| 【発明の名称】 |
スライドファスナー |
| 【発明者】 |
【氏名】松田 義雄
【氏名】仲田 佳史
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| 【要約】 |
【課題】スライドファスナーを生地に縫着するにあたっても、その縫着線が蛇行せず、同時に同縫着線を可能な限りエレメントに近づけて設定でき、しかも上下止部のファスナーテープヘの取付強度を確保して、本来の機能が損なわれない止部を備えたスライドファスナーを提供する。
【解決手段】熱可塑性合成樹脂材料からなる止部(13,15,23,35) を有する繊維製のスライドファスナー(10,20,30)にあって、前記ファスナーテープ(11,21,31)は前記ファスナーエレメント列(12,22,32)の少なくともファスナーテープ内側寄りの端部に隣接して粗目組織領域(B) を有している。前記止部(13,15,23,35) のファスナーテープ内側寄り端部が前記粗目組織領域(B) に配されるとともに、同粗目組織領域(B) 内においてファスナーテープ(11,21,31)の地組織に融着されて、従来の止部のテープ幅方向の長さを短く設定するため、縫製時にミシンフットと干渉しいため、縫着線をエレメント列(12,22,32)に近づけても蛇行せず、止部の端部が粗目組織領域(B) の地組織に融着して強固に固着される。 |
【特許請求の範囲】
【請求項1】 繊維製ファスナーテープの一側縁に沿って取り付けられたファスナーエレメント列の端部に熱可塑性合成樹脂材料からなる止部を有するスライドファスナーにあって、前記ファスナーテープは前記ファスナーエレメント列の少なくともファスナーテープ内側寄りの端部に隣接して粗目組織領域を有してなり、前記止部のファスナーテープ内側寄り端部が前記粗目組織領域に配されるとともに、同粗目組織領域内においてファスナーテープの地組織に融着されてなることを特徴とするスライドファスナー。 【請求項2】 前記ファスナーテープが経編組織から構成され、前記粗目組織領域がエレメント取付領域のファスナーテープ内側端のウェールと同ウェールの内側に隣接するウェールとの間に形成される粗目組織領域であることを特徴とする請求項1記載のスライドファスナー。 【請求項3】 前記ファスナーテープが織組織から構成され、前記粗組織領域がエレメント取付領域のファスナーテープ内側端組織に隣接する粗目組織領域であることを特徴とする請求項1記載のスライドファスナー。 【請求項4】 前記止部の粗目組織領域内におけるファスナーテープの地組織との融着が超音波加熱又は高周波加熱によることを特徴とする請求項1記載のスライドファスナー。 【請求項5】 前記止部が射出により成形され、同止部の粗目組織領域内における端部のファスナーテープの地組織への融着が前記射出成形時になされることを特徴とする請求項1記載のスライドファスナー。 【請求項6】 前記止部が下止部であり、同下止部の略中央部表面には、上記ファスナーエレメント列を跨いでテープ幅方向に延びる隆起部を有してなることを特徴とする請求項1記載のスライドファスナー。 【請求項7】 前記止部が下止部であり、同下止部の素材は2層以上の積層フィルム片からなり、少なくともその最下層の材質が前記ファスナーテープの構成繊維と接着性を有してなることを特徴とする請求項1記載のスライドファスナー。 【請求項8】 前記止部が下止部であり、同下止部の素材は2層以上の積層フィルム片からなり、少なくともその最上層の材質が他の層よりも融点の高い材質からなることを特徴とする請求項1記載のスライドファスナー。
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【発明の詳細な説明】【0001】 【発明の属する技術分野】本発明はスライダーの止部に特徴を有するスライドファスナーに関する。 【0002】 【従来の技術】スライドファスナーは、一対のファスナーテープと、同テープの相対する側縁に沿って多数取り付けられ噛合分離する噛合エレメントと、同噛合エレメントの噛合・分離機能をもつスライダーと、同スライダーの操作端を規制する止部とから構成されている。前記ファスナーテープとして、一般的には経糸及び緯糸を織成することにより得られる織物テープを使用することが多く、経編組織による経編テープが使用されはじめている。 【0003】従来、スライドファスナーの前記止部には、ファスナーテープに刺通可能な爪を備え、その爪がテープを刺通しながらエレメントを包み込んで取り付けられる金属製の止具が一般的に用いられていた。