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【発明の名称】 杠柳(Periplocasepium)由来の作用物質
【発明者】 【氏名】常盤 孝義

【氏名】山崎 泰助

【氏名】桜井 進

【氏名】河野 稔

【氏名】草野 功

【氏名】原田 国明

【氏名】桜井 正之

【氏名】松村 外志張

【要約】 【課題】関節障害にともなう科学的な指標を用いて植物成分を探索し、抗関節障害作用物質を提供することを課題とする。

【解決手段】杠柳(Periploca sepium)の熱水抽出物、ならびにとくにその分子量10000以下の分画の濃縮物であって、リウマチ性関節炎ならびに変形性関節症患者由来の滑膜線維芽細胞の増殖抑制ならびにIL−6産生抑制作用を持ち、その物理化学的特性が紫外吸収曲線、赤外吸収曲線ならびにゲル濾過法による分子量分布によって特長づけられた分画を提供することを課題の解決手段とする。
【特許請求の範囲】
【請求項1】 杠柳(Periploca sepium)の樹皮ならびに根皮の熱水抽出物であって、リウマチ性関節炎患者の滑膜線維芽細胞ならびに変形性関節症由来滑膜線維芽細胞の増殖ならびにインターロイキン−6(IL−6)の生産性を抑制することを特長とする関節障害抑制作用物質。
【請求項2】 分子量10,000以下の分画よりなり、紫外領域の吸収スペクトラムが図4の特長を有し、赤外領域の吸収スペクトラムが図5の特長を有し、さらに分子量分布が図6(A−3)の特長を有することを特長とする請求項1にある関節障害抑制作用物質。
【発明の詳細な説明】【0001】
【発明の属する技術分野】本発明は、植物性の抗関節障害抑制作用物質に関する。
【0002】
【従来の技術】リウマチ性関節炎、変形性関節症は、成人の慢性的な生活習慣病のなかでも重要な位置を占め、その治療にはさまざまな努力が傾けられているが、引き続いて根治することの難しい疾患として知られている。従来の治療法として、非ステロイド性抗炎症剤(NSAIDs)、金などを含む免疫抑制剤、ステロイド、メトトレキセイトなど代謝拮抗剤が使用されてきているが、それぞれ効果が充分でないか、あるいは副作用が強く、さらに効果的な治療薬、治療法、あるいは補助的な治療手段が求められている(例えば橋本明「慢性関節リウマチの治療の実際、治療総論/治療のストラテジー」内科78:271−276(1996))。一方、従来リウマチ性関節炎ならびに変形性関節症にたいする漢方薬あるいは民間薬として20にあまる多数の処方が知られている(例えば水野瑞夫、米田該典「家庭の民間薬・漢方薬」新日本法規(1997))。芍薬、附子、甘草、五加皮などは、これらの処方に使用されている生薬の一部である。しかしこれら生薬については、経験的に使用されてきたにとどまっている。
【0003】
【発明が解決しようとする課題】本発明においては、関節障害にともなう細胞レベルでの科学的な指標を用いて植物成分を探索し、抗関節障害作用物質を提供することを課題とする。
【0004】
【課題を解決するための手段】本発明者らは、この課題を解決するために、まずリウマチ性関節炎(RA)においては、関節の滑膜組織が増殖・肥厚し、インターロイキン−6(IL−6)を含む各種炎症性の作用物質が生産される(例えば佐浦隆一、石川斎「DMARDsの滑膜繊維芽細胞の増殖に及ぼす影響」医学のあゆみ186:133−137(1998))、山村昌弘、槙野博史「関節リウマチ滑膜におけるサイトカイン発現異常」医学のあゆみ182:573−578(1997))ことに注目した。そこで、RA患者ならびに変形性関節症(OA)患者が外科的に滑膜組織の一部を摘除するに際し、摘除された組織を組織培養し、滑膜線維芽細胞を得た。このようにして得た滑膜線維芽細胞を培養し、各種の植物抽出物を培養液に添加しながら細胞の増殖ならびにIL−6の生産を測定することにより、細胞を障害することなく、しかも細胞増殖ならびにIL−6の生産を抑制する作用物質を探索する手段を得た。このようにして得た作用物質探索系を用いて、各種の植物由来の抽出物の細胞増殖抑制効果ならびにIL−6生産抑制効果を鋭意比較検討した結果、驚くべきことに杠柳(Periploca sepium)の熱水抽出物、ならびにとくにその分子量10000以下の分画に有効な成分が含まれることを発見し、さらにその物理化学的な特性を明らかにすることによって、滑膜細胞の増殖ならびにIL−6産生を抑制する作用物質を得た。
