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【発明の名称】 歯科用セルフエッチングプライマー処理剤
【発明者】 【氏名】根本 君也

【氏名】西山 典宏

【要約】 【課題】歯の象牙質またはエナメル質の表面処理のために用いる歯科用セルフエッチングプライマー処理剤を提供することを目的とする。

【解決手段】N−メタクリロイルグリシン、N−メタクリロイル−3−アミノプロピオン酸、N−メタクリロイル−4−アミノ酪酸、N−メタクリロイル−5−アミノ吉草酸、N−メタクリロイル−6−アミノカプロン酸、N−メタクリロイル−2−アミノメチルフォスフォン酸、N−メタクリロイル−3−アミノエチルフォスフォン酸、N−メタクリロイル−4−アミノプロピルフォスフォン酸などのメタクリル酸誘導体の水溶液からなるセルフエッチングプライマー処理剤で歯の象牙質またはエナメル質を処理した後、コンポジットレジン、接着性レジンセメントなどを接着させた場合には著しく接着強さが上昇する。
【特許請求の範囲】
【請求項1】 歯の象牙質またはエナメル質の表面処理のために用いる歯科用セルフエッチングプライマー処理剤であって、下記式I【化1】

(式中、nは1から7の整数、Xは−COOH、−PO(OH)2または−SO2OHを表す)で表されるメタクリル酸誘導体の水溶液からなる歯科用セルフエッチングプライマー処理剤。
【請求項2】 式Iで表されるメタクリル酸誘導体が、N−メタクリロイル−ω−アミノ酸(式IにおいてXが−COOH)である請求項1の歯科用セルフエッチングプライマー処理剤。
【請求項3】 N−メタクリロイル−ω−アミノ酸が、N−メタクリロイルグリシン、N−メタクリロイル−3−アミノプロピオン酸、N-メタクリロイル−4−アミノ酪酸、N−メタクリロイル−5−アミノ吉草酸またはN−メタクリロイル−6−アミノカプロン酸である請求項2の歯科用セルフエッチングプライマー処理剤。
【請求項4】 式Iで表わされるメタクリル酸誘導体が、N−メタクリロイルアミノアルキルフォスフォン酸(式IにおいてXが−PO(OH)2)またはN−メタクリロイルアミノアルキルスルフォン酸(式IにおいてXが−SO2OH)である請求項1の歯科用セルフエッチングプライマー処理剤。
【請求項5】 式Iで表わされるメタクリル酸誘導体の水溶液の濃度が10-5から10モル%である請求項1から4のいずれかの歯科用セルフエッチングプライマー処理剤。
【請求項6】 請求項1から5のいずれかの歯科用セルフエッチングプライマー処理剤を構成試薬として含む、歯の象牙質またはエナメル質に歯科用材料を接着させるための歯科用キット。
【請求項7】 式IにおいてXが−PO(OH)2または−SO2OHであるメタクリル酸誘導体。
【発明の詳細な説明】【0001】
【産業上の利用分野】本発明は、歯科用セルフエッチングプライマー処理剤に関する。更に詳細には、歯の象牙質またはエナメル質に、ボンディング剤を介してコンポジットレジンを接着させる際に、あるいは接着性レジンセメントを介して金属、矯正用ブラケットなどを接着させる際に、歯の象牙質またはエナメル質の表面処理のために用いる歯科用セルフエッチングプライマー処理剤、及び該歯科用セルフエッチングプライマー処理剤を構成試薬として含む、歯の象牙質またはエナメル質に歯科用材料を接着させるための歯科用キット、並びに該歯科用セルフエッチング処理剤に用いる新規メタクリル酸誘導体に関する。
【0002】
【従来の技術】現在では、歯科臨床において、歯の象牙質に、ボンディング材を介して虫歯充填剤としてコンポジットレジンを接着させる場合、あるいは接着性レジンセメントを介してインレーやクラウンなどの金属を接着させる場合には、通常、歯の象牙質を表面処理した後にボンディング材や接着性レジンセメントを象牙質に接着させ、このボンディング剤を介してコンポジットレジンあるいは接着性レジンセメントを介して金属を歯の象牙質に接着させる方法が採用されている。歯の象牙質の表面処理としては、象牙質のスミヤー層およびハイドロキシアパタイトを溶解して脱灰し象牙質表面に凹凸を生じさせて粗造化し、この粗造面にボンディング材や接着性レジンセメントが侵入して硬化することにより機械的維持力が高まりボンディング材や接着性レジンセメントとの接着を可能にするエッチング処理と、ボンディング材や接着性レジンセメントとの接着に適した状態に歯の象牙質を改質するプライマー処理がある。
