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【発明の名称】 作業靴用の先芯及びその先芯を具備する作業靴
【発明者】 【氏名】鈴木 宏樹
【住所又は居所】東京都文京区本郷3丁目27番12号 オカモト株式会社内

【要約】 【課題】合成樹脂製の先芯、及び先芯を具備する作業靴に関し、上記先芯の実質的強度を増大せしめ同作業靴における防護機能を高める。

【解決手段】靴Aの爪先部に内装する合成樹脂製の先芯1であって、先芯1の底面側の周縁部を内側に折り込んで折り片1aを形成し、該折り片1aの幅を爪先部c1と両後縁部c3とで幅広状に形成し、これらの間に比較的幅が狭く、且つ曲線をもって上記爪先部c1の縁と、両後縁部c3の縁との間を補間する補間部c2を形成し、折り片1aの爪先部c1及び後縁部c2にて強度と剛性を向上し、両部分を補間部c2の曲線にて連絡することにより応力集中を回避する。
【特許請求の範囲】
【請求項1】 靴の爪先部を構成する甲皮の内側に内装せしめる合成樹脂製の先芯であって、同先芯の底面側の周縁部を内側に折り込んで折り片を形成し、該折り片の幅を爪先部と左右後縁部を幅広状に形成し、これらの間に上記爪先部及び後縁部よりも幅が狭く、且つ、上記爪先部の縁と、左右後縁部の縁との間を各々連続する曲線にて補間する補間部を形成してなる作業靴用先芯。
【請求項2】 上記補間部の曲線を、爪先部の縁と後縁と左右曲線後縁部とに接する円弧により構成した請求項1記載の作業靴用先芯。
【請求項3】 上記請求項1又は請求項2の先芯を具備して成る作業靴。
【発明の詳細な説明】【0001】
【発明の属する技術分野】この発明は、作業靴に用いる合成樹脂製の先芯、及びこの先芯を用いた作業靴に関し、さらに詳しくは、合成樹脂製でありながら強度を合理的に向上せしめた先芯及びその先芯を具備する作業靴に関する。
【0002】
【従来の技術】従来の作業靴の中には、JIS規格で決められた高強度を有する工業用の強靭な鋼芯を具備する作業靴とは別に、スニーカーと同様な構造の靴本体を構成し、この靴本体の爪先部に合成樹脂製の先芯を内設して使用者の爪先を保護することを目的に製造された作業靴がある。これらの作業靴は、例えばトラックのドライバー等が使用しており、トラックの運転に於けるアクセル、ブレーキ、クラッチ等のペダルの踏み付け動作をスムーズに行なうことの出来る屈曲特性を具備している。これと同時に、荷物の積み下しの作業中に足の上に積荷が落下した場合や、積荷の下に足を挟んだ場合などに、作業者の足の爪先を先芯により防護できるように作られている。
【0003】上記したように合成樹脂から成る先芯を具備する作業靴は、軽量を維持しつつできる限り強度を高め、使用者の爪先をより効果的に保護することが求められる。よって、従来から合成樹脂製の先芯を具備する作業靴において、先芯の強度を高める研究が成されている。
【0004】例えば、実用新案登録番号第2574860号の先芯及び安全靴においては、従来の作業靴に対し次のような指摘がされている。従来の作業靴に使用される合成樹脂製の先芯100は、図6,図8−aにて示すように同先芯100底面側の周縁部を内側に折り込んで形成した折り片101を設けて構成している。しかし、その折り片101の幅は、先芯100の周壁の全長にわたって同じ幅となるように構成してある(図8−a)。その結果、上記先芯100を平面上に載置し、その上から荷重を加えると、先芯100は左右両側がそれぞれ外方向へ向けて拡がるように変形し、最終的には、折り片101の爪先中央部分に亀裂iが生じ、これをきっかけとして先芯が潰れて破壊される。
【0005】上記したようなことから、実用新案登録番号第2574860号の先芯300では、先芯に形成した折り片301の幅を後端から先端へ向けて漸次広くすることにより、折り片の爪先部分の強度を増大させ、上述したように、この部分から亀裂を生じて先芯が破壊される事象を回避し、結果的に先芯の強度を高めたことが開示されている(図8−b)。また、折り片の爪先部の幅を広く確保しても、図8−cにて示す先芯200のように比較的小さな円弧部分201があると、ここに応力が集中するため、折り片の爪先部中央よりも先に、この円弧部分201に亀裂が生じて先芯が破壊する結果となり、折り片の幅を無闇に拡げても先芯の強度を上げることが出来ないことにも触れている。
