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【発明の名称】 注射用水性製剤
【発明者】 【氏名】永康 新也

【氏名】吉田 智恵子

【氏名】岡本 英志

【氏名】河上 啓一

【氏名】井上 冨士夫

【要約】 【課題】

【解決手段】蛋白分解酵素阻害物質とシクロデキストリン類とを含有することを特徴とする注射用水性製剤。
【特許請求の範囲】
【請求項1】 蛋白分解酵素阻害物質とシクロデキストリン類とを含有することを特徴とする注射用水性製剤。
【請求項2】 蛋白分解酵素阻害物質が、一般式(1);
【化1】

(式中、Rは置換されていてもよいアリール基を表し、RおよびR2’はそれぞれ水素原子であるかもしくは互いに結合してエチレン基を形成し、Zは低級アルキレン基もしくはアリレン基を表す。)で示される化合物またはその薬理学的に許容され得る塩であることを特徴とする請求項1に記載の注射用水性製剤。
【請求項3】 蛋白分解酵素阻害物質が、エチル[4−(6−グアニジノヘキサノイルオキシ)ベンゾエート]メタンスルフォネート、6−アミジノ−2−ナフチル−p−グアニジノベンゾエートジメタンスルフォネートおよび6−アミジノ−2−ナフチル[4−(4,5−ジヒドロ−1H−イミダゾール−2−イル)アミノ]ベンゾエートジメタンスルフォネートからなる群から選択される化合物であることを特徴とする請求項1に記載の注射用水性製剤。
【請求項4】 蛋白分解酵素阻害物質がエチル[4−(6−グアニジノヘキサノイルオキシ)ベンゾエート]メタンスルフォネートであり、シクロデキストリン類がα−シクロデキストリンまたはその誘導体であることを特徴とする請求項1に記載の注射用水性製剤。
【請求項5】 蛋白分解酵素阻害物質が6−アミジノ−2−ナフチル−p−グアニジノベンゾエートジメタンスルフォネートであり、シクロデキストリン類がβ−シクロデキストリンまたはその誘導体であることを特徴とする請求項1に記載の注射用水性製剤。
【請求項6】 シクロデキストリン類が、蛋白分解酵素阻害物質1モルに対し0.5〜100倍モル含有されていることを特徴とする請求項1〜5に記載の注射用水性製剤。
【請求項7】 蛋白分解酵素阻害物質が、0.001〜35%(W/V)の濃度で製剤中に含有されていることを特徴とする請求項1〜6に記載の注射用水性製剤。
【請求項8】 さらに、糖類が含有されていることを特徴とする請求項1〜7に記載の注射用水性製剤。
【請求項9】 蛋白分解酵素阻害物質の水に対する安定性を向上させるためのシクロデキストリン類の使用。
【発明の詳細な説明】【0001】
【発明の属する技術分野】本発明は、蛋白分解酵素阻害物質を有効成分として含有する安定な注射用水性製剤に関する。
【0002】
【従来の技術】蛋白分解酵素阻害物質は、膵炎の治療に有用であり、既に医薬として市販されているものもある。かかる蛋白質酵素阻害剤の代表的な化合物としては、例えばエチル[4−(6−グアニジノヘキサノイルオキシ)ベンゾエート]メタンスルフォネート(一般名:メシル酸ガベキサート、以下GMと略す。)、6−アミジノ−2−ナフチル−p−グアニジノベンゾエートジメタンスルフォネート(一般名:メシル酸ナファモスタット、以下NMと略す。)、6−アミジノ−2−ナフチル[4−(4,5−ジヒドロ−1H−イミダゾール−2−イル)アミノ]ベンゾエートジメタンスルフォネート(一般名:メシル酸セピモスタット、以下SMと略す。)等が挙げられる。
【0003】しかし、上述の化合物のような蛋白分解酵素阻害物質を含む製剤は、水または水を含有する溶媒に溶解した水溶液の剤形では長期間安定に保つことが難しい。なぜなら、蛋白分解酵素阻害物質は水に溶かした状態で保存しておくと、加水分解されて本来の薬効を示さない物質に変化してしまうからである。そこで、実際に市販されている製剤は、蛋白分解酵素阻害物質を凍結乾燥して水分を取り除き、その安定化を図っており、凍結乾燥製剤の剤形で流通に供されている。
【0004】しかし、上記凍結乾燥製剤は使用時に注射液を調製する必要がある。例えば、かかる製剤を点滴静注に供する場合は、該凍結乾燥製剤を少量の溶解液で溶解し、大容量の注射溶剤中へ混合希釈するという操作が必要となる。そのため、凍結乾燥製剤は用時溶解の必要のない液状注射剤と比べると、投与に至るまでの操作が繁雑で菌による汚染の機会が多く、確実な無菌性の保障が難しいし、不溶性異物検査が面倒であるというような問題がある。
【0005】かかる従来の問題点に鑑み、GMやNMを含む注射剤において、用時溶解の必要がない液状注射剤が製造されている(特開平5−246891)。かかる公知の注射液においては、エタノールとプロピレングリコールおよび/またはポリエチレングリコールの混合液が溶剤として用いられている。しかし、上記製剤にはエタノールが添加されているので、安全性が問題となる。また、上記注射用製剤はプロピレングリコールまたはポリエチレングリコールを含有しているので、粘性が高く、持続点滴に適さない。
【0006】
【発明が解決しようとする課題】本発明は、蛋白分解酵素阻害物質の経時的な安定性が保持されており、かつ点滴が可能で安全性の高い注射用水性製剤を提供することを目的とする。
【0007】
【課題を解決するための手段】本発明者らは、上記目的を達成すべく鋭意検討した結果、蛋白分解酵素阻害物質が有効成分として含有されている注射用製剤において、シクロデキストリン類を含有することにより、水性溶剤中での蛋白分解酵素阻害物質の加水分解が抑えられるという思いがけない知見を得た。本発明者らは、かかる知見に基づき、経時的に安定な蛋白分解酵素阻害物質を含み、点滴可能な注射用水性製剤の創製に成功した。さらに、本発明者らは検討を重ね、本発明を完成した。
【0008】すなわち、本発明は、(1) 蛋白分解酵素阻害物質とシクロデキストリン類とを含有することを特徴とする注射用水性製剤、(2) 蛋白分解酵素阻害物質が、一般式(1);
【化2】

