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【発明の名称】 面ファスナー
【発明者】 【氏名】田中 孝明
【住所又は居所】大阪府大阪市北区梅田1丁目12番39号 株式会社クラレ内

【氏名】勝木 俊幸
【住所又は居所】福井県坂井郡丸岡町長畝56番地 マジックテープ株式会社内

【氏名】東中 志年
【住所又は居所】福井県坂井郡丸岡町長畝56番地 マジックテープ株式会社内

【要約】 【課題】面ファスナーの裏面にエラストマー樹脂を塗布することにより、従来の接着剤と同等の接着力を有し、基布自体も柔軟で、ミシンなどの縫製がしやすい面ファスナーを提供する。

【解決手段】基布(2)に織り込まれた立設繊維からなる係合素子(1)を含む面ファスナーであって、裏面にエラストマー樹脂を含む接着剤層(3)を塗布する。前記エラストマー樹脂は、例えばウレタン系、ポリアミド系、ポリエステル系、ポリオレフィン系などの熱可塑性エラストマーである。一例として係合素子部(1)の幅は3mm以上、その両側の縫い代は各3mm以上、全体の幅は9mm以上が好ましい。これにより柔軟で縫製しやすく、全体を細幅にすることもできるので、衣類用スライドファスナーの代替品として使用しやすい。
【特許請求の範囲】
【請求項1】 基布に織り込まれた立設繊維からなる係合素子を含む面ファスナーであって、前記基布の係合素子とは反対の面にエラストマー樹脂を含む接着剤層が形成されていることを特徴とする面ファスナー。
【請求項2】 前記エラストマー樹脂が、熱可塑性エラストマーである請求項1に記載の面ファスナー。
【請求項3】 前記エラストマー樹脂が、熱可塑性エラストマーであって、かつ後硬化させた樹脂である請求項1に記載の面ファスナー。
【請求項4】 前記エラストマー樹脂の100%モジュラスが40kgf/cm2以下である請求項1に記載の面ファスナー。
【請求項5】 前記面ファスナーのJIS−L−1096「ハートループ法」における剛軟度が40〜60mmである請求項1に記載の面ファスナー。
【請求項6】 前記係合素子の両外側の幅方向に平坦部を有し、前記平坦部の幅が、係合素子部分の幅よりも広い請求項1に記載の面ファスナー。
【発明の詳細な説明】【0001】
【発明の属する技術分野】本発明は、布製の面ファスナーの改良に関し、さらに詳しくは基布が柔軟で風合いの良い布製面ファスナーに関する。
【0002】
【従来の技術】面ファスナーとして広く使用されている面ファスナーは、合成繊維からなる基布の1面にフック状係合素子またはループ状係合素子またはその両方を立設し、係合素子の両側には通常係合素子巾より狭い平坦部が設けられている(実用新案登録第2500904号明細書)。この平坦部は、通常縫製帯域として利用され、さらに係合素子の無用なはみ出しを防ぐ役割を有する。また、基布を構成する繊維と係合素子を構成する繊維を接着するために基布の裏面に接着剤層を設けている。この接着剤は長期間の使用に耐えることおよび多くの洗濯にも耐えるために、反応硬化型の強力な接着剤が使用されている。
【0003】
【発明が解決しようとする課題】近年、面ファスナーは各種の衣類の係止部材としてボタン類に代えて用途を広げており、薄手の衣料や肌着に近い衣料にも使用されている。かかる用途においては、面ファスナーが縫製しやすく、柔軟で風合いに優れることが必要とされる。さらに、従来スライドファスナーが使われていた部分に、面ファスナーを使用する場合、柔軟でないと薄手の衣料や肌着に近い衣料に適用できないため、柔軟でかつ細幅な面ファスナーが求められていた。
【0004】さらに、面ファスナーの縫製については、ミシン縫製する場合、縫製位置の目安となる平坦部が狭くて、ミシンの布押えが係合素子部に掛かり真直ぐ縫い難く、さらに係合素子がミシンの布押えで潰される問題がある。また、面ファスナーの風合いが硬いと薄手の衣料には向かず、特に平坦部の角は剛直なために肌が触れると痛く、縫製針はやや太い番手のものを使用しないと縫製しずらいという問題があった。
【0005】面ファスナーの柔軟性を改善するためには、基布自体の柔軟性を高めることが考えられるが、たとえ基布の柔軟性を改善しても裏面の接着剤層が硬質であると十分な柔軟性は得られない。
