生物質製剤、生物学的製剤などのシアニン色素以外の薬剤を1又は複数配合してもよい。
【0026】さらに、IFN−γ感受性疾患剤として用いられるこの発明のIFN−γ産生促進剤は、いわゆる、投薬単位形態の薬剤をも包含するものとし、その投薬単位形態の薬剤とはシアニン色素を、例えば、1回当りの用量又はその整数倍(4倍まで)若しくは約数(1/40まで)に相当する量を含んでなり、投薬に適する物理的に分離した一体の剤型にある薬剤を意味する。このような投薬単位形態の薬剤としては、例えば、カプセル剤、顆粒剤、丸剤、坐剤、散剤、錠剤、注射剤、パップ剤などが挙げられる。
【0027】この発明のIFN−γ産生促進剤は、経口経路で適用しても非経口経路で適用してもIFN−γ感受性疾患の治療・予防に効果を発揮する。IFN−γ感受性疾患の種類や症状にもよるけれども、具体的には、例えば、患者の症状や適用後の経過を観察しながら、体重1kg当たり1乃至10,000μg/日、好ましくは、10乃至1,000μg/日のシアニン色素を、必要に応じて、複数回に分けて1乃至7回/週の頻度で1週間乃至半年間に亙って経口経路で適用するか、あるいは、皮内、皮下、筋肉内、静脈内、鼻腔内、直腸内、腹腔内などの非経口経路により適用する。好ましい適用経路は経口経路であり、この発明のIFN−γ産生促進剤を経口経路で適用するときには、注射や通院などに伴う疼痛や不都合を顕著に低減又は解消することができる。
【0028】周知のとおり、IFN−γは、ウイルス、細菌に対する感染防御、腫瘍細胞の増殖抑制、免疫機能の調節作用などを通じて、ヒトをはじめとする哺乳類の生体防御に多大の関与をしている。IFN−γは、既述のとおり、ヒトのIFN−γ感受性疾患剤としてすでに実用化されており、その対象疾患、用量、用法及び安全性はほぼ確立しつつある。一方、代表的なシアニン色素である化学式1及び化学式2で表されるものは、毒性や重篤な副作用を指摘されることなく、長年、貧血、食欲不振、虚弱体質、倦怠、湿疹、創傷、熱傷、凍傷、化膿性疾患、神経性疾患などの治療・予防剤として用いられてきた。これらの事実は、この発明のIFN−γ産生促進剤が医薬品として生体へ安全に適用し得るものであることを裏付けている。
【0029】次に、免疫担当細胞におけるIFN−γ産生に対するシアニン色素の効果につき、マウスをモデルに用いた半ビボ実験に基づき説明する。
【0030】
【実験例】〈IFN−γ産生に対するシアニン色素の効果〉生後10週齢の雌BALB/cマウス25匹を5群にわけた。別途、化学式1で表されるシアニン色素(商品名『NK−4』、株式会社林原生物化学研究所製造)1重量部と重炭酸ナトリウム200重量部からなる散剤を調製し、これを適量の生理食塩水にシアニン色素の濃度が20mg/mlになるように加え、溶解させた。その後、この溶液を、表1に示す各適用量になるように、必要に応じて、濃度20mg/mlの重炭酸ナトリウム水溶液により適宜希釈したうえで、上記したマウスのうちの4群へ毎日1回、3日間に亙って経口経路で適用した。
【0031】シアニン色素の最終適用から1日後に、常法にしたがってマウスから脾臓を摘出し、細切し、破砕して細胞を分散させた。脾細胞を採取し、10%(v/v)ウシ血清アルブミン、10mM HEPES(N−2−ヒドロキシエチルピペラジン−N´−2−エタンスルホン酸)及び5μg/mlリポ多糖をそれぞれ含有するRPMI培地(pH7.2)へ細胞密度1×10個/mlになるように浮遊させ、37℃で72時間培養した後、通常の固相酵素免疫測定法(ELISA法)により培養物中のIFN−γ濃度を測定した。併行して、残る1群のマウスへ、シアニン色素を省略した以外は同様にして調製した液剤を経口経路で適用し、これを上記と同様に処置して対照とした。結果を表1に示す。なお、本実験においては、IFN−γの標準品として、米国国立公衆衛生研究所から入手した標準マウスIFN−γ(Gg02−901−533)を用い、国際標準単位(IU)に換算して表示した。
【0032】
【表1】

