| 【発明の名称】 |
ブラシの製造方法 |
| 【発明者】 |
【氏名】佐藤 久夫 【住所又は居所】山形県酒田市大浜2−1−18 花王株式会社研究所内
【氏名】浜本 伸二 【住所又は居所】栃木県芳賀郡市貝町赤羽2606 花王株式会社研究所内
【氏名】久保田 幹也 【住所又は居所】栃木県芳賀郡市貝町赤羽2606 花王株式会社研究所内
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| 【要約】 |
【課題】用毛束の抜け強度が高く、樹脂充填の際の樹脂洩れ抑えられ、用毛のねじれや乱れが防止され、植毛基部の変形やそりの少ない高品質なブラシを製造することができるブラシの製造方法を提供すること。
【解決手段】複数の植毛孔24を有する植毛基部22の植毛孔24に用毛束3を挿入する用毛束の挿入工程と、植毛孔24から突出する用毛束3の片端部31を加熱して溶融塊32を形成する熱加工工程と、溶融塊32を被覆する被覆工程とを具備するブラシの製造方法である。植毛孔24の開口周縁部240及び用毛束3の片端部31を非接触熱源で加熱して溶融塊32を形成するとともに溶融塊32と植毛孔24の開口周縁部240とを融着させる。 |
【特許請求の範囲】
【請求項1】 複数の植毛孔を有する植毛基部の該植毛孔に用毛束を挿入する用毛束の挿入工程と、前記植毛孔から突出する前記用毛束の片端部を加熱して溶融塊を形成する熱加工工程と、前記溶融塊を被覆する被覆工程とを具備するブラシの製造方法であって、前記植毛孔の周囲及び前記用毛束の片端部を非接触熱源で加熱して溶融塊を形成するとともに該溶融塊と前記植毛孔の開口周縁部とを融着させるブラシの製造方法。 【請求項2】 前記溶融塊と前記植毛孔の開口周縁部とを押圧せずに固着させる請求項1記載のブラシの製造方法。 【請求項3】 前記溶融塊と前記植毛孔の開口周縁部との境界面に凹凸が形成されるように該溶融塊と該植毛孔の開口周縁部とを固着させる請求項2記載のブラシの製造方法。 【請求項4】 前記用毛束毎に前記溶融塊を形成する請求項1〜3の何れかに記載のブラシの製造方法。 【請求項5】 前記溶融塊の形成中又は形成直後に、該溶融塊及び前記植毛基部を気流によって冷却する請求項1〜4の何れかに記載のブラシの製造方法。 【請求項6】 不活性ガス雰囲気下又は低酸素濃度雰囲気下で前記溶融塊を形成する請求項1〜5の何れかに記載のブラシの製造方法。 【請求項7】 前記非接触熱源を、前記用毛束の断面形態に対応して予め記憶部に登録された照射パターンに基づいて、走査することを特徴とする請求項1〜6の何れかに記載のブラシの製造方法。 【請求項8】 前記非接触熱源がレーザービームである請求項1〜7の何れかに記載のブラシの製造方法。 【請求項9】 前記熱加工工程において前記植毛基部を部分的に遮蔽する請求項1〜8の何れかに記載のブラシの製造方法。
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【発明の詳細な説明】【0001】 【発明の属する技術分野】本発明は、ブラシ、特に歯ブラシの製造方法に関する。 【0002】 【従来の技術及び発明が解決しようとする課題】植毛孔を有する植毛基部を用いた歯ブラシの製造方法に関する従来技術としては、例えば、下記特許文献1に記載の技術が知られている。この技術は、植毛基部の植毛孔から突出する用毛束の片端部を溶融させて溶融塊を形成した後に、該溶融塊を被覆して植毛部を形成するものである。 【0003】しかし、この歯ブラシの製造方法は、複数の用毛束の片端部を全体的に溶融させて溶融塊を形成し、形成された溶融塊を押圧して該溶融塊と植毛基部とを密着させている。すなわち、植毛孔から突出する用毛束の片端部の形状に応じて、精度良く溶融塊を形成することについては何等考慮されていない。