| 【発明の名称】 |
座席構造 |
| 【発明者】 |
【氏名】藤田 悦則 【住所又は居所】広島県広島市安芸区矢野新町一丁目2番10号 株式会社デルタツーリング内
【氏名】千▲柄▼ 一義 【住所又は居所】広島県広島市安芸区矢野新町一丁目2番10号 株式会社デルタツーリング内
【氏名】川崎 誠司 【住所又は居所】広島県広島市安芸区矢野新町一丁目2番10号 株式会社デルタツーリング内
【氏名】小倉 由美 【住所又は居所】広島県広島市安芸区矢野新町一丁目2番10号 株式会社デルタツーリング内
【氏名】落合 直輝 【住所又は居所】広島県広島市安芸区矢野新町一丁目2番10号 株式会社デルタツーリング内
【氏名】高田 康秀 【住所又は居所】広島県広島市安芸区矢野新町一丁目2番10号 株式会社デルタツーリング内
【氏名】菊水 美穂 【住所又は居所】広島県広島市安芸区矢野新町一丁目2番10号 株式会社デルタツーリング内
【氏名】小島 重行 【住所又は居所】広島県広島市安芸区矢野新町一丁目2番10号 株式会社デルタツーリング内
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| 【要約】 |
【課題】大きな減衰比により反力を小さくして人体の跳ね上がりを抑える。
【解決手段】張力構造体である座部用クッション材14に膨出部11を形成する。そして、入力振動の励振力の大きさに応じて、張力構造体の平面波によって生じる変形によるひずみエネルギーと張力の変化を変化して、作用する減衰特性が変化する構造を有している。従って、励振力の小さな入力に対しては小さな減衰比で減衰特性が作用するため、座部用クッション材14及び/又は背部用クッション材24のバネ性による位相差によって除振することができ、励振力の大きな入力に対してはひずみエネルギーの増加と張力の低下により、大きな減衰比と長い作用時間で減衰特性が作用し、人体の跳ね上がりを少なくすることができる。 |
【特許請求の範囲】
【請求項1】 座部用クッション材及び背部用クッション材を含んでなり、弾性体による張力構造体に設けられる張力場を有するクッション材を備え、前記座部用クッション材及び背部用クッション材のうち、少なくとも一方は、入力となる励振力の大きさに応じてひずみエネルギーが変化することにより接線方向の張力が変化する構造に形成されており、励振力の小さな入力に対しては小さな減衰比で減衰特性が作用し、励振力の大きな入力に対しては大きな減衰比で減衰特性が作用するように、入力となる励振力の大きさに応じて異なる減衰特性を示すことを特徴とする座席構造。 【請求項2】 前記クッション材が、平面上の伸びやすい方向を座部の前後方向及び背部の上下方向にそれぞれ沿わせると共に、座部と背部の境界部付近の配設位置を拘束することにより、前記境界部付近よりも前方に位置する座部用クッション材の任意部位及び/又は前記境界部付近よりも上方に位置する背部用クッション材の任意部位を自由端とする振動系を形成しており、前記振動系が形成された前記座部用クッション材と背部用クッション材の少なくとも一方においては、入力となる励振力の大きさに応じて弾性体による張力構造体のひずみエネルギーが変化することにより接線方向の張力が変化し、少なくとも他方においては張力構造体の法線方向に相対的に高いバネ特性を示す部位を有し、これらの異なる特性の複合作用によって前記クッション材の法線方向に入力される励振力を接線方向の励振力に分散可能な構造であることを特徴とする請求項1記載の座席構造。 【請求項3】 前記入力となる励振力の大きさに応じて減衰比の異なる減衰特性を発揮可能な座部用クッション材と背部用クッション材のいずれかが、互いに離間して配置された一対のグランド編地同士を連結糸で結合してなる三次元立体編物から形成され、座部又は背部に設けられるサイドフレーム間に無負荷時において伸び率30%以下で張設されると共に、人体との接触範囲中に、座部においては上方に、背部においては前方にそれぞれ膨出する頂部を備えたキャンバー形状となるように設けられていることを特徴とする請求項1又は2記載の座席構造。 【請求項4】 前記座部用クッション材と背部用クッション材とが、いずれも、互いに離間して配置された一対のグランド編地同士を連結糸で結合してなる三次元立体編物から形成され、前記入力となる励振力の大きさに応じて減衰比の異なる減衰特性を発揮可能な前記いずれかのクッション材は、座部又は背部に設けられるサイドフレーム間に無負荷時において伸び率30%以下で張設されると共に、人体との接触範囲中に、座部においては上方に、背部においては前方にそれぞれ膨出する頂部を備えたキャンバー形状となるように設けられていることを特徴とする請求項1又は2記載の座席構造。 【請求項5】 前記入力となる励振力の大きさに応じて減衰比の異なる減衰特性を発揮可能な座部用クッション材と背部用クッション材のいずれかが、二次元張力構造体と、該二次元張力構造体に積層されるウレタン層とを備えたウレタン付き張力構造体から形成され、座部又は背部に設けられるサイドフレーム間に無負荷時において伸び率30%以下で張設されると共に、人体との接触範囲中に、座部においては上方に、背部においては前方にそれぞれ膨出する頂部を備えたキャンバー形状となるように設けられていることを特徴とする請求項1又は2記載の座席構造。 【請求項6】 前記座部用クッション材と背部用クッション材とが、いずれも、二次元張力構造体と、該二次元張力構造体に積層されるウレタン層とを備えたウレタン付き張力構造体から形成され、前記入力となる励振力の大きさに応じて減衰比の異なる減衰特性を発揮可能な前記いずれかのクッション材は、座部又は背部に設けられるサイドフレーム間に無負荷時において伸び率30%以下で張設されると共に、人体との接触範囲中に、座部においては上方に、背部においては前方にそれぞれ膨出する頂部を備えたキャンバー形状となるように設けられていることを特徴とする請求項1又は2記載の座席構造。 【請求項7】 前記キャンバー形状を示す座部用クッション材又は背部用クッション材の膨出部の頂部が、人体と接触した平衡状態において、座部では前方に、背部では上方にそれぞれ位置がずれるように変形可能に設けられていることを特徴とする請求項3〜6のいずれか1に記載の座席構造。 【請求項8】 座部用クッション材又は背部用クッション材の前記キャンバー形状が、半径200mm以上3000mm以下の範囲となるように形成されていることを特徴とする請求項3〜6のいずれか1に記載の座席構造。 【請求項9】 前記キャンバー形状を示す座部用クッション材又は背部用クッション材は、アーチ形のサイドフレーム間に幅方向に張設されていることを特徴とする請求項3〜8のいずれか1に記載の座席構造。 【請求項10】 前記座部用クッション材が、キャンバー形状となるように形成されており、側面から見た際に、座部と背部との境界から100mm以上前方であって、座骨結節下より前方に頂部を備えていることを特徴とする請求項3〜9のいずれか1に記載の座席構造。 【請求項11】 前記座部用クッション材又は背部用クッション材の伸び率が、前記伸び率30%以下の範囲において、部分的に異なるように設けられていることを特徴とする請求項3〜6のいずれか1に記載の座席構造。 【請求項12】 座骨結節下付近及び腰椎付近において、他の部位と比較して相対的に高い伸び率で張設されていることを特徴とする請求項11記載の座席構造。 【請求項13】 座部用クッション材と背部用クッション材のうち、前記入力となる励振力の大きさに応じて減衰比の異なる減衰特性を発揮可能ないずれかのクッション材が、上層に配置され、バネ定数が人体の筋肉のバネ定数に近似した柔らかな第1のウレタン層と、中間層に配置され、リニアリティ0.1以上で、ヒステリシスロス率30%以下の復元性の高い第2のウレタン層と、下層に配置され、減衰比0.2以上の減衰特性を示す第3のウレタン層と、前記いずれかの層に積層され、接線方向に張力を付与する張力付与部材との積層構造からなることを特徴とする請求項1記載の座席構造。 【請求項14】 前記背部用クッション材は、肩胛骨付近に対応する部位のたわみ量が大きく、肩峰及び/又は腰椎付近に対応する部位のたわみ量が小さくなるように設けられていることを特徴とする請求項1〜13のいずれか1に記載の座席構造。 【請求項15】 前記肩胛骨付近に対応する部位のたわみ量が50〜150mmの範囲であることを特徴とする請求項14記載の座席構造。 【請求項16】 前記肩胛骨付近に対応する部位の平衡点付近のバネ定数が、直径20mmの圧縮板による荷重特性で15N/mm以下であり、肩峰付近に対応する部位の平衡点付近のバネ定数が、直径50mmの圧縮板による荷重特性で0.2〜2.0N/mmの範囲であり、腰椎付近に対応する部位の平衡点付近のバネ定数が、直径20mmの圧縮板による荷重特性で5N/mm以上の範囲であることを特徴とする請求項14又は15記載の座席構造。 【請求項17】 前記背部用クッション材が三次元立体編物から形成され、該三次元立体編物を支持するフレームが、所定以上の大きな衝撃性振動又は衝撃力が付加された場合に変形し、それにより三次元立体編物の張力が低下する構成としたことを特徴とする請求項1又は2記載の座席構造。 【請求項18】 前記背部用クッション材が二次元張力構造体と該二次元張力構造体に積層されるウレタン層とを備えたウレタン付き張力構造体から形成され、該ウレタン付き張力構造体を支持するフレームが、所定以上の大きな衝撃性振動又は衝撃力が付加された場合に変形し、それによりウレタン付き張力構造体の張力が低下する構成としたことを特徴とする請求項1又は2記載の座席構造。