しかるに、この金属製止具は前記爪が肌と接触して傷を負わせたり、糸と接触して糸の引き寄せや糸切れを起こしたりする恐れがあり、これを未然に防止することが必要となっている。そのため、止具の構造自体を改良し、前述の不具合を生じないようにしている。その一方で、例えば実公昭63−33529号公報や実公平5−31932号公報にも開示されているように、前記止部を合成樹脂材料から構成することも提案されている。 【0004】前記実公昭63−33529号公報は、ファスナーエレメントの一面側から熱可塑性の合成樹脂フイルムを前記ファスナーエレメントと一体に溶着した下止具に関する。その下止具本体に続いて裾部が連設され、同裾部においてファスナーテープと合成樹脂フイルムとの接着面が凹凸とされ、その裾部に前記合成樹脂フイルムの素材が密に存在する高密度部と、粗に存在する低密度部とを有している。 【0005】このように、裾部のファスナーテープと合成樹脂フイルムとの接着面を凹凸としたことにより、前記接着面が平坦な場合に比べると接着面積が広く、接着強度が高くなる。また、裾部のファスナーテープ部に合成樹脂フイルム素材が密に存在する高密度部と粗に存在する低密度部とを形成したため、前記高密度部によりファスナーテープと合成樹脂フイルムとの接着強度がさらに高くなり、しかも前記低密度部により裾部の柔軟性が保持され、合成樹脂フイルムがファスナーテープから剥離することがなく、止め部が裾部において折損することもないというものである。 【0006】一方、上記実公平5−31932号公報は、左右のファスナーテープの対向する側縁に取り付けた各ファスナーエレメント列の一端部に連接して取り付けられる、断面U字形の熱可塑性合成樹脂製の上止具に関する。ファスナーテープの各ファスナーエレメント列に沿った内側に貫通孔を形成し、同貫通孔を閉塞するように断面U字形の上止具の末端部を延設し、同末端部を前記貫通孔を介して溶融一体化するとともに、その溶融一体化部分を中心として前記反転部がスライダーの摺動方向に揺動可能に形成している。 【0007】かかる構成により、特に、スライダーのフランジが当接する上止具の末端部がファスナーテープに設けられた貫通孔を介して強固に溶融一体化されるとともに、溶融樹脂の一部がファスナーテープ内に浸透固定されると同時に、表裏脚部および反転部が芯部を挟持しているので、スライダーの摺動動作によって、上止具がいかに強い衝撃を受けたとしても、剥離したり、脱落するという現象は起こらず、長期にわたって安定した停止機能が発揮されるというものである。 【0008】さらに、上止具の反転部が、スライダーの摺動方向に揺動可能に構成されているため、反転部にスライダーの柱部が当接すると、反転部はスライダーの進行方向へ変位し、その後で上止具の末端部にスライダーのフランジが当接するので、スライダーによる上止具の脚部に加えられる衝撃が緩和され、衝撃に伴う損傷を未然に防ぐ効果があるというにある。 【0009】 【発明が解決しようとする課題】ところで、既述したように、近年、特に衣服に用いられるスライドファスナーのファスナーテープに経編テープを使おうとする機運が高まりつつある。これは、スライドファスナーを衣服に縫い付ける場合、織成によるファスナーテープは一般に織組織が緻密で延びが無く、剛直性が大きいため、ファスナーテープを薄く柔らかな生地に縫い付けたり、ファスナーテープを湾曲させながら生地に縫い付けたりすると、縫い付け後の製品が波打ち状になりやすく、これを防ぐためには縫製に対する相当の技術と熟練とが要求されるがためである。経編組織によるファスナーテープは、その編組織からある程度の伸縮が可能であるため、ファスナーテープの形態を生地に合わせて変形させることが容易となり、薄い生地への縫い付けや、生地に湾曲状に縫い付けたとしても波打ち状となることがない。 【0010】衣服に縫い付けられるスライドファスナーに要求されることは、既述したように、まず安全なことである。また、スライドファスナーが縫着された製品に対してスライドファスナー、殊にそのファスナーテープの存在を目立たないようにすることが必要である。特に、スカートやアンダーウェアなど女性用被服では、スライドファスナーの存在が外から認識しにくくなっていることが強く要求される。そのため、スライドファスナーの生地に対する縫着は、外観からファスナーテープがほとんど見えないように、可能な限りエレメントに近づけて行われるのが現状である。 