【0003】このような象牙質の表面処理としては、例えば、象牙質にエチレンジアミン四酢酸(EDTA)を作用させてエッチング処理し、次いでグルタルアルデヒドと2−ヒドロキシエチルメタクリレート(HEMA)の混合水溶液によりプライマー処理する方法(Munksgaard EC et al., J. Dent. Res., 63(8), 1087-1089, 1984)、あるいは象牙質を正リン酸水溶液で脱灰してエッチング処理し、次いでエアー乾燥後に象牙質コラーゲン層にHEMA水溶液を作用させてプライマー処理する方法(杉崎ら、日歯科保誌、34(1), 228-265, 1991; Meerbeek BV et al., J. Dent. Res. 72(2), 495-501, 1993; Pashley DH et al., Quintessence Int. 24(9), 618-631, 1993)などがある。象牙質の表面処理を簡略化するために、エッチング処理とプライマー処理とを同時に行うセルフエッチングプライマー処理剤の研究も盛んに行われている。セルフエッチングプライマー処理剤としては、例えば、ジカルボン酸であるアスパラギン酸の誘導体、N−アクリロイルアスパラギン酸(N−AAsp)をセルフエッチングプライマー処理剤として用いることが提案されている(伊藤ら、歯科材料・器械、15(4), 341-347, 1996;伊藤ら、歯科材料・器械、16(2), 155-159, 1997;伊藤ら、歯科材料・器械、16(1), 38-43, 1997)。このN−AAspは、酸性モノマーとして作用して象牙質を脱灰すると同時に機能性モノマーとしても作用し、象牙質中の無機質および有機質の両者に作用すると考えられている。
【0004】近年においては、象牙質およびエナメル質の双方に適用可能なセルフエッチングプライマー処理剤の研究が盛んに行われている(渡辺、歯科材料・器械、11(6), 955-973, 1992;福島ら、歯科材料・器械、11(4), 679-684, 1992)。これらのセルフエッチングプライマー処理剤は、酸あるいは脱灰能を有する酸性モノマーとボンディング剤の拡散、浸透を促進する機能性モノマーより構成されている。また、N−メタクリロイルアラニンとHEMAの混合水溶液が象牙質およびエナメル質のセルフエッチングプライマー処理剤として提案されている(高橋ら、歯科材料・器械、9(1), 65-73, 1990)。この作用機序としては、N−メタクリロイルアラニンが酸としてヒドロキシアパタイトを脱灰してコラーゲンを露出させ、そこへHEMAがプライマー処理剤として作用すると考えられている。
【0005】
【発明が解決しようとする課題】一方、N−メタクリロイルグリシン、N−メタクリロイル−4−アミノ酪酸、N−メタクリロイル−6−アミノカプロン酸などのN−メタクリロイル−ω−アミノ酸を、リン酸水溶液でエッチング処理した象牙質にプライマー処理剤として作用させると、象牙質へのコンポジットレジンの高い接着性が得られることが報告されている(西山ら、歯科材料・器械、13(1),73-77, 1994;西山ら、歯科材料・器械、17(2), 120-125, 1998)。しかしながら、このようなN−メタクリロイル−ω−アミノ酸を、セルフエッチングプライマー処理剤として用いることは従来知られていない。従って、本発明の目的は、このようなN−メタクリロイル−ω−アミノ酸、並びにN−メタクリロイルアミノアルキルフォスフォン酸、N−メタクリロイルアミノアルキルスルフォン酸などを用いた歯の象牙質またはエナメル質用のセルフエッチングプライマー処理剤、及び該セルフエッチングプライマー処理剤を構成試薬として含む、歯の象牙質またはエナメル質に歯科用材料を接着させるための歯科用キット、並びに該セルフエッチングプライマー処理剤に用いる新規メタクリル酸誘導体を提供することを目的とする。
【0006】
【課題を解決するための手段】本発明者は、歯の象牙質またはエナメル質のための優れたセルフエッチングプライマー処理剤を得ることを目的として鋭意研究した結果、N−メタクリロイルグリシン、N−メタクリロイル−5−アミノ吉草酸などのN−メタクリロイル−ω−アミノ酸、並びにN−メタクリロイルアミノアルキルフォスフォン酸、N−メタクリロイルアミノアルキルスルフォン酸などの水溶液を象牙質またはエナメル質のセルフエッチングプライマー処理剤として用いた場合には、象牙質およびエナメル質のヒドロキシアパタイトの脱灰効果において優れ、また脱灰により露出した象牙質およびエナメル質コラーゲン繊維のプライミング効果においても優れ、象牙質およびエナメル質へのボンディング材や接着性レジンセメントの接着強度が著しく向上し、象牙質またはエナメル質のセルフエッチングプライマー処理剤として極めて優れていることを見出し本発明を完成させた。即ち、本発明は、歯の象牙質またはエナメル質の表面処理のために用いる歯科用セルフエッチングプライマー処理剤であって、下記式I【0007】
【化2】

