| 【発明の名称】 |
悪性細胞の分化誘導剤組成物とその使用 |
| 【発明者】 |
【氏名】東風 睦之
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| 【要約】 |
【課題】悪性細胞を分化誘導する新しい分化誘導剤を提供する。
【解決手段】既知の低毒性の化合物である5,6-O-ベンジリデン-L-アスコルビン酸モノナトリウム塩(SBA)は、癌細胞または腫瘍細胞を正常細胞に分化誘導する作用を有することが発見され、また関節リウマチ患者の関節病変部の新生血管に対する抑制作用を有することが認められた。上記のSBAはすぐれた分化誘導作用をもち且つ極めて低い毒性をもつ新しい分化誘導剤として有用である。 |
【特許請求の範囲】
【請求項1】 有効成分としての5,6-O-ベンジリデン-L-アスコルビン酸モノナトリウム塩と、製薬学的に許容できる担体を含むことを特徴する、悪性細胞を分化誘導する分化誘導剤組成物。 【請求項2】 本組成物の静脈内投与用の1日、一回の投与単位が1mg/body〜10mg/bodyの投与量の5,6-O-ベンジリデン-L-アスコルビン酸モノナトリウム塩を含有するものである、請求項1に記載の組成物。 【請求項3】 ヒトの体内に生じた癌または腫瘍組織内の癌細胞または腫瘍細胞を分化誘導するするために有効な1mg/body〜10mg/bodyの投与量で5,6-O-ベンジリデン-L-アスコルビン酸モノナトリウム塩を1日あたり1回の割合で担癌患者に静脈内または皮下内または腹腔内に投与されるのに使用される組成物であって、5,6-O-ベンジリデン-L-アスコルビン酸モノナトリウム塩を有効成分として含有することを特徴とする、請求項1に記載の組成物。 【請求項4】 請求項3に記載の癌または腫瘍が上顎洞癌、頸部癌、甲状腺腫、食道癌、胃癌、大腸癌、原発性肝癌、乳癌、肺癌、縦隔腫瘍、膵癌、卵巣癌、子宮癌、急性白血病、悪性リンパ腫、脂肪肉腫、大腿骨頭腫瘍、ぼうこう癌あるいは脳腫瘍、特に神経グリオ芽腫、もしくは前立腺腫瘍である、請求項3に記載の組成物。 【請求項5】 ヒトの体内に生じた癌または腫瘍組織内の癌細胞または腫瘍細胞を分化誘導するために投与される分化誘導剤組成物の製造に5,6-O-ベンジリデン-L-アスコルビン酸モノナトリウム塩を用いる使用。 【請求項6】 請求項5に記載の癌または腫瘍が上顎洞癌、頸部癌、甲状腺腫、食道癌、胃癌、大腸癌、原発性肝癌、乳癌、肺癌、縦隔腫瘍、膵癌、卵巣癌、子宮癌、急性白血病、悪性リンパ腫、脂肪肉腫、大腿骨頭腫瘍、ぼうこう癌あるいは脳腫瘍、特に神経グリオ芽腫、もしくは前立腺腫瘍である、請求項5に記載の使用。 【請求項7】 ヒトの体内に生じた癌または腫瘍組織を有する患者に、5,6-O-ベンジリデン-L-アスコルビン酸モノナトリウム塩を、1mg/body〜10mg/bodyの投与量で、1日あたり、1回の割合で静脈内または皮下内または腹腔内に投与することから成る、人体に生じた癌または腫瘍組織を分化誘導する方法。 【請求項8】 請求項7に記載の癌または腫瘍が脳腫瘍、特に神経グリオ芽腫、ぼうこう癌、上顎洞癌、頸部癌、甲状腺腫、食道癌、胃癌、大腸癌、原発性肝癌、乳癌、肺癌、縦隔腫瘍、膵癌、卵巣癌、子宮癌、急性白血病、悪性リンパ腫、脂肪肉腫または大腿骨頭腫瘍、もしくは前立腺腫瘍である、請求項7に記載の方法。
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【発明の詳細な説明】【0001】 【産業上の利用分野】本発明は、悪性細胞を分化誘導する新規な分化誘導剤組成物に関する。詳しくは、本発明は、5,6-O-ベンジリデン-L-アスコルビン酸モノナトリウム塩を有効成分として含むことを特徴とする、悪性細胞に対する分化誘導剤組成物に関する。 【0002】さらに、本発明は、5,6-O-ベンジリデン-L-アスコルビン酸モノナトリウム塩の静脈内または皮下内または腹腔内投与、あるいは経口投与により、ヒトの体内に生じた癌または腫瘍組織を正常細胞に分化誘導する方法を包含する。 