【0005】
【発明の実施の形態】本発明に用いられる杠柳(Periploca sepium)は、その樹皮ならびに根皮を乾燥し砕片したものを、さらに抽出を容易にするために粉砕して得た粉末を原料とする。なおここで、杠柳の樹皮ならびに根皮を乾燥し、砕片とした製品が以下実施例にあるように、生薬として五加皮あるいは北五加皮の名称で入手可能であるが、本発明における原料は、杠柳の樹皮ならびに根皮を乾燥し、細粉としたものであれば、この製品に限定されるものではない。
【0006】標準的な熱水抽出工程として、蒸留水100mlに対し、杠柳皮ならびに根皮よりなる粉末を1gの割合で一晩浸漬し、その後全量を、1時間100°Cに加熱し、加熱後全量を室温にまで冷却し、さらにその後、全量をガラス繊維濾紙で濾過し、さらに加えて孔径0.22ミクロンのメンブレンフィルターで濾過して、粗熱水抽出物を得る。ただし、粉末に対する蒸留水の割合、熱水による抽出時間、ならびに抽出後の濾過の方法など、ここに示した標準的な工程の条件については、その多少の変更はその後の作用物質の取得に大きな影響を与えないことは当該業者であれば容易に予想できることであり、従って本発明は上記の標準的な熱水抽出工程の採用に限定されるものではない。
【0007】標準的な分画工程においては、上記のようにして得た粗熱水抽出物を以下のようにして分画する。即ち粗熱抽出物を分画分子量10,000の限外濾過装置を用い、原液側(非透析側)に精製水を加えつつ、その液量を維持し、透析液側に透過液を収穫する。このようにして得た透過液を減圧濃縮し、さらに凍結乾燥して乾燥物を得る。標準工程においては、当初の杠柳樹皮ならびに根皮粉末1gに対する最終的な透過液600mlを得、これを10分の1量にまで減圧濃縮し、さらに凍結乾燥するが、ここに示した標準的な工程の条件の詳細については、その多少の変更はその後の作用物質の取得に大きな影響はないことは当該業者であれば容易に予想できることであり、従って本発明は上記の標準的な熱水抽出工程の採用に限定されるものではない。例えば限外濾過装置として、平膜式限外濾過濃縮装置でなくとも、透析チューブを用いることも、また遠心式限外濾過濃縮装置を用いることも、当該業者であれば容易に想起できることであり、その選択は平膜式限外濾過濃縮装置に限定されない。
【0008】このようにして得た凍結乾燥物を0.02mg/mlないし0.2mg/mlの濃度でOA患者由来滑膜線維芽細胞、ならびにRA患者由来滑膜線維芽細胞の細胞培養に添加したとき、その両者の細胞増殖を抑制すること、ならびに両者のIL−6生産性を抑制すること、さらにその紫外吸収曲線が図4にある曲線の特長を示すこと、またさらにその赤外吸収曲線が図5にある曲線の特長を示すこと、そしてさらにまたそのゲル濾過による分子量分布が図6にある曲線の特長を示すことを確認した上で、目的とする滑膜細胞の炎症抑制作用物質を得る。
【0009】なお、本物質は凍結乾燥した粉末の形で提供されるが、凍結乾燥物を溶解したり、あるいは他の物質と混合した標品は勿論、凍結乾燥する以前の限外濾過濃縮物、ならびにさらに限外濾過濃縮する以前の熱水抽出物も当然該作用物質を含むものであり、該作用物質の提供の形は、凍結乾燥した粉末に限らないことはゆうまでもない。また本物質は、そのOA患者由来滑膜繊維芽細胞ならびにRA患者由来滑膜繊維芽細胞の増殖抑制効果とIL−6産生抑制効果、紫外吸収曲線、赤外吸収曲線ならびにゲル濾過による分子量分布によって特長づけられるものであるが、上記の製造法に従えば再現的にこれらの特長を有する物質を得ることがてきるのであるから、一旦製造法が確立した以上は、これらの評価試験の一部あるいは全部省略をすることによっても、本発明の新規性が失われるものではない。
【0010】