(式中、Rは置換されていてもよいアリール基を表し、RおよびR2’はそれぞれ水素原子であるかもしくは互いに結合してエチレン基を形成し、Zは低級アルキレン基もしくはアリレン基を表す。)で示される化合物またはその薬理学的に許容され得る塩であることを特徴とする前記(1)に記載の注射用水性製剤、に関する。
【0009】また、本発明は、(3) 蛋白分解酵素阻害物質が、エチル[4−(6−グアニジノヘキサノイルオキシ)ベンゾエート]メタンスルフォネート、6−アミジノ−2−ナフチル−p−グアニジノベンゾエートジメタンスルフォネートおよび6−アミジノ−2−ナフチル[4−(4,5−ジヒドロ−1H−イミダゾール−2−イル)アミノ]ベンゾエートジメタンスルフォネートからなる群から選択される化合物であることを特徴とする前記(1)に記載の注射用水性製剤、(4) 蛋白分解酵素阻害物質がエチル[4−(6−グアニジノヘキサノイルオキシ)ベンゾエート]メタンスルフォネートであり、シクロデキストリン類がα−シクロデキストリンまたはその誘導体であることを特徴とする前記(1)に記載の注射用水性製剤、(5) 蛋白分解酵素阻害物質が6−アミジノ−2−ナフチル−p−グアニジノベンゾエートジメタンスルフォネートであり、シクロデキストリン類がβ−シクロデキストリンまたはその誘導体であることを特徴とする前記(1)に記載の注射用水性製剤、に関する。
【0010】また、本発明は、(6) シクロデキストリン類が、蛋白分解酵素阻害物質1モルに対し0.5〜100倍モル含有されていることを特徴とする前記(1)〜(5)に記載の注射用水性製剤、(7) 蛋白分解酵素阻害物質が、0.001〜35%(W/V)の濃度で製剤中に含有されていることを特徴とする前記(1)〜(6)に記載の注射用水性製剤、(8) さらに、糖類が含有されていることを特徴とする前記(1)〜(7)に記載の注射用水性製剤、(9) 蛋白分解酵素阻害物質の水に対する安定性を向上させるためのシクロデキストリン類の使用、に関する。
【0011】
【発明の実施の形態】本発明に係る注射用水性製剤は、蛋白分解酵素阻害物質を有効成分として含有する。かかる蛋白分解酵素阻害物質は、蛋白分解酵素阻害作用を有することが知られている公知化合物であってよい。中でも、下記一般式(1);
【化3】

