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【発明の名称】 フィラメントおよびこれを用いた歯ブラシ
【発明者】 【氏名】小林 海之
【住所又は居所】東京都墨田区本所一丁目3番7号 ライオン株式会社内

【氏名】関野 栄一
【住所又は居所】東京都墨田区本所一丁目3番7号 ライオン株式会社内

【要約】 【課題】隙間進入性と当たり心地の両方に優れるとともに、刷掃実感も高いフィラメントおよびこれを用いた歯ブラシを提供すること。

【解決手段】フィラメント1の毛先部分をテーパー状とし、該テーパー部分に少なくとも1ケ所以上の段差部3を形成する。さらに、フィラメント1を異なる樹脂よりなる2層以上の多重芯構造2a,2bとする。
【特許請求の範囲】
【請求項1】 毛先部分がテーパー状とされ、かつ、該テーパー部分に少なくとも1ケ所以上の段差部を有することを特徴とするフィラメント。
【請求項2】 フィラメントが異なる樹脂よりなる2層以上の多重芯構造とされていることを特徴とする請求項1記載のフィラメント。
【請求項3】 請求項1または2記載のフィラメントを植設したことを特徴とする歯ブラシ。
【発明の詳細な説明】【0001】
【発明の属する技術分野】本発明は、歯ブラシ用のフィラメントとこれを用いた歯ブラシに関する。
【0002】
【従来の技術】特表2001−511379号公報には、ポリトリメチレンテレフタレートおよび別のポリマー材料の共押し出し物のフィラメントを用いた歯ブラシが示されている。この歯ブラシの場合、用毛材料にポリトリメチレンテレフタレートを含むことにより曲げ回復強度の優れた用毛となり、結果として用毛1本1本の繊径を細くすることができる。しかし、細径化は繊径の約10%程度であり、テーパー用毛ほどの歯間進入性、刷掃実感、当たり心地を得ることは難しい。
【0003】特開平6−141923号公報には、両端がテーパー状とされ、テーパー先端部から1mm、3mm、5mm、8mmの各位置における刷毛径が、基部の刷毛径に対し、25〜35%、55〜70%、80〜90%、90〜100%の合成モノフィラメントを用いた歯ブラシが示されている。しかし、この用毛のテーパー形状は段差部のない一様形状であり、歯間進入性には優れるが、刷掃実感にやや不足があり、またチクチクした毛先の痛みを感じることもある。
【0004】特開平9−322821号公報には、先端分岐毛を持つ歯ブラシが示されている。この先端分岐毛は先端の極細毛の剛性と分岐前の用毛剛性に差があり過ぎ、分岐部分で毛先が折れやすく、使用感が悪い。
【0005】特開2001−178542号公報には、断面が多層構造のテーパー用毛を用いた歯ブラシが示されている。この歯ブラシは、インジケーター機能として内外層の色を変え、歯ブラシの交換時期を表示することができるが、用毛に色が付いただけでテーパー形状は段差部のない一様形状のため、段付きテーパー用毛のように高機能ではない。
【0006】
【発明が解決しようとする課題】上述したところから明らかなように、従来用いられているフィラメントには次のような問題があった。
(1)テーパー状とされていない通常の用毛の場合、隙間進入性が充分でなく、小窩裂溝などの極めて狭い隙間の清掃が困難である。
(2)毛先を先鋭化されたテーパー用毛の場合、当たり心地がややチクチクし、人によっては為害性を感じることがある。
(3)一様形状のテーパー用毛の場合、刷掃実感がやや不足気味である。
(4)先端が極細毛に分岐している先端分岐毛の場合、分岐部分から折れやすく、耐久性、使用感の点で問題がある。
【0007】
【課題を解決するための手段】前記課題を解決するため、本発明のフィラメントは、毛先部分がテーパー状とされ、かつ、該テーパー部分に少なくとも1ケ所以上の段差部を有することを特徴とするものである。さらに、前記フィラメントが異なる樹脂よりなる2層以上の多重芯構造とされていることを特徴とするものである。このような構成のフィラメントとすることにより、隙間進入性と当たり心地の両方に優れるとともに、刷掃実感も高いフィラメントを得ることができる。
【0008】また、本発明の歯ブラシは、前記構造のフィラメントを植設したもので、隙間進入性と当たり心地の両方に優れるとともに、刷掃実感も高い歯ブラシを得たものである。
