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【発明の名称】 難溶性薬物用医薬製剤
【発明者】 【氏名】平沢 憲幸
【住所又は居所】富山県滑川市下梅沢250−1 日本医薬品工業株式会社総合研究所内

【要約】 【課題】ビーズをカプセルに充填したカプセル医薬製剤にした場合に、溶出速度の低下を防止することができるビーズ剤形及びそれを用いたカプセル医薬製剤の提供を目的とする。

【解決手段】薬物学的に不活性な核の周囲に難溶性薬物と親水性ポリマーとで被覆層を形成し、あるいは、さらに水溶性高分子ポリマー層をコーティングしたものの外側に無機物質を部分的又は全周に被覆させたビーズとした。
【特許請求の範囲】
【請求項1】薬物学的に不活性な核の周囲に、難溶性薬物と親水性ポリマーとで被覆層を形成し、その外側に無機物質を部分的あるいは全周に被覆させたことを特徴とするビーズ。
【請求項2】薬物学的に不活性な核の周囲に、難溶性薬物と親水性ポリマーとで被覆層を形成し、水溶性高分子ポリマー層をコーティングした外側に無機物質を部分的あるいは全周に被覆させたことを特徴とするビーズ。
【請求項3】無機物質が難水溶性である請求項1又は請求項2記載のビーズ。
【請求項4】無機物質が多孔性を有するものである請求項1又は2記載のビーズ。
【請求項5】無機物質がケイ酸又はケイ酸塩である請求項1〜4いずれかに記載のビーズ。
【請求項6】無機物質が塩基性無機塩である請求項1〜4いずれかに記載のビーズ。
【請求項7】難溶性薬物が抗真菌剤又は降圧剤である請求項1〜6いずれかに記載のビーズ。
【請求項8】難溶性薬物がイトラコナゾールである請求項1〜6いずれかに記載のビーズ。
【請求項9】請求項1〜8いずれかに記載のビーズを充填して得られるカプセル医薬製剤。
【発明の詳細な説明】【0001】
【発明の属する技術分野】本発明は、薬物学的に不活性な核の周囲に、例えば、抗真菌剤等の難溶性薬物等をコーティングしたビーズをカプセルに充填したカプセル医薬製剤とした場合にも溶出速度性に優れたビーズ及びそれを用いたカプセル医薬製剤に関する。
【0002】
【従来の技術】例えば、抗真菌剤、ジヒドロピリジン系の降圧剤、フイブラート系高脂血症剤等は、水性媒体に対して低い溶解度をもつ難溶性薬物として知られている。また、一般に難溶性薬物を経口的使用に用いるためには、消化器管に投入された初期の段階にて速く溶出されないと充分な生物学的利用に寄与しないことも知られている。
【0003】そこで、従来より溶出速度を速くするための各種提案がなされている。例えば、日本国特許第2865869号特許公報、特許協力条約に基づいてなされた国際公開WO98/42318号には、球状の核の直径を適切な大きさに選定し、その周囲に難溶性抗真菌剤を親水性ポリマーに組み込ませて被覆することで抗真菌剤の溶出性を向上させたビーズが開示され、さらに、ビーズ同士の固着を防ぐ目的で薬物コーティングの外側にポリエチレングリコール20000をシール・コーティングポリマー層として被覆する技術が開示されている。また、特許協力条約に基づいてなされた国際公開WO98/57967号には、イトラコナゾールを非晶質化させた技術が開示されている。
【0004】しかし、ビーズをカプセルに充填したカプセル医薬製剤とした場合には、上記先行技術の方法では、ビーズによる顆粒医薬製剤に比較して溶出速度が低下してしまうという技術的課題があった。
【0005】
【発明が解決しようとする課題】本発明は、上記先行技術に内在する技術的課題に鑑みて、ビーズをカプセルに充填したカプセル医薬製剤にした場合に、溶出速度の低下を防止することができるビーズ剤形及びそれを用いたカプセル医薬製剤の提供を目的とする。
【0006】
【課題を解決するための手段】本発明者は、ビーズをカプセルに充填した場合に、ビーズが凝集するのを防止出来るとともに、ビーズの周囲に容易に吸着しやすい物質について鋭意に研究を重ねた結果、本発明に至ったものである。
