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【発明の名称】 トラニラスト経皮吸収貼付剤
【発明者】 【氏名】川原 康慈
【住所又は居所】東京都文京区関口二丁目3番3号 ニチバン株式会社内

【要約】 【課題】皮膚局所に直接適用することができ、かつ、トラニラストの経皮吸収性に優れ、ケロイド、肥厚性瘢痕、アレルギー性皮膚炎などの治療に有効な粘着テープ製剤型のトラニラスト経皮吸収貼付剤を提供すること。

【解決手段】支持体上に有効成分としてトラニラストを含有するアクリル系粘着剤層を設けてなるトラニラストの皮膚透過性に優れたトラニラスト経皮吸収貼付剤。
【特許請求の範囲】
【請求項1】 支持体上に有効成分としてトラニラストを含有するアクリル系粘着剤層を設けたことを特徴とするトラニラスト経皮吸収貼付剤。
【請求項2】 アクリル系粘着剤層が、架橋剤として多官能イソシアネート化合物をさらに含有する請求項1記載のトラニラスト経皮吸収貼付剤。
【請求項3】 アクリル系粘着剤層が、経皮吸収促進剤としてクロタミトンをさらに含有する請求項1または2記載のトラニラスト経皮吸収貼付剤。
【発明の詳細な説明】【0001】
【発明の属する技術分野】本発明は、有効成分として抗アレルギー剤のトラニラストを含有する粘着テープ製剤型の経皮吸収貼付剤に関し、さらに詳しくは、皮膚局所に直接適用することができ、かつ、トラニラストの経皮吸収性に優れ、ケロイド、肥厚性瘢痕、アレルギー性皮膚炎などの治療に有効なトラニラスト経皮吸収貼付剤に関する。
【0002】
【従来の技術】トラニラスト(Tranilast)は、抗アレルギー剤であり、例えば、気管支喘息などの治療のために内服で用いられている。トラニラストは、下記式【0003】
【化1】

【0004】で表される2−[〔3−(3,4−ジメトキシ−フェニル)−1−オキソ−2−プロペニル〕アミノ]安息香酸であり、一般に、融点が207〜210℃の淡黄色結晶または結晶性粉末として得られる。トラニラストは、ジメチルホルムアミドに易溶性、ピリジン、ジオキサンに可溶性、アセトンに微溶性であるが、メタノール、クロロホルム、無水エタノール、無水エーテル、酢酸エチルに難溶性であり、水、ヘキサンに不溶性である。
【0005】トラニラストは、アレルギーに起因する種々の疾患の治療剤であり、気管支喘息だけではなく、ケロイド、肥厚性瘢痕、アレルギー性鼻炎、アレルギー性眼疾患、アトピー性皮膚炎などのアレルギー性皮膚炎などに対しても優れた薬効を示す。トラニラストは、カプセル剤、錠剤、ドライシロップ、細粒剤などの剤型で経口投与されている。
【0006】一般に、経口投与された薬物は、消化管より吸収され、次いで、肝臓に移行して代謝を受ける。このように、経口投与された薬物は、肝臓での代謝という初回通過効果を受けるため、局所に送られる薬物の量が少なくなる。そこで、薬物の有効血中濃度を維持させるために、比較的多量の薬物を経口投与する必要がある。ところが、多量の薬物を経口投与すると、消化管障害や肝臓障害などの様々な副作用が生じ易くなる。また、経口投与は、一般に、全身性の作用を示す。
【0007】トラニラストをアレルギー性皮膚炎や局所性アレルギー性疾患などの治療に使用するには、経口投与よりも、局所投与することが好ましい場合がある。例えば、トラニラストを経皮吸収による局所投与剤(即ち、外用剤)とすることができれば、アレルギー性皮膚炎や局所性アレルギー性疾患などに対して、局所投与により確実かつ迅速に薬効を示すことができる。また、外用剤は、全身性または局所性のいずれの作用を示す場合であっても、経口投与に伴う肝代謝や副作用を回避し、しかも薬物を徐々に経皮吸収させるため、薬効を長時間にわたって持続させることができる。