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【発明の詳細な説明】【0001】 【発明の属する技術分野】本発明は座席構造に関し、より詳しくは、航空機、列車、船舶、フォークリフト、自動車などの輸送機器用の座席、あるいは住居内外で使用される各種の椅子として適する座席構造に関する。 【0002】 【従来の技術】航空機、列車、船舶、自動車用座席などに用いられるクッション材としては、ポリウレタンフォーム、あるいはポリウレタンフォームと金属バネとの組み合わせで構成されるものが一般的である。そして、ポリウレタンフォームの有するバネ特性と減衰特性のうち、振動吸収性能とストローク量に鑑み、通常、前者のバネ特性を重視した設計となっている。 【0003】 【発明が解決しようとする課題】しかしながら、人体の臀部の形状や背の骨格形状(S字形状)には個人差があり、座席の座部又は背部と人体とが十分にはフィットせず、座部や背部に対する人体の当たり具合に偏りが生じ、体圧分散性能の点で改善の余地がある。また、上記のような乗物用シートにおいては、衝突などによる衝撃エネルギーをより効率よく吸収することが常に求められている。 【0004】一方、本発明者らは、クッション材として三次元立体編物を用いた輸送機器用の座席構造をこれまでに種々提案している。特に、三次元立体編物は、薄型でありながら、フレームに張設されて張力構造体として設けられることによりその張力場を利用できるため、ポリウレタンフォームと比較して遜色のないクッション特性(バネ特性や減衰特性)を示すと共に、通気性にも優れている。そして、この三次元立体編物をクッション材として用いる場合、三次元立体編物の変形による減衰特性を十分に発揮させるために、無負荷時においてサイドフレーム間に張力をほとんどかけることなく設け、静的な着座状態においても5%以下の伸びになるように設定している。 【0005】しかしながら、座席幅の狭いもの、例えば、座席幅が380mm〜400mm前後しかない座席構造の要求もある。このような狭い座席幅に対して三次元立体編物を伸び率がほとんどないように緩く設けた場合には、三次元立体編物が薄型であることから、座席側部のフレームに肩峰、肩胛骨、臀部、骨盤が近接するため、着座時においてそれらの異物感を感じやすくなる。 【0006】これを解決するために、三次元立体編物を、所定の張力をかけて張設することによって、着座時の沈み込みを小さくする手段が考えられる。しかしながら、これでは、着座時のストローク感がなくなり、着座者にとってはフィット感のない硬い座り心地になると共に、前後振動が入力された場合には、尻滑りが生じやすくなる。また、着座時のバネ定数が高くなるため、大振幅の振動のような大きな励振力が入力された際の振動吸収特性の点でも問題が残る。 【0007】本発明は上記に鑑みなされたものであり、座部用クッション材及び背部用クッション材のいずれか少なくとも一方に所定の張力場を形成し、バネ特性よりも減衰特性を重視した構造とすることにより、特に衝撃力が入力されるような大変形時には、大きな減衰比により反力を小さくして人体の跳ね上がりを抑えることができると共に、衝撃力を減衰して人体へ入力される衝撃力を緩和し、一方、励振力の小さな入力に対しては減衰特性の作用を小さくしてバネ特性による除振性能を損なうことのない座席構造を提供することを課題とする。これに加え、クッション材として三次元立体編物を用いた場合には、従来の三次元立体編物を用いた座席構造と比較して、フレームの人体に対する異物感をより軽減し、かつストローク感を増すことができる座席構造を提供することを課題とする。 【0008】 【課題を解決するための手段】上記した課題を解決するため、請求項1記載の本発明では、座部用クッション材及び背部用クッション材を含んでなり、弾性体による張力構造体に設けられる張力場を有するクッション材を備え、前記座部用クッション材及び背部用クッション材のうち、少なくとも一方は、入力となる励振力の大きさに応じてひずみエネルギーが変化することにより接線方向の張力が変化する構造に形成されており、励振力の小さな入力に対しては小さな減衰比で減衰特性が作用し、励振力の大きな入力に対しては大きな減衰比で減衰特性が作用するように、入力となる励振力の大きさに応じて異なる減衰特性を示すことを特徴とする座席構造を提供する。請求項2記載の本発明では、前記クッション材が、平面上の伸びやすい方向を座部の前後方向及び背部の上下方向にそれぞれ沿わせると共に、座部と背部の境界部付近の配設位置を拘束することにより、前記境界部付近よりも前方に位置する座部用クッション材の任意部位及び/又は前記境界部付近よりも上方に位置する背部用クッション材の任意部位を自由端とする振動系を形成しており、前記振動系が形成された前記座部用クッション材と背部用クッション材の少なくとも一方においては、入力となる励振力の大きさに応じて弾性体による張力構造体のひずみエネルギーが変化することにより接線方向の張力が変化し、少なくとも他方においては張力構造体の法線方向に相対的に高いバネ特性を示す部位を有し、これらの異なる特性の複合作用によって前記クッション材の法線方向に入力される励振力を接線方向の励振力に分散可能な構造であることを特徴とする請求項1記載の座席構造を提供する。請求項3記載の本発明では、前記入力となる励振力の大きさに応じて減衰比の異なる減衰特性を発揮可能な座部用クッション材と背部用クッション材のいずれかが、互いに離間して配置された一対のグランド編地同士を連結糸で結合してなる三次元立体編物から形成され、座部又は背部に設けられるサイドフレーム間に無負荷時において伸び率30%以下で張設されると共に、人体との接触範囲中に、座部においては上方に、背部においては前方にそれぞれ膨出する頂部を備えたキャンバー形状となるように設けられていることを特徴とする請求項1又は2記載の座席構造を提供する。請求項4記載の本発明では、前記座部用クッション材と背部用クッション材とが、いずれも、互いに離間して配置された一対のグランド編地同士を連結糸で結合してなる三次元立体編物から形成され、前記入力となる励振力の大きさに応じて減衰比の異なる減衰特性を発揮可能な前記いずれかのクッション材は、座部又は背部に設けられるサイドフレーム間に無負荷時において伸び率30%以下で張設されると共に、人体との接触範囲中に、座部においては上方に、背部においては前方にそれぞれ膨出する頂部を備えたキャンバー形状となるように設けられていることを特徴とする請求項1又は2記載の座席構造を提供する。請求項5記載の本発明では、前記入力となる励振力の大きさに応じて減衰比の異なる減衰特性を発揮可能な座部用クッション材と背部用クッション材のいずれかが、二次元張力構造体と、該二次元張力構造体に積層されるウレタン層とを備えたウレタン付き張力構造体から形成され、座部又は背部に設けられるサイドフレーム間に無負荷時において伸び率30%以下で張設されると共に、人体との接触範囲中に、座部においては上方に、背部においては前方にそれぞれ膨出する頂部を備えたキャンバー形状となるように設けられていることを特徴とする請求項1又は2記載の座席構造を提供する。請求項6記載の本発明では、前記座部用クッション材と背部用クッション材とが、いずれも、二次元張力構造体と、該二次元張力構造体に積層されるウレタン層とを備えたウレタン付き張力構造体から形成され、前記入力となる励振力の大きさに応じて減衰比の異なる減衰特性を発揮可能な前記いずれかのクッション材は、座部又は背部に設けられるサイドフレーム間に無負荷時において伸び率30%以下で張設されると共に、人体との接触範囲中に、座部においては上方に、背部においては前方にそれぞれ膨出する頂部を備えたキャンバー形状となるように設けられていることを特徴とする請求項1又は2記載の座席構造を提供する。