【0007】薬物学的に不活性な核の周囲に難溶性薬物と親水性ポリマーとを被覆し、その外側に無機物質を部分的にあるいは全周に被覆させたビーズ剤形とした。あるいは、薬物学的に不活性な核の周囲に難溶性薬物と親水性ポリマーとを被覆し、その上に水溶性高分子ポリマー層を形成したものに無機物質を部分的又は全周に被覆させたビーズとした。このように難溶性薬物と親水性ポリマーとの被覆層の上にあるいは、水溶性高分子ポリマー層の上に無機物質を被覆させたのでこの無機物質が介在することにより、ビーズの凝集を防止するように作用する。従って、無機物質がビーズ同士の間に介在すればよく、必ずしもビーズの全周に亘って被覆されている必要はなく、部分的でもよい。
【0008】ここで、カプセル医薬製剤として、経口投与された際に速く溶出するように水媒体の浸透を促進するためには、上記無機物質が難水溶性であるのが好ましく、また、多孔性であるのが好ましい。ここで、多孔性の評価をJISK5101に規定する顔料試験法を準用して吸油量として測定すると吸油量0.4ml/g以上であることが好ましい。
【0009】上記の物性を有する無機物質としては、ケイ酸あるいはケイ酸の塩が好ましく、また、塩基性無機塩でもよい。
【0010】上記のようにして得られたビーズをカプセルに充填したカプセル医薬製剤としたことにより、顆粒製剤に比較して溶出速度の低下を防止できる。
【0011】
【発明の実施の形態】本発明に用いられるビーズの中心の核としては、公知のものを広く採用することができる。例えば、直径約20〜60メッシュの薬物学的に不活性又は中性の白糖・でんぷん球状顆粒、単糖、オリゴ糖、多糖等の顆粒が上げられる。これらの例としては、グルコース、サッカロース、ガラクトース、セルロース、マニトール、ソルビトール、各種澱粉等が上げられる。また、例えば、シリカ、ガラス、アパタイト等の無機物質や、結晶性セルロース、プラスチック樹脂等の有機物質でもよい。
【0012】本発明に用いられる親水性ポリマーも公知のものが広く採用できる。例えば、ヒドロキシプロピルメチルセルロース、ヒドロキシプロピルセルロース、メチルセルロース、アミノアルキルメタクリレートコポリマーE、ポリビニルピロリドン等が上げられる。
【0013】本発明に用いられる難溶性薬物としては、例えば抗真菌剤(イトラコナゾールなど)、ジヒドロピリジン系の降圧剤(ニフェジピン、ニルバジピン、塩酸ニカルジピン、塩酸ベニジピン、塩酸マニジピン、ニソルジピン、ニトレンジピン、塩酸バルニジピン、ベシル酸アムロジピン、塩酸エホニジピン、フェロジピンなど)、フィブラート系高脂血症剤(フェノフィブラートなど)等が上げられる。
【0014】本発明に用いられる無機物質としては、難水溶性の塩基性無機塩としては、炭酸マグネシウム、炭酸カルシウム、(乾燥)水酸化アルミニウムゲル、水酸化アルミニウム、水酸化カルシウム、合成ヒドロサルタイト、水酸化アルミニウム・炭酸水素ナトリウム共沈物などが上げられる。また、多孔性を有するものとして、軽質無水ケイ酸、含水二酸化ケイ素、含水無晶形酸化ケイ素、合成ケイ酸アルミニウム、ケイ酸カルシウム、ケイ酸マグネシウム、タルク(含水ケイ酸マグネシウム)、ケイ酸マグネシウムアルミニウム、メタケイ酸アルミン酸マグネシウムなどのケイ酸もしくはケイ酸の塩が上げられる。
【0015】親水性ポリマーと難溶性薬物の被膜を有するビーズ、あるいは、さらに水溶性高分子ポリマー層(例えば、ポリエチレングリコール20000)を有するビーズと上記無機物質を均質に接触させる方法としては、該ビーズを流動層造粒機中で流動させながら、適当な溶媒、例えば塩化メチレンとエタノールの混液または水などの適当な溶媒に分散させた軽質無水ケイ酸等の無機物質をスプレーするか、該ビーズに軽質無水ケイ酸等の無機物質を粉末添加し混合すればよい。また、この場合に軽質無水ケイ酸等の無機物質の添加量は、例えば、中心の核に24〜32メッシュの白糖・でんぷん球状顆粒約40%、ヒドロキシプロピルメチルセルロース2910約35%、イトラコナゾール約25%から成るビーズ100重量部に対し、好ましくは約2.5重量部以上、より好ましくは3.5〜8.0重量部である。
【0016】本発明において、無機物質を部分的あるいは、全周に被覆させるのはビーズ間に介在させてビーズの凝集を防止するのが目的である。従って、キトサン(β−ポリ−D−グルコサミン)等の難水溶性有機物でもよい。
【0017】
