| 【発明の名称】 |
クッション材用充填材およびクッション材 |
| 【発明者】 |
【氏名】福永 真一 【住所又は居所】大阪府大阪市北区梅田一丁目2番2号 カネボウ合繊株式会社内
|
| 【要約】 |
【課題】環境に優しく、かつ、優れた性質を有するクッション材用充填材を提供すること。
【解決手段】脂肪族ポリエステル系樹脂組成物の発泡粒子でなるクッション材用充填材を提供する。ポリ乳酸系樹脂の発泡粒子が最も好ましく用いられる。発泡粒子の形状は、球状、俵状、略円筒状あるいは略円柱状が好ましい。このポリ乳酸系樹脂の発泡粒子は、生分解性、通気性に優れ、防カビ性に優れ、つぶれにくく、丸洗いでき、適度な硬さがあり、そして、十分な変形後の復元性があり、一旦変形しても、天日干し、温風を当てるなどの加熱処理により、容易にもとの形状に復元するという性質を有している。さらに、この発泡粒子をポリ乳酸系繊維で形成された袋体に充填されたクッション材が提供される。このクッション材は、抗菌性、防カビ性に優れている。 |
【特許請求の範囲】
【請求項1】 脂肪族ポリエステル系樹脂組成物の発泡粒子でなる、クッション材用充填材。 【請求項2】 前記発泡粒子が、球状、俵状、円筒状または円柱状である、請求項1に記載のクッション材用充填材。 【請求項3】 前記脂肪族ポリエステル系樹脂組成物の主成分がポリ乳酸である、請求項1または2に記載のクッション材用充填材。 【請求項4】 請求項1から3のいずれかの項に記載のクッション材用充填材が、ポリ乳酸系繊維を含む袋体に充填された、クッション材。
|
【発明の詳細な説明】【0001】 【発明の属する技術分野】本発明は、クッション材用充填材およびその充填材を充填したクッション材に関する。 【0002】 【従来の技術】クッション材の充填材として、そば殻、もみ殻などの天然素材が使用されている。このような天然素材は吸湿性、通気性に優れるが、つぶれやすい、カビが生える、丸洗いできない、入手が困難で高価であるなどの問題がある。そのため、主に、安価に供給できるという観点から、合成樹脂製の素材が、天然素材の代替として用いられている。 【0003】合成樹脂製の充填材としては、ポリ塩化ビニル、ポリエチレン、ポリプロピレンなどの円筒状樹脂粒子、ポリウレタンスポンジ、ポリスチレン発泡粒子などが用いられている。例えば、ポリエチレン性の円筒状樹脂粒子は、寝具用および家具用のクッション材として使用されている(特許文献1)。発泡粒子については、例えば、大きさの異なる2種類のポリエチレン発泡体を収容したセルを複数並べて配置した体圧分散マット(特許文献2)、微小な発泡ビーズを用いた体圧分散のソファ(特許文献3)、球状あるいは楕円体状に形成された発泡樹脂粒子を用いる体圧分散マット(特許文献4)などとして利用されている。しかし、これらの円筒状樹脂粒子は、硬い、使用時の音が耳ざわりであるなどの問題があり、ポリウレタンスポンジは、柔らかすぎる、通気性が悪いなど、使用に際しての問題があり、そしてポリスチレン発泡粒子は、使用により変形しやすく、いったん変形すると元に戻りにくいという問題がある。そのうえ、これらの合成樹脂製の充填材は、いずれも、石油に由来しており、また、非生分解性であるため、廃棄時に環境に悪影響を与えるという共通の問題点がある。 【0004】 【特許文献1】特開平8−103581号公報【特許文献2】特許第3313644号公報【特許文献3】実用新案登録第3081750号公報【特許文献4】特開平10−313979号公報【0005】 【発明が解決しようとする課題】そこで、天然素材の有する優れた特徴を有しながら、上記石油系合成樹脂製充填材の欠点が改良された、安価で品質の安定したクッション材用充填材が求められている。 【0006】 【課題を解決するための手段】本発明は、上記課題を解決するために行われたものであり、本発明により、天然素材が有する環境に対するやさしさ(生分解性)と通気性に優れるという特徴を備え、つぶれにくく、カビが生えず、丸洗いでき、適度な硬さと、変形後の復元性に優れるなどの特徴を有するクッション材用充填材、およびこのクッション材用充填材が充填されたクッション材が、安価に大量に供給される。 【0007】すなわち、本発明は、脂肪族ポリエステル系樹脂組成物の発泡粒子でなる、クッション材用充填材である。 【0008】好ましい実施態様においては、前記発泡粒子が、球状、俵状、円筒状または円柱状である。 