| 【発明の名称】 |
新生物病態およびその他の障害に対する、単独または他の化合物との併用でのフェニルアセテートおよび誘導体 |
| 【発明者】 |
【氏名】ドゥボリット サミッド
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| 【要約】 |
【課題】本発明は、有効治療量のフェニルアセテートあるいは薬学的に受容可能なその誘導体、またはその誘導体単独で、あるいは、オキシ尿素およびフラボノイドを含む他の治療剤との併用で、あるいは混合で投与することにより種々の障害を治療する組成物、ガンをフェニルアセテートで膀胱内で処置するための組成物を提供することを課題とする。
【解決手段】本発明は、上記病的状態を治療するためのPAAならびにその薬学的に受容可能な塩、誘導体、およびアナログを含む組成物を提供する。 |
【特許請求の範囲】
【請求項1】 以下の式のフェニル酢酸誘導体、それらの塩、それらの立体異性体、およびそれらの混合物の治療量と併用してフラボノイドの治療量を含む、被験体の新生物病態を治療するための薬学的組成物:【化1】
ここで、R0=アリール、フェノキシ、置換アリールまたは置換フェノキシであり;R1およびR2は、独立して、H、低級アルコキシ、ヒドロキシ、低級直鎖および分枝鎖アルキルまたはハロゲンであり;R3およびR4は、独立して、H、低級アルコキシ、低級直鎖および分枝鎖アルキルまたはハロゲンであり;そしてn=0〜2の整数である。 【請求項2】 前記フラボノイドが、アピゲニンである、請求項1に記載の薬学的組成物。 【請求項3】 前記フラボノイドが、クエルセチンである、請求項1に記載の薬学的組成物。 【請求項4】 前記新生物病態が、前立腺ガンである、請求項1に記載の薬学的組成物。 【請求項5】 前記フェニル酢酸誘導体が、フェニル酢酸ナトリウムである、請求項1に記載の薬学的組成物。 【請求項6】 前記フェニル酢酸誘導体が、フェニル酪酸ナトリウムである、請求項1に記載の薬学的組成物。 【請求項7】 以下の式のフェニル酢酸誘導体、それらの塩、それらの立体異性体、およびそれらの混合物の治療量と併用してオキシ尿素の治療量を含む、被験体の新生物病態を治療するための薬学的組成物:【化2】
ここで、R0=アリール、フェノキシ、置換アリールまたは置換フェノキシであり;R1およびR2は、独立して、H、低級アルコキシ、ヒドロキシ、低級直鎖および分枝鎖アルキルまたはハロゲンであり;R3およびR4は、独立して、H、低級アルコキシ、低級直鎖および分枝鎖アルキルまたはハロゲンであり;そしてn=0〜2の整数である。 【請求項8】 前記新生物病態が、前立腺ガンである、請求項7に記載の薬学的組成物。 【請求項9】 前記フェニル酢酸誘導体が、フェニル酢酸ナトリウムである、請求項7に記載の薬学的組成物。 【請求項10】 前記フェニル酢酸誘導体が、フェニル酪酸ナトリウムである、請求項7に記載の薬学的組成物。 【請求項11】 以下の式のフェニル酢酸誘導体、それらの塩、それらの立体異性体、およびそれらの混合物の治療量を含む、膀胱内投与によって被験体の内部組織の新生物病態を局所的に治療するため薬学的組成物:【化3】
ここで、R0=アリール、フェノキシ、置換アリールまたは置換フェノキシであり;R1およびR2は、独立して、H、低級アルコキシ、ヒドロキシ、低級直鎖および分枝鎖アルキルまたはハロゲンであり;R3およびR4は、独立して、H、低級アルコキシ、低級直鎖および分枝鎖アルキルまたはハロゲンであり;そしてn=0〜2の整数である。 【請求項12】 前記新生物病態が、膀胱ガンである、請求項11に記載の薬学的組成物。 【請求項13】 前記新生物病態が、腎臓ガンである、請求項11に記載の薬学的組成物。 【請求項14】 前記フェニル酢酸誘導体が、フェニル酢酸ナトリウムである、請求項11に記載の薬学的組成物。 【請求項15】 前記フェニル酢酸誘導体が、フェニル酪酸ナトリウムである、請求項11に記載の薬学的組成物。 【請求項16】 別々に調製したオキシ尿素の治療量および以下の式のフェニル酢酸誘導体、それらの塩、それらの立体異性体、およびそれらの混合物の治療量を含む、被験体の新生物病態の治療における、同時の、個々の、または継続使用のための組成物:【化4】
ここで、R0=アリール、フェノキシ、置換アリールまたは置換フェノキシであり;R1およびR2は、独立して、H、低級アルコキシ、ヒドロキシ、低級直鎖および分枝鎖アルキルまたはハロゲンであり;R3およびR4は、独立して、H、低級アルコキシ、低級直鎖および分枝鎖アルキルまたはハロゲンであり;そしてn=0〜2の整数である。 【請求項17】 前記フェニル酢酸誘導体が、フェニル酢酸ナトリウムである、請求項16に記載の組成物。 【請求項18】 前記フェニル酢酸誘導体が、フェニル酪酸ナトリウムである、請求項16に記載の組成物。 【請求項19】 以下の式のフェニル酢酸誘導体、それらの塩、それらの立体異性体、およびそれらの混合物の治療量を含む、放射線および化学療法に対して耐性の被験体新生物病態を治療するため薬学的組成物:【化5】
ここで、R0=アリール、フェノキシ、置換アリールまたは置換フェノキシであり;R1およびR2は、独立して、H、低級アルコキシ、ヒドロキシ、低級直鎖および分枝鎖アルキルまたはハロゲンであり;R3およびR4は、独立して、H、低級アルコキシ、低級直鎖および分枝鎖アルキルまたはハロゲンであり;そしてn=0〜2の整数である。 【請求項20】 前記フェニル酢酸誘導体が、フェニル酢酸ナトリウムである、請求項19に記載の薬学的組成物。 【請求項21】 前記フェニル酢酸誘導体が、フェニル酪酸ナトリウムである、請求項19に記載の薬学的組成物。 【請求項22】 前記新生物病態が、多剤耐性表現型を示す、請求項19に記載の薬学的組成物。 【請求項23】 別々に調製したフラボノイドの治療量および以下の式のフェニル酢酸誘導体、それらの塩、それらの立体異性体、およびそれらの混合物の治療量を含む、被験体の新生物病態の治療における、同時の、個々の、または継続使用のための組成物:【化6】
ここで、R0=アリール、フェノキシ、置換アリールまたは置換フェノキシであり;R1およびR2は、独立して、H、低級アルコキシ、ヒドロキシ、低級直鎖および分枝鎖アルキルまたはハロゲンであり;R3およびR4は、独立して、H、低級アルコキシ、低級直鎖および分枝鎖アルキルまたはハロゲンであり;そしてn=0〜2の整数である。 【請求項24】 前記フラボノイドが、アピゲニンである、請求項23に記載の薬学的組成物。 【請求項25】 前記フラボノイドが、クエルセチンである、請求項23に記載の薬学的組成物。 【請求項26】 前記新生物病態が、前立腺ガンである、請求項23に記載の薬学的組成物。 【請求項27】 前記フェニル酢酸誘導体が、フェニル酢酸ナトリウムである、請求項23に記載の薬学的組成物。 【請求項28】 前記フェニル酢酸誘導体が、フェニル酪酸ナトリウムである、請求項23に記載の薬学的組成物。
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【発明の詳細な説明】【0001】 【発明の属する技術分野】I 発明の分野本発明は、フェニル酢酸およびその薬学的に受容可能な誘導体を用いて、病的状態を治療および予防し、かつ細胞の活性を調整する方法に関する。詳細には、本発明はA)フェニル酢酸およびその誘導体のガンの治療または予防における使用、B)フェニル酢酸およびその誘導体の創傷治癒における使用、C)フェニル酢酸およびその誘導体のインターロイキン−6に関連する疾患の治療における使用、D)フェニル酢酸およびその誘導体のAIDSに関連するCNS機能不全の治療における使用、E)フェニル酢酸およびその誘導体の免疫監視を増強するための使用、F)患者におけるフェニル酢酸およびその誘導体の用量レベルおよび/またはこれらの薬物に対する患者の応答をモニターする方法、G)フェニル酢酸およびその誘導体によるPPARの活性化、レチノイドレセプターと相互作用する薬剤との併用でのフェニル酢酸およびその誘導体の使用、およびフェニル酢酸およびその誘導体のフリーラジカルに基づいた放射線照射または化学療法感作あるいは保護薬剤としての使用、H)フェニル酢酸およびその誘導体の、多剤耐性表現型を有するガンの治療における使用、I)フェニル酢酸およびその誘導体、効力と親油性との相関関係、J)神経芽腫細胞を含有するガンのようなガンの治療および予防のための、レチノイン酸との相乗的併用でのフェニル酢酸およびその誘導体、K)悪性神経膠腫または他のCNS腫瘍などのガンの治療および予防のための、ロバスタチンとの相乗的併用でのフェニル酢酸およびその誘導体、L)悪性黒色腫または他の神経外胚葉の腫瘍を含有するガンおよび他の分化障害などのガンおよび他の分化障害の治療および予防のためのフェニル酢酸およびその誘導体、M)前立腺ガンのようなガンの治療および予防のための、ヒドロキシ尿素(HU)との相乗的併用でのフェニル酢酸およびその誘導体、N)髄芽腫および神経膠星状細胞腫由来細胞を含有するガンの治療および予防のためのフェニル酢酸およびその誘導体、O)PAおよびPBを用いる治療に関するヒトでの研究におけるフェニル酢酸およびその誘導体、P)血清トリグリセリドの減少を含む脂質代謝を改変する方法におけるフェニル酢酸およびその誘導体、Q)悪性および非悪性細胞におけるフェニル酢酸およびその誘導体によるHbFの誘導、およびR)フェニル酢酸およびその誘導体の投与方法、に関する。 【0002】 【従来の技術】II 発明の背景フェニル酢酸(PAA)は、系統発生的範囲を通じて(細菌からヒトまで)見出されるタンパク質分解産物である。進化において高度に保存されているPAAは、増殖制御および分化における根本的な役割を担っているかもしれない。植物において、PAAは成長ホルモン(オーキシン)として作用して、低用量(10−5〜10−7M)で細胞増殖および腫脹を促進し、その一方でより高濃度では増殖を阻害する。動物およびヒト細胞に対する効果は、十分には特徴付けされていない。ヒトにおいて、PAAはグルタミンを結合して、次いでフェニルアセチルグルタミン(PAG)を腎排泄することが知られている。後者は、不用な窒素の排泄を導き、尿素形成(ureagenesis)の先天性異常に関連する高アンモニア血症の治療において、PAAまたは好ましくはそのフェニルアセテートナトリウム塩(NaPA、これはまた本明細書中でその活性な陰イオン部分であるフェニルアセテートまたは「PA」と呼ばれる)を使用することの基礎となっている。臨床的経験は、高NaPA用量を用いた急性または長期間の治療は良好に寛容され、本質的に有害効果がなく、過剰なグルタミンの除去において有効であることを示す[Brusilow,S.W., Horwich,A.L.Urea cycle enzymes. Metabolic Basisof Inherited Diseases, Vol.6:629−633(1989)]。 【0003】グルタミンは核酸およびタンパク質合成のための主要な窒素源であり、迅速に分裂している正常および腫瘍細胞におけるエネルギーのための基質である。正常組織に比較して、ほとんどの腫瘍は、グルタミンの合成の減少ならびに資化および異化の促進のために、限られたレベルのグルタミン利用率で作動し、その結果さらなるグルタミン涸渇に対して敏感である。腫瘍細胞におけるグルタミン代謝の不均衡およびPAAのグルタミンを除去する能力を考慮して、PAAは潜在的な抗腫瘍剤として提唱されている;しかし、この提唱を実証するデータはこれまでに提供されていない[Neish,W.J.P.「ヒトガンの治療のための潜在的な治療薬剤としてのフェニル酢酸」、Experentia, Vol.27,pp.860−861(1971)]。 【0004】ガンと戦うためのこれらの努力にかかわらず、本出願において問題にする多くの悪性疾患は、臨床腫瘍学に対して重大な難題を提示し続けている。例えば、前立腺ガンは男性における2番目に一般的なガン死亡の原因である。現在の治療プロトコルは主としてホルモン操作に頼っている。しかし、初期の高い応答率にかかわらず、患者はしばしばホルモン治療抵抗性(hormone−refractory)腫瘍を発達させ、おもわしくない予後を伴う迅速な疾患の進行へ導く。全体的に、細胞障害性化学療法の結果は落胆させるものであり、このことは進行した前立腺ガンの治療に対する新たなアプローチの切実な必要性を示す。異常な細胞複製から生じる他の疾患(例えば、転移性黒色腫、グリア起源の脳腫瘍(例えば、神経膠星状細胞腫)、および肺腺ガン)もまた、おもわしくない予後を伴う高度に攻撃的な悪性疾患である。黒色腫および肺腺ガンの発生率は近年顕著に増加している。脳腫瘍の外科的治療はしばしばすべての腫瘍組織を除去することに失敗し、再発を生じる。全身化学療法は、血液関門により妨害される。それゆえ、進行した前立腺ガン、黒色腫、および脳腫瘍を含むヒト悪性疾患の治療への新たなアプローチに対する切迫した必要性が存在する。 【0005】フェニル酢酸(PAA)は、そのグルタミンに結合してグルタミンフェニルアセテートを形成する能力に加えて、腫瘍細胞に分化を経験させることを誘導し得る。PAAは非毒性分化増強因子であり、実験室モデルおよびヒトにおいて抗腫瘍活性を有する。前臨床研究は、フェニルアセテートおよび関連の芳香族脂肪酸は細胞増殖抑制性(cytostasis)を誘導し、ホルモン治療抵抗性前立腺ガンおよび神経膠芽細胞腫を含む種々のヒト悪性細胞の成熟を促進することを示す。腫瘍生活史(biology)の顕著な変化は、腫瘍増殖、浸潤、脈管形成、および免疫原生に関係する遺伝子の発現における改変に関連する。PAAおよびそのアナログは以下を含むいくつかの作用メカニズムを共有するようである:(a)核レセプターの活性化を通じての遺伝子発現の調節;および(b)メバロン酸経路およびタンパク質イソプレニル化の阻害。従って、PAAは特に種々の新生物病態の治療に適しているようである。 【0006】 【発明が解決しようとする課題】NaPAにより治療し得るこのような新生物病態の一つは、神経芽腫である。幼児期の悪性腫瘍として、神経芽腫は生物学的および臨床的観点から魅惑的であることが証明されている。このガンは、すべての悪性疾患の中で最も高い自然分化率を有し、いくつかの薬剤は神経芽腫の成熟の神経冠系列を共有する種々の細胞への成熟を誘導をすると報告されている(Evans,A.E., Chatten,J., D’Angio,G.J., Gerson,J.M., Robinson,J.,およびSchnaufer,L.A.、フィラデルフィア小児病院の17名のIV−S神経芽腫患者についての概説。Cancer,45:833−839, 1980;Abemayor,E.,およびSidell,N.、腫瘍性ニューロン細胞分化のインビトロ研究のためのモデルとしてのヒト神経芽腫細胞株。Environ.Health Perspect.,80:3−15, 1989)。分化薬剤として探索された化合物の中で、レチノイン酸(RA)(Sidell,N., Altman,A., Haussler,M.R.およびSeeger,R.C.、レチノイン酸(RA)のいくつかのヒト神経芽腫細胞株の増殖および表現型発現に対する効果。Expl.Cell.Res., 148:21−30, 1983)は、種々のヒト神経芽腫細胞株の分化を促進する強力な化合物であることが示された(Abemayor,E.,およびSidell,N.、腫瘍性ニューロン細胞分化のインビトロ研究のためのモデルとしてのヒト神経芽腫細胞株。Environ. Health Perspect., 80:3−15, 1989;Sidell,N., Altman,A., Haussler,M.R.およびSeeger,R.C.、レチノイン酸(RA)のいくつかのヒト神経芽腫細胞株の増殖および表現型発現に対する効果。Expl.Cell.Res., 148:21−30, 1983;Thiele,C.T., Reynolds,C.P.,およびIsrael,M.A.、N−mycの発現減少がヒト神経芽細胞腫のレチノイン酸誘導性形態的分化に先行する。Nature, 313:404−406, 1985);しかし、現在までに、RAはこの疾患において限られた臨床的有効性しか示していない(Finklestein,J.Z., Krailo,M.D., Lenarsky,C., Ladisch,S., Blair,G.K., Reynolds,C.P., Sitary,A.L.,およびHammond,G.D.、従来の化学療法に非応答性の転移性神経芽腫を有する小児の治療における13−シス−レチノイン酸(NSC 122758):小児ガン研究グループからの報告。Med.Ped.Oncol.,20:307−311, 1992)。ヒト神経芽腫のRA誘導性分化の効力を増大させることを求めて、多数の他の化合物および生物学的応答改変剤(例えば、cAMP上昇薬剤およびインターフェロン)は、レチノイド活性を強化するとともに耐性集団を、RA治療に対して感受性にし得る(Lando,M., Abemayor,E., Verity,M.A.,およびSidell,N.ヒト神経芽腫細胞の細胞内環状AMPレベルおよび分化応答の調整。Cancer Res., 50:722−727, 1990;Wuarin,L.,Verity,M.A.,およびSidell,N.、ヒト神経芽腫細胞に対するγインターフェロンの効果とそのレチノイン酸との相互作用。Int.J.Cancer, 48:136−144, 1991)。