(式中、nは1から7の整数、Xは−COOH、−PO(OH)2または−SO2OHを表す)で表されるメタクリル酸誘導体の水溶液からなる歯科用セルフエッチングプライマー処理剤である。更に本発明は、上記歯科用セルフエッチングプライマー処理剤を構成試薬として含む、歯の象牙質またはエナメル質に歯科用材料を接着させるための歯科用キットである。更に本発明は、式IにおいてXが−PO(OH)2または−SO2OHであるメタクリル酸誘導体である。
【0008】
【発明の実施の形態】本発明のセルフエッチングプライマー処理剤は、歯の象牙質またはエナメル質に、ボンディング材を介してコンポジットレジンを接着させる場合、あるいは接着性レジンセメントを介して金属、矯正用ブラケットなどを接着させる際に、象牙質またはエナメル質を表面処理するのに用いるものであり、エッチング処理剤及びプライマー処理剤の両者の機能を併せ持ったものである。本発明のセルフエッチングプライマー処理剤は、上記式Iで表されるメタクリル酸誘導体の水溶液からなる。このようなメタクリル酸誘導体としては、N−メタクリロイルグリシン、N−メタクリロイル−3−アミノプロピオン酸(N−メタクリロイルβアラニン)、N−メタクリロイル−4−アミノ酪酸、N−メタクリロイル−5−アミノ吉草酸、N−メタクリロイル−6−アミノカプロン酸などのN−メタクリロイル−ω−アミノ酸;N−メタクリロイル−2−アミノメチルフォスフォン酸、N−メタクリロイル−3−アミノエチルフォスフォン酸、N−メタクリロイル−4−アミノプロピルフォスフォン酸、N−メタクリロイル−5−アミノブチルフォスフォン酸、N−メタクリロイル−6−アミノペンチルフォスフォン酸などのN−メタクリロイルアミノアルキルフォスフォン酸;N−メタクリロイル−3−アミノエチルスルフォン酸、N−メタクリロイル−4−アミノプロピルスルフォン酸、N−メタクリロイル−5−アミノブチルスルフォン酸、N−メタクリロイル−6−アミノペンチルスルフォン酸などのN−メタクリロイルアミノアルキルスルフォン酸が挙げられる。なかでも、N−メタクリロイルグリシン、N−メタクリロイル−3−アミノプロピオン酸、N−メタクリロイル−4−アミノ酪酸、N−メタクリロイル−5−アミノ吉草酸、N−メタクリロイル−6−アミノカプロン酸、N−メタクリロイル−2−アミノメチルフォスフォン酸、N−メタクリロイル−3−アミノエチルフォスフォン酸およびN−メタクリロイル−4−アミノプロピルフォスフォン酸酸が好ましい。上記したN−メタクリル−ω−アミノ酸、N−メタクリロイルアミノアルキルフォスフォン酸およびN−メタクリロイルアミノアルキルスルフォン酸は、それぞれ単独で用いてもよく、またN−メタクリル−ω−アミノ酸と、N−メタクリロイルアミノアルキルフォスフォン酸またはN−メタクリロイルアミノアルキルスルフォン酸あるいはこれらの両者との組み合わせで用いることもでき、このように組み合わせて用いた場合には特に脱灰効果とともにプライミング効果が向上するので好ましい。
【0009】このようなメタクリロイル酸誘導体は、次ぎのようにして合成することができる。N−メタクリロイル−ω−アミノ酸の場合には、メタクリル酸クロリドなどのメタクリル酸ハライドと、対応するω−アミノ酸とを縮合反応させることによって得ることができる(西山ら、歯科材料・器械、13(1), 73-77, 1994)。N−メタクリロイルアミノアルキルフォスフォン酸あるいはN−メタクリロイルアミノアルキルスルフォン酸の場合には、メタクリル酸ハライドと、対応するアミノアルキルフォスフォン酸あるいはアミノアルキルスルフォン酸とを縮合反応させることによって得ることができる。これらのN−メタクリロイルアミノアルキルフォスフォン酸及びN−メタクリロイルアミノアルキルスルフォン酸は新規化合物である。本発明では、上記したメタクリル酸誘導体の水溶液を、セルフエッチングプライマー処理剤として用いる。この水溶液の濃度としては、通常10-5から10モル%、好ましくは10-3から8モル%が適している。上記したメタクリル酸誘導体は、水に対する溶解度が高いため、セルフエッチングプライマー処理剤として極めて適している。また、メタクリル酸誘導体の水溶液には、必要に応じてエタノールを添加してもよい。この場合、通常、例えば40%以下の濃度のエタノール水溶液としてセルフエッチングプライマー処理剤を調製することができる。本発明のセルフエッチングプライマー処理剤には、必要に応じて、通常用いられる添加物である多官能性モノマー、アルコールなどを適宜添加してもよい。