【0009】さらに好ましい実施態様においては、前記脂肪族ポリエステル系樹脂組成物の主成分がポリ乳酸である。 【0010】本発明は、また、前記いずれかのクッション材用充填材が、ポリ乳酸系繊維を含む袋体に充填されたクッション材である。 【0011】 【発明の実施の形態】本発明のクッション材用充填材は、脂肪族ポリエステル系樹脂組成物の発泡粒子でなる。脂肪族ポリエステル系樹脂は、脂肪族ポリエステルを主成分として含む樹脂である。脂肪族ポリエステルとしては、ポリ乳酸系樹脂、ポリヒドロキシブチレート系樹脂、ポリカプロラクトン系樹脂、ポリブチレンサクシネート系樹脂またはポリブチレンアジペート系樹脂が挙げられる。これらは、単独で用いてもよいし、2以上組合せて用いてもよい。 【0012】本発明において使用される脂肪族ポリエステル系樹脂組成物は、脂肪族ポリエステル系樹脂に、通常、必要に応じて発泡核剤あるいは添加剤等を配合して得られる。本発明においては、この樹脂組成物をビーズ状粒子とした後、発泡剤および発泡助剤を含浸させて、発泡性を有するビーズを得る。次いでこの発泡性ビーズを発泡させて、発泡粒子を得る。 【0013】上記必要に応じて添加される発泡核剤あるいは添加剤としては、当業者が通常用いる核剤(例えば、無機粒子など)、および添加剤(例えば、酸化防止剤、可塑剤、帯電防止剤など)等が挙げられる。 【0014】脂肪族ポリエステル系樹脂組成物の発泡粒子は、当業者が通常行う方法によって得られる。例えば、脂肪族ポリエステル系樹脂組成物をビーズ発泡する方法、脂肪族ポリエステル系樹脂組成物を押出発泡して、所望の大きさに成形あるいは加工する方法、あるいは、脂肪族ポリエステル系樹脂組成物を押出成形し、所望の大きさに加工し、ついで、常法により発泡粒子とする方法などが挙げられる。発泡粒子の製造方法は、粒子の形状等を考慮して、当業者が適宜選択すればよい。 【0015】得られる脂肪族ポリエステル系樹脂組成物の発泡粒子は、生分解性であり、通気性に優れ、つぶれにくく、丸洗いでき、そして適度な硬さがあるという特徴を有するため、クッション材用充填材に好適に使用される。 【0016】十分な変形後の復元性を得ようとする場合は、ポリ乳酸系樹脂が好ましく用いられる。特に、ポリ乳酸系樹脂は、用いる乳酸モノマーの種類(例えば、D−乳酸とL−乳酸のモル比を変える)を選択する、あるいは、後述のように低融点の生分解性ポリマーをブレンドするなどの処理を行うことで、発泡粒子の硬さを自在にコントロールすることができ、形状のホールド性を高くすることができる。さらに、ポリ乳酸はガスバリア性が高いことから、一旦変形しても、天日干し、温風を当てるなどの加熱処理により、容易にもとの形状に復元するという性質を有する。 【0017】また、ポリ乳酸系樹脂は、防カビ性を有することが、本発明者によって、見出された。 【0018】従って、上記脂肪族ポリエステル系樹脂の中でも、ポリ乳酸系樹脂が、防カビ性、形状の復元性という観点から、最も好ましく用いられる。 【0019】以下、ポリ乳酸系樹脂を用いる場合について説明するが、この説明が、上記ポリ乳酸系樹脂以外の脂肪族ポリエステル系樹脂を用いる場合にも適用されることはいうまでもない。 【0020】本明細書で、「ポリ乳酸系樹脂」とは、ポリ乳酸を主成分として含む樹脂を意味し、樹脂成分がポリ乳酸のみからなるホモポリ乳酸樹脂、ポリ乳酸と他のポリマーとをブレンドして得られる樹脂、あるいは他の共重合可能なモノマー成分と乳酸モノマーとを共重合して得られる樹脂を意味する。ポリ乳酸は、例えば、L−乳酸、D−乳酸、または乳酸の2量体であるL−ラクチド、D−ラクチドあるいはメゾラクチドなどを原料として重合される。 【0021】ポリ乳酸とブレンド可能なポリマーとしては、生分解性樹脂が好ましく用いられる。このような生分解性樹脂としては、ポリカプロラクトン、ポリエチレンサクシネート重合体、ポリブチレンサクシネート重合体などが挙げられる。中でも、1,2−エタンジオールとコハク酸から合成されるポリエチレンサクシネート重合体をウレタン結合により高分子量化したポリマー(PESポリマー)、1,4−ブタンジオールとコハク酸から合成されるポリブチレンサクシネート重合体をウレタン結合により高分子量化したポリマー(PBSポリマー)(商品名ビオノーレ:昭和高分子株式会社製)などが好ましく用いられる。 