【0003】さらに、本発明は、悪性細胞を正常細胞に分化誘導するために投与される各種の医薬組成物の製造に5,6-O-ベンジリデン-L-アスコルビン酸モノナトリウム塩を用いる使用に関する。 【0004】 【従来の技術】癌細胞または腫瘍細胞は正常細胞が悪性化したものであり、悪性細胞を分化誘導する新型の分化誘導剤を開発することが研究されている。 【0005】 【発明が解決しようとする課題】しかしながら、従来知られた分化誘導剤は、その単独で臨床上に安全で有効に利用できるものが未だ開発されていない。従って、極めて低い毒性をもち且つしかも悪性細胞を分化誘導する分化誘導作用をもち、そして臨床上で安全に利用できるようなすぐれた新しい分化誘導剤を求める要望が強い。 【0006】 【課題が解決するための手段】本発明者は、上記の強い要望に合うことのできる強力で安全な新しい分化誘導剤を探求する研究を行った。他方、5,6-O-ベンジリデン-L-アスコルビン酸またはそのモノナトリウム塩は、極めて低い毒性をもつ既知の化合物である。本発明者の研究において、後記の試験例で例示されるように、各種の癌細胞、あるいは腫瘍細胞が5,6-O-ベンジリデン-L-アスコルビン酸モノナトリウム塩で処理することによって分化誘導されることが発見された。また、5,6-O-ベンジリデン-L-アスコルビン酸モノナトリウム塩(以下では、SBAと略記することもある)は特に、きわめて低いSBA濃度で悪性細胞の分化誘導作用を発揮することが発見された。 【0007】さらに、本発明者の最近の研究において、1mg/〜10mg/body、例えば3mg/bodyの小さい投与量でSBAを静脈内投与、腹腔内投与または皮下注射することによってヒト体内の各種の悪性細胞を正常細胞に分化誘導できることが発見された。 【0008】また1回あたり10mgより小さい投与量、好ましくは1〜10mg/bodyの投与量で投与されたSBAが癌細胞または腫瘍細胞を正常細胞に分化誘導することが本発明者によって知見された。本発明は、上記の発見および知見に基づいて完成されたものである。 【0009】従って、第1の本発明においては、有効成分としての5,6-O-ベンジリデン-L-アスコルビン酸モノナトリウム塩と、製薬学的に許容できる担体を含むことを特徴とする、悪性細胞を正常細胞に分化誘導する分化誘導剤組成物が提供される。 【0010】5,6-O-ベンジリデン-L-アスコルビン酸の製造法は、「Steroids」12巻、309頁(1968)等に記載され、また5,6-O-ベンジリデン-L-アスコルビン酸の別の製造法は、特公平3-33127号公報および米国特許第5,036,103号明細書に示される。また5,6-O-ベンジリデン-L-アスコルビン酸モノナトリウム塩(SBA)が有する抗癌活性、およびそのモノナトリウム塩(SBA)の製造方法は特公平3-33127号公報および米国特許第5,036,103号明細書に記載される。5,6-O-ベンジリデン-L-アスコルビン酸モノナトリウム塩(SBA)は次式(I) で示される化合物である。 【0011】上記の米国特許第5,036,103号明細書には、膵臓、淋巴腺、肺、肝臓、腎臓、胃、肺臓またはその他の器官に癌または腫瘍を有する患者にSBAを1日あたり成人に1.5〜6gの投与量で静脈内投与すると、この治療を受けた患者のもつカルシノーマまたは腫瘍の全体寸法が減少されることが記載される。しかしこの米国特許明細書には、SBAが前記の分化誘導作用を有するとは記載されていない。 【0012】癌または腫瘍をもつ患者(計35例、殆んどの者が癌末期症状を呈していた)へSBAの静脈注射により治療を行った本発明者による臨床的試験によれば、SBAを成人(通常40〜90kg)につき1日当たり1回の割合で1mg/body〜10mg/bodyの投与量で、好ましくは10mgより小さい投与量で静脈内投与すると、これによってSBAが癌細胞または腫瘍細胞を効率よく正常細胞に分化誘導できると本発明者は知見した。