【0008】しかし、皮膚の角質層は、異物や細菌などが皮膚面を通して体内に侵入するのを防ぐバリア機能を有しているため、薬物を経皮吸収させること自体、一般に困難である。しかも、トラニラストのような結晶性の薬物は、そのままでは皮膚面を透過しないため、経皮吸収させることができない。トラニラストを外用剤とするには、水、有機溶剤、その他の媒質に、少なくとも部分的に溶解させる必要がある。
【0009】しかし、トラニラストは、多くの溶媒に対して不溶性または難溶性である。トラニラストは、水に対して不溶性である。トラニラストは、外用剤の基剤として適しているメタノール、エタノール、酢酸エチルなどには難溶性である。一方、トラニラストは、ジメチルホルムアミド、ピリジン、ジオキサン、アセトンなどには可溶性または微溶性であるが、これらの溶剤は、皮膚刺激性や臭気などの点で、外用剤の基剤としては不適当である。
【0010】そこで、トラニラストの外用剤化を図るために、幾つかの提案がなされている。例えば、特開平6−128153号公報には、トラニラストを塩基性水溶液に加温溶解または懸濁した後、所望により、界面活性剤、懸濁化剤、安定化剤、防腐剤、その他の医薬品添加物を加え、軟膏基剤と練り合わせて軟膏とする方法が提案されている。
【0011】再公表特許WO97/28793号公報には、トラニラストを有効成分として含む水性基剤からなる外用剤が提案されている。水性基剤は、トラニラストの溶解剤、分散剤、吸収助剤、粘着剤及び/または保型剤、並びに水を含んでいる。溶解剤としては、脂肪酸、脂肪酸誘導体、動植物性油脂、テルペン化合物、アルコール類、クロタミトン、N−メチル−2−ピロリドン、トリエタノールアミンなどの油性成分が用いられている。トラニラストは、溶解剤に溶解され、二酸化ケイ素などの分散剤により水性基剤中に分散されている。この外用剤は、軟膏剤、クリーム剤、パップ剤などの剤型とされている。
【0012】しかし、トラニラスト外用剤は、軟膏剤やクリーム剤である場合、皮膚に塗布したときに、べたついて不快感を与えたり、衣類に接触して汚したり、一定量の薬物を正確に投与することが難しいなどの問題がある。パップ剤である場合には、外用剤の厚みが厚く嵩張って違和感があるほか、皮膚面に対する接着性に劣るため、固定用の粘着テープを併用しなければならない。また、トラニラストの溶解性や放出性を高めるために、外用剤のpHを塩基性にすると、塩基性物質による皮膚刺激のおそれが生じる。
【0013】
【発明が解決しようとする課題】本発明の目的は、有効成分として抗アレルギー剤のトラニラストを含有する粘着テープ製剤を提供することにある。より具体的に、本発明の目的は、皮膚局所に直接適用することができ、かつ、トラニラストの経皮吸収性に優れ、ケロイド、肥厚性瘢痕、アレルギー性皮膚炎などの治療に有効な粘着テープ製剤型のトラニラスト経皮吸収貼付剤を提供することにある。
【0014】一般に、粘着テープ製剤は、支持体上に薬物を含有する粘着剤層を設けたものであって、皮膚面に対する粘着性に優れ、皮膚局所への適用が容易であり、粘着剤層が薄く、かつ、薬物の定量的な投与に適した剤型である。しかし、粘着テープ製剤は、粘着剤に対する薬物の溶解性が良好で、しかも粘着剤層が薬物を徐々に放出して経皮吸収させることができるものでなければならない。
【0015】トラニラストは、水及び各種有機溶剤に不溶性または難溶性であり、特に外用剤に適した有機溶剤に対して難溶性であるため、粘着剤に対しても溶解性が悪く、粘着テープ製剤化することは極めて困難であると考えられていた。そのため、従来、トラニラストを粘着テープ製剤化することについて提案されていなかった。実際、本発明者らの検討結果によれば、汎用のゴム系粘着剤にトラニラストを含有させて粘着テープ製剤化しても、皮膚透過性に優れた経皮吸収貼付剤を得ることはできないことが判明した。