【実施例】以下、実施例により本発明を具体的に説明するが、本発明はこれらの実施例に限定されるものではない。以下の本実施例においては、原料とした杠柳の樹皮ならびに根皮の乾燥砕片を五加皮あるいは北五加皮と称して販売されている生薬を用いている。ここで、五加皮と称されるものに、ガガイモ科の植物である杠柳の樹皮ならびに根皮に由来するもの以外に、ウコギ科の植物に由来するものが記載されている(日本薬草全書)。しかし現在、漢方生薬として販売されているものはすべてが杠柳のものであり、以下実施例においても、特に注釈しないかぎり、五加皮あるいは北五加皮と記しているものは生薬として入手した杠柳の樹皮ならびに根皮の乾燥砕片を指す。
【0011】乾燥した杠柳樹皮ならびに根皮の砕片は、比較するために使用した生薬である芍薬、甘草、附子それぞれの乾燥砕片標品とともに、五加皮(北五加皮)の名称で中国産の生薬として販売されているものを内田漢方より入手して使用した。しかし、同様の標品は他のルートからも入手可能であり、本発明は杠柳の皮ならびに根皮を乾燥した製品であれば、その入手先によらない。
【0012】入手した五加皮、芍薬、甘草、ならびに附子の乾燥砕片標品をさらによく乾燥し、それぞれ1gづつをとって、乳鉢を用いて粉砕し、微粉末を得た。これら微粉末をそれぞれビーカーに移して、それぞれに100mlの蒸留水を注ぎ、微粉末を分散、浸漬し、常温で一晩放置した。翌日、ビーカーを100°Cにおいて1時間加熱した。加熱後放冷し、さらに濾紙で濾過して濾液を得た。濾液をそれぞれ凍結乾燥し、乾燥標品を得た。
【0013】RA患者ならびにOA患者からの滑膜組織は、財団法人河野臨床医学研究所付属北品川病院(理事長河野稔)において、治療目的で手術によって摘出された組織を用いた。RA滑膜組織提供者は年齢70歳から80歳までの女性、OA滑膜組織提供者は年齢84歳の男性であった。摘出組織は、メスにて細切後、6cmプラスチック培養皿の底面に張り付け、10%牛胎児血清添加RPMI1640培養液(以下RPMI10FBSと表記)中、5%CO2ガスを含む加湿した気相中、37°Cに保温して培養し、それぞれRAならびにOA由来の滑膜線維芽細胞を増殖させた。増殖系の滑膜線維芽細胞の培養は、トリプシン処理によって、2回乃至3回継代培養し、以下の実験に供した。
【0014】第一に、OA滑膜線維芽細胞に対する植物抽出物の細胞増殖抑制効果を判定する実験を行った。継代培養したOA滑膜線維芽細胞の培養をトリプシン処理し、遠心分離して細胞を分離し、これをRPMI10FBS培養溶液に分散して、2x10個/mlの細胞密度に調整し、調整した細胞浮遊液を0.5mlずつ、96穴のプラスチツクウエルプレートのそれぞれのウエルに播種し、このようにして播種した細胞培養を、5%CO2ガスを含む加湿した気相中、37°Cに保温して1日間培養し、その後、それぞれの培養皿に五加皮、芍薬、甘草ならびに附子より得た上記抽出物を最終濃度0.002、0.02、0.2、ならびに2mg/mlとなるようにそれぞれ添加し、さらに培養を6日間続けた。培養後、細胞の増殖をMTT法(黒木登志夫ら編「新培養細胞実験法」羊土社(1999))にて測定し、無添加群の増殖に対する比をとって、増殖抑制効果の指標とした。このようにして培養したOA滑膜線維芽細胞の増殖に及ぼすこれら4種類の植物抽出物の効果は図1に示す通りであるが、要約すれば、OA細胞に対してはこれら4種の抽出物はどれも増殖抑制効果を示すが、そのなかで附子は最も弱く、甘草がこれに次ぎ、さらに芍薬、そして五加皮がもっとも強い抑制効果を示した。即ち五加皮においては、0.02mg/mlの濃度で80%以上の抑制を示したが、附子は0.2mg/mlの濃度まで抑制を示さず、2mg/mlの濃度においてはじめて40%程度の抑制を示すにとどまり、甘草、芍薬はその中間であった。なお、本実験において、増殖抑制下での細胞を観察したところでは、細胞は生存しており、とくに障害を受けている様子は見あたらず、これら抽出物の効果は増殖抑制にあり、細胞の殺傷によるものでないと判定された。
【0015】第二に、RA滑膜線維芽細胞に対する植物抽出物の細胞増殖抑制効果を判定した。実験は第一の実験と同様であるが、植物抽出物を添加して行った培養の期間は3日で十分に判定可能であったので、本実験ならびに以下の実験では培養期間を3日間とした。これら4種類の植物抽出物のRA細胞の増殖抑制効果は図2に示す通りであるが、要約すれば、RA細胞に対しては、試験した濃度範囲においては、増殖抑制効果を示したものは芍薬と杠柳のみであり、附子と甘草には効果はみられなかった。また芍薬についても2mg/mlの濃度でようやく抑制効果が見られ、0.2mg/mlでは見られなかった。これに対し、杠柳では、測定した範囲で濃度依存的に抑制効果が認められた。また、検鏡した範囲においてこれら抽出物の添加は細胞の殺傷を引き起こすものでなく、増殖の抑制のみが引き起こされたものと判断された。