請求項7記載の本発明では、前記キャンバー形状を示す座部用クッション材又は背部用クッション材の膨出部の頂部が、人体と接触した平衡状態において、座部では前方に、背部では上方にそれぞれ位置がずれるように変形可能に設けられていることを特徴とする請求項3〜6のいずれか1に記載の座席構造を提供する。請求項8記載の本発明では、座部用クッション材又は背部用クッション材の前記キャンバー形状が、半径200mm以上3000mm以下の範囲となるように形成されていることを特徴とする請求項3〜6のいずれか1に記載の座席構造を提供する。請求項9記載の本発明では、前記キャンバー形状を示す座部用クッション材又は背部用クッション材は、アーチ形のサイドフレーム間に幅方向に張設されていることを特徴とする請求項3〜8のいずれか1に記載の座席構造を提供する。請求項10記載の本発明では、前記座部用クッション材が、キャンバー形状となるように形成されており、側面から見た際に、座部と背部との境界から100mm以上前方であって、座骨結節下より前方に頂部を備えていることを特徴とする請求項3〜9のいずれか1に記載の座席構造を提供する。請求項11記載の本発明では、前記座部用クッション材又は背部用クッション材の伸び率が、前記伸び率30%以下の範囲において、部分的に異なるように設けられていることを特徴とする請求項3〜6のいずれか1に記載の座席構造を提供する。請求項12記載の本発明では、座骨結節下付近及び腰椎付近において、他の部位と比較して相対的に高い伸び率で張設されていることを特徴とする請求項11記載の座席構造を提供する。請求項13記載の本発明では、座部用クッション材と背部用クッション材のうち、前記入力となる励振力の大きさに応じて減衰比の異なる減衰特性を発揮可能ないずれかのクッション材が、上層に配置され、バネ定数が人体の筋肉のバネ定数に近似した柔らかな第1のウレタン層と、中間層に配置され、リニアリティ0.1以上で、ヒステリシスロス率30%以下の復元性の高い第2のウレタン層と、下層に配置され、減衰比0.2以上の減衰特性を示す第3のウレタン層と、前記いずれかの層に積層され、接線方向に張力を付与する張力付与部材との積層構造からなることを特徴とする請求項1記載の座席構造を提供する。請求項14記載の本発明では、前記背部用クッション材は、肩胛骨付近に対応する部位のたわみ量が大きく、肩峰及び/又は腰椎付近に対応する部位のたわみ量が小さくなるように設けられていることを特徴とする請求項1〜13のいずれか1に記載の座席構造を提供する。請求項15記載の本発明では、前記肩胛骨付近に対応する部位のたわみ量が50〜150mmの範囲であることを特徴とする請求項14記載の座席構造を提供する。請求項16記載の本発明では、前記肩胛骨付近に対応する部位の平衡点付近のバネ定数が、直径20mmの圧縮板による荷重特性で15N/mm以下であり、肩峰付近に対応する部位の平衡点付近のバネ定数が、直径50mmの圧縮板による荷重特性で0.2〜2.0N/mmの範囲であり、腰椎付近に対応する部位の平衡点付近のバネ定数が、直径20mmの圧縮板による荷重特性で5N/mm以上の範囲であることを特徴とする請求項14又は15記載の座席構造を提供する。請求項17記載の本発明では、前記背部用クッション材が三次元立体編物から形成され、該三次元立体編物を支持するフレームが、所定以上の大きな衝撃性振動又は衝撃力が付加された場合に変形し、それにより三次元立体編物の張力が低下する構成としたことを特徴とする請求項1又は2記載の座席構造を提供する。請求項18記載の本発明では、前記背部用クッション材が二次元張力構造体と該二次元張力構造体に積層されるウレタン層とを備えたウレタン付き張力構造体から形成され、該ウレタン付き張力構造体を支持するフレームが、所定以上の大きな衝撃性振動又は衝撃力が付加された場合に変形し、それによりウレタン付き張力構造体の張力が低下する構成としたことを特徴とする請求項1又は2記載の座席構造を提供する。 【0009】(作用)請求項1記載の本発明によれば、座部用クッション材及び背部用クッション材のうち、少なくとも一方が、入力となる励振力の大きさに応じて生じる弾性体の張力構造体のひずみエネルギーの差により、該クッション材の接線方向に沿った張力が変化する構造である。これにより、入力となる励振力の大きさに応じて異なる減衰特性を発揮することができる。励振力が小さい場合に大きな減衰特性が作用したのでは入力される励振力を除振することができないが、張力場の特性を利用した本発明によれば、励振力の小さな入力に対しては、減衰特性の作用が小さく、座部用クッション材又は背部用クッション材のバネ特性が相対的に大きく作用するため除振できる。これに対し、励振力の大きな入力振動エネルギーは弾性体による張力構造体のひずみエネルギーに変換されると共に、座部用クッション材又は背部用クッション材の接線方向の張力を低下させ、相対的に大きな減衰比で減衰特性が作用してエネルギーを散逸することができる。 【0010】請求項2記載の本発明によれば、励振力の小さな振動が入力された場合には、座部に設けられるクッション材及び/又は背部に設けられるクッション材のうち、いずれか一方のクッション材において、減衰特性が小さく、バネ特性が相対的に大きく作用する。より詳しくは、平面上での張力構造体によるバネ定数には、大きく2つあるが、2つのバネ定数のうち柔らかいバネ定数のもの、つまり、伸びやすい方を、座部においては前後方向に、背部においては上下方向にそれぞれ沿わせて張設する。また、座部及び背部の境界部は、後方に引っ張り、フレーム材に固定する。このように張設すると、座部及び背部の膨出により、それらの部位が自由端となり、境界部が固定端となる一端固定他端自由の弾性体の振動系となり、座席構造を大きく1自由度の振動系と捉えた従来構造と異なり、本発明では、張力を有する膜の振動系を付与した構造となる。このため、3つの異なるバネ特性が上下方向及び前後方向に複合して作用し、弾性体による張力構造体の平面波による変形のひずみエネルギーの働きにより上下振動を前後振動に変換する。従って、膜に対して法線方向のバネ定数が大きくても固有振動数は小さくなり、人体の共振範囲を外すことができる。これらのバネ特性の相互作用によって生じる位相差により入力される励振力は除振される。一方、衝撃力が入力された場合のような励振力の大きな入力がなされた場合には、上記いずれか少なくとも一方のクッション材において張力構造体のひずみエネルギーへの変換により大きな減衰特性が作用する。例えば、座部においてかかる大きな減衰特性が作用する構造とした場合には、大変形を伴う上下方向の大きな衝撃性振動を受けた場合には、上記した振動方向の変換機能により、張力構造体の接線方向に働くひずみエネルギーが大きくなり接線方向の張力を低下させて衝撃性振動が低減され、人体の跳ね上がりを抑制することができる。また、前後方向の振動入力に対しても、座部及び背部における臀部付近に相当する部位による身体の拘束により、座席上での相対変位・加速度が低減される。また、背部のバネ特性が加味されることにより、減衰比が調整されて荷重依存性が小さくなり、振動エネルギーを効果的に吸収する。また、前後方向へ大変位を伴う励振力の大きな入力に対しては、異なる特性を備えた背部用クッション材と座部用クッション材との位相差により、人体の後方斜め下方向に変位が生じ、主として座部側におけるひずみエネルギーへの変換による高い減衰特性によりエネルギーが散逸される。同様に、背部において大きな減衰特性が作用する構造とした場合には、衝突時等において前後方向に大きな衝撃性振動が加わっても、人体の前方への飛び出しを抑制することができ、特に、人体の背部に作用するひずみエネルギーへの変換による大きな減衰特性によって、人体の跳ね上がりを抑制できる。 【0011】換言すれば、本発明は、座部と背部を拘束することにより、背と座の一体的な運動を作り出し、さらにこれらに備わる特性を異ならせ、これによって生じる位相差による運動方向の変換機能と、座部と背部との異なる特性を組み合わせることにより生ずる運動エネルギーを弾性体による張力構造体の接線方向のひずみエネルギーに変換する振動減衰機能及び膜の振動特性を利用可能な構造としたことを特徴とし、これにより、例えば、高周波帯における振動のような小さな振幅の振動が入力された場合には、クッション材のバネ特性や膜の横振動によって除振できると共に、大きな振幅を伴う振動に対しては、大きな減衰特性により人体の各クッション材からの押し出し力を抑制することができる。 