これらの併用治療のいくつかは、現在臨床的に評価されているかまたは神経芽腫および他の悪性疾患の治療のために提唱されている(Smith,M.A., Parkinson,D.R., Cheson,B.D.,およびFriedman,M.A.、ガン治療におけるレチノイド。J.Clin.Oncol., 10:839−864, 1992)。しかし、神経芽腫ならびに他の類似のガンおよび病的状態の治療のためのより効果的な併用治療の必要性が存在する。従来治療が困難であった別の新生物病態は悪性神経膠腫である。悪性神経膠腫は、細胞複製に重要なステロールおよびイソプレノイドの合成のためのメバロン酸(MVA)経路に高度に依存する(Fumagalli,R., Grossi,E., Paoletti,P.およびPaolette,R.、脳腫瘍における脂質に関する研究。I.ヒト脳腫瘍におけるコレステロールのステロール前駆体の出現と意義。J.Neurochem. 11:561−565, 1964;Kandutsch,A.A.およびSaucier,S.E.、正常およびjimpyマウスの発達中の脳におけるステロール合成の調節。Arch.Biochem.Biophys. 135:201−208, 1969;Grossi,E., Paoletti,P.およびPaoletti,R.、脳コレステロールおよび脂肪酸生合成の解析。Arch.Int.Physiol.Biochem. 66:564−572, 1958;Azarnoff,D.L., Curran,G.L.およびWilliamson,W.P.、インビトロでのヒト頭蓋内腫瘍によるアセテート−1−14Cのコレステロールへの取り込み。J.Nat.Cancer Inst. 21:1109−1115, 1958;Rudling,M.L., Angelin,B.,Peterson,C.O.およびCollins,V.P.、ヒト頭蓋内腫瘍における低密度リポタンパク質レセプター活性とそのコレステロール要求性との関連。Cancer Res. 50(suppl):483−487, 1990)。MVA合成および/または利用を標的にすることにより正常脳組織(ここではMVA経路は最小に活性である)を損傷することなく腫瘍増殖を阻害することが期待される。二つの酵素がコレステロール合成のMVA経路の律速段階を制御する:(a)3−ヒドロキシ−3−メチルグルタリル補酵素A(HMG−CoA)レダクターゼは、アセチルCoAからのMVAの合成を触媒する;そして、(b)MVAピロホスフェート(MVA−PP)デカルボキシラーゼはMVA利用ならびに、その結果細胞内信号伝達タンパク質の翻訳後プロセッシングおよび機能を制御する(Goldstein,J.L.およびBrown,M.S.、メバロン酸経路の調節。Nature, 343:425−430, 1990;Marshall,C.J.、タンパク質プレニル化:タンパク質−タンパク質相互作用のメディエーター。Science,259:1865−1866, 1993)。従って、悪性神経膠腫または他の類似のガンおよび病的状態の治療のために、MVA経路のこれら二つの段階を阻害し得る治療を見出すことが高く望まれている。 【0007】治療が困難であったさらなる新生物病態は、悪性黒色腫である。散在性悪性黒色腫は、高い死亡率および従来の治療に対する耐性により特徴付けられる(Ferdy Lejeune, Jean Bauer, Serge Leyvraz, Danielle Lienard (1993):散在性黒色腫、前臨床治療研究、臨床試験、および患者治療。Current Opinionin Oncology 5:390−396)。分化治療は、細胞障害化学療法に応答しないかまたは応答の乏しいガンの治療のための別法を提供し得る(Kelloff,G.J., Boone,C.W., Malone,E.F., Steele,V.E. (1992):化学的予防臨床的試験。Mutation Res. 267:291−295)。いくつかの分化誘導剤が、インビトロで黒色腫細胞の表現型を改変し得る。これらには、レチノイド、ブチレート、ジブチリルアデノシン3’:5’−環状一リン酸(dbcAMP)、5−アザシチジン、インターフェロン、ヘキサメチレンビスアセトアミド(HMBA)、ジメチルホルムアミド(DMF)、ジメチルスルホキシド(DMSO)、12−テトラデカノイルホルボル−13アセテート(TPA)が含まれる(Mary J.Hendrix, Rebecca W.Woodら、(1990):再構成された基底膜を通じてのヒト黒色腫細胞浸潤のレチノイン酸阻害ならびにそのタンパク質分解酵素の発現および能動性の減少との関連。Cancer Research 50:4121−4130;Luara Giffre, Magali Schreyer, Jean−pierre Mach, Stefan Carrel (1988):環状AMPはヒト黒色腫細胞のインビトロ分化を誘導する。Cancer 61:1132−1141;Jardena Nordenberg, Lina Wasserman, EinatBeery, Doron Aloni, Hagit Malik, Kurt H.Stenzel, Abraham Novogrodsky (1986):酪酸およびジメチルスルホキシドによるマウス黒色腫の増殖阻害。Experimental Cell Research 162:77−85;Eliezer Huberman, Carol Heckman, Rober Langenbach (1979):腫瘍促進薬剤およびジメチルスルホキシドによるヒト黒色腫細胞における分化機能の刺激。Cancer Research 39:2618−2624;Claus Garbe, Konstantin Krasagakis (1993):インターフェロンおよびサイトカインの黒色腫細胞に対する効果。J.Invest.Dermatol.100:239S−244S)。残念ながら、これらの薬剤の臨床適用は、受容不可能な毒性、潜在的な発ガンに関する懸念、または有効な血漿濃度を達成および持続し得ないことにより制限される。従って、悪性黒色腫または他の類似のガン、病的状態、または分化障害のための無毒性で、臨床的に有効な治療の必要が存在する。リボヌクレオチドレダクターゼインヒビターであるヒドロキシ尿素は、1800年代の後期に最初に合成された単純な化合物(CH4N202、MW 76.05)である(Calabresi P, Chabner BA、抗腫瘍薬剤。Gilman AG, Rall TW, Nies AS, TaylorP編、The Pharmacological Basis of Therapeutics. New York: McGraw Hill 1990:1251−2)。ヒドロキシ尿素は、後に実験室動物において白血球減少症を生じることが見出され、次いで抗腫瘍薬剤として試験された(Rosenthal F, Wislicki L, Kollek L. Ueber die beziehungen von schwersten blutgiften zu abbauprodukten des ewweisses.Beitrag zum entstehungsmechanismusder perniziosen. Anamie.Klin.Wschr.1928;7:972)。現在では、ヒドロキシ尿素の主な臨床的役割は、骨髄増殖性障害の治療にある。現在ヒドロキシ尿素は、慢性骨髄性白血病のための好ましい初期治療と考えられている(Donehower RC.ヒドロキシ尿素。Chabner BA, Collins JM編 Cancer Chemotherapy, Principles and Practice, Philadelphia: JB Lippincott 1990:225−33)。 【0008】ヒドロキシ尿素は、悪性黒色腫、頭部および頚部の扁平上皮ガン、腎細胞ガン、および尿管細胞層(urothelium)の移行上皮ガンを含む多数の固形ガンにおいて評価されている(Bloedow CE. 成人におけるヒドロキシ尿素に第二相研究:種々の腫瘍。Cancer Chemother Rep1964;40:39−41;Ariel IM.ヒドロキシ尿素の治療効果:手術不能の腫瘍を有する118名の患者の経験。Cancer 1970;25:714;Nevinny H, Hall TC. 腎細胞ガンにおけるヒドロキシ尿素を用いた化学療法。J Clin Pharmacol 1968;88:352−9;Beckloff GL, Lerner HJ, Cole DR,ら、膀胱ガンにおけるヒドロキシ尿素。Invest Urol1967;6:530−4)。初期の研究はいくつかのこれらの疾患において有望に見えたが、さらなる研究は、固形ガンについてのいかなる標準的治療養生法においても、ヒドロキシ尿素の役割を定義していない。 【0009】ヒドロキシ尿素は細胞周期のS期に特異的な薬剤であるので、ホルモン治療抵抗性転移性前立腺ガンにおけるこの薬物のいくつかの臨床試験は、ヒドロキシ尿素がなんらかの活性を有すると示唆したことは驚異である(Lerner HJ, Malloy TR. 前立腺のステージDガンにおけるヒドロキシ尿素。Urol 1977;10:35−8;Kvols LK,Eagan RT,Myers RP.転移性前立腺ガンにおけるメルファラン、ICRF−159、およびヒドロキシ尿素の評価:予備報告。Cancer Treat Rep1977;61:311−2;Loening SA, Scott WW,deKernion Jら、前立腺の進行性ガンを有する患者におけるヒドロキシ尿素、メチル−クロロエチル−シクロヘキシ−ニトロソウレア、およびシクロホスファミド(clylophosphamide)の比較。J Urol1981;125:812−6;Mundy AR 前立腺のホルモン「逃避」転移性ガンにおけるヒドロキシ尿素の先行研究。Br J Urol 1982;54:20−5;Stephens RL, Vaughn C, LaneMら、進行した前立腺ガンにおけるアドリアマイシンおよびシクロホスファミド対ヒドロキシ尿素。Cancer 1984;53:406−10)。これらの活性は、特に(1)疾患の進行の遅い性質および(2)これらの試験において用いられる薬物投与のスケジュール(例えば、1日1回から3日に1回)を与える。これらの試験で用いられたヒドロキシ尿素の用量または投与スケジュールはいずれも、細胞周期の感受期にある腫瘍細胞のかなりの割合を捕らえることはなさそうである。表13に、ホルモン治療抵抗性前立腺ガンにおけるヒドロキシ尿素の活性に関する報告された臨床データを要約する。全体の他覚的な応答率は23%であり、自覚的改善の頻度は36%である(Lerner HJ, Malloy TR. 前立腺のステージDガンにおけるヒドロキシ尿素。Urol1977;10:35−8;Kvols LK, Eagan RT, Myers RP.転移性前立腺ガンにおけるメルファラン、ICRF−159、およびヒドロキシ尿素の評価:予備報告。Cancer Treat Rep 1977;61:311−2;Loening SA, Scott WW, deKernion Jら、前立腺の進行性ガンを有する患者におけるヒドロキシ尿素、メチル−クロロエチル−シクロヘキシ−ニトロソウレア、およびシクロホスファミドの比較。J Urol 1981;125:812−6;MundyAR、前立腺のホルモン「逃避」転移性ガンにおけるヒドロキシ尿素の先行研究。Br J Urol 1982;54:20−5;Stephens RL,Vaughn C, Lane Mら、進行性前立腺ガンにおけるアドリアマイシンおよびシクロホスファミド対ヒドロキシ尿素。Cancer 1984;53:406−10)。従って、前立腺ガンまたは類似のガンの治療のためのヒドロキシ尿素を用いる改良された治療の必要が存在する。 【0010】大部分の原発性中枢神経系(CNS)腫瘍のための治療は、現在まで満足できるものではなかった。化学療法、放射線療法、および手術は主に細胞減少的(cytoreductive)であり、宿主内の生存腫瘍細胞の数を減少させることを目指す。これらの技術の適用は、いくらかのヒト悪性腫瘍において成功した一方、髄芽腫および悪性神経膠星状細胞腫に細胞減少的ストラテジーを使用することは、原発性腫瘍へ到達できないこと、悪性細胞の脳脊髄液への早くからの散在、有効な細胞減少薬剤がないこと、または受容され得ない毒性のために、限られた成功に終わった。従って、従来の細胞減少的治療の上記の欠点を克服する、CNS腫瘍の満足な治療の必要が存在する。 【0011】さらに、現在では脂質代謝の問題と心臓疾患との関連がよく受け入れられている。従って、関連する疾病を有する被験者の脂質代謝を調整または改変し得る治療を見出すことが望まれる。特に、血清トリグリセリドを減少させるための治療および方法が高く望まれる。 【0012】放射線療法が腫瘍疾患の処理において広く用いられてきたが、これは悪性腫瘍の特定の領域が放射線感受性を欠いていることにより制限される。腫瘍の放射線照射に対する感受性を化学的に増強することは、大体において不成功であり、放射線療法の重要な問題であり続けている。従って、放射線療法を含む改善された方法の必要が存在する。 【0013】従って、本発明は、上記およびその他の病的状態をPAAならびにその薬学的に受容可能な塩、誘導体、およびアナログで治療するための方法および組成物を提供する。 【0014】 【課題を解決するための手段】III 発明の要旨本発明は、被験者における種々の病的状態を治療する方法を提供する。また本発明は、被験者における種々の細胞活性の調整を提供する。本発明は、被験者における種々の障害(新生物病態を含む)を治療する方法を提供し、この方法は、以下の式のフェニル酢酸誘導体、それらの塩、それらの立体異性体、およびそれらの混合物の治療的量を投与する工程を含む:一般構造A:【0015】 【化7】
;ここでR0=アリール、フェノキシ、置換されたアリール、または置換されたフェノキシ;R1およびR2=H、低級アルコキシ、低級直鎖および分岐鎖アルキル、またはハロゲン;R3およびR4=H、低級アルコキシ、低級直鎖および分岐鎖アルキル、またはハロゲン;およびn=0〜2の整数。この一般構造は、以下、いかなる特別な方法または組成物に関係なく一般構造Aという。本方法により治療し得る新生物病態は、神経芽腫、急性前骨髄細胞性白血病、急性脊髄形成異常、急性神経膠腫、前立腺ガン、乳ガン、黒色腫、非小細胞肺ガン、髄芽腫、肺ガン、神経膠星状細胞腫、およびバーキットリンパ腫ならびに他の状態を含む。上記の方法のための化合物(一般構造Aに開示したような)、および本明細書中で開示するいかなる方法および組成物のための化合物は、特にフェニルアセテートナトリウムおよびフェニルブチレートナトリウムを含む。 【0016】さらに、予防的な量の一般構造Aのフェニル酢酸誘導体を投与する工程を含む、被験者における新生物病態を予防する方法を提供する。この方法はまた、化合物が抗腫瘍薬剤と併用して投与される方法を含む。本発明はまた、分化誘導する量の一般構造Aのフェニル酢酸誘導体を細胞に投与する工程を含む、細胞の分化を誘導する方法を提供する。 【0017】胎児ヘモグロビンを誘導する量の一般構造Aのフェニル酢酸誘導体を被験者に投与する工程を含む、被験者において胎児ヘモグロビンの産生を誘導する方法もまた含む。 【0018】本発明は、治療的な量の一般構造Aのフェニル酢酸誘導体を被験者に投与する工程を含む、被験者における異常なヘモグロビン活性に関連する病的状態を治療する方法を含む。この方法は、貧血である病的状態を治療するために使用され得る。より特定すると、貧血は鎌状細胞およびβサラセミアからなる群から選択され得る。 【0019】別の実施態様において、本発明は、細胞を一般構造Aのフェニル酢酸誘導体のIL−6阻害量に接触させる工程を含む、細胞におけるIL−6の産生を阻害する方法を提供する。この阻害方法は、以下の病的状態のいずれかを有する被験者において使用され得る:慢性関節リウマチ、キャッスルマン病、メザンギウム増殖、糸球体腎炎、ブドウ膜炎、セプシス、自己免疫炎症性腸疾患、I型糖尿病、脈管炎、および細胞分化関連皮膚障害。もちろん、この阻害は、障害を治療するに十分量である。 【0020】本発明はまた、細胞をTGFα誘導量の一般構造Aのフェニル酢酸誘導体に接触させる工程を含む、細胞においてTGFαの産生を誘導する方法を提供する。この方法は、誘導が被験者の創傷内である場合および誘導が創傷治癒を促進するに十分である場合に使用され得る。 【0021】本発明はまた、細胞をTGF−β2阻害量の一般構造Aのフェニル酢酸誘導体に接触させる工程を含む、細胞においてTGF−β2の産生を阻害する方法を提供する。 【0022】さらに、被験者に治療的な量の一般構造Aのフェニル酢酸誘導体を投与する工程を含む、被験者における中枢神経系のAIDSに関連した機能不全を治療する方法を提供する。 【0023】本発明の別の実施態様は、被験者に免疫監視を増強する量の一般構造Aのフェニル酢酸誘導体を投与する工程を含む、被験者における免疫監視を増強する方法である。 【0024】本発明はまた、一般構造Aの化合物のバイオアベイラビリティーをモニターする方法を提供する。この方法は、ヘモグロビンに関連しない病的状態の治療のために適用し得、この方法は、被験者に化合物を投与する工程および胎児ヘモグロビンのレベルを測定する工程を含む。