【0010】本発明のセルフエッチングプライマー処理剤は、通常、歯の象牙質またはエナメル質を研磨した後にその水溶液を塗布して、10秒から50秒程度作用させ、その後エアー乾燥することによって、象牙質またはエナメル質の表面処理のために適用することができる。表面処理後、必要に応じて、ボンディング材を塗布し次いでコンポジットレジンを接着させることができる。あるいは接着性レジンセメントを適用してこれに金属、矯正用ブラケットなどを接着させることができる。本発明のセルフエッチングプライマー処理剤で象牙質またはエナメル質を表面処理することにより、これらのコンポジットレジンや金属などを極めて強固に接着させることができる。これらの、ボンディング材、コンポジットレジン、接着性レジンセメント、金属、矯正用ブラケットとしては、特に限定されず、通常用いられるものを通常の方法で用いることができる。例えば、ボンディング材としては、10−メタクリロイルオキシデカメチレンリン酸(MDP)と多官能性モノマーからなるボンディング材、接着性レジンセメントとしては、4−メタアクリルオキシエチルトリメリト酸無水物(4−META)を溶解したメチルメタクリレート(MMA)をポリメチルメタクリレート(PMMA)の存在下で部分酸化トリ−n−ブチルボラン(TBB)により重合した4−META/MMA−TBBレジン、コンポジットレジンとしては、多官能性モノマーとシリカとからなるコンポジットレジンが挙げられる。金属としては、鋳造用金合金、鋳造用金銀パラジウム合金、鋳造用銀合金等のインレーやクラウンなどに用いる歯科治療用金属が挙げられる。矯正用ブラケットとしては通常用いられるものが挙げられる。
【0011】本発明のセルフエッチングプライマー処理剤は、ボンディング材、接着性レジンセメントなどと共に、あるいはそれらを調製するための試薬と共に、歯にコンポジットレジン、金属、矯正用ブラケットなどの歯科用材料を接着させるための歯科用キットとすることができる。
【0012】
【実施例】以下に、本発明を実施例により更に詳細に説明するが本発明はこれら実施例により何ら限定されるものではない。
実施例1セルフエッチングプライマー処理剤の調製セルフエッチングプライマー処理剤として、5mol%のN−メタクリロイルグリシン(NMGly)またはN−メタクリロイル−5−アミノ吉草酸(NMVa)を蒸留水に溶解し,NMGly溶液およびNMVa溶液をそれぞれ調製した。
【0013】実施例2象牙質およびエナメル質に対するコンポジットレジンの引張接着強さの測定(1)接着試験方法新鮮ウシ抜去前歯をシリコンカーバイトペーパー(♯400および♯600)を用いて注水下で平滑に研磨し、新鮮象牙質を露出させた。この象牙質研磨面にポリエチレンリング(内径:3.8mm,高さ:2.0mm)を仮着し、その内面にNMGlyまたはNMVa溶液を30秒間作用させ、10秒間エアー乾燥させた。その表面にボンディング材としてクリアフィルメガボンド(クラレ)を塗布し、3秒間エアーブロー(スリーウェイシリンジ,マイルド,モリタ)した後、10秒間光照射(クイックライト,UL1,モリタ)した。その後ただちに、コンポジットレジンとしてクリアフィルAP−X(クラレ)を充填し、30秒間光照射して試験体を作製した。試験体を室温に5分間放置した後、37 ℃水中に浸漬した。24時間後、水中から試験体を引き上げ、象牙質に対するレジンの引張接着強さを測定した。すなわち、コンポジットレジン上部に黄銅製アタッチメントをシアノアクリレート系接着剤で固定し、接着試験用アタッチメントを備えた万能試験機(DCS−2000,島津)を用い、引張速度2mm/minの条件で行った。なお、試験体はそれぞれの条件につき10個作製した。また、上記方法に準じて新鮮ウシエナメル質研磨面をNMGlyまたはNMVa溶液で処理し、コンポジットレジンを接着させた場合のエナメル質に対するレジンの接着強さを測定した。
【0014】(2)結果NMGlyおよびNMVa溶液で処理した歯冠象牙質およびエナメル質に対するレジンの接着強さを表1に示した。
【0015】
【表1】