【0012】請求項3〜10に記載の本発明によれば、キャンバー形状を有しているため、該キャンバー形状をなす膨出部の作り出すひずみエネルギーが励振力の小さな場合と大きな場合とで異なるため、上記各作用を顕著に発揮できる。請求項11又は12記載の本発明によれば、バネ特性の働きを高くしたい部位と減衰特性の働きを高くしたい部位を予め作り込むことができるため、上記各作用をさらに効果的に発揮できる。請求項13記載の本発明によれば、異なる特性のウレタン材料を所定の順序で積層することにより、上記した各作用を発揮させることが可能である。請求項14〜16記載の本発明によれば、上記各作用をさらに顕著に発揮できると共に、さらなる乗り心地の改善に資する。請求項17又は18記載の本発明によれば、所定以上の大きな衝撃性振動や衝撃力を受けた場合に、クッション材の張力の低下により、人体の跳ね返りをさらに抑制することができる。 【0013】 【発明の実施の形態】以下、図面に示した実施形態に基づいて本発明を更に詳しく説明する。 (第1の実施形態)図1は本発明の第1の実施形態に係る座席構造1を示す概略斜視図である。この図に示したように、本実施形態では、座部10と背部20とを備えると共に、座部10において、水平面よりも上方に膨出する膨出部11を有するキャンバー形状を形成した構造となっている。具体的には、幅方向に対向して配置されたサイドフレーム12,13としてアーチ状に曲成したものを用いており、このサイドフレーム12,13間に、座部用クッション材14を構成する三次元立体編物を張設し、これにより膨出部11が形成された構造である。 【0014】従って、膨出部11の頂部11aは、アーチ状に曲成されたサイドフレーム12,13の頂部に対応する位置に形成されることになる。このように、膨出部11を形成することにより、図2に示したように、着座の際に、人体が接触して平衡状態に至るまで、膨出部11の頂部11aが前方にせり出すように移動して膨出部11の形状が変形し、張力も変化する。従って、張力の変化により、人体になじみ易いフィット感が得られる。また、励振力の大きな入力がなされた際には、着座者の臀部が相対的に沈み込み、膨出部11の頂部11aの位置をさらに前方にせり出させるように変形させる。同時に、後方の背部用クッション材24にも変形が生じ、背部用クッション材24により復元力が生じる。これにより、座部用クッション材14は、サイドフレーム12,13間に所定の張力で張設した場合であっても、励振力の大きな入力がなされた際に、さらに張力が高くなってバネ性が上がるのではなく、膨出部11の頂部11aの前方にせり出す変位と背部用クッション材24による復元力によって、入力エネルギーを散逸させる。つまり、本構造は、膜の振動特性に1自由度系の振動特性を組み合わせたものとなる。なお、振動モードにおいて振幅が0となる節位置が着座者の重心位置(座骨結節)となることが望ましい。 【0015】換言すれば、本実施形態は、入力となる励振力の大きさに応じてその頂部11aが前後方向にせり出すように移動することによる接線方向に沿った膨出部11の変形挙動(変形の仕方)が異なる。この結果、励振力の大きさに応じて異なる弾性体による張力構造体のひずみエネルギーによって接線方向に生じる張力を変化させることができ、小変形時に作用する減衰比が小さく、大変形時に作用する減衰比を大きくできるものである。しかも、このひずみエネルギーは、着座者の体重(負荷質量)によっても変化する。従って、負荷質量が異なる場合であっても、着座時のひずみエネルギーによって生じる張力を負荷質量に応じた状態にすることができ、バネ定数や減衰係数を変えることができるため、入力される励振力の大きさに応じて生じる上記減衰比を、負荷質量に依存することなく同様に発揮させることができ、負荷質量依存性のない減衰特性を作ることができる。 【0016】膨出部11の頂部11aは、かかる作用を果たすことができる位置において、人体との接触可能な範囲中に形成される。但し、側面視で、着座者の座骨結節下より前方であって、座部10と背部20との境界から100mm以上前方の範囲に位置するように設けることが好ましい。励振力の入力に伴って、座骨結節付近が相対的に沈み込んだ際に、頂部11aの前方へのせり出し作用がより円滑に機能するからである。 【0017】キャンバー形状を形成する膨出部11の半径は、座席の大きさに合わせて、半径200mm〜3000mmの範囲で選択することが好ましい。半径200mm未満では、膨出部11の頂部11aの盛り上がり高さが高くなりすぎ、着座感を損ない、半径3000mmを超えると、座部表面全体が平坦に近くなり、膨出部11の変位によって減衰特性を変化させる本発明の特徴を発揮しにくくなる。 【0018】サイドフレーム12,13間に張設される本実施形態の三次元立体編物からなる座部用クッション材14は、幅方向の伸び率は30%以下に張設される。クッション材として三次元立体編物を用いた場合、従来、特にその減衰特性を十分に機能させるために、伸び率5%未満で張設することが必要であったが、本実施形態の場合には、上記のように膨出部11を備えたキャンバー形状に形成されているため、伸び率5%以上で張設しても、励振力の大きな入力に対して十分な減衰特性を発揮できる。また、このように、5%以上30%以下の伸び率で張設することにより、サイドフレーム12,13等の異物感が軽減されるという利点も有する。もちろん、サイドフレーム12,13間の最も狭い対向距離で380mm以上とることにより、伸び率0%以上5%未満で張設することも可能であり、その場合には、従来よりもさらに大きな減衰力を機能させることができる。なお、いずれの場合にも、サイドフレーム12,13等の異物感は、伸び率だけでなく、座部用クッション材14として用いる三次元立体編物の厚み等によっても異なるため、かかる異物感をさらに軽減するに当たっては、三次元立体編物とサイドフレーム12,13などのフレーム材との間に、ポリウレタンフォームや別の三次元立体編物等を介在させることが好ましい。 【0019】本実施形態においては、背部20を構成するクッション材(背部用クッション材)24も、三次元立体編物を用いている。背部20は肩胛骨より下方には膨出部を形成しておらず、サイドフレーム22,23としては、腰椎部から肩胛骨付近に相当する位置まで前端縁がほぼ直線状で、肩胛骨付近に相当する位置よりも上部においては、約200mm〜約30mmの範囲で後方に反った形状をなしている。この結果、肩胛骨付近を頂点とするキャンバー形状がこの部位にも形成されることになる。 【0020】三次元立体編物からなる背部用クッション材24は、このサイドフレーム23,24間に上記した座部用クッション材14と同様に伸び率30%以下で張設されるが、サイドフレーム22,23の前端縁が肩胛骨付近よりも約200mm〜約30mmの範囲で上部において後方に反った形状となっているため、背部用クッション材24に大きな荷重がかかった場合には、図2において縦断面方向に沿って実線で示した形状線のように、肩胛骨付近が後方にたわむ分、肩胛骨付近よりも上部の背部用クッション材24が上方に膨出するように逃げ、その形状が変化する。これに対し、腰椎部については、前後方向でバネ性の強い部位となる。この結果、着座者の背の荷重を効率的に分散し、腰椎部で支持感を得ながらも肩胛骨付近よりも上部では減衰することができる。つまり、同一平面上でバネ性と減衰性を作り上げた構造となっている。 【0021】背部用クッション材24は、このように肩胛骨付近で大きくたわむことを可能にすることにより、大きな前後荷重を受けた際には、人体の背全体が、すなわち腰椎部から肩胛骨付近までがほぼ着座時の姿勢を保って、そののまま後方に変位することになる。これにより、大きな前後荷重を受けた際には、背部用クッション材24の減衰特性と腰椎部のバネ特性の組み合わせにより、人体の背全体の減衰比を確保し、人体を保護することができる。仮に、腰椎部付近が大きくたわむ構成とした場合には、側面から見た際に人体が大きく略V字状に屈曲してしまう。さらに、バネ特性の寄与率が小さくなって荷重依存性を持ち、背部用クッション材24の人体に対する減衰作用が人によって変わってしまうことになるため、座部用クッション材に新たに柔らかなバネ性を付与する構造を設ける必要が生じ、構造が複雑化する。 【0022】従って、背部20を形成するサイドフレーム22,23として、上記のように、腰椎部の膨出が小さく、直線あるいは変形の大きい曲率を持ち、肩胛骨付近から上部が後方に反った形状のものを採用すると共に、サイドフレーム22,23の上端間に配置される上部フレーム25の位置を後方に配置することによって、背部用クッション材24は、肩胛骨付近に対応する部位のたわみ量が大きく、腰椎部付近に対応する部位のたわみ量が小さくなるように設けることが好ましい。