【0016】本発明者らは、さらに研究を行なった結果、支持体上に有効成分としてトラニラストを含有するアクリル系粘着剤層を設けた粘着テープ製剤型の経皮吸収貼付剤に想到した。驚くべきことに、トラニラストは、アクリル系粘着剤に対して、特異的に良好な溶解性を示し、アクリル系粘着剤層から徐々に放出されて、高い皮膚透過性と薬効持続性を示すことが分かった。本発明の経皮吸収貼付剤は、アクリル系粘着剤層にクロタミトンを含有させると、経皮吸収を効果的に促進させることができる。
【0017】アクリル系粘着剤は、架橋剤を用いて架橋すると、凝集力が増大して皮膚面に対する粘着性が向上するが、架橋剤の使用量を増やすにつれて、トラニラストの皮膚透過性が著しく低下する傾向を示す。ところが、架橋剤として多官能イソシアネート化合物を使用すると、トラニラストの皮膚透過性を損なうことなく、凝集力を増大できることが見出された。本発明は、これらの知見に基づいて完成するに至ったものである。
【0018】
【課題を解決するための手段】本発明によれば、支持体上に有効成分としてトラニラストを含有するアクリル系粘着剤層を設けたことを特徴とするトラニラスト経皮吸収貼付剤が提供される。
【0019】
【発明の実施の形態】(1)アクリル系粘着剤本発明で使用するアクリル系粘着剤は、炭素数が通常1〜18、好ましくは4〜12のアクリル酸アルキルエステルを主成分とするアクリル酸エステル共重合体をベースポリマーとするものである。
【0020】アクリル酸アルキルエステルとしては、例えば、アクリル酸メチル、アクリル酸エチル、アクリル酸n−ブチル、アクリル酸イソブチル、アクリル酸t−ブチル、アクリル酸n−ヘキシル、アクリル酸n−オクチル、アクリル酸−2−エチルヘキシル、アクリル酸イソオクチル、アクリル酸イソノニル、アクリル酸n−デシル、アクリル酸イソデシル、アクリル酸ラウリル、アクリル酸ステアリル等が挙げられる。
【0021】これらのアクリル酸エステルは、それぞれ単独で、あるいは2種以上を組み合わせて使用することができる。これらのアクリル酸エステルの中でも、アクリル酸−2−エチルヘキシル、アクリル酸n−オクチル、アクリル酸イソオクチル、アクリル酸イソノニルなどが好ましい。
【0022】アクリル酸エステル共重合体は、モノマーとしてアクリル酸エステルを主成分とする共重合体であって、それによって、アクリル系粘着剤としての特性を発揮することができる。アクリル酸アルキルエステルの共重合割合は、好ましくは60〜99重量%、より好ましくは70〜98重量%である。
【0023】アクリル酸アルキルエステルと共重合するコモノマーとしては、官能基を有するビニルモノマーが好ましい。その具体例としては、例えば、アクリル酸−2−ヒドロキシエチル、アクリル酸3−ヒドロキシプロピル、アクリル酸4−ヒドロキシブチル等の水酸基を有するモノマー;アクリル酸、メタクリル酸、マレイン酸、無水マレイン酸、イタコン酸、マレイン酸モノブチル等のカルボキシル基を有するモノマー;アクリルアミド、ジメチルアクリルアミド、ジエチルアクリルアミド、メタクリルアミド、N−メチロールアクリルアミド等のアミド基を有するモノマー;ジメチルアミノエチルアクリレート等のアミノ基を有するモノマー;アクリル酸グリシジル、メタクリル酸グリシジル等のエポキシ基を有するモノマー;N−ビニルピロリドン等のピロリドン環を有するモノマー;などが挙げられる。
