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【発明の名称】 鞄用シェル
【発明者】 【氏名】山田 幸雄
【住所又は居所】神奈川県横浜市戸塚区柏尾町380番地 児玉化学工業株式会社横浜事業所内

【氏名】小杉 英之
【住所又は居所】東京都台東区上野1丁目1番12号(信井ビル) 児玉化学工業株式会社内

【氏名】伊藤 智樹
【住所又は居所】東京都台東区上野1丁目1番12号(信井ビル) 児玉化学工業株式会社内

【要約】 【課題】素材から発生する匂い(臭気)の拡散を抑制すると同時に確実な防水性を備え、しかも所要の剛性を備えつつ軽量化を図ることができると共に、合成樹脂材を使用しても外観上ソフトな質感を与えることが可能な鞄用シェルを提供すること。

【解決手段】天然繊維aと熱可塑性繊維からなる基材シート1の内側表面に熱可塑性樹脂製防臭シート2を積層し、該基材シート1の外側表面には防水シート3を積層し、加熱プレスにより上記各シートを一体化すると共に所要のシェル形状に成形してなる。
【特許請求の範囲】
【請求項1】 天然繊維と熱可塑性繊維からなる基材シートの内側表面に熱可塑性樹脂製防臭シートを積層し、該基材シートの外側表面には防水シートを積層し、加熱プレスにより上記各シートを一体化すると共に所要のシェル形状に成形してなることを特徴とする鞄用シェル。
【請求項2】 前記基材シートが、天然繊維と熱可塑性繊維とからなるコアシートの表裏両面に熱可塑性樹脂シートを積層一体化してなる請求項1に記載の鞄用シェル。
【請求項3】 前記熱可塑性樹脂シートが、ポリプロピレン単体またはポリプロピレンとポリエチレンテレフタレートからなる請求項2記載の鞄用シェル。
【請求項4】 前記熱可塑性繊維が、ポリプロピレン繊維、ポリエチレン繊維、ポリエステル繊維、ナイロン繊維、アクリル繊維等から選ばれた1種または2種以上を組合わせてなる請求項1または2に記載の鞄用シェル。
【請求項5】 前記防臭シートが透明または半透明である請求項1に記載の鞄用シェル。
【請求項6】 前記防臭シートの上に内面加飾シートを積層してなる請求項1に記載の鞄用シェル。
【請求項7】 前記防水シートが透明または半透明である請求項1に記載の鞄用シェル。
【請求項8】 前記防水シートの上に外面加飾シートを積層してなる請求項1に記載の鞄用シェル。
【請求項9】 前記防水シートがホットメルトフィルムである請求項1に記載の鞄用シェル。
【請求項10】 前記加飾シートが、少なくともその表面に印刷による絵柄模様と織り柄と凹凸模様から選ばれた1種または2種以上を組合わせてなる意匠が施された熱可塑性樹脂繊維または熱可塑性樹脂以外の繊維からなる不織布または織布または合成皮革からなる請求項6または8に記載の鞄用シェル。
【発明の詳細な説明】【0001】
【発明の属する技術分野】本発明は、旅行鞄やアタッシュケースなどの鞄を構成する鞄用シェルに関し、更に詳しくは、互いに対向する面が開口した剛性を有する略箱形状に形成されると共に互いに開閉自在に連結される、旅行鞄やアタッシュケースなどのハードタイプの鞄を構成するのに適した鞄用シェルに関するものである。
【0002】
【従来の技術】従来から、旅行鞄やアタッシュケースなどの外側が剛性を有するハードタイプの鞄は、その鞄用シェルが、熱可塑性樹脂や熱硬化性樹脂または皮革或いは金属板等を用いて形成されている。しかし、特にABS樹脂やアクリル樹脂、ポリプロピレン樹脂等の合成樹脂材を用いて樹脂成形された鞄用シェルは、所要の剛性強度を得ようとすると肉厚を厚くして形成しなければならないので軽量化を図ることが難しく、また、金属板をプレス成形して形成された鞄用シェルは、金属特有の密度により軽量化を図るのに自ずと限界があるだけでなく、代替え用の材料がなく材質の変更も出来なかった。
【0003】
【発明が解決しようとする課題】そこで、剛性強度を損なうことなく軽量化を図るべく、例えば特許第2972739号で開示されたごとき天然繊維入り積層体を使用することが考えられた。しかし、この天然繊維入り積層体を使用すると、シェルの成形工程の加熱による素材(天然繊維)から発生する臭気の問題と、積層体に通気性があるため防水性がないなど、そのままでは鞄用シェルには使用できなかった。本発明はこのような現状に鑑みてなされたものであり、天然繊維からなる素材を使用しても、天然繊維から発生する臭気が鞄の内部に拡散する恐れがなく且つ確実な防水性を備え、しかも、所要の剛性を備えつつ軽量化を図ることができると共に、天然繊維が持つ風合いをそのまま発揮しえるか或いは合成樹脂材を使用しても外観上ソフトな質感を与えることが可能な鞄用シェルを提供せんとするものである。