【0033】表1の結果に見られるとおり、対照においては高々0.4IU/mlのIFN−γ産生しか認められなかったのに対して、シアニン色素を経口経路で適用した系においては、シアニン色素の適用量に依存してIFN−γの産生量が著増し、1,000μg/kg体重を適用した系においては、IFN−γの産生量が2.8IU/mlにも達し、これは対照の7倍に相当する高レベルであった。しかも、シアニン色素を適用したマウスは、いずれも、毛の色艶、食欲、運動性などにおいて変調を全く示さず、死亡例もなかった。これらの実験結果は、この発明のIFN−γ産生促進剤が免疫担当細胞においてIFN−γの産生を有意に促進することとともに、生体へ直接適用しても、毒性や重篤な副作用を示さないことを物語っている。ちなみに、化学式1で表されるシアニン色素は、経口経路で4g/kg体重適用しても、中毒症状などの副作用を示さず、また、化学式2で表されるシアニン色素のLD50は、経口経路で1.5g/kg体重であり、腹腔内経路で54mg/kg体重である。
【0034】以下、この発明の実施の形態につき、実施例に基づいて説明する。
【0035】
【実施例1】〈液剤〉生理食塩水に化学式1又は化学式2で表されるシアニン色素(商品名『NK−4』及び『NK−19』、いずれも、株式会社林原生物化学研究所製造)のいずれかを濃度0.01%(w/w)になるように溶解した後、溶液を常法にしたがって精密濾過により滅菌して2種類の液剤を得た。
【0036】安定な本品は、いずれも、悪性腫瘍、ウイルス性疾患、細菌感染症、免疫疾患などのIFN−γ感受性疾患を治療・予防するための注射剤、点眼剤、点鼻剤などとして有用である。
【0037】
【実施例2】〈乾燥注射剤〉生理食塩水に化学式1又は化学式2で表されるシアニン色素(商品名『NK−4』及び『NK−19』、いずれも、株式会社林原生物化学研究所製造)のいずれかを濃度0.1%(w/w)になるように溶解した。この溶液を常法にしたがって精密濾過により滅菌し、別途滅菌しておいたバイアル瓶に1mlずつ分注し、凍結乾燥した後、密栓して2種類の乾燥注射剤を得た。
【0038】安定な本品は、いずれも、悪性腫瘍、ウイルス性疾患、細菌感染症、免疫疾患などのIFN−γ感受性疾患を治療・予防するための乾燥注射剤として有用である。
【0039】
【実施例3】〈軟膏剤〉滅菌蒸留水にカルボキシビニルポリマー(商品名『ハイビスワコー104』、株式会社和光純薬工業製造)と、常法にしたがってあらかじめパイロジェンを除去しておいた高純度トレハロース(商品名『トレハ』、株式会社林原製造)をそれぞれ濃度1.4%(w/w)及び2.0%(w/w)になるように溶解し、化学式1又は化学式2で表されるシアニン色素(商品名『NK−4』及び『NK−19』、いずれも、株式会社林原生物化学研究所製造)のいずれかを加え、均一に混合した後、pH7.2に調整して、1g当りシアニン色素を約1mg含む2種類のペースト状物を得た。
【0040】安定性と延展性に優れた本品は、いずれも、悪性腫瘍、ウイルス性疾患、細菌感染症、免疫疾患などのIFN−γ感受性疾患を治療・予防するための軟膏剤として有用である。
【0041】
【実施例4】〈錠剤〉無水結晶α−マルトース粉末(商品名『ファイントース』、株式会社林原製造)と化学式1又は化学式2で表されるシアニン色素(商品名『NK−4』及び『NK−19』、いずれも、株式会社林原生物化学研究所製造)のいずれかを均一に混合した後、常法にしたがって打錠することにより、製品1錠(約200mg)当りシアニン色素を約50μg含む2種類の錠剤を得た。
【0042】安定で摂取性に優れた本品は、いずれも、悪性腫瘍、ウイルス性疾患、細菌感染症、免疫疾患などのIFN−γ感受性疾患を治療・予防するための錠剤として有用である。
【0043】
【発明の効果】以上説明したとおり、この発明はシアニン色素の新規な生理作用の発見に基づくものである。この発明のIFN−γ産生促進剤は、免疫担当細胞においてIFN−γの産生を安定して促進するので、細胞培養法によりIFN−γを製造する際のIFN−γ産生促進剤として有用である。さらに、この発明のIFN−γ産生促進剤は、生体へ直接適用しても毒性や重篤な副作用を示さないので、IFN−γが生体内で病因へ直接又は間接に関与する、例えば、ウイルス性疾患、細菌感染症、悪性腫瘍、免疫疾患などのIFN−γ感受性疾患を治療・予防するためのIFN−γ感受性疾患剤としても有用である。
【0044】斯くも顕著な効果を奏するこの発明は、斯界に貢献すること誠に多大な、意義のある発明であると言える。
【出願人】 【識別番号】000155908
【氏名又は名称】株式会社林原生物化学研究所
【住所又は居所】岡山県岡山市下石井1丁目2番3号
【出願日】 平成13年11月2日(2001.11.2)
【代理人】
【公開番号】 特開2003−137784(P2003−137784A)
【公開日】 平成15年5月14日(2003.5.14)
【出願番号】 特願2001−338508(P2001−338508)