背部用クッション材24の肩胛骨付近のたわみ量は、好ましくは50mm〜150mmである。また、背部用クッション材24にかかる機能をもたせるために、肩胛骨付近では、平衡点に至るまでのストロークを20mm以上確保でき、平衡点付近のバネ定数が、直径20mmの圧縮板で加圧した際の荷重特性で15N/mm以下となるように、腰椎部付近では、平衡点付近に至るまでのストロークが40mm以下で、平衡点付近のバネ定数が、直径20mmの圧縮板で加圧した際の荷重特性で5N/mm以上となるように、張設時の伸び率等を調整することが好ましい。 【0023】また、肩胛骨付近のたわみ量を大きくとる構成とした場合に、運転時において入力される励振力に対し、頭部の揺れを抑制して蓄積疲労を小さくするため、肩峰付近に対応する部位のたわみ量は、肩胛骨付近に対応するたわみ量に比べ、小さくすることが好ましく、平衡点付近に至るまでのストロークを30mm以下で設定することが好ましい。また、その際の肩峰付近のバネ定数は、直径50mmの圧縮板で押圧した際に測定されるバネ定数で0.2〜2.0N/mmとなるように設定することが好ましい。このような構成とすることにより、上記のように肩峰付近に対応する部位が頭部を固定するポイントとして機能して蓄積疲労を抑制できると共に、かかる部位は、いわば肩峰レストとしての役割を果たし、ヨーイング、ローリングによる人体上部の動揺を小さくでき、ステアリングを握る手首にかかるモーメント、応力、荷重が小さくなる。このため、ステアリングを安心して軽く握れ、捕舵疲労を軽減するのに役立つ。 【0024】座部用クッション材14と背部用クッション材24とは、それぞれ別々に成形して、座部10及び背部20を構成する各フレームに、独立して張設することも可能であるが、人体の臀部から腰部にかけてのホールド性を高め、また、大きな振幅の振動が入力された際の減衰性を高めるため、及び振動を吸収し、骨盤と胸椎を同位相で動かすために、一体的に形成することが好ましい。この場合、三次元立体編物を一枚使用して座部用クッション材14と背部用クッション材24を形成することもできるし、両者を別々に成形して、座部用クッション材14の後部及び背部用クッション材24の下部で縫い合わせて一体化してもよい。 【0025】なお、座部用クッション材14と背部用クッション材24とを備えてなる本実施形態のクッション材は、上記のように各フレーム部に張設されることによって張力構造体を形成しており、それらの境界部付近は、後方に引っ張られて任意のフレームに固定されて設けられる。従って、これらの境界部付近が振動系の固定端となり、上記のようにキャンバー形状を作り出している膨出部11の頂部や背部用クッション材24における後方に沿った部分が、着座者の荷重や入力となる励振力に応じて自由に変形し得る振動系の自由端を構成していることになる。この結果、上記のように、張力構造体のひずみエネルギーによる接線方向の張力の変化を生じさせることができる。 【0026】また、着座者の座骨結節下や腰椎部付近においては、バネ特性が機能し易くし、キャンバー形状をなす膨出部11から前縁部付近や背部の後方に沿った部分においては、張力構造体のひずみエネルギーによって接線方向へ変形しやすくなるように張設することが好ましい。従って、上記のように伸び率30%以下で張設するとしても、部位によって伸び率が異なるように張設することが好ましく、なかでも、座骨結節下や腰椎部付近の伸び率を相対的に高めに設定し、それ以外の部位、例えば、キャンバー形状をなす膨出部11から前縁部付近や背部の後方に沿った部分においては相対的に低い伸び率で張設することが好ましい。 【0027】ここで、上記した座部用クッション材14及び背部用クッション材24を形成する三次元立体編物の構造について説明する。三次元立体編物は、互いに離間して配置された一対のグランド編地同士を連結糸で結合することにより形成されている。具体的には、図3に示すように、三次元立体編物100は、互いに離間して配置された一対のグランド編地110,120と、該一対のグランド編地110,120間を往復して両者を結合する多数の連結糸130とを有する立体的な三次元構造から構成されている。 【0028】一方のグランド編地110は、例えば、図4に示したように、単繊維を撚った糸から、ウェール方向及びコース方向のいずれの方向にも連続したフラットな編地組織(細目)によって形成されている。これに対し、他方のグランド編地120は、例えば、図5に示したように、短繊維を撚った糸から、ハニカム状(六角形)のメッシュを有する、一方のグランド編地110よりも大きな編み目構造に形成されている。もちろん、この編地組織はあくまで一例であり、細目組織やハニカム状以外の編地組織を採用することもできる。連結糸130は、一方のグランド編地110と他方のグランド編地120とが所定の間隔を保持するように、この一対のグランド編地110,120間に編み込んだもので、立体メッシュニットとなっている三次元立体編物100に所定の剛性を付与している。 【0029】グランド編地110,120を形成するグランド糸の太さ等は、立体編地に必要な腰の強さを具備させることができると共に、編成作業が困難にならない範囲のものが選択される。また、グランド糸としてはモノフィラメント糸を用いることも可能であるが、風合い及び表面感触の柔らかさ等の観点から、マルチフィラメント糸やスパン糸を用いることが好ましい。 【0030】連結糸130としては、モノフィラメント糸を用いることが好ましく、太さ167〜1100デシテックスの範囲のものが好適である。マルチフィラメント糸では復元力の良好なクッション性を付与できず、また、太さが167デシテックスを下回ると腰の強さが得られにくくなり、1100デシテックスを上回る場合には、硬くなり過ぎて適度な弾性を得ることができないからである。すなわち、連結糸130として上記範囲のモノフィラメント糸を採用することにより、着座者の荷重を、各グランド編地110,120を構成する編目の変形と連結糸130の変形(倒れ及び座屈)により、また、変形した連結糸130にバネ特性を付与する隣接した連結糸130の復元力によって支持することができ、柔らかなバネ特性を有する応力集中の起きない柔構造とすることができる。また、連結糸130間が擦れ合うことにより減衰力が発揮される。 【0031】グランド糸又は連結糸130の素材としては、特に限定されるものではなく、例えば、ポリプロピレン、ポリエステル、ポリアミド、ポリアクリロニトリル、レーヨン等の合成繊維や再生繊維、ウール、絹、綿等の天然繊維が挙げられる。上記素材は単独て用いてもよいし、これらを任意に併用することもできる。好ましくは、ポリエチレンテレフタレート(PET)、ポリブチレンテレフタレート(PBT)などに代表される熱可塑性ポリエステル系繊維、ナイロン6、ナイロン66などに代表されるポリアミド系繊維、ポリエチレン、ポリプロピレンなどに代表されるポリオレフィン系繊維、あるいはこれらの繊維を2種類以上組み合わせたものである。なお、ポリエステル系繊維はリサイクル性に優れており好適である。また、グランド糸又は連結糸130の糸形状も限定されるものではなく、丸断面糸でも異形断面糸等でもよい。 【0032】連結糸130の配設の仕方(パイル組織)としては、各グランド編地110,120を連結する連結糸130を側面から見た状態で表すと、より具体的には、例えば、図6に示したような種類に分類される。(a),(b)は、グランド編地110,120間に連結糸130をほぼ垂直に編み込んだストレートタイプであり、このうち(a)は8の字状にしてストレートに編んだもので、(b)は単純なストレートに編んだものである。(c)〜(e)は、グランド編地110,120間において、連結糸130が中途で交差するように編んだクロスタイプであり、このうち(c)は8の字状にクロスさせたもの、(d)は単純なクロスに編んだもの、(e)は2本ずつまとめてクロス(ダブルクロス)させたものである。なお、(c)〜(e)に示したように、連結糸130同士を交差させて斜めに配置した場合には、連結糸130をグランド編地110,120間にほぼ垂直に配置した形態と比較して((a),(b)参照)、各連結糸130の座屈強度により十分な復元力を保持しながら、圧縮率の大きな柔らかなバネ特性を付与することができる。 【0033】試験例1(実施例1)図1に示した構造の座席構造1について、座部用クッション材14(キャンバー付きNET)を、その後部(背部用クッション材24との境界部)から前方100mmの位置(日本人の成人の座骨結節の平均的位置に相当)に中心を合わせ、直径200mmの圧縮板により、50mm/minの速度で1000Nまで押圧して静荷重特性を測定した。結果を図7示す。なお、ここで用いた三次元立体編物の特性は次表に示すとおりであり、また、サイドフレーム12,13間に伸び率6〜8%で張設している。 【0034】 【表1】