【実施例1】イトラコナゾール210.0gとヒドロキシプロピルメチルセルロース2910(TC-5MW、信越化学工業製)315.0gを塩化メチレン3591gとエタノール2394gに溶解させ、難溶性薬物と親水性ポリマーのコーティング液とした。24〜32メッシュの白糖・でんぷん球状顆粒(ノンパレル101、フロイント産業製)400gを複合型流動層造粒機(MP-01、パウレック社製)に投入した。この球を55〜60℃の給気エアーにより流動させながら、気中懸濁法(ワースター法)により上記コーティング液をスプレーした。スプレーは約11〜13g/minの速度で行い、スプレー終了後、給気温度60℃で約5分間流動乾燥をおこなった。さらに20〜30℃の給気温度で約15分間流動させ冷却後取り出し、無機物質被覆無しビーズ(A)を得た。次に、軽質無水ケイ酸(アドソリダー101、フロイント産業製)6.7gを塩化メチレン72.4gとエタノール48.2gに分散させ、上記無機物質被覆無しビーズ(A)180.0gを複合型流動層造粒機(MP-01、パウレック社製)に投入し、当該ビーズ(A)を約55℃の給気エアーにより流動させながら、気中懸濁法(ワースター法)により軽質無水ケイ酸を分散させた液をスプレーした。スプレーは約5g/minの速度で行い、スプレー終了後、給気温度60℃で約5分間流動乾燥をおこなった。さらに20〜30℃の給気温度で約15分間流動させ冷却後取り出しビーズ(B)を得た。
【0018】なお、比較のために、本発明に係る無機物質の代わりに、ポリエチレングリコール20000を被覆したものを製作し、比較評価に供した。マクロゴール20000(PEG20000、三洋化成工業社製)15.1gを塩化メチレン81.5gに溶解させた。この溶液にエタノール54.4gを添加し均一な溶液となるまで攪拌し、比較コーティング液とした。実施例1で得られた無機物質被覆無しビーズ(A)405.5gを複合型流動層造粒機(MP-01、パウレック社製)に投入し、このビーズ(A)を約55℃の給気エアーにより流動させながら、気中懸濁法(ワースター法)により、比較コーティング液をスプレーした。スプレーは約15g/minの速度で行い、スプレー終了後、給気温度60℃で約5分間流動乾燥をおこなった。さらに20〜30℃の給気温度で約15分間流動させ冷却後取り出し、比較ビーズ(C)を得た。さらに、無機物質被覆効果確認のために、比較ビーズ(C)233.0gと軽質無水ケイ酸(アエロジル200、日本アエロジル製)8.0gをポリエチレン袋内で混合し、ビーズ(D)を得た。次に、上記実施例および比較のために得られたビーズ(B)、(D)及び無機物質被覆無しビーズ(A)、比較ビーズ(C)各々を2号硬ゼラチンカプセル(シオノギクオリカプス社製)に充填し、カプセル医薬製剤(B)、(D)及び無機物質被覆無しカプセル医薬製剤(A)と比較カプセル医薬製剤(C)を得た。ビーズの充填量は、イトラコナゾール50mg相当量とした。
【0019】上記で得られたビーズおよび該ビーズを充填して得られたカプセル医薬製剤について溶出試験を実施した結果を図1〜4に示す。なお、溶出試験は日本薬局方14に準じ、ハドル法50r/min、試験液:日本薬局方崩壊試験第1液900mL(37±0.5℃)、イトラコナゾール50mg相当量の試料について実施した。 また、ビーズはシンカーを使用せず、カプセル剤はシンカーを使用した。その結果、グラフを比較すると次のことが明らかになった。図1のグラフより無機物質被覆無しのビーズ(A)をカプセルに充填してカプセル医薬製剤(A)にすると溶出速度が著しく遅くなることが分かる。一方、それに比較して図2のグラフに示すように、ビーズ(A)に無機物質を被覆したビーズ(B)を用いてカプセル医薬製剤(B)にしても溶出速度の低下が非常に小さいことが分かる。更に、カプセル医薬製剤(A)に比較して溶出速度が著しく速いことが確認できた。図3のグラフに示すように、比較のための先行技術によるポリエチレングリコールをコーティングした比較ビーズ(C)の溶出速度と、このビーズ(C)をカプセル医薬製剤(C)にした場合の溶出速度を比較すると、カプセル医薬製剤にすると溶出速度が低下しているのが分かる。これは、図2のビーズ(B)及びカプセル医薬製剤(B)に比較しても溶出速度が低いことも確認できた。この上記比較ビーズ(C)に本発明に係る無機物質(軽質無水ケイ酸)を被覆すると図4のグラフから分かるように、カプセル医薬製剤(D)にしても溶出速度の低下が小さく、無機物質被覆の効果が明らかになった。
【0020】
