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【発明の名称】 宝石を用いた装身具とその石留め方法
【発明者】 【氏名】大久保 弘司

【要約】 【課題】宝石の外形、特に側面形状を美しく見せる装身具と、宝石を簡単かつ確実に石留めする方法を提供すること。

【解決手段】少なくとも2以上の取付支柱を並列し、それぞれの上下両端を支持片に固定して形成される中空体において、前記取付支柱の略中央部内側には係止溝を設けると共に、ファセットカットあるいはカボションカットされた宝石のガードル部を前記係止溝に嵌合して、該宝石を石留めすることを特徴とする装身具。
【特許請求の範囲】
【請求項1】 少なくとも2以上の取付支柱を並列し、それぞれの上下両端を支持片に固定して形成される中空体において、前記取付支柱の略中央部内側には係止溝を設けると共に、ファセットカットあるいはカボションカットされた宝石のガードル部を前記係止溝に嵌合して、該宝石を石留めすることを特徴とする装身具。
【請求項2】 細径の少なくとも2以上の取付支柱を並列し、それぞれの上下両端を支持片に固定して形成される中空体において、前記取付支柱の略中央部内側には突起部と該突起部が凹んだ係止部を設けると共に、ファセットカットあるいはカボションカットされた宝石のガードル部を前記係止部に嵌合して、該宝石を石留めすることを特徴とする装身具。
【請求項3】 少なくとも2以上の湾曲した取付支柱を並列し、それぞれの上下両端を支持片に固定して形成される中空体において、前記取付支柱の略中央部内側には係止溝あるいは突起部と該突起部が凹んだ係止部を設けると共に、ファセットカットあるいはカボションカットされた宝石のガードル部を前記係止溝あるいは係止部に嵌合して、該宝石を石留めすることを特徴とする装身具。
【請求項4】 それぞれの前記取付支柱における前記係止溝あるいは係止部は、前記中空体の軸心方向でその位置が相違し、前記宝石を傾斜して石留めすることを特徴とする前記請求項1乃至請求項3に記載の装身具。
【請求項5】 前記係止溝あるいは係止部が、それぞれの取付支柱の複数箇所に設けられることで、前記宝石を複数個石留めすることを特徴とする前記請求項1乃至請求項3に記載の装身具。
【請求項6】 略中央部内側には係止溝あるいは突起部と該突起部が凹んだ係止部が設けられた少なくとも2以上の取付支柱を並列し、それぞれの下端を下部支持片に固定する工程と、該固定された取付支柱のうち、いずれか一本を除き、それぞれの上端を上部支持片に固定して中空体を形成する工程と、前記係止溝あるいは係止部にファセットカットあるいはカボションカットされた宝石のガードル部を位置させる工程と、前記工程で、上部支持片に一端を固定しなかった一本の取付支柱の上端を上部支持片に固定して、前記係止溝あるいは係止部に前記宝石のガードル部を嵌合する工程により、該宝石を石留めすることを特徴とする装身具の石留め方法。
【発明の詳細な説明】【0001】
【発明の属する技術分野】本発明は、ファセットカットあるいはカボションカットされた宝石を側面方向から観察することができる装身具と、その石留め方法に関する。
【0002】
【従来の技術】従来の代表的な宝石のカッティング形状は、例えば、ダイアモンド1を例にとると、図1に示す如く、上方部分を略円錐台状に形成したクラウン部2と平坦なテーブル部3とからなり、前記クラウン部2の下端周縁に設けたガードル部4の下方には円錐状に形成した傾斜部分をパピリオン部5、該パピリオン部の先端にはキューレット部6が形成される。
【0003】ダイヤモンド1は、光の乱反射をテーブル部3方向から輝きとして観察するもので、かかる反射光は、クラウン部2から入射した光がパビリオン部5で反射し、テーブル部3から射出することにより創出される。したがって、従来、ほとんどの宝石を取付けた装身具は、テーブル部3が表面に露出する方向でダイアモンド1を石留めしている。
【0004】また、宝石の代表的な石留め方法である立て爪を説明すると、図20に示すごとく、ダイアモンド1を支持させる各爪片65に設けた台部66に、パピリオン部5を載置する(図20A)。次いで、爪片65の先端の設けた爪部67をプライヤー80などを使用してクラウン部2方向に倒して圧着する(図20B)。