【0024】これらの官能基を有するモノマーは、それぞれ単独で、あるいは2種以上を組み合わせて使用することができる。アクリル酸エステル共重合体中の官能基を有するモノマーの共重合割合は、好ましくは1〜30重量%、より好ましくは2〜25重量%、特に好ましくは3〜15重量%である。
【0025】その他のコモノマーとして、メタクリル酸メチル、メタクリル酸エチル、メタクリル酸n−ブチル、メタクリル酸イソブチル、メタクリル酸t−ブチル、メタクリル酸n−ヘキシル、メタクリル酸n−オクチル、メタクリル酸−2−エチルヘキシル、メタクリル酸イソオクチル、メタクリル酸イソノニル、メタクリル酸n−デシル、メタクリル酸イソデシル、メタクリル酸ラウリル、メタクリル酸ステアリル等のメタアクリル酸アルキルエステル;酢酸ビニル等のビニルエステル;アクリロニトリル、メタクリロニトリル等の不飽和ニトリル;スチレン等のビニル芳香族化合物;などが挙げられる。
【0026】その他のコモノマーは、それぞれ単独で、あるいは2種以上を組み合わせて使用することができる。アクリル酸エステル共重合体中のその他のモノマーの共重合割合は、好ましくは0〜30重量%である。
【0027】アクリル酸エステル共重合体は、一般に、ラジカル重合させることにより合成することができる。重合法としては、溶液重合法、乳化重合法、塊状重合法などが挙げられるが、良好な粘着特性が得られ易い点で、溶液重合法が好ましい。重合開始剤としては、ベンゾイルパーオキサイド、ラウロイルパーオキサイドなどの有機過酸化物;アゾビスイソブチロニトリルなどのアゾ系開始剤;などが挙げられる。全モノマーに対して、0.1〜3重量%程度の割合でラジカル重合開始剤を加え、窒素気流下、40〜90℃程度の温度で、数時間から数十時間撹拌して共重合させる。
【0028】(2)架橋剤アクリル系粘着剤の凝集力を増大させるために、各種架橋剤を用いることができる。架橋剤としては、多官能イソシアネート化合物、多官能エポキシ化合物、多価金属塩などが挙げられる。これらの中でも多官能イソシアネート化合物は、使用割合を増やしても、トラニラストの皮膚透過性を実質的に低下させないため好ましい。
【0029】アクリル系粘着剤に架橋剤を添加する場合、その使用割合は、全粘着剤基準で、好ましくは0.01〜3重量%、より好ましくは0.02〜2重量%、特に好ましくは0.03〜1重量%である。架橋剤の使用割合が過小であると、凝集力の向上効果が小さくなり、過大であると凝集力が増大しすぎたり、トラニラストの皮膚透過性が低下する。
【0030】本発明において、全粘着剤基準とは、アクリル系粘着剤、トラニラスト、及びその他の成分(架橋剤、経皮吸収促進剤など)からなる粘着剤組成物の全重量を基準とすることを意味するものとする。ただし、基準となる粘着剤組成物の全重量には、溶媒は含まれない。
【0031】(3)経皮吸収促進剤本発明では、トラニラストの経皮吸収促進剤として、例えば、N−メチル−2−ピロリドン、多価アルコール中鎖脂肪酸エステル、多価アルコールアルキルエーテル、脂肪族アルコール、脂肪酸、クロタミトンなどを用いることができる。これらの中でも、クロタミトンが優れた経皮吸収促進効果を示すため好ましい。
【0032】経皮吸収促進剤を使用する場合、その使用割合は、全粘着剤基準で、好ましくは0.1〜20重量%、より好ましくは0.5〜15重量%である。経皮吸収促進剤の使用割合が過小であると、トラニラストの経皮吸収性の工場効果が小さく、過大であると、粘着性能が低下する。