【0035】また、振幅2.5mm(ピーク間距離5mmp−p)で、図1の座部用クッション材14上に20kgの負荷質量を載置して加振した際の三次元立体編物の相対変位量と力の関係のリサージュ図形を図8に示した。また、図7の静特性を示す荷重−変位特性には、196Nに原点を合わせて図8のリサージュ図形を重ねて示した。一方、図10は、振幅1mm(ピーク間距離2mmp−p)で加振した際の三次元立体編物の相対変位量と力の関係のリサージュ図形であり、図9は、このリサージュ図形を図7と同様の荷重−変位特性図に重ねて示したものである。 【0036】(比較例1)膨出部11を形成していなことを除いて実施例1の座席構造1と全く同様の構造の座席構造の座部(NET)について、直径200mmの圧縮板により、50mm/minの速度で1000Nまで押圧して静荷重特性を測定すると共に、実施例1と同様に、振幅2.5mm(ピーク間距離5mmp−p)、振幅1mm(ピーク間距離2mmp−p)の相対変位量と力の関係のリサージュ図形を図12、図14に示した。また、それらのリサージュ図形を、図11、図13の荷重−変位特性図に重ねて示した。 【0037】(比較例2)厚さ100mmのポリウレタンフォームからなるクッション材を座部及び背部共に配設した従来用いられている座席構造(ウレタンシート)についても、実施例1及び比較例1と同様の測定を行い、振幅2.5mm(ピーク間距離5mmp−p)、振幅1mm(ピーク間距離2mmp−p)の相対変位量と力の関係のリサージュ図形を重ね合わせた荷重−変位特性図を図15〜図16に示した。 【0038】これらの結果から、実施例1及び比較例1の場合には、静荷重特性の行き(荷重負荷時)と帰り(荷重除去時)の曲線の範囲内にいずれの振幅においてもリサージュ図形がほぼ収まり、大きな共振特性を示していない。比較例2の場合には、いずれの振幅においてもリサージュ図形が静荷重特性の行きと帰りの曲線で描かれる範囲から外に飛び出した図形となっている。リサージュ図形の力は、入力振動に伴って人体に伝達される力であるが、それが静荷重特性の曲線の範囲から大きく飛び出しているということは、低周波帯で共振が生じ、入力振動の吸収率が低く、さらに、1.2〜1.3G以上の力が上方に加わっているということは、負荷質量体がクッション材から飛び跳ねて離間することを意味する。これにより、実施例1及び比較例1のように、クッション材として三次元立体編物を用いた場合には、ポリウレタンフォームをクッション材として用いる場合よりも、振動吸収特性の点で優れていることが分かる。 【0039】一方、実施例1と比較例1とで比べた場合には、リサージュ図形から明らかなように、実施例1の方が、相対変位量及び力が小さくなっており、実施例1の座席構造が、膨出部11を有するキャンバー形状が形成されていることによって、上下方向に入力される振動によって生じるひずみエネルギーにより接線方向の張力が変化し、入力振動を前後方向に効率よく分散し、吸収できることがわかる。特に、乗り心地に影響の大きい人体の骨格を揺らす共振周波数である5Hz付近における実施例1の変位量は、比較例1に比較して際だって小さくなっており、共振が生じにくくなっていることがわかる。但し、本実施例は、日本人男性7才の平均体重25kgに相当する人が感じる乗り心地であり、負荷質量が小さいチャイルドシートにおいても、本発明を適用でき、張力場を調整することで対応可能であることがわかる。また、小振幅の2mmp−pの励振力の小さな入力振動で比較した場合には、実施例1の方が変位量が小さく、張力弾性体のバネ性によって小振幅の振動の除振性能が高いことがわかる。さらに、大振幅の5mmp−pの励振力の大きな入力振動で比較した場合には、実施例1の方が、変位量と共に力も小さくなっており、高い減衰特性が発揮されていることが分かる。 【0040】試験例2上記した実施例1、比較例1及び比較例2の各座部の表面に対し、直径26cm、厚さ6.6cm、重さ20kgのウエイトを、座部の表面に接する位置から落下させ、減衰比を求めた。その際の各減衰波形を図17〜図19に示し、減衰比を図20〜図22に示す。なお、各減衰波形の自由振動減衰曲線における黒点で示した減衰ピーク(Calculated Point)を図20〜図22にプロットした。 【0041】比較例1の場合には、図18及び図21から明らかなように、各減衰ピークがほぼ一直線状にプロットされ、減衰比が0.104であった。比較例2の場合も、図19及び図22から明らかなように、各減衰ピークがほぼ一直線状にプロットされ、減衰比は0.096であった。 【0042】これに対し、本発明の座席構造を採用した実施例1の場合には、図20から明らかなように、減衰比0.04の直線に沿ってプロットされる白抜きの点に対し、この減衰比0.04の直線から大きく外れる黒丸の点で示される減衰ピークが存在する。そして、この黒丸の点同士は、ほぼ一直線に描かれる別の線上に位置している。従って、実施例1の場合には、黒丸の点同士を結ぶ減衰比0.6の減衰性能も有していることがわかる。つまり、実施例1のキャンバー形状を備えた座部用クッション材14の減衰特性は、減衰比1未満である減衰比0.04〜0.6の範囲で、入力振動の諸条件によって異なることを示すものである。これを、図17の減衰波形と照らし合わせると、大振幅を伴う振動あるいは同じ振幅でも加速度の大きい高周波の振動である励振力の大きな入力に対しては、キャンバー形状を形成している膨出部11の頂点11aの前後方向への移動により、弾性体の張力構造体のひずみエネルギーが大きくなって張力の低下と共に、高い減衰比を作り出し、大きな減衰特性が作用し、小振幅の振動あるいは同じ振幅でも加速度の小さな低周波の振動である励振力の小さな入力に対しては張力構造体の張力により減衰比が小さく抑えられ、座部用クッション材14のバネ特性により、入力振動に対する位相差が伴って除振できる構造となっていることがわかる。 【0043】一方、比較例1及び比較例2の場合には、上記したように減衰比が一定であるため、入力となる励振力に伴う力の分散効率の点で実施例1で採用した本発明の座席構造の性能が高いことが分かる。 【0044】試験例3上記した実施例1、比較例1及び比較例2について振動伝達特性を測定した。試験は、まず、直径26cm、厚さ6.6cm、重さ20kgのウエイトのほぼ中心を、人が着座した際の座骨結節下に相当する部位に合わせて各座部用クッション材上におき、加振装置のプラットフォームを座部の下部に設置して、周波数に対する振動伝達率(G/G)を測定することにより行った。結果を図23に示す。 【0045】この図から明らかなように、実施例1の本発明の座席構造においては、振動伝達率(G/G)が比較例2と対比した場合には、低周波から高周波までほぼ全ての周波数帯で低くなっていた。比較例1と比較した場合にも、6Hz以下の低周波領域においては、振動伝達率(G/G)が大きく低減していた。特に、実施例1は、共振ピークが比較例1及び比較例2に対し、顕著に小さくなっている。また、体重64kgの人が着座したと考えた場合、図23の5Hzは3Hzに相当し、10Hzは6Hzに相当する。従って、快適な乗り心地に影響のある人体の骨格自体を揺らす2Hz以下の動揺と5Hzの動揺が伝達されにくくなっていることが分かる。 【0046】また、体重64kgの日本人男性(JM)が実施例1、比較例1及び比較例2の各座席構造に着座した状態で、上記と同様に振動伝達率(G/G)を測定した。結果を図24に示す。 【0047】この結果から明らかなように、実施例1の振動伝達率(G/G)は、比較例2よりも大きく改善されており、比較例1と比較した場合でも、共振ピークが大きく低減していることがわかる。また、これらのことから図23の結果と図24の結果との間に相関性が認められる。 【0048】(第2の実施形態)図25は、本発明の第2の実施形態を示す斜視図である。本実施形態においては、座部10のサイドフレーム12,13として、前縁寄りにアーチ部12a,13aを有する形状のものを採用し、該サイドフレーム12,13間に座部用クッション材14である三次元立体編物を張設している。この結果、座部用クッション材14は、前縁寄りに膨出部11を有するキャンバー形状に形成され、前後方向略中間部から後部にかけてはほぼ平坦な状態に張設された平坦部16を備えた形状となる。