【0011】しかるに、例えば上記実公昭63−33529号公報の図1〜図3や実公平5−31932号公報の図3〜図6にも示されているように、従来の上下止具の固着端部は共にエレメントの上下脚部を連結する連結部の端面よりもファスナーテープの内側に大きく延在するため、スライドファスナーを生地に縫製する際にミシンフットが上下止部の固着端部に接触して、ミシンフットがスライドファスナーの幅方向に位置ずれを起こし、縫製ラインを蛇行させてしまい、、その蛇行が目立って製品の美観を損なうばかりでなく、薄手の生地ではその蛇行部分でつった状態となり、更に美観を損なうという問題が発生した。 【0012】上下止具の本来の機能は、既述したとおり、スライドファスナーを開閉操作するスライダーの上下位置を規定し、スライダーが抜け取れないようにするためのものであるが、この上下止具の存在に起因して、スライドファスナーを取り付けられた生地の外観を損なうようなことは厳にあってはならない。 【0013】本発明は、こうした従来の課題を解決すべくなされたものであり、その目的はスライドファスナーを生地に縫着するにあたっても、その縫着線が蛇行せず、同時に同縫着線を可能な限りエレメントに近づけて設定でき、しかも上下止部のファスナーテープヘの取付強度を確保して、本来の機能も損なわれない止部を備えたスライドファスナーを提供することにある。 【0014】 【課題を解決するための手段及び作用効果】かかる目的は、請求項1〜9に係る発明により効果的に達成される。請求項1に係る発明は、繊維製ファスナーテープの一側縁に沿って取り付けられたファスナーエレメント列の端部に熱可塑性合成樹脂材料からなる止部を有するスライドファスナーであって、前記ファスナーテープは前記ファスナーエレメント列の少なくともファスナーテープ内側寄りの端部に隣接して粗目組織領域を有しており、前記止部のファスナーテープ内側寄り端部が前記粗目組織領域内に配され、同粗目組織領域内においてファスナーテープの地組織に融着されていることを特徴とするスライドファスナーにある。 【0015】通常、スライドファスナーの繊維製ファスナーテープの一側縁部はファスナーエレメントの取付領域とされ、他のテープ本体領域と比較して緻密な密度で構成されている。本発明にあっては、前記エレメントの取付領域とテープ本体との間、具体的にはエレメント脚部の先端とテープ本体領域との間に粗な密度を有する粗目組織領域を形成している。止部を形成するにあたって、本発明では止部のファスナーテープ内側よりの端部を、エレメント脚部の先端に近接する前記粗目組織領域までと制限して、止部のテープ幅方向の寸法を従来より極端に短くしている。同時に、前記止部を溶融状態でファスナーテープ上の止部形成部に付与して、少なくとも前記粗目組織領域に存在する地組織の構成糸に融着一体化させている。このとき、止部の溶融樹脂部分は粗目組織の空隙を通って同組織内にある構成糸に融着して強固に固着される。 【0016】このように止部のテープ幅方向の寸法を規定することにより、止部がコンパクトになり、スライドファスナーを生地に縫着するとき、止部の存在領域においてミシンフットと接触することがなく、縫着線を局部的に蛇行させることもなくなり、スライドファスナーの取付形態が安定化するに止まらず、外観的にも見栄えのよい製品が得られる。 【0017】請求項2に係る発明は、前記ファスナーテープが経編組織から構成され、前記粗目組織領域がエレメント取付領域のファスナーテープ内側端のウェールと同ウェールのテープ内側に隣接するウェールとの間に形成される粗目組織領域であることを特徴としている。この粗目組織領域の編糸としては、例えばウェール間を連結する緯挿入糸、トリコット編糸のシンカーループ、二目編糸のシンカーループなどを挙げることができ、これらの編糸により構成されるウェール間の編組織にはウェール自体に形成される空隙よりも大きな空隙が存在し、溶融樹脂の地組織内への侵入が確実になされる。 【0018】請求項3に係る発明は、前記ファスナーテープが織組織から構成され、前記粗組織領域がエレメント取付領域のファスナーテープ内側端組織に隣接する粗目織領域であることを特徴としている。この粗目織領域は、例えば経糸密度をエレメント取付領域及びテープ本体領域の経糸密度よりも低く設定することにより形成することができ、同粗目織領域における溶融樹脂は地組織内への侵入が確実になされる。 【0019】請求項4に係る発明は、前記止部の粗目組織領域内におけるファスナーテープの地組織との融着が超音波加熱又は高周波加熱によることを特徴としている。