【0033】(4)支持体支持体としては、例えば、フィルム、不織布、和紙、綿布、編布、不織布とフィルムのラミネート複合体などが挙げられる。支持体の材質としては、例えば、ポリエチレン、ポリプロピレン、ポリエチレンテレフタレート、ポリブチレンテレフタレート、ポリエチレンナフタレート、ポリスチレン、ナイロン、コットン、アセテートレーヨン、レーヨン、レーヨン/ポリエチレンテレフタレート、ポリアクリロニトリル、ポリビニルアルコール、アクリル系樹脂、エステル系ポリウレタン、エーテル系ポリウレタン、スチレン−イソプレン−スチレンブロック共重合体(SIS)、スチレン−ブタジエン−スチレンブロック共重合体(SBS)、スチレン−エチレン−プロピレン−スチレンブロック共重合体、スチレン−ブタジエンゴム、エチレン−酢酸ビニル共重合体(EVA)、セロハン等が挙げられる。
【0034】支持体としては、薬物を吸着し難く、かつ、支持体側から薬物を放出し難いものが好ましい。また、支持体としては、各種不織布、ウレタンフィルム、EVAフィルム、ポリエチレンフィルムなどの柔軟な基材が好ましい。ポリエチレンフィルムの材質としては、低密度ポリエチレン(LDPE)や直鎖状低密度ポリエチレン(LLDPE)が好ましい。
【0035】(5)経皮吸収型貼付剤本発明の粘着テープ製剤型の経皮吸収型貼付剤は、一般的な経皮吸収型貼付剤の製造方法である溶液塗工法やカレンダー塗工法などにより製造することができる。アクリル酸エステル共重合体を溶液重合法で合成する場合、重合後にアクリル酸エステル共重合体を含有する溶液が得られるが、この溶液をそのままで、あるいは適当な有機溶剤で希釈して、アクリル系粘着剤溶液とすることができるので、溶液塗工法が好ましい。
【0036】溶液塗工法では、アクリル酸エステル共重合体及びトラニラストを含有し、所望により、架橋剤、経皮吸収促進剤、充填剤、酸化防止剤などを添加した溶液を調製する。有機溶剤としては、n−ヘキサン、トルエン、酢酸エチル、アセトン等を挙げることができる。アクリル酸エステル共重合体の濃度は、好ましくは10〜50重量%、より好ましくは15〜45重量%、特に好ましくは20〜40重量%である。
【0037】トラニラストの配合割合は、全粘着剤基準で、好ましくは0.1〜10重量%、より好ましくは0.2〜5重量%、特に好ましくは0.3〜3重量%である。トラニラストの配合割合が過小であると、充分な薬効を得ることが困難になり、過大であると、結晶が析出したりして、皮膚透過性が飽和する。トラニラストは、生理学的に許容できる塩であってもよい。
【0038】各成分を含有する溶液を攪拌して均一に溶解・分散させる。このようにして得られた溶液を、ナイフコーター、コンマコーター、リバースコーター等の塗工機を用いて、例えば、シリコーン処理したポリエステルフィルムなどの剥離ライナー上に均一に塗布する。塗布後、40〜130℃程度の温度に保持した乾熱雰囲気下に0.5〜10分間程度の時間保持して有機溶剤を揮散させる。使用する有機溶剤の種類及び塗布する粘着剤層の厚さにより、適切な乾燥条件を設定する。
【0039】前記の方法にて得られた粘着剤層の表面に支持体をラミネートすることにより、経皮吸収型貼付剤を得ることができる。支持体の種類によっては、支持体上に粘着剤層を形成してから、粘着剤層の表面に剥離ライナーをラミネートしてもよい。
【0040】剥離ライナーとしては、シリコーン処理したポリエステルフィルム、シリコーン処理したポリエチレンラミネート上質紙、シリコーン処理したグラシン紙などが挙げられる。剥離ライナーとしては、薬物を吸収・吸着しにくい材質からなるものであることが好ましい。
【0041】
【実施例】以下に、合成例、実施例及び比較例を示して、本発明についてより具体的に説明するが、本発明はこれらに限定されるものではない。
【0042】[合成例1]アクリル系粘着剤の合成アクリル酸イソノニル96g及びアクリル酸4gを酢酸エチル/アセトン混液150gに溶解させた。得られた溶液を1Lの重合機に入れ、60℃に加熱した。次いで、加熱下に、ラウロイルパーオキサイド0.5gをアセトン50gに溶解した溶液を徐々に添加して重合させた。重合後、生成したアクリル酸エステル共重合体を含有する溶液に、n−ヘキサン及びトルエンを加えて希釈し、固形分濃度35重量%のアクリル系粘着剤溶液を得た。