(式中、Rは置換されていてもよいアリール基を表し、RおよびR2’はそれぞれ水素原子であるかもしくは互いに結合してエチレン基を形成し、Zは低級アルキレン基もしくはアリレン基を表す。)で示される化合物またはその薬理学的に許容され得る塩が、本発明に係る注射用水性製剤に含有されている蛋白分解酵素阻害物質として好ましい。
【0012】上記一般式(1)においてRで表される「置換されていてもよいアリール基」における「アリール基」としては、例えば、フェニル、トリル、キシリル、ビフェニル、1−もしくは2−ナフチル、1−、2−もしくは9−アントリル、1−、2−、3−、4−もしくは9−フェナントリル、1−、2−、4−、5−、もしくは9−アズレニルなどの炭素数6〜14のアリール基が挙げられる。中でも、本発明においては、Rは芳香環基が好ましい。
【0013】上記一般式(1)においてRで表される「置換されていてもよいアリール基」における「アリール基の置換基」としては、(1)(a)ヒドロキシ、(b)アミノ、(c)例えばメチルアミノ、エチルアミノ、プロピルアミノ、ジメチルアミノ、ジエチルアミノ等のモノ−またはジ−C1−6アルキルアミノ、(d)例えばメトキシ、エトキシ、プロポキシ、へキシルオキシ等の炭素数1〜6のアルコキシおよび(e)例えばフッ素、塩素、臭素、ヨウ素等のハロゲン等から選ばれた1〜4個で置換されていてもよい例えばメチル、エチル、n−プロピル等のC1−6アルキル基、(2)例えばメチル、エチル、プロピル等のC1−6アルキル等の1または2で置換されていてもよいアミノ基、(3)例えば、アセチルアミノ等の炭素数1〜4のアシルアミノ基、(4)ヒドロキシ、(5)カルボキシル、(6)ニトロ、(7)例えばメトキシ、エトキシ、プロポキシ、イソプロポキシ、ブトキシ等の炭素数1〜6のアルコキシ、(8)例えばアセトキシ、エチルカルボニルオキシなどの炭素数2〜7のアルキルカルボニルオキシ、(9)例えばメトキシカルボニル基、エトキシカルボニル基、プロポキシカルボニル基、イソプロポキシカルボニル基、ブトキシカルボニル基、イソブトキシカルボニル基、tert−ブトキシカルボニル基またはペンチルオキシカルボニル等の炭素数2〜7のアルコキシカルボニル基、(10)例えばフッ索、塩素、臭素、ヨウ素等のハロゲン等が挙げられる。上記置換基の位置および数は化学的に許容されるならば、特に限定されるものではない。
【0014】上記一般式(1)においてRで表される「置換されていてもよいアリール基」としては、低級アルコキシカルボニル基で置換されたフェニル基またはアミジノ基で置換されたナフチル基が好ましい。「低級アルコキシカルボニル基で置換されたフェニル基」としては、例えば2−メトキシカルボニルフェニル基、3−メトキシカルボニルフェニル基、4−メトキシカルボニルフェニル基、2−エトキシカルボニルフェニル基、4−エトキシカルボニルフェニル基、4−プロポキシカルボニルフェニル基、4−ブトキシカルボニルフェニル基、4−ペンチルオキシカルボニルフェニル基、4−ヘキシルオキシカルボニルフェニル基などが挙げられる。
【0015】「アミジノ基で置換されたナフチル基」としては、5−アミジノ−1−ナフチル基、6−アミジノ−1−ナフチル基、7−アミジノ−1−ナフチル基、8−アミジノ−1−ナフチル基、5−アミジノ−2−ナフチル基、6−アミジノ−2−ナフチル基、7−アミジノ−2−ナフチル基、8−アミジノ−2−ナフチル基、1−アミジノ−2−ナフチル基、3−アミジノ−2−ナフチル基、4−アミジノ−2−ナフチル基などが挙げられる。
【0016】上記一般式(1)においてZで表される「低級アルキレン基」としては、例えば、メチレン基、エチレン基、トリメチレン基(プロピレン基)、イソプロピレン基、テトラメチレン基(ブチレン基)、ペンタメチレン基またはヘキサメチレン基などの炭素数1〜6の直鎖または分枝鎖アルキレン基が挙げられる。中でも、本発明においては、Zはペンタメチレン基またはヘキサメチレン基などが好ましい。
【0017】上記一般式(1)においてZで表される「アリレン基」としては、例えば、フェニレン基、トリレン基、キシレン基、ナフチレン基などの炭素数6〜14のアリレン基が挙げられる。中でも、本発明においては、Zはフェニレン基が好ましい。
【0018】本発明に係る注射用水性製剤に含まれる蛋白分解酵素阻害物質としては、GM、NMまたはSMがより好ましい。GMは、上述したようにエチル[4−(6−グアニジノヘキサノイルオキシ)ベンゾエート]メタンスルフォネート(一般名:メシル酸ガベキサート)であり、下記式で表される。
【化4】