超音波加熱及び高周波加熱は、自己発熱による加熱であり、その加熱部位は溶着させようとする2部材の密着面に集中する。そのため、溶着部分以外の領域では溶着部材の物性に変化せず、溶着部分の脆化も少ない。しかも、溶着後の2部材の表面露呈部分は超音波ホーン又は高周波電極であるアンビルの形態に沿った美麗な仕上げ面となる。また、本発明の溶着対象である止部とファスナーテープのように小寸法の溶着の場合には2〜5秒程度の短時間で溶着が完了するため、加工生産性が著しく向上する。 【0020】請求項5に係る発明は、前記止部が射出により成形され、同止部の粗目組織領域内における端部のファスナーテープの地組織への融着が前記射出成形時になされることを特徴としている。上述の超音波加熱又は高周波加熱による場合には、止部は予め用意されたフィルム片や樹脂片からなる止部の素材を止部の形成部位に溶着して一体化するものであるが、本発明では金型内にファスナーテープを挿入してエレメントと共に止部を成形するとき、その止部のテープ幅方向の寸法を上述のように粗目組織領域内に配されるよう規制して成形するものである。この成形時に止部の端部成形樹脂は上記粗目組織領域内に侵入し、同組織の内部で各構成糸に融着一体化される。 【0021】請求項6に係る発明は、前記止部が下止部であり、同下止部の略中央部表面には、上記ファスナーエレメント列を跨いでテープ幅方向に延びる隆起部を有していることを特徴としている。一般の下止部は、既述したとおり、その左右のエレメントを被覆する被覆部である本体部分からテープ幅方向に延びてファスナーテープに固着される延設部分が長く、且つある程度の厚みをもつため、スライダーを下方に摺動させてスライドファスナーを開くとき、スライダーのフランジが前記下止部に当接し、それ以上は下方に摺動できなくなる。 【0022】しかしながら、本発明のごとく、下止部のテープ幅方向の長さが小さくなり、特にその肉厚も薄く形成しようとすると、前記スライダーのエレメント案内溝内に嵌入して、引手を下方に強く引くとスライダーがエレメント列から抜け出てしまうという不具合が生じる。そこで本発明にあっては、下止部の略中央部表面に、上記ファスナーエレメント列を跨いでテープ幅方向に延びる隆起部を形成して、スライドファスナーを開くためにスライダーを下方に摺動させると、下止部の一部がスライダーのエレメント案内溝内に嵌入するが、前記隆起部がスライダーの上下翼片の少なくとも後口端面に当接して、下止部の一部をスライダーにのエレメント案内溝に嵌合させた状態で、それ以上は摺動できないようにする。 【0023】請求項7及び8に係る発明は、前記下止部の素材は2層以上の積層フィルム片からなり、少なくともその最下層の材質が前記ファスナーテープの構成繊維と接着性を有しているか、或いは前記2層以上の積層フィルム片の少なくともその最上層の材質が他の層よりも融点の高い材質からなることを特徴としている。 【0024】前記下止部に使われる材質とファスナーテープに使われる材質とが異なることがある。例えば、下止部には融点の低い変性ポリエステルフィルムを使い、ファスナーテープの構成糸として変性ポリエステルフィルムよりも融点の高いナイロンを使ったりする。ところが、ポリエステル樹脂とナイロン樹脂とは接着性能が低く、たとえ変性ポリエステル樹脂をナイロン樹脂に溶着させたとしても、その接着性能が低いため剥離してしまうことがある。 【0025】請求項7に係る発明は、下止部とファスナーテープが異材質からなり、特に接着性能が低いときに好適であり、溶着する下止部素材の少なくとも最下層にファスナーテープの構成糸と接着性に優れた材質を配するようにしている。また、請求項8に係る発明では、下止部とファスナーテープが同質の材料からなる場合に好適であり、特にファスナーテープの構成糸を溶融させずに、下止部のみを前記構成糸に溶着させる場合に使うことか好ましい。 【0026】 【発明の実施形態】以下、本発明の好適な実施形態を図示例に基づいて具体的に説明する。図1は、本発明の代表的な実施例であるスライドファスナーの要部を裏面から見た部分平面図と上止部の断面図を示している。 【0027】同図において、10はスライドファスナーを示し、左右一対の経編組織からなるファスナーテープ11の対向する側面に沿ってモノフィラメントからなるコイル状の連続エレメント列12がそれぞれ縫着糸18により縫い付けられ、その各エレメント列12の上端部に隣接して、それぞれに熱可塑性合成樹脂製の上止部13がファスナーテープ11と一体に形成されている。