【0009】本発明のフィラメントは、基本的に毛先ほど用毛径が小さくなるテーパー用毛である。さらに、テーパー形状の尖り具合いが従来のように一様ではなく、途中でテーパー形状の変化する段差部を有し、毛先のテーパー形状がより細くなっているフィラメントである。この段差部付きのテーパーは、フィラメントの使用態様に応じて、フィラメントの両端もしくは片端に形成されるものである。
【0010】段差部は、明瞭な段差であっても汚れの清掃力が高くてよいが、連続的かつなだらかにテーパー形状が繋がる方が仕様感、耐久性ともに優れている。また、ブラシの目的や用毛製造条件によっては、一部にテーパー形状の付いていない円筒形部分があるものでもよい。例えば、用毛根元部から中腹までがテーパー形状であり、そこから毛先までが円筒形状であってもよく、さらに先端部までがテーパー形状となっていてもよい。また、毛先の最先端部が凹んでおり、カップ型をしていてもよい。
【0011】フィラメント素材としては、PET(ポリエチレンテレフタレート)、PBT(ポリブチレンテレフタレート)、PTT(ポリトリメチレンテレフタレート)、ポリアミド、ポリプロピレン、ポリトリメチレンテレフタレートなどを用いることができるが、多重芯構造の場合、加水分解速度の高いポリエステル系樹脂をより外側に配置することが好ましい。
【0012】本発明のフィラメントの断面形状は円形でもよいが、楕円形、三角形、四角形、多角形、星型など、他の形状であってもよい。また、多層構造になる各層の色を変えることで、根元部から毛先までの色を層の数だけ変えることができ、色の変化によってフィラメントの磨耗具合を知らせることができる。
【0013】段差部は、毛先程、用毛の径が小さくなるようにつけられる。この段差部は、1ケ所でもよいが、2ケ所以上つけることで、より細かく用毛の特性を変化させることができる。段差部の形成位置は、毛先から距離で刷毛長(植毛台面からの毛丈)の1%〜95%までの範囲、より好ましくは5%〜70%までの範囲とする。これは、一般の歯ブラシの場合、段差部は毛先から0.5mm〜7.0mm程度の範囲であり、これより極端に毛先側に段差部を有しても使用感の差が出にくく、また刷毛根元部に段差部をつけても細い基部繊径のテーパー用毛と使用感が変わらなくなり、あまり意味がなくなるからである。
【0014】本発明のフィラメントは、複数の共押出し物からなる多重芯構造とすることが好ましいが、多重芯構造だけでなく、単一素材によって形成してもよい。多重芯構造による場合、各層の厚みを任意に設定することで、段差部位置、各段のテーパー形状を自由に変化させることができる。単一素材による場合、段差部を有する毛先の加工工程が多重芯構造のものに比べて若干複雑となる。
【0015】なお、単一素材の段差部付きフィラメントの加工方法としては、次のような方法を利用することができる。
■溶解加工による方法フィラメントの溶解部位と溶解時間を段階的にコントロールすることで所定形状に加工する。
■機械加工による方法フィラメントを研磨装置で所定形状に加工する。
■溶解加工+機械加工による方法フィラメントを予め溶解加工によりテーパー加工し、次いで機械研磨により所定形状に加工する。
■溶解加工+先端カット+機械研磨加工による方法フィラメントを予め溶解加工によりテーパー加工し、次いで毛先をカットし、さらにそのフィラメントを機械研磨により所定形状に加工する。
【0016】多重芯構造のフィラメントの場合、多重芯構造の各層を薬品溶解効率の異なる共押出材料によって構成し、これを水酸化ナトリウムや酸などの加水分解溶液に浸漬し、毛先先端部分を溶解することによって製造することが好ましい。この際、この共押出し物の一部、特に外層部分を溶解速度が速いポリエステル系樹脂で構成することが好ましい。テーパー部分の形状によっては、一部をナイロンなどの耐薬品性の高い樹脂としてもよい。また、基本的には外層部は内層部よりも薬品溶解性が高い材料とし、溶解速度の速い外層部が内層部よりもより早くテーパー形状を形成し、内層部が遅れてテーパー形状を形成することにより、段差部を有するテーパー形状を構成することが好ましい。
【0017】テーパー部の先端面がカップ状に凹んだテーパー用毛とする場合には、カップ状凹部を形成する内層部を薬品溶解性の高いポリエステル系の樹脂などで構成し、外層部はナイロンなどの薬品溶解性の低い樹脂、もしくは内層よりも薬品溶解性の遅いポリエステル系の樹脂などで構成すればよい。