また、眼内の新生血管の増強された形成とそれによる眼底出血とを有する患者に、SBAを投与する場合にも、SBAを成人につき1日あたり1回の割合で1mg/body〜10mg/bodyの投与量で静脈投与することが新生血管を形成する悪性細胞を正常細胞に分化誘導すると認められた。 【0013】さらに、関節リュウマチ症を併発した担癌患者に、1日1回、3mg/bodyの投与量でSBAを投与したところ、癌が縮小すると共に、関節リュウマチ症病変部の組織内の新生血管を形成する悪性細胞が正常細胞に分化誘導されたことも見出された。SBAは静脈内投与のみならず、腹腔内または皮下注射により、または経口的に投与できる。 【0014】従って、第1の本発明の組成物は、ヒトの体内に生じた癌または腫瘍組織内の癌細胞または腫瘍細胞を正常細胞に分化誘導するために有効な1mg/body〜10mg/bodyの投与量で、特に3mg/body の投与量で5,6-O-ベンジリデン-L-アスコルビン酸モノナトリウム塩を1日あたり1回の割合で担癌患者に静脈内または皮下内または腹腔内に投与されるのに使用される組成物であることができる。 【0015】上記のように、SBAの静脈内または皮下内または腹腔内に投与により癌または腫瘍組織内の癌細胞または腫瘍細胞を正常細胞に分化誘導するためのSBA処理が行われる対象の癌または腫瘍は、神経グリオ芽腫を含む脳腫瘍、ぼうこう癌、上顎洞癌、頸部癌、甲状腺腫、食道癌、胃癌、大腸癌、原発性肝癌、乳癌、肺癌、縦隔腫瘍、膵癌、卵巣癌、子宮癌、急性白血病、悪性リンパ腫、脂肪肉腫または大腿骨頭腫瘍もしくは前立腺腫瘍であることができる。 【0016】第1の本発明による分化誘導剤組成物は、それの静脈内投与用の一回の投与単位体が1mg/body〜10mg/bodyの投与量の、好ましくは2mg/body〜4mg/body、特に3mg/bodyの投与量の5,6-O-ベンジリデン-L-アスコルビン酸モノナトリウム塩を含有する形のものであるのが好ましい。 【0017】第1の本発明による分化誘導剤組成物は、一般的には、有効成分としてのSBAを、製薬学的に許容される添加剤、例えば、担体、賦形剤、希釈剤等の如き製薬上必要な添加剤成分と適宜混合し、粉末、顆粒、錠剤、カプセル剤、シロップ剤、注射剤、外用クリーム剤、点鼻剤、点眼剤等の剤型で製剤できる。そして、本組成物は非経口的にも、また経口的にもヒトに投与することができる。 【0018】第1の本発明による分化誘導剤組成物の製剤中には、本発明で用いる有効成分としてのSBAはその投与の所定目的を達する有効量が配合される。一般的には、有効成分のSBAの投与量は、投与経路、症状、患者の体重、性別、年齢等によって異なるが、成人患者では1日当たり1回で約1〜10mg/body、好ましくは2〜4mg/bodyの投与量でSBAを投与される。しかし、SBAの投与量は動物試験の結果など種々の情況を勘案して、SBA投与による血中のSBA濃度が一定量を超えない範囲で、連続的または間けつ的に投与できる。一定の条件下におけるSBAの投与適量と投与回数は、患者の体重、症状等を考慮して専門医の決定によらなければならない。また、第1の本発明による分化誘導剤組成物の製薬物中における有効成分SBAの含量は製剤型により種々異なるが、通常は0.1〜99重量%、好ましくは0.1〜90重量%、より好ましくは0.1〜50重量%である。例えば静脈注射液の場合には、注射液が通常0.1〜5重量%のSBAを含むようにすることがよい。経口投与の場合には、前記の固体担体もしくは液状担体と共に錠剤、カプセル剤、粉剤、顆粒剤、ドライシロップ剤、口腔剤、液剤、シロップ剤等の形態で用いられる。カプセル剤、錠剤、顆粒、粉剤の場合、一般にSBAの含量は3〜99重量%、好ましくは5〜90重量%であり、残部は担体である。 