胎児ヘモグロビンの量の増加は、化合物の病的状態を治療するためのバイオアベイラビリティーの増加を示し、胎児ヘモグロビンの量の減少は化合物の病的状態を治療するためのバイオアベイラビリティーの減少を示す。この方法は新生物病態である病的状態をモニターするに有用である。 【0025】本発明は、被験者の創傷に、創傷を治癒する量の一般構造Aのフェニル酢酸誘導体を投与する工程を含む、被験者における創傷の治癒を促進する方法を提供する。 【0026】さらに、被験者に治療的な量の一般構造Aのフェニル酢酸誘導体を投与する工程を含む、放射線照射および化学療法に抵抗性の被験者における新生物病態を治療する方法を提供する。この方法は、多剤耐性表現型を示す新生物病態の治療のために特に有用である。 【0027】さらに以下の実施態様を提供する:治療的な量のレチノイドを、治療的な量の一般構造Aのフェニル酢酸誘導体と併用して投与する工程を含む、被験者における新生物病態を治療する方法。レチノイドは全トランス−レチノイン酸または9−シス−レチノイン酸であり得る。さらに、この方法は、神経芽腫などの新生物病態を治療するために使用され得る。この方法で治療され得るいくつかの新生物病態は、神経芽腫、急性前骨髄細胞性白血病、急性骨髄形成異常、急性神経膠腫、前立腺ガン、乳ガン、黒色腫、非小細胞肺ガン、髄芽腫、およびバーキットリンパ腫を含むが、これらに限定されない。 【0028】本発明はまた、治療的な量のメバロン酸経路のインヒビターを治療的な量の一般構造Aのフェニル酢酸誘導体と併用して投与する工程を含む、被験者における新生物病態を治療する方法を提供する。この方法は、バスタチンまたはそのアナログであるインヒビターを用いて実施され得る。この方法に有用な特に適切なバスタチンはロバスタチンである。別のクラスのインヒビターはテルペンであり、特にリモネンである。他のインヒビターを、実施例に記載の方法を用いてスクリーニングし得る。この方法は、悪性神経膠腫、腺ガン、および黒色腫を含む新生物病態を治療するために使用され得る。さらに、新生物病態は、非悪性神経膠腫、良性前立腺過形成、および乳頭腫ウイルス感染などの状態を含むが、これらに限定されない非悪性の性質であり得る。関連する方法は上記の工程を使用し、さらに被験者を横紋筋融解症誘導性ミオパシーについて連続的にモニターする工程および、横紋筋融解症誘導性ミオパシーが存在する場合には、被験者にユビキノンを投与する工程を含む。 【0029】本発明のさらなる方法は、新生物病態を有する被験者におけるHMG−coAレダクターゼおよびMVA−PPデカルボキシラーゼを阻害する方法であり、治療的な量のメバロン酸経路のインヒビターを治療的な量の一般構造Aのフェニル酢酸誘導体と併用して投与する工程を含む。適切なインヒビターはバスタチンのクラスまたはそのアナログを含み、特にロバスタチンを含む。他の適切なインヒビターはテルペンおよびそのアナログであり、特にリモネンである。この方法は、必要であれば悪性神経膠腫、腺ガン、および黒色腫を含む新生物病態を治療するために使用され得る。関連する方法はまた、被験者を横紋筋融解症誘導性ミオパシーについて連続的にモニターする工程および、横紋筋融解症誘導性ミオパシーが存在する場合には、被験者にユビキノンを投与する工程をさらに含む。 【0030】本発明はまた、治療的な量のフラボノイドを治療的な量の一般構造Aのフェニル酢酸誘導体と併用して投与する工程を含む、被験者における新生物病態を治療する方法を提供する。適切なフラボノイドはアピゲニンおよびケルセチンを含む。この方法は前立腺ガンを含む新生物病態を治療するために使用され得る。 【0031】本発明はまた、治療的な量のヒドロキシ尿素を一般構造Aの治療的な量のフェニル酢酸誘導体と併用して投与することを含む、被験者における新生物病態を治療する方法を提供する。この併用治療法は、前立腺ガンを含む新生物病態を治療するために使用され得る。 【0032】別の実施態様において、本発明は治療的な量の一般構造Aのフェニル酢酸誘導体を投与する工程を含む、被験者における脂質代謝を調整する方法を提供する。関連する実施態様において、本発明は治療的な量の一般構造Aのフェニル酢酸誘導体を投与する工程を含む、被験者における血清トリグリセリドを減少させる方法を提供する。 【0033】本発明は、治療的な量の一般構造Aのフェニル酢酸誘導体を嚢内投与する工程を含む、被験者の内部組織の新生物病態を局所的に治療する方法を提供する。この方法は、外部から接近可能な内部のオリフィスおよび膀胱の新生物病態を局所的に治療するために使用され得る。従って、この嚢内方法は膀胱ガンおよび腎臓ガンなどの新生物病態を治療するために使用され得る。 【0034】本発明は、治療的な量の一般構造Aのフェニル酢酸誘導体を投与する工程を含む、被験者を放射線療法に対して感受性にする方法を提供する。本発明はまた、レチノイドレセプターと相互作用する薬剤との併用での一般構造Aのフェニル酢酸誘導体の使用、および一般構造Aのフェニル酢酸誘導体の、フリーラジカルに基づく放射線照射または化学療法感受性化または保護的薬剤としての使用を提供する。 【0035】治療的な量のバスタチンおよび治療的な量の一般構造Aのフェニル酢酸誘導体を別個の調製物中に含む、被験者における新生物病態を治療する際において同時、別々または順次に使用するための製品もまた提供する。この組成物には、治療的な量のユビキノンが添加され得る。治療的な量のユビキノンは、重大な付随する副作用なしに、バスタチン(または、特にロバスタチン)の増加した用量の耐性を可能にするに十分な量である。 【0036】被験者における新生物病態の治療における同時、別々または順次の使用のためのさらなる製品は、治療的な量のレチノイドおよび治療的な量の一般構造Aのフェニル酢酸誘導体を別個の調製物中に含む。この組成物は、全トランス−レチノイン酸および9−シス−レチノイン酸(または両方)を含むレチノイドを用いて作製し得る。 【0037】被験者における新生物病態の治療における同時、別々または順次の使用のための別の新規な製品を提供する。この製品は、治療的な量のヒドロキシ尿素および治療的な量の一般構造Aのフェニル酢酸誘導体を別個の調製物中に含む。 【0038】本発明は、治療的な量のバスタチンおよび治療的な量の一般構造Aのフェニル酢酸誘導体を含む組成物を提供する。 【0039】本発明は、治療的な量のレチノイドおよび治療的な量の一般構造Aのフェニル酢酸誘導体を含む組成物をさらに提供する。 【0040】本発明は、治療的な量のヒドロキシ尿素および治療的な量の一般構造Aのフェニル酢酸誘導体を含む組成物を提供する。 【0041】1つの局面において、本発明は、以下を提供する:以下の式のフェニル酢酸誘導体、それらの塩、それらの立体異性体、およびそれらの混合物の治療量と併用してフラボノイドの治療量を含む、被験体の新生物病態を治療するための薬学的組成物:【0042】 【化8】
ここで、R0=アリール、フェノキシ、置換アリールまたは置換フェノキシであり;R1およびR2は、独立して、H、低級アルコキシ、ヒドロキシ、低級直鎖および分枝鎖アルキルまたはハロゲンであり;R3およびR4は、独立して、H、低級アルコキシ、低級直鎖および分枝鎖アルキルまたはハロゲンであり;そしてn=0〜2の整数である。 【0043】1つの実施形態において、前記フラボノイドが、アピゲニンである。1つの実施形態において、前記フラボノイドが、クエルセチンである。1つの実施形態において、前記新生物病態が、前立腺ガンである。1つの実施形態において、前記フェニル酢酸誘導体が、フェニル酢酸ナトリウムである。1つの実施形態において、前記フェニル酢酸誘導体が、フェニル酪酸ナトリウムである。 【0044】別の局面において、本発明は、以下を提供する:以下の式のフェニル酢酸誘導体、それらの塩、それらの立体異性体、およびそれらの混合物の治療量と併用してオキシ尿素の治療量を含む、被験体の新生物病態を治療するための薬学的組成物:【0045】 【化9】
ここで、R0=アリール、フェノキシ、置換アリールまたは置換フェノキシであり;R1およびR2は、独立して、H、低級アルコキシ、ヒドロキシ、低級直鎖および分枝鎖アルキルまたはハロゲンであり;R3およびR4は、独立して、H、低級アルコキシ、低級直鎖および分枝鎖アルキルまたはハロゲンであり;そしてn=0〜2の整数である。 【0046】1つの実施形態において、前記新生物病態が、前立腺ガンである。1つの実施形態において、前記フェニル酢酸誘導体が、フェニル酢酸ナトリウムである。1つの実施形態において、前記フェニル酢酸誘導体が、フェニル酪酸ナトリウムである。 【0047】別の局面において、本発明は、以下を提供する:以下の式のフェニル酢酸誘導体、それらの塩、それらの立体異性体、およびそれらの混合物の治療量を含む、膀胱内投与によって被験体の内部組織の新生物病態を局所的に治療するため薬学的組成物:【0048】 【化10】
ここで、R0=アリール、フェノキシ、置換アリールまたは置換フェノキシであり;R1およびR2は、独立して、H、低級アルコキシ、ヒドロキシ、低級直鎖および分枝鎖アルキルまたはハロゲンであり;R3およびR4は、独立して、H、低級アルコキシ、低級直鎖および分枝鎖アルキルまたはハロゲンであり;そしてn=0〜2の整数である。 【0049】1つの実施形態において、前記新生物病態が、膀胱ガンである。1つの実施形態において、前記新生物病態が、腎臓ガンである。1つの実施形態において、前記フェニル酢酸誘導体が、フェニル酢酸ナトリウムである。1つの実施形態において、前記フェニル酢酸誘導体が、フェニル酪酸ナトリウムである。 【0050】別の局面において、本発明は、以下を提供する:別々に調製したオキシ尿素の治療量および以下の式のフェニル酢酸誘導体、それらの塩、それらの立体異性体、およびそれらの混合物の治療量を含む、被験体の新生物病態の治療における、同時の、個々の、または継続使用のための組成物:【0051】 【化11】
ここで、R0=アリール、フェノキシ、置換アリールまたは置換フェノキシであり;R1およびR2は、独立して、H、低級アルコキシ、ヒドロキシ、低級直鎖および分枝鎖アルキルまたはハロゲンであり;R3およびR4は、独立して、H、低級アルコキシ、低級直鎖および分枝鎖アルキルまたはハロゲンであり;そしてn=0〜2の整数である。 【0052】1つの実施形態において、前記フェニル酢酸誘導体が、フェニル酢酸ナトリウムである。1つの実施形態において、前記フェニル酢酸誘導体が、フェニル酪酸ナトリウムである。 【0053】別の局面において、本発明は、以下を提供する:以下の式のフェニル酢酸誘導体、それらの塩、それらの立体異性体、およびそれらの混合物の治療量を含む、放射線および化学療法に対して耐性の被験体新生物病態を治療するため薬学的組成物:【0054】 【化12】
ここで、R0=アリール、フェノキシ、置換アリールまたは置換フェノキシであり;R1およびR2は、独立して、H、低級アルコキシ、ヒドロキシ、低級直鎖および分枝鎖アルキルまたはハロゲンであり;R3およびR4は、独立して、H、低級アルコキシ、低級直鎖および分枝鎖アルキルまたはハロゲンであり;そしてn=0〜2の整数である。 【0055】1つの実施形態において、前記フェニル酢酸誘導体が、フェニル酢酸ナトリウムである。1つの実施形態において、前記フェニル酢酸誘導体が、フェニル酪酸ナトリウムである。1つの実施形態において、前記新生物病態が、多剤耐性表現型を示す。 【0056】別の局面において、本発明は、以下を提供する:別々に調製したフラボノイドの治療量および以下の式のフェニル酢酸誘導体、それらの塩、それらの立体異性体、およびそれらの混合物の治療量を含む、被験体の新生物病態の治療における、同時の、個々の、または継続使用のための組成物:【0057】 【化13】
ここで、R0=アリール、フェノキシ、置換アリールまたは置換フェノキシであり;R1およびR2は、独立して、H、低級アルコキシ、ヒドロキシ、低級直鎖および分枝鎖アルキルまたはハロゲンであり;R3およびR4は、独立して、H、低級アルコキシ、低級直鎖および分枝鎖アルキルまたはハロゲンであり;そしてn=0〜2の整数である。 【0058】1つの実施形態において、前記フラボノイドが、アピゲニンである。1つの実施形態において、前記フラボノイドが、クエルセチンである。1つの実施形態において、前記新生物病態が、前立腺ガンである。1つの実施形態において、前記フェニル酢酸誘導体が、フェニル酢酸ナトリウムである。1つの実施形態において、前記フェニル酢酸誘導体が、フェニル酪酸ナトリウムである。 【0059】別の局面において、本発明は、以下を提供する:以下の式のフェニル酢酸誘導体、それらの塩、それらの立体異性体、およびそれらの混合物の治療量と併用してメバロン酸経路の阻害剤の治療量を含む、被験体の新生物病態を治療するための薬学的組成物:【0060】 【化14】
ここで、R0=アリール、フェノキシ、置換アリールまたは置換フェノキシであり;R1およびR2は、独立して、H、低級アルコキシ、ヒドロキシ、低級直鎖および分枝鎖アルキルまたはハロゲンであり;R3およびR4は、独立して、H、低級アルコキシ、低級直鎖および分枝鎖アルキルまたはハロゲンであり;そしてn=0〜2の整数である。 【0061】1つの実施形態において、前記阻害剤が、バスタチンまたはそれらのアナログである。別の実施形態において、前記バスタチンが、ロバスタチンである。1つの実施形態において、前記阻害剤が、テルペンである。別の実施形態において、前記テルペンが、リモネンである。1つの実施形態において、前記新生物病態が、悪性神経膠腫、腺ガン、または黒色腫である。1つの実施形態において、前記フェニル酢酸誘導体が、フェニル酢酸ナトリウムまたはフェニル酪酸ナトリウムである。1つの実施形態において、前記疾患が、非悪性神経膠腫、または良性前立腺肥大、乳頭腫ウイルス感染である。別の局面において、本発明は、前記の組成物で処置される被験体において検出される横紋筋肉腫誘発筋疾患を治療するための、ユビキノンを含む薬学的組成物を提供する。なお別の局面において、本発明は、前記組成物および前記ユビキノンを含む薬学的組成物を備えるキットを提供する。 【0062】別の局面において、本発明は、以下を提供する:以下の式のフェニル酢酸誘導体、それらの塩、それらの立体異性体、およびそれらの混合物の治療量と併用してメバロン酸経路の阻害剤の治療量を含む、新生物病態を有する被験体のHMG-CoAリダクターゼおよびMVA-PPデカルボキシラーゼを阻害するための薬学的組成物:【0063】 【化15】
ここで、R0=アリール、フェノキシ、置換アリールまたは置換フェノキシであり;R1およびR2は、独立して、H、低級アルコキシ、ヒドロキシ、低級直鎖および分枝鎖アルキルまたはハロゲンであり;R3およびR4は、独立して、H、低級アルコキシ、低級直鎖および分枝鎖アルキルまたはハロゲンであり;そしてn=0〜2の整数である。 【0064】1つの実施形態において、前記阻害剤が、バスタチンまたはそのアナログである。別の実施形態において、前記バスタチンが、ロバスタチンである。1つの実施形態において、前記阻害剤が、テルペンである。別の実施形態において、前記テルペンが、リモネンである。1つの実施形態において、前記新生物病態が、悪性神経膠腫、腺ガン、または黒色腫である。1つの実施形態において、前記フェニル酢酸誘導体が、フェニル酢酸ナトリウムまたはフェニル酪酸ナトリウムである。別の局面において、本発明は、前記の組成物で処置される被験体において検出される横紋筋肉腫誘発筋疾患を治療するための、ユビキノンを含む薬学的組成物を提供する。なお別の局面において、本発明は、前記組成物および前記ユビキノンを含む薬学的組成物を備えるキットを提供する。 【0065】別の局面において、本発明は、以下を提供する:別々に調製した、バスタチンの治療量および以下の式のフェニル酢酸誘導体、それらの塩、それらの立体異性体、およびそれらの混合物の治療量を含む、被験体の新生物病態の治療における、同時の、個々の、または継続使用のための組成物:【0066】 【化16】
ここで、R0=アリール、フェノキシ、置換アリールまたは置換フェノキシであり;R1およびR2は、独立して、H、低級アルコキシ、ヒドロキシ、低級直鎖および分枝鎖アルキルまたはハロゲンであり;R3およびR4は、独立して、H、低級アルコキシ、低級直鎖および分枝鎖アルキルまたはハロゲンであり;そしてn=0〜2の整数である。 【0067】1つの実施形態において、前記組成物がさらにユビキノンの治療量を含む。1つの実施形態において、前記フェニル酢酸誘導体が、フェニル酢酸ナトリウムまたはフェニル酪酸ナトリウムである。 【0068】 【発明の実施の形態】V.発明の詳細な説明本明細書で使用される用語「フェニルアセテート誘導体 (phenylacetic acidderivative)」または「フェニルアセテートアナログ(phenylacetic acid analog)」は、以下の化合物を意味する:【0069】 【化17】