このため、この製造方法では、特に断面の寸法・形状が異なる用毛束を植毛する場合や、植毛孔から突出する用毛束の片端部の先端位置が個々に異なるブラシを製造する場合には、用毛束の突出端部を均等に溶融させることが困難であり、溶融塊で植毛孔の全周囲を塞ぐことができず、後述する樹脂の充填時に植毛孔から樹脂の洩れが発生して成形不良となるおそれがあった。また、各用毛束の溶解の程度が不均一であり、溶融塊の大きさにばらつきが生じ、溶融塊の小さな用毛束は軽微な力で抜け落ちるおそれがあった。さらに、溶融塊を押圧して密着させるため、用毛束に過度の負荷がかかり、用毛にねじれや乱れが生じやすいほか、押圧によって密着した溶融塊及び植毛基部が加熱後に全体的に収縮し、最終的な製品にそり等の変形が発生する課題があった。 【0004】一方、用毛の溶融手段にレーザーを用いた技術としては、下記特許文献2に記載の歯ブラシの製造方法が知られている。この技術では、個々の用毛(フィラメント)の先端をレーザーによって丸めている。また、レーザーによってフィラメントどうしをその長手方向で接合させることが記載されている。しかしながら、用毛束の片端部をレーザーによって融解して融解塊を形成することやレーザーの照射パターンについては記載も示唆もない。 【0005】同様に、下記特許文献3にも、ブラシの製造方法として、樹脂製の用毛支持体から露出する複数の用毛束の端部を、レーザーなどの熱源で溶融して溶融肥大部を形成することが記載されているが、レーザーの具体的な照射方法については何等開示されてはいない。 【0006】 【特許文献1】特開平9−182632号公報【特許文献2】米国特許第4,441,227号明細書【特許文献3】特開2000−287755号公報【0007】従って、本発明の目的は、用毛束の抜け強度が高く、樹脂充填の際の樹脂洩れによる成形不良を防止し、用毛のねじれや乱れ、植毛基部の変形を抑えて高品質なブラシを製造することができるブラシの製造方法を提供することにある。 【0008】 【課題を解決するための手段】本発明は、複数の植毛孔を有する植毛基部の該植毛孔に用毛束を挿入する用毛束の挿入工程と、前記植毛孔から突出する前記用毛束の片端部を加熱して溶融塊を形成する熱加工工程と、前記溶融塊を被覆する被覆工程とを具備するブラシの製造方法であって、前記植毛孔の開口周縁部及び前記用毛束の片端部を非接触熱源で加熱して溶融塊を形成するとともに該溶融塊と前記植毛孔の開口周縁部とを融着させるブラシの製造方法を提供することにより、前記目的を達成したものである。 【0009】 【発明の実施の形態】以下、本発明のブラシの製造方法を、その好ましい実施形態として、歯ブラシの製造方法に適用した実施形態に基づいて図1〜図7を参照しながら説明する。 【0010】本実施形態の歯ブラシの製造方法においては、先ず、歯ブラシ本体の成形工程において、図1(b)に示すような、植毛基部22を有する歯ブラシ本体2を成形する。歯ブラシ本体2の成形工程では、図1(a)に示すように、植毛基部22を有する歯ブラシ本体2の形態に対応したキャビティ11及びキャビティ11に通じる樹脂注入路12を有する成形金型10を用いる。そして、成形金型10を射出成形機(図示せず)にセットし、所定の射出成形圧で樹脂注入路12から該キャビティ11内に熱可塑性樹脂(図示せず)を溶融状態で射出し、冷却した後に脱型する。 【0011】また、歯ブラシ本体2には、従来から歯ブラシ本体に用いられている通常の熱可塑性樹脂を特に制限なく用いることができる。該熱可塑性樹脂としては、ポリプロピレン等のポリオレフィン、ポリカーボネート、ポリメチルメタクリレート、ポリエチレンテレフタレート等のポリエステル、アクリロニトリル−スチレン共重合体、アクリロニトリル−ブタジエン−スチレン共重合体等が挙げられる。該熱可塑性樹脂は、単独又は複数を適宜選択して用いることができる。 【0012】本実施形態の歯ブラシの製造方法では、図2に示すように、歯ブラシ本体2の先端部20に扁平で且つその背面側に凹部21を有する植毛基部22を形成する。