【0022】また、乳酸モノマーと生分解性のモノマー成分とを共重合させて、ポリ乳酸系樹脂を製造することもできる。このようなモノマー成分としては、コハク酸エステルが好ましく用いられる。 【0023】脂肪族ポリエステル系樹脂の発泡粒子は、上記の当業者が通常行う方法によって得られる。発泡粒子の形状は問わない。通気性を考慮すると、球状、俵状、円筒状あるいは円柱状などの形状が好ましい。なお、円筒状あるいは円柱状というときは、円筒の外側の角あるいは円柱の角が丸みを帯びた形状である、略円筒状あるいは略円柱状の形状も含む。これらの形状の粒子は単独で用いてもよく、組み合わせて用いてもよい。真球状の粒子を用いる場合は、通気性の観点からは、他の形状の発泡粒子と組み合わせて使用することが好ましい。さらに通気性を向上させるためには、これらの粒子は中空部を有していてもよい。 【0024】枕、クッション、ソファー、ベッド、マット、椅子、ぬいぐるみなど、触感を大事にする場合、発泡粒子の形状は角のない方が好ましい。さらに好ましくは、ベッドやマットに使用する場合、クッション体に体重を載せるので、うまく体圧を分散し体にホールド性を与えたり、床擦れを防止する観点から、発泡粒子の最大径/最小径の値は1.1以上3.3以下が好ましい。すなわち、完全に真球状の粒子であるよりも、表面にやや凹凸があったり、あるいはやや扁平であるほうがよい。なお、最大径および最小径とは、粒子を平面投影機により投影した場合に得られる影の最大長さおよび最小長さをいい、そして最大径/最小径の値とは、粒子50個について測定した場合の最大径/最小径の平均値をいう。 【0025】発泡粒子の大きさには特に制限はなく、球状の場合は直径約0.5〜20mm、俵状あるいは円筒状の場合、直径約0.5〜20mm、長さ約2〜30mm程度が好ましく用いられる。中空部を有する場合、肉厚が約0.1〜5mmとなるように設けることが好ましい。 【0026】ポリ乳酸系樹脂の発泡粒子は、土中に包埋すると、3ヶ月ほどで崩壊し生分解性を示す。さらにこの粒子は防カビ性を発揮し、表面上にカビが生育しない。さらに、この発泡粒子は、通気性に優れ、つぶれにくく、丸洗いでき、適度な硬さがあり、そして、十分な変形後の復元性があり、一旦変形しても、天日干し、温風を当てるなどの加熱処理により、容易にもとの形状に復元する。 【0027】本発明のクッション材は、ポリ乳酸系繊維で形成された袋体に、上記のクッション材用充填材が充填されている。なお、本発明において、「クッション材」とは、寝具用、家具用、車両内装用などのクッション材であって、例えば、枕、クッション、ソファー、ベッド、マット、椅子、ぬいぐるみなど、充填材が充填された袋体を総称していう。充填材の充填率と、袋体の伸縮性を変えることによって、クッションの柔らかさ、ホールド性などが変化するので、最終製品の種類によって充填材の充填率、袋体の伸縮性を選択したほうが良い。枕、クッション、ソファーに伸縮性のある袋体を使用した場合、充填率90%〜120%が好ましく、伸縮性のない袋体を使用した場合、充填率60%〜90%が好ましい。また、ベッド、マットの場合には伸縮性のない袋体が好ましく、充填率も75%〜95%が好ましい。上記充填率は、充填率(%)=充填材の見かけの体積/設計に基づく袋体の体積×100で表される。 【0028】ポリ乳酸系繊維とは、ポリ乳酸を主成分として含む繊維を意味し、例えば、上記のポリ乳酸のみからなるホモポリ乳酸樹脂、乳酸モノマーと他の共重合可能なモノマー成分とを共重合して得られる樹脂、あるいはポリ乳酸と他のポリマーとをブレンドして得られる樹脂などの樹脂を溶融紡糸することにより得られる。なお、共重合可能なモノマー成分としては、コハク酸エステルなどの生分解性のモノマーが用いられ、ブレンド可能なポリマーとしては、上記ポリ乳酸樹脂とブレンドする生分解性樹脂が用いられる。 【0029】このようにして得られるポリ乳酸系繊維から得られる織布あるいは不織布を袋体として用い、前記ポリ乳酸系樹脂から得られる発泡粒子をクッション材用充填材として用いると、快適な使用感を有しながら、抗菌性と防カビ性に優れたクッション材が得られる。このような、抗菌・防カビ性に優れたクッション材は、床ずれなどの原因になる緑膿菌に対して抗菌効果を有し、水洗可能であり、良好な復元性を有するので、病院用の枕やベッドとしても有用である。 【0030】 【実施例】以下、本発明を実施例を挙げて説明するが、本発明はこの実施例に限定されない。 