【0019】SBAを経口投与する場合には、SBAの粒子を水不浸透性の被膜で被覆して保護して腸溶性製剤にすることが必要である。SBAは強い酸性の、すなわちpH値の低い胃酸と接触すると化学分解を起こすからである。 【0020】第1の本発明による組成物に配合される賦形剤および担体は、製薬学上許容されるものであることができ、その種類は投与経路や投与方法によって決まる。例えば液状担体としてpH7.4程度の緩衝液、生理食塩水、エタノールもしくは大豆油、ゴマ油、ミネラル油などの動植物油、または合成油などが用いられる。固体担体としてマルトース、シュークロースなどの糖類、リジンなどのアミノ酸類、ヒドロキシプロピルセルロースなどのセルロース誘導体、シクロデキストリンなどの多糖類、ステアリン酸マグネシウムなどの有機酸塩などが使用される。 【0021】静脈注射剤として本発明による分化誘導剤組成物を製剤する場合には、液状担体は一般に生理食塩水、pH 7.4程度の各種の緩衝液、グルコース、イノシトール、マンニトールなどの糖類溶液、エチレングリコール、ポリエチレングリコール等のグリコール類が望ましい。また、イノシトール、マンニトール、グルコース、マンノース、マルトース、シュークロースなどの糖類、フェニルアラニンなどのアミノ酸類などの賦形剤と共に生理食塩水にSBAをとかし、その溶液をその後に凍結乾燥製剤とすることができる。それを投与時に注射用の適当な溶剤、例えば滅菌水、生理食塩水、pH7.4の緩衝液、ブドウ糖液、電解質溶液、アミノ酸水溶液などの静脈投与用の希釈液に溶解して用いることもできる。 【0022】さらにまた、本発明の別の観点において、第2の本発明によると、本発明は、ヒトの体内に生じた癌または腫瘍組織内の癌細胞または腫瘍細胞の悪性細胞を分化誘導するために投与される分化誘導剤組成物の製造に5,6-O-ベンジリデン-L-アスコルビン酸モノナトリウム塩を用いる使用が包含される。ここで該組成物投与の対象となる癌または腫瘍は、例えば上顎洞癌、頸部癌、甲状腺腫、食道癌、胃癌、大腸癌、原発性肝癌、乳癌、肺癌、縦隔腫瘍、膵癌、卵巣癌、子宮癌、急性白血病、悪性リンパ腫、脂肪肉腫、大腿骨頭腫瘍、ぼうこう癌または脳腫瘍、特に神経グリオ芽腫、もしくは前立腺腫瘍であることができる。 【0023】さらにまた、第3の本発明としては、本発明は、ヒトの体内に生じた癌または腫瘍組織の癌細胞または腫瘍細胞を有する患者に、5,6-O-ベンジリデン-L-アスコルビン酸モノナトリウム塩を、1mg/body〜10mg/bodyの投与量で、好ましくは2〜4mg/body、特に3mg/bodyの投与量で1日あたり1回の割合で静脈内または皮下内または膜腔内に投与することから成る、前記癌または腫瘍組織を正常細胞に分化誘導する方法を包含する。 【0024】上記の第3の本発明による医療的方法において、SBAを1回あたり1mg/body〜10mg/bodyの投与量、好ましくは3mg/bodyの投与量で静脈または皮下注射する場合にも、癌または腫瘍の悪性細胞を分化誘導する分化誘導効果が得られることが見出される。 【0025】 【発明の実施の形態】次に、第1の本発明による分化誘導剤組成物、ならびに本発明によりSBAを分化誘導剤として用いる悪性細胞の分化誘導方法を、下記の実施例および試験例について具体的に説明する。先づ、第1の本発明による分化誘導剤組成物の製剤例を次の実施例1〜3に示す。しかし、第1の本発明の組成物は下記の実施例1〜3に何ら限定されるものではない。 実施例1 錠剤の調製下記の成分を均一に混合した。 SBA(すなわち5,6-O-ベンジリデン-L-アスコルビン酸 モノナトリウム塩) 50g メタケイ酸アルミン酸マグネシウム 14g トウモロコシデンプン 21g 乳 糖 35g 結晶セルロース 60g カルボキシルメチルセルローズ(CMC)カルシウム塩 18g得られた混合物に、ステアリン酸マグネシウムの2gを添加してさらに混合を続けた。得られた粉末状混合物を打錠して、1錠あたり200mgの重さの錠剤とした。