【実施例2】ニフェジピン68.3gとヒドロキシプロピルメチルセルロース2910(TC-5MW、信越化学工業製)204.8gを塩化メチレン2334.7gとエタノール1556.5gに溶解させ、難溶性薬物と親水性ポリマーのコーティング液とした。32〜42メッシュの白糖・でんぷん球状顆粒(ノンパレル101、フロイント産業製)390gを複合型流動層造粒機(MP-01、パウレック社製)に投入し、この球を55〜60℃の給気エアーにより流動させながら、気中懸濁法(ワースター法)により上記コーティング液をスプレーした。スプレーは約11〜13g/minの速度で行い、スプレー終了後、給気温度60℃で約5分間流動乾燥をおこなった。さらに20〜30℃の給気温度で約15分間流動させ冷却後取り出し、無機物質被覆無しビーズ(E)を得た。ビーズ(E)50.0gと軽質無水ケイ酸(アエロジル200、日本アエロジル製)6.0gをポリエチレン袋内で混合し、ビーズ(F)を得た。ビーズ(E)、(F)各々を2号硬ゼラチンカプセル(シオノギクオリカプス社製)に充填し、カプセル医薬製剤(E)、(F)を得た。ビーズの充填量は、ニフェジピン20mg相当量とした。上記で得られたビーズおよび該ビーズを充填して得られたカプセル医薬製剤について溶出試験を実施し、結果を図5、6に示す。なお溶出試験は日本薬局方14に準じ、ハドル法50r/min、試験液:日本薬局方崩壊試験第1液900mL(37±0.5℃)、ニフェジピン20mg相当量の試料について実施した。また、ビーズはシンカーを使用せず、カプセル剤はシンカーを使用した。その結果、やはり無機物質被覆無しビーズ(E)をカプセル医薬製剤(E)にすると溶出速度が低くなっていることが分かる。これに対して、図6のグラフに示すように、ビーズ(E)に軽質無水ケイ酸を被覆すると溶出の低下を防止できることが明らかになった。
【0021】
【実施例3】イトラコナゾール315.0gとヒドロキシプロピルメチルセルロース2910(TC-5MW、信越化学工業製)472.5gを塩化メチレン5386.5gとエタノール3591gに溶解させ難溶性薬物と親水性ポリマーのコーティング液とした。32〜42メッシュの白糖・でんぷん球状顆粒(ノンパレル101、フロイント産業製)420gを複合型流動層造粒機(MP-01、パウレック社製)に投入した。この球を60℃の給気エアーにより流動させながら、気中懸濁法(ワースター法)によりコーティング液をスプレーした。スプレーは約11〜13g/minの速度で行い、スプレー終了後、給気温度60℃で約5分間流動乾燥をおこなった。さらに20〜30℃の給気温度で約15分間流動させ冷却後とりだし、無機物質被覆無しビーズ(G)を得た。ビーズ(G)11.7gと軽質無水ケイ酸(カープレックスCS-50、塩野義製薬製)0.6gを混合しビーズ(H)を得た。同様にビーズ(G)11.7gと含水二酸化ケイ素(カープレクス#1120)、メタケイ酸アルミン酸マグネシウム(ノイシリンUFL-2、富士化学工業製)、合成ケイ酸アルミニウム(重質、協和化学工業製)、炭酸マグネシウム(軽質、協和化学工業製)、各々0.6gを混合し、ビーズ(I)、(J)、(K)、(L)を得た。得られたビーズ(G)、(H)、(I)、(J)、(K)、(L)各々を2号硬ゼラチンカプセル(シオノギクオリカプス社製)に充填し、カプセル医薬製剤(G)、(H)、(I)、(J)、(K)、(L)を得た。ビーズの充填量は、イトラコナゾール50mg相当量とした。上記で得られたビーズおよび該ビーズを充填して得られたカプセル医薬製剤について溶出試験を実施した結果を図7〜12に示す。試験条件は実施例1と同様とした。その結果、それぞれの無機物質の溶出低下防止効果が確認できた。
【0022】
【発明の効果】本発明で得られるビーズは、該ビーズを充填したカプセル医薬製剤としても速やかな溶出挙動を示すことから、付随する生物学的利用能の低下を防止するのに有利である。
【出願人】 【識別番号】592073695
【氏名又は名称】日本医薬品工業株式会社
【住所又は居所】富山県富山市総曲輪1丁目6番21
【出願日】 平成13年10月30日(2001.10.30)
【代理人】 【識別番号】100114074
【弁理士】
【氏名又は名称】大谷 嘉一
【公開番号】 特開2003−137771(P2003−137771A)
【公開日】 平成15年5月14日(2003.5.14)
【出願番号】 特願2001−332703(P2001−332703)