【0006】本発明は、前記従来の問題を解決するため、従来の面ファスナーの接着剤と同等の接着力を有するとともに、接着剤として使用したとき基布自体も柔軟である面ファスナーを提供することを第1番目の目的とする。本発明の第2番目の目的は、ミシンなどの縫製がしやすい面ファスナーを提供することである。
【0007】
【課題を解決するための手段】前記目的を達成するため本発明の面ファスナーは、基布に織り込まれた立設繊維からなる係合素子を含む面ファスナーであって、前記基布の係合素子とは反対の面にエラストマー樹脂を含む接着剤層が形成されていることを特徴とする。
【0008】前記エラストマー樹脂は、熱可塑性エラストマーが好ましい。熱可塑性エラストマーとしては、ウレタン系、ポリアミド系、ポリエステル系、ポリオレフィン系などが好ましい。また、後硬化タイプのものが好ましい。このような後硬化(後架橋)タイプのエラストマーとしては、ソフトセグメントにポリエステル、ポリエーテル又はポリアミドを用い、ハードセグメントにウレタン構造を導入してあり、基布の裏側にコーティングした後、室温又は加熱により後硬化させる。
【0009】前記エラストマー樹脂の100%モジュラスが40kgf/cm2以下であることが、柔軟性を確保するために好ましい。また、前記面ファスナーのJIS−L−1096「ハートループ法」における剛軟度は40〜60mmであることが好ましい。前記の範囲であれば柔軟性が良好である。40mm未満では従来例のように硬い基布となる。60mmを越えると軟らかすぎて変形しやすくなる。
【0010】また、基布(2)の平坦部(縫い代)の幅は面ファスナーの係合素子部の幅よりも広いことが好ましい。一例として係合素子部の幅は3mm以上、前記係合素子部の両側の縫い代は各3mm以上、全体の幅は9mm以上が好ましい。このようにすると縫製しやすく、係合素子は細い幅にすることもできるので、衣類用スライドファスナーの代替品として使用しやすい。
【0011】
【発明の実施の態様】以下図面を用いて説明する。図1は本発明の一実施形態における面ファスナーの概略断面図である。図1に示すように、基布2に織り込まれた立設繊維からなる係合素子1を含み、裏面にエラストマー樹脂を含む接着剤層3が形成されている。接着剤層3は基布2に含浸された状態となっている。係合素子1はフック状係合素子4,4’を立設して形成されている。あるいは図2Aに示すように、マルチフィラメント糸からなるループ状係合素子5、図2Bに示すモノフィラメント糸のループ側部をカットしたフック状係合素子4、及び図2Cに示す「きのこ状」係合素子6から選ばれる少なくとも一つから形成されていても良い。前記において、ループ状係合素子5は、公知の方法によって経糸と緯糸により基布を織成すると同時に、係合素子を構成するマルチフィラメント糸を織機に供給して作成することができる。フック状係合素子4は、ループ状にしたモノフィラメント糸の側部を部分的にカットすることにより形成できる。きのこ状係合素子6は、立設繊維をカットして先端を溶融することにより形成できる。
【0012】本発明の基布を構成する糸および係合素子を構成する糸は、ポリアミド系繊維、ポリエステル系繊維およびポリオレフィン系繊維などの熱可塑性合成繊維が使用できる。
【0013】また、面ファスナーを構成する繊維は熱可塑性繊維であれば特に制限なく使用でき、フック状係合素子としては直径0.1〜0.4mm、通常0.12〜0.25mmの合成繊維のモノフィラメント糸が使用できる。またループ状係合素子としては直径20〜100ミクロン(μm)、通常直径35〜95ミクロン(μm)の合成繊維の単糸を2〜50本まとめたマルチフィラメント糸が好適に用いられる。さらに基布を構成する繊維としては直径10〜50ミクロン(μm)、通常、直径15〜40ミクロン(μm)の合成繊維の単糸を2〜50本まとめたマルチフィラメント糸が好適に用いられる。