この錠剤は、胃で不溶性であるが腸管内で可溶性であるフィルムコーティング剤としてポリビニルアセタールジエチルアミノアセテートで表面被覆した。これによって腸溶性錠剤に製剤された。なお、必要に応じて、食用性着色剤で着色してもよい。 実施例2 カプセル剤の調製下記の成分を均一に混合した。 SBA 1000g 乳 糖 960g ステアリン酸マグネシウム 40g得られた粉末状の混合物をハードゼラチンカプセルに充填し、各々のカプセルが200mgずつの粉末を封包するようにした。 実施例3 注射液の調製下記の成分を用意した。 SBA 1mg 無菌水 50ml上記のSBAの1gを50mlの無菌水に溶解した。得られた溶液を除菌のためミクロポア膜で濾過した。その濾過液を無菌条件下で10ml容の褐色バイアルに5mg/0.25mlずつ分注し、無菌的に凍結乾燥した後に窒素ガスをバイアルに封入した。こうして静脈注射用のSBA凍結乾燥製剤が得られた。バイアルの該製剤は、静注に使用する直前に、無菌条件下に無菌の生理食塩水の5mlに添加すると、直ぐに完全に溶解できた。得られた水溶液は1mg/mlの濃度でSBAを含み、静脈内投与に適するものであった。 【0026】試験例1 急性毒性の評価SBAを無菌の蒸留水に溶かした水溶液をウィスター系ラットの尾部静脈から4ml/kgの量で静注した。ラットへ投与されるSBAの投与量を、500mg/kg、1000mg/kg、1500mg/kgおよび2000mg/kgになるようにSBAの静注を行った。それら相異なるSBA投与量を受けたラットの処理群の死亡率を評価した。このことから、ウィスター系ラットにSBAの静脈内投与をした時のSBAのLD50値は1693mg/kgである(confidence intervalは1306〜2194mg/kgである)と認められた。 【0027】上記の毒性試験と同様に、SBAの水溶液をNMR1系マウスの尾静脈から静注した。NMR1系マウスにSBAの静脈内投与をしたときのSBAのLD50値は、1815mg/kgである(confidence intervalは1399〜2858mg/kgである)と認められた。 【0028】試験例2本例は、交感神経系腫瘍に属する神経芽細胞腫の一例であるヒト神経芽細胞腫IMR-32細胞がSBAで処理されると、コリン作動性神経細胞の性質を有する神経節様の細胞凝集体(偽神経節Pseudoganglia)を形成する正常神経細胞へ分化誘導される試験を示し、SBAが分化誘導作用を有することを例示する。 (a)試験に用いる材料SBAはCa2+/Mg2+を含有していない緩衝食塩水〔以下、PBS(-)と略記する〕に溶解した溶液として使用する。[3H]アセチル−補酵素A(アセチル−CoA)はAmersham社)製品を用い、またヨウ化プロピジウム、アクリジンオレンジ及び塩化コリンは、Sigma社製品を用いた。ウシ胎児血清(以下、FCSと略記する)は、Cansera International社製品を用いた。供試の神経芽細胞腫IMR-32細胞は、日本癌研究資源銀行(JCRB)から入手し、10%FCSを追加したPRMI 1640培地(日水製薬製)中で培養し、CO25%含有空気の雰囲気で37℃で維持した。 【0029】(b)SBA処理後の細胞の生存率の測定IMR-32細胞を、細胞1×105個/シャーレの量でシャーレ内の培地に接種し、24時間培養し、次いで種々の濃度のSBAで48時間処理した。細胞生存率を0.2%トリパンブルーの排除試験により測定した。0.2%トリパンブルー排除試験法による生存率(%)の測定値(黒点で示す)は、添付図面の図1に示すが、3連制試験の平均値+標準誤差(SE)である。上記の試験をSBAの非存在下で行って、対照試験とした。 【0030】(c)SBA処理後の細胞の偽神経節の形成の判定IMR-32細胞を、125μg/mlのSBA又は500μg/mlのSBAの存在下に48時間培養した。