;ここで、R0は、アリール(例えば、フェニル、ナフチル)、フェノキシ、置換アリール(例えば、1つまたはそれ以上のハロゲン[例えば、F、Cl、Br、I]、低級アルキル[例えば、メチル、エチル、プロピル、ブチル]あるいはヒドロキシ置換体(substituent))または置換フェノキシ(例えば、1つまたはそれ以上のハロゲン[例えば、F、Cl、Br、I]、低級アルキル[例えば、メチル、エチル、プロピル、ブチル]あるいはヒドロキシ置換体)である;R1およびR2は、それぞれ、H、低級アルコキシ(例えば、メトキシ、エトキシ)、低級の直鎖および分枝鎖アルキル(例えば、メチル、エチル、プロピル、ブチル)またはハロゲン(例えば、F、Cl、Br、I)である;R3およびR4は、それぞれ、H、低級の直鎖および分枝鎖アルキル(例えば、メチル、エチル、プロピル、ブチル)、低級アルコキシ(例えば、メトキシ、エトキシ)、またはハロゲン(例えば、F、Cl、Br、I)である;そして、nは0から2の整数である;それらの塩(例えば、Na+、K+、または他の薬学的に受容可能な塩);それらの立体異性体;およびそれらの混合物。 【0070】nが2のとき、2つのR3置換基のそれぞれおよび2つのR4置換基のそれぞれは、独立して、上記のフェニルアセテート誘導体の定義内で変化し得る。この定義にはフェニルアセテート(PAA)およびフェニルブチレート(PBA)が包含されることが意図される。この定義による混合物にはカルボン酸塩、例えば、フェニルアセテートナトリウムおよびフェニルアセテートカリウムの混合物、を包含することが意図される。これらの化合物のカルボキシル部分は主な活性部位であるので、ここでフェニルアセテート(PA)およびフェニルブチレート(PB)のようなカルボキシレートについて言及するときは、 Na+、K+、または他の薬学的に受容可能なカチオン(例えば、アルギニン)のような適切な中和性のカチオンについて言及することをも意図する。それゆえ、本明細書で用いられるPAまたはPB誘導体あるいは類似体とは、この定義でいうフェニルアセテート誘導体を意味する。これらの誘導体のいくつかは、生物系に存在する場合に相互に変換され得る。例えば、PAは、酵素的に動物体内でPBに変換され得、そして同様にPBはPAに変換され得る。 【0071】従って、フェニル酢酸誘導体には、フェニル酢酸、フェニルプロピオン酸、フェニル酪酸、1−ナフチル酢酸、フェノキシ酢酸、フェノキシプロピオン酸、フェノキシ酪酸、4−クロロフェニル酢酸、4−クロロフェニル酪酸、4−ヨードフェニル酢酸、4−ヨードフェニル酪酸、α−メチルフェニル酢酸、α−メトキシフェニル酢酸、α−エチルフェニル酢酸、α−ヒドロキシフェニル酢酸、4−フルオロフェニル酢酸、4−フルオロフェニル酪酸、2−メチルフェニル酢酸、3−メチルフェニル酢酸、4−メチルフェニル酢酸、3−クロロフェニル酢酸、3−クロロフェニル酪酸、2−クロロフェニル酢酸、2−クロロフェニル酪酸、および2,6−ジクロロフェニル酢酸、ならびにこれらの化合物のナトリウム塩が包含されるが、これらに限定されない。 【0072】本発明の化合物は、静脈的に、腸溶的に、非経口的に、筋肉内に、鼻口内に、皮下的に、局所的に、膀胱内にまたは経口的に投与され得る。投薬量は、インビトロおよびインビボでの抗ガン性研究で観察された効果的な阻害濃度に基づく。本発明の化合物の種々の有効な利用については、これらはまた他の抗ガン剤(例えば、オキシ尿素、5−アザシチジン、5−アザ−2’−デオキシシチジンおよびスラミン);レチノイド;ホルモン;生物学的応答モディファイヤー(例えば、インターフェロンおよび造血増殖因子);および従来の化学および放射線療法と併行してあるいは組み合わせて投与し得るという知見からさらに明らかとなる。本発明の方法および化合物は、ヒト被験者を含む動物被験体を処置するために使用され得ることが理解される。 【0073】本明細書を通して用いられている用語「〜と併用し」は、併用構成薬物を、同時にあるいは薬物が体内で同時に活性であるような間隔で処置することを意味する。さらに、本明細書で使用する用語「治療量」とは、薬剤、薬物あるいはクレームされた使用に適切な一般的なクラスの化合物の総量を示す。それゆえ、「治療量」とは、上記活性を有しないクラスのものを排除している。 【0074】本明細書で使用する用語「レチノイド」または「レチノイズ」は、9−シスレチノイン酸およびトランス、レチノイン酸を含むあらゆる適切な一般的なクラスを含んでいるが、これに限定されない。レチノイドを組み合わせた療法は乳ガン、白血病、および悪性黒色腫を包含するガンの処置に適切である。 【0075】本明細書で使用されるメバロン酸経路の阻害剤は、テルペンおよびバスタチンのような化合物を含む。適切なバスタチンはロバスタチンを含んでいる。適切なテルペンは、リモネンおよびその誘導体を含んでいる。 【0076】ビオフラボノイドは、ビタミンP複合体として知られている化合物のクラスであり、そして、毛細血管の脆性に影響を与えること(止血剤)として知られている。一般にこれらは毛細血管の透過性および脆性を減少させる。本明細書で使用されるフラボノイドはアピゲニン(apigenin)およびクエルセチン(quercetin)を含む。しかし、他のフラボノイドも同様の有用性が期待され得る。 【0077】個々の化合物の特定の活性は、実施例に記載されたアッセイおよびモデルを用しいてスクリーニングされ得る。 【0078】本発明で使用される用語「脂質代謝の調節」は、インビボでの脂質生産および分解能を変化させる治療能力を示す。例えば、ある脂質代謝の調節は、血清トリグリセリドの減少(被験体の血清中の低密度および高密度のリポタンパク質のレベル)、すなわち被験体のコレステロールのレベルを下げる。 【0079】 【実施例】VI.実施例実験を含む本明細書中に記載の実施例は、あらゆる言外の限定を有することなく、以下のA〜Rに関するフェニル酢酸およびその誘導体に焦点を置いた本発明の実施を例示するための方法を提供する。A.ガンの治療および予防におけるフェニル酢酸およびその誘導体の使用;B.創傷癒合におけるフェニル酢酸およびその誘導体の使用;C.インターロイキン−6と関連した疾患の治療におけるフェニル酢酸およびその誘導体の使用;D.エイズ関連のCNS機能障害の治療におけるフェニル酢酸およびその誘導体の使用;E.免疫監視を強めるためのフェニル酢酸およびその誘導体の使用;F.患者におけるフェニル酢酸およびその誘導体の用量レベルおよび/またはこれらの薬物に対する患者の応答をモニターする方法;G.フェニル酢酸およびその誘導体によるPPARの活性化;H.多剤耐性表現型を有するガンの治療におけるフェニル酢酸およびその誘導体の使用;I.フェニル酢酸およびその誘導体の効力と親油性との間の相関;J.神経芽細胞腫細胞を含むようなガンの治療および予防のための、フェニル酢酸およびその誘導体とレチノイン酸との相乗的併用;K.悪性神経膠腫または他のCNS腫瘍のようなガンの治療および予防のための、フェニル酢酸およびその誘導体とロバスタチン(lovastatin)との相乗的併用;L.悪性黒色腫または他の神経外胚葉腫瘍を含むようなガンおよび他の分化障害の治療および予防のためのフェニル酢酸およびその誘導体;M.前立腺ガンのようなガンの治療および予防のための、フェニル酢酸およびその誘導体とオキシ尿素(HU)との相乗的併用;N.髄芽細胞腫および神経膠星状細胞腫誘導細胞を含むガンの治療および予防のためのフェニル酢酸およびその誘導体;O.PAおよびPBを用いる治療に関連するヒト研究におけるフェニル酢酸およびその誘導体;P.血清トリグリセリドを減少させる工程を含む脂質代謝を改変する方法におけるフェニル酢酸およびその誘導体;Q.悪性細胞および非悪性細胞でのフェニル酢酸およびその誘導体によるHbFの誘導;およびR.フェニル酢酸およびその誘導体を投与する方法。 【0080】セクションA.ガンの治療または予防におけるフェニル酢酸およびその誘導体の使用本明細書中で議論されるように、NaPAおよびNaPBは、薬理学的な、非毒性の濃度でインビトロおよび動物モデルにおける腫瘍の増殖に影響を及ぼす。これらの芳香族脂肪酸は、細胞増殖抑制性を誘導し、そしてホルモン治療抵抗性の前立腺癌腫、神経膠芽細胞腫、悪性黒色腫、および肺癌腫を含む種々のヒト悪性細胞の成熟を促進する。腫瘍生物学における顕著な変化は、腫瘍増殖、浸入、血管形成、および免疫原性と関連される遺伝子の発現の変化と関連付けられた。多数の薬物作用メカニズムが関わるようである。これらのメカニズムには、(a)脂質代謝の改変、(b)DNAのハイポメチル化(hypomethylation)および転写活性化による遺伝子発現の調節、および(c)タンパク質のイソプレニル化の阻害を包含する。第I期臨床治験では、これらの新規な、非毒性の分化誘導剤の効果を確認した。 【0081】フェニル酸誘導体を含有する薬学的組成物は、悪性への逆行を引き起こすこと、および腫瘍細胞の分化を誘導することが示された。例えば、腫瘍細胞の分化を誘導する薬物の能力を示すために、インビトロおよびインビボの異なる分化モデル系を使用した。使用した第1の系は、ヒト前骨髄球性白血病細胞株HL−60であった。この細胞株は、骨髄細胞または単核細胞株列の方へ最終的に分化するために誘導され得る、方向づけられていない前駆細胞を表す。第2の系では、筋細胞、脂肪細胞、および軟骨細胞に分化する能力を有する不死化胚間葉C3H10T1/2細胞を使用した。第3の系は、ヒト赤白血病K562細胞を使用した。なぜなら、これらはヘモグロビンを産生するために誘導され得るからである。インビボ実験は、ヒトおよび動物での最終分化を誘導することにおいてNaPAの有効性を示した。 【0082】実施例1:悪性神経膠腫(gloma)における増殖阻止さらに、フェニルアセテートは、フェニルケトン尿症において未成熟脳への損傷と関連付けられている。発育中の正常脳と悪性中枢神経系腫瘍との間の増殖パターンおよび代謝が類似するために、フェニルアセテートはいくかの脳ガンに損傷を与え得る。フェニルアセテートは、小児および成人が十分に耐える薬理学的濃度で使用される場合、細胞増殖抑制性および培養されたヒト神経膠芽細胞腫細胞の悪性特性の逆転を誘導し得る。興味深いことに、処置された腫瘍細胞は、メバロネートからの新たなコレステロール合成の選択的減少を含む、フェニルケトン尿症様病態で観察された生化学的変化と同様の生化学的変化を示した。神経膠腫(しかし、正常な成熟脳細胞ではない)が細胞増殖に必要なステロールおよびイソプレノイドの生産のためのメバロネートに高度に依存するために、フェニルアセテートは、正常組織には影響を与えずに、インビボで腫瘍増殖に影響を及ぼすことが期待される。頭蓋内神経膠腫を有するラットの全身治療は、宿主に明らかな毒性を与えずに有意な腫瘍抑制を生じる。未分化の脳に対する選択的な活性に関する臨床結果と一致する実験データは、フェニルアセテートが悪性神経膠腫の治療に安全かつ効果的な新規アプローチを提供し得ることを示唆する。 【0083】尿素回路障害を有する小児のフェニルアセテート治療で得られた臨床経験は、ミリモルレベルが有意な有害作用を有せずに達成され得ることを示す。しかし、これらの患者において神経学的毒性が認められないのは、フェニルケトン尿症(PKU)(フェニルアセテートの産生過剰、小頭蓋症、および精神遅滞と関連したフェニルアラニン代謝の先天的エラー)で報告されている重篤な脳損傷とは明白に対照的である。[Scriver.C.R.およびC.L.Clow. 1980. フェニルケトン尿症:ヒト生化学的遺伝学の要説.New Engl.J.Med.303:1394−1400.]。臨床的結果中の差は、フェニルアセテートが、出生前および出生後の両方で血液脳関門を迅速に横切るが、神経学的毒性は未成熟の脳に限られるという事実により説明され得る。感受性の範囲が発育の過程で制限されることについての決定的な証拠は、「母性PKU症候群」の現象により提供される;早期診断され、そしてフェニルアラニン制限食に保持されるPKU女性は、正常に発育し、その後の正規の食餌に耐える。これらの女性は、母性PKUが治療されていないために、しばしば遺伝的に正常ではあるが、精神的に遅滞した乳児を出産する。高レベルの循環中フェニルアセテートは、母親の成熟組織に悪影響を及ぼさずに、胎児の脳に損傷を与える。PKUにおける最初の病理的変化は、神経膠細胞を迅速に発育させることを包含し、そして次の神経機能障害を伴う脂質代謝および髄鞘形成の変化により特徴づけられる。損傷しやすい胎児神経膠組織は、多くの分子的および生化学的局面において新生物神経膠細胞に類似する。これらの局面には、細胞複製に重要なステロールおよびイソプレノイドの合成のためのメバロネート(MVA)代謝[Kandutsch,A.A.およびS.E.Saucier.1969.正常およびジムピ(jimpy)マウスの発育中の脳におけるステロール合成の調節.Arch.Biochem.Biophys.135:201−208;Fumagalli,R.,E.Grossi,P.Paoletti、およびR.Paoletti. 1964.脳腫瘍中の脂質に関する研究I.ヒト脳腫瘍中のコレステロールの前駆体ステロールの発生および意義.J.Neurochem.11:561−565;Grossi,E.,P.Paoletti、およびR.Paoletti.1958.脳のコレステロールおよび脂肪酸の生合成の分析.Arch.Int.Physiol.Biochem.66:564−572]、およびDNA、RNAおよびタンパク質の合成のための窒素ドナーとしての循環中のグルタミンへの特独な依存性[Perry.T.L.,S.Hasen,B.Tischler,R.Bunting,およびS.Diamond.1970.フェニルケトン尿症におけるグルタミン涸渇、精神欠陥の可能な原因.NewEngl.J.Med.282:761−766;Weber,G.1983.ガン細胞の生化学的ストラテジーおよび化学治療法の設計:G.H.A Clowes記念講演.Cancer Res.43:3466−3492」が包含される。これらの研究の基礎となる仮説は、ヒトの血清グルタミンと結合しそしてこれを涸渇すること、および未成熟脳のMVA経路を阻害することが知られているフェニルアセテート[Castillo,M.,M.F.ZafraおよびE.Garcia−Peregrin.1988.実験的高フェニルアラニン血症における脳および肝臓の3−ヒドロキシ−3−メチルグルタリル−CoAレダクターゼおよびメバロネート−5−ピロリン酸デカルボキシラーゼの阻害.Neurochem.Res.13:551−555;Castillo.M.,J.Iglesias M.F.Zafra,およびE.Garcia−Peregrin.1991.フェニルアラニンのフェニルおよびフェノール性誘導体によるニワトリ脳コレステロール生成酵素の阻害. Neurochem.Int.18:171−174;Castillo,M.,M.Martinez−Cayuela,M.F.Zafra,およびE.Garcia−Peregrin.1991.肝臓コレステロール生成の主な調節酵素に対するフェニルアラニン誘導体の効果.Mol.Cell.Biochem.105:21−25]は、悪性神経膠腫中のこれらの重要な制御ポイントを攻撃し得る。フェニルアセテートの有効性を、インビトロおよびインビボの腫瘍モデル両方を用いて示した。 【0084】細胞培養物および試薬。ヒト神経膠芽細胞腫細胞株をAmerican Type Culture Collection(ATCC, Rockville, MD)から購入し、そして他に特定されなければ、10%の熱で不活性化した仔ウシ血清、抗生物質および2mMLグルタミンを補充したRPMI 1640に保持した。新たに得られた臍帯から単離したヒト臍静脈内皮細胞は、D.GrantおよびH. Kleinman(NIH, Bethesda MD)から提供された。フェニル酢酸およびフェニル酪酸のナトリウム塩はElan Pharmaceutical Corporation(Gainseville,GA)から提供された。フェニルアセチルグルタミンは、S. Brusilow(Johns Hopkins, MD)からの贈呈物であった。 【0085】細胞複製および生存率の評価。3−[4,5−ジメチルチアゾール−2−イル]−2,5−ジフェニルテトラゾリウムブロマイドを用いる酵素アッセイ(Sigma, St. Louis, MO)[Alley, M.C., D.A. Scudiero, A. Monks, M.L. Hursey, M.J. Czerwinski, D.L. Fine, B.J. Abbott, J. G. Mayo, R.H. Schoemaker,およびM.R. Boyd, 1988. マイクロ培養テトラゾリウムアッセイを用いるヒト腫瘍細胞株のパネルによる薬物スクリーニングの可能性. CancerRes. 48:589−601]、血球計を用いる細胞計数、続いて、トリプシン/EDTAによる剥離により、およびDNAへのチミジン組み込みにより、増殖率を決定した。異なるアッセイは本質的に同じ結果を生じた。細胞生存率をトリパンブルー排除により評価した。 【0086】半固体寒天におけるコロニー形成。腫瘍細胞をトリプシン/EDTAで剥離し、0.36%寒天を含有する成長培地に再懸濁させ、そして薬物の存在または非存在下で固体寒天(0.9%)基底層にプレーティングした。3週間後、30個またはそれ以上の細胞から構成されるコロニーを評価した。 【0087】免疫細胞化学。細胞を、Dako PAP kit K537(Dako Corporation, CA)を用いる抗ビメンチン(vimentin)モノクローナル抗体で免疫染色した。 【0088】コレステロール、タンパク質およびDNA合成の測定。ステロイド合成の研究のために、3μMロバスタチンおよび0.5mM非標識メバロネートを含有する成長培地にて、5mMフェニルアセテートまたは2.5mMフェニルブチレートの存在または非存在下で、5×106DPM[5−3H]−メバロネート(35Ci/mmol)(New England Nuclear, Boston, MA)を用いて細胞を24時間標識した。