【0006】
【発明が解決しようとする課題】一方、上記した如く構成した先芯100は、靴内部の甲皮110と内装材105に挟まれる形で甲皮110の爪先部内に内装される。その際、先芯100の折り片101は、甲皮110と内装材105に挟まれた状態にてミッドソール103aとアウトソール103b、若しくはアウトソールの上に載置して固定する。このように、靴本体の爪先部に内装された先芯は底面の周縁に沿う先芯100の下面を介して靴底上に載置された状態で保形機能を発揮する。しかし、歩行中や屈伸姿勢をとった状態において、先芯100と靴底との間、特に折り片101の後端部と靴底との結合が先芯100を安定させ、同先芯100に負荷が加わった際における変形を低減して先芯が破壊する終局荷重を高める。即ち、従来の作業靴には終局荷重の増減に先芯100の座りが関係していることが見落とされている。
【0007】本発明の課題は、上記した如く合成樹脂製の先芯、及び同先芯を具備する作業靴に関し、上記先芯の実質的強度を向上して作業靴における防護機能を高めることにある。
【0008】
【課題を解決するための手段】上記した課題を解決するために本発明の作業靴は、靴の爪先部を構成する甲皮の内側に内装する合成樹脂製の先芯であって、同先芯の底面側の周縁部を内側に折り込んで折り片を形成してある。即ち、先芯の底面周囲には折り片が形成される。この折り片は、爪先部と左右後縁部の幅が広く、且つこれらの間に比較的幅の狭い補間部を有する。補間部は、先芯における爪先部と両後縁部との間を連絡するように形成され、これらの縁同士を滑らかな曲線により補間する。尚、上記芯材はポリカーボネート樹脂やナイロン樹脂等を用いるか、若しくはこの樹脂にカーボン繊維やガラス繊維を混入したものを用いるとよいが、必要な強度を具備するものであれば既存のどのような合成樹脂,補強繊維を用いてもよい。
【0009】上記した如く構成した先芯は、作業靴の甲皮内部の爪先部分に内設され、折り片が靴底爪先部に沿って接合される。折り片の爪先部は、幅が広いことから、先芯の上からかかる荷重により先芯が外側方へ拡がるように変形した際にも荷重に耐え、亀裂の発生を回避し得る。また、折り片の左右後縁部は上記爪先部と同様に幅を広く確保してあるので、同部分の強度と剛性を高めると共に、靴底上に広い面積を介して安定した状態で接合し、靴底上における先芯の保持力を高める。その結果、荷重を受けた際に生じる先芯自体の変形量も低減され、変形による早期破壊も回避できる。尚、請求項2及び請求項3の説明は、後述する発明の実施形態の欄の中で合わせて行なう。
【0010】
【発明の実施の形態】以下、本発明の一実施例を図面に基づいて説明する。図1乃至図3にて示す作業靴Aは、靴本体aの爪先部に使用者の爪先を防護する合成樹脂製の先芯1を内装したものである。この作業靴Aは、本皮若しくは合成皮革,キャンバス地等から成る甲皮a1と、内装材2を貼り合わせて縫製し、靴形に成すアッパーとして構成する。この甲皮a1の底面開口部には中底6を貼り付け、靴本体aを構成する。靴本体aの底面には、ミッドソールb1とアウトソールb2とを一体的に重ね合わせて成る2層式の靴底bを接着し、ひも付き型の作業靴Aを構成している。
【0011】上記した靴底bは、EVAやウレタン樹脂等の軟質合成樹脂から成るミッドソールb1と、ゴム材を用いて型成形したアウトソールb2を重ね合わせて一体的に接着して成る。本実施例にて用いたミッドソールb1は、EVA素材を成形型を用いてプレスしながら固めることにより、通常のEVAを使用して型成形したソールよりも幾分硬めで確りとしたソールとして成形してある。上記したように構成した靴底のミッドソールb1は、適度な柔軟性により、衝撃を吸収する。
【0012】一方、アウトソールb2は合成ゴム等を用いて型成形してあり、その上面に上記したミッドソールb1を重ね合わせて接着してある。ミッドソールb1の爪先部分の外周縁部上面に沿っては、後述する先芯1の折り片1aを定置すると共に、先芯1に対して上方から加わる荷重を支承する略U字形の支承面3aを構成してある。