また、サイドフレーム12,13付近には異物感の軽減のため、ポリウレタンフォーム17aを配設しており、また、前縁付近における座部用クッション材14の上面にはサイサポート用のポリウレタンフォーム17bを配設している。なお、異物感の軽減対策としては、このほかに、フレーム形状の変更や三次元立体編物を立体的に象る手段を採用することによって達成することもできる。 【0049】本実施形態においては、臀部が平坦部16上に位置し、通常の励振力の小さな振動入力に対しては、大きな減衰特性が作用せずこの平坦部のバネ性により振動が除振される。また、大腿部下部に膨出部11が位置しているため、着座時における臀部の前方向への位置ずれを抑制することができる。一方、励振力の大きな振動が入力された際には、膨出部11の頂部11aが前方に移動するように変形する。そして、張力構造体のひずみエネルギーにより、大きな減衰特性が作用して人体の座席からの跳ね上がりを小さくできる。 【0050】なお、図25に示した態様では、座部用クッション材14の前縁部とサイドフレーム12,13付近にポリウレタンフォームの配設しているが、図26に示したように、前縁部付近と後縁部付近とにポリウレタンフォーム17b,17cを配設して臀部の前後方向の位置ずれをより少なくした形状とすることもできる。また、本実施形態では、座部に膨出部を形成しているが、背部に膨出部を形成することもでき、さらに、座部と背部とのそれぞれに形成することもできる。 【0051】(第3の実施形態)図27は、本発明の第3の実施形態に係る座席構造1を示す外観斜視図である。この図に示したように、本実施形態では、座部10には中途に膨出部を有さないサイドフレーム12,13を用いる一方で、背部20を形成するサイドフレーム22,23として、中途が前方にせり出す膨出部を備えた形状のものを採用し、背部20を、膨出部21を備えたキャンバー形状に形成したものである。すなわち、背部用クッション材24として三次元立体編物からなるものを用い、これを上記の中途が前方にせり出した形状のサイドフレーム22,23間に張設することによって膨出部21を形成している。 【0052】本実施形態によれば、背部20に着座者の体重がかかった場合には、膨出部21の頂部21aの位置が上方又は下方に逃げるように変形する。この結果、特に、前後方向に大きな荷重がかかった際には、膨出部21の前後方向の変位だけでなく、膨出部21の頂部21aの移動に伴う上下方向の変形によっても吸収される。一方、通常の着座状態での励振力の小さな入力に対しては、そのバネ性により除振することができる。これらの点は、上記した第1の実施形態に係る座席構造1の座部用クッション材14と同様であり、この第2の実施形態に係る背部用クッション材24も、入力となる励振力の大きさに対応して、励振力の大きな振動に対しては高い減衰比の大きな減衰特性が作用し、励振力の小さな振動に対しては低い減衰比の小さな減衰特性が作用する。 【0053】なお、座部10の前縁部10a付近においては、サイドフレーム12,13の前方が下方に向かって曲成されていることから、座部用クッション材14も下方に曲成されて張設されている。このため、前縁部10a付近では、座部用クッション材14の座骨結節下に入力された振動の大きさに応じて、前縁部10aが前方にひずみ膨出する。このため、この部分においては、本実施形態においても、実質的にキャンバー形状が形成されており、励振力の大きな入力に対して、高い減衰比を作用させることができる。 【0054】ここで、上記第3の実施形態における座席構造1の背部20を構成するフレームは、より詳細には、図28に示したように、サイドフレーム22,23と、サイドフレーム22,23に取り付けられる膨出部形成用のフレーム22a,23aと、上側フレーム25と、サイドフレーム22,23の下部付近間に配設される連結ロッド19とを有して枠形に形成される外枠フレーム27から構成されており、上側フレーム25と連結ロッド19との間において、サイドフレーム22,23間に掛け渡される補強用の他のフレームを有していない。従って、前後方向に所定以上の大きな衝撃(衝撃性振動や衝撃力)が加わった際には、この外枠フレーム27は、張力構造体を形成している三次元立体編物に引っ張られて変形し得る構造となっている。なお、このようなフレーム構造は、上記した第1及び第2の実施形態でも採用可能であることはもちろんである。 【0055】このため、前後方向に大きな衝撃が加わることによって、着座者の背が後方に相対移動した場合には、その際の大きな荷重により三次元立体編物からなる背部用クッション材24の略中央部が連結ロッド19上を滑り、背部後方に押し込まれ、これに伴い外枠フレーム27が、背部用クッション材24に入力される荷重を分散して受け、図の破線で示した状態から実線で示した状態のように矢印方向に内倒れ変形し、衝撃が減衰される。この結果、対向配置したサイドフレーム22,23間の間隙が狭くなるため、該サイドフレーム22,23間に所定の張力で張設されていた三次元立体編物(背部用クッション材24)が一気に緩む。三次元立体編物(背部用クッション材24)の張力が緩むと、この三次元立体編物(背部用クッション材24)は、張力構造体でなくなる。この際、三次元立体編物自体の有する高い減衰特性も作用する。なお、このような大変形時に作用する減衰比は、小変形時(入力となる励振力の小さいとき)と比較して、0.2以上の差を有するように設けられていることが好ましい。また、このような大変形時に、減衰比1以上の臨界減衰系あるいは超過減衰系となる構成とすることがより好ましい。これにより、反力によって人体を跳ね返すことが抑制される。また、衝撃力を受け続けていくことによって三次元立体編物には新たに張力場が生じ、その力がひずみエネルギーに変換されるため、衝撃力の作用時間が長くなる。 【0056】ここで、図29〜図32は、座部及び背部のいずれにも本発明のような膨出部を備えておらず、キャンバー形状を有していない従来の座席構造の減衰特性を示すグラフである。より詳しくは、この座席構造は、座部のサイドフレーム間に、コイルスプリングを介して面状弾性部材を支持させ、その上部に座部用クッション材としての三次元立体編物を張設すると共に、背部用サイドフレーム間には、背部用クッション材としての三次元立体編物を無負荷時の伸び率5%未満で張設した構造を有している。なお、図29及び図30は座部における減衰特性を示し、図31及び図32は背部における減衰特性を示し、また、図29及び図31は重さ5kgのウエイトを用い、図30及び図32は重さ10kgのウエイトを用いて測定している。 【0057】図29及び図30から明らかなように、座部においては、ウエイトの重さが変わってもその減衰比は5kgのウエイトの場合で0.256、10kgのウエイトの場合で0.237ほぼ同じである。一方、図31及び図32から、背部においては、5kgのウエイトに対する減衰比が0.331であるのに対し、10kgのウエイトに対する減衰比が0.192である。 【0058】ここで、減衰比は、【数1】
である。 【0059】従って、背部においては、コイルスプリングを配設せず、三次元立体編物だけを張設しているため、上記式中、減衰比は質量mに大きく依存し、負荷質量が大きくなると減衰比が小さくなる。一方、座部のようにコイルスプリングを設けた場合にはバネ定数kの作用が大きくなるため、入力依存性が小さくなる。図29〜図32に示したグラフは、かかる現象を示すものである。 【0060】1未満の所定の減衰比を備えた系を、大きな衝撃が加わった場合に臨界減衰系又は超過減衰系とする場合に、バネ定数kや負荷質量mを調整しても困難である。そこで、本発明のように膨出部を備えたキャンバー形状を形成すると共に、図28に示したように、張設されている三次元立体編物に対して大きな衝突荷重がかかった際に、外枠フレームが三次元立体編物に追随して変形する構成とすることにより、三次元立体編物の張力が緩み、その結果、三次元立体編物自体の有する高い減衰特性を機能させることができるため、かかる構成とすることによって、臨界減衰系又は超過減衰系を形成することができる。 【0061】図28に示したフレーム材に三次元立体編物を張設した本実施形態の座席構造について、重さ100kgのダミー人形をシートベルトを装着した上で着座させて後突試験を行った。なお、試験は、最大加速度171.1m/s2、最終速度7.1m/sで、台車を、各座席構造を搭載した車体フレームの後方から衝突させ、ダミー人形の胸部及び腰部の各加速度を測定することにより行った。 【0062】結果を図33に示す。このうち(a)が胸部加速度を、(b)が腰部加速度を示す。