【0018】本発明のフィラメントを製造するには、異なる樹脂を共押し出し成形することによって多重芯構造になる原糸を製糸し、これを定寸にカットする。このカットピースの先端部を水酸化ナトリウムや酸などの加水分解溶液中に浸漬して溶解処理し、溶解度の違いによって段差部付きのテーパーを形成した後、中和・洗浄して乾燥する。このようにして得られた本発明のフィラメントを歯ブラシヘッド部の植毛台面に植設することにより、本発明の歯ブラシを得ることができる。
【0019】なお、前記テーパー加工は、植毛前に行ってもよいが、多重芯構造になるフィラメントを歯ブラシヘッド部の植毛台面に植毛した後、ブラシの刷毛先端部を前記加水分解溶液中に浸漬して溶解処理することにより、段差部を有するテーパーを形成してもよいものである。
【0020】歯ブラシヘッド部の植毛基台面へのフィラメントの植毛は、通常の植毛機をそのまま利用することが可能であり、植毛後、必要に応じて刷毛のトリミングや毛先丸め処理を行なってもよい。植毛後に前記段差部付きのテーパーを形成する場合は、植毛後の刷毛を任意にトリミングしたり、研磨加工などを施した後、前述した加水分解溶液による溶解処理を行えばよい。
【0021】
【発明の実施の形態】以下、本発明の実施の形態について図面を参照して説明する。図1に、本発明に係るフィラメントの第1の実施の形態を示す。図1(a)はフィラメント先端部分の略示拡大図、図1(b)は図1(a)中のB−B位置における略示断面図、図1(c)は図1(a)中のC−C位置における略示断面図である。
【0022】この第1の実施の形態は、フィラメント1を第1の樹脂層2aと第2の樹脂層2bとからなる2重芯構造とし、この2重芯構造になるフィラメント1の先端部分にテーパーを形成したもので、第1の樹脂層2aと第2の樹脂層2bの境界部分に段差部3が形成されている。この例の場合、第1の樹脂層2aとしてPBT(ポリブチレンテレフタレート)を、第2の樹脂層2bとしてPTT(ポリトリメチレンテレフタレート)を用いた。
【0023】図2に、本発明に係るフィラメントの第2の実施の形態を示す。図2(a)はフィラメント先端部分の略示拡大図、図2(b)は図2(a)中のB−B位置における略示断面図、図2(c)は図2(a)中のC−C位置における略示断面図である。
【0024】この第2の実施の形態は、第1の実施の形態と同じく、第1の樹脂層2aと第2の樹脂層2bとからなる2重芯構造としたものであり、第1の実施の形態と異なる点は、先端側をより細く尖ったものにした点である。
【0025】図3に、本発明に係るフィラメントの第3の実施の形態を示す。図3(a)はフィラメント先端部分の略示拡大図、図3(b)は図3(a)中のB−B位置における略示断面図、図3(c)は図3(a)中のC−C位置における略示断面図である。
【0026】この第3の実施の形態は、フィラメント1を第1の樹脂層2a、第2の樹脂層2b、第3の樹脂層2cからなる3重芯構造とし、この3重芯構造になるフィラメント1の先端部分にテーパーを形成したものであり、第1の樹脂層2aと第2の樹脂層2bの境界部分、第2の樹脂層2bと第3の樹脂層2cの境界部分に段差部3a,3bが形成されている。この例の場合、第1の樹脂層2aとしてポリブチレンテレフタレートを、第2の樹脂層2bとしてポリトリメチレンテレフタレートを、第3の樹脂層2cとしてポリエチレンテレフタレートを用いた。
【0027】図4に、本発明に係るフィラメントの第4の実施の形態を示す。図4(a)はフィラメント先端部分の略示拡大図、図4(b)は図4(a)中のB−B位置における略示断面図、図4(c)は図4(a)中のC−C位置における略示断面図である。
【0028】この第4の実施の形態は、フィラメント1の一部にテーパー形状の付いていない円筒形部分がある場合の例であって、フィラメント1を第1の樹脂層2aと第2の樹脂層2bからなる2重芯構造とするとともに、これら2つの樹脂層2a,2bのうち、内芯を構成する第1の樹脂層2aに、加水分解溶液に溶けにくい樹脂を採用し、第1の樹脂層2aについては溶かすことなく元の円柱状のままとしたものである。段差部3は、第1の樹脂層2aと第2の樹脂層2bの境界部に形成されている。この例の場合、第1の樹脂層2aとしてナイロンを、第2の樹脂層2bとしてポリブチレンテレフタレートを用いた。
【0029】図5に、本発明に係るフィラメントの第5の実施の形態を示す。図5(a)はフィラメント先端部分の略示拡大図、図5(b)は図5(a)中のB−B位置における略示断面図、図5(c)は図5(a)中のC−C位置における略示断面図である。