【0019】また、NMは、6−アミジノ−2−ナフチル−p−グアニジノベンゾエートジメタンスルフォネート(一般名:メシル酸ナファモスタット)であり、下記式で表される。
【化5】

【0020】また、SMは、6−アミジノ−2−ナフチル[4−(4,5−ジヒドロ−1H−イミダゾール−2−イル)アミノ]ベンゾエートジメタンスルフォネート(一般名:メシル酸セピモスタット)であり、下記式で表される。
【化6】

【0021】本発明に係る注射用水性製剤に含まれる蛋白分解酵素阻害物質としては、遊離の塩基もしくは酸またはそれらの薬理学的に許容される塩であってもよい。該化合物の塩としては、生理学的に許容される酸(例えば、無機酸、有機酸)や塩基(例えば、無機塩基または有機塩基)などとの塩が挙げられる。より具体的には、例えば、塩酸、硫酸、リン酸、臭化水素酸等の無機酸;シュウ酸、マレイン酸、フマル酸、リンゴ酸、酒石酸、クエン酸、安息香酸等の有機酸;ナトリウムもしくはカリウム等のアルカリ金属、マグネシウムもしくはカルシウム等のアルカリ土類金属などの無機塩基;例えば、トリエチルアミン等の有機アミン類、アルギニン等の塩基性アミノ酸類などの有機塩基との塩を挙げることができる。
【0022】本発明に係る注射用水性製剤は、上記有効成分とともに、シクロデキストリン類が含有されていることが特長である。ここで、シクロデキストリン類とは、シクロデキストリンもしくはその誘導体、またはそれらの薬理学的に許容され得る塩を示す。
【0023】本発明で用いるシクロデキストリンとは、6〜12個のグルコース単位からなる環状オリゴ糖をいう。また、本発明で用いるシクロデキストリンの誘導体とは、上記シクロデキストリンにおいてグルコースの2,3,6位の水酸基の一部または全てを他の官能基を置換した化合物をいう。該シクロデキストリンおよびその誘導体の具体例としては、下記一般式で表される化合物が挙げられる。
【化7】