【0013】上記したアウトソールb2の爪先部における内周部には、同アウトソールb2の上に重ね合わせたミッドソールb1の爪先部4を形状一致した状態で装入する。また、上記したようにアウトソールb2の爪先部の内側には、ミッドソールb1の先端部が突き当たった状態で一体的に当接する。そして、アウトソールb2の上面にミッドソールb1を重ね合わせて一体的に貼り合わせた際に、両ソールb1,b2に形成した周縁部7,8の端部同士が接続するように構成してある。尚、上記した周縁部7,8は、靴本体aの底面に靴底bを接着した際に甲皮a1底面側の外周部に広く接着して甲皮a1と靴底bとの接着を強固なものとする。特に爪先部に沿って設けた周縁部8は先芯1を安定して保持する上で有効である。しかし上記した周縁部の形態及び靴底の構造は、上記した形態に限定するものではなく、適宜な形態に設定しても良い。
【0014】図2にて示すように、靴本体aの爪先部分を構成する甲皮a1と内装材2との間には、靴本体aの爪先形状と略同じ形状に成形した合成樹脂製の先芯1を内装し、内装材2若しくは甲皮a1の少なくとも一方に対し全面的に接着してある。先芯1は、爪先部の靴底側の周縁部を内側に折り込んで所定幅の折り片1aを形成してある。折り片1aは、上記ミッドソールb1の爪先部周縁に沿った支承面3aの上に定置され、接着剤を用いて甲皮a1の折り片部a1'と共にミッドソールb1の爪先部4の周縁に沿って強固に接着してある。よって、先芯1に対して上方から加わる荷重は、上記折り片1aを介してミッドソールb1の支承面3aにて支承することになる。
【0015】ところで、上述した先芯1は、例えばポリカーボネート樹脂,ナイロン樹脂等の合成樹脂にカーボン繊維やグラス繊維等の繊維を混入して靴本体aの爪先形と略同形に形成してある。先芯1は底面と後部とが開放され、底面の周縁に沿って上記した折り片1aを内側へ向けて折り込んだ形態に成形してある。図4にて示すように、上記先芯1の折り片1aは、幅が一定ではなく、爪先部c1にて幅を拡げ、さらに、左右後縁部c3を各々幅広く形成してある。一方、折り片1aにおける爪先部c1と左右後縁部c3の間には比較的幅の狭い補間部c2を一体形成してある。この補間部c2は、上記折り片1aの、爪先部c1と左右後縁部c3とを連絡する部位であり、上記爪先部c1部と両後縁部c3とを力学的に無理のない(応力集中の生じない)、連続した曲線にて連絡してある(図4)。この場合、補間部c2を構成する曲線は、先芯1の外周に沿わせた線が好ましい。
【0016】上記した如き形状をした折り片1aは、甲皮a1を介してミッドソールb1の爪先に沿って設けた支承面3aの上に定置して強固に接着する。特に負荷の掛かる爪先部c1と左右後縁部c3とは幅広く形成してあるので、先芯1を靴本体aの爪先部上に安定した状態で内装することができる。また、上記した如く靴本体aの爪先部内に装着した先芯1の内面には、甲皮a1の内面に貼着した内装材2を貼着し、同先芯1の内面側を滑らかに仕上げている。さらに、靴本体a内の底面部には中底6を貼設すると共に、該中底6の上面に中敷5を被着してある。尚、本実施例において、中底6は甲皮a1の折り返し片に重ならないように貼設してあるが、中底は折り返し片に重なるように貼設してもよい。また、中敷5は甲皮a1、先芯1、内装材2の折り返し部の上に被装する形で前記中底6の上面に貼着してある。
【0017】以上のように構成した作業靴Aは、先芯1爪先部c1の折り片1aの幅を広く確保してあるので、前述した如く作業靴Aの爪先部に上方から荷重が加わり折り片1aの爪先部の中央に荷重がかかり、先芯1が左右両側に拡がるように変形しても、同部分は折り返し幅を広く設定してあるので、同部分に亀裂が生じて先芯1が破損することを回避できる。また、先芯1の左右後縁部c3も幅広状に形成してあるので、左右後縁部付近の剛性を高めると共に、靴底bのミッドソールb1の上に広い面積を介して定置される。よって、先芯1をミッドソールb1上に安定した状態で保持することができる。この左右後縁部c3の機能は、荷物等を靴の爪先に落下させた場合でも、荷重を受けた際に生じる先芯1自体の変形量(潰れ量)を低減する。これにより、先芯1が変形することにより生じる折り片1aの亀裂や、これを原因とした早期破壊を効果的に回避できる。