なお、図においてXが左右方向(BL方向)の加速度を、Yが前後方向(TL方向)の加速度を、Zが上下方向(WL方向)の加速度を示す。 【0063】まず、図33(a)から明らかなように、胸部が、衝突後約50msecの時点まで後方に押しつけられた後、フレームの変形により後方に押しつけられ、約70msec〜80msec付近で最大の加速度を示し、約110msecになるまで加速度が収束していく。これらの現象は、張力構造体となっている三次元立体編物が中央方向に引っ張られることによりフレームに変形が生じ、一気に三次元立体編物の張力が低下していることによるものである。実際、ダミー人形の頭部は、この間において前後方向への大きなリバウンドがなかった。次いで、約110msecでフレームの変形により加速度が小さく上昇した後、約150msecに至るまでフレームの変形が続き、その後もう一度小さく加速度が上昇する挙動を示している。 【0064】約150msec近辺では加速度の上昇が生じているが、体幹の移動により回転方向に発生するモーメントが背部用クッション材の反力により生じる頭部の前方へ移動しようとする力を相殺し、シートで頭部が固定された状態での加速度上昇であるため、頭部の前後方向の移動量は小さい。従って、この加速度上昇は、フレームの復元力による加速度上昇と考えられる。 【0065】また、図33(a)から明らかなように、最初に胸部が背部用クッション材に押しつけられる50〜60msecにおいて、水平方向加速度の値を上下方向加速度が上回ることがなく、ダミー人形の跳ね上がりが少ないことがわかる。 【0066】また、図33(b)の上下方向の腰部加速度を見ると、加速度が上昇した後、速やかに収束しており、加速度変化が少なく、腰部の跳ね上がりが少ないことが分かる。 【0067】以上の結果から明らかなように、本実施形態によれば、張力構造体である三次元立体編物の張力が大きな衝撃性振動を受けた場合に、緩むことによって、高い減衰特性を示すことがわかる。すなわち、衝撃吸収特性の評価としては、頭部と胴体の前後方向の相対変位が小さくて、上下方向加速度が小さいことが望ましいが、本実施形態は、このような好ましい特性に極めて近い特性を発揮できる構造を備えている。 【0068】(第4の実施形態)上記した第1乃至第3の実施形態においては、いずれもクッション材として座部又は背部にキャンバー形状を形成した三次元立体編物を用いている。しかしながら、本発明の座席構造は、着座時の平衡点位置において、励振力の小さな入力に対しては張力構造体の張力により減衰特性が小さく、バネ特性の働きによってその位相差により除振でき、励振力の大きな入力に対しては張力構造体のひずみエネルギーにより大きな減衰特性が作用する構造であればよく、すなわち、励振力の大きさに応じて減衰比1未満の領域において異なる減衰比の減衰特性が作用する構造であればよい。 【0069】従って、かかる特性を備える構造を、ポリウレタンフォーム、粘弾性ウレタンなどのウレタン材料を用いて達成することもできる。ウレタン材料を用いてかかる特性を備えた構造とするためには、次のような異なる特性を備えたウレタン材料からなる三層構造のクッション材とする必要がある。但し、張力構造体とするために、これらのクッション材のいずれかに、接線方向へ張力を生じさせる布材、二次元織物や二次元編物などの張力付与部材を積層する必要がある。 【0070】すなわち、上層に配設される第1のウレタン層は、バネ定数が人体の筋肉のバネ定数に近似した柔らかな特性を備えたものを用いる。例えば、粘弾性ウレタンなどである。次に、中間層に配置される第2のウレタン層は、リニアリティ0.2以上で、ヒステリシスロス率30%以下の復元性の高いポリウレタンフォームなどを用いる。さらに、下層に配置される第3のウレタン層は、減衰比0.1以上の減衰特性の大きいポリウレタンフォームなどを用いる。 【0071】第1のウレタン層として、人体の筋肉のバネ定数に近似したもの、すなわち直径98mmの圧縮板により加圧した際の荷重特性で4N/mm〜0.5N/mmの範囲のものを採用することにより、着座時にこの第1のウレタン層に接した際には、筋肉があまり変形せずに、第1のウレタン層の方が容易に変形し、たわむ。これにより、人体へのフィット感が高まる。 【0072】一方、励振力の小さな振動が入力された際には、復元性の高い第2のウレタン層の復元力により除振できる。この際、減衰特性の大きな第3のウレタン層はあまり機能しない。従って、この第3の実施形態にかかる積層構造のクッション材全体としても小さな減衰特性しか作用しない。なお、「リニアリティ」とは、荷重−変位特性において、45kgf負荷時のたわみ量と、45kgfから100kgfまでのたわみ量との比率であり、第2のウレタン層において、リニアリティを0.2以上としたのは、着座時のストローク感を確保するためである。また、ヒステリシスロス率が30%を超える場合には、減衰力が大きくなって復元性が小さくなり、バネ感が乏しくなるからである。 【0073】そして、励振力の大きな振動が入力された場合には、減衰比0.2以上のウレタン材料からなる第3のウレタン層の大きな減衰特性が作用する。これにより、励振力の大きい入力を減衰でき、着座者の跳ね上がりを防止することができる。この場合、上記第1〜3層のいずれかのウレタン層に付与された張力付与部材の働きにより、かかるウレタン層の接線方向のひずみエネルギーが大きくなり、上記各実施形態と同様に、接線方向の張力を低下させて、大きな減衰特性を作用させることができる。 【0074】また、上記した各実施形態で用いた三次元立体編物に代えて、二次元織物や二次元編物などの二次元張力構造体と、該二次元張力構造体に積層される表皮層を有するウレタン層とを備えたウレタン付き二次元張力構造体を用いることもできる。なお、ウレタン層としては、2〜30mm程度の薄いポリウレタンフォームからなるものを用いることができる。 【0075】このようなウレタン付き二次元張力構造体を用いて本発明を構成した場合、耐久性が若干劣り、バネ性が多少高くなるものの、上記した三次元立体編物を用いた場合とほぼ同様の作用、効果を有する。このため、かかるウレタン付き二次元張力構造体も、三次元立体編物と同様に様々な座席構造に有用である。もちろん、ウレタン付き二次元張力構造体も、三次元立体編物と同様に30%以下の伸び率で各フレーム材に張設される張力構造体であるため、衝突時等において大きな衝撃が入力された場合には、フレーム材の変形によって減衰比で0.2以上の差がある高い減衰特性を発揮でき、好ましくは、臨界減衰系又は超過減衰系を構成することができる。 【0076】 【発明の効果】本発明の座席構造は、張力構造体であるクッション材が、入力となる励振力の大きさに応じて、張力構造体の平面波によって生じる変形によるひずみエネルギーと張力の変化によって、作用する減衰特性が変化する構造を有している。励振力の小さな入力に対しては小さな減衰比で減衰特性が作用するため、クッション材のバネ性による位相差によって除振することができ、励振力の大きな入力に対してはひずみエネルギーの増加と張力の低下により、大きな減衰比と長い作用時間で減衰特性が作用し、人体の上方への跳ね上がりを抑えることができる。また、背部において、クッション材として三次元立体編物又はウレタン付き張力構造体を用いると共に、衝撃による所定以上の荷重が加わった場合に、背部を形成するフレームが変形する構成とすることにより、高い減衰特性を発揮でき、好ましくは臨界減衰系又は超過減衰系を形成することができ、大きな衝撃を受けた際における人体の跳ね上がりを抑制するのに効果的である。
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| 【出願人】 |
【識別番号】594176202 【氏名又は名称】株式会社デルタツーリング 【住所又は居所】広島県広島市安芸区矢野新町一丁目2番10号
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| 【出願日】 |
平成13年12月20日(2001.12.20) |
| 【代理人】 |
【識別番号】100101742 【弁理士】 【氏名又は名称】麦島 隆
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| 【公開番号】 |
特開2003−180481(P2003−180481A) |
| 【公開日】 |
平成15年7月2日(2003.7.2) |
| 【出願番号】 |
特願2001−387104(P2001−387104) |
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