なお、図中の符号14はスライダーであり、同スライダー14を上下に摺動操作することによりスライドファスナー10の開閉を行う。前記上止部13は同スライダー14の上限摺動位置を規定して、スライダー14がスライドファスナー10から上方に抜け出ないようにする。 【0028】本実施例にあって、記上止部13は略U字状に屈曲した熱可塑性の合成樹脂素材、例えば編成ポリエステルから構成され、ポリエステル繊維を構成糸とするファスナーテープ11のエレメント取付領域Aのエレメント列12の上端に隣接するスペース部分の端部に超音波加熱により押圧と同時に自己発熱により溶着一体化されている。エレメント列12の材質は、例えばナイロンなどポリエステルよりも融点の高い樹脂が使われる。このように、ファスナーテープ11の融点を上止部13の融点より高く設定することにより、ファスナーテープ11を溶融させることなく、上止部13のみを溶融させることが可能となり、ファスナーテープ11の脆化を招かない。 【0029】その溶着一体化にあたって、本実施例では前記上止部13のテープ本体領域C側の端部位置は、エレメント列12の各エレメント部分12aの噛合頭部12bとは反対側の連結部12cの外側端面に隣接して形成されたファスナーテープ11の粗目組織領域Bに設定され、上止部13のテープ本体領域C側の端部は、自己発熱と図示せぬ超音波ホーンの押圧により溶融して、その上下先端部の溶融樹脂が前記粗目組織領域Bの地組織に侵入し、同地組織の構成糸に融着するとともに貫通して、上下先端部同士も溶着一体となり、強固に固着される。この場合にも、上止部13の外側表面の物性は変化せず、美麗な仕上り面を有している。 【0030】本実施例による前記経編組織からなるファスナーテープ11は、図1に概略的に示すように、エレメント列12の取付領域Aは複数の鎖編を主組織とする多数のウェールが形成され、前記取付領域Aとテープ本体領域Cとの間に形成される粗目組織領域Bは、前記取付領域Aの最もテープ本体寄りの鎖編ウェールW1とテープ本体領域Cの最もエレメント取付領域A寄りの鎖編ウェールW2との間を連結する、例えば緯挿入糸及び/又はトリコット編や二目編組織のシンカーループにより組織される編目密度が低く空隙の多い領域を構成している。ただし、図示組織及び糸間間隔は、理解をしやすくするため最も簡単な編組織を誇大化して示したものであり、実際には糸の太さは任意であり、その編密度ももっと緻密であって、編組織も複雑である。 【0031】上述のように、上止部13のテープ本体寄りの端部がエレメント取付領域Aとテープ本体領域Cの間に形成される粗目組織領域Bに配されるように設定される。そのため、既述したとおり、ファスナーテープ11に対する強固な固着を可能にするに止まらず、同時に上止部13のテープ幅方向の長さを短くすることができ、ファスナーテープ11が柔軟性に富んだメリヤスから構成されているため、出来上がったスライドファスナー10を、例えば薄手で且つ柔らかい構成生地からなる婦人服に縫着する場合や、或いはスライドファスナー10の縫着線を湾曲させる必要がある場合にも、上止部13の付近で縫着線が波打つことなく、且つ生地に引きつりなどが発生することなく、特に、図2に示すように、縫製にあたって上止部13がミシンフットと干渉せず、縫着線が上止部13の部分で蛇行することもなくなる。 【0032】図3及び図4は、本発明の第2実施例を示している。この実施例では、上記上止部13を射出成形によりファスナーテープ11のエレメント取付領域Aに成形と同時に溶着一体化している。この実施例にあっても、ファスナーテープ11、上述の実施例と同様に経編組織からなり、上止部13の成形にあたっては、前記上止部13のテープ本体領域C寄りの端部を、エレメント列12の取付縁部のを構成する鎖編組織のうち、最もテープ本体領域C寄りに配される鎖編組織によるウェールW1とテープ本体領域Cの最もエレメント取付領域Aに近い鎖編組織によるウェールW2とを連結する粗目組織領域Bに配するようにしている。この実施例により得られるスライドファスナー10も、上記実施例と同様の機能を有しており、スライドファスナー10の縫製部で波打つことがなく、且つ生地に局部的な引きつり等も発生することがなく、しかも縫製にあたって上止部13がミシンフットと干渉せず、縫着線が上止部13の部分で蛇行することもない。 【0033】図5及び図6は、本発明の第3実施例を示している。この実施例では、スライドファスナー10の上下止部のうち下止部15を対象としている。