【0016】歯冠象牙質に対するレジンの接着強さは、NMGly溶液で処理した場合には27.9MPa、NMVa溶液で処理した場合には15.7MPaと高い値を示した。一方、エナメル質に対するレジンの接着強さは、NMGly溶液で処理した場合には12.3MPaと、NMVa溶液で処理した場合の接着強さ6.4MPaに比べて高い値を示した。以上の結果から、NMGly溶液がNMVa溶液に比べて高い接着強さを与えることがわかった。
【0017】実施例3N−メタクリロイルアミノアルキルフォスフォン酸の合(1)合成方法撹拌器を備えた反応槽に水15ml、水酸化ナトリウム0.16molを加え、これにアミノメチルフォスフォン酸、アミノエチルフォスフォン酸またはアミノプロピルフォスフォン酸0.0045mol(東京化成)を溶解した後、反応槽を氷冷しながらメタクリル酸クロリド0.045molを滴下し、アミノメチルフォスフォン酸、アミノエチルフォスフォン酸またはアミノプロピルフォスフォン酸のアミノ基にメタクリル酸クロリドを縮合させた。反応終了後、反応層にメタノール(和光純薬)を加えて、反応槽を冷却しながら塩化水素ガスを導入し、反応層のpHを0.4以下とした。析出した塩化ナトリウムを濾別した後、無水硫酸ナトリウムを加えて脱水した。これを濾別した後、減圧下で溶媒を留去し、残留物に酢酸エチルおよびエタノールを加え、N−メタクリロイル−2−アミノメチルフォスフォン酸(NMMP)、N−メタクリロイル−3−アミノエチルフォスフォン酸(NMEP)およびN−メタクリロイル−4−アミノプロピルフォスフォン酸(NMPP)を結晶化させ、単離・精製した。
【0018】(2)結果得られた合成物のNMRデータを表2から4に示す。
【0019】
【表2】