【0005】仕上げ工程は、クラウン部2方向に圧着した爪部67の先端をやすりなどで研磨して爪部67の大きさや形を整えると共にテーブル部3をできる限り露出する(図20C)。
【0006】しかし、金属材の経年変化より爪部67の圧着力がしだいに弱くなってダイアモンド1がガタついたり、石留め時にダイアモンド1を破損するおそれがあるため、このような石留め方法には熟練した技術が必要とされていた。
【0007】
【発明が解決しようとする課題】前記したごとく、従来の宝石の石留め方法では、宝石のテーブル部を爪部でカシメて取り付けるものが殆んどで、宝石をテーブル部方向から見た美しさだけが強調され、その側面形状の美しさを表現することはできなかった。また、経年変化よる緩みから、宝石のガタ付きを防止する必要などがあり、その石留め方法には熟練した技術が必要とされるなどの多くの問題点があった。
【0008】本発明は、宝石の美しさをテーブル部方向からのみでなく、その外形全体、特に側面方向からの美しさを見せることができる装身具と、その宝石を簡単かつ確実に石留めできる装身具の石留め方法を提供することを目的とする。
【0009】
【課題を解決するための手段】前記課題を解決するため、請求項1の発明は、少なくとも2以上の取付支柱を並列し、それぞれの上下両端を支持片に固定して形成される中空体において、前記取付支柱の略中央部内側には係止溝を設けると共に、ファセットカットあるいはカボションカットされた宝石のガードル部を前記係止溝に嵌合して、該宝石を石留めする装身具であることを特徴とする。したがって、中空体の取付支柱の空間部から、側面形状の美しさを強調して宝石を石留めしたペンダントなどの装身具を提供することができる。
【0010】請求項2の発明は、細径の少なくとも2以上の取付支柱を並列し、それぞれの上下両端を支持片に固定して形成される中空体において、前記取付支柱の略中央部内側には突起部と該突起部が凹んだ係止部を設けると共に、ファセットカットあるいはカボションカットされた宝石のガードル部を前記係止部に嵌合して、該宝石を石留めする装身具であることを特徴とする。したがって、中空体が細径の取付支柱によって形成され、より側面形状の美しさが強調されて、宝石を石留めしたペンダントなどの装身具を提供することができる。
【0011】請求項3の発明は、少なくとも2以上の湾曲した取付支柱を並列し、それぞれの上下両端を支持片に固定して形成される中空体において、前記取付支柱の略中央部内側には係止溝あるいは突起部と該突起部が凹んだ係止部を設けると共に、ファセットカットあるいはカボションカットされた宝石のガードル部を前記係止溝あるいは係止部に嵌合して、該宝石を石留めする装身具であることを特徴とする。したがって、中空体が湾曲した取付支柱によって形成され、側面形状の美しさが強調されて宝石を石留めしつつ、よりデザインのバリエーションに富んだペンダントなどの装身具を提供することができる。
【0012】請求項4の発明は、請求項1乃至請求項3に記載の装身具において、それぞれの前記取付支柱における前記係止溝あるいは係止部は、前記中空体の軸心方向でその位置が相違し、前記宝石を傾斜して石留めすることを特徴とする。したがって、側面形状の美しさを強調しつつ、宝石が傾斜して石留めされたユニークなペンダントなどの装身具を提供することができる。
【0013】請求項5の発明は、請求項1乃至請求項3に記載の装身具において、前記係止溝あるいは係止部が、それぞれの取付支柱の複数箇所に設けられることで、前記宝石を複数個石留めすることを特徴とする。したがって、側面形状の美しさを強調しつつ、複数個の宝石が石留めされたユニークなペンダントなどの装身具を提供することができる。
【0014】請求項6の発明は、略中央部内側には係止溝あるいは突起部と該突起部が凹んだ係止部が設けられた少なくとも2以上の取付支柱を並列し、それぞれの下端を下部支持片に固定する工程と、該固定された取付支柱のうち、いずれか一本を除き、それぞれの上端を上部支持片に固定して中空体を形成する工程と、前記係止溝あるいは係止部にファセットカットあるいはカボションカットされた宝石のガードル部を位置させる工程と、前記工程で、上部支持片に一端を固定しなかった一本の取付支柱の上端を上部支持片に固定して、前記係止溝あるいは係止部に前記宝石のガードル部を嵌合する工程により、該宝石を石留めする装身具の石留め方法であることを特徴とする。したがって、熟練した石留め技術がなくとも、側面形状の美しさを強調しつつ、簡単かつ確実に宝石を中空体に石留めすることができる。