この下止部15の素材は、熱可塑性フィルム片からなり、噛合状態にあるエレメント列12の下端の一部を表面から跨ぐようにしてファスナーテープ11のエレメント取付領域Aに溶着一体化することにより下止部15を形成する。本実施例によるファスナーテープ11及びエレメント列12の構成は、上記第1及び第2実施例と同じである。 【0034】ただし、本実施例における下止部15の前記素材としては、2層フィルムが使用される。下止部15は、上止部13と異なり、前述のごとくエレメント列12の端部に存在するエレメント部分12aを含んでファスナーテープ11に固着されるため、エレメント列12をも溶融させることは、ファスナー形態を不安定にするとともに下止部15の周辺を硬化させるため、可能な限り下止部15だけを溶融して、その被融着部分であるファスナーテープ11及びエレメント部分12aは溶融しないことが好ましい。 【0035】本実施例にあっては、ファスナーテープ11の構成繊維をポリエステル繊維とし、エレメント列12の材質にナイロンが使われるため、下止部15の融着部分にファスナーテープ11より融点が低く且つ接着性に優れた材質、例えば変成ポリエステルを使うのが好ましい。しかし、下止部15の素材を全て変成ポリエステル樹脂でカバーしようとすると、下止部15の仕上り表面まで溶融して、下止部の形態が崩れてしまい、下止部形態を成形型(超音波ホーン、高周波電極)により規定することが難しくなる。 【0036】そこで、本実施例では上述のごとく2層フィルムが使用される。図7にその2層フィルムから得られる下止部15の素材である2層フィルム片15aの例を示している。この2層フィルム片15aは、下層に変成ポリエステル樹脂15a−1を使い、上層にナイロン樹脂15a−2を使っている。2層フィルム片15aは全体で0.6mmk 厚み寸法を有し、そのうち情操のナイロン槽が0.2mmで、下層の編成ポリエステル層が0.4mmの厚み寸法を有している。各層の融点は、ナイロン層が215〜263℃、編成ポリエステル層が120℃である。 【0037】このような下止素材を使うと、下層が溶融して接着性の点で相性が良いポリエステル繊維製ファスナーテープ12と強固に接着するが、相性の少ないナイロン製エレメント列とは融着せず、ファスナーテープ11及びエレメント列12の形態を崩すことなく、しかも安定した表面形態を保持して、ファスナーテープ11に強固に融着する下止部15が得られる。 【0038】本実施例のごとく薄いフィルム片15aを使って下止部15を形成するには、高周波溶着を採用することが好ましい。超音波溶着は図示せぬ超音波ホーンを上記フィルム片15aに押し当て、同超音波ホーンに機械的な超音波振動を付与することにより、ファスナーテープ11及びエレメント列12の押圧面に対するフィルム片15aの密着面で自己発熱させて、同密着部分を溶融させる。このため、その溶融部分に超音速で機械的に振動する超音波ホーンがあたり、下止部15の表面形態を微妙に変形させてしまう。 【0039】この点、高周波溶着による場合には、図示せぬ高周波電極であるアンビル自体は振動せず、電極間に発生する高周波電圧により、ファスナーテープ11及びエレメント列12の押圧面に対するフィルム片15aの密着面で自己発熱させて、フィルム片15aを溶融させるため、下止部15の表面形態を美麗に仕上げることができる。そのため、本実施例では高周波溶着手段を採用することにより、上記2層からなるフィルム片15aの融点が低い下層の変成ポリエステル樹脂15a−2だけを溶融させて表面層のナイロンを溶融させることなく、しかもその表面形態を崩さず美麗な仕上面を確保している。 【0040】また更に、本実施例による下止部15は、図5及び図6に示すように、平面視で、その上下端部分を幅狭にして、略中央部分の表面にテープ幅方向の端部にかけて延在するリブ状の隆起部15bが突設されている。下止部15を、このように形成することにより、図5に示すように、スライダー14を下方にある下止部15まで摺動操作すると、スライダーの噛合エレメント列案内溝内に下止部15の上端部分が嵌入し、前記隆起部15bにスライダー14の後口の端面が当接して、それ以上の摺動操作が規制される。つまり、スライダー14の内部に下止部15が過剰に入り込んでしまうことがなく、スライダー14の始動をスムーズに行うことができる。 【0041】下止部15の前記隆起部15bは、図示せぬ上部電極の成形面を下止部15の表面形態のごとく形成すると共に、ファスナーチェーン16の下方に配される下部電極であるアンビル17の上面に、図6に示すようなリブ17aを突出させておく。