【0020】
【表3】

【0021】
【表4】

【0022】実施例4N−メタクリロイル−3−アミノエチルスルフォン酸の合成(1)合成方法撹拌器を備えた反応槽に水15ml、水酸化ナトリウム0.16molを加え、これにアミノエチルスルフォン酸0.0045mol(東京化成)を溶解した後、反応槽を氷冷しながらメタクリル酸クロリド0.0045molを滴下し、アミノメチルフォスフォン酸のアミノ基にメタクリル酸クロリドを縮合させた。反応終了後、反応層にメタノール(和光純薬)を加えて、反応槽を冷却しながら塩化水素ガスを導入し、反応層のpHを0.4以下とした。減圧下で溶媒を留去し、残留物に酢酸エチルおよびエタノールを加えて、N−メタクリロイル−3−アミノエチルスルフォン酸を結晶化させて単離・精製した。
【0023】(2)結果得られた合成物のNMRデータを表5に示す。
【0024】
【表5】

【0025】実施例5象牙質およびエナメル質に対するコンポジットレジンの引張接着強さの測定(1)実施例1と同様にして、N−メタクリロイル−3−アミノプロピオン酸(N−メタクリロイルβアラニン)(NMβAla)の5mol%水溶液を調製した。このNMβAla水溶液、並びに再度実施例1で調製したNMGly水溶液およびNMVa水溶液について、セルフエッチングプライマー処理剤としての効果を調べるため、実施例2と同様にして、これらの水溶液で処理した時の歯冠象牙質およびエナメル質に対するレジンの接着強さを調べた。得られた結果を表6に示した。
【0026】
【表6】

表6の結果から分かるように、セルフエッチングプライマー処理剤であるNMβAla水溶液、NMGly水溶液およびNMVa水溶液は、歯冠象牙質およびエナメル質に対するレジンの接着強さを増強させた。
【0027】(2)実施例3で合成したN−メタクリロイル−3−アミノエチルフォスフォン酸(NMEP)を、実施例1で調製した5mol%NMGly水溶液に、0、0.35、0.7、1.4mmol添加してNMGly−NMEP水溶液のセルフエッチングプライマー処理剤を調製した。この水溶液で処理した時の象牙質およびエナメル質に対するレジンの接着強さを測定しました。得られた結果が表7に示した。
【0028】
【表7】

表7の結果から分かるように、5mol%NMGly水溶液へのNMEPの添加は、特にエナメル質へのレジンの接着強さを向上させた。象牙質およびエナメル質へのレジンの接着強さから最適NMEPの添加量を判断すると、7mmol付近が適当であると考えられる。
【0029】(3)同様に、実施例4で合成したN−メタクリロイルエチルスルフォン酸(NMES)を5mol%NMGly水溶液に、0、0.35、0.7、1.4mmol添加してセルフエッチングプライマー処理剤であるNMGly−NMES水溶液を調製した。この水溶液で処理した象牙質およびエナメル質へのレジンの接着強さを測定した。得られた結果が表8に示した。
【0030】
【表8】

表8の結果から分かるように、NMGly水溶液へのNMESの添加は、象牙質およびエナメル質へのレジンの接着強さ低下させた。
【0031】(4)実施例3で合成したN−メタクリロイル−2−アミノメチルフォスフォン酸(NMMP)、N−メタクリロイル−3−アミノエチルフォスフォン酸(NMEP)およびN−メタクリロイル−4−アミノプロピルフォスフォン酸(NMEPP)をそれぞれ、5mol%NMGly水溶液中に0.7mmol添加してセルフエッチングプライマー処理剤を調製した。これらの水溶液で処理した場合の象牙質およびエナメル質に対するレジンの接着強さを調べた。得られた結果を表9に示した。
【0032】
【表9】

表9の結果から分かるように、エナメル質に対するレジンの接着強さは、メチレン鎖長が長くなると向上した。象牙質に対しては、接着強さはほぼ一定であった。
【0033】
【発明の効果】以上に詳述した通り、N−メタクリロイルグリシン、N−メタクリロイル−3−アミノプロピオン酸、N−メタクリロイル−4−アミノ酪酸、N−メタクリロイル−5−アミノ吉草酸、N−メタクリロイル−6−アミノカプロン酸、N−メタクリロイル−2−アミノメチルフォスフォン酸、N−メタクリロイル−3−アミノエチルフォスフォン酸、N−メタクリロイル−4−アミノプロピルフォスフォン酸などのメタクリル酸誘導体の水溶液からなる本発明のセルフエッチングプライマー処理剤で歯の象牙質またはエナメル質を処理した後、コンポジットレジン、接着性レジンセメントなどを接着させた場合には著しく接着強さが上昇する。従って本発明のセルフエッチングプライマー処理剤は、極めて優れている。特に象牙質コラーゲンへのコンポジットレジンや接着性レジンセメントの接着性が重要となる根面う蝕、歯頚部う蝕、直接覆髄などの歯科疾患治療用の処理剤として、本発明のセルフエッチングプライマー処理剤は、極めて優れている。
【出願人】 【識別番号】899000057
【氏名又は名称】学校法人 日本大学
【出願日】 平成14年2月28日(2002.2.28)
【代理人】 【識別番号】100066692
【弁理士】
【氏名又は名称】浅村 皓 (外3名)
【公開番号】 特開2003−89613(P2003−89613A)
【公開日】 平成15年3月28日(2003.3.28)
【出願番号】 特願2002−53698(P2002−53698)