一般に口腔内で操作性の良い歯ブラシの植毛部分(歯ブラシヘッド部分:プラスチック樹脂部分)の好ましい厚みt1は、5.5mm以下であり、薄ければ口腔内の操作性がより向上するが、歯ブラシとしての強度を確保し用毛束を安定的に植毛基部22に保持する上でより好ましい植毛部分の厚みt1の範囲は3〜5mmである。凹部21の深さdは、前記の厚みt1との関係や溶融塊32をどの程度被覆するかを考慮すると1〜4mmであることが好ましく、更に歯ブラシの操作性を重要視するならば1〜2mmであることがより好ましい。また、凹部21の底面の厚みt2が大なる程成形性が容易で曲げ強度も大きくなるが、歯ブラシとしての操作性や実用性を考慮するとt2は1〜4mmであることが好ましく、1.0〜2mmであることがより好ましい。 【0013】植毛基部22には、その下面23から前記凹部21内に通じる植毛孔24を形成する。本実施形態では、先端部、中央部、及び両側部にそれぞれ大きさや形の異なる植毛孔24が形成されている。尚、植毛孔24の形状としては、略円形のほか、略長円形状、略楕円形状、各種三角形状及び各種矩形状等を適宜選択することができる。植毛孔24間の間隔は、少なくとも0.3mm以上とするのが好ましく、0.5mm以上とするのがより好ましい。間隔が狭すぎると、植毛孔への用毛束の挿入に支障をきたしたり、植毛基部22の強度が低下したり、植毛基部22の成形時における樹脂の流路の確保が困難になるおそれがある。 【0014】植毛孔24の上端の開口周縁部240は、上方に向けて拡開するようにテーパー状に形成されている。開口周縁部240の角度αは、20〜120°であることが好ましく、30〜50°であることがより好ましい。角度αを好ましい範囲に設定すると、植毛がより容易となり、用毛束の抜け強度が向上し、融解塊と植毛基部との境界面に凹凸を形成しやすくなる。 【0015】前記凹部21の外周壁部21aは全周に亘って設けることが好ましい。それにより、後述する凹部21に樹脂を充填する際に充填用樹脂と凹部との接着面積を増大させ、接着強度を増すことができる。また、後述するように用毛束3の片端部31を溶融させて溶融塊32を形成する際に、溶融塊32が植毛基部22の外に流れ出すことを防ぐことができる。 【0016】本実施形態の歯ブラシの製造方法では、前記用毛束3(図3参照)には従来から歯ブラシの用毛に用いられている通常の材質のものを用いることができ、例えば、ナイロン等のポリアミド、ポリブチレンテレフタレート等のポリエステル等が挙げられる。 【0017】前記植毛孔24に前記用毛束3を挿入する方法に特に制限はないが、例えば、切断済み用毛を所定本数束ねて挿入する方法が挙げられる。 【0018】次に、熱加工工程において、植毛孔24の開口周縁部240及び植毛孔24から突出する用毛束3の片端部31のそれぞれを非接触熱源(図示せず)で加熱し、片端部31を溶融して溶融塊32を形成すると共に溶融塊32と植毛孔24の開口周縁部240とを融着させ、押圧せずにそれらを固着させる。 【0019】前記非接触熱源による溶融塊の形成手段としては、個々の溶融塊を必要形状に精度良く且つ効率よく形成する上で、所定のレーザー発振器からレーザービームを照射する方法、ハロゲンランプ等の光源から光を集光して照射する方法が好ましい。以下、レーザービームを照射する方法の実施形態に基づいて説明する。 【0020】本実施形態の熱加工工程では、図3に示すように、複数の前記用毛束3の片端部31にレーザービームを照射して片端部31を溶融し、前記植毛孔24の開口周縁部240よりも断面が大きな溶融塊32を形成する。 【0021】溶融塊32の大きさは、用毛束3の所望の抜け強度を確保できるように、植毛孔径の1.05倍以上が好ましい。用毛束3どうしの間隔が狭い場合は、溶融塊どうしが連結されて用毛束の抜け強度がさらに強くなる。