このリブ17aにより、ファスナーチェーン16をアンビル17の上面で受けるとき、前記リブ17がファスナーチェーン16のエレメント列12の縫着糸18の隣り合うループ間に下方から押し込まれ、ファスナーチェーン16の表面側に配され溶着される下止部15の素材フィルム片15aに上記隆起部15bを確実に形成でき、且つ所望の形態の下止部15が得られる。 【0042】図8は、本発明の第4実施例であるスライドファスナー20の一部を示している。この実施例では、ファスナーテープ21が経緯糸の織成により得られる織構造を有している。しかも、このスライドファスナー20は、モノフィラメントからなる連続コイル状のファスナーエレメント列22を、ファスナーテープ21の織成と同時に、その一側縁部に順次織り込んだ、いわゆる織込みスライドファスナーである。本実施例にあって、エレメント取付領域Aに配されるエレメント固定用経糸27のうち、エレメント部分22aの噛合頭部に最も近い端部を走行するエレメント固定用経糸27aは、1つのダブルピックの緯糸26の上を跨いだのち、次位の緯糸26の下側を潜り、これを繰り返して走行する。 【0043】一方、エレメント部分22aの噛合頭部に2番目に近い端部を走行するエレメント固定用経糸27bは、1個のエレメント部分22aの上脚部の上側を跨いだのち、次位のエレメント部分22aの下脚部の下側に配されるダブルピックの地緯糸26の下側を潜り、次いでその次のエレメント部分22aの上脚部の上側を跨ぎ、これを交互に繰り返してファスナーテープ21に織り込まれる。また、エレメント部分22aの連結部に最も近い位置を走行するエレメント固定糸27lは、隣り合うエレメント部分22aの各上脚部を跨がって順次走行して、テープ幅方向に折れ曲がらせて走行し、テープ本体領域Cにあってはダブルピックの緯糸26とともに緯糸としての機能を有している。 【0044】また、本実施例によるテープ本体領域Cの経糸28a〜28nは、一部を除いて上記エレメント取付領域Aに配される経糸27a〜27lよりも経糸密度を粗くして織成されており、その織組織は平織組織である。そして、本実施例にあっては、上記エレメント部分22aの連結部に最も近い位置を走行するエレメント固定糸27lから3本目までの経糸28a〜28cと、同じく前記エレメント固定糸27lから6本目以降の経糸28f〜28nとの経糸密度は同等に設定されているが、エレメント固定糸27lから3本目の経糸28c、4本目の経糸28d及び5本目の経糸28eの間の空隙を他のテープ本体領域Cの経糸密度の略2倍ほど粗くして大きくしている。この経糸28c〜28eの3本の経糸部分が、本発明における粗目組織領域Bを構成する。また、本実施例にあっては、上記エレメント部分22aを走行する経糸群26,27a〜27l及びエレメント部分22aの連結部に最も近い位置を走行するエレメント固定糸27lから3本目までの経糸28a〜28cが配されている領域がエレメント取付領域Aを構成する。 【0045】さて、以上のごとく構成された織込みスライドファスナー20にあって、上止部23は、図8に示すようにエレメント列22の上端に隣接してエレメント取付領域Aの全体と粗目組織領域Bにかけて形成されている。この上止部23は、上記第1実施例と同様に、略U字状の熱可塑性樹脂片をもってテープ縁部を挟持するようにセットされ、超音波溶着によりファスナーテープ21に融着一体化される。このとき、上止部23のテープ本体部側の端部は上記粗目組織領域Bに位置し、同粗目組織領域Bの構成糸である緯糸26の一部と経糸28c〜28eとの間に浸入して、それらの糸に融着するため、強固に一体化される。また、前述のごとく、上止部23のテープ幅方向の長さは従来よりも大幅に短くされるため、上述の実施例と同様に、縫製にあたって上止部13がミシンフットと干渉せず、縫着線が上止部13の部分で蛇行することもない。 【0046】図9は、本発明の第5実施例を示している。この実施例では、ファスナーテープ31が経糸を編成した経編テープから構成される。しかも、モノフィラメントをコイル状に成形して得られる連続状のファスナーエレメント列32を、ファスナーテープ31の編成と同時に、その一側縁部に順次編み込んだ、いわゆる編み込みファスナーチェーン30を示している。この実施例による編込みスライドファスナーは、1列の針床をもった一般の経編機によって編成することができる。 