細胞ステロイドをヘキサンで抽出し、そしてシリカ薄層クロマトグラフィーにより分離した。ヘキサンに溶解した放射性標識生成物のRfは、3つの異なる溶媒系中の放射性標識コレステロール標準と同じであった。同様に処置した細胞を、[3H]−ロイシン(158Ci/mmol)または[3H]−デオキシチミジン(6.7Ci/mmol)(New England Nuclear)を用いた代謝標識により、新たなタンパク質およびDNA合成について試験した。フェニルアセテート/フェニルブチレートと共にインキュベートした細胞ホモジネート中の[1−14C]−メバロネート(49.5mCi/mmol)(Amersham, Chicago,IL)から放出した14CO2の測定を、確立された手順に若干の改変を加えて実施した。 【0089】タンパク質のイソプレニル化の分析。細胞培養物を、完全成長培地中10mMフェニルアセテートまたは2.5mMフェニルブチレートと共に24時間インキュベートし、そして処理の最後の15時間でRS−[2−14C]−メバロネート(16μCi/ml、比放射能15μCi/mmol)(AmericanRadiolabeled Chemicals, Inc. St. Louis, MO)で標識した。全細胞タンパク質を抽出し、10%SDS−ポリアクリルアミドゲルに再溶解させ、そしてクマシーブリリアントブルー(Commassie Brilliant Blue)で染色した。次いで、ゲルを乾燥させ、そしてKodak X−Omatフィルムに4日間露光させた。 【0090】動物研究。ヒト神経膠芽細胞腫細胞の腫瘍形成表現型に対するフェニルアセテートの効果を測定するために、培養物を1週間前処理し、次いで、回収し、30%マトリゲル(matrigel)(Collaborative Biomedical Products, Bedford, MA)を含有する培地に再懸濁させ、そして5週令の雌性無胸腺マウス(Division of Cancer Treatment, NCI Animal Program,Frederick Cancer Research Facility.)にs.c.移植した(部位当たり2.5×106細胞)。次いで、動物を、注射部位での腫瘍増殖について観察した。薬物のインビボでの効果をさらに評価するために、Fisher 344ラットは、上記のように[Weizsaecker, M., D.F. Deen, M.L. Rosenblum, T.Hoshino, P.H. Gutin,およびM. Baker. 1981. 9Lラット脳腫瘍:動物モデルの説明および適用. J. Neurol. 224:183−192; Culver, K. W., Z. Ram, S. Walbridge, H. Ishii, E.H. Oldfield,およびR.M. Blaese. 1992. 実験脳腫瘍の治療のためのレトロウイルスベクター産生細胞を用いたインビボでの遺伝子導入. Science. 256:1550−1552]、右大脳半球の深層白質に同系9L神経膠肉腫細胞(4×104)の定位接種を受けた。次いで、浸透ミニポンプによる皮下移植を用いて、ナトリウムフェニルアセテート(550mg/kg/日、s.c.)で動物を2週間連続的に処置した。コントロールラットでは、ミニポンプを生理食塩水で充填した。データの統計的な解析は、フィッシャーの抽出テスト(Fisher’s Exact Test)を使用した。培養ヒト神経膠芽細胞腫細胞における細胞増殖抑制性および表現型復帰の誘導。神経膠芽細胞腫細胞のフェニルアセテートを用いた処置により、時間および用量依存性増殖阻止が生じ、同様にDNA合成の減少を伴った。4mMフェニルアセテートによる46日間連続的な処置の後、U87、A172、U373、U343、およびHS683培養物では約50%の増殖阻害があった(IC50 4.4±0.6mM)。腫瘍細胞応答の異種性質を反映して、神経膠芽細胞腫U251およびU318細胞は、感受性が少なかった(8〜10mMのIC50値)。患者で予想される薬理学的な病態を模倣して行われるさらなる研究は、グルタミン涸渇培地中のフェニルアセテートに細胞を曝すことを含んだ。これらの条件は、神経膠芽細胞腫細胞の増殖を完全にブロックするが、正常内皮細胞の複製に対して影響をほとんど有しなかった。脂肪酸伸長によって脳内に形成されたフェニルアセテートの中間代謝物であるフェニルブチレートもまた、腫瘍細胞複製を阻害したが(A172、U87およびU373では、IC50 2.2±0.2mM)、最終代謝物であるフェニルアセチルグルタミンは不活性であった。選択性腫瘍細胞増殖抑制性を誘導するに加えて、フェニルアセテートおよびフェニルブチレート両方とも、細胞の成熟化および骨格中間体フィラメントのパターンの変化(足場非依存性の消失)により出現する非悪性表現型への復帰を促進し、そして無胸腺マウスにおける腫瘍形成性を低下させる(表1)。腫瘍挙動におけるこれらの重要な変化は、増殖調節、血管形成、および免疫抑制(例えば、TGFα、HbF、およびTGF−β2)に関連される遺伝子の発現の変化により達成された。 【0091】 【表1】
フェニルアセテートはメバロネート経路およびタンパク質のイソプレニル化を阻害する。フェニルアセテートに曝された神経膠細胞に観察された最も一致する生化学的変化は、脂質代謝の変化およびMVA経路の阻害を含んだ。アセチル−CoAおよびMVAのような前駆体からのコレステロールおよびイソプレノイドの活発な新たな合成は、発育中の脳の重要な特徴であり(しかし、成熟脳ではない)、髄鞘形成と一致する。これもまた悪性神経膠腫の特質である[Azarnoff, D.L., G.L. Curran,およびW.P. Williamson. 1958. インビトロでヒト頭蓋内腫瘍によるコレステロールへのアセテート−1−14Cの組み込み. J. Nat. Cancer Inst. 21:1109−1115; Rudling, M.J., B.Angelin, C.O. Peterson,およびV.P. Collins. 1990. ヒト頭蓋内腫瘍における低密度リポタンパク質レセプター活性およびコレステロール要求性との関連. Cancer Res. 50(補遺):483−487]。コレステロール生産およびタンパク質のイソプレニル化は、24時間内にフェニルアセテートまたはフェニルブチレートのいずれかで処理した神経膠芽細胞腫において低下し、DNAおよび全タンパク質合成の変化が生じたが、これは48時間後に検出された。イソプレニル化の低下は、PKU様病態の胚脳で先に観察された効果であるMVAのデカルボキシル化の低下(対照の50%未満)と比較した。MVA−5−ピロリン酸デカルボキシラーゼ(脳中のコレステロール合成を調節する鍵酵素)を、MVAキナーゼおよびMVA−5−リン酸キナーゼが最小限だけ影響される条件下でフェニルアセテートにより阻害した。フェニルアセテートはまた、アセチル−CoAからのMVA合成を妨害する。しかし、神経膠芽細胞腫細胞は外因性MVA(0.3〜3mM)により治療し得なかった。これは、その合成よりもむしろMVAを利用することが、プライム標的であることを示唆する。 【0092】メバロネートは、全細胞周期の進行に必要とされる数種のイソペンテニル部分(例えば、ステロール、ドリコール、ユビキノンおよびイソペンテニルアデニンの側鎖、および重要なタンパク質の小セットを修飾するプレニル基)の前駆体である[Goldstein, J.L.およびM.S. Brown. 1990. メバロネート経路の調節. Nature. 343:425−430;Marshall, C.J. 1993. タンパク質のプレニル化:タンパク質−タンパク質相互作用の仲介物. Science. 259:1865−1866; Braun, P.E., D.De Angelis, W.W. Shtybel,およびL. Bernier. 1991. イソプレノイド修飾は2’,3’−環状ヌクレオチド3’−ホスホジエステラーゼを膜に結合させる. J. Neurosci. Res. 30:540−544]。後者は、分裂シグナル変換導入に関わる原形質膜GおよびG様タンパク質(例えば、ras)(分子量20〜26kDa)、髄鞘形成関連酵素2’,3’−サイクリックヌクレオチド3’−ホスホジエステラーゼ、および分裂に重要な役割を果たす核エンベロープラミン(44−74 kDa)を含む。脳の速やかな発育の間におけるステロールおよびイソプレノイドの阻害は、未治療PKUに見られる小頭蓋症および髄鞘形成障害をもたらし得る。他方、成熟脳ではMVA経路が著しく活性でないため、脱分化された悪性神経膠腫のMVAを標的化することは、周囲の正常組織を損傷せずにインビボで腫瘍増殖を阻害することが期待される。ラットの実験神経膠腫におけるフェニルアセテートの活性。フェニルアセテートのインビボでの抗腫瘍効果を評価するために、Fisherラットを同系9L神経膠肉腫細胞の定位大脳内注射で接種した。この腫瘍モデルは、3〜4週間内で約100%の死亡率が生じるという攻撃的増殖パターンに関して知られている。フェニルアセテートを、浸透圧ミニポンプによる皮下移植により連続的に投与して、550mg/kg/日の臨床的に達成し得る用量を送達した。頭蓋内に神経膠腫細胞を有するラットの2週間の全身治療は、検出可能な有害作用を有せずに腫瘍増殖を著しく抑制した(p<0.05、表2)。実験動物におけるさらなる研究は、フェニルアセテート(2〜3mMの血漿および髄液レベル)がインビボで腫瘍細胞の成熟化を誘導し、そして生存率を有意に延長した。 【0093】 【表2】
要約および見込み。フェニルアセテートは、発育中の胎児脳への損傷に長い間関連している。原発性CNS腫瘍が非常に未成熟胎児脳を連想させるので、悪性神経膠腫は、同等に損傷を受け易いはずである。さらに、天然のヒトモデルとしての母性PKU症候群を考慮すると、フェニルアセテートは正常組織に損傷を与えずに脳新生物の増殖を抑制することが期待される。実験データはこの仮説を支持する。フェニルアセテートは選択的な細胞増殖抑制性を誘導し、そしてインビトロおよびインビボで神経膠腫細胞の成熟を促進した。未熟増殖の停止および分化はまた、PKUの胎児脳への損傷の基礎となる。多数の作用メカニズムが関わり、これらには、ヒトにおけるタンパク質イソプレニル化の阻害および血漿グルタミンの涸渇が含まれる。証明可能な抗腫瘍活性、毒性の欠如、および投与の容易さ(経口または静脈内)は、悪性神経膠腫、ならびに他の新生物の処理におけるフェニルアセテートの臨床効果を示す。上記のように、フェニルアセテートは、インビトロで前立腺ガンに対し活性を示した。ガンを患った成人をフェニルアセテートで治療する第1相臨床試験は、治療レベルが有意な毒性を有せずに血漿および髄液で達成され得、そして前立腺癌腫および神経膠芽細胞腫患者に有益な予備証拠を提供することを確認した。 【0094】フェニルアセテートは、前立腺癌腫、神経膠芽細胞腫、および悪性黒色腫を含むヒト固体腫瘍を治療するために使用された。治療の結果として、復帰した足場依存性、低下した浸入および無胸腺マウスの腫瘍形成の消失により示されるように、選択的細胞増殖抑制性および表現型復帰が得られた。脳およびホルモン治療抵抗性の前立腺ガン細胞の分子分析は、増殖調節、血管形成、および免疫抑制に関連されるタンパク質であるTGFβの産生および分泌の著しい低下を示した。処理された前立腺細胞は、ヒトの疾患進行の分子マーカーであるウロキナーゼ−プラスミンーゲン活性化因子により仲介される、低下したタンパク質分解活性を示した。 【0095】実施例2:NaPAで処理された脳腫瘍における、成長停止、腫瘍成熟、および生存の延長インビトロ研究細胞増殖。細胞増殖に対するNaPAの影響を、培養9L神経膠肉腫細胞に対するトリチウム化チミジン取り込みアッセイ、およびトリプシン/EDTAによる剥離後血球計数器を用いる細胞計数を用いて評価した。9Lは、Fischer344ラット由来の同系の悪性神経膠腫瘍であり、そして大脳内接種後3〜4週間以内に100%の死亡率を伴う[Weizsaecker M、DeenDF、Rosenblum MLら、9Lラット脳腫瘍:動物モデルの解説および応用、J Neuol.1981;224:183−192]。腫瘍細胞を、5×104腫瘍細胞/ウェルで、24ウェルプレート(Costar、Cambridge、MA)中、10%ウシ胎児血清(Hyclone Laboratories Inc.,Logan,UT)、2mM L−グルタミン(GIBCO BRL、Gaithersburg、MD)、50U/mlペニシリン(GIBCO)および50μg/mlストレプトマシン(GIBCO)および2.5μg/mlファンギゾン(ICN Biomedicals Inc.,Costa Mesa、CA)を添加したダルベッコの改変イーグル培地(DMEM)中にプレーティングした。24時間後、培地を交換し、そしてNaPA(Elan Pharmaceutical Research Corp.,Gainesville、GA)を、0、2.5、5、および10mM濃度で5日間培地に添加した。回収6時間前、0.5mCiトリチウム化チミジン(ICN Radiochemicals、Irvine、CA)を各ウェルに添加した。チミジンの取り込みは、3連のシンチレーションカウントにより測定した。 【0096】半固形培地におけるコロニー形成。足場依存性成長(細胞が半固形培地でコロニーを形成する能力)が悪性神経膠細胞の特徴である。9L細胞を、トリプシン/EDTAを用いて回収し、そして0.36%寒天(Difco)を含む成長培地中1.0×104細胞/mlで再懸濁した。2mlの細胞懸濁液を、4mlの固形寒天(0.9%)でプレコートされた60mmプレート(Costar、Cambridge、MA)に添加した。フェニルアセテートを、異なる濃度(0、1.25、2.5および5mM)で寒天に添加した。第2番目の実験では、9L細胞を、5mM NaPAを含む組織培養中で7日間成長させた。次いで、記載のように、細胞を、NaPAを含まない寒天平板に移した。30またはそれより多い細胞を含むコロニーを3週間後に計数した。 【0097】9L脳腫瘍接種およびフェニルアセテート投与。230〜350g体重のFisher 344ラット(n=50)を、腹腔内(i.p.)ケタミン(90mg/Kg、Fort Dodge Laboratories, Inc,Fort Dodge,Iowa)およびキシラジン(10mg/Kg、MobayCorporation, Shawnee、Kansas)を用いて麻酔し、そして定位固定装置(David Kopf Instruments,Tujunga,California)中に置いた。5μL(Hankの)平衡塩溶液中の4×104の同系の9L神経膠肉腫細胞を、定位固定装置の操作アームに連結した10μLのハミルトンシリンジを用いて、右大脳半球の深部白質(接種の深さ3.5mm)中に注入した。10匹のラットにおいて、フェニルアセテートを、2つの2ML2浸透圧ポンプを用いて、5μl/時間の放出速度で14日間(Alza Corporation,Palo Alto,CA)、薬物の連続皮下(s.c.)放出により投与した。腫瘍接種の日に、ポンプを両側腹部の皮下組織中に移植した。ラット1匹当たり550mg/kgの連日用量に対して、ポンプ中の薬物濃度は650mg/ml(両方のポンプについて総量2600mg)であった。ミニポンプを、28日の全処置に対して14日後に取り替えた。15匹の別のラットに、記載されたように、腫瘍の大脳内投与7日後から開始して、NaPAを投与した。これらのラットでは、NaPAの別の連日注入(300mg/kg、i.p.)を28日間行った。コントロールラット(n=25)には、2つのs.c.2ML2浸透圧ポンプから連続生理食塩水を投与した。手術時にペニシリン(100,000u/kg、i.m.)を、ミニポンプ移植前のすべてのラットに投与した。各グループについて生存率を記録した。確立された腫瘍について処理された3匹のラットおよび2匹のコントロールラットを、NaPAの開始後7日(腫瘍接種14日後)に屠殺した。これらを、処置された腫瘍の電子顕微鏡研究、インビボ増殖アッセイ、および血清中およびCSFのNaPAレベルの測定に用いた。末梢器官(心臓、肺、脾臓、肝臓、腎臓、腸、副腎、および生殖腺)を回収し、そして一般組織学的検査に供した。脳標本を切片にし、そして薬物関連毒性の証拠について、ルーチンのヘマトキシリンおよびエオシン(H&E)ならびにミエリン染色(Luxol−fast blue)に対して染色した。 【0098】電子顕微鏡観察。動物を、pH7.4の0.1Mカコジル酸ナトリウム中の1%パラホルムアルデヒドおよび2.5%グルタルアルデヒドを用いて心臓内灌流により屠殺した。2時間後、固定した脳を緩衝液中で洗浄し、そして1mm厚さの冠状切片にスライスした。腫瘍を含む領域を、1mm3立方体にさらに解剖し、0.1M カコジル酸ナトリウム緩衝液中の2%オスミウムテトラオキシドを用いて2時間の間後固定し、緩衝液中で洗浄し、1%ウラニルアセテートを用いてpH5で一晩一括して媒染処理し、次いで洗浄し、脱水し、そしてEpon中に包埋した。薄切片を、いくつかのレベルで各ブロックに切断し、より大きなサンプリングを確実にした。腫瘍細胞の電子顕微鏡写真を、形態についてランダムに撮った。 【0099】インビトロ増殖アッセイ。1匹のNaPA処理および1匹の生理食塩水処理ラットに、腫瘍接種14日後、および処置開始7日後、9mg/3mlのBrdU(Amersham,Illinois)をi.p.注入した。2時間後、ラットを屠殺し、そして脳を取り出し切片にした。マウス抗BrdUモノクローナル抗体を、組織の免疫染色のために用い、この組織は、次いで、ヘマトキシリンで対比染色した。10高出力視野中の腫瘍細胞を、各腫瘍標本中で計数し、そして陽性の染色細胞(活性な細胞分裂の間のBrdUの取り込みを示す)のパーセントを記録した。 【0100】血清およびCSF中のNaPAレベルの測定。3匹のNaPA処理および2匹の生理食塩水処理ラットを、s.c.およびi.p.NaPAの併用、または生理食塩水投与の7日後、屠殺した。血液を心臓から引き抜き、そしてCSFを大槽から吸引した。CSFの容量制限のため、プールした血清およびCSFサンプルを同様の様式で評価した。生物流体の200μlアリコートのタンパク質抽出を、100μlの10%過塩素酸溶液を用いて実施した。150μlの上清液を、25μlの20%重炭酸カリウムで中和し、そして遠心分離した。次いで125μlの上清液を、サンプリングチューブにピペットで移した。クロマトグラフィーを、30cmのWaters C18カラム(内径3.9mm)を用いて60℃でGilson715HPLCシステム上で実施した。75μlの注入液を、20分間にわたって1ml/分の流速で5〜30%の範囲のアセトニトリル/水グラジエントを用いて溶出した。UVモニタリングを20nmの波長で実施した。フェニルアセテートの溶出時間は、14.8分であった。 【0101】統計解析。χ2乗検定を用いて、BrdU陽性細胞の割合を比較した。Mantel−Haenzel検定を、生存実験におけるNaPA処理と生理食塩水処理ラットとの間の生存率を比較するために用いた。 【0102】インビトロの結果細胞増殖おいよび足場依存性に対するNaPAのインビトロ効果。 【0103】5日間のNaPAを用いた9L細胞の処置は、IC50が6.0±0.5mMで、細胞数の用量依存性の減少を生じた。これは、トリチウム化チミジン取り込みの減少を伴った。さらに、フェニルアセテートは、足場依存性の用量依存性回復を誘導し、悪性表現型の逆行を示した(表3)。寒天中(NaPAを含まない)にプレーティングする前7日間の間NaPAに曝された9L細胞は、なおコロニー形成において>40%の阻害を示した(表3)。 【0104】 【表3】