【0015】
【発明の実施の形態】本発明に係る第1の実施の形態である第1装身具を図2〜7に基づいて説明すると、図2は第1装身具の正面図、図3は図1の平面図、図4は図1のA―A線断面図、図5は取付支柱の正面図、図6は上部支持片の平面図、図7は下部支持片の平面図である。
【0016】第1装飾具20は、3本の取付支柱23を並列し、それぞれの上下両端を2枚の支持片26に固定して形成される略三角柱形状の中空体21において、前記取付支柱23の略中央部内側に設けた係止溝25に、ファセットカットされたダイアモンド1のガードル部4を嵌合し、該ダイアモンド1の側面形状を空間部22より観察できるよう石留めしたものである。
【0017】取付支柱23は、例えば、金、白金、プラチナ、銀などの貴金属素材を使用して直線状に形成される棒材であり、その断面は、円形、楕円形若しくは小判形若しくは角形などの種々の任意形状に形成できる。また、それぞれの取付支柱23には、略中央部内側の同位置に、前記ダイアモンド1のガードル部4を嵌合するための係止溝25が設けられている。該係止溝25は、ダイアモンド1のクラウン部2とパピリオン部5の傾斜角度に合わせたV状の切り込みである。
【0018】また、該係止溝25は、それぞれの取付支柱23の内側に直接V状の切り込みを形成するだけでなく、図8、9に示すように、取付支柱30の内側面に略半球体等の突起部31を設け、内側に該突起部31が前記係止溝25略同様の形状で凹んだ係止部32を形成することもでき、かかる場合には、取付支柱30の径を細くすることができるので、ダイアモンド1の側面形状をより露出して、あたかも空中に浮いているように石留めすることができる。
【0019】さらに、該係止溝25の位置は、基本的にはそれぞれの取付支柱23の同じ位置に設けることにより、中空体21内でダイアモンド1を水平方行に石留めし、その側面形状を美しく見せるようにするが、図10に示すように、係止溝25a、25bの位置を中空体21の軸心方向(取付支柱23の長手方向)で相違させることにより、ダイアモンド1を傾斜させることもでき、きわめてユニークな石留めも可能である。
【0020】くわえて、図11に示すように、該係止溝25c、25dをそれぞれの取付支柱23の複数箇所に設けることもでき、かかる場合には、中空体21内に複数個のダイアモンド1を石留めすることもできる。
【0021】支持片26は、図6、7に示すごとく、上部支持片26aと下部支持片26bとからなり、それぞれ3方向の放射状に形成した支持部27の先端に、前記取付支柱23の端部側面を固定するための係止凹部28を設けてある。前記上部支持片26aの上面中央には輪環29を取付け、該輪環29にはネックレスチェーンあるいはイアリング用の耳留め金具を取付けることにより、中空体21をペンダントあるいはイアリング等の装身具として使用することができる。なお、前記支持片26の係止凹部28と取付支柱23の端部との固定は、例えば、ロー付けなどによる。
【0022】本発明に係る第2の実施の形態である第2装身具を図12、13に基づいて説明すると、図12は第2装身具の一部破断した正面図、図13は図12のB―B線断面図である。
【0023】第2装飾具40は、2本の取付支柱43を並列し、それぞれの上下両端を上部支持片46、下部支持片47に固定して形成される中空体41において、ファセットカットされたダイアモンド1のガードル部4を係止溝45に嵌合し、該ダイアモンド1の側面形状を空間部42より観察できるよう石留めしたものである。
【0024】取付支柱43は、全体を略くの字形に湾曲し、中央には太径部44を設け、上下両端方向では細径とし、前記太径部44の内側には同位置にそれぞれ係止溝45を設けたものである。なお、該取付支柱43の素材、前記係止溝45の形状は、第1装飾具20と同様であるので、ここでは説明を省略する。
【0025】また、下部支持片46は、全体を球状に形成し、上部支持片47は前記取付支柱43の上端を折曲げて接合して形成したものである。下部支持片46をこのような形状にすることで、取付支柱43に大きな断発力が生ずる。したがって、2本の取付支柱43によっても、ダイアモンド1を安定して固定できる。