【0031】(ポリ乳酸発泡粒子の製造) 実施例1L体およびD体の重合比(モル比)が90:10であるポリ乳酸100重量部、イソシアネート化合物(日本ポリウレタン社製ミリオネートMR−200;イソシアネート基2.7〜2.8当量/モル)1重量部、およびタルク(富士タルク工業社製LMP100)3重量部を二軸混練押出機に入れ、シリンダー温度180℃で混練・押出しを行ない、水を供給しながら切断して、ビーズ状樹脂を得た。このビーズ状樹脂2000重量部、ブタン380重量部、およびメタノール480重量部をオートクレーブに入れ、1時間あたり20℃の割合で昇温し、70℃にて1時間保持した。次いで25℃まで冷却し、ビーズ状樹脂を取り出した。このようにして得られた発泡性ビーズを、水蒸気を用いて92℃で1分間発泡させ、直径約4mmの球状の発泡粒子を得た。この粒子の最大径/最小径の値を測定したところ、1.1〜1.5であった。最大径/最小径の値は、無作為に選び出した50粒について平面投影機を用いて測定した。 【0032】得られた発泡粒子をポリ乳酸繊維で形成した袋体に充填率80%で入れて、枕を作成した。枕の使用感はよく、音も快適なものであった。長時間荷重をかけて放置したところ、枕は扁平に変形した。常温ではほとんど形状の戻りはなかったが、天日干しにしたところ、ほぼもとの形に復元した。 【0033】(防カビ性)ダイセン工業(株)製VS300成形機にて、300×300×30mmの金型を用いて発泡粒子を成形し、2mmの厚みにスライスしたものについて、JIS Z 2911.5によって、防カビ性を評価した。試験菌は、Aspergillusniger IFO 6341、Penicillium citrinum IFO 6352、Rhizopus stolonifer IFO 31005、Cladosporium cladosporioides IFO 6348およびChaetomium globosum IFO6347であったが、接種後4週を経過しても、いずれも全く生育は認められなかった。 【0034】(使用感テスト)試作した枕の、(1)頭に対するホールド性、および(2)柔らかさについて被験者10名に良好(2点)、普通(1点)、悪い(0点)の3段階判定を行わせ、以下のように5段階に集計評価した。結果を以下の表1に示す。 【0035】<5段階集計>5: 18点〜20点4: 15点〜17点3: 12点〜14点2: 9点〜11点1: 0点〜8点。 【0036】比較例1実施例1のうち、ビーズ状樹脂を得る際の切断の間隔に注意を払うことによって最大径/最小径の値が1.0〜1.1である発泡粒子を得た。最大径/最小径の値は実施例1と同様の方法で行なった。この発泡粒子を実施例1と同様の袋体に充填率80%(比較例1)で充填し枕を作成した。得られた枕について、使用感テストを行った。結果を表1に示す。 【0037】比較例2および3実施例1と同様の発泡粒子を実施例1と同様の袋体にそれぞれ充填率100%(比較例2)および充填率50%(比較例3)で充填し枕を作成した。これらの枕について、使用感テストを行った。結果を表1に示す。 【0038】 【表1】
【0039】表からわかるように、実施例の枕は、比較例の枕と比べて、ホールド性および柔らかさとも優れていた。 【0040】 【発明の効果】本発明の脂肪族ポリエステル系樹脂の発泡粒子は、生分解性、通気性に優れ、従来の石油系樹脂で得られる樹脂あるいは発泡粒子と比べても、つぶれにくく、丸洗いでき、適度な硬さがある。そのため、従来の天然素材あるいは石油系樹脂粒子あるいは発泡粒子と比べて、環境に優しく、かつ、優れた性質を有するクッション材用充填材として有用である。
|
| 【出願人】 |
【識別番号】000000952 【氏名又は名称】カネボウ株式会社 【住所又は居所】東京都墨田区墨田五丁目17番4号 【識別番号】596154239 【氏名又は名称】カネボウ合繊株式会社 【住所又は居所】大阪府大阪市北区梅田一丁目2番2号
|
| 【出願日】 |
平成14年10月31日(2002.10.31) |
| 【代理人】 |
|
| 【公開番号】 |
特開2003−304948(P2003−304948A) |
| 【公開日】 |
平成15年10月28日(2003.10.28) |
| 【出願番号】 |
特願2002−317536(P2002−317536) |
|