溶融塊32が過度に大きいと、用毛束抜け強度は強くなるが、溶融塊の形成に時間がかかったり、溶融塊32が凹部21からはみ出し、後述する樹脂の充填時に支障をきたす場合がある。 【0022】本実施形態においては、レーザー発振器から結像レンズに至るレーザー光の光路において、各用毛束3の断面形態に応じて予め記憶部に登録された照射パターン(走査パターン)に基づいて、コントローラーが前記光路内に配された反射鏡の角度をサーボー制御するとともにフォーカスレンズの位置を制御することで、結像レンズから照射されるレーザービームを正確に各用毛束3の片端部31に走査照射する。 【0023】前記レーザービームのビームの太さ(ビーム径)は、用毛束3の断面形態、数、植毛位置等に応じて適宜設定することができる。本実施形態では、個々の用毛束3に走査照射するために、ビーム径は0.1〜4mmであることが好ましい。なお、レーザービームのエネルギーを高めて細かな走査形態で個々の用毛束3に溶融塊32を形成する場合は、0.1〜1mmであることがより好ましい。 【0024】前記レーザービームの照射パターンについては、前記各用毛束3の用毛の長さ、各用毛束3の断面寸法、各用毛束3の植毛基部22における植毛位置、各用毛束3の植毛基部22に対する前記角度(θ)、各用毛束の用毛密度、各用毛束の用毛の種類(太さ、色(光吸収率))や先端形状等に基づいて、最適なパラメーター(照射スポット径、照射熱量、照射時間、走査速度、走査ピッチなど)を設定し、個々の用毛束に対応した走査照射行うことで、良好な溶融塊形成がなされる。 【0025】例えば、図4(a)、(b)に示す長円形や馬蹄形の断面形態を有する用毛束3においては、図4(c)、(d)に示すように、ビームのスポット径に応じた所定ピッチ(P)で直線に走査する形態や、図4(e)、(f)に示すように、ビームのスポット径に応じた所定ピッチで中央部から外側にトラック状に走査する等、適宜選択し、最適な溶融条件を達成することができる。 【0026】レーザービームの走査ピッチは、レーザービームのスポット径、走査速度、又は出力にもよるが、0.05〜2mmとすることが好ましい。また、レーザービームの走査速度は、前記溶融塊32の形成に必要な熱容量と溶融時間を確保する点から60〜800mm/秒(出力12〜50Wにおいて)であることが好ましい。 【0027】前記レーザービームの照射パルスは、高い出力が得られ、且つパルス化が図れる点から、1〜10kHzであることが好ましい。また、前記レーザービームの出力は、レーザービームの走査形態への対応性と簡素な設備の点から、10〜100Wであることが好ましい。 【0028】本実施形態では、個々の用毛束に小径のレーザー光にて、照射するパラメーターを変化させ最適な溶融条件にて溶融塊を形成する。例えば、図3に示す用毛束3の片端部31のように、他の用毛束に比べ、突出量の多い形態又は、用毛束断面積の大きい形態に対しては、照射時間、走査ピッチなどのパラメーターを変更し、走査照射時により多くの熱量を加え、適切に溶融塊を形成する。また、用毛束3の突出量が少なく、用毛束断面積の小さい形態では、前記と逆に、パラメーターを変化させ、走査照射時に加えるの熱量を少なくする。特に、用毛束3の片端部31の形態で、個々の用毛の突出量が変化している形態(31a)においては、その高い部分を一度走査照射し、さらに片端部31aの全体を再度重ねて走査照射することで、高さが均一な溶融塊32を良好に形成することができる。 【0029】レーザービームの走査照射を前記のように、重ねて行う以外に、用毛束3の高い部分(多く溶融させたい部分)に集中して熱量を与える為、走査ピッチを部分的に狭くしたり、走査速度を部分的に変更し、必要な部分に集中して溶融熱量を多く加える等、走査レーザー方式の特徴を活し、溶融塊形成の最適な形態を採ることができる。 【0030】以下、前記用毛束3の片端部31と前記植毛孔24の開口周縁部240とをレーザービームで加熱して溶融塊32を形成するとともに、溶融塊32と植毛孔24の開口周縁部240とを融着させる点について具体的に説明する。 