【0043】[実施例1]合成例1で得られたアクリル系粘着剤溶液に、全粘着剤基準で、0.5重量%のトラニラストを添加して、粘着液を得た。この粘着液を、シリコーン処理したポリエチレンテレフタレートからなる厚さ75μmの剥離フィルムの片面に、乾燥後の粘着剤層の厚みが50μmとなるように均一に塗布し、次いで、120℃で1分間加熱乾燥した。乾燥した粘着剤層を厚み25μmのポリエチレンフィルムからなる支持体に密着させ、粘着テープ製剤を得た。粘着テープ製剤は、40℃で7日間熟成させた。
【0044】[実施例2]合成例1で得られたアクリル系粘着剤溶液に、全粘着剤基準で、0.5重量%のトラニラストと2.0重量%のクロタミトンを添加して、粘着液を得た。この粘着液を、シリコーン処理したポリエチレンテレフタレートからなる厚さ75μmの剥離フィルムの片面に、乾燥後の粘着剤層の厚みが50μmとなるように均一に塗布し、次いで、120℃で1分間加熱乾燥した。乾燥した粘着剤層を厚み25μmのポリエチレンフィルムからなる支持体に密着させ、粘着テープ製剤を得た。粘着テープ製剤は、40℃で7日間熟成させた。
【0045】[実施例3]実施例2において、クロタミトンの添加量を2.0重量%から5.0重量%に変えたこと以外は、実施例2と同様にして粘着テープ製剤を得た。
【0046】[実施例4]実施例2において、クロタミトンの添加量を2.0重量%から10.0重量%に変えたこと以外は、実施例2と同様にして粘着テープ製剤を得た。
【0047】[実施例5]合成例1で得られたアクリル系粘着剤溶液に、全粘着剤基準で、1.0重量%のトラニラストと2.0重量%のクロタミトンを添加して、粘着液を得た。この粘着液を、シリコーン処理したポリエチレンテレフタレートからなる厚さ75μmの剥離フィルムの片面に、乾燥後の粘着剤層の厚みが50μmとなるように均一に塗布し、次いで、120℃で1分間加熱乾燥した。乾燥した粘着剤層を厚み25μmのポリエチレンフィルムからなる支持体に密着させ、粘着テープ製剤を得た。粘着テープ製剤は、40℃で7日間熟成させた。
【0048】[実施例6]実施例5において、アクリル系粘着剤溶液に、全粘着剤基準で、0.05重量%のエポキシ系架橋剤(三菱ガス化学社製、テトラドX)をさらに添加したこと以外は、実施例5と同様にして粘着テープ製剤を得た。得られた粘着テープ製剤は、40℃で7日間熟成させて、アクリル系粘着剤を架橋させた。
【0049】[実施例7]実施例6において、エポキシ系架橋剤の添加量を0.05重量%から0.5重量%に変えたこと以外は、実施例6と同様にして粘着テープ製剤を作成し、アクリル系粘着剤を架橋させた。
【0050】[実施例8]実施例5において、アクリル系粘着剤溶液に、全粘着剤基準で、0.05重量%のイソシアネート系架橋剤(日本ポリウレタン社製、コロネートHL)をさらに添加したこと以外は、実施例5と同様にして粘着テープ製剤を得た。得られた粘着テープ製剤は、40℃で7日間熟成させて、アクリル系粘着剤を架橋させた。
【0051】[実施例9]実施例8において、イソシアネート系架橋剤の添加量を0.05重量%から0.5重量%に変えたこと以外は、実施例8と同様にして粘着テープ製剤を作成し、アクリル系粘着剤を架橋させた。
【0052】これらの実施例1〜9で使用した添加剤成分の種類と量を表1に一括して示す。また、表1には、図面に示されている凡例(コード名)を併せて示す。
【0053】
【表1】

【0054】[比較例1]