(式中、nは6〜12を満足する整数を、R11、R12およびR13は個々の繰り返し単位中で同一または異なって、それぞれ水素、アルキル基、モノヒドロキシアルキル基、ジヒドロキシアルキル基、スルホアルキル基、カルボキシアルキル基または糖残基を示す。)
【0024】上記一般式において、R11〜R13で示されるアルキル基としては、例えばメチル、エチル、プロピル等のC1−4アルキル基が挙げられる。R11〜Rで示されるモノヒドロキシアルキル基としては、例えばヒドロキシメチル、2−ヒドロキシエチル、2−ヒドロキシプロピル等のモノヒドロキシ−C1−4アルキル基が挙げられる。R11〜R13で示されるジヒドロキシアルキル基としては、例えばジヒドロキシメチル、2,2−ジヒドロキシエチル、ジヒドロキシプロピル等のジヒドロキシ−C1−4アルキル基が挙げられる。R11〜R13で示されるスルホアルキル基としては、例えばスルホメチル、2−スルホエチル、スルホブチル等のスルホ−C1−4アルキル基が挙げられる。R11〜R13で示されるカルボキシアルキル基としては、例えばカルボキシメチル、2−カルボキシエチル等のカルボキシ−C1−4アルキル基が挙げられる。R11〜Rで示される糖残基としては、例えばグルコシル基、マルトシル基またはパノシル基などが挙げられる。
【0025】本発明で用いるシクロデキストリン類としては、上記一般式において、n=6であるα−シクロデキストリンもしくはその誘導体、n=7であるβ−シクロデキストリンもしくはその誘導体、n=8であるγ−シクロデキストリンもしくはその誘導体またはn=9であるδ−シクロデキストリンもしくはその誘導体を用いるのが好ましい。
【0026】上記シクロデキストリン誘導体のより好ましい例としては、シクロデキストリンのアルキル誘導体、ヒドロキシアルキル誘導体、スルホアルキルエーテル誘導体または糖結合誘導体などが挙げられる。上記シクロデキストリンのアルキル誘導体としては、例えば、ジメチル−α−シクロデキストリン、ジメチル−β−シクロデキストリン、ジメチル−γ−シクロデキストリン等が挙げられる。上記シクロデキストリンのヒドロキシアルキル誘導体としては、例えば、2−ヒドロキシプロピル−α−シクロデキストリン、2−ヒドロキシプロピル−β−シクロデキストリン 2−ヒドロキシプロピル−γ−シクロデキストリン等が挙げられる。
【0027】上記シクロデキストリンのスルホアルキルエーテル誘導体としては、例えば、スルホブチルエーテル−α−シクロデキストリン、スルホブチルエーテル−β−シクロデキストリン、スルホブチルエーテル−γ−シクロデキストリン等が挙げられる。上記シクロデキストリンの糖結合導体としては、例えば、グルコシル−α−シクロデキストリン、グルコシル−β−シクロデキストリン、グルコシル−γ−シクロデキストリン、マルトシル−α−シクロデキストリン、マルトシル−β−シクロデキストリン、マルトシル−γ−シクロデキストリン等が挙げられる。
【0028】本発明においては、中でも、蛋白分解酵素阻害物質がGMである場合は、α−シクロデキストリンまたはその誘導体を用いることが好ましい。さらには、α−シクロデキストリンまたはそのアルキル誘導体もしくは糖結合導体を用いることがより好ましい。また、蛋白分解酵素阻害物質がNMである場合は、β−シクロデキストリンまたはその誘導体を用いることが好ましい。さらには、β−シクロデキストリンまたはそのアルキル誘導体もしくはヒドロキシアルキル誘導体を用いることがより好ましい。
【0029】本発明に係る注射用水性製剤は、シクロデキストリン類として、上記シクロデキストリンまたはその誘導体の薬理学的に許容される塩を含有していてもよい。薬理学的に許容される塩としては、例えば、無機酸(例えば、塩酸、硫酸、硝酸等)、有機酸(例えば、炭酸、重炭酸、コハク酸、酢酸、プロピオン酸、トリフルオロ酢酸等)、無機塩基(例えば、ナトリウムもしくはカリウム等のアルカリ金属、カルシウムもしくはマグネシウム等のアルカリ土類金属等)または有機塩基化合物(例えば、トリエチルアミン等の有機アミン類、アルギニン等の塩基性アミノ酸類)との塩が挙げられる。ここで、上記シクロデキストリン類は、公知の方法により容易に製造できる。また、市販品を適宜用いてもよい。