【0014】フック状係合素子の高さは1.3〜4.0mmの範囲、ループ状係合素子の高さは1.5〜4.0mmの範囲がそれぞれ好適である.フック状係合素子とループ状係合素子を併用する面ファスナーにおいては、両係合素子の高さを略等しくするか、一方を他方よりわずかに高く設定する。特にループ状係合素子をフック状係合素子より高くすると、表面の感触を柔らかくし、フック状係合素子と他の繊維素材との不要な係合を防ぐことができるので好ましい。基布面上に形成される係合素子は、20〜200個/cm2の範囲が好ましい。係合素子部分の立設巾は、1〜6mmが好ましく、平坦部の巾は片側3〜10mmが好ましく係合素子部分の両側に設けられるが、これに限定されるものでない。
【0015】面ファスナーの基布を構成する繊維と係合素子の繊維は、製造工程で繊維が移動して係合素子の位置が変化しないようにするため、また製品として使用される際に係合素子が移動したり脱落しないようにするために、繊維を接着固定するために面ファスナーの裏面に接着剤層を付与する。該接着剤としては耐久性、耐洗濯性に優れた接着剤が好ましく、反応硬化型樹脂接着剤が使用されてきた。従来の接着剤は接着力および耐久性を重視したため、硬度の高いもので、100%モジュラスが50kgf/cm2以上であった。このようにモジュラスが高い接着剤層を付与した面ファスナーは基布を薄く柔軟にしても、面ファスナー全体を柔軟にするのは困難であった。
【0016】本発明で使用する接着剤は、その100%モジュラスが40kgf/cm2以下、より好ましくは100%モジュラスが10〜30kgf/cm2のものである。かかる接着剤樹脂の具体例としては下記のようなものが挙げられる。
(1)ウレタン系熱可塑性エラストマー:大日精化工業社製商品名”レザミンP”、日本ミラクトン社製商品名”ミラクトン”、大日本インキ化学工業社製商品名”パンデックス”、日本ポリウレタン工業社製商品名”パラプレン”、ダウケミカルジャパン社製商品名”ペレセン”、武田バーディシュウレタン工業社製商品名”タケラック”、”エラストラン”、バイエル社製商品名”Desmopan”、”Texin”、協和発酵工業社製商品名”エステン”、”エスタロック”等。
(2)ポリアミド系系熱可塑性エラストマー:東レ社製商品名”Pebax”、ダイセルヒュルス社製商品名”ダイアミド・PAE”、大日本インキ化学工業社製商品名”グリラックスA”、三菱エンジニアリングプラスチック社製商品名”ノバミットPAE”、宇部興産社製商品名”UBE・PAE”等。
(3)ポリエステル系系熱可塑性エラストマー:東レ・デュポン社製商品名”Hytrel”、東洋紡績社製商品名”ペルプレンP.S”、大日本インキ化学工業社製商品名”グリラックスE”等。
(4)ポリオレフィン系系熱可塑性エラストマー:三井化学社製商品名”ミラストマー”、”グドマー”、住友化学工業社製商品名”住友TPE”、三井化学社製商品名”サーモラン”、”SPX”、住友ベークライト社製商品名”スミフレックス”等。
【0017】他の例としては、ポリエーテル−ウレタン系の大日精化工業社製商品名”レザミンUD”もある。
【0018】前記エラストマーの好ましい塗布量は、20〜70g/cm2の範囲であり、より好ましくは30〜50g/cm2の範囲である。
【0019】本発明の面ファスナーは、各種の形態で使用できる。その1例は、面ファスナーの平坦部を広く設けているので、取付生地の内側に平坦部を縫い込むことが可能となり、平坦部の角が肌に触れなくできる。これを図4、図5(a)(b)によって説明する。図4に示すように従来の面ファスナーは、平坦部2が約2mmであり、縫製するときに係合素子1が邪魔をしてミシン掛けが困難であった。これに対して本実施形態では図5(a)(b)に示すように、平坦部2を約3〜5mmと幅広くしたので、ミシン縫製にも都合よくすることができた。すなわち、図5(a)に示すように係合素子1a,1bの外側の平坦部2a,2cの幅を広くしたのである。また中央に平坦部2bを形成しても良い。このようにするとツーストライプ状の面ファスナーとすることができる。図5(b)はワンストライプの例で、係合素子1の両側に幅広の平坦部2を設けてある。また、図5(a)(b)に示す面ファスナーは、従来の線ファスナーのような使い方もできる。
【0020】また、一例として全幅を9mm程度とすれば、シム(歯務)をかしめるスライドファスナーの代わりに用いることができる。