【0026】上部支持片47の上面中央には輪環49を取付け、該輪環にはネックレスチェーン若しくはイヤリング用の耳留め金具を取付けることができることは、第1装飾具20と同様である。
【0027】次に、前記第1、2装身具20、40を形成するためのダイアモンド1の石留め方法について、前記第1装身具20を例にして、図14及び図15を使用して説明する。第1装身具20は、上記の如く3本の取付支柱23と、該取付支柱の上下両端に固着する支持片26とダイアモンド1とにより構成されている。
【0028】ダイアモンド1の石留め方法の第1工程は、3本の前記取付支柱23を並列し、それぞれの下端を下部支持片26bの係止凹部28にロー付けなどの方法で固定する。
【0029】第2工程は、固定した各取付支柱23のうちの一本を残し、それぞれの上端を上部支持片26aの係止凹部28に同様に固定して中空体21を形成する(図14)。
【0030】第3工程は、下端を下部支持片26bに固定したが、上端を上部支持片26aに固定せずに残した1本の取付支柱23aとの上方隙間から、中空体21の空間部22にダイアモンド1を挿入し、該宝石のガードル部4をそれぞれの取付支柱23の係止溝25に嵌合させる(図15)。
【0031】第4工程は、前記取付支柱23aの係止溝25にダイアモンド1のガードル部4を嵌合させると共に、該取付支柱23aの上端を上部支持片26aの係止凹部28方向に押圧つつ、該係止凹部28にロー付けなどの方法で固定する。
【0032】取付支柱23aは、上部支持片に溶接する際、ダイアモンド1のガードル部4を支点にして上部支持片26a方向にややたわむため、ダイアモンド1が空間部21に挿入されると、取付支柱23全体がその弾発力でダイアモンド1を圧着し、ダイアモンド1はガタ付くことがなく簡単かつ確実に中空体21に石留めされる。
【0033】上記の如く、本発明に係る宝石を用いた装身具とその石留め方法をいくつかの実施例に基づいて説明したが、それらをもって本発明を限定するものではなく、この発明の精神を逸脱しない限り、種々の改変を加えることができることはいうまでもない。
【0034】例えば、取付支柱の本数は、前記実施例のような3本あるいは2本の場合に限られるわけではなく、2本以上なら多数本であればあるほど安定した石留めが可能となる。取付支柱の形状についても、例えば、図16に示すように、種々のバリエーションが可能である。
【0035】また、石留めに使用される宝石は、前記実施例で説明されたダイアモンドに限られるわけではない。例えば、ルビー、サファイアなどの貴石、水晶、ひすいなどの半貴石、その他の合成宝石を使用することもできる。その形状についても、ファセットカットのみならず、カボションカットを使用したり、さらには、図17に示すようなミラーボール形状の宝石をより幅広の係止溝により固定する等、種々のバリエーションが可能である。
【0036】
【発明の効果】本発明によれば、取付支柱で形成される中空体にダイヤモンド等の宝石を石留めすることにより、宝石の美しさをテーブル部方向からのみでなく、その外形全体、特に側面方向からの美しさを見せることができる。特に、細径の取付支柱で中空体を形成する場合には、あたかも宝石が空中に浮いたような美しい装身具を提供することができる。また、宝石を傾斜して石留めしたり、複数個を石留めしたりすることができ、従来存在しなかったユニークなデザインの装身具を提供することができる。さらに、少なくとも2以上の取付支柱と支持片とで中空体を形成し、該中空体内の係止溝に宝石のガードル部を嵌合する方法により、熟練した技術を特に必要とせず、誰でも簡単かつ確実に宝石を石留めすることができる。
【出願人】 【識別番号】500506253
【氏名又は名称】株式会社大久保商会
【出願日】 平成14年4月23日(2002.4.23)
【代理人】 【識別番号】100106194
【弁理士】
【氏名又は名称】吉澤 弘朗
【公開番号】 特開2003−310316(P2003−310316A)
【公開日】 平成15年11月5日(2003.11.5)
【出願番号】 特願2002−121526(P2002−121526)