【0031】本実施形態では、用毛束3の片端部31を溶融するときに片端部31を部分的に非常に高温とし、高流動性を有して植毛基部22に密着する状態で溶融魂32を形成する。これにより、図5に示すように、溶融魂32と植毛孔24の開口周縁部240の全面とを押圧せずに融着させることができる。これにより、後述する樹脂充填時に、植毛孔24と用毛束3との間からの樹脂洩れを防ぐことができる。また、溶融塊32形成時に、押圧をせずに形成しているため、用毛束3に応力がかからず、用毛のねじれや乱れが無く、高品質な用毛束状態を維持できる。また、非接触熱源の中では、熱風方式に比べても、レーザービームの方が溶融塊形成時に用毛に応力をかけない点でよりすぐれている。さらにレーザービームでは、溶融塊形成時に、溶融する箇所のみに熱を加え、加熱不要な部分には熱を加えないようにすることができるので、熱風方式に比べ、植毛基部の変形やそりが極めて小さい歯ブラシの製造が可能となる。 【0032】本実施形態では、溶融塊を形成する際に、レーザービームを、例えば、図4(c)に示すように、一定ピッチで走査させ、用毛3aを集合させた用毛束3の片端部31と植毛孔24の開口周縁部240の一部を相互に照射している。これにより、図5に示すように用毛束の片端部31と植毛孔24の開口周縁部240とを相互に溶融し、溶融塊32を形成するとともに、互いの材料が絡み合うように溶融塊32と開口周縁部240との境界面32aに凹凸形状を形成し、該境界面32aが冷却によって収縮した後も該境界面に隙間ができず、確実に密着している状態、即ち、溶融塊32と植毛孔24の開口周縁部240とが固着した状態を得ている。 【0033】具体的には、例えば、図4(c)のA−A及びB−Bに示すように、略長円形断面の用毛束3を横切るようにレーザービームを走査照射する。この場合、用毛束3より小さいスポット径のレーザービームを、用毛束3と基部の開口周縁部240を相互に走査照射し、部分的に溶融させていく。 【0034】用毛束3と基部の開口周縁部240を相互に溶融する形態は、まず、図6(a)に示すように、基部の開口周縁部240より照射を開始する。この際、開口周縁部240の一部が小スポット径のレーザービームにて、部分的に溶融状態240aとなる。次に、用毛束3の外周部の用毛の一部(3b)が溶融され〔図6(b)〕、さらに、レーザービームで走査照射を継続する。次に、レーザービームで、図6(c)の開口周縁部240をさらに溶融する(240b)。その後、前記の走査照射を繰り返し、用毛束の片端部の残りの部分を溶融して、溶融塊32を形成する(図(d))。この際の照射パターンは、図4(c)に示すように、開口周縁部240と用毛束3を交互に且つ接近した走査形態でレーザービームを照射しているため、図6(a〜d)に示すように、開口周縁部240と用毛束3の境界面32aは凹凸形状をなし、植毛基部22と用毛束3が部分的に相互に溶融し、冷却収縮後も境界面32aは密着状態を保つ、すなわち固着状態となる。 【0035】このようにして、用毛束3の片端部31と植毛孔24の開口周縁部240とを相互に溶融し、溶融塊32を形成するとともに、互いの材料が絡み合うように境界面32aに凹凸形状を形成することで、植毛基部22の材料と用毛束3の用毛の材料に従来から用いられているような溶融状態で接着性の乏しい材料の組み合わせでもこれらを固着させることができる。 【0036】例えば、歯ブラシ本体には、ポリプロピレン樹脂〔溶解度パラメーター(SP値)=8.0〕、ポリエチレンテレフタレート〔溶解度パラメーター(SP値)=10.7〕が使用されることが多く、用毛束3の用毛の材料には、ナイロン〔溶解度パラメーター(SP値)=13.6〕が使用されることが多い。このような溶解度パラメーターの差が1以上大きい材料の組み合わせでは、熱による接着が困難である。