【0030】本発明において注射用水性製剤とは、水または水を含有する溶媒に上記本発明に係る有効成分が溶解している製剤をいう。水としては、通常滅菌水、好ましくは発熱性物質が含有されていない滅菌水が使用される。水を含有する溶媒としては、医薬製剤において用いられている公知の溶媒であればよく、例えば、生理食塩水、PBS(リン酸緩衝生理食塩水)または乳酸配合リンゲル液などが挙げられる。
【0031】また、例えば輸送上の便宜を図るため、所望により本発明に係る注射用水性製剤を用時溶解製剤とすることもできる。すなわち、本発明に係る注射用水性製剤は、上述のような溶液状態の注射用水性製剤を凍結乾燥または減圧乾燥など公知の乾燥方法により乾燥して粉末状または顆粒状にし、用時に上述の水または水を含有する溶媒に溶解する形態の製剤であってもよい。
【0032】本発明に係る注射用水性製剤において、蛋白分解酵素阻害物質の含有量は、製剤の使用目的などにより異なるので一概には言えないが、その濃度が約0.001〜35%(W/V)程度、好ましくは約0.002〜25%(W/V)程度であることが好ましい。なお、本発明の注射用水性製剤が上述のような用時溶解製剤の形態である場合、上記蛋白分解酵素阻害物質の濃度は、該有効成分を水または水を含有する溶媒に溶解したときの濃度をさす。
【0033】本発明に係る注射用水性製剤においてシクロデキストリン類の含有量は、製剤の使用目的などにより異なるので一概には言えないが、蛋白分解酵素阻害物質1モルに対し約0.5〜100倍モル程度、好ましくは約1〜50倍モル程度である。
【0034】本発明に係る注射用水性製剤においては、上記有効成分およびシクロデキストリン類の他に、さらに添加剤を含有させてもよい。添加剤としては、注射用水性製剤において、当技術分野で通常使用されている添加剤を適宜用いることができる。上記添加剤としては、具体的には、安定化剤、等張化剤、緩衝剤、保存剤、キレート剤、抗酸化剤、無痛化剤または溶解補助剤などが挙げられる。中でも、本発明においては、安定化剤として、糖類がさらに含有されていることが好ましい。
【0035】(a)安定化剤としては、例えば糖類や亜硫酸ナトリウム等が挙げられる。糖類としては、グルコース、フルクトース、キシリトール、フコース、ガラクトースなどの単糖類;マルトース、シュクロース、ラクトース、ラクツトース、メリビオースなどの二糖類;フルクトオリゴ糖、ガラクトオリゴ糖、ラクトオリゴ糖などのオリゴ糖類;デキストランなどの多糖類などが挙げられる。
【0036】(b)緩衝剤としては、例えば、ホウ酸緩衝剤、リン酸緩衝剤、クエン酸緩衝剤、酒石酸緩衝剤、酢酸緩衝剤などが挙げられる。(c)保存剤としては、例えば、パラオキシ安息香酸エステル、ベンジルアルコール、クロロクレゾール、フェネチルアルコール、塩化ベンゼトニウムなどが挙げられる。(d)キレート剤としては、例えば、エデト酸ナトリウム、クエン酸ナトリウムなどが挙げられる。
【0037】(e)抗酸化剤としては、例えば、亜硫酸ナトリウム、亜硫酸水素ナトリウム、アスコルビン酸ナトリウム、チオ硫酸ナトリウムなどが挙げられる。(f)無痛化剤としては、例えばアルブミン、グリセリン、プロピレングリコール等の多価アルコール、リドカイン塩酸塩、ベンジルアルコールなどが挙げられる。(g)溶解補助剤としては、例えば、デキストラン、ポリビニルピロリドン、安息香酸ナトリウム、エチレンジアミン、サリチル酸アミド、ニコチン酸アミド、ポリオキシエチレン硬化ヒマシ油誘導体などが挙げられる。
【0038】これら添加剤の配合量は特に限定されず、蛋白分解酵素阻害物質の種類や量またはシクロデキストリン類の量に応じて適宜必要量を選択できる。例えば、本発明の注射用水性製剤が安定剤として糖類を含有する場合は、該糖類は蛋白分解酵素阻害物質1gに対し、約1mg〜10g程度含まれているのが好ましい。
【0039】本発明の注射用水性製剤には、pHを調整するために、当技術分野で通常用いられている種々のpH調整剤が含有されていても良い。pH調整剤は、酸類と塩基類とに大別される。具体的には、酸類としては、例えば、アスコルビン酸、塩酸、グルコン酸、酢酸、乳酸、ホウ酸、リン酸、硫酸、酒石酸、クエン酸などが挙げられる。塩基類としては、例えば、水酸化カリウム、水酸化カルシウム、水酸化ナトリウム、水酸化マグネシウム、モノエタノールアミン、ジエタノールアミン、トリエタノールアミンなどが挙げられる。その他のpH調整剤として、ヒスチジン、ε-アミノカプロン酸などのアミノ酸類なども挙げられる。