【0004】
【課題を解決するための手段】斯かる目的を達成する本発明の鞄用シェルは、天然繊維と熱可塑性繊維からなる基材シートの内側表面に熱可塑性樹脂製防臭シートを積層すると同時に、この基材シートの外側表面には防水シートを積層し、加熱プレスにより上記各シートを一体化すると共に所要のシェル形状に成形してなることを特徴としたものである(請求項1)。この際、前記基材シートとしては、天然繊維と熱可塑性繊維とからなるコアシートの表裏両面に熱可塑性樹脂シートを積層一体化してなるものを用いることが好ましい(請求項2)。この場合、前記熱可塑性樹脂シートとしては、ポリプロピレン単体またはポリプロピレンとポリエチレンテレフタレートを用いることが好ましく(請求項3)、前記熱可塑性繊維としては、ポリプロピレン繊維、ポリエチレン繊維、ポリエステル繊維、ナイロン繊維、アクリル繊維等から選ばれた1種または2種以上を組合わせたものを用いることが好ましい(請求項4)。また、基材シートを構成している天然繊維が持つ風合いをそのまま表現したい場合には、前記防臭シートおよび防水シートとして透明または半透明なシートを用い(請求項5、請求項7)、それ以外の人工的装飾を加えたい場合には、前記防臭シートの上に内面加飾シートを積層したり(請求項6)、前記防水シートの上に外面加飾シートを積層し(請求項8)、より高い防水性能を簡便に付与させたい場合には、前記防水シートとしてホットメルトフィルムを用いて前記基材シートと加飾シートとの間に介在設置させる(請求項9)。更に、前記内面加飾シートおよび外面加飾シートとしては、少なくともその表面に印刷による絵柄模様と織り柄と凹凸模様から選ばれた1種または2種以上を組合わせてなる意匠が施された熱可塑性樹脂繊維または熱可塑性樹脂以外の繊維からなる不織布または織布または合成皮革からなるものを用いることが好ましい(請求項10)。
【0005】
【発明の実施の形態】以下、本発明の好適的な実施の形態を説明するが、本発明は図示実施例のものに限定されるものではない。本発明に係る鞄用シェルSは、基材シート1と、その内側(本鞄用シェルが鞄として構成されたときに内側となる方)の表面に積層される防臭シート2と、該基材シート1の外側(本鞄用シェルが鞄として構成されたときに外側となる方)の表面に積層される防水シート3とから基本的に構成され、これらを順次層状に重ね合わせて、金型(図示せず)を用いた加熱プレス(マッチドダイ成形)により、上記各シートを一体化すると共に、所要のシェル形状に成形される。
【0006】基材シート1は、天然繊維aとこの天然繊維を相互に結合させるためのマトリックス材料として作用する熱可塑性繊維とから形成されたコアシート1aを備え、必要に応じてこのコアシート1aの表裏両面に熱可塑性樹脂シート1b,1bを一体的に積層して形成される。この様に、基材シート1をコアシート1aとその表裏両面に積層される熱可塑性樹脂シート1b,1bで形成すれば、より軽量で且つ高剛性を有する基材シート1が得られる。
【0007】基材シート1を形成する天然繊維aとしては、麻、亜麻、木綿、わら、ジュート、サイザル等の天然繊維を挙げることができ、これらから選ばれた1種または2種以上を組合わせたものが使用される。
【0008】また、基材シート1を形成する熱可塑性繊維としては、上記天然繊維aを結合させるためのマトリックス材料として作用し且つ基材シート1の表面に積層されるシートとの接着剤として作用するものであれば格別制限されるものではないが、ポリプロピレン繊維、ポリエチレン繊維、ポリエステル繊維、ナイロン繊維等の熱可塑性樹脂繊維から選ばれた1種または2種以上を組合わせたものが好適に用いられる。
【0009】基材シート1を形成する天然繊維aと熱可塑性繊維は、その配合割合を30:70〜70:30の範囲、好ましくは30:70〜50:50の範囲、更に好ましくは50:50の比とし、これら天然繊維aと熱可塑性繊維が相互に刺し編みされ、加熱により上記熱可塑性繊維が少なくとも部分的に溶融してマトリックスを形成し、天然繊維aを相互に結合させる。その目付けは、目的とする鞄用シェルの大きさや用途等に応じて異なるが、概ね200〜600g/m程度とすることが好ましい。