ゴム系粘着剤の合成エラストマーとしてスチレン・イソプレン・スチレンブロック共重合体(シェルケミカル社製、カリフレックスTR−1107)100g、粘着付与剤として脂環族飽和炭化水素樹脂(荒川化学工業株式会社社製、アルコンP−100)150gをトルエン375gに溶解させ、固形分40重量%のゴム系粘着剤溶液を得た。
【0055】粘着テープ製剤の作成上記で得られたゴム系粘着剤溶液に、全粘着剤基準で、0.5重量%のトラニラストを添加して、粘着液を得た。この粘着液を、シリコーン処理したポリエチレンテレフタレートからなる厚さ75μmの剥離フィルムの片面に、乾燥後の粘着剤層の厚みが50μmとなるように均一に塗布し、次いで、120℃で1分間加熱乾燥した。乾燥した粘着剤層を厚み25μmのポリエチレンフィルムからなる支持体に密着させ、粘着テープ製剤を得た。
【0056】[比較例2]
ハイドロゲルの調製濃グリセリン34gにポリアクリル酸ナトリウム6g、水酸化アルミニウム1g、及び薬剤を加え、乳鉢で均一に分散させてA液を調製した。一方、水とエチレンジアミン四酢酸ナトリウム0.025gと酒石酸1gとを混合してB液を調製した。これらのA液とB液を均一に混合して、原液とした。薬剤として、0.5重量%のトラニラストを用いた。
【0057】パップ剤の作製上記で得られた原液を、シリコーン処理したポリエチレンテレフタレートからなる厚さ75μmの剥離フィルムの片面に、乾燥後の膏体層の厚みが200μmとなるように均一に塗布し、次いで、120℃で1分間加熱乾燥した。乾燥した膏体層を厚み25μmのポリエチレンフィルムからなる支持体に密着させて、ハイドロゲル層を有するパップ剤を得た。このパップ剤は、40℃で7日間の熟成を行なって、架橋させた。
【0058】[試験方法]
(1)in vitro皮膚透過実験ペントパルビタール麻酔下、へアレスラットの腹部を電気シェーバーを用いて除毛後、皮膚を摘出し、直径20mmφの横形拡散セルに装着した。2重構造のセルに32℃の温水を循環させ、セル内部を一定の温度条件に保ち、皮膚の角質層側には、15mmφに打ち抜いた試験製剤を貼付した。レシーバー溶液には、濃度20重量%のポリエチレングリコール(PEG400)の水溶液を加え、経時的にサンプリングした。サンプリングした溶液にメタノールを加え、撹拌後、遠心分離し、蛋白を除いた。この除蛋白した溶液を高速液体クロマトグラフィ(HPLC)を用いて定量した。なお、サンプリング後、レシーバ溶液には、同量の20%PEGの水溶液を添加して、容量を一定に保持させた。
【0059】(2)in vivo吸収実験以下の手順で、各試験製剤のin vivoでのトラニラスト吸収実験を行なった。
■Wistar系雄性ラット(7週齢、200g)6匹をエーテル麻酔下、バリカン及びシェーバーを用いて腹部を除毛する。
■腹部皮膚に3×3cmに裁断した製剤を貼付し、その上から脱落を防止するために、粘着包帯で固定する。
■適用8時間後、製剤を剥離し、製剤適用部位の皮膚をセロテープ(ニチバン株式会社製;登録商標)を使って20回テープストリッピングし、角質層を完全に除去する。
【0060】■ストリッピングした部位の皮膚を剥離し、脂肪などの皮下織を除去後、10mmφのポンチで打抜き、皮膚を細かく裁断する。
■裁断した皮膚切片にメタノール2ml、p−ヒドロキシ安息香酸エチルのエタノール溶液(10μg/ml)1ml、及び50mM酢酸アンモニウム緩衝液0.5mlを加え、ホモジナイズする。
■15,000rpm、5分の遠心後、上清をHPLCに供し、表皮及び真皮中の薬物濃度を測定する。
【0061】<HPLC条件>カラム:Unisil Q C18(10μm、4×150mm)