インビボ研究インビボ増殖アッセイおよび電子顕微鏡知見。確立した脳腫瘍のNaPAを用いた処置は、増殖速度を有意に減少させる結果となった。1347の生理食塩水処置腫瘍細胞のうち429と比較して、1283の処置腫瘍細胞のうち285がBrdUに対して染色された(生理食塩水処理腫瘍では0.33に対してNaPA処置では0.22の分裂指数;p<0.0001)。 【0105】これら腫瘍の電子顕微鏡撮影は、NaPA処置腫瘍細胞で、著量の良く組織化された粗面小胞体を示し、より高いレベルの細胞分化を示した[Ghadially FN編、細胞分化および新形成における小胞体およびリボソーム、Ultrastructural Pathology of the Cell and Matrix Third、London:Buttorworths;1992:450−454]。対照的に、非処置腫瘍は、一般に、粗面小胞体が乏しくそして多くのポリリボソームを有していた(これは高度に悪性な細胞の特徴である)。さらに、非処置腫瘍では、分裂細胞がより多い頻度で見出された。 【0106】NaPAの血清およびCSFレベル。s.c.およびi.p.NaPAの併用(850mg/kgの連日の総用量)または生理食塩水投与の7日後得られた、3匹の処置および2匹のコントロールラット由来のプールされた血清およびCSFのアッセイは、血清中に2.45mMのおよびCSF中に3.1mMの平均フェニルアセテートレベルを示した。生理食塩水処置ラットからのCSFサンプルではフェニルアセテートは検出されなかった。 【0107】生存実験同時腫瘍接種およびNaPAの投与。10匹のNaPA処置ラットのうち7匹は、NaPAが腫瘍接種の日に開始して4週間投与されたとき、腫瘍接種後>90日生存した。10匹のコントロールラットのうち9匹は、腫瘍接種後34日以内に死亡した(p<0.01、Mantel−Haenzel検定)。 【0108】確立された腫瘍のNaPAを用いた処置。s.c.およびi.p.NaPAで4週間(腫瘍接種7日後に開始)処置した12匹のラットのうち5匹が腫瘍接種後50日間なお生存し、その一方13匹の生理食塩水処置ラットのうち12匹は36日までに死亡した(p<0.03、Mantel−Haenzel検定)。 【0109】毒性。試験されたいずれのラットにおいてもNaPA処置の有害作用は検出されなかった。主な腫瘍末梢器官および非腫瘍性脳の組織学的評価は異常を示さなかった。 【0110】考察。フェニルアセテートは、本研究で用いられたインビトロおよびインビボ脳腫瘍モデルにおいて、強力な細胞増殖抑制性効果および抗腫瘍効果を誘導した。この効果は、長期間生存、および腫瘍接種と同時にまたは腫瘍が確立された後のいずれかでNaPAを投与されたラットの明らかな治癒により示されるように、薬物投与の期間を過ぎても持続した。このNaPAの延長効果は、おそらくいくつかの動物では不可逆的に、処置された腫瘍細胞の悪性表現型が、より良性のおよび分化した表現型に逆転したことを示す。足場非依存性、即ち、細胞が半固形寒天でコロニーを形成する能力は、悪性の神経膠腫細胞の特徴である。フェニルアセテートは、足場依存性の用量依存性回復を引き起こし、神経膠腫細胞の非悪性表現型の復帰を示した。コロニー形成の80%より多い阻害を、処置ラットにおいて測定された血清およびCSFレベルと同様に、2.5mMの寒天平板中のNaPA濃度で達成した。さらに、NaPAに対して1週間曝した後、40%より多い腫瘍細胞が、寒天平板中にNaPAが存在しないにもかかわらず良性の成長パターンを維持した(表3)。細胞分化の顕著なインビボ指標が、本発明者らの研究で処置脳腫瘍細胞の細胞下細胞器官中で観察された。生理食塩水処置腫瘍細胞中の非組織化された細胞質ポリリボソームは、NaPAにより過形成性の、良く組織化された、粗面小胞体に転換された。小胞体は、多くの異なる機能を行う高度に分化した構造である。それ故、良好に発達した小胞体は、細胞分化および機能的活性を示す。粗面小胞体の量、成長速度、および腫瘍の悪性度の間において逆の関係が認められている[Ghadially FN.Diagnostic Electron Microscopy of Tumours.第2版、London:Butterworth;1985]。非処置腫瘍細胞における多くのポリリボソームは、光学顕微鏡により観察される有糸分裂の数と良く相関し、そしてBrdU増殖アッセイにより確認された。これらの変化は、悪性神経膠腫細胞に対するNaPAの分化効果を顕著に表し、そして細胞増殖におけるインビボ減少および脳腫瘍を有する処置動物で生じた生存の延長と相関する。 【0111】処置ラットでは、治療血液中およびCSFのNaPAレベルに到達した。高CSFレベルは、中枢神経系中および増殖する腫瘍中へのNaPAの良好な浸透を示す。用いられる用量は、先天性の尿素合成エラーを有する小児(2.5g/kg/日)またはラット(1.6g/kg/日)における、NaPAの既知の毒性レベルのかなり下であり、そしてNaPAがより高い用量で、おそらく抗腫瘍効率の増大とともに、安全に与えられ得ることを示す。これらのデータは、フェニルアセテートが、非毒性用量でラットに与えられれば、腫瘍成長の調節および細胞成熟に対して重要な効果を有することを示す。 【0112】実施例3:5−アザ−2’−デオキシシチジンで誘導される発ガンの抑制:それらの低細胞障害性および遺伝毒性の可能性について選択された分化インデューサーは、化学的予防および維持治療において主要な価値を有し得る。具体的には、フェニルアセテートが化学的療法ハイポメチル化(hypomethylating)薬物5−アザ−2’−デオキシシチジン(5AzadC)による発ガンを予防する能力を、インビトロでおよびマウス中で試験した。不死化されているが、非腫瘍原性のras形質転換4C8線維芽細胞を5AzadCに一時的に曝すと、成長の接触阻害、獲得侵入力、および無胸腺マウスにおける腫瘍原性の損失により顕示される新生物性の形質転換が生じた。後者は、ras発現の増加およびコラーゲン生合成減少と関連した。これらの重要な表現型および分子変化は、フェニルアセテートの同時処理により妨げられた。フェニルアセテートによる5AzadC発ガンからの保護は:(a)両薬剤によるDNAハイポメチル化にかかわらず高度に効率的;(b)細胞障害性および遺伝毒性効果がない;(c)処置をやめた後も安定、および;(d)インビボで再現される、ことである。4C8細胞を保持する無胸腺マウスは、5AzadCによる単回i.p.注入後、線維肉腫を発症したが、腫瘍の発症はフェニルアセテートの非毒性用量による全身処置により有意に阻害された。従って、フェニルアセテートおよび経口投与に適したその前駆体フェニル酪酸(phenylbutyrate)は、新しいクラスの化学的予防剤を呈示し得、その有効性および安全性がさらに評価されるべきである。新生物性形質転換の複数工程である性質は、この疾患プロセスを、化学予防的介入に対して修正可能にする。いくつかの薬剤が、発ガンを阻害し、そしてそれによって原発性または続発性ガンの発症を阻害することが示されている[Kelloff,G.J.、C.W.Boone、W.F.,Malone、およびV.E.Steele、1992、化学的予防臨床治験、Mutation Res.,267:291−295;Weinstein,B.I.1991.ガン予防:最近の進歩およびさらなる機会、Cancer Res,51:5080S−5085S;Wattenberg,L.W.天然に存在するおよび合成化合物による発ガンの阻害。Y.Kuroda,D.M.ShankelおよびM.D.Waters編、Antimutagenesis and Anticarcinogenesis、MechanismsII、pp.155−166.New York:Plenum Publishing Corp.,1990;Sporn,M.B.,およびD.L.Newton.1979.ガンおよびレチノイドの化学的予防。Fed.Proc.38:2528−2534]。主に重要なものは、ビタミン(A、B12、C、D3、およびE)、レチノイド、およびテルペンを含む天然産物およびそれらのアナログである。これらの薬剤は、細胞成長および分化を調節することにより発ガン性傷害に続く新生物性形質転換を抑制し得る。そのような1つの成長調節因子がフェニルアセテートである。 【0113】化学的予防剤としてのフェニルアセテートの効力は、5AzadC誘導発ガンのインビトロおよびインビボモデルを用いて試験された。ガンおよびβ鎖ヘモグロビン異常症の処置における5AzadCの有望性にもかかわらず、その臨床応用は、発ガンの可能性に関する懸念から妨げられている。本研究で用いられるモデルは、転写的に活性化されたc−Ha−rasガン原遺伝子を発現する前ガン性のマウス線維芽細胞(細胞株4C8およびPR4)を含んでいた。これらの非腫瘍形成性細胞は、薬学的用量の5AzadCによって高度に悪性転換を受けやすい。しかし、フェニルアセテートは、培養およびマウスの両方において5AzadC誘導発ガンからそのような傷を受け易い細胞を保護し得る。 【0114】細胞培養および試薬。マウスNIH3T3線維芽細胞、PR4Nおよび4C8−A10(本明細書ではPR4および4C8と称する) のサブクローンは先に記載されている[Wilson,V.L.,R.A.Smith,H.Autrup,H.Krokan,D.E.Musci,N−N−T.Le,J.Longoria,D.Ziska,およびC.C.Harris.1986.32Pポストラベル分析によるゲノム5−メチルシトシン測定、Anal. Biochem.,152:275−284;Dugaiczyk,A,J.J.Haron,E.M.Ston,O.E.Dennison,K.N.Rothblum,およびR.J.Schwartz.1983.ニワトリ筋肉から単離されたグリセルアルデヒド−3−ホスフェートデビドロゲナーゼメッセンジャーリボ核酸のデオキシリボ核酸コピーのクローニングおよび配列決定、Biochem.22:1605−1613]。両方の細胞株は、マウスインターフェロンα/βを用いて長期間処置後、LTR/c−Ha−ras1−形質転換3T3細胞から単離された表現型復帰変異体である。培養は、10%の熱不活性化したウシ胎児血清(Gibco)および抗生物質を補充したダルベッコの改変イーグル培地(DMEM)中で維持された。フェニル酢酸およびフェニル酪酸のナトリウム塩(Elan Pharmaceuticals Corporation)は蒸留水に溶解した。5AzadC(Sigma St.Louis MO)は、リン酸塩緩衝化生理食塩水(PBS)中に溶解し、そして使用するまでアリコートに分けて−20℃で貯蔵した。薬物の加水分解を防ぐために、5AzadCを直接光への曝露を常時避けた。 【0115】5AzadCによる処置。培養中の処置のために、細胞を1〜2×105細胞で100mm皿中にプレーティングし、そして薬物を、20および48時間後成長培地に添加した。引き続き細胞を、ヌクレオシドアナログの非存在下で継代培養し、そして表現型の変化を観察した。5AzadCを用いたインビボ処置では、6〜9週齢の雌性無胸腺ヌードマウス(Division of Cancer Treatment,NCI Animal Program,Frederick Cancer Research Facility)に、0.5×106細胞を皮下(s.c.)注射で接種した。24時間後、200μlPBS中の新たに調製した400μgの5AzadCを、各動物に腹腔内(i.p.)投与した(約20mg/kg)。NaPAによる全身処置が本文中に記載されている。 【0116】マトリゲル(Matrigel)上での成長。細胞が組織バリアを分解しそして横切る能力を、再構築された基底膜であるマトリゲル(Collaborative esearch)を利用する定性インビトロ侵入アッセイにより評価した。細胞を、48時間の間、T.C.プラスチック皿中で、単独の5AzadCまたはNaPAと組み合わせた5AzadCに曝した。NaPA処置を、さらに1〜2週間継続した。次いで細胞を、250μlのマトリゲル(10mg/ml)で予めコートした16mm皿(Costar、Cambridge、MA)に再プレーティング(ポイント当たり5×104)した。NaPAは、皿に添加されたか、または効果の可逆性を測定するために省略されたかのいずれかであった。侵入細胞のネット様形成特性は、12時間以内に生じた;マトリゲル中への侵入は6〜9日後明らかであった。 【0117】無胸腺マウスにおける腫瘍形成。細胞を、4〜6週齢の雌性無胸腺ヌードマウス(Division of Cancer Treatment,NCI animal Program,Frederick Cancer Research Facility)中にs.c.(部位当たり5×105細胞)注入した。腫瘍の数、サイズ、および重量を、3〜4週後記録した。組織化学的検査のために腫瘍を切除し、Bouinの溶液(ピクリン酸:37%ホルムアルデヒド:氷酢酸、15:5:1vol/vol)中で固定し、そしてH&Eで染色した。 【0118】DNAメチル化の測定。5−メチルシトシン含量を測定するために、第2回目の5AzadC処置の24時間後、培養のサンプルを採取した。細胞ペレットを、0.5%SDS、0.1M NaCl、10mM EDTA pH8.0中で溶解し、400μg/mlのプロテイナーゼK(Boehringer Mannheim)を添加し、そしてDNA単離および分析まで−70℃で保存した。細胞内DNA中のメチル化/非メチル化シトシン残基の含量を、先に記載のように、32Pポストラベル技法により測定した。 【0119】ノーザンブロット分析およびDNAプローブ。細胞質RNAを指数的に増殖する細胞から抽出し、そして1.2%アガロース−ホルムアルデヒドゲル中の電気泳動により分離した。RNA調製、ナイロン膜上へのブロッティング(Schleicher and Schuell)、放射性標識DNAプローブとのハイブリダイゼーション、およびオートラジオグラフィーは、記載[Rimoldi, D., V.Srikantan, V.L.Wilson, R.H.Bassin,およびD.Samid.1991。5−アザ−2’デオキシシチジンにより誘導される悪性形質転換に対するrasまたはmycガン原遺伝子を発現する非腫瘍形成性線維芽細胞の増加した感受性。Cancer Res、51:324−330]のように行った。DNAプローブは:v−Ki−rasの6.2kb EcoRIフラグメント、ヒトc−Ha−rasI遺伝子の2.9kb SacIフラグメント、およびc−mvc遺伝子のBamHI4.5kbフラグメントを含む。グリセルアルデヒドホスフェートデヒドロゲナーゼcDNA[Dugaiczyk,A、J.J.Haron、E.M.Ston、O.E.Dennison、K.N.Rothblum、およびR.J.Schwartz 1983。ニワトリ筋肉から単離されたグリセルアルデヒド−3−ホスフェートデヒドロゲナーゼメッセンジャーリボ核酸のデオキシリボ核酸コピーのクローニングおよび配列決定、Biochem.