細胞の形態学的変化と、形成された偽神経節の数とを位相差顕微鏡の下で観察した(倍率200倍)。SBA処理により、IMR-32細胞が偽神経節を形成するように形態学的変化することが認められた。位相差顕微鏡の1視野中の偽神経節の計数値を図1の曲線に白点で示す。上記の観察において、SBAの作用により、ヒト神経芽細胞腫IMR-32細胞が正常な神経細胞に分化誘導されたことが認められた。 【0031】(d)SBA処理後の細胞のコリンアセチルトランスフェラーゼ(以下、CATと略記する)活性の検定IMR-32細胞を、種々の濃度のSBAを用いて6日間処理した。次いで、SBA処理後の細胞を収穫し、PBS(-)で2回洗浄し、そして細胞を1M NaCl-2.5%Triton X-100で溶解した。得られた細胞溶解物のCAT活性を、FonnumとRabinoskyらの方法の改変法で分析した。この分析に当って、50mMのリン酸カリウム(pH6.8)、0.2MのNaCl、8mMの塩化コリン、1mMのEDTA、0.1mMの硫酸フィソスチグミン、0.5%のTriton X-100、25μMの[3H]アセチル−CoA(40mCi/mMol)及び100μgの細胞溶解液を含有するように反応混合物(100μl)を調製した。前記の反応混合物を37℃で1時間培養した。反応を、50mMリン酸カリウム−1mM EDTAを300μlを加え、次いで直ちにテトラフェニルホウ素ナトリウム5mgとトルエン2mlとを含有するアセトニトリル1mlを加えることにより停止させた。得られた混合物を3分間振り混ぜた後に、3000×gで10分間遠心分離した。得られた有機溶媒層(通常1.5ml)を、トルエン−シンチレーター混合物10mlと混合し、その放射能を液体−シンチレータ・セクトロメーター(Beckman製 LS5000TD)で測定した。 【0032】このように取込まれた放射性アセチル−CoAの量から検定されたCAT活性の測定値を、図2に棒グラフで示す。これらの測定値は3連制試験の平均値±標準誤差である〔*P<0.002(対照との比較)〕。SBA処理後の生存細胞は、未処理のIMR-32細胞に比べて有意に高いCAT活性を示すことが認められ、コリン作動性神経細胞の性質を有することが示される。 【0033】上記の各試験の結果から見ると、ヒト神経芽細胞腫IMR-32細胞に対するSBAの効果は次のようである。 【0034】すなわち、SBA処理後の、生存細胞の生存率(%)は、SBAによる8時間連続処理によって用量(dosage)依存的に抑制され、またそのCD50は462μg/mlであると算定された(図1参照)。また、細胞生存率は処理時間に依存して減少し、種々の濃度のSBAで処理した後の6日目には、48時間処理時の生存率と比較してなお約6%の減少が観察された。 【0035】生存した細胞では、形態学的変化が十分に観察され、これらの形態学的変化は大きな細胞凝集体(偽神経節)の形成であり、該細胞凝集体の幾つかは長く続く神経突起によって相互に連絡することが認められる。また偽神経節の出現はSBAの用量に依存して変動していた(図1参照)。500μg/mlのSBAで処理の場合には、偽神経節同士が著しく衝突し、多数の神経突起を伸張することが観察された。SBAで処理した細胞中で生存しており且つ分化した細胞の割合の正確な測定は、細胞凝集体の形成により困難であったが、それにもかかわらず、生き残った細胞のうちの少なくとも20〜30%は、500μg/mlのSBAで処理した場合で、神経突起をもつ神経細胞に分化誘導されたと考えられた。SBA処理によって分化された細胞がコリン作動性神経細胞であるかどうかを決定するために、上記の(d)においてSBAで6日間処理後の生存細胞のCAT活性を検定した。500μg/mlのSBAで処理した生存細胞のCAT活性は、対照(未処理)細胞のCAT活性よりも2.2倍も高く、その増大の程度は用量依存的であり(図2参照)、SBA処理で分化した細胞がコリン作動性神経細胞の性質を獲得したことを示した。