このため、溶融塊の形成後に搬送工程の振動等により、植毛した用毛束に乱れが発生したり、後述する樹脂充填時に流動圧を側面より受け、溶融塊がずれ、溶融塊と基部植毛孔に隙間が生じ、同隙間からの樹脂洩れが発生する。 【0037】しかし、本実施形態の製造方法では、上述のように、用毛束の片端部31と植毛孔24の開口周縁部240とを相互に溶融し、溶融塊32を形成するとともに、互いの材料が絡み合うように境界面32aに凹凸形状を形成するため、歯ブラシ本体に用いる材料と用毛束の用毛に用いる材料との溶解度パラメータの差が2以上である場合にも、溶融塊32と植毛孔24の開口周縁部240とを良好に固着させることができる。これにより、特に後述する背面凹部の樹脂充填時に充填圧力で溶融塊32がずれたり、溶融塊32と植毛孔24の開口周縁部240の密着が損なわれて植毛孔24と用毛束3の間から樹脂が洩れることを防ぐことができる。溶融塊32と植毛孔の開口周縁部240との固着状態は、当該境界面の断面を拡大観察し、凹凸形状があり、且つ、隙間がないことで確認することができる(図5参照)。 【0038】固着後の溶融塊32の形態は、後述する樹脂充填時における樹脂の充填性を阻害しない観点から、溶融塊32の厚みf(図3参照)は0.2〜3mmが好ましく、0.2〜1mmがより好ましい。尚、樹脂充填流路の厚み(d−f、図3参照)は0.2mm以上とることが、樹脂の充填性を阻害しない為にも好ましい。 【0039】本実施形態の歯ブラシの製造方法では、レーザービームによる熱加工工程において、前記レーザービームで前記用毛束3の後端部31を照射して、溶融塊を部分的に気化させて、溶融塊を所定の寸法形状にすることができる。 【0040】前記レーザービームによる熱加工工程においては、図3に示すように、マスクプレート17で前記凹部21の外壁部21aを遮蔽し覆った状態でレーザービームを照射することが好ましい。このようにマスクプレート17を配しておくことで、植毛基部22における溶融の不要な部分にレーザービームが照射されることを防ぐことができるほか、レーザーが発する熱の影響で植毛基部22のそりや変形を防止することができる。 【0041】レーザービームを照射して溶融塊を形成する際は、マスクプレート17にスリット状のノズル17aを有するものを用い、当該ノズル17aから不活性ガスの気流を吹き付けながらレーザービームを照射し、溶融塊32の形成中に溶融塊32及び植毛基部22を冷却するとともに、不活性ガス雰囲気又は低酸素濃度雰囲気下で溶融塊32を形成することが好ましい。なお、該気流の吹き付けは、溶融塊32の形成直後に行うこともできる。特に用毛束間のピッチが狭い場合は、溶融塊同士が接触し連なった溶融塊が形成され、この状態で連なり一体化した溶融塊は、中心に向かって固化収縮力が作用する為に、所望の植毛角度にズレが生じる。本発明では、個々の用毛束毎に走査レーザー方式で溶融塊をつくり、さらに気流で随時冷却するため、溶融塊同士が連なった状態でも溶融塊の収縮は個別に行われるため、用毛束の植毛角度のズレを防止することができる。また、溶融塊形成時における気流の吹き付けによって用毛の焦げ、変色を防止することができるとともに、用毛の溶融樹脂がマスクプレート17へ付着することを防止することができる。吹き付ける該不活性ガスとしては、窒素、アルゴン等が挙げられる。 【0042】照射するレーザービームは、前記用毛束3の片端部31を溶融させることができる出力を発生できるものであれば、そのレーザービームの発生源は特に制限はない。該レーザービームの発生源としては、CO2、Ar、TEA CO2、エキシマ、He−cd、YAG等が挙げられ、これらの中でも、プラスチック材料を効率良く溶融する点ではCO2が好ましい。 【0043】次に、図7に示すように、溶融塊32の被覆工程において、植毛基部22の凹部21に熱可塑性樹脂を充填して該熱可塑性樹脂で前記溶融塊32を被覆する。 