移動相:50mM酢酸アンモニウム緩衝液/アセトニトリル=750/250(0〜10.5分)
375/625(10.5〜15.0分)
750/250(15.0〜20.0分)
カラム温度:40℃流量:0.8ml/分検出波長:254mm【0062】[皮膚透過実験1]実施例1、比較例1〜比較例1〜2及び実施例1で得られた各製剤について、皮膚透過実験を行なった。各製剤について、トラニラストの24時間累積透過量、Flux(定常状態に達した単位面積当たりの皮膚透過速度であり、「累積透過量−時間曲線」における傾きとして測定される)、及びLag Time(皮膚透過速度が定常状態に達するまでの時間)の測定結果を表2及び図1に示す。
【0063】
【表2】

【0064】[皮膚透過実験2]実施例1〜4実施例1〜4で得られた粘着テープ製剤について、皮膚透過実験を行ない、クロタミトンの経皮吸収促進作用を確認した。結果を表3及び図2に示す。
【0065】
【表3】

【0066】[皮膚透過実験3]実施例5〜9実施例5〜9で得られた粘着テープ製剤について、皮膚透過実験を行ない、架橋剤の影響を調べた。結果を表4及び図3に示す。
【0067】
【表4】

【0068】[in vivo吸収実験1]実施例9実施例9で得られた粘着テープ製剤について、in vivo吸収実験を行なって、表皮及び真皮中の薬物濃度(皮内濃度)を測定した。結果を表5に示す。表5には、トラニラストの経口投与に関する文献データを併せて示した。
【0069】
【表5】

【0070】(脚注)
1)後藤康雄等、基礎と臨床、第25巻第15号第65頁(1991)
【0071】<考察>(1)表2及び図1に示される結果から明らかなように、ゴム系粘着剤を用いた粘着テープ製剤(比較例1)、及びハイドロゲルを用いたパップ剤(比較例2)は、いずれもトラニラストの皮膚透過性が著しく悪いのに対して、アクリル系粘着剤を用いた粘着テープ製剤(実施例1)は、トラニラストの優れた皮膚透過性を示す。
(2)表3及び図2に示される結果からは、クロタミトンがトラニラストの経皮吸収性を顕著に高めることが分かる。
【0072】(3)表4及び図3に示される結果からは、イソシアネート系架橋剤を用いた場合、架橋剤の添加量を増やしても、トラニラストの皮膚透過性がそれ程低下しないことが分かる(特に、実施例7と実施例9との対比)。
(4)表5に示した文献に記載のトラニラストの経口投与量は、通常の経口投与量よりもはるかに高い量である。これに対して、本発明のトラニラスト経皮吸収貼付剤は、経口で効果を示す濃度より高い皮膚移行量を示し、その皮膚移行量は、薬効が充分に期待される水準にあることが分かる。トラニラスト経皮吸収貼付剤は、局所投与が可能で、ヒトに対する全投与量を少なくすることができるため、経口投与よりも副作用が少なくなることが期待される。
【0073】
【発明の効果】本発明によれば、有効成分として抗アレルギー剤のトラニラストを含有する粘着テープ製剤が提供される。本発明によれば、皮膚局所に直接適用することができ、かつ、トラニラストの経皮吸収性に優れ、ケロイド、肥厚性瘢痕、アレルギー性皮膚炎などの治療に有効な粘着テープ製剤型のトラニラスト経皮吸収貼付剤が提供される。
【出願人】 【識別番号】000004020
【氏名又は名称】ニチバン株式会社
【住所又は居所】東京都文京区関口二丁目3番3号
【出願日】 平成13年10月11日(2001.10.11)
【代理人】 【識別番号】100093528
【弁理士】
【氏名又は名称】西川 繁明
【公開番号】 特開2003−119132(P2003−119132A)
【公開日】 平成15年4月23日(2003.4.23)
【出願番号】 特願2001−314374(P2001−314374)