【0018】上記した先芯1は、折り片1aの先芯部c1と、左右後縁部c3との間を連結する補間部c2は、曲率が滑らかに変化する曲線にて構成した。また、本発明の作業靴は、図5にて示す先芯1’のように、補間部c2’の曲線を爪先部c1の周方向の端部と、後縁部c3の周方向の前側端部とに連続する円弧Rで構成してもよく、このように補間部c2’の曲線を円弧にて構成することにより、比較的幅の狭くなる補間部c2’でも荷重が加わった際に応力集中が生じる不具合を回避することができる。
【0019】図7は本発明を実施した作業靴の爪先部位を示す縦断面図である。この作業靴A2は、上記した作業靴Aと同様に構成してあるが、中底6の先端部を幾分延長し、中敷5と共に折り片部a'と折り片1a及び内装材2の上に重ね合わせて接着した構造となっている。即ち本願の作業靴の爪先部分における重ね合わせは十分の強度と爪先部に違和感を生じる凹凸が形成なければ爪先部の重ね合わせの構造は任意に変更してもよい。この作業靴A2は比較的強度のある中底6が折り辺部a'と折り片1aの上に接着されるので、強度を向上させる上で好ましい。尚、本実施例の先芯1は、ひも付きのスニーカータイプの作業靴Aに内装した。しかし、本発明の先芯を内装する作業靴はこれに限定するものではなく、例えば面フアスナータイプやトレッキングシューズ,長靴等に用いてもよい。
【0020】
【発明の効果】以上説明したように、本発明の作業靴の先芯は、先芯の底面側の周縁部を内側に折り込んで折り片を形成し、該折り片の幅を爪先部及び左右後縁部において幅広状に形成し、且つ、これらの間に同爪先部及び左右後縁部よりも幅の狭い補間部を設け、上記爪先部の縁と、左右後縁部の縁との間を各々連続する曲線にて補間することで同補間部を形成してなるものである。よって、上記した如く構成した本発明の先芯は、甲皮内部の爪先部分に内装した際、折り片が靴底爪先部に沿って接合する。折り片の爪先部は、幅を広くしたことから、先芯の上からかかる荷重により先芯が側方へ拡がるように変形した際にもその荷重に耐え、同部に生じ易い亀裂の発生を回避できる。また、折り片の左右後縁部は上記爪先部と同様に幅を広く確保してあるので、後縁部周囲における強度と剛性を高めると共に、靴底上に対して広い面積を介して接合するので、靴底上における先芯の保持力と安定性を高めることができる。その結果、例えば荷物を落下させて靴の爪先に押圧荷重を受けた際に生じる先芯自体の変形量も低減され、先芯が変形することにより生じる折り片の剥離や早期破壊も効果的に回避でき、合成樹脂製の先芯の強度を格段と高めることが出来る。また、上記折り片の爪先部と両後縁部との間は、上記爪先部及び後縁部よりも幅の狭い補間部にて構成してあるが、同補間部は、滑らかな曲線をもって両部を連絡するものであるから、荷重が加わった際の応力集中を回避し、応力を分散することが可能となり、幅が狭くとも荷重に対して十分に対応することができる。
【0021】請求項2記載の先芯は、請求項1記載の補間部の曲線を爪先部と左右後縁部とに接する円弧により構成したものであるから、爪先部と後縁部との縁部同士を連結する曲率が一定となる。よって、同補間部に加わる荷重を均等に分散し、応力の集中を回避することが可能となる。補間部は爪先部や後縁部に比較すると幅が狭くなる部位であるが、応力集中を回避し、荷重に対して十分に対応することができる。
【0022】請求項3記載の作業靴は、上記した先芯を具備して成るものであるから、軽量を維持しつつ爪先に内設した先芯を強化するこができ、合成樹脂製の先芯であっても使用者の爪先をより安全に保護することができる。
【出願人】 【識別番号】000000550
【氏名又は名称】オカモト株式会社
【住所又は居所】東京都文京区本郷3丁目27番12号
【出願日】 平成14年4月26日(2002.4.26)
【代理人】 【識別番号】100109955
【弁理士】
【氏名又は名称】細井 貞行 (外2名)
【公開番号】 特開2003−310307(P2003−310307A)
【公開日】 平成15年11月5日(2003.11.5)
【出願番号】 特願2002−126284(P2002−126284)