【0016】図1ならびに図2に結果を示した以上2実験から、試験した4種類の植物抽出物のうち、OA細胞ならびにRA細胞に対してともに増殖抑制効果を示したものは、杠柳と芍薬の2種であり、とくに杠柳の抽出物が濃度依存的に高い抑制効果を示した。RAにおいては滑膜線維芽細胞の増殖が誘起されることが病状の進行と深く関わっていることが従来示されているが(例えば佐浦隆一、石川斎「DMARDsの滑膜繊維芽細胞の増殖に及ぼす影響」医学のあゆみ186:133−137(1998))、本実験の結果は、杠柳がRA由来滑膜線維芽細胞の増殖を抑制し、したがってRAの進行を抑制する作用を持っていることを示したものである。
【0017】第三に、培養したOA滑膜線維芽細胞ならびにRA滑膜線維芽細胞のIL−6生産に対する杠柳抽出物の効果を判定するために、それぞれの細胞を1x10個/0.5mlずつ96穴ウエルプレートの各ウエルに播種し、1日間培養した後、第一ならびに第二の実験におけると同様に凍結乾燥した五加皮熱水抽出物をそれぞれ0.2ならびに2mg/mlの濃度で添加し、引き続き3日間培養した後、培養上清中のIL−6の濃度をELISA法によって測定した。測定結果は図3に表記する通りであるが、要約すれば、細胞数当たりのIL−6生産は、OA細胞においても、RA細胞においても、0.2mg/mlならびに2mg/mlの濃度で抑制され、とくにRA細胞に対しては、濃度依存的な抑制がみられ、0.2mg/mlで70%、2mg/mlで90%以上の抑制が見られた。RAにおいては滑膜線維芽細胞の増殖が誘起されるばかりでなく、サイトカイン、とくIL−6の生産が昂進することが病状の進行と深く関わっていることが従来示されているが(例えば山村昌弘、槙野博史「関節リウマチ滑膜におけるサイトカイン発現異常」医学のあゆみ182:573−578(1997))、本実験の結果は、杠柳抽出物がRA由来滑膜線維芽細胞の増殖ばかりでなく、IL−6産生を抑制し、したがってRAの進行を抑制する作用を持っていることを示したものである。
【0018】第四に、杠柳樹皮ならびに根皮熱水抽出物の本体を明らかにするために、抽出物の分画を行った。すなわち、五加皮の砕片標品をさらによく乾燥し、その2gをとって乳鉢を用いて粉砕し、微粉末を得た。これら微粉末をビーカーに移して、200mlの蒸留水を注ぎ、微粉末を分散、浸漬し、常温で一晩放置した。翌日、ビーカーを100°Cにおいて1時間加熱した。加熱後放冷し、ガラスフィルター(WhatmanGF/A、粒子保持能1.6μm)濾過し、さらにメンブレンフィルター(孔径0.22μm)で濾過し、濾液140mlを得た。この濾液を2等分し、70mlは直接凍結乾燥して、乾燥品308mgを得た。この乾燥品をA−1とした。いま一方の濾液70mlは、限外濾過装置(分画分子量10,000、タンジェンシャルフロー型、Millipore社製Minitan)を用いて限外濾過した。本装置によって限外濾過する間、非透析側に精製水を滴下補給しつつ、50ml透過ごとに透過液の吸光度を280mnならびに320nmにおいて測定し、充分な限外濾過がなされるまで濾過を続けた。結果、600mlの限外濾過液を回収した時点で、吸光度から推定される濾過物質の回収をほぼ終了した。このとき、濾過液への回収率は、280mnならびに320nmにおける吸光度を指標として、それぞれ82%ならびに78%であった。限外濾過後、濾過されなかった非透析液160mlを回収し、その容積を10分の1にまで減圧濃縮した後、凍結乾燥し、乾燥物23mgを得た。この標品をA−2とした。一方、限外濾過後の透析液600mlについても同様にその容積を10分の1にまで減圧濃縮した後、凍結乾燥し、乾燥物260mgを得た。この標品をA−3とした。
【0019】以上の抽出ならびに分画の結果を要約すると表1の通りである。