【0044】そして、前記被覆工程後、用毛束保持治具13を前記射出成型用金型18から取り外し、さらに、植毛部25を分離して歯ブラシの製造を完成する。 【0045】以上説明したように、本実施形態の歯ブラシの製造方法によれば、用毛束の抜け強度が高く、樹脂充填の際の樹脂洩れ抑えられ、用毛のねじれや乱れが防止され、植毛基部の変形やそりの少ない高品質なブラシを製造することができる。 【0046】本発明は前記実施形態に制限されるものではなく、本発明の趣旨を逸脱しない範囲において適宜変更することができる。 【0047】本発明のブラシの製造方法は、前記実施形態のように、溶融塊を形成して該溶融塊と植毛基部の開口周縁部とを固着させた後、植毛基部と溶融塊を充填樹脂で被覆して一体化することが好ましいが、例えば、溶融塊が形成された植毛基部の凹部を板状部材を接着等により一体化することもできる。このように、板状部材を接着する形態では、植毛基部に配置された溶融塊と板状部材間に隙間が存在するが、溶融塊が植毛基部に固着されているので、歯磨き時に用毛束に応力がかかっても、用毛束の植毛基部に対する角度が変化しない。 【0048】また、非接触熱源からの照射は、前記実施形態のように、レーザービームを移動させて走査させて行うことが好ましいが、レーザービームは固定しておき、植毛基部を移動させて照射してもよい。 【0049】また、非接触熱源としては、ハロゲンランプ等の光源を集光させることで、レーザービームと同様の効果を得ることができる。この場合は、前記の同様に、集光した光源を固定し、植毛基部を移動する方式が、装置構成上好ましい。 【0050】また、前記実施形態のように、用毛束3は、植毛基部22の背面側から植毛孔24に挿入することが好ましいが、植毛基部の正面側から植毛孔に挿入することもできる。 【0051】また、本発明は、前記実施形態におけるように、予め所定長さに切断された用毛を用いることが好ましいが、リールに巻回された用毛束を用いることもできる。この場合には、用毛束を植毛基部の正面側から植毛孔に挿入し、突出させた用毛束の端部を熱加工工程で非接触熱源で溶融させて溶融塊を形成るとともに該溶融塊と前記植毛孔の開口周縁部とを融着させ、さらに前述のように固着させた後、用毛束を所望の長さに切断することが好ましい。 【0052】本発明は、前記実施形態におけるように、歯ブラシの製造に特に好適であるが、歯ブラシ以外のブラシの製造、例えば、ヘアブラシ、マッサージブラシ、洗浄ブラシ等の各種ブラシの製造にも適用することができる。 【0053】 【発明の効果】本発明のブラシの製造方法によれば、用毛束の抜け強度が高く、樹脂充填の際の樹脂洩れ抑えられ、用毛のねじれや乱れが防止され、植毛基部の変形やそりの少ない高品質なブラシを製造することができる。
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| 【出願人】 |
【識別番号】000000918 【氏名又は名称】花王株式会社 【住所又は居所】東京都中央区日本橋茅場町1丁目14番10号
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| 【出願日】 |
平成15年1月31日(2003.1.31) |
| 【代理人】 |
【識別番号】100076532 【弁理士】 【氏名又は名称】羽鳥 修 (外1名)
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| 【公開番号】 |
特開2003−310353(P2003−310353A) |
| 【公開日】 |
平成15年11月5日(2003.11.5) |
| 【出願番号】 |
特願2003−22959(P2003−22959) |
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