【0010】基材シート1の最も好ましい形態としては、上記天然繊維aと熱可塑性繊維とでコアシート1aを形成し、このコアシート1aの表裏両面に熱可塑性樹脂シート1b,1bを一体的に積層させたものであるが、コアシート1aの表裏両面に配設される熱可塑性樹脂シート1b,1bは必ずしもなくとも良い。すなわち、熱可塑性繊維が少なくとも部分的に溶融してマトリックスを形成し天然繊維aを相互に結合させてなるコアシート1aの表裏両面に直接防臭シート2および防水シート3を積層しても良い。
【0011】基材シート1を形成する熱可塑性樹脂シート1b,1bは、コアシート1aを構成している熱可塑性繊維と同一の材料を用いるのが好ましく、例えばポリプロピレン単体で用いるか、或いはポリプロピレンとポリエチレンテレフタレートを組合わせたものが好適に用いられる。この熱可塑性樹脂シート1b,1bは、コアシート1aより十分薄く形成され、コアシート1aの表裏両面に重ね合わされ加熱加圧することによりコアシート1aの表裏両面に融着一体化され、その結果、天然繊維aを含む比較的粗の形態を有するコアシート1aが、比較的緻密で堅牢な皮膜(熱可塑性樹脂シート1b,1b)で挟まれたところの加熱成形性に優れた基材シート1が形成される。
【0012】そうして、基材シート1の内側、すなわち本鞄用シェルSが鞄として構成されたときに内側となる方の基材シート1の表面には防臭シート2を積層し、それと反対側の基材シート1の外側、すなわち本鞄用シェルが鞄として構成されたときに外側となる方の基材シート1の表面には防水シート3を積層する。
【0013】防臭シート2は、基材シート1を形成している天然素材から発せられる臭気がかばんの内部に拡散されるのを防止すると同時に防水を図るためのものであり、基材シート1と接着または熱融着しやすく且つ臭気を通さないナイロン樹脂等の熱可塑性樹脂シートから選ばれる。中でも、防水性能に優れたナイロン製シートが好適に用いられる。この際、防臭シート2として透明ないしは半透明なシートを用いた場合には、当該防臭シート2を通して天然繊維aからなる基材シート1が持つ特有の質感・模様(風合い)をそのまま外観させることが可能となるが、当該防臭シート2の上面に更に内面加飾シート4を積層しても良い。この場合、防臭シート2の表裏両面に粘着剤を塗布して、予め内面加飾シート4に貼り合わせておいても良い。
【0014】また、防水シート3は、外部からの防水を図ると同時に外面加飾シート5を用いる場合の接着層となるものであり、基材シート1の表面にあって外部からの防水を図るためのものであればその形態としてペースト状でもフィルム・シート状でもどちらでもよい。防水シート3としてホットメルトフィルムを使用すれば、より一層確実且つ簡便な防水性能を期することができるようになる。また、防水シート3として透明ないしは半透明なものを用いた場合には、当該防水シート3を通して天然繊維aからなる基材シート1が持つ特有の質感・模様(風合い)をそのまま外観させることが可能となるが、当該防水シート3の上面に更に外面加飾シート5を積層しても良い。この場合、外面加飾シート5は、基材シート1との間に介在設置される防水シート3を介して、本鞄用シェルSを加熱プレス(マッチドダイ成形)する際に基材シート1の表面に熱融着される。
【0015】内面加飾シート4および外面加飾シート5としては、熱可塑性繊維または熱可塑性繊維以外の繊維からなる不織布または織布、或いは合成皮革などを用い、少なくともその表面に印刷による絵柄模様と織り柄と凹凸模様から選ばれた1種または2種以上を組合わせてなる所望の意匠が施されたものが好ましい。
【0016】而して、本鞄用シェルSを成形する場合には、予め基材シート1を所要の温度に加熱しておき、マッチドダイ成形金型(図示せず)上に透明または半透明の防水シート(ホットメルトフィルム)3を介して基材シート1を積層させ、さらにその上に透明または半透明の防臭シート2を積層させる。然る後に、マッチドダイ成形金型で加熱しながらプレスすると、積層された各シートが互いに一体化されると共に成形金型の形状に成形されて、その内外両面が基材シート1の天然繊維が持つ特有の質感・模様(風合い)をそのまま外観させる鞄用シェルが形成される。また、加飾シート4,5を用いる場合には、マッチドダイ成形金型上に外面加飾シート5を乗せ、その上に防水シート(ホットメルトフィルム)3を介して基材シート1を積層させ、さらにその上に防臭シート2を介して内面加飾シート4を積層させる。この際、外面加飾シート5の表面に予め防水シート(ホットメルトフィルム)3を張り合わせておく。然る後に、マッチドダイ成形金型で加熱しながらプレスすると、積層された各シートが互いに一体化されると共に、成形金型の形状に成形される。