【0040】本発明に係る注射用水性製剤は、常法により製造できる。例えば、まず、水または水を含有する溶媒に、本発明に係る注射用水性製剤に含有される成分(以下、含有成分という)を溶解させる。含有成分の混合順序は特に問わず、全ての含有成分を同時に混合してもよいし、一部の含有成分のみを先に上記溶媒に溶解し、その後、残りの含有成分を溶解させてもよい。より好ましくは、上述したような溶媒に蛋白分解酵素阻害物質を溶解し、これにシクロデキストリン類を溶解するのが好ましい。このとき、所望により上述したような添加剤を混合してもよく、その混合順序は自体公知の方法に従えばよい。
【0041】ついで、得られた溶液を、メンブランフィルターによるろ過滅菌、オートクレーブによる加圧熱滅菌、間欠滅菌法等による熱滅菌処理に施す。なかでも、ろ過滅菌を行うのが好ましい。このようにして得られる溶液は、pHが約6〜8程度であることが好適である。本発明に係る注射用水性製剤が溶液状態である場合は、上記のようにして得られた滅菌済みの溶液をアンプルに充填後熔閉する。この場合、本発明に係る注射用水性製剤はいかなる形態を有していてもよいが、例えば10mLのワンショット注射剤等の形態が挙げられる。
【0042】本発明に係る注射用水性製剤を用時溶解製剤の形態とする場合は、上述と全く同様にして含有成分を含む溶液を作製し、上述のような滅菌後、該溶液を粉末または顆粒とする。溶液を粉末・顆粒とする方法は、公知の方法を用いてよく、例えば凍結乾燥や減圧乾燥などの公知の乾燥方法を用いるのが好ましく、中でも凍結乾燥を用いるのがより好ましい。このように製造される粉末または顆粒は、用時に水または水を含有する溶媒に溶解して注射液を得ることができる。この場合に、注射剤中の有効成分は経時的に安定である。
【0043】本発明に係る注射用水性製剤としては、より具体的には、静脈内注射剤、動脈内注射剤、皮下注射剤、皮内注射剤、筋肉内注射剤、脊髄腔内注射剤または腹腔内注射剤等が挙げられる。
【0044】本発明に係る注射用水性製剤の投与方法には特に制限はなく、患者の年令、性別その他の条件、疾患の程度などに応じた方法で投与される。例えば、単独で静脈内、動脈内、筋肉内、皮内、皮下、脊髄腔内または腹腔内などに投与される。また、本発明に係る注射用水性製剤は輸液と混和でき、本発明に係る注射用水性製剤と輸液との混合物として、特に静脈内に投与することもできる。輸液は特に限定されないが、商業的に入手可能なまたは通常の輸液が使用される。輸液の具体例としては、ブドウ糖注射液、キシリトール注射液、D−マンニトール注射液、フルクトース注射液、生理食塩液、デキストラン40注射液、デキストラン70注射液、アミノ酸注射液、リンゲル液、乳酸リンゲル液などが挙げられる。
【0045】本発明に係る注射用水性製剤の投与量は、蛋白分解酵素阻害物質の種類、患者の年令、性別その他の条件、疾患の程度などにより適宜選択される。本発明に係る注射用水性製剤の用途は、特に限定されないが、膵炎の治療薬として用いられることが好ましい。
【0046】
【実施例】(実施例1〜7、比較例1,2)注射用水に有効成分であるGMを2%(W/V)またはNMを0.2%(W/V)の濃度で溶解し、更に下記表に記載した各種シクロデキストリン類を有効成分の5倍モル量添加溶解し、本発明に係る注射用水性製剤を製造した。製造直後および40℃で1ヶ月放置後、製剤中の有効成分の濃度を高速液体クロマトグラフィーで測定し、含量低下を調べた。また、比較例として、シクロデキストリン類を添加しないこと以外は、実施例と全く同様にして注射用製剤を製造し、得られた製剤中の有効成分の濃度を実施例と全く同様に測定した。
【0047】なお、シクロデキストリン類は下記の市販品を用いた。α−シクロデキストリンとしてセルデックスA−100 (商品名 日本食品化工株式会社製) β−シクロデキストリンとしてセルデックスB−100(商品名 日本食品化工株式会社製) γ−シクロデキストリンとしてセルデックスC−100(商品名 日本食品化工株式会社製)、2−ヒドロキシプロピル−β−シクロデキストリンとしてセルデックスHP−β−CD (商品名 日本食品化工株式会社製)、スルホブチルエーテル−β−シクロデキストリンとしてCaptisol(商品名 CyDex社製)を用い、2,6−ジ−O−メチル−α―シクロデキストリン、2,6−ジ−O−メチル−β―シクロデキストリンおよび6−O−α−グルコシル−α―シクロデキストリンとして和光純薬工業株式会社製の生化学用試薬を用いた。その結果を下記表に示す。
【0048】
【表1】