【0030】この第5の実施の形態は、毛先の最先端部分がカップ状に凹んでいる場合の例であって、フィラメント1を第1の樹脂層2a、第2の樹脂層2b、第3の樹脂層2cからなる3重芯構造とするとともに、これら3つの樹脂層2a,2b,2cのうち、内芯を構成する第1の樹脂層2aに、加水分解溶液に溶けやすい樹脂を採用することにより、第1の樹脂層2aの先端部分に凹状のカップを形成したものである。段差部3aと3bは、第1の樹脂層2aと第2の樹脂層2bの境界部、第2の樹脂層2bと第3の樹脂層2cの境界部にそれぞれ形成されている。この例の場合、第1の樹脂層2aとしてポリエチレンテレフタレートを、第2の樹脂層2bとしてナイロンを、第3の樹脂層2cとしてポリブチレンテレフタレートを用いた。
【0031】図6に、本発明に係るフィラメントの第6の実施の形態を示す。図6(a)はフィラメント先端部分の略示拡大図、図6(b)は図6(a)中のB−B位置における略示断面図、図6(c)は図6(a)中のC−C位置における略示断面図である。
【0032】この第6の実施の形態は、前記第3の実施の形態(図3参照)と同様な3重芯構造において、第1の樹脂層2a、第2の樹脂層2b、第3の樹脂層2cの各層の色を異ならしめたものである。この例の場合、第1の樹脂層2aとしてポリブチレンテレフタレートを、第2の樹脂層2bとしてポリトリメチレンテレフタレートを、第3の樹脂層2cとしてポリエチレンテレフタレートを用いた。
【0033】このように多重芯構造になるフィラメントの各層の色を異ならしめた場合、例えば図7に示すように、このフィラメント1を歯ブラシ5のヘッド部6の植毛台面7に植毛すると、刷毛先端部分に色の異なる層2aが現出し、この層の色の変化具合で刷毛の磨耗程度を知ることができ、歯ブラシ取り換え時期の目安(インジケーター)とすることができる。
【0034】なお、上記各実施の形態は、多重芯構造とした場合の例を示したが、本発明は多重芯構造だけに限られるものではなく、単一素材を用いて上記のような形状のフィラメントを形成してもよいものである。
【0035】
【発明の効果】以上説明したところから明らかなように、本発明によれば、次のような優れた効果を奏することができる。
(1)従来のテーパー用毛では充分に隙間進入性が得られなかった部位、例えば、小窩裂溝などの極めて狭い隙間の清掃効率が向上する。また、テーパー用毛形状のバリエーションを容易に広げられるため、清掃の目的部位に合わせたブラシ設計が可能となる。
(2)複雑なテーパー形状を形成できるため、用毛の根元部から中腹部に太く、かつ、テーパー角の小さな形状とし、毛先部分のみを隙間進入に必要なだけのテーパー形状とするができ、刷毛全体としては毛腰が向上し、従来のテーパー用毛のやや不足気味であった刷掃実感および清掃効果を向上させることができる。
(3)毛先をよりソフトにすることで、従来テーパー用毛のチクチクする当たり心地を解消することができ、為害性を感じさせないブラシを提供することができる。
(4)多重芯構造の各層に着色することで、毛先から根元部までの用毛色が順次変化している刷毛を作り出すことができる。このような刷毛により外観差別性の高いブラシを提供することができる。
(5)異なる樹脂からなる多重芯構造のフィラメントを溶解処理することによって製造でき、特別な設備を必要とすることがないので、初期投資を低減することができる。
(6)多重芯構造の各層の材料および各層の厚みを決めれば、従来の薬品加工テーパー用毛と同様の工程で薬品処理することにより、段差部付きのテーパーを形成することができ、極めて安定した品質のフィラメントを容易に製造することができる。
(7)テーパー形状を細かく仕様設定した本発明のフィラメントを採用することによって、隙間進入性と当たり心地に優れると同時に、刷掃実感も高い歯ブラシを提供することができる。
【出願人】 【識別番号】000006769
【氏名又は名称】ライオン株式会社
【住所又は居所】東京都墨田区本所1丁目3番7号
【出願日】 平成13年12月6日(2001.12.6)
【代理人】 【識別番号】100097021
【弁理士】
【氏名又は名称】藤井 紘一 (外1名)
【公開番号】 特開2003−169718(P2003−169718A)
【公開日】 平成15年6月17日(2003.6.17)
【出願番号】 特願2001−372975(P2001−372975)