【0021】
【実施例】以下本発明を実施例により説明する。ただし本発明は以下の実施例に限定されるものではない。
【0022】(面ファスナーの剛軟度測定法)下記の実施例において、面ファスナーの剛軟度は、JIS−L−1096 ハートループ法に順じて測定する。この測定方法は図3に示すとおりであり、長さ25cmのサンプルをファスナー面を外側にして両先端部をピンチ幅(X)2.5cmでつかみ、つかみ部の上からハートの底部までの長さ(ループ長さY)を測定する。
【0023】(実施例1)面ファスナーの基布を構成する経糸および緯糸として、ナイロン6の直径38ミクロン(μm)の合成繊維の単糸を12本まとめたマルチフィラメント糸を用い、さらに係合素子となるフック糸として、ナイロン66の直径0.16mmの合成繊維のモノフィラメント糸を用いて基布を製編織した。フック用ループは60個/cm2の密度で、5mm巾になるよう立設し、両側平坦部を設けた片側巾を3mmとして面ファスナー用テープを作成した。
【0024】得られた面ファスナー用テープの基布裏面に100%モジュラスが25kgf/cm2であるポリウレタンエラストマー樹脂を塗布し乾燥した。このポリウレタンエラストマー樹脂は、大日精化工業社製商品名”レザミンUD”であり、主材100重量部、架橋剤10重量部を混合し、これを合計した量30重量%の割合で、トルエン又は酢酸エチルからなる溶媒70重量%に溶解し、コーティング液とした。このコーティング液を基布の裏面にドクターブレードを用いて乾燥重量40g/cm2となるようにコーティングした。その後、80℃で5分間溶媒を飛ばして乾燥し、40℃で2日間エージングさせて室温硬化させた。
【0025】次に、フック用ループの側糸の一部を切断除去してフック状係合素子を作成し、面ファスナーを得た。この面ファスナーの断面図を図1に示し、名面図を図5(a)に示す。図5(a)において、係合素子1a,1bの幅は4mm,平坦部2a,2cの幅は4mm,また中央の平坦部2b幅は8mm,トータルの幅は24mmであった。
【0026】得られた面ファスナーの剛軟度は50mmであった。この面ファスナーを薄手シャツのポケットフラップに使用したところ、縫製し易く、柔軟で、生地との違和感がなく、簡易係止として良好であった。また、従来の面ファスナーの接着剤と同等の接着力及び耐久性を有していた。
【0027】また、図5(b)の例はワンストライプの例で、係合素子1が3mm、その両側の平坦部2が各3mmで、全幅9mmであった。この面ファスナーの剛軟度は50mmであった。この面ファスナーを薄手シャツのポケットフラップに使用したところ、縫製し易く、柔軟で、生地との違和感がなく、簡易係止として良好であった。また、従来の面ファスナーの接着剤と同等の接着力及び耐久性を有していた。
【0028】(比較例1)実施例1と同様の糸使いで、係合素子部の巾8mm、片側平坦部の巾2mmの面ファスナー用テープを製編織した後、基布裏面に100%モジュラスが50kgf/cm2であるポリウレタン樹脂を塗布し乾燥後、実施例1と同様にして面ファスナーを得た。得られた面ファスナーの剛軟度は、38mmであった。得られた面ファスナーを実施例1と同様に薄手のシャツのポケットフラップに使用したところ、平坦部が狭くて縫製し難く、風合いが硬く違和感が生じるものとなった。
【0029】
【発明の効果】以上説明したとおり、本発明の面ファスナーは、風合いが柔らかく、縫い糸を通しやすくする線状布製面ファスナーを提供し、薄手の衣料や肌着に近い衣料などの柔軟性を必要とする布製面ファスナーを提供することができる。さらに、ミシン縫製しやすい面ファスナーを提供できる。
【出願人】 【識別番号】000001085
【氏名又は名称】株式会社クラレ
【住所又は居所】岡山県倉敷市酒津1621番地
【出願日】 平成14年4月5日(2002.4.5)
【代理人】 【識別番号】110000040
【氏名又は名称】特許業務法人池内・佐藤アンドパートナーズ
【公開番号】 特開2003−289910(P2003−289910A)
【公開日】 平成15年10月14日(2003.10.14)
【出願番号】 特願2002−104246(P2002−104246)