【0047】本実施例におけるテープ本体領域Cの地組織は、鎖編、トリコット編及び3ウェールに跨がって挿入される緯挿入糸からなる編組織であり、また本実施例によればファスナーテープ31の一側縁部に3ウエールW1〜W3をファスナーエレメント取付領域Aとして、プラスチックモノフイラメントからなるコイル状のファスナーエレメント列32の構成線材を、1コースおきごとに同一コース内でテープ巾方向に往復動させて、同線材を前記取付領域Aに編み込みながら連続するファスナーエレメント列32を形成する。このファスナーエレメント列32は、ファスナーエレメント取付領域Aにおいて同一の鎖編組織0−1/1−0をもって編成される2ウエールW2,W3の固定用鎖編糸によって、コイル状ファスナーエレメント列32の形成と同時に1コースおきに前記ファスナーエレメント取付領域Aに編込まれて連続的に取付固定がなされる。 【0048】なお、この場合の固定用鎖編糸は、そのニードルループをファスナーエレメント列32の各エレメント部分32aの脚部上側を跨がらせて長手方向に編成され、ウエール方向に連続する各ニードルループ群によりファスナーエレメント列を上側から地組織側に押え込んでファスナーエレメント取付領域Aに固定している。このとき、シンカーループはファスナーエレメント列32の各脚部の下側となってウエール方向に連続する各シンカーループ群を形成し、ファスナーエレメント列32を編込むファスナーエレメント取付領域Aの地組織の一部を構成する。 【0049】ここで、本実施例にあっては経挿入糸Gが1−0/0−1の編組織の下で前記固定用鎖編糸の各シンカーループ群の全シンカーループに順次交絡しながら挿入され、ファスナーエレメント取付部31aの地組織中に編み込まれる。なお、この実施例の場合、経挿入糸Gは2ウエールW2,W3の固定用鎖編糸だけでなく、それらの外側のウエールW1を構成するテープ地組織の鎖編糸に沿ってもジグザグ状に挿入している。このようにすれば、ファスナーエレメント取付領域Aの地組織部分の全体が織物のような風合及び形態を備えるようになり、縦横方向において寸法的に安定されてファスナーエレメント列ERをより安定した状態で固定することができる。 【0050】さらに本実施例によれば、上記エレメント取付領域Aと上記テープ本体領域Cとの間に隣接する粗目組織領域Bを形成している。そして、図9に示すように編込みファスナーエレメント列32の下端部に、上記実施例と同様のフィルム片からなる下止部35が、溶着により一体化される。この実施例にあっても、前記下止部35のテープ幅方向の左右両端部が前記粗目組織領域Bに位置するようにしている。そして、同下止部35の本体部分が前記編込みファスナーエレメント列32の下端部の一部を被覆して、その左右端部を前記粗目組織領域Bのトリコット編糸のシンカーループ及び緯挿入糸の間を通り抜けるようにして、各トリコット編糸のシンカーループ及び緯挿入糸に融着する。 【0051】本実施例にあっても、かかる構成により下止部35のテープ幅方向の長さが従来よりも大幅に短くなり、下止部35の端部がテープ主体領域C側へ過剰に突出することがなく、上記実施例と同様に、編込みスライドファスナー30を被服類などに縫着するにあたって、下止部35がミシンフットと接触して縫製ラインを蛇行させてしまうことがない。また、ファスナーエレメント列32とテープ本体領域Cとの間のウェールを省略した粗目組織領域Bを形成したため、合成樹脂が溶融状態で浸透しやすく、下止部35をファスナーテープ31に強固に固定することができる。
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| 【出願人】 |
【識別番号】000006828 【氏名又は名称】ワイケイケイ株式会社
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| 【出願日】 |
平成13年12月13日(2001.12.13) |
| 【代理人】 |
【識別番号】100091948 【弁理士】 【氏名又は名称】野口 武男 (外2名)
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| 【公開番号】 |
特開2003−180413(P2003−180413A) |
| 【公開日】 |
平成15年7月2日(2003.7.2) |
| 【出願番号】 |
特願2001−380218(P2001−380218) |
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