表中の有効成分濃度は、溶解させた有効成分の濃度に対する測定時の有効成分の割合(%)を示す。
【0049】(製剤例1、2)下記表の製剤例1および2に示す処方のそれぞれの成分を量りとり、これを注射用水500mLに溶解した後、さらに注射用水を加え、全量を1Lとした。調製された水溶液を10mLアンプルに充填熔封後、115℃で30分間の滅菌を行い、本発明に係る注射用製剤を製造した。
【0050】
【表2】

【0051】
【表3】

【0052】
【発明の効果】本発明に係る注射用水性製剤は、用時溶解の必要が必ずしもなく、いわゆるレディー・トゥ・ユースな製剤とすることが可能である。その結果、確実に無菌性を保つことができ、不溶性異物の混入をはじめとする薬剤の汚染を防ぐことができる。加えて、投与に至るまでの操作が簡便であることから、医療従事者の負担を軽くすることができ、また、医療事故を未然に防ぐことができる。さらに、本発明に係る注射用水性製剤は、水性溶剤を用いているので、患者の体内における薬物代謝への負担が少なく、また、持続点滴が可能であるなど投与経路が限定されることがないという利点も有する。
【出願人】 【識別番号】000149435
【氏名又は名称】株式会社大塚製薬工場
【出願日】 平成13年9月17日(2001.9.17)
【代理人】 【識別番号】100077012
【弁理士】
【氏名又は名称】岩谷 龍
【公開番号】 特開2003−89632(P2003−89632A)
【公開日】 平成15年3月28日(2003.3.28)
【出願番号】 特願2001−281768(P2001−281768)