、22:1605−1613]は、M.A.Tainsky(University of Texas、Houston)により、そしてマウストランシンcDNAは、G.T.Bowden(University of Arizona、Tucson)により提供された。マウス組織適合性クラスI抗原に対するcDNAプローブは、G.Jay(NIH、Bethesda)からの贈与であった。放射標識プローブを、ランダムプライムDNA標識キット(Boehringer Mannheim、Germany)を用いて[32P]dCTP(NEN)で調製した。5AzadCにより誘導されるインビトロ発ガンおよびフェニルアセテートによるその予防。非処置の4C8およびPR4は、上皮様細胞を含む接触阻害された単層を形成した。先の観察に一致して、対数増殖期の間に0.1μM 5AzadCに対しこれらの培養を一時的に曝すと、迅速および大量の新生物性形質転換を生じる。5AzadC処置の1週間以内に、細胞集団の大部分が、屈折性を有し、そして形状が紡錘形になり、そして成長の接触阻害の損失を示す、増加した飽和密度の多層培養を形成した(表4)。これらの表現型変化は、5〜10mM NaPAにより予防され得る(表4)。NaPA処置のいくつかの異なるレジュメが同様に効果的であることが見出された。これらは:(a)5AzadCの添加1日前から開始するNaPAを用いた予備処理;(b)両薬物に同時に曝す、および;(c)5AzadC1日後のNaPAの添加を含む。すべての場合において、細胞は、引き続いて、少なくとも1週間の間、NaPAを用いた連続処置を受けた。これら条件下の細胞培養は、NaPA単独で処理された細胞同様、非処置のコントロールに似た接触阻害単層を形成した。これらの細胞は、NaPA処置を止めた後、少なくとも3週間の間良性の成長パターンを維持した。 【0120】NaPAが新生物性形質転換を阻害することは、細胞が再構築された基底膜(マトリゲル)に侵入できず、そして無胸腺マウスにおいて腫瘍を形成できないことによりさらに示される。マトリゲル上に置かれたとき、5AzadC形質転換4C8およびPR4細胞は、高度に悪性の細胞に特徴的なネット様構造を発達させ、そして結局、細胞外マトリックス成分を分解した。著しく対照的に、NaPA処置培養は、先に正常な線維芽細胞で観察されたように、マトリゲルの先端上に、小さな、非侵入性のコロニーを形成した。非処置の親細胞は、それらコロニーがゆっくりと成長し、そし非侵入性であるが、おそらくは増加した細胞移動性のために、なお形態が不規則であったように、中間の表現型を示した。フェニルアセテートの化学的予防効果は、その前駆体であるフェニル酪酸によっても同様に生じ得る。フェニル酪酸ナトリウムの存在下(NaPB、1.5〜3mM)で、5AzadCに曝された細胞は、接触阻害される成長を維持し、そしてマトリゲル上に置かれたとき良性の表現型を示した(表4)。 【0121】 【表4】
細胞のインビボ成長特性は、無胸腺マウスにおける細胞の挙動と相関した。5AzadC処置4C8細胞は、マウス中へのs.c.移植の2週間以内に迅速に成長する線維肉腫を発症させた。それらのインビトロ挙動に一致して、親細胞は、はるかに侵略性でなく、8匹のレシピエント動物のうち3匹で、3〜4週間後小さな病巣を形成した。しかし、5AzadCとNaPAとの併用で培養中で1週間の間予備処置された4C8細胞を注入した動物では、腫瘍は発症しなかった(表4)。NaPA単独で処置されて4C8を注入したマウスにおいても腫瘍形成は認められなかった。従って、NaPAが、前悪性の線維芽細胞の表現型復帰を誘導し、そしてシトシンアナログによりそれらの悪性転換を予防したと結論される。 【0122】NaPAによる遺伝子発現の調整。NIH3T3由来の細胞株である4C8およびPR4は、LTR活性化c−Ha−rasガン原遺伝子を保持する。5AzadC処置4C8のノーザンプロット分析は、ras mRNAレベルで有意な増加を示し、そして分化マーカー、コラーゲンα(I型)転写物の減少を示した。NaPAが添加された培養中では遺伝子発現においてそのような変化は起こらなかった。連続処置の1週間後、NaPAを除去してもras発現の回復は起こらず、NaPAの治療利益がさらなる処置がなくても安定であることを確認した。 【0123】DNAメチル化に対するフェニルアセテートおよび5AzadCの影響。5AzadCは、DNAメチル化の強力なインヒビターであり、後成的発現機構は、遺伝子発現および細胞表現型の制御に関係した。ハイポメチル化は、ガンおよび重篤な先天性の貧血の治療効果の基礎になり得る[Momparler,R.L.,G.E.Rivard,およびM.Gyger.1985。急性白血病患者における5−アザ−2’−デオキシシチジンに関する臨床治験、Pharmac.Ther.,30:277−286;Stamatoyannopoulos,J.A,およびA.W.Nienhuis.1992。ヘモグロビン異常症の処置におけるヘモグロビン交換に対する治療アプローチ、Annu.Rev.Med.,43:497−521;Ley,T.J.、J.DeSimone、N.P.Anagnou、G.H.Keller、R.K.Humphries、P.H.Turner,P.H.、N.S.Young、P.Heller,およびA.W.Nienhuis.1982。5−アザシチジンは、β−サラセミア患者におけるγグロビン合成を選択的に増加する、N.Engl.J.Med.、307:1469−1475]。しかし、DNAメチ化における変化がまた、その発ガン性活性の原因となり得る。従って、フェニルアセテートにより保護される細胞におけるDNAメチル化の程度を測定することが重要であった。予期され得るように、5AzadCは、5−メチルシトシン(5mC)含量に有意な減少を引き起こした(表5)。しかし、NaPAとの併用で5AzadC処置した細胞において、およびNaPA単独で処置した細胞において、5mCの比較され得る減少が存在した(表5)。 【0124】 【表5】
NaPAによるインビボ化学的予防。インビボにおけるNaPAの効力を測定するために、研究を拡張して、皮下的に移植された非腫瘍発生性の4C8細胞を持つ無胸腺マウスを含む動物モデルを含めた。5AzadCのマウスへの単回i.p.注入(20mg/kg)は、4C8細胞接種部位で腫瘍の発症を生じた。しかし、マウスが5AzadC注入の1.5時間前にNaPAで前処置され、そしてNaPA処置をその後22日間継続した場合、腫瘍形成の発症は有意に減少した(表6)。動物の体重および挙動により示されるように、NaPA処置に関連する有害作用はなかった。さらに、DNAハイポメチル化を引き起こすにもかかわらず、NaPAは、移植4C8細胞の新生物性形質転換を誘導しなかった。NaPAにより保護された動物は、4C8接種部位で腫瘍の発症もゆっくり増殖する病巣の形成も引き起こさなかった。この動物データは、インビトロでの知見と一致し、NaPAが5AzadC誘導新生物性形質転換を、有意な毒性を生成することなく阻害し得ることを示す。 【0125】 【表6】
ガンの化学的予防の非毒性分化誘導剤の使用は大いに興味深い。薬物の毒性は候補者の集団(すなわち、危険性の高い個人および小康状態の患者)の健康状態および変化しやすい寿命全体を考慮すると特に重要である。分化誘導剤フェニルアセテートは、非毒性用量で用いられた場合には、インビトロおよびインビボの両方で、5AzadC誘導性発ガンを予防し得る。 【0126】化学的予防は、発ガンの「開始」工程(すなわち、変異誘発)をブロックすること、あるいは悪性疾患への「プロモーション」および進行を抑制することにより成し遂げられ得る。モデルとして活性化したrasガン遺伝子を有する前悪性細胞を用いる本研究では、抗プロモーション薬物としてのフェニルアセテートの効力を試験した。プロモーションをブロックする他のよく特徴づけられた化学的予防薬剤は、ビタミンAおよびその合成レチノイドを含む;フェニルアセテートと同様にこれらの化合物はまた、細胞増殖および分化の調節因子である。 【0127】本研究は、DNA低メチル化薬物である5AzadCおよび5AzaC(16、17)による悪性転換を非常に受け易い(4C8およびPR4と命名された)線維芽細胞を含む、インビトロおよびインビボのモデルを開発した。培養中またはレシピエント無胸腺マウスのいずれかにおいて、これらの細胞を5AzadCに一時的に曝すことにより、迅速な新生物性形質転換が生じた。悪性転換は、ras mRNAレベルの増加、およびコラーゲンI型発現のダウンレギュレーションに関係した。このことは細胞分化の喪失を示す。5AzadCによってもたらされる、これらの深い生物学的および分子的変化は、非細胞障害性濃度のフェニルアセテートおよびその前駆体であるフェニルブチレートでの同時の処置によって妨げられる。フェニルアセテートの抗腫瘍活性および毒性の欠如を、無胸腺マウスにおいて確認した。インビボモデルにおいて、s.c.で移植された影響を受けやすい4C8細胞を有するマウスに5AzadCをi.p.で注入した。そのように処置した全てのマウスは、急速に増殖する線維肉腫を発達させた;しかし、腫瘍形成の発生率はNaPAの全身的処置によって著しく減少した。 【0128】5AzadCで誘導される悪性転換をNaPAが妨げるメカニズムは不明である。プロモーションをブロックする他の化学的予防剤と同様に、フェニルアセテートは、細胞増殖抑制性および腫瘍成熟を誘導することにより作用し得る。インビトロおよびげっ歯類モデルにおいて、フェニルアセテートが選択的に増殖停止および腫瘍分化を引き起こし得ることを示す、増えつつある大量の証拠がある。ある場合、例えば、前骨髄細胞性白血病では、フェニルアセテートにより誘導された分化は、mycガン遺伝子発現の低下と関連している。NaPA処置した4C8では、脱分化からの保護(増殖特性およびコラーゲン発現により証明された)は、rasの過剰発現の阻害と関連があった。従って、ガン遺伝子発現のダウンレギュレーションは、NaPAの化学的予防活性の原因の一部分であり得る。mRNAレベルでrasに影響することに加えて、コレステロール合成のメバロン酸回路のインヒビターであるフェニルアセテート(Castillo, M., J. Iglesias, M.F. Zafra. およびE. Garcia−Peregrin. 1991. フェニルアラニンのフェニルおよびフェノール類誘導体によるヒヨコ脳のコレステロール生成酵素の阻害。Neurochem. Int., 18: 171−174)はまた、rasがコードするタンパク質p21の翻訳後の改変をブロックし得た。p21のプレニル化のインヒビターであるリモネンもまた化学的予防剤である。 【0129】5mC含有量の低下にも関わらず、フェニルアセテートは5AzadCによる発ガンをブロックした。実際、NaPA自身がDNAのメチル化を阻害することが見出された;しかし、5AzadCとは対照的に、NaPAは発ガン性を有していなかった。化学的薬剤の発ガン性の潜在能力とDNA低メチル化活性との相関は、以前に組織培養モデルにおいて記述された。そしてDNA 5mCパターンの変化は発ガンの開始に貢献し、そしてこれをおよび増強していると提唱された。しかし、このデータは、DNAメチル化の量的な変化だけでは、細胞の表現型に影響を与えるに十分でなく、従って低メチル化活性は、これらのインビトロおよび動物モデルにおいて、腫瘍発生の表現型を誘導するのに十分ではないことを示す。 【0130】脱メチル化に続く細胞内因子および化学的薬剤による特定の遺伝子の選択的な誘導が、いくつかの研究室により報告されている。例えば、インビトロでのヒトγグロビン遺伝子発現の増加は、5AzaCでの処置後のヘキサメチレンビスアセトアミドによる活性化を必要とすることが見出された。[Ley J.T.,Y.L. Chiang, D. Haidaris, N.P. Anagnou V.L. Wilson, and W.F. Anderson.1984. ヒト染色体11を含むマウス赤血球白血病細胞におけるDNAのヒトβ−グロビン様遺伝子のメチル化および調節。Proc. Natl. Acad. Sci. USA. 81:6618−6622)]; 5AzaCによるこの遺伝子の脱メチル化は遺伝子発現に十分ではなかった。これに対して、フェニルアセテートおよびフェニルブチレートは、培養した赤血球系前駆細胞およびヒトにおいて、胎児ヘモグロビンのその後の蓄積によりγグロビン遺伝子の発現を誘導した。DNAメチル化に影響を与えることに加えて、NaPAおよびNaPBはまた、転写因子として機能する核レセプターを活性化する(ペルオキシソーム増殖因子レセプターを本明細書で議論する)。従って、ここで見られるNaPA/NaPBと5AzadCとの間の相反する発ガン活性の違いに関する一つの考えられ得る説明は、芳香族脂肪酸の、増殖調節に重要な遺伝子の発現を誘導する能力であり得る。フェニルアセテートおよび関連化合物は、サイレントな抗ガン遺伝子のメチル化媒介抑制状態を逆転し得る可能性がある。哺乳類細胞におけるNaPAによるDNA低メチル化の知見は、植物においてミリモル濃度で、フェニルアセテートがDNAのメチル化を阻害することを示した以前の研究を考慮すると、驚くことではない。興味深いことに、そのような高い濃度では、フェニルアセテートはまた、植物の腫瘍細胞の増殖を阻害する。故に、DNAのメチル化に対するフェニルアセテートの効果、および増殖および分化の調節におけるその役割は進化において保存されている。 【0131】NaPAと5AzadC(あるいは5AzaC)との併用の成果は特に興味深い。シトシンアナログは、白血病、鎌状赤血球貧血、およびβ−サラセミアのような重度の血液障害の患者に利益を与えることが示されている。現在、5AzadCは、悪性黒色腫(Weberら、投稿中)および前立腺癌腫を含むいくつかの固形腫瘍でも、活性を有し得ることを示唆する実験データがある。不幸なことに、5AzadCの臨床的応用は発ガンに関する懸念により制限されている。このデータは、NaPAが5AzadCの治療的な効果を保存および増強する一方、発ガンの危険性を最小にし得ることを示す。β−異常血色素症患者由来のヒト白血球細胞および赤血球系前駆細胞を用いた研究は、 NaPAが5AzadCの効力を増強し、このことが胎児ヘモグロビン生産の更なる誘導を引き起こし得ることを明らかにした。さらに、非毒性であるが、最適より下の濃度の5AzadCへのNaPA/NaPBの添加は、培養したホルモン治療抵抗性前立腺ガン細胞において増殖を完全に停止させ、そしてアポトーシスを促進した(未発表データ)。 【0132】それゆえ、フェニルアセテート(一般的なアミノ酸誘導体)は、抗腫瘍および化学的予防薬物として価値があり得る。不快な臭気を有するNaPAは、その経口投薬用前駆体であるNaPB(あるいはNaPBの誘導体またはアナログ)により置換され得る。ヒトによる摂取の際に、フェニルブチレートは、フェニルアセテートへのβ酸化を受ける。NaPAと同様に、NaPBは実験モデルにおいて抗腫瘍および化学的予防活性を示す。そして両薬とも、尿素サイクル異常の子供の長期経口治療について、安全であることが既に証明された。ガンの成人が参加したより最近の臨床研究は、血漿レベルがミリモルのフェニルアセテートおよびフェニルブチレートを、有害作用なしに達成し得ることを立証した。NaPB/NaPAは、ガンの発達に傾いた、高い危険性の個人に利益をもたらし、他の抗ガン治療薬との併用で適用されて効力を高め、そして有害作用を最小化し、そしておそらく継続治療に用いられて病気の再発を防止する。 【0133】セクションB:創傷癒合におけるフェニル酢酸およびその誘導体の使用成長因子(TGF−αを含む)は、創傷癒合および修復プロセスにおいて重大な役割を果たしている。創傷癒合は、炎症、創傷細胞移動(wound cell migration)および有糸分裂、新血管形成および細胞外マトリックスの再生を含む局在化プロセスである。最近のデータによると、創傷細胞の活動は、オートクライン(autocrine)およびパラクライン(paracrine)メカニズムを介して創傷細胞に影響を及ぼすペプチド成長因子の局所的産生により調節され得る(Schultzら、J. Cell Biochem. 45(4):346(1991); Schultzら、Acta Ophthalmol. Suppl.(Copenh),202:60(1992))。組織(例えば、皮膚、角膜、および胃腸管)の正常な創傷癒合において重要な役割を果たし得る2つのペプチド成長因子は、構造的に関連する上皮成長因子(EGF)およびTGF−αであり、これらのレセプターは、皮膚、表皮ケラチン細胞、繊維芽細胞、血管内皮細胞、および胃腸管の上皮細胞を含む多くの型の細胞により発現される。EGFまたはTGF−αは、創傷癒合に関連する様々な細胞(血小板、表皮ケラチン細胞、活性化マクロファージおよび角膜上皮細胞を含む)により合成される。動物および患者の様々な創傷の癒合(例えば、中間層熱傷の再生、皮膚節創傷、胃十二指腸潰瘍および眼球表面の上皮外傷)は、EGFまたはTGF−αを用いて外部から処置することにより増強される。TGF−α(ヒト強膜繊維芽細胞の培養におけるリシルオキシダーゼmRNAレベルの強力なインデューサーである)は、外傷後の細胞外マトリックス成分の合成を誘発する第一の原因であり得る。さらに、TGF−αは、血管形成を促進することが知られている。 