なお、別途の試験によると、SBA処理中に死滅した細胞はアポトーシス死とネクローシス死によるものであることが認められた。 【0036】試験例3本例は、ラット神経膠腫(Glioma)C6細胞がSBA処理により星状神経膠細胞(Astro cyte)へ分化誘導される試験を例示する。中枢神経系の腫瘍の一例であるラット神経膠腫C6細胞は、神経膠(glial)の特徴と神経細胞系(neuronal)の特徴との両方を有することが知られ、また該C6細胞はGAMP又は酪酸ナトリウムで処理されると、星状神経膠細胞(astrocyte)のマーカーであるグリアルライブリアリイな酸性タンパク質(以下、GFAPと略記する)の高い発現レベルをもつ成熟度の高い星状神経膠細胞に分化することが知られている。 【0037】日本癌研究資源銀行(JCRB)から入手したラット神経膠腫C6細胞を、細胞1×105個/シャーレの量で培地に接種し、24時間培養した。次いで、得られた培養細胞を種々の濃度のSBAで3日間処理した。その後、細胞を0.2%のトリパンブルーで染色した後に、生存細胞数を数えた。細胞数の計数値は、3連制試験の平均値±標準誤差(SE)である〔*P<0.00301及び**P<0.00001(対照と比較して)〕これらの計数値を図3に棒グラフで示す。これら試験をSBAの非存在下で行って、対照試験とした。図3から明らかなように、C6細胞の増殖は、SBAによって用量依存的に抑制され、SBAのCD50は250μg/mlであると算定された。 【0038】さらに、C6細胞を、125μg/mlのSBAの存在下に3日間培養した場合について、細胞の形態学的変化を位相差顕微鏡の下で観察した。星状神経膠細胞(astrocyte)の形成が認められ、これらの細胞は伸張した細胞形状を有した。C6細胞を、250μg/mlのSBAで3日間又は6日間連続的に処理した。次いでGFAP(クローン G-A-5; Boehringer Mannheim社製)に対するモノクローナル抗体を使用してウエスタンプロット法によりSBA処理後の細胞のGFAPの発現レベルを判定した。SBAで6日間処理後の細胞におけるGFAPの発現レベルは未処理の対照細胞のGFAP発現レベルより6.7倍も高いことが認められて、C6細胞は成熟した星状神経膠細胞へ分化されたことを示した。 【0039】本例の試験によっても、SBAは神経膠腫細胞を正常な神経細胞へ分化誘導できる作用を有することが明らかにされた。 【0040】 【発明の効果】以上に説明したとおり、本発明においては、既知の低毒性の化合物である5,6-O-ベンジリデン-L-アスコルビン酸モノナトリウム塩(SBA)は、癌細胞または腫瘍細胞のような悪性細胞、ならびに新生血管を形成している悪性細胞をそれぞれ正常細胞に転化できる分化誘導作用をもつことが発見された。上記のSBAはすぐれた分化誘導作用をもち且つ極めて低い毒性をもつ新しい分化誘導剤として有用である。
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| 【出願人】 |
【識別番号】000221694 【氏名又は名称】東風 睦之
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| 【出願日】 |
平成13年10月10日(2001.10.10) |
| 【代理人】 |
【識別番号】100093676 【弁理士】 【氏名又は名称】小林 純子 (外4名)
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| 【公開番号】 |
特開2003−119136(P2003−119136A) |
| 【公開日】 |
平成15年4月23日(2003.4.23) |
| 【出願番号】 |
特願2001−312788(P2001−312788) |
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