【0020】 第五に、得られた3画分A−1、A−2、A−3について、RO患者由来滑膜線維芽細胞に対する増殖抑制効果ならびにIL−6生産抑制効果を測定した。ここで96穴プラスチック培養皿の各ウエルに滑膜線維芽細胞1x10個を含むRPMI10FBS培養溶液0.5mlを播種し、さらにそれぞれのウエルに凍結乾燥した分画物を無添加、0.2mg/ml添加あるいは2mg/ml添加し、3日間培養した後に増殖率の測定をMTT法にて行い、またIL−6の生産性をELISA法によって行った。
【0021】以上の実験の結果は表2に示す通りである。

【0022】表2に示すように、A−1分画が0.2mg/mlの添加量でRA細胞の増殖ならびにIL−6生産能を著しく抑制することは、さきに図2ならびに図3で示した結果を追加確認すものであるが、A−3分画添加群においても、同様な結果が得られたにも関わらず、A−2分画では増殖抑制、ならびにIL−6生産抑制ともに弱く、しかもA−2分画の回収量はA−3分画の10%以下であることから、杠柳熱水抽出物中のRA滑膜線維芽細胞増殖抑制ならびにIL−6生産抑制作用を示す作用物質はその大部分がA−3分画に回収されたものと結論される。
【0023】第六に、ここで得られた分画、A−3について、その物質の物理化学的特性を明らかにした。すなわち、その紫外領域の吸収曲線を図4に、その赤外領域の吸収曲線を図5に、さらに分析的ゲル濾過装置によって測定した分子量分布を図6に示した。ここで、紫外線吸収曲線は、濃縮・凍結乾燥する以前のA−3分画を5倍希釈し、従って90μg/mlの濃度でU−2000型日立ダブルビーム分光光度計を用いて測定したものである。また赤外吸収は、FT−710型フーリエ変換赤外分光光度計((株)堀場製作所)で測定したものである。さらにまた、分画の分子量分布は、吸光度280nmの吸収を指標として、Asahi Pack GF−510HQゲル濾過カラムをWaters社製アライアンスHPLCシステムに着装して測定したものであり、A−2分画ならびに分画前の熱水抽出物であるA−1試料との比較で測定を行った。
【0024】図4に示す紫外領域の吸収スペクトラムは、280nm付近ならびに320乃至330nm付近の2領域に高いピークを示した。このような二峰性の吸収曲線はフラボノイドの存在を示唆するものである(家森幸男他編「大豆イソフラボン」幸書房(2001))。また図5に示す赤外領域の吸収スペクトラムにおいて、1050cm−1付近の吸収は糖質(C−OH構造)の存在を、1400cm−1付近の吸収は糖質、飽和炭化水素あるいは複素芳香環、1550乃至1650cm−1付近の吸収は(芳香環)=O構造、複素芳香環、あるいはアミノ酸の存在を示すものである(島内武彦「赤外線吸収スペクトル解析法」南江堂(1980))。また図6に示す分子量分布から、A−3分画からはA−1分画の高分子成分であり、A−2分画に濃縮されている分子量約9000ドルトンの成分は除去されており、A−3分画の主成分は分子量3000から1500ドルトン付近に少なくとも3つのピークを有する混合物であること、ならびにこれらのピークは、未分画A−1試料に含まれるピークと対応するものであることが明らかであった。これら化学組成についての総合的な結論として、A−3分画はフラボノイド配糖体が主成分であることが推定される。
【発明の効果】1.古来より中国において、五加皮あるいは北五加皮の名称で、漢方薬ならびに薬用酒の原料として使用されてきたにも関わらず、その作用が明確でなかった杠柳(Periploca sepium)樹皮ならびに根皮の熱水抽出物を、抽出分画して科学的特性を一部明らかにするとともに、RA患者ならびにO患者由来の滑膜線維芽細胞の増殖の抑制ならびにIL−6産生の抑制という科学的に作用の知れた抗関節障害作用物質として取り扱うことを可能とした。
2.従来知られているリュウマチ性関節炎ならびに変形性関節症に対する薬剤に加えて、新たな薬剤あるいは機能性食品の素材を提供した。
【出願人】 【識別番号】000139241
【氏名又は名称】株式会社ローマン工業
【識別番号】501333397
【氏名又は名称】財団法人河野臨床医学研究所
【出願日】 平成13年7月19日(2001.7.19)
【代理人】
【公開番号】 特開2003−34645(P2003−34645A)
【公開日】 平成15年2月7日(2003.2.7)
【出願番号】 特願2001−252117(P2001−252117)