【0134】成長因子を適切に刺激しなければ、多くの慢性創傷に見られる非癒合症状を起こす。未癒合症状は、外因性TGF−αを添加するかまたはエフェクター細胞を刺激してTGF−αおよび関連成長因子を産生させるかのどちらかで顕著に解消され得る。現状では、PAおよびPB(または薬学的に受容可能な誘導体)は、創傷癒合に関連するメラノサイト起源(origin)の細胞;星状細胞株列(神経グリア芽腫細胞);およびいくつかの正常ヒト上皮細胞型(表皮ケラチン細胞を含む)においてTGF−αの産生を刺激する能力を有することが見出されている。さらに、PAおよびPBでの処置により、コラーゲン−αI型の発現が増強される。例えば、ヒトメラノーマ1011細胞(細胞は、5mM NaPA、10mM NaPA、1.5mM NaPBおよび3mM NaPBで4日間連続して処置した)において、NaPAおよびNaPBで処置をすることにより、TGF−αmRNA発現が誘導されることが、ノーザンブロット分析により示され;TGF−αの発現は、その後のタンパク質分析で確認される。TGF−αタンパク質の産生は、ヒト表皮ケラチン細胞をNaPAおよびNaPBに曝すと増加した。上皮HK5細胞を、NaPB(3.0mM、1.5mM、0.75mM)、NaPB(10mM、5.0mM、2.5mM)およびPAG(5mM)で、4日間連続して処置した。非処置細胞をコントロールとして供した。TGF−αの量(ng/ml/106細胞)は、抗TGF−α抗体を用いることにより測定した。このTGF−α産生の増加は、2、3日間持続し、その後このTGF−α産生のレベルは、ほぼ処置前のレベルに戻る。以下におよび図4で考察するように、創傷の処置にこれらの化合物を用い得ることが、NaPBでの処置後、ICAM−1(細胞接着分子/表面抗原)の発現が増強したことによりさらに支持され得る。 【0135】従って、本発明は、細胞におけるTGF−αの産生を刺激する方法を提供する。さらに、ヒトまたは動物の創傷癒合は、フェニル酢酸またはNaPAあるいはNaPBのようなフェニル酢酸誘導体(これらは、TGF−αのインサイチュ産生を刺激する)の治療量で処置することにより増強され得る。例えば、表面創傷は、PA、PBまたはPAあるいはPBのどちらかの誘導体を皮膚表面に局所的に適用すること(例えば、クリーム処方物)により処置され得る。同様にして、眼球の外傷は、PAまたはPB(またはPA/PB誘導体)の処方物(例えば、目薬)を角膜に適用することにより処置され得る。同様に、内部外傷(例えば、胃腸管の外傷)は、経口処方物の投与により処置され得る。膣または肛門の外傷もまた、例えば、PAAまたは誘導体の薬学的効果量を含有する座薬で処置され得る。PA/PBまたは誘導体処方物は、連続的に、または好ましくは断続的に(例えば、1日、1週間または1ヶ月コースで1回またはそれ以上の用量)投与され得る。例えば、0.1mMから10mM PA、好ましくは、0.1mM〜5.0mM PAまたは0.1mMから5mM PB、好ましくは、0.1mM 〜2.5mM PBを含む組成物を、1週間にわたって1日1回または2回、局所的に投与すると、創傷の修復が適切に刺激される。本明細書中に含有される情報から、用量濃度および様々な投与媒体の量が容易に決定され得る。例えば、局所処置(例えば、PBを含有するクリーム)は、代表的には、約0.5mM〜3.0mM PBまたは等価効力(equipotent)(等価効力という言葉により、被験体に等価な効果を与えるために異なるフェニル酢酸誘導体を用いた場合、用量が変化し得ることを意味する)を有する用量のフェニル酢酸誘導体を含む。例えば、同様に示されたPA用量と等価な効果を与えるには、 PBの約1.5倍の用量が必要であるが、それに制限されない。 【0136】セクションC:インターロイキン−6関連病の処置におけるフェニル酢酸またはその誘導体の使用インターロイキン−6(IL−6)(刺激された単核細胞および表皮ケラチン細胞により産生され得る)は、防御メカニズム(免疫応答、急性期反応および造血を含む)に重要な役割を果たす多面発現性サイトカインである。成熟B細胞の活性化は、流動相における抗原によって誘発され得る。抗原がIL−1およびIL−6の存在下で細胞膜IgMと結合する場合、成熟処女B細胞は、分化し、そしてイソタイプをIgG、IgAまたはIgEに転換する。IL−6遺伝子の異常発現は、以下を含む様々な疾患の病因および/または徴候に関連すると提案された:(1)異常分化プログラムに関する非悪性疾患、自己免疫および炎症プロセス(例えば、慢性関節リウマチ、キャスルマン病(Castleman’sdisease)、メサンギウム増殖、糸球体腎炎、ブドウ膜炎、敗血症、自己免疫疾患(例えば、狼そう、腸炎症、I型糖尿病、脈管炎)、および細胞分化の様々な皮膚疾患(例えば、乾せんおよび角質増殖));(2)ウイルス疾患(例えば、AIDSおよびAIDS関連腫瘍(例えば、カポージ肉腫およびリンパ腫));および(3)その他の腫瘍(例えば、多発性骨髄腫、腎カルチノーマ、レナートT−細胞リンパ腫および血漿細胞腫瘍)。例えば、正常組織と比較して外傷乾せん組織においてIL−6mRNAレベルが有意に上昇したことおよびアトピー性コントロールまたは健康コントロール由来の試料と比較して乾せんの血清および末梢血単核細胞においてIL−6量が上昇したことが見出された(Elderら、Arch. Dermatol, Res.,284(6):324(1992); Neunerら、J. Invest. Dermatol.,97(1):27(1991))。現状では、フェニル酢酸またはフェニル酢酸誘導体(例えば、NaPAまたはNaPB)が、IL−6の発現を阻害し得ることが見出されている。例えば、PAは、結腸カルチノーマ細胞におけるIL−1−誘導−IL−6発現を阻害する。結腸26カルチノーマ細胞に由来する細胞性mRNA(5μg/レーン)について、IL−6特異的プローブを用いたノーザンブロット分析を行った。細胞は、組換えIL−1β(0.1ng/ml)単独で処置するか、2.5mM、5.0mMおよび10mM NaPAと併用で48時間の連続処置するかの、どちらかで処置された。IL−6は、コントロール細胞(非処置)では、検出されなかった。このRNAの減少は、IL−6タンパク質の減少により確認される。従って、PA、PBおよびこれらの誘導体はIL−6の異常な過発現を含む疾患の処置に用いられ得る。 【0137】例えば、患者の乾せん性損傷に、鉱物油ベースのクリーム中の2mM NaPBまたは鉱物油ベースのクリーム中の2mMナフチルアセテートおよびビタミンB1のどちらかを直接、局所的に適用することにより、1日2回の処置をすると、1週間以内に損傷が消失した。重度の乾せんを有する患者に同様の処置をすると、約1〜3週間で乾せん損傷が解消された。明らかに、薬物投与モードおよび薬物量は、処置されるIL−6関連疾患に依存して変化し得るが、これはIL−6発現の減少が所望される細胞を、薬物の標的とするためである。例えば、0.1mM〜5mM PBの溶液または薬学的に受容可能なフェニル酢酸誘導体を含む等価効力を有する溶液を連結領域に注射することは、慢性関節リウマチの処置に適切であり得、他方、他の疾患の場合には、局所、静脈または経口送達により、さらに適切な処置がされ得る。処置は、連続または不連続処置のどちらかによりなされ得るが、薬物(特に、PB)の中断は、薬物での処置の中断をすることによる過剰反応を防止するために投与量を傾斜的に減じることにより行われ得る。さらに、IL−6の異常な過剰発現に関する疾患は、フェニル酢酸またはフェニル酢酸誘導体(特に、PAまたはPB)の効果量を抗炎症剤(様々なビタミン(例えば、ビタミンB1、非ステロイド炎症剤およびステロイド抗炎症剤)を含む)の効果量と共に投与することにより、処置され得る。この抗炎症剤は、同様の用量形態で本発明のフェニル酢酸誘導体と組合わせられ得、あるいはこの誘導体と同様の経路または異なる経路により別々に投与され得る。抗炎症剤の効果量とは、一般的に、特定の疾患状態に対する臨床使用量またはそれ未満の量を意味する。 【0138】セクションD:AIDS関連CNS機能障害の処置におけるフェニル酢酸またはその誘導体の使用AIDS患者における中枢神経系(CNS)疾患の特徴(Hallmark)は、頭痛、熱、微細認知変化(sudtle cognitive change)、異常反射および運動失調である。痴呆および重症感覚(severe sensory)および運動機能障害は、より重度の疾患を特徴付ける。自己免疫様末梢神経障害、脳血管疾患および脳腫湯もまた観察される。AIDS痴呆において、CNSのマクロファージおよび小グリア細胞は、HIV−1に感染し、かつHIV−1を増殖する優勢細胞型である。しかし、HIV−1による直接感染よりむしろ、CNS疾患徴候は、ウイルスタンパク質の分泌またはグリア細胞およびニューロンに結合するサイトカイン(例えば、IL−1、TNF−αおよびIL−6 )のウイルス誘導を通して媒介されると提案されている(Merrillら、FASEB J.,5(10):1291(1991))。TGF−βは、多くの細胞型により放出される成長因子である。その他の効果の中で、TGF−βは、マクロファージおよび繊維芽細胞に対する高度な走化性因子であり、そしてTNF−α、TGF−αおよび間接的には、マクロファージから様々な他のモジュレーターの放出を刺激し、AIDSのCNS徴候の開始に関連している。 【0139】フェニル酢酸またはフェニル酢酸誘導体(例えば、NaPAまたはNaPB)が、TGF−β2の産生を阻害し得ることが見出された。TGF−β2は、免疫抑制因子なので、この阻害により、患者の免疫系が全般的に改良される。神経グリア芽腫細胞におけるTGF−β2の遺伝子発現は、PAおよびPBの両方により阻害された。A172細胞由来の細胞性mRNA(5μg/レーン)を、TGF−β2特異的プローブを用いたノーザンブロット分析にかけた。細胞を5mMNaPA、10mM NaPAおよび1.5mM NaPBで4日間連続して処置した。このRNAの減少により、TGF−β2タンパク質合成が減少される。従って、PA、PBまたはこれらの誘導体は、細胞におけるTGF−β2の産生を阻害し、特に、HIV感染に起因するCNS徴候を制御または軽減するために使用され得る。上記で考察したように、この処置はまた、IL−6の産生を阻害し、さらにCNS徴候の軽減が可能である。TGF−β2を阻害するために効果的な投与の薬物量および/または処方は、ガンの処置またはガン予防のために適切な薬物量または予防計画に対応する。 【0140】セクションE:免疫監視の増強を目的としたフェニル酢酸およびその誘導体の使用ヒトのような動物の免疫監視は、PA、PBまたはこれらの誘導体で処置することにより増強され得る。腫瘍細胞は、少なくとも2つの方法により免疫系の攻撃から免れると考えられる。第一に、多くの腫瘍は、免疫活性を直接減少させる免疫抑制因子を分泌する。さらに、細胞の中には、免疫系にアウトロー細胞(outlaw cell)を確認させるような適切な表面抗原を発現しないもの、またはこの表面抗原の発現を減少させるものがある。しかし、本発明の組成物は、休眠遺伝子(例えば、胎児グロブリン)を、他の方法により活性化させ得る(おそらく、部分DNA(hypo)メチル化による)。同様に、ガンサプレッサー遺伝子、休眠抗原および他の遺伝子(例えば、(1)細胞性主要組織適合性抗原(MHCクラスIおよびII)またはICAM−1のような他の表面抗原;(2)MAGE−1のような腫瘍抗原;および(3)EBVラテント膜タンパク質(T−細胞腫瘍、バーキットリンパ腫鼻咽頭カルチノーマ、およびホジキン病のような多数の疾患に関連している)の活性化は、免疫監視の増強に貢献し得る。従って、新生物性細胞は、PA、PBまたはこれらの誘導体で処置され得、細胞表面抗原を発現させ、それにより腫瘍細胞の適切な確認およびクリアランスによって免疫系の効力増加させる。 【0141】このフェニル酢酸またはフェニル酢酸誘導体組成物が、休眠遺伝子を活性化させ得、そして表面抗原の発現を増強し得る証拠が、図4で与えられる。そして、図4は、メラノーマ細胞を2mM NaPBで10日間処置したときのMHCクラスI、MHCクラスIIおよび接着分子ICAM−1の発現の増強を示す(例えば、母集団(population)平均のシフトはMHC classIに対して約50から200までであった)。 【0142】さらに、PBが、バーキットリンパ腫細胞におけるEBVラテント膜タンパク質(LMP)の発現を誘導することが見出されている。LandisP、RajIおよびP3HRIバーキットリンパ腫細胞株から単離した細胞質RNA(20μg/レーン)を、2mM PBで4日間処置した。次いで、特異的LMPプローブを用いるノーザンブロット分析を行った。コントロール(非処置細胞)と比較して、3つの細胞株の全てにおいて陽性反応が観察され、PBがEBVラテント膜タンパク質の発現を誘導することが示された。バーキットリンパ腫細胞において、PAおよびPBの両方がさらに分子および細胞性変化を引き起こし、そしてこれらの変化は細胞増殖抑制性、myc発現の衰退およびHLA+1の増強を含む。 【0143】これらの表面抗原は、インビボで腫瘍免疫原性を増強するので、PA、PBまたはこれらの誘導体で動物(ヒト)を処置することは、個々の免疫系の効果を増強し得る。約0.5mM 〜3.0mM PBの用量または薬学的に受容可能なフェニル酢酸誘導体の等価効力を有する用量は、有用であり得る。この処置はまた、従来の免疫療法による処置および/または抗原標的化、抗体−媒介化学療法と組合わせられ得る。通常、処置が、実質的に連続処置を可能にするプロトコルに従ってなされるのに対して、不連続またはパルス処置プロトコルもまた、特にPAAまたはPAA誘導体での処置において最終分化し得る細胞について効果的である。例えば、図4で示されるメラノーマ細胞の10日間の処置は、この10日間の後、表面抗原の発現を連続的に増強させ得るのに十分であった。 【0144】実施例4:バーキットリンパ腫におけるNaPAおよびNaPB効果細胞株に感染したエプスタインバールウイルス(EBV)は、NaPAによる阻害以上にNaPBにより増殖阻害された。これは、処置後約4日目のc−myc発現の減少によると考えられる。あいにく、現段階ではこの細胞株の分化を測定する公知の測定法がない。しかし、NaPAでの処置は、実質的な形態変化およびクランピング(おそらく、細胞間または細胞−マトリックス間相互作用が変化したことに起因する)を引き起こす。細胞外マトリックスに結合した細胞の割合の上昇は、ICAM 1の上昇によるものであり得る。この細胞は、さらにHLAクラスI抗原およびラテント膜タンパク質を産生し、これにより、免疫系が、細胞で視覚的に観察され得る。 【0145】セクションF:フェニル酢酸またはその誘導体の投与量レベルを患者および/またはこれらの薬剤に対する患者の応答でモニターする方法上記のように、フェニル酢酸またはフェニル酢酸の誘導体(例えば、NaPAまたはNaPB)を動物(ヒト)に本明細書に記載したとおり、ある量で、処置期間にわたって投与することは、種々の分子変化を含む。これらの分子の特性は、(1)薬剤の投与量レベルまたはその生物学的利用性を動物でモニターするため、および/または(2)薬剤に対する患者の応答の生物マーカーとして作用するための生物マーカーとして用いられ得る。例えば、上記のように、有効量のNaPAまたはNaPB(またはそれらの誘導体)の投与により、種々の分子効果を生じる。種々の効果を以下に列挙する:a)赤血球の胎児ヘモグロビンのレベルの増加;b)メラノサイト起源、星状細胞株統、または上皮細胞型の細胞のような種々の細胞におけるTGF−αの生産の増加;c)IL−6生産の阻害;およびd)TGF−β2生産の阻害。従って、特定の生物マーカーの絶対濃度または相対(処置前/処置後)濃度を個体の適切な細胞集団で決定し得、薬剤の投与量レベルまたは生物学的利用性をモニターし得る。さらに、この濃度は、患者の応答と相関し得るか、または比較され得、この生物マーカーに基づく所望の処置目的のために患者の応答スケールを発達する。例えば、胎児ヘモグロビンの量の増加を用いて、新形成状態の処置または防御のために、PAまたはPBの生物利用能力を示し得、および薬剤に対する患者の応答の程度を示し得る。 【0146】セクションG:フェニル酢酸およびその誘導体によるPPARの活性化ペルオキシソームは、細胞のレドックスポテンシャルを過酸化水素のような種々の基質を代謝することにより制御する酵素を含む細胞オルガネラである。こ領域での最近の進歩により、ペルオキシソームが特定の遺伝子の転写を調節する核レセプターの活性化を介して増殖することが明らかである(Gibson, Toxicol. Lett., 68(1−2):193(1993))。この核レセプターは、ペルオキシソーム増殖因子活性化レセプター(peroxisome proliferator−activated receptor)(PPAR)と名付けられ、遺伝子発現および細胞生物学に主要な影響を与えるステロイド核レセプターファミリーに属する。ペルオキシソーム増殖因子(例えば、クロフィブレート、除草剤、およびロイコトリエンアンタゴニスト)によるPPARとの結合は、核レセプターを活性化し、転写因子として作用し、そして分化、細胞成長、およびペルオキシソームの増殖を起こし得る。これらの試薬は、過形成および発ガン、ならびに齧歯動物細胞のような動物細胞の酵素能力の変化で役割を果たすと考えられているが、こ | |