【0017】
【発明の効果】本発明の請求項1に記載の鞄用シェルによれば、天然繊維と熱可塑性繊維からなる基材シートの内側表面に熱可塑性樹脂製防臭シートを積層し、該基材シートの外側表面には防水シートを積層し、加熱プレスにより上記各シートを一体化すると共に所要のシェル形状に成形してなるので、成形が容易で安価に提供することができると共に、基材シートの内側表面に積層せしめた防臭シートの作用により、軽量化を図るべく基材シートに天然繊維を使用した場合でも、基材シートから発生する臭気の透過を遮断して、鞄の内部に臭気が拡散するのを抑制することが出来る。しかも、外面加飾シートおよび基材シートが傷ついた場合でも、確実な防水性能を維持させることが可能となる。更に、基材シートを天然繊維と熱可塑性繊維から形成してなるので、少なくとも従来のABS樹脂を用いて形成された鞄用シェルと比較して、所要の剛性を備えつつ軽量化を図ることが可能となる。
【0018】また、本発明の請求項2に記載の鞄用シェルによれば、基材シートが、天然繊維と熱可塑性繊維とからなるコアシートの表裏両面に熱可塑性樹脂シートを積層一体化してなるので、天然繊維を含む比較的粗の形態を有するコアシートが、比較的緻密で堅牢な皮膜(熱可塑性樹脂シート)で挟まれた基材シートが形成され、よって、所要の剛性を備えつつ軽量化を図ることが可能となる。この作用効果は、前記熱可塑性樹脂シートとしてポリプロピレン単体またはポリプロピレンとポリエチレンテレフタレートを用い(請求項3)、前記熱可塑性繊維としてポリプロピレン繊維、ポリエチレン繊維、ポリエステル繊維、ナイロン繊維、アクリル繊維等から選ばれた1種または2種以上を組合わせたものを用いる(請求項4)ことにより、より一層顕著なものとなる。しかも、前記の各構成シートを熱可塑性樹脂で形成することにより、素材のリサイクルが容易となると共に、加熱プレス(マッチドダイ成形)により簡便且つ安価に成形することが出来るようになる。
【0019】また、本発明の請求項5または7に記載に係る鞄用シェルのように、防水シート及び/又は防臭シートを透明又は半透明に形成することにより、基材シートを構成している天然繊維が持つ風合いをそのまま表現することが可能となり、従って、防水シートや防臭シートに格別な模様や着色を施さずとも、成形された鞄用シェルの外観が例えばコルク調や木材チップ調等の風合いを呈するようになり、基材シートを構成している繊維に適当な着色を施すことにより石目調等の風合いをも表現することが出来るようになる。その結果、防水シート及び防臭シートの表面に加飾シートを積層する必要もなくなる。
【0020】更に、本発明の請求項10に記載の鞄用シェルによれば、内面加飾シートおよび外面加飾シートが、少なくともその表面に印刷による絵柄模様と織り柄と凹凸模様から選ばれた1種または2種以上を組合わせてなる意匠が施された熱可塑性樹脂繊維または熱可塑性樹脂以外の繊維からなる不織布または織布または合成皮革からなるので、合成樹脂材を主材料として使用しても外観上ソフトな質感を与えることが可能となる。
【0021】しかも、従来の合成樹脂製鞄用シェルでは、突起物等に当たった場合に、シェル表面が白化したり窪んだり甚だしいい時は割れが発生することがあったが、本発明に係る鞄用シェルでは白化が生じず、また、繊維が絡んだ成形品のため窪んでも割れない利点がある。
【出願人】 【識別番号】000180885
【氏名又は名称】児玉化学工業株式会社
【住所又は居所】東京都台東区上野1丁目1番12号 (信井ビル)
【出願日】 平成14年4月10日(2002.4.10)
【代理人】 【識別番号】100109955
【弁理士】
【氏名又は名称】細井 貞行 (外2名)
【公開番号】 特開2003−169709(P2003−169709A)
